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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094566
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】屑飛散防止装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20240703BHJP
   A61C 1/08 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61C13/00 M
A61C1/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211194
(22)【出願日】2022-12-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】520191329
【氏名又は名称】株式会社オール・デンタル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一郎
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA07
4C052EE04
(57)【要約】
【課題】 加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を適切に防止すると共に加工者によって使用しやすい屑飛散防止装置を提供する。
【解決手段】 屑飛散防止装置1は、加工者による加工対象物100に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する装置であって、内側に加工者の手300,400による加工が可能な空間を有するカップ状の本体部10を備え、カップ状の本体部10の側面には、加工者の一方の手300の互いに異なる指を当該本体部10の外側から内側に差し込むことができる、縁から底に向かって延びる周方向に並んだ第1及び第2の切り込み11,12と、加工者の他方の手400の指を差し込むことができる、縁から底に向かって延びる第3の切り込み13とが設けられており、カップ状の本体部10の底には、当該本体部10の外側から内側に貫通する貫通孔が設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する屑飛散防止装置であって、
内側に前記加工者の手による加工が可能な空間を有するカップ状の本体部を備え、
前記カップ状の本体部の側面には、前記加工者の一方の手の互いに異なる指を当該本体部の外側から内側に差し込むことができる、縁から底に向かって延びる周方向に並んだ第1及び第2の切り込みと、前記加工者の他方の手の指を差し込むことができる、縁から底に向かって延びる第3の切り込みとが設けられており、
前記カップ状の本体部の底には、当該本体部の外側から内側に貫通する貫通孔が設けられている屑飛散防止装置。
【請求項2】
前記貫通孔に前記本体部の外側から連通する管状部を更に備える請求項1に記載の屑飛散防止装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の切り込みの深さは互いに異なる請求項1又は2に記載の屑飛散防止装置。
【請求項4】
前記第3の切り込みの先端の形状は段々になっている請求項1又は2に記載の屑飛散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する屑飛散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯又はクラウンといった歯科技工物をハンドピース等の加工用の器具で加工すると、切削屑又は粉塵といった屑が生じる。特許文献1には、歯科技工物の切削の際に生じた切削屑を収集するための装置が示されている。この装置には、切削屑を収集する受け皿が設けられており、受け皿に設けられた排出口から収集された切削屑が排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-158762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される受け皿には、転倒防止用台が設けられるとされている。あるいは、受け皿が脚部を有している等、自立可能な状態である場合には、転倒防止用台は不要であるとされている。このように特許文献1に示される装置は、特定の箇所に自立するように配置して用いられるものとなっている。
【0005】
