(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094554
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240703BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20240703BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20240703BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G08G1/16 D
H04W4/44
H04W36/08
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211176
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】山口 史人
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF13
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
5K067AA35
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】通信品質が低下している状況下においても、適切な合流制御を実行する。
【解決手段】第1の車両100との無線通信の通信信頼度および第2の車両300との無線通信の通信信頼度を判定する通信信頼度判定部520と、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度以上のとき、第2の車両300に対して走行制御を行い、第1の車両100の通信信頼度が所定の信頼度以上であり、かつ、第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、第1の車両100に対して走行制御を行う制御部550と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーンと前記第1のレーンよりも走行優先度の低い第2のレーンの合流区間において、前記第1のレーンを走行する第1の車両あるいは前記第2のレーンを走行する第2の車両に対して合流のための走行制御を無線通信によって行う走行制御装置であって、
前記第1の車両との前記無線通信の通信信頼度および前記第2の車両との前記無線通信の通信信頼度を判定する通信信頼度判定部と、
前記第1の車両の前記通信信頼度および前記第2の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度以上のとき、前記第2の車両に対して前記走行制御を行い、前記第1の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度以上であり、かつ、前記第2の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、前記第1の車両に対して前記走行制御を行う制御部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記走行制御として加速抑制制御または減速制御を行う、
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記無線通信は複数の基地局を介して行われるものであり、
前記通信信頼度判定部は、前記基地局のハンドオーバに必要な時間を超えて前記無線通信が切断されているとき、前記通信信頼度が所定の信頼度未満であると判定する、
請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の車両の前記通信信頼度および前記第2の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、前記通信信頼度の高い方の車両に対して前記走行制御を行う、
請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項5】
第1のレーンと前記第1のレーンよりも走行優先度の低い第2のレーンの合流区間において、前記第1のレーンを走行する第1の車両あるいは前記第2のレーンを走行する第2の車両に対して合流のための走行制御を無線通信によって行う走行制御装置であって、
前記第1の車両および前記第2の車両における前記無線通信の通信信頼度を判定する通信信頼度判定部と、
前記第1の車両あるいは前記第2の車両のうち、前記通信信頼度が高い方の車両に対して前記走行制御を行う制御部と、
を備える走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野においても、つながる車、いわゆる、コネクテッドカーに関する開発が急速に進んでいる。
【0003】
また、運転者の負担軽減や安全運転支援を目的とした種々の技術、例えば、車間距離制御システム(Adaptive Cruise Control System:ACCS)や車線維持支援システム(Lane Keeping Assistance System:LKAS)なども実用化されており、上記のコネクテッド技術と融合した高度な運転支援システムや自動運転システムへの期待が高まっている。
【0004】
ところで、上記のような走行制御技術と通信技術とを融合させたシステムにおいては、通信障害等によって通信が途絶した場合の対応が問題となる。
例えば、走行車線の合流区間で、一方の車両の通信が途絶した場合、他方の車両の制御を含めて、どのような走行制御を実行すべきなのかが問題となる。
【0005】
