(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094572
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】シール材用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20240703BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20240703BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/55
C09K3/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211203
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】大住 直樹
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA03
4H017AB12
4H017AD03
4J002BD121
4J002BD152
4J002EY016
4J002FD012
4J002FD146
4J002GJ02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】プラズマを用いる半導体製造装置に用いることができるシール材を形成するためのシール材用ゴム組成物であって、優れた帯電防止性が発揮されるシール材用ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】架橋性ゴム成分と、ドナー・アクセプター型分子化合物とを含む、シール材用ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ゴム成分と、ドナー・アクセプター型分子化合物とを含む、シール材用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ドナー・アクセプター型分子化合物は、有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物である、請求項1に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項3】
前記有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物は、下記式(1):
【化1】
〔式中、
R1およびR2は互いに独立して、水素原子または-CO-R7を表し、
R1およびR2のうち少なくとも一方は-CO-R7を表し、
R7は、炭素数11~21のアルキル基を表し、
R3およびR4は互いに独立して、CH
3、C
2H
5、HOCH
2、HOC
2H
4またはHOCH
2CH(CH
3)を表し、
R5は、C
2H
4またはC
3H
6を表し、
R6は、炭素数11~21のアルキル基を表す〕
で表される、請求項2に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項4】
前記架橋性ゴム成分100質量部に対して0.05~30質量部の前記ドナー・アクセプター型分子化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項5】
前記架橋性ゴム成分は、パーフルオロエラストマーおよびフッ素ゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記パーフルオロエラストマーは架橋部位モノマー由来の構成単位を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項6】
前記パーフルオロエラストマーの架橋系は、パーオキサイド架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系およびビスフェノール架橋系からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項7】
フィラーをさらに含み、前記フィラーはポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項8】
フィラーをさらに含み、前記フィラーはポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項4に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項9】
フィラーをさらに含み、前記フィラーはポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項5に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項10】
架橋後のシール材用ゴム組成物の表面電位[V]は-2000V以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項11】
架橋後のシール材用ゴム組成物の表面電位[V]は-2000V以上である、請求項4に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項12】
架橋後のシール材用ゴム組成物の表面電位[V]は-2000V以上である、請求項5に記載のシール材用ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載のシール材用ゴム組成物の架橋物を含む、シール材。
【請求項14】
請求項5に記載のシール材用ゴム組成物の架橋物を含む、シール材。
【請求項15】
請求項13に記載のシール材を含む、Oリング。
【請求項16】
請求項14に記載のシール材を含む、Oリング。
【請求項17】
請求項13に記載のシール材を含む、半導体製造装置用部材。
【請求項18】
請求項14に記載のシール材を含む、半導体製造装置用部材。
【請求項19】
請求項13に記載のシール材を含む、半導体製造装置用シール材。
【請求項20】
請求項14に記載のシール材を含む、半導体製造装置用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシール材用ゴム組成物に関し、さらにはシール材、Oリング、半導体用部材および半導体用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に用いるシール材として、帯電防止性を有するシール材が提案されている(特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-137977号公報
【特許文献2】特開2022-1642号公報
【特許文献3】特表2016-516880号公報
【特許文献4】特開2020-128544号公報
【特許文献5】特開2020-125491号公報