しかしながら、歯科治療中に、歯科技工物を切削研磨して患者の口腔に合わせるために調整する場合等には、特許文献1に示される転倒防止用台を別途要する装置は、歯科医師等の加工者にとって使いやすいものではない。歯科治療を行うための歯科チェアの周りのスペースは限られているためである。また、自立可能な状態にしたとしても、加工中に装置に手が触れたりすることで外力がかかると、不安定になる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を適切に防止すると共に加工者によって使用しやすい屑飛散防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る屑飛散防止装置は、加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する屑飛散防止装置であって、内側に加工者の手による加工が可能な空間を有するカップ状の本体部を備え、カップ状の本体部の側面には、加工者の一方の手の互いに異なる指を当該本体部の外側から内側に差し込むことができる、縁から底に向かって延びる周方向に並んだ第1及び第2の切り込みと、加工者の他方の手の指を差し込むことができる、縁から底に向かって延びる第3の切り込みとが設けられており、カップ状の本体部の底には、当該本体部の外側から内側に貫通する貫通孔が設けられている。
【0008】
本発明に係る屑飛散防止装置は、加工者の手で支持されて、加工者が加工対象物の加工を行うことができる。カップ状の本体部の内側で作業が行われることで、加工によって生じる屑が本体部の内部に残り、屑の飛散を防止することができる。本体の内部に残った屑は、貫通孔から排出される。また、加工者が、本体部に設けられる切り込みに指を差し込むことで、容易に本体部を支持すると共に加工を行うことができる。このように、本発明に係る屑飛散防止装置は、加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を適切に防止すると共に加工者によって使用しやすいものである。
【0009】
屑飛散防止装置は、貫通孔に本体部の外側から連通する管状部を更に備えることとしてもよい。この構成によれば、加工によって生じる屑を管状部から排出させることができ、屑を容易に処理することができる。
【0010】
第1及び第2の切り込みの深さは互いに異なることとしてもよい。この構成によれば、第1及び第2の切り込みに差し込まれる加工者の一方の手の指をより安定させることができる。これによって、屑飛散防止装置を加工者によって更に使用しやすくすることができる。
【0011】
第3の切り込みの先端の形状は段々になっていることとしてもよい。この構成によれば、例えば、第3の切り込みに加工者の他方の手の複数の指が差し込まれる場合に差し込まれる加工者の他方の手の指をより安定させることができる。これによって、屑飛散防止装置を加工者によって更に使用しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を適切に防止すると共に加工者によって使用しやすい屑飛散防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の使用状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の左側からの斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の右側からの斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の左側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の右側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の平面図である。
図7】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の底面図である。
図8】本発明の実施形態に係る屑飛散防止装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面と共に本発明に係る屑飛散防止装置の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1に本実施形態に係る屑飛散防止装置1を示す。屑飛散防止装置1は、加工者(作業者)による加工対象物100に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する装置である。本実施形態では、屑飛散防止装置1は歯科治療の際に用いられる。加工対象物100は、義歯又はクラウンといった歯科技工物100である。加工者は、歯科医師又は歯科技工士である。加工は、歯科技工物100を整形するためにハンドピース等の加工用の器具200で切削又は研磨する加工である。歯科技工物100に対してこのような加工が行われると、切削屑又は粉塵といった屑が生じる。屑飛散防止装置1は、これらの屑が床等に飛散しないように保持する装置である。