上記のような課題に対して、周囲認識機能により隣接車線の所定範囲に他車が認識されない場合に、所定範囲を目標として目標経路を生成し隣接車線への自動車線変更を行う機能、および、通信機能により取得される他車情報を利用して目標経路を生成し加減速制御および操舵制御を行い被合流車線に自動合流する合流支援機能を有する車両の走行制御装置において、自動合流中に通信機能に障害が発生した場合に、加減速制御および操舵制御を停止させる操作介入の判定基準となるオーバーライド閾値を、通信機能の正常時よりも大きい値に変更する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、運転者の操作介入によって手動運転に切替わるオーバーライド機能を備えた車両を前提とし、自動合流中に通信機能に障害が発生した場合に、加減速制御および操舵制御を停止させる操作介入の判定基準となるオーバーライド閾値を、通信機能の正常時よりも大きい値に変更することによって、合流支援中の通信障害発生時における過度の操作介入による車線逸脱や他車両との接近防止を図ることを目的するものであり、そもそも、通信状態が悪い場合においても、運転者が操作介入を行わない運転支援制御あるいは自動運転制御の継続を図るものではない。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、通信品質が低下している状況下においても、適切な走行制御を実行する走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、第1のレーンと前記第1のレーンよりも走行優先度の低い第2のレーンの合流区間において、前記第1のレーンを走行する第1の車両あるいは前記第2のレーンを走行する第2の車両に対して合流のための走行制御を無線通信によって行う走行制御装置であって、前記第1の車両との前記無線通信の通信信頼度および前記第2の車両との前記無線通信の通信信頼度を判定する通信信頼度判定部と、前記第1の車両の前記通信信頼度および前記第2の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度以上のとき、前記第2の車両に対して前記走行制御を行い、前記第1の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度以上であり、かつ、前記第2の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、前記第1の車両に対して前記走行制御を行う制御部と、を備える走行制御装置を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記走行制御として加速抑制制御または減速制御を行う、走行制御装置を提案している。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記無線通信は複数の基地局を介して行われるものであり、前記通信信頼度判定部は、前記基地局のハンドオーバに必要な時間を超えて前記無線通信が切断されているとき、前記通信信頼度が所定の信頼度未満であると判定する、走行制御装置を提案している。
【0012】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記第1の車両の前記通信信頼度および前記第2の車両の前記通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、前記通信信頼度の高い方の車両に対して前記走行制御を行う、走行制御装置を提案している。
【0013】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、第1のレーンと前記第1のレーンよりも走行優先度の低い第2のレーンの合流区間において、前記第1のレーンを走行する第1の車両あるいは前記第2のレーンを走行する第2の車両に対して合流のための走行制御を無線通信によって行う走行制御装置であって、前記第1の車両および前記第2の車両における前記無線通信の通信信頼度を判定する通信信頼度判定部と、前記第1の車両あるいは前記第2の車両のうち、前記通信信頼度が高い方の車両に対して前記走行制御を行う制御部と、を備える走行制御装置を提案している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、通信品質が低下している状況下においても、適切な合流制御を実行することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る走行制御システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る第1の車両の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る第1の基地局の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る走行制御装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る合流区間における第1の車両と第2の車両との関係を例示した図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る合流区間における第1の車両と第2の車両との関係を例示した図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る平時と通信途絶時とにおける通信データの挙動を例示する図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る走行制御装置の処理フローを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る走行制御装置の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
