(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094563
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アルカリ性電解水生成用の電解水生成装置、酸性電解水生成用の電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240703BHJP
【FI】
C02F1/461 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211191
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 力矢
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DA03
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB18
4D061EB19
4D061EB29
4D061EB30
4D061ED12
4D061ED13
(57)【要約】
【課題】アルカリ性電解水および酸性電解水の一方の生成を簡素な構成で実現できる三室型の電解水生成装置を提供すること。
【解決手段】電解質水溶液が供給される中間室(21)と、前記中間室(21)と陽イオン交換膜(24)で仕切られ、アノード電極(25)を収容し、液体が供給されるアノード室(22)と、前記アノード室(22)から排出される液体を送る配管(35)と、前記中間室(21)と陽イオン交換膜(26)で仕切られ、前記アノード電極(25)との間に電圧が印加されるカソード電極(27)により、前記配管(35)を介して前記アノード室(22)から供給される前記液体に反応を生じさせてアルカリ性電解水を生成するカソード室(23)と、を備えることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質水溶液が供給される中間室と、
前記中間室と陽イオン交換膜で仕切られ、アノード電極を収容し、液体が供給されるアノード室と、
前記アノード室から排出される液体を送る配管と、
前記中間室と陽イオン交換膜で仕切られ、前記アノード電極との間に電圧が印加されるカソード電極により、前記配管を介して前記アノード室から供給される前記液体に反応を生じさせてアルカリ性電解水を生成するカソード室と、
を備えることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置。
【請求項2】
電解質水溶液が供給される中間室と、
前記中間室と陰イオン交換膜で仕切られ、アノード電極を収容し、液体が供給されるアノード室と、
前記アノード室から排出される液体を送る配管と、
前記中間室と陽イオン交換膜で仕切られ、前記アノード電極との間に電圧が印加されるカソード電極により、前記配管を介して前記アノード室から供給される前記液体に反応を生じさせてアルカリ性電解水を生成するカソード室と、
を備えることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電解水生成装置において、
前記電解質水溶液は、電解質として、ハロゲン化物を含むことを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電解水生成装置において、
前記電解質水溶液は、電解質として、ハロゲン化物を含まず、前記アノード室では、酸素ガスを含む液体が生成されることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の電解水生成装置において、
前記電解質水溶液は、電解質として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み、
前記アノード室に供給される液体は水であることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置。
【請求項6】
電解質水溶液が供給される中間室と、
前記中間室と陰イオン交換膜で仕切られ、カソード電極を収容し、液体が供給されるカソード室と、
前記カソード室から排出される液体を送る配管と、
前記中間室と陰イオン交換膜で仕切られ、前記カソード電極との間に電圧が印加されるアノード電極により、前記配管を介して前記カソード室から供給される前記液体に反応を生じさせて酸性電解水を生成するアノード室と、
を備えることを特徴とする酸性電解水生成用の電解水生成装置。
【請求項7】
電解質水溶液が供給される中間室と、
前記中間室と陽イオン交換膜で仕切られ、カソード電極を収容し、液体が供給されるカソード室と、
前記カソード室から排出される液体を送る配管と、
前記中間室と陰イオン交換膜で仕切られ、前記カソード電極との間に電圧が印加されるアノード電極により、前記配管を介して前記カソード室から供給される前記液体に反応を生じさせて酸性電解水を生成するアノード室と、