【0016】
屑飛散防止装置1は、例えば、歯科医師が歯科チェアにおいて歯科治療中に歯科技工物100を切削研磨して患者の口腔に合わせるために調整する場合に使用される。図1に示すように、屑飛散防止装置1は、加工者の手によって保持された状態で使用される。そのため、装置を配置するスペースがない歯科チェアの近傍で加工を行う場合であっても、屑飛散防止装置1を使用することができる。
【0017】
なお、屑飛散防止装置1は、上記の使用の形態に限られるものではない。例えば、屑飛散防止装置1は、歯科治療以外の際に用いるものであってもよく、上記以外の加工対象物及び加工を対象としてもよい。また、屑飛散防止装置1が飛散を防止する屑は、加工によって生じるものであれば、切削屑又は粉塵以外のものであってもよい。
【0018】
引き続いて、本実施形態に係る屑飛散防止装置1の構成を説明する。なお、以下の説明における屑飛散防止装置1の上下は図1に示す状態を基準とする。また、屑飛散防止装置1の左右は図1において加工者の左手300が接触する側を左、加工者の右手400が接触する側を右とする。
【0019】
図2及び図3はそれぞれ、左側及び右側からの屑飛散防止装置1の斜視図である。図4及び図5はそれぞれ、左側及び右側からの屑飛散防止装置1の側面図である。図6は、上側からの屑飛散防止装置1の平面図である。図7は、下側からの屑飛散防止装置1の底面図である。図8は、下側からの屑飛散防止装置1の底面図である。図7は、下側からの屑飛散防止装置1の底面図である。図8は、図6のA-A線での屑飛散防止装置1の断面図である。
【0020】
屑飛散防止装置1は、本体部10と、管状部20とを備える。本体部10は、内側に加工者の手による加工が可能な空間を有するカップ状の部材である。本体部10の形状は、例えば、概ね円周状の側面(周壁)を有し底面が半球状となっている形状である。但し、本体部10の形状は、必ずしもこの形状である必要はなく、内側に加工者の手による加工が可能な空間を有するカップ状であればよい。図1に示すように、屑飛散防止装置1は、本体部10の大きな開口の側が上を向き、底面が下に位置する状態で用いられる。本体部10の大きさは、加工対象の歯科技工物100の大きさ及び加工者の手の大きさを考慮して決められればよい。例えば、本体部10の大きさは、総義歯がすっぽりと入り加工作業がしやすいものとされる。
【0021】
カップ状の本体部10の側面には、加工者が本体部10の内側で加工を行えるように、加工者の指を本体部10の外側から内側に差し込むことができる複数の切り込み(切り欠き、溝)11~13が設けられている。切り込み11~13は、本体部10の縁(上部)から底に向かって延びるスリット状となっている。具体的には、本体部10の側面には、加工者の一方の手の互いに異なる指を差し込むことができる周方向に並んだ第1及び第2の切り込み11,12と、加工者の他方の手の指を差し込むことができる第3の切り込み13とが設けられている。なお、切り込み11~13への指の差し込みは、必ずしも本体部10の外側から行われる必要はなく、本体部10の上部から切り込み11~13に指を入れる形で行われてもよい。
【0022】
図1に示すように、本実施形態では、本体部10の内側において、左手300の指によって加工対象の歯科技工物100が把持される。また、本体部10の内側において、右手400の指によってハンドピース等の加工用の器具200が把持される。ハンドピースの把持は、一般的にはペングリップという持ち方で行われる。ペングリップでは、親指、人差指及び中指の3本の指が器具200を把持し、残りの薬指及び小指が添えられる。なお、加工用の器具200は、歯科技工物100の加工が可能なものであれば、ハンドピース以外の任意のものでよい。また、加工用の器具200の把持は、ペングリップ以外で行われてもよい。
【0023】
本実施形態では、第1及び第2の切り込み11,12は、図1に示すように加工者の左手300の指を差し込むためのものである。具体的には、第1の切り込み11は、左手300の、縦方向(縁から底に向かう方向)に並べた人差指及び中指を並べて差し込むためのものである。但し、加工対象の歯科技工物100の大きさ等によっては、第1の切り込み11には、人差指のみが差し込まれてもよく、又は人差指、中指及び薬指の3本の指が差し込まれてもよい。第2の切り込み12は、左手300の親指を差し込むためのものである。第3の切り込み13は、図1に示すように加工者の右手400の指を差し込むためのものである。具体的には、第3の切り込み13は、右手400の、周方向に並べた複数の指(例えば、小指、薬指及び中指)を差し込むためのものである。本体部10を上部から見ると、本体部10の側面は、3つの切り込み11~13で分断された形となっている。