【0017】
図1から
図8を用いて、本実施形態に係る走行制御装置について説明する。
なお、以下では、
図1に示すような走行制御システムを例示して、本実施形態に係る走行制御装置について説明する。
【0018】
<走行制御システム1の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る走行制御システム1は、第1の車両100と、第1の基地局200と、第2の車両300と、第2の基地局400と、走行制御装置500と、を含んで構成されている。
なお、本実施形態に係る走行制御システム1は複数の基地局と複数の車両とを含んで構成されるものであるが、
図1では図示の便宜上、二つの基地局と二台の車両のみを示している。
【0019】
第1の車両100および第2の車両300は、例えば、コネクテッドカーであって、搭載するセンサからの情報等と通信により得られる情報等とに基づいて、自動運転走行を実行する車両である。
なお、以下では、
図5に示すように、被合流レーンを走行する車両(本線走行車)を第1の車両100とし、合流レーンを走行する車両(合流車)を第2の車両300として説明する。
【0020】
第1の基地局200および第2の基地局400は、例えば、端末と通信を行う陸上に開設された固定あるいは移動の無線局であり、端末との間で無線通信を行う一方、電話網の末端となる。
また、基地局間は有線(電話回線)又は無線あるいは衛星回線等で接続されている。
第1の基地局200および第2の基地局400は、それぞれの通信エリア(
図1において第1のセルおよび第2のセルと示す)に存在する車両と無線通信を行う。そして、走行制御システム1においては、車両の移動に伴い、当該車両が無線通信を行う基地局を切り替えるハンドオーバが行われる。
【0021】
走行制御装置500は、第1のレーン(本線)と第1のレーンよりも走行優先度の低い第2のレーン(合流レーン)の合流区間において、第1のレーンを走行する第1の車両100あるいは第2のレーンを走行する第2の車両300に対して合流のための走行制御を無線通信によって行う。
走行制御装置500は、第1の車両100および第2の車両300の自動運転走行あるいは運転支援走行における管制制御あるいは遠隔制御を実行する。
走行制御装置500は、第1の車両100に対して、第1の車両100が通信接続する第1の基地局200を介した第1の通信信頼度と、第2の車両300に対して、第2の車両300が通信接続する第2の基地局400を介した第2の通信信頼度と、を判定し、合流区間に入る前に、通信信頼度が高い車両(第1の車両100または第2の車両300)に対して、減速制御を実行する。
ここで、無線ネットワーク環境では、基地局/通信端末間の「電波の強度(RSSI)」と「電波に重畳しているデータの品質(RSRQ)」によって、通信が成り立っている。
「電波の強度(RSSI)」は、第1の基地局200あるいは第2の基地局400と第1の車両100あるいは第2の車両300の通信部(通信端末)との間の距離や障害物等の影響によって、電波レベルが減衰低下する。
「電波に重畳しているデータの品質(RSRQ)」は、他の通信による多くの電波によって生じる電波干渉や環境ノイズによりデータ品質が低下する。
上記のように、「電波の強度(RSSI)」や「電波に重畳しているデータの品質(RSRQ)」の低下によって、通信が不安定になると、通信断絶や通信遅延などの障害となる。
なお、上記の他にも、BER(ビットエラーレート)やPER(パケットエラーレート)、高周波帯を扱うRF部で処理された後の復調データ(通信プロトコル部の領域)の品質も影響する。
これを通信品質が低下している状態という。
本実施形態においては、通信品質の指標として、「通信信頼度」を用い、「通信信頼度」を第1の車両100あるいは第2の車両300から定期的に受信する情報の受信頻度に基づいて判定する。
【0022】
<車両の構成>
第1の車両100と第2の車両300とは、ともに同様の構成を有することから、以下では、第1の車両100についてのみ説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る第1の車両100は、車両センサ110と、駆動制御部120と、運転制御部130と、通信部140と、記憶部150と、を含んで構成されている。
【0023】
車両センサ110は、車速センサ、車両の走行状況に関する情報を検出するセンサを含む。
車速センサは、例えば、各車輪に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して車両Mの速度(車速)を導出し、導出した車速を駆動制御部120に出力する。
車両の走行状況に関する情報を検出するセンサには、車両の位置等を検出する位置センサ、車両の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両の向きを検出する方位センサ等が含まれる。
位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置によって車両の位置を検出する。なお、位置センサは、例えば、ナビゲーション装置に含まれるGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機によって、車両の位置を検出するようにしてもよい。
また、車両センサ110は、例えば、カメラやレーダ装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、物体認識装置等を含む。
これらは、例えば、車両の周辺情報を検出するための構成要素である。
カメラは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラであり、ステレオカメラであってもよい。