【特許文献6】特開2019-85475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマが使用される半導体製造装置において使用されるシール材には、パーフルオロエラストマー(FFKM)やフッ素ゴム(FKM)が用いられる場合が多い。一方、パーフルオロエラストマー(FFKM)やフッ素ゴム(FKM)は帯電し易く、シール材の製造プロセスにおいて埃等を集塵し易い傾向にあり、結果、半導体製造工程においてパーティクルの要因になる場合がある。
【0005】
特許文献1に記載のアセチレンブラックやケッチェンブラック等の導電性添加剤を配合したゴム組成物は、導電性添加剤の分散状態により電気特性が安定せず、また、充填によって強度が上がりすぎることや、プラズマ環境下でのエッチングによりカーボンが析出しやすいことから、クリーン度を要求される半導体製造装置の用途には使用しにくい傾向にある。
特許文献2~6には、シール材に用いる帯電防止剤としてイオン性液体が提案されているものの、イオン性液体はシール材に含まれるゴム成分の種類によっては帯電防止性が発揮されにくい場合がある。
【0006】
本発明の目的は、プラズマを用いる半導体製造装置に用いることができるシール材を形成するためのシール材用ゴム組成物であって、優れた帯電防止性が発揮されるシール材用ゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のシール材用ゴム組成物を提供する。
[1] 架橋性ゴム成分と、ドナー・アクセプター型分子化合物とを含む、シール材用ゴム組成物。
[2] 前記ドナー・アクセプター型分子化合物は、有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物である、[1]に記載のシール材用ゴム組成物。
[3] 前記有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物は、下記式(1):
【化1】
〔式中、
R1およびR2は互いに独立して、水素原子または-CO-R7を表し、
R1およびR2のうち少なくとも一方は-CO-R7を表し、
R7は、炭素数11~21のアルキル基を表し、
R3およびR4は互いに独立して、CH
3、C
2H
5、HOCH
2、HOC
2H
4またはHOCH
2CH(CH
3)を表し、
R5は、C
2H
4またはC
3H
6を表し、
R6は、炭素数11~21のアルキル基を表す〕
で表される、[2]に記載のシール材用ゴム組成物。
[4] 前記架橋性ゴム成分100質量部に対して0.05~30質量部の前記ドナー・アクセプター型分子化合物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のシール材用ゴム組成物。
[5] 前記架橋性ゴム成分は、パーフルオロエラストマーおよびフッ素ゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記パーフルオロエラストマーは架橋部位モノマー由来の構成単位を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のシール材用ゴム組成物。
[6] 前記パーフルオロエラストマーの架橋系は、パーオキサイド架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系およびビスフェノール架橋系からなる群から選択される少なくとも1種である、[5]に記載のシール材用ゴム組成物。
[7] フィラーをさらに含み、前記フィラーはポリテトラフルオロエチレンを含む、[1]~[6]のいずれかに記載のシール材用ゴム組成物。
[8] 架橋後のシール材用ゴム組成物の表面電位[V]は-2000V以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のシール材用ゴム組成物。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載のシール材用ゴム組成物の架橋物を含む、シール材。
[10] [9]に記載のシール材を含む、Oリング。
[11] [9]に記載のシール材を含む、半導体製造装置用部材。
[12] [9]に記載のシール材を含む、半導体製造装置用シール材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラズマを用いる半導体製造装置に用いることができるシール材を形成するためのシール材用ゴム組成物であって、優れた帯電防止性が発揮されるシール材用ゴム組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<シール材用ゴム組成物>
本発明のシール材用ゴム組成物は、架橋性ゴム成分とドナー・アクセプター型分子化合物とを含む。シール材用ゴム組成物は、ドナー・アクセプター型分子化合物を含むことにより帯電防止性を発揮することができる。
【0010】
(1)ドナー・アクセプター型分子化合物
ドナー・アクセプター型分子化合物は、その近傍において発生した正(+)の電荷、および負(-)の電荷のそれぞれについてドナー・アクセプター的に電荷のやり取りを行うことができる。本発明のシール材用ゴム組成物は、ドナー・アクセプター型分子化合物を含むことにより、シール材に生じた電荷を中和しつつ消去することができるため、優れた帯電防止性を発揮することができる。また、ドナー・アクセプター型分子化合物は、イオン性液体や導電性添加剤のような帯電防止剤では良好な帯電防止性を得るのが難しいとされてきたパーフルオロエラストマー(FFKM)を架橋性ゴム成分として含むシール材組成物において、優れた帯電防止性を発揮することができる。
【0011】
本発明に用いるドナー・アクセプター型分子化合物は、帯電防止性の観点から好ましくは有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物である。有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物は、正(+)電荷に対応し消去する有機ホウ素系ドナー成分と負(-)の帯電荷に対応し消去する有機窒素系アクセプター成分とから構成されたドナー・アクセプター機能を有することができる。
【0012】
有機ホウ素系ドナー成分は、例えば半極性ホウ素化合物であってよく、好ましくは分子中に炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を少なくとも1つ有する半極性ホウ素化合物である。半極性ホウ素化合物が少なくとも1つの炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を有することにより、架橋性ゴム成分のマトリックスと多重的にファンデルワールス力が発揮され、シール材の帯電防止性が長期にわたり発揮され易くなる傾向にある。ドナー・アクセプター型分子化合物は、上記半極性ホウ素化合物を1種または2種以上含んでいてよい。
【0013】
有機ホウ素系ドナー成分は、例えば隣接ヒドロキシ基を残存している状態の多価アルコールと直鎖型脂肪酸との間のエステルの残存している隣接ヒドロキシ基に対してホウ酸若しくは低級アルコールのホウ酸エステルを反応させるか、隣接ヒドロキシ基を有する直鎖型炭化水素化合物に対して、ホウ酸若しくは低級アルコールのホウ酸エステルを反応させるか、または、隣接ヒドロキシ基を有する3価以上の多価アルコールとホウ酸若しくは低級アルコールのホウ酸エステルを反応させた後に残存しているヒドロキシ基に対して、直鎖型脂肪酸を反応させることにより得られるものであることができる。