【0024】
3つの切り込み11~13が設けられる位置は、加工者による加工のしやすさ及び屑飛散の防止のしやすさ等を考慮して定められればよい。3つの切り込み11~13の周方向の間隔(本体部10を上部から見たときの3つの切り込み11~13の間隔)については、第1の切り込み11と第2の切り込み12との間が最も狭く、次に広いのが第2の切り込み12と第3の切り込み13との間であり、最も広いのが第3の切り込み13と第1の切り込み11との間となっている。図6に示すように、本体部10を上部から見たとき、本体部10の中心からの第3の切り込み13の中心の方向は時計でいうと4時の方向、第1及び第2の切り込み11,12の間の本体部10の側面の方向は8時の方向となっている。第1及び第2の切り込み11,12の間の側面は、第2の切り込み12と第3の切り込み13との間の側面、及び第3の切り込み13と第1の切り込み11との間の側面と比べて、厚くなっている。これにより、最も狭い第1及び第2の切り込み11,12の間の側面について強度を十分なものとしている。
【0025】
各切り込み11~13の幅は、上記の指の差し込み(挿抜)が可能であり、かつ上記の指に応じたものとなっている。また、第2の切り込み12の幅は、左手300の親指がスムーズに抜き差し可能な程度となっている。また、加工によって生じる屑が本体部10の外側に飛散しないように、切り込み11~13に指を入れた際の、切り込み11~13の側面と指との隙間がなるべく小さくなるようにしてもよい。上記のように第3の切り込み13は、周方向に並べた複数の指を差し込むことを想定しているため、第3の切り込み13の幅は第1及び第2の切り込み11,12の幅よりも広い。また、第3の切り込み13の幅は、本体部10の縁(上部)側がやや広くなっている。これは、加工用の器具200の取り回しを容易にするためである。なお、各切り込み11~13は、加工中に指を傾ける等の動きが可能な程度の幅となっている。
【0026】
各切り込み11~13の深さは、差し込まれる指が切り込み11~13に全て収まるものとなっている。即ち、指が切り込み11~13に差し込まれた際に指の上端(側面)が、本体部10の切り込み11~13が設けられていない部分の縁よりも下になる。このように本体部10の縁を高くすることで、加工で生じた屑が本体部10の上部から飛散することを抑制できる。上記のように第1の切り込み11は、縦方向に並べた複数の指を挿入することを想定しているため、第1の切り込み11の深さは第2の切り込み12よりも深い。なお、各切り込み11~13の深さは、差し込まれる指の一部が切り込み11~13に収まるものであってもよく、必ずしも、差し込まれる指が全て収まるものとなっていなくてもよい。
【0027】
また、第3の切り込み13の先端の形状は段々になっている。即ち、第3の切り込み13の先端の縁は、波打ったような形状となっている。これは、第3の切り込み13に差し込まれる複数の指の形状にあわせたものである。例えば、加入者の右手でハンドピース等の加工用の器具をペングリップで持ったときの指(例えば、上述したように第3の切り込み13に差し込まれる小指、薬指及び中指)を、第3の切り込み13の先端(縁)に沿わせるためである。
【0028】
また、左手300の指が差し込まれる第1及び第2の切り込み11,12の間の周方向における間隔は、それぞれの切り込み11,12に差し込まれた指で、即ち、親指と人差指及び中指とで、歯科技工物100を把持できるものとする。このような左手300による歯科技工物100の把持とあわせて、第1及び第2の切り込み11,12の間の本体部10の側面が屑飛散防止装置1の持ち手のような状態となって、屑飛散防止装置1自体が保持される。但し、歯科技工物100の把持、及び屑飛散防止装置1の保持のための構成は、上記以外のものであってもよい。
【0029】
図3図6及び図8に示すように、カップ状の本体部10の底には、当該本体部10の外側から内側に貫通する貫通孔14が設けられている。貫通孔14は、本体部10の内部における歯科技工物100に対する加工によって生じた屑を、本体部10の内部から外部に排出するための孔である。図6に示すように、貫通孔14は、本体部10の底の中央に設けられている。貫通孔14は、屑がスムーズに排出される程度の大きさの丸い孔である。なお、本体部10の底に設けられる貫通孔14の位置、大きさ及び形状は、屑の排出との目的に沿うものであれば必ずしも上記のものでなくてもよい。