レーダ装置は、車両の周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して、少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。
レーダ装置は、車両の任意の箇所に取り付けられ、例えば、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
LIDARは、車両の周辺に光に近い波長の電磁波を照射し、散乱光を測定する。
LIDARは、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。
LIDARにより照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。
物体認識装置は、上述したカメラ、レーダ装置、およびLIDARのうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、車両の周辺に存在する物体の位置、種類、速度等を認識する。
物体認識装置は、認識結果を運転制御部130に出力する。
【0024】
駆動制御部120は、車両に駆動力等を与えて車両を走行させる。
駆動制御部120は、例えば、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する走行駆動力出力部と、所定の制動操作に応じたブレーキトルクを各車輪に出力させるブレーキ部と、転舵輪の向きを変更させるステアリング部とを含む。
走行駆動力出力部は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。
走行駆動力出力部は、後述する運転制御部130から入力される情報に基づいて、内燃機関、電動機、および変速機等を制御する。
ブレーキ部は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。
ブレーキECUは、運転制御部130から入力される情報に基づいて、電動モータを制御し、制動制御に応じたブレーキトルクを各車輪に出力する。
ステアリング部は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。
電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。
ステアリングECUは、運転制御部130から入力される情報に基づいて、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0025】
運転制御部130は、例えば、車両の自動運転制御あるいは運転支援制御を実行する。
運転制御部130は、前述の車両センサ110により検出された車両の周辺状況や、車両の挙動、乗員からの制御指示、通信により第1の基地局200あるいは第2の基地局400を介して取得した後述する走行制御装置500からの制御情報に対応した運転制御情報を生成し、生成した運転制御情報を駆動制御部120に出力することにより、自動運転制御あるいは運転支援制御を実現する。
【0026】
通信部140は、第1の車両100、第1の基地局200、走行制御装置500等と無線通信を行う無線通信インタフェースである。
通信部140は、複数の無線アクセス方式に対応し、図示しない受信処理部、送信処理部、アンテナ等を含む。
【0027】
記憶部150は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM 、ROM 、または、RAM 等により構成されている。記憶部150には、例えば、通信要件やプロセッサによって読み出されて実行される制御プログラム、その他各種情報等が格納されている。
【0028】
<基地局の構成>
第1の基地局200と第2の基地局400とは、ともに同様の構成を有することから、以下では、第1の基地局200についてのみ説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る第1の基地局200は、無線通信部210と、記憶部220と、制御部230とを含んで構成されている。
【0029】
無線通信部210は、第1の車両100、走行制御装置500等と無線通信を行うための無線通信インタフェースである。
また、無線通信部210は、受信処理部211と、送信処理部212と、アンテナ213とを含んで構成されている。
受信処理部211は、アンテナ213を介して受信された上りリンク信号の処理を行い、図示しない無線受信部と、多重分離部と、復調部と、復号部と、を含んで構成されている。
ここで、無線受信部は、上りリンク信号に対して、ダウンコンバート、不要な周波数成分の除去、増幅レベルの制御、直交復調、デジタル信号への変換、ガードインターバルの除去、高速フーリエ変換による周波数領域信号の抽出等を行う。
多重分離部は、無線受信部から出力された信号から、PUSCH、PUCCH等の上りリンクチャネル及び上りリンク参照信号を分離する。
復調部は、上りリンクチャネルの変調シンボルに対して、BPSK、QPSK等の変調方式を使って受信信号の復調を行う。
復号部は、復調された上りリンクチャネルの符号化ビットに対して、復号処理を行う。
送信処理部212は、アンテナ213を介して、下りリンク制御情報及び下りリンクデータの送信処理を行い、図示しない符号化部、変調部、多重部、無線送信部と、を含んで構成されている。
ここで、符号化部は、後述する制御部230から入力された下りリンク制御情報及び下りリンクデータを、ブロック符号化、畳み込み符号化、ターボ符号化等の符号化方式を用いて符号化を行う。
変調部は、符号化部から出力された符号化ビットをBPSK、QPSK、16QAM、64QAM 、256QAM 等の所定の変調方式で変調する。
多重部は、各チャネルの変調シンボルと下りリンク参照信号とを多重化し、所定のリソースエレメントに配置する。
無線送信部は、多重部からの信号に対して、各種信号処理を行う。