【0014】
多価アルコールまたは多価アルコールの脂肪酸部分エステルとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等のポリグリセリン、炭素数14~24の1,2-アルカンジオール、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のポリペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレンソルビタン等の多価アルコール、グリセリン高級脂肪酸モノエステル、ジグリセリン高級脂肪酸モノエステル、トリグリセリン高級脂肪酸モノエステル、テトラグリセリン高級脂肪酸モノエステル等のポリグリセリン高級脂肪酸モノエステル、ソルビトール高級脂肪酸モノエステル、ソルビタン高級脂肪酸モノエステル、ショ糖高級脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトール高級脂肪酸モノ若しくはジエステル、ジペンタエリスリトール高級脂肪酸モノ若しくはジエステル、トリペンタエリスリトール高級脂肪酸モノ若しくはジエステル等のポリペンタエリスリトール高級脂肪酸モノ若しくはジエステル、トリメチロールエタン高級脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパン高級脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレングリセリン高級脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸モノエステル等の多価アルコールの高級脂肪酸部分エステル(高級脂肪酸としてはヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、エルカ酸等)等が挙げられる。中でもグリセリン高級脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトール高級脂肪酸モノ若しくはジエステルが好ましい。
【0015】
有機ホウ素系ドナー成分は、例えば下記式(a):
【化2】
〔式中、
R1およびR2は互いに独立して、水素原子または-CO-R7を表し、
R1およびR2のうち少なくとも一方は-CO-R7を表し、
R7は、炭素数11~21のアルキル基を表す〕
で表される半極性ホウ素化合物であることができる。式中、「δ+」は、分子内の共有結合中に極性が存在していることを示し、「(+)」は酸素原子の電子供与性が強くなっていることを示し、「(-)」はホウ素原子の電子吸引性が強くなっていることを示し、「→」は電子が引きつけられる経路を示し、「----」は原子間力が弱められた状態を示す。
【0016】
式(a)で表される半極性ホウ素化合物は、例えば下記式(a-1)および(a-2):
【化3】
【化4】
で表される化合物等が挙げられる。
【0017】
有機窒素系アクセプター成分としては、例えば塩基性窒素化合物であってよく、好ましくは分子中に炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を少なくとも1つ有する塩基性窒素化合物である。塩基性窒素化合物が分子中に炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を少なくとも1つ有することにより、架橋性ゴム成分のマトリックスと多重的にファンデルワールス力が生じ、シール材の帯電防止性が長期にわたり発揮され易くなる傾向にある。ドナー・アクセプター型分子化合物は、上記塩基性窒素化合物を1種または2種以上含んでいてよい。
【0018】
分子中に炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を少なくとも1つ有する塩基性窒素化合物としては、例えば直鎖型炭化水素基を少なくとも1つ有するN-アルキル置換一級、二級および三級アミンそれ自体、または直鎖型炭化水素基を最小限1個有する一級および二級アミンに対してエチレンオキシドを付加して、N-ヒドロキシエチル置換基を結合させたものか、さらに、その末端ヒドロキシ基に対して直鎖型脂肪酸を反応させたもの、またはアンモニアと直鎖型炭化水素のエポキシ化物とを反応させて得られる直鎖型2-ヒドロキシ脂肪族アミンそれ自体、または一級および二級の直鎖型2-ヒドロキシ脂肪族アミンに対してエチレンオキシドを付加して、N-ヒドロキシエチル置換基を結合させたもの、またはポリアルキレンポリアミン中のアミノ基を1個残存させるようなモル比で、ポリアルキレンポリアミンと直鎖型脂肪酸を反応させて、他のアミノ基を全て脂肪酸アミド化したもの等が挙げられる。
【0019】
脂肪族アミンとしては、例えばオクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ココアミン、タロウアミン、ソイアミン、N,N-ジココアミン、N,N-ジタロウアミン、N,N-ジソイアミン、N-ラウリル-N,N-ジメチルアミン、N-ミリスチル-N,N-ジメチルアミン、N-パルミチル-N,N-ジメチルアミン、N-ステアリル-N,N-ジメチルアミン、N-ココ-N,N-ジメチルアミン、N-タロウ-N,N-ジメチルアミン、N-ソイ-N,N-ジメチルアミン、N-メチル-N,N-ジタロウアミン、N-メチル-N,N-ジココアミン、N-オレイル-1,3-ジアミノプロパン、N-タロウ-1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、N-ラウリル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-パルミチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-ステアリル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-ドコシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-ココ-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-タロウ-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-ソイ-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、N-ミリスチル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、N-ステアリル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、N-ココ-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジココ-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジタロウ-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジソイ-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-ラウリル-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-ステアリル-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-オレイル-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-ココ-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(ポリオキシエチレン)-N-ラウリル-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(ポリオキシエチレン)-N-ステアリル-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(ポリオキシエチレン)-N-オレイル-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(ポリオキシエチルン)-N-ココ-N-メチルアンモニウムクロリド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)トリデシルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ミリスチルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ペンタデシルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)パルミチルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ドコシルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタコシルアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ココアミノベタイン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)タロウアミノベタイン、ヘキサメチレンテトラミン、
【0020】
N-(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)トリデシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ミリスチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ペンタデシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)パルミチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ドコシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)オクタコシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ココアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)タロウアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)トリデシルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ミリスチルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ペンタデシルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)パルミチルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ドコシルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)オクタコシルアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ココアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)タロウアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)トリデシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ミリスチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ペンタデシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)パルミチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ドコシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタコシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ココアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)タロウアミンなどのN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)脂肪族アミン、該N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)脂肪族アミンとラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸などの脂肪酸とのモノ若しくはジエステル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレンココアミノエーテル、ポリオキシエチレンタロウアミノエーテルなどのポリオキシエチレン脂肪族アミノエーテル、該ポリオキシエチレン脂肪族アミノエーテルと前記脂肪酸とのモノ若しくはジエステル、
【0021】