【0030】
管状部20は、本体部10の貫通孔14に本体部10の外側から連通する管状の部材である。管状部20は、本体部10の内部から貫通孔14に入った屑を屑飛散防止装置1の外部に排出するための部材である。管状部20は、本体部10の外側の貫通孔14の部分に本体部10と一体に形成されている。但し、管状部20は、本体部10とは別に形成されて、本体部10に接続される構成であってもよい。例えば、管状部20は、本体部10の底から延びる足状の部材である。管状部20は、両端に開口を有する孔を有している。管状部20の孔の一方の開口は、本体部10の貫通孔14の外側の開口に連通している。管状部20の孔のもう一方の開口は、屑飛散防止装置1の外側に向けられている。
【0031】
管状部20には、本体部10の内側で生じた屑を吸引して回収するバキュームが接続される。図1では、管状部20にバキューム500が接続されている。バキューム500で吸引することで、本体部10の内側で生じた屑が本体部10の貫通孔14及び管状部20を通ってバキューム500に回収される。
【0032】
屑飛散防止装置1には、カップ状の本体部10の貫通孔14の部分、及び管状部20の内部に、加工対象物の通過を防止するトラップ15が設けられている。トラップ15は、本体部10の貫通孔14及び管状部20の孔の全体にわたって設けられている部材である。トラップ15は、孔が延びる方向から見ると十字状である。加工中に歯科技工物100を本体部10に落としてしまったとしても、トラップ15が、歯科技工物100が屑飛散防止装置1の外部に排出されることを防止する。即ち、トラップ15は、目皿の役割を果たす。
【0033】
なお、トラップ15の形状は、必ずしも上記の形状(十字状)である必要はなく、歯科技工物100の形状等に応じて、歯科技工物100の屑飛散防止装置1の外部への排出を防止できるものであればよい。また、トラップ15が設けられる箇所は、カップ状の本体部10の貫通孔14の部分、及び管状部20の内部全体である必要はなく、歯科技工物100の屑飛散防止装置1の外部への排出を防止できる箇所であれば、上記の何れかの箇所であればよい。
【0034】
本体部10と管状部20とを備える屑飛散防止装置1は、全体として概ね漏斗型の形状となっている。本体部10と管状部20との材料としては、例えば、使用時に変形しにくく、更にオートクレーブによる滅菌処理を行っても熱変形しにくい材料を用いる。滅菌処理を可能にすることで、屑飛散防止装置1を繰り返し使用することができる。また、本体部10と管状部20との材料としては、透明の材料を用いてもよい。屑飛散防止装置1を透明として光を通すようにすれば、加工作業時の明るさを確保し、加工者が見やすい状態で加工を行うことができる。但し、本体部10と管状部20とには、透明以外の色を着色してもよい。具体的には、材料としてはポリメチルペンテンを用いることができる。但し、これ以外の材料が用いられてもよい。また、本体部10と管状部20とには、抗菌加工がされていてもよい。また、本体部10と管状部20と別々の材料で構成してもよい。以上が、本実施形態に係る屑飛散防止装置1の構成である。
【0035】
引き続いて、本実施形態に係る屑飛散防止装置1の使用方法を説明する。加工者は、まず、バキューム500に屑飛散防止装置1の管状部20を差し込んで接続する。続いて、加工者は、左手300の親指と左手300の人差指及び中指とで歯科技工物100を把持した状態で、本体部10の上部から、第1の切り込み11に左手300の人差指及び中指を入れ、同時に第2の切り込み12に左手300の親指を入れる。又は、加工者は、第1の切り込み11に左手300の人差指及び中指を入れた後に、右手400を使って上部から本体部10の内側に歯科技工物100を入れて、上記と同様に各指で歯科技工物100を把持する。
【0036】
これで、左手300の親指、人差指及び中指の先端部が、本体部10の内側の空間に位置した状態となる。同時に左手300の親指の付け根と、人差指及び中指の付け根とで、本体部10の第1の切り込み11と第2の切り込み12との間の側面を挟んだ状態となる。即ち、本体部10の第1の切り込み11と第2の切り込み12との間の側面が、屑飛散防止装置1の持ち手のような状態となる。左手300の薬指及び小指は、本体部10の外側の側面に自然にそえられる。
【0037】
続いて、加工者は、本体部10の上部から、第3の切り込み13にハンドピース等の加工用の器具200とそれを把持する右手400の指を入れる。これで、加工用の器具200の先端が、本体部10の内側の空間に位置した状態となる。
【0038】