例えば、無線送信部は、高速フーリエ変換による時間領域への変換、ガードインターバルの付加、ベースバンドのデジタル信号の生成、アナログ信号への変換、直交変調、アップコンバート、余分な周波数成分の除去、電力の増幅等の処理を行う。
【0030】
記憶部220は、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスク等のデータ読み書き可能な記憶装置等で構成されている。
【0031】
制御部230は、第1の基地局200あるいは第2の基地局400の各部を制御するコントローラである。
制御部230は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサにより構成されている。
制御部230は、例えば、第1の基地局200あるいは第2の基地局400内部の記憶部220に記憶されている各種プログラムをプロセッサがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行する。
【0032】
<走行制御装置500の構成>
図4に示すように、本実施形態に係る走行制御装置500は、通信部510と、通信信頼度判定部520と、通信制御部530と、記憶部540と、制御部550と、を含んで構成されている。
【0033】
通信部510は、例えば、4Gあるいは5Gの通信方式が利用可能なセルラー網等を利用して、第1の基地局200や第2の基地局400と無線通信を実行する。
【0034】
通信信頼度判定部520は、第1の車両100に対して、第1の車両100が通信接続する第1の基地局200を介した第1の通信信頼度と、第2の車両300に対して、第2の車両300が通信接続する第2の基地局400を介した第2の通信信頼度と、を判定する。
具体的には、通信信頼度判定部520は、通信部510が第1の車両100あるいは第2の車両300から定期的に受信する情報の受信頻度に基づいて、それぞれの通信信頼度を判定する。
なお、通信信頼度判定部520は、「受信頻度」を所定期間内に、通信部510が第1の車両100あるいは第2の車両300から受信する情報の数により判定する。
また、無線通信は複数の基地局を介して行われるものであるため、通信信頼度判定部520は、基地局のハンドオーバに必要な時間を超えて無線通信が切断されているとき、通信信頼度が所定の信頼度未満であると判定する。
【0035】
通信制御部530は、第1の基地局200あるいは第2の基地局400に諸情報を送信するための各種制御を行う。
【0036】
記憶部540は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM 、ROM 、または、RAM等により構成されている。
記憶部540には、例えば、通信要件やプロセッサによって読み出され、実行されるプログラム、その他各種情報等が格納されている。
また、記憶部540には、地図情報と基地局番号等を含む基地局に関する情報が格納されている。
【0037】
制御部550は、記憶部540内のROM等に格納された制御プログラムに従って、走行制御装置500全体の動作を制御する。
本実施形態において、制御部550は、第1の車両100と第2の車両300とが、合流地点で干渉するか否か、すなわち、合流地点において両車両が接触する、あるいは搭乗者が不安に感じる程度の距離に接近するか否かを判定する。
この判定は、第1の車両100と第2の車両300それぞれの速度および加速度、第1の車両100と第2の車両300それぞれの合流地点までの距離に基づいて行われる。
また、制御部550は、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度以上のとき、第2の車両300に対して走行制御を実行し、第1の車両100の通信信頼度が所定の信頼度以上であり、かつ、第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、第1の車両100に対して走行制御を実行する。
また、制御部550は、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、通信信頼度の高い方の車両に対して走行制御を実行する。
また、制御部550は、第1の車両100および第2の車両300のうち、通信信頼度が高い方の車両に対して走行制御を実行する。
また、制御部550は、第1の車両100と第2の車両300とが合流地点で干渉する可能性がある場合には、第1の車両100または第2の車両300に対し、干渉を防ぐための走行制御として加速抑制制御または減速制御を実行する。
より具体的には、制御部550は、通信信頼度判定部520において、第1の車両100の通信信頼度が高く、第2の車両300の通信信頼度が低いと判定された場合には、
図6に示すように、走行優先度に拘わらず、第1の車両100の運転制御部130に対して、通信部510を介して、減速を指示する制御信号を送信する。
つまり、制御部550が、通信信頼度が高い第1の車両100に減速を指示する制御信号を送信するのは、例えば、
図7に示すように、合流地点の手前で、第2の車両300に対して、送信する減速制御信号が、その送信タイミングで通信途絶となってしまい、その後、通信が回復しても、本来の送信タイミングで送信すべきであったパケットデータが未送信のまま留まること、および、通信の再接続に一定の時間を要することによって、減速制御信号の送信タイミングが遅延してしまうためである。
そのため、このような状態を避けるために、通信信頼度が高い第1の車両100に減速を指示する制御信号を送信する。
【0038】
<走行制御装置500の処理>
図8、9を用いて、本実施形態に係る走行制御装置500の処理について説明する。
なお、走行制御装置500の走行制御処理の説明に先立って、
図8を用いて、第1の車両100、第2の車両300に対する通信信頼度の算出処理について説明する。