N-(ラウロイルオキシエチル)-N-(ステアロイルオキシエトキシエチル)ステアリルアミン、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)-1,6-ジアミノヘキサン、N-ラウリル-N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパン、N-ステアリル-N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパン、N-ココ-N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパン、N-タロウ-N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジココ-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジタロウ-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジアミノプロパン、N-ココ-N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,6-ジアミノヘキサン、N-タロウ-N,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,6-ジアミノヘキサン、N,N-ジココ-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,6-ジアミノヘキサン、N,N-ジタロウ-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,6-ジアミノヘキサン、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシラウリルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシミリスチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシパルミチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシステアリルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシラウリルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシミリスチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシパルミチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシステアリルアミン、2,2’-ビス(ラウリン酸アミド)ジエチルアミン、2,2’-ビス(ミリスチン酸アミド)ジエチルアミン、2,2’-ビス(パルミチン酸アミド)ジエチルアミン、2,2’-ビス(ステアリン酸アミド)ジエチルアミン、N-(2-(ラウリン酸アミド))エチル-N-(2’-(ステアリン酸アミド))エチルアミン、N-(2-(ミリスチン酸アミド))エチル-N-(2’-(ステアリン酸アミド))エチルアミン、N-(3-(ラウリン酸アミド))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(ミリスチン酸アミド))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(パルミチン酸アミド))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(ステアリン酸アミド))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(ラウロイルオキシ))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(ミリストイルオキシ))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(パルミトイルオキシ))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N-(3-(ステアロイルオキシ))プロピル-N,N-ジメチルアミン、N,N-ビス(3-(ラウリン酸アミド)プロピル)メチルアミン、N,N-ビス(3-(ミリスチン酸アミド)プロピル)メチルアミン、N,N-ビス(3-(パルミチン酸アミド)プロピル)メチルアミン、N,N-ビス(3-(ステアリン酸アミド)プロピル)メチルアミン等が挙げられる。
【0022】
分子中に炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を少なくとも1つ有する塩基性窒素化合物は、例えば下記式(b):
【化5】
〔式中、
R3およびR4は互いに独立して、CH
3、C
2H
5、HOCH
2、HOC
2H
4またはHOCH
2CH(CH
3)を表し、
R5は、C
2H
4またはC
3H
6を表し、
R6は、炭素数11~21のアルキル基を表す〕
で表される塩基性窒素化合物であることができる。式中、「δ+」、「(+)」、「(-)」、「→」、「----」はそれぞれ上述の定義を有する。
【0023】
式(b)で表される塩基性窒素化合物は、例えば下記式(b-1)~(b-7):
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
で表される化合物等が挙げられる。
【0024】
有機ホウ素系ドナー成分と有機窒素系アクセプター成分とから構成される分子化合物としては、例えば下記式(1):
【化13】
〔式中、
R1およびR2は互いに独立して、水素原子または-CO-R7を表し、
R1およびR2のうち少なくとも一方は-CO-R7を表し、
R7は、炭素数11~21のアルキル基を表し、
R3およびR4は互いに独立して、CH
3、C
2H
5、HOCH
2、HOC
2H
4またはHOCH
2CH(CH
3)を表し、
R5は、C
2H
4またはC
3H
6を表し、
R6は、炭素数11~21のアルキル基を表す〕
で表される化合物であることができる。式中、「δ+」、「(+)」、「(-)」、「→」、「----」はそれぞれ上述の定義を有する。
【0025】
式(1)で表される化合物は、例えば式(a-1)および(a-2)からなる群から選択される少なくとも1種と、式(b-1)および(a-9)からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせた化合物であってよく、帯電防止性の観点から好ましくは下記式(1-1)~(1-8):
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
で表される化合物である。
【0026】
ドナー・アクセプター型分子化合物は、市販のものを使用することができる。市販品の例としては、株式会社ボロン研究所製の商品名「ビオミセルBN-105」、「ビオミセルSIS-105」等があげられる。
【0027】
ドナー・アクセプター型分子化合物は、例えばシリカ等の担体に担持された状態でシール材用ゴム組成物中に配合されていてもよい。
【0028】
シール材用ゴム組成物はドナー・アクセプター型分子化合物を、帯電防止性の観点から架橋性ゴム成分100質量部に対して例えば100質量部以下で含んでよく、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは0.05~30質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部、特に好ましくは0.5~5質量部、極めて好ましくは1質量部~4質量部含む。ドナー・アクセプター型分子化合物の上記含有量は、ドナー・アクセプター型分子化合物がシリカに担持されている場合、シリカの質量も含む。ドナー・アクセプター型分子化合物がシリカに担持されている場合、ドナー・アクセプター型分子化合物とシリカとの質量比は、例えば0.001:1~1:0.001であってよい。