加工者は、本体部10の上部から内側の空間を見ながら、バキュームを駆動した状態で歯科技工物100を加工用の器具200で加工する。加工時に発生する屑及び加工用の器具200から噴射される水は、本体部10の内壁を伝って底に落ち、本体部10の貫通孔14及び管状部20通ってバキュームに吸い込まれる。この時、第1の切り込み11と第2の切り込み12との間の側面は、左手の指の間からの、屑及び噴射水の飛散を防止する役割も果たす。なお、加工用の器具200には、注水系統を有するものがあり、使用中に水を噴射することで粉塵等の飛散を抑えるようになっている。なお、加工用の器具200は、水を噴射する機能を有していなくてもよい。
【0039】
屑飛散防止装置1の使用後、即ち、歯科技工物100の加工終了後は、屑飛散防止装置1に付着した屑及び水分を拭き取ったり、オートクレーブによる滅菌処理を行ったりする。この後処理によって、再度、別の歯科技工物100の加工時に屑飛散防止装置1を使用することができる。以上が、本実施形態に係る屑飛散防止装置1の使用方法である。
【0040】
本実施形態では、屑飛散防止装置1が加工者の手で支持されて、加工者が歯科技工物100の加工を行うことができる。従って、屑飛散防止装置1を特定の箇所に設置する必要がないため、装置を配置するスペースがない歯科チェアの近傍で加工を行う場合等であっても使用することができる。カップ状の本体部10の内側で作業が行われることで、加工によって生じる屑が、本体部10の側面によってブロックされて本体部の内部に残り、屑の飛散を防止することができる。本体の内部に残った屑は、貫通孔14から排出される。また、加工用の器具200から水が噴射される場合、屑と同様に水の飛散も防止することができる。なお、歯科技工物100を加工している際には、第1の切り込み11と第2の切り込み12との間の側面が、左手の指の間からの屑及び噴射水の飛散を防止し、更に加工者の指及び加工用の器具200が、切り込み11~13を塞ぐこととなり、切り込み11~13からの屑及び噴射水の飛散も抑制される。
【0041】
また、加工者が、本体部10に設けられる切り込み11~13に指を差し込むことで、容易に本体部10を支持すると共に加工を行うことができる。具体的には、第1及び第2の切り込み11,12に左手300の指を入れて歯科技工物100を把持すると、必然的に左手300の指の付け根で、本体部10の第1及び第2の切り込み11,12の間の側面を挟み込む形となる。これにより、歯科技工物100を左手300で持つことと、本体部10を左手300で固定することと、左手300の位置を安定させることとが同時に可能となる。その結果、歯科技工物100の加工中に屑飛散防止装置1全体がぐらつくこと、及び左手300の位置が不安定になることを防ぐことができる。また、第1及び第2の切り込み11,12に入っていない薬指及び小指は、本体部10の外側の側面に自然にそえられて、本体部10を支える。これにより、屑飛散防止装置1全体のぐらつきを更に防げると共に左手300の位置も更に安定する。
【0042】
また、歯科技工物100の加工作業中、加工者の指は切り込み11~13の縁で支えられた(縁に寄りかかった)状態となる。よって、加工者は手の位置を一層安定させて加工作業を行うことができる。このように、本実施形態によれば、加工者による歯科技工物100に対する加工によって生じる屑の飛散を適切に防止すると共に加工者によって使用しやすい屑飛散防止装置1を提供することができる。
【0043】
また、本実施形態のように、屑飛散防止装置1は、貫通孔14に本体部10の外側から連通する管状部20を更に備えることとしてもよい。この構成によれば、加工によって生じる屑を管状部20から排出させることができ、屑を容易に処理することができる。例えば、上述したように管状部20を備えることで、屑飛散防止装置1を容易にバキューム500に接続することができる。但し、屑飛散防止装置1は、必ずしも管状部20を備えていなくてもよく、貫通孔14から屑が排出できる構成となっていればよい。
【0044】
また、本実施形態のように、第1及び第2の切り込み11,12の深さは互いに異なることとしてもよい。上述したように第1及び第2の切り込み11,12には、互いに異なる指が差し込まれる。そのため、この構成によれば、第1及び第2の切り込み11,12に差し込まれる加工者の一方の手の指をより安定させることができる。これによって、屑飛散防止装置1を加工者によって更に使用しやすくすることができる。但し、第1及び第2の切り込み11,12の深さは同一であってもよい。
【0045】