を備えることを特徴とする酸性電解水生成用の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性電解水生成用の電解水生成装置および酸性電解水生成用の電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性電解水とアルカリ性電解水を同時に生成できる三室型の電解水生成装置が広く用いられている。該装置では、アルカリ性電解水および酸性電解水の一方のみを利用する場合、利用しない側の電解水を中和してから排水する必要がある。そこで、三室型の電解水生成装置において、生成する電解水を酸性電解水とアルカリ性電解水の間で切り替えることができるものが開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電解水生成装置では、中間室に中間電極が設けられる。また、アノード室の出口とカソード室の入口が接続され、中間室に電解水水溶液が供給されるとともに、アノード室に原水が供給され、該原水がアノード室からカソード室へ送られ、カソード室から外部へ排出される。
【0005】
該装置では、酸性電解水を生成する場合、アノード電極と中間電極により中間室内の電解水水溶液を電気分解する一方、カソード電極に電圧を印加しない。これにより、アノード室で酸性電解水が生成され、酸性電解水がカソード室に送られ、カソード室からそのまま外部へ排出される。
【0006】
一方、該装置でアルカリ性電解水を生成する場合、アノード電極には電圧を印加せず、中間電極とカソード電極で中間室内の電解水水溶液を電気分解する。これにより、原水は、アノード室に供給され、そのままアノード室からカソード室に供給される。そして、カソード室にて、カソード電極により原水に反応が生じてアルカリ性電解水が生成され、カソード室からアルカリ性電解水が外部に排出される。
【0007】
特許文献1の電解水生成装置では、中間室に中間電極を設け、アノード電極、中間電極、カソード電極の電位を切り変える制御を行う必要がある。また、該装置では、中間電極の利用に伴い中間室で反応が生じ、中間室に水素ガス、塩素ガス、酸素ガスが発生するため、これらのガスの処理装置を設ける必要がある。従って、特許文献1の電解水生成装置は、構成が複雑となる。
【0008】
本発明は、アルカリ性電解水および酸性電解水の一方の電解水の生成を簡素な構成で実現できる三室型の電解水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば以下の通りである。以下では、図の符号を参照のために用いている。
(1)電解質水溶液が供給される中間室(21)と、
前記中間室(21)と陽イオン交換膜(24)で仕切られ、アノード電極(25)を収容し、液体が供給されるアノード室(22)と、
前記アノード室(22)から排出される液体を送る配管(35)と、
前記中間室(21)と陽イオン交換膜(26)で仕切られ、前記アノード電極(25)との間に電圧が印加されるカソード電極(27)により、前記配管(35)を介して前記アノード室(22)から供給される前記液体に反応を生じさせてアルカリ性電解水を生成するカソード室(23)と、
を備えることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置(1)。
(2)電解質水溶液が供給される中間室(21)と、
前記中間室(21)と陰イオン交換膜(24A)で仕切られ、アノード電極(25)を収容し、液体が供給されるアノード室(22)と、
前記アノード室(22)から排出される液体を送る配管(35)と、
前記中間室(21)と陽イオン交換膜(26)で仕切られ、前記アノード電極(25)との間に電圧が印加されるカソード電極(27)により、前記配管(35)を介して前記アノード室(22)から供給される前記液体に反応を生じさせてアルカリ性電解水を生成するカソード室(23)と、
を備えることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置(1A)。
(3)(2)に記載の電解水生成装置(1A)において、
前記電解質水溶液は、電解質として、ハロゲン化物を含むことを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置(1A)。
(4)(2)に記載の電解水生成装置(1A)において、
前記電解質水溶液は、電解質として、ハロゲン化物を含まず、前記アノード室では、酸素ガスを含む液体が生成されることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置(1A)。
(5)(1)または(2)に記載の電解水生成装置(1)(1A)において、
前記電解質水溶液は、電解質として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み、
前記アノード室(22)に供給される液体は水であることを特徴とするアルカリ性電解水生成用の電解水生成装置(1)(1A)。
(6)電解質水溶液が供給される中間室(21)と、
前記中間室(21)と陰イオン交換膜(26B)で仕切られ、カソード電極(27)を収容し、液体が供給されるカソード室(23)と、
前記カソード室(23)から排出される液体を送る配管(37)と、
前記中間室(21)と陰イオン交換膜(24A)で仕切られ、前記カソード電極(27)との間に電圧が印加されるアノード電極(25)により、前記配管(37)を介して前記カソード室(23)から供給される前記液体に反応を生じさせて酸性電解水を生成するアノード室(22)と、
を備えることを特徴とする酸性電解水生成用の電解水生成装置(1B)。
(7)電解質水溶液が供給される中間室(21)と、
前記中間室(21)と陽イオン交換膜(26)で仕切られ、カソード電極(27)を収容し、液体が供給されるカソード室(23)と、
前記カソード室(23)から排出される液体を送る配管(37)と、