【0029】
(2)架橋性ゴム成分
架橋性ゴム成分は、架橋反応によって架橋構造を有するエラストマー(架橋ゴム)を形成することができる。架橋性ゴム成分は、パーフルオロエラストマー(FFKM)およびフッ素ゴム(FKM)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。シール材用ゴム組成物において架橋性ゴム成分は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。架橋性ゴム成分は、耐プラズマ性の観点から好ましくはパーフルオロエラストマー(FFKM)を含み、より好ましくはパーフルオロエラストマー(FFKM)のみを含む。
【0030】
パーフルオロエラストマーとしては特に制限されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体や、TFE-パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体は、他のパーフルオロモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。パーフルオロエラストマーを含むパーフルオロエラストマー組成物によれば、水素原子含有フッ素エラストマーを含むシール材用ゴム組成物に比べて、耐プラズマ性をより高めることができる。シール材用ゴム組成物は、パーフルオロエラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0031】
テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)は、アルキル基の炭素数が1~5であることができ、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等であることができる。好ましくは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)である。
【0032】
TFE-パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)は、ビニルエーテル基(CF2=CFO-)に結合する基の炭素数が3~12であることができ、例えば
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCnF2n+1、
CF2=CFO(CF2)3OCnF2n+1、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1、または
CF2=CFO(CF2)2OCnF2n+1
であることができる。上記式中、nは例えば1~5であり、mは例えば1~3である。
【0033】
パーフルオロエラストマーは架橋性を有することが好ましく、より具体的には、架橋部位モノマーをさらに共重合させたもの(架橋部位モノマー由来の構成単位をさらに含むもの)であることが好ましい。架橋部位とは、架橋反応可能な部位を意味する。架橋部位としては、例えば、ニトリル基、ハロゲン基(例えば、I基、Br基等)、パーフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0034】
架橋部位としてニトリル基を有する架橋部位モノマーの一例は、ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルである。ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN(nは例えば2~4)、
CF2=CFO(CF2)nCN(nは例えば2~12)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは例えば2、mは例えば1~5)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは例えば1~4、mは例えば1~2)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]nCF2CF(CF3)CN(nは例えば0~4)
等を挙げることができる。
【0035】
架橋部位としてハロゲン基を有する架橋部位モノマーの一例は、ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルである。ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上述のニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルの具体例において、ニトリル基をハロゲン基に置き換えたものを挙げることができる。
【0036】
架橋性のパーフルオロエラストマーは、2つの主鎖間を架橋する架橋構造を有していてもよい。
【0037】
パーフルオロエラストマーにおけるTFE由来の構成単位/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)由来の構成単位/架橋部位モノマー由来の構成単位の比は、モル比で、通常50~79.6%/20~49.8%/0.2~5%であり、好ましくは60~74.8%/25~39.5%/0.5~2%である。シール材用ゴム組成物は、上記構成単位の比が異なる2種以上のパーフルオロエラストマーを含むこともできる。
【0038】
フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体等の3元系のフッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、熱可塑性フッ素ゴム、パーフルオロポリエーテル骨格の液状フッ素ゴム(例えば信越化学工業株式会社製「SIFEL(登録商標)」等)を挙げることができる。フッ素ゴムは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
フッ素ゴムは、官能基を含有するものであってもよい。官能基は、例えば当該官能基を有する架橋部位モノマーを共重合させることによって導入できる。架橋部位モノマーは、ハロゲン基含有モノマーであることができる。
【0040】
架橋性ゴム成分は、パーフルオロエラストマー(FFKM)、フッ素ゴム(FKM)以外の架橋性ゴム成分、例えばシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR;アクリロニトリルブタジエンゴム)、水素添加ニトリルゴム(HNBR;水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム等をさらに含むことができる。
【0041】
(3)その他の成分