また、本実施形態のように、第3の切り込み13の先端の形状は段々になっていることとしてもよい。例えば、上述したように第3の切り込み13に差し込まれる指の数及び位置に応じて、指の形にあうような段々が設けられていてもよい。この構成によれば、例えば、上述したように第3の切り込み13に加工者の他方の手の複数の指が差し込まれる場合に差し込まれる加工者の他方の手の指をより安定させることができる。これによって、屑飛散防止装置1を加工者によって更に使用しやすくすることができる。但し、第3の切り込み13の先端の形状は上記である必要はない。
【0046】
また、本体部10における切り込み11~13の周方向の位置を本実施形態のようにする(第3の切り込み13の中心の方向を4時の方向、第1及び第2の切り込み11,12の間の本体部10の側面の方向を8時の方向とする)ことで、加工者は適度に脇を締めて安定した体勢で加工作業を行うことができる。
【0047】
また、本体部10がカップ型であるため、開口している上部から容易に清掃が可能である。また、本実施形態のように、本体部10の底面を半球状とし貫通孔14に向かって傾斜した構成とすることで、屑及び水がスムーズに貫通孔14に落ちてバキュームに吸い込まれる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1及び第2の切り込み11,12は左手300の指を入れ、第3の切り込み13は右手400の指を入れる構成とした。これは、右利きの加工者が加工作業を行うことを想定したものである。しかしながら、左利きの加工者が加工作業を行うことを想定して、切り込み11~13の位置を左右反転させてもよい。即ち、第1及び第2の切り込み11,12を右手の指を入れ、第3の切り込み13を左手の指を入れる構成としてもよい。その場合、切り込み11~13の位置及び大きさ等は、それに応じたものとすればよい。
【0049】
また、切り込み11~13がない状態のカップ状の部材を用意し、当該部材からカッター等で切り込み11~13の部分を切り取って切り込み11~13を生成して本体部10としてもよい。また、その場合の部材には、切り込み11~13を生成する位置に切り取り線を作っておいてもよい。
【0050】
本開示の屑飛散防止装置は、以下の構成を有する。
[1] 加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する屑飛散防止装置であって、
内側に前記加工者の手による加工が可能な空間を有するカップ状の本体部を備え、
前記カップ状の本体部の側面には、前記加工者の一方の手の互いに異なる指を当該本体部の外側から内側に差し込むことができる、縁から底に向かって延びる周方向に並んだ第1及び第2の切り込みと、前記加工者の他方の手の指を差し込むことができる、縁から底に向かって延びる第3の切り込みとが設けられており、
前記カップ状の本体部の底には、当該本体部の外側から内側に貫通する貫通孔が設けられている屑飛散防止装置。
[2] 前記貫通孔に前記本体部の外側から連通する管状部を更に備える[1]に記載の屑飛散防止装置。
[3] 前記第1及び第2の切り込みの深さは互いに異なる[1]又は[2]に記載の屑飛散防止装置。
[4] 前記第3の切り込みの先端の形状は段々になっている[1]~[3]の何れか一項に記載の屑飛散防止装置。
【符号の説明】
【0051】
1…屑飛散防止装置、10…本体部、11…第1の切り込み、12…第2の切り込み、13…第3の切り込み、14…貫通孔、15…トラップ、20…管状部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工者による加工対象物に対する加工によって生じる屑の飛散を防止する屑飛散防止装置であって、
内側に前記加工者の手による加工が可能な空間を有するカップ状の本体部を備え、
前記カップ状の本体部の側面には、前記加工者の一方の手の互いに異なる指を当該本体部の外側から内側に差し込むことができる、縁から底に向かって延びる周方向に並んだ第1及び第2の切り込みと、前記加工者の他方の手の指を差し込むことができる、縁から底に向かって延びる第3の切り込みとが設けられており、
前記カップ状の本体部の底には、当該本体部の外側から内側に貫通する貫通孔が設けられている屑飛散防止装置。
【請求項2】
前記貫通孔に前記本体部の外側から連通する管状部を更に備える請求項1に記載の屑飛散防止装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の切り込みの深さは互いに異なる請求項1又は2に記載の屑飛散防止装置。
【請求項4】
前記第3の切り込みの先端の形状は段々になっている請求項1又は2に記載の屑飛散防止装置。
【請求項5】
前記第1の切り込みの深さは、切り込みが延びる方向に並べた複数の指が収まるものである請求項1又は2に記載の屑飛散防止装置。