前記中間室(21)と陰イオン交換膜(24A)で仕切られ、前記カソード電極(27)との間に電圧が印加されるアノード電極(25)により、前記配管(37)を介して前記カソード室(23)から供給される前記液体に反応を生じさせて酸性電解水を生成するアノード室(22)と、
を備えることを特徴とする酸性電解水生成用の電解水生成装置(1C)。
【0010】
本発明では、中間室に中間電極を設けることなく、アノード室の出口を配管を介してカソード室の入口に連結するという簡素な構成で、カソード室からのみ電解水(アルカリ性電解水)を得ることができる。本発明では、中間室に中間電極を設けることなく、カソード室の出口を配管を介してアノード室の入口に連結するという簡素な構成で、アノード室からのみ電解水(酸性電解水)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の電解水生成装置の構成を示す図である。
【
図2】第2実施形態の電解水生成装置の構成を示す図である。
【
図3】第3実施形態の電解水生成装置の構成を示す図である。
【
図4】第4実施形態の電解水生成装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して各実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、電解水生成装置1の構成を示す図である。
電解水生成装置1の三室型電解槽2は、内部が中間室21と、中間室21の一方の隣にあるアノード室22と、中間室21の他方の隣にあるカソード室23とに仕切られる。
【0013】
中間室21には、電解質水溶液が供給される。電解質水溶液として、例えばNaClが高濃度で溶解する塩水が用いられる。高濃度の塩水は、飽和食塩水であってもよい。なお、電解質水溶液は、電解質として、ハロゲン化物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。電解質水溶液は、電解質として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む。電解質水溶液として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸カルシウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウムまたはその混合物などの電解質が溶解するものが用いられてもよい。
【0014】
中間室21の入口および出口には、配管31が接続する。配管31は、中間室21との間で環状の経路を形成する。配管31において、中間室21の上流にはポンプ32が設けられる。ポンプ32が駆動することで、電解質水溶液が配管31により中間室21を経て循環する。配管31において、ポンプ32の上流には電解質タンク33が設けられる。中間室21から排出される電解質水溶液は、電気分解されたことにより電解質の濃度が低下している。電解質タンク33は、電解質の濃度が高い電解質水溶液、例えば飽和食塩水を貯留し、中間室21から排出された低濃度の電解質水溶液に、高濃度の電解質水溶液を供給する。また、電解質タンク33は、高濃度の電解質水溶液を供給する一方、循環する電解質水溶液の量を一定にすべく、余剰の電解質水溶液を循環経路外に排出する。
【0015】
アノード室22は、中間室21と陽イオン交換膜24で仕切られる。陽イオン交換膜24は、陽イオンを選択的に透過させ、陰イオンの透過を妨げる。アノード室22の入口には配管34が接続する。アノード室22には、配管34を介して液体が供給される。液体は、水道水やRO(Reverse Osmosis)水等の原水であってもよい。原水には、電解質が僅かに溶解していてもよく、電解質の濃度が例えば15ppm以下であってもよい。以下では、アノード室22に水が供給されるものとして説明する。アノード室22は、アノード電極25を収容する。アノード電極25は、例えば陽イオン交換膜24の背面に設置される。アノード電極25の材質は、アノード電極25自身が溶けださないものであればよく、例えば白金や炭素である。
【0016】
アノード電極25と後述のカソード電極27は、不図示の同一の電源に接続する。電源は、アノード電極25とカソード電極27との間に電圧を印加し、アノード電極25には正電圧を、カソード電極27には負電圧を印加する。
【0017】
アノード室22では、アノード電極25に陰イオンが引き寄せられる。ここで、中間室21の電解質水溶液中に電離する陰イオン(例えば塩素イオン)は、アノード電極25に引き寄せられるが、陽イオン交換膜24を通過できない。これにより、アノード室22では、アノード電極25により、周囲の水が酸化されて酸素ガスが生じる(以下の式(1))。
2H2O→O2+4H++4e-・・・式(1)
この酸素ガスが水に溶解し、酸素の溶解水が生じる。なお、酸素の溶解水とは、酸素ガスの気泡を含む水を包含するものとする。以上のように、アノード室22では、アノード電極25により水に反応が生じ、酸素ガスを含む水が生じる。
【0018】
アノード室22の出口とカソード室23の入口は、連結配管35で連結される。連結配管35は、アノード室22から酸素ガスを含む水をカソード室23に送る。
【0019】
カソード室23は、中間室21と陽イオン交換膜26で仕切られ、カソード電極27を収容する。カソード電極27は、例えば陽イオン交換膜26の背面に設置される。カソード室23は、カソード電極27により、アノード室22から供給される酸素ガスを含む液体に反応を生じさせてアルカリ性電解水を生成する。