【0039】
<走行制御装置500の通信信頼度算出処理>
図8に示すように、走行制御装置500の通信部510は、第1の基地局200あるいは第2の基地局400を介して、第1の車両100および第2の車両300からの情報を受信する受信処理を実行する(ステップS110)。
なお、通信部510における受信結果は、走行制御装置500の制御部550に出力される。
【0040】
走行制御装置500の制御部550は、通信部510からの受信結果情報からデータが受信できたか否かを判定する(ステップS120)。
走行制御装置500の制御部550は、通信部510からの受信結果情報からデータが受信できたと判定する場合(ステップS120の「YES」)には、通信信頼度のスコアを100とし(ステップS130)、走行制御装置500の制御部550は、通信部510からの受信結果情報からデータが受信できなかったと判定する場合(ステップS120の「NO」)には、元の通信信頼度のスコアから1を減じる処理(ステップS140)を実行する。
上記処理は、第1の所定時間(例えば100msec)間隔で繰り返し実行される。
【0041】
<走行制御装置500の走行制御処理>
図9に示すように、走行制御装置500の制御部550は、合流地点において車両同士の干渉の可能性があるか否かを判定する(ステップS210)。
【0042】
走行制御装置500の制御部550は、車両同士の干渉の可能性はないと判定する場合(ステップS210の「NO」)には、処理を元に戻して、待機モードに移行する。
【0043】
一方で、走行制御装置500の制御部550は、車両同士の干渉の可能性があると判定する場合(ステップS210の「YES」)には、通信信頼度判定部520から通信信頼度情報を取得する(ステップS220)。
そして、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の高い車両である第1の車両100の通信信頼度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS230)。
ここで、所定値とは、例えば、第2の所定時間(例えば、2sec)連続して、データを受信できていない場合の通信信頼度であり、下記、数1により算出される。
【0044】
【数1】
例えば、上記のように受信処理周期である第1の所定時間が100msecであり、第2の所定時間が2secである場合には、数1から、所定値は80となる。
ここで、第2の所定時間は、ハンドオーバで発生し得る通信切断時間(例えば、1秒)よりも長い時間に設定されており、第2の所定時間にわたって通信の途絶が継続している場合には、ハンドオーバによる一時的な通信途絶ではなく、回復見通しも不明と考えられるため通信信頼度を低と判定している。
なお、通信信頼度の判定方法は、上記に限られるものではなく、例えば、所定時間内における通信の途絶時間あるいは途絶回数の割合に基づいて判定してもよい。
【0045】
走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の高い車両である第1の車両100の通信信頼度が所定値以上であると判定する場合(ステップS230の「YES」)には、次いで、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の低い車両である第2の車両300の通信信頼度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS240)。
【0046】
そして、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の低い車両である第1の車両100の通信信頼度が所定値以上であると判定する場合(ステップS240の「YES」)には、第2の車両300に対して、干渉を防ぐための走行制御を実行する(ステップS260)。
【0047】
一方で、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の低い車両である第2の車両300の通信信頼度が所定値以上ではない、すなわち、第2の車両300の通信信頼度が所定値未満であると判定する場合(ステップS240の「NO」)には、第1の車両100に対して、干渉を防ぐための走行制御を実行する(ステップS250)。
【0048】
また、ステップS230において、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の高い車両である第1の車両100の通信信頼度が所定値以上ではない、すなわち、第1の車両100の通信信頼度が所定値未満であると判定する場合(ステップS230の「NO」)には、次いで、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の低い車両である第2の車両300の通信信頼度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS270)。
【0049】
そして、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の低い車両である第2の車両300の通信信頼度が所定値以上であると判定する場合(ステップS270の「YES」)には、第2の車両300に対して、干渉を防ぐための走行制御を実行する(ステップS260)。
【0050】
一方で、走行制御装置500の制御部550は、走行優先度の低い車両である第2の車両300の通信信頼度が所定値以上ではない、すなわち、第2の車両300の通信信頼度が所定値未満であると判定する場合(ステップS270の「NO」)には、通信信頼度の高い車両に対して、干渉を防ぐための走行制御を実行する(ステップS280)。
つまり、双方の車両の通信信頼度が所定値よりも低い場合には、双方の車両の通信信頼度を比較して通信信頼度が高い車両に対して、走行制御を実行する。
なお、上記の一連の処理は、繰り返し実行される。
【0051】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る走行制御装置500は、第1のレーンと第1のレーンよりも走行優先度の低い第2のレーンの合流区間において、第1のレーンを走行する第1の車両100あるいは第2のレーンを走行する第2の車両300に対して合流のための走行制御を無線通信によって行うものであって、第1の車両100との無線通信の通信信頼度および第2の車両300との無線通信の通信信頼度を判定する通信信頼度判定部520と、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度以上のとき、第2の車両300に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行い、第1の車両100の通信信頼度が所定の信頼度以上であり、かつ、第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、第1の車両に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行う制御部と、を備えている。
つまり、走行制御装置500は、通信信頼度が低い車両に対して、減速制御を実行しても、通信障害等により通信の途絶等が発生した場合には、正常な制御ができない可能性が高いことから、合流区間に入る前に、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度以上のとき、第2の車両300に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行い、第1の車両100の通信信頼度が所定の信頼度以上であり、かつ、第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、第1の車両に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行う。
そのため、通信品質が低下している状況下においても、合流に関する適切な走行制御を実行することができる。
【0052】
本実施形態に係る走行制御装置500の通信信頼度判定部520は、無線通信が複数の基地局を介して行われるものであるため、基地局のハンドオーバに必要な時間を超えて無線通信が切断されているとき、通信信頼度が所定の信頼度未満であると判定する。
つまり、車両に搭載された通信装置による、所謂、移動体無線通信では、複数の基地局を介して、ハンドオーバを行いながら通信が継続される。
そのため、基地局のハンドオーバに必要な時間を超えて無線通信が切断されているときには、合流制御の間に、通信が途絶する可能性があるため、上記のような場合には、通信信頼度が所定の信頼度未満であると判定する。
したがって、通信品質が低下している状況下においても、合流に関する適切な走行制御を実行することができる。
【0053】
本実施形態に係る走行制御装置500の制御部550は、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のとき、通信信頼度の高い方の車両に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行う。
つまり、制御部550は、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度未満のときには、走行優先度に関わらず、通信信頼度の高い方の車両に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行う。
そのため、通信品質が低下している状況下においても、合流に関する適切な走行制御を実行することができる。
【0054】
本実施形態に係る走行制御装置500の制御部550は、第1の車両100あるいは第2の車両300のうち、通信信頼度が高い方の車両に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行う。
つまり、制御部550は、第1の車両100の通信信頼度および第2の車両300の通信信頼度が所定の信頼度以上である場合においても、走行優先度に関わらず、通信信頼度の高い方の車両に対して、加速抑制制御または減速制御としての走行制御を行う。
そのため、通信品質が低下している状況下においても、合流に関する適切な走行制御を実行することができる。
【0055】
なお、走行制御装置500の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを走行制御装置500に読み込ませ、実行することによって本発明の走行制御装置500を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0056】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0057】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0058】
以上、この発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1;走行制御システム
100;第1の車両
110;車両センサ
120;駆動制御部
130;運転制御部
140;通信部
150;記憶部
200;第1の基地局
210;無線通信部
211;受信処理部
212;送信処理部
213;アンテナ
220;記憶部
230;制御部
300;第2の車両
400;第2の基地局
500;走行制御装置
510;通信部
520;通信信頼度判定部
530;通信制御部
540;記憶部
550;制御部