【0020】
ここで、中間室21の電解質水溶液中に電離する陽イオンは、カソード電極27に引き寄せられ、陽イオン交換膜26を通過してカソード室23に流入する。電解質水溶液が塩水である場合、ナトリウムイオンがカソード室23に流入する。これにより、カソード電極27の周囲の水が還元されて水素ガスと水酸化物イオンが生じ、水酸化物イオンにナトリウムイオンが結びついて水酸化ナトリウム水溶液が生成される(以下の式(2))。
2H2O+2e-→H2+2OH-
Na++OH-→NaOH ・・・式(2)
このようにして、カソード室23には、アルカリ性電解水として、例えば水素ガスを含む水酸化ナトリウム水溶液が生成される。生成されたアルカリ性電解水は、配管36を介してカソード室23の外部に排出される。
【0021】
なお、上記の例(液体:水+電解質水溶液:塩水)では、中間室21からカソード室23にナトリウムイオンが流入することにより中間室21に塩素イオン(Cl-)が残存し、これが水素イオンと結びつくことで中間室21に塩酸(HCl)が生じる。このように、中間室21に電解質から電離する陰イオンが残存することに起因し、中間室21内の酸性度は高くなる。
【0022】
(効果)
電解水生成装置1は、アノード室22から電解水を外部に排出することなく、カソード室23からのみ電解水(アルカリ性電解水)を得ることができる。電解水生成装置1は、既存の三室型の電解水生成装置に対し、アノード室22の出口をカソード室23の入口に連結し、アノード室22に陽イオン交換膜24を設置したものである。電解水生成装置1は、背景技術の装置のように中間室21に中間電極を設ける必要がない。このように、電解水生成装置1は、既存の三室型の電解水生成装置と基本構成が同じ簡素な構成で実現でき、例えば既存の三室型の電解水生成装置を改修することで実現できる。
【0023】
(第2実施形態)
図2は、電解水生成装置1Aの構成を示す図である。
電解水生成装置1Aは、アノード室22に陰イオン交換膜24Aを設けた点が電解水生成装置1と異なる点であり、他の構成は電解水生成装置1と同様である。陰イオン交換膜24Aは、陰イオンを選択的に透過させ、陽イオンの透過を妨げる。本実施形態では、電解質から電離した陰イオンが、中間室21から陰イオン交換膜24Aを通過してアノード室22に流入する。
【0024】
電解質水溶液が塩水の場合、塩素イオンがアノード室22に流入し、アノード電極25に酸化されて塩素ガスが生じる。この塩素ガスが水と反応して次亜塩素酸と塩酸が生じる(式(3))。
2Cl-→Cl2+2e-
Cl2+H2O→HClO+HCl・・・式(3)
このように、電解質にハロゲン化物が含まれる電解質水溶液を利用する場合、中間室21からアノード室22に流入するハロゲン化物イオンがアノード電極25に酸化されて単体となった後に水と反応してハロゲン化水素が生じ、アノード室22に酸性電解水が生じる。
【0025】
なお、電解質としてハロゲン化物およびアルカリ(塩基:例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア)を含まない電解質水溶液(例えば電解質として乳酸カルシウムや炭酸ナトリウムを含む電解質水溶液)を利用する場合、アノード室22では、アノード電極25の周囲の水が酸化されて酸素ガスおよび水素イオンが生じる(上記式(1))。この水素イオンに、中間室21から陰イオン交換膜24Aを通過してアノード室22に流入する電解質水溶液中の陰イオンが結びつくことで、アノード室22に酸性電解水が生じる。電解質としてアルカリ(塩基)を含む電解質水溶液を利用する場合、アノード室22には、中間室21から陰イオン交換膜24Aを通過して水酸化物イオンが流入し、アノード電極25の周囲の水酸化物イオンが酸化されて酸素ガスが生じる(以下の式(4))。この場合、アノード室22には、酸素ガスを含む水が生じる。
4OH-→2H2O+O2+4e-・・・式(4)
【0026】
アノード室22に生成された酸性電解水(例えば次亜塩素酸と塩酸)または酸素ガスを含む水は、配管35を介してカソード室23に送られる。カソード室23では、例えばナトリウムイオンが中間室21から陽イオン交換膜26を通過して流入するとともに、カソード電極27の周囲の水が還元される。そして、上記式(2)と同様の反応により、カソード室23には、アルカリ性電解水として、例えば水素ガスを含む水酸化ナトリウム水溶液が生成される。なお、アノード室22からカソード室23に酸性電解水が供給される場合、カソード室23に流入する陽イオン(例えばナトリウムイオン)の一部は、供給される酸性電解水のハロゲン化物イオン(例えば塩素イオン)等の陰イオンと結びつく。
【0027】
(効果)
電解水生成装置1Aも、電解水生成装置1と同様に、中間室21に中間電極を設けることなく既存の三室型の電解水生成装置と基本構成が同じ簡素な構成で、アノード室22から酸性電解水または酸素ガスを含む水を外部に排出することなく、カソード室23からのみ電解水(アルカリ性電解水)を得ることができる。
【0028】
(第3実施形態)
図3は、電解水生成装置1Bの構成を示す図である。
電解水生成装置1Bは、外部から供給される水(液体)がカソード室23、アノード室22の順に通って外部へ排出される点と、カソード室23に陰イオン交換膜26Bが、アノード室22に陰イオン交換膜24Aが設置される点と、が電解水生成装置1と異なる点であり、他の構成は電解水生成装置1と同様である。
【0029】
電解水生成装置1Bでは、カソード室23の出口とアノード室22の入口が配管37で接続される。カソード室23では、中間室21の塩水(電解質水溶液)中に電離する陽イオンであるナトリウムイオンがカソード電極27に引き寄せられるが、陰イオン交換膜26Bを通過できない。これにより、カソード室23では、カソード電極27により、周囲の水が環元されて水素ガスが生じる(以下の式(5))。
2H2O+2e-→H2+2OH-・・・式(5)
この水素ガスが水に溶解し、水素の溶解水が生じる。なお、水素の溶解水とは、水素ガスの気泡を含む水を包含するものとする。以上のように、カソード室23では、カソード電極27により水(液体)に反応が生じ、水素ガスを含む水(液体)が生じる。水素ガスを含む水は、配管37によりアノード室22に送られる。
【0030】
アノード室22は、アノード電極25により、カソード室23から供給される水素ガスを含む水に反応を生じさせて酸性電解水を生成する。ここで、中間室21の塩水(電解質水溶液)中に電離する塩素イオン(陰イオン)は、アノード電極25に引き寄せられ、陰イオン交換膜24Aを通過してアノード室22に流入する。これにより、アノード電極25の周囲の水が酸化されて塩素ガスが生じ、この塩素ガスが水と反応して次亜塩素酸と塩酸が生じる(上記式(3))。このように、電解質にハロゲン化物や乳酸カルシウム等が含まれる電解質水溶液(電解質としてアルカリ(塩基)を含まない電解質水溶液)を利用する場合、アノード室22に酸性電解水が生じる。アノード室22からは酸性電解水が配管38を介してアノード室22の外部に排出される。
【0031】
なお、上記の例(液体:水+電解質水溶液:塩水)では、中間室21からアノード室22に塩素イオンが流入することにより中間室21にナトリウムイオン(Na+)が残存し、これが水酸化物イオン(OH-)と結びつくことで中間室21に水酸化ナトリウム(NaOH)が生じる。このように、中間室21に電解質から電離する陽イオンが残存することに起因し、中間室21内のアルカリ性度は高くなる。電解質水溶液は、アノード室22で酸性電解水が得られるものであれば適宜の物を利用でき、例えば塩水を含む上記各例のほか、電解質にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含まない塩酸等の電解質水溶液も利用できる。
【0032】
(効果)
電解水生成装置1Bは、中間室21に中間電極を設けることなく既存の三室型の電解水生成装置と基本構成が同じ簡素な構成で、カソード室23から水素ガスを含む水を外部に排出することなく、アノード室22からのみ電解水(酸性電解水)を得ることができる。
【0033】
(第4実施形態)
図4は、電解水生成装置1Cの構成を示す図である。
電解水生成装置1Cは、カソード室23に陽イオン交換膜26を設けた点が電解水生成装置1Bと異なる点であり、他の構成は電解水生成装置1Bと同様である。
【0034】
電解質にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む電解質水溶液を利用する場合、カソード電極27の周囲の水が還元されて水素ガスと水酸化物イオンが生じ、水酸化物イオンに、中間室21から陽イオン交換膜26を通過してカソード室23に流入するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンが結びついて、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物水溶液が生成される(例えば上記式(2))。このようにして、カソード室23に、水素ガスを含むアルカリ性電解水が生成され、配管37を介してアノード室22に送られる。
【0035】
一方、電解質にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含まない塩酸等の酸性の電解質水溶液を利用する場合、カソード室23には、中間室21から陽イオン交換膜26を通過して水素イオンが流入し、カソード電極27の周囲の水素イオンが環元されて水素ガスが生じる(以下の式(6))。
2H++2e-→H2・・・式(6)
この場合、カソード室23には水素ガスを含む水が生成され、配管37を介してアノード室22に送られる。
【0036】
アノード室22では、アノード電極25により、カソード室23から供給されるアルカリ性電解水または水素ガスを含む水に反応を生じさせて酸性電解水を生成し、配管38を介して外部に排出する。
【0037】
(効果)
電解水生成装置1Cも、中間室21に中間電極を設けることなく既存の三室型の電解水生成装置と基本構成が同じ簡素な構成で、カソード室23から水素ガスを含む水を外部に排出することなく、アノード室22からのみ電解水(酸性電解水)を得ることができる。
【0038】
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態および変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0039】
1、1A~1C…電解水生成装置、21…中間室、22…アノード室、23…カソード室、24…アノード室の陽イオン交換膜、24A…アノード室の陰イオン交換膜、26…カソード室の陽イオン交換膜、26B…カソード室の陰イオン交換膜、35、37…配管。