シール材用ゴム組成物は、架橋性ゴム成分の架橋系に応じた架橋剤を任意に共架橋剤(架橋助剤)と共に含むことができる。シール材用ゴム組成物は、いずれか1種の架橋系で架橋されてもよいし、2種以上の架橋系で架橋されてもよい。
【0042】
パーフルオロエラストマーの架橋系は、パーオキサイド架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系およびビスフェノール架橋系からなる群から選択される少なくとも1種である。パーフルオロエラストマーの架橋系は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
フッ化ビニリデン系ゴムおよびテトラフルオロエチレン-プロピレンゴムの架橋系としては、パーオキサイド架橋系、ポリアミン架橋系およびポリオール架橋系からなる群から選択される少なくとも1種である。フッ化ビニリデン系ゴムおよびテトラフルオロエチレン-プロピレンゴムの架橋系は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
パーオキサイド架橋剤は、例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(市販品の例:日油株式会社製「パーヘキサ25B」、「パーヘキサ25B-40」);ジクミルペルオキシド(市販品の例:日油株式会社製「パークミルD」);2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド;ジ-t-ブチルパーオキサイド;t-ブチルジクミルパーオキサイド;ベンゾイルペルオキシド(市販品の例:日油株式会社製「ナイパーB」);2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(市販品の例:日油株式会社製「パーヘキシン25B」);2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン;α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(市販品の例:日油株式会社製「パーブチルP」);t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート;パラクロロベンゾイルパーオキサイド等であることができる。パーオキサイド架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
パーオキサイド架橋系で用いる共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(市販品の例:三菱ケミカル株式会社製「TAIC」);トリアリルシアヌレート;トリアリルホルマール;トリアリルトリメリテート;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド;ジプロパギルテレフタレート;ジアリルフタレート;テトラアリルテレフタルアミド等のラジカルによる共架橋が可能な化合物(不飽和多官能性化合物)を挙げることができる。共架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、反応性および耐熱性(圧縮永久歪特性)の観点から、共架橋剤はトリアリルイソシアヌレートを含むことが好ましい。
【0046】
トリアジン架橋系においては、有機スズ化合物、4級ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩等のオニウム塩、尿素、窒化ケイ素等の架橋触媒が用いられる。
【0047】
オキサゾール架橋系で用いる架橋剤としては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BOAP)、4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール)、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンを含む。好ましくは、BOAPが用いられる。
【0048】
イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系で用いる架橋剤としては、従来公知のものを用いることができる。イミダゾール架橋系で用いる架橋剤としては、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンジジン等を挙げることができる。
【0049】
シール材用ゴム組成物における架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.2質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下である。
【0050】
シール材用ゴム組成物における共架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.5質量部以上10質量部以下であり、耐熱性向上の観点から、好ましくは1質量部以上8質量部以下である。
【0051】
シール材用ゴム組成物は、加工性改善や物性調整等を目的として、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、加硫促進剤、加工助剤(ステアリン酸等)、安定剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、ワックス類、滑剤等の添加剤を含むことができる。添加剤の他の例は、フッ素系オイル(例えば、パーフルオロエーテル等)のような粘着性低減(防止)剤である。添加剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
ただし、シール材を高温環境下で使用する場合等においては、揮発、溶出または析出を生じるおそれがあることから、添加剤の量はできるだけ少ないことが好ましく(例えば架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下)、添加剤を含有しないことが望ましい。
【0053】
また、シール材用ゴム組成物は、必要に応じて着色剤(例えば無機顔料、有機顔料など)、フィラー(例えばフッ素樹脂、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、クレー、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、金属粉、ガラス粉、セラミックス粉等)を含むことができる。フィラーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。シール材用ゴム組成物におけるフィラーの含有量(2種以上を用いる場合はその合計量)は、架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.1質量部以上40質量部以下であり、機械的強度向上の観点から好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは1質量部より多く30質量部以下である。本明細書においてフィラーは上述の着色剤としての有機顔料および無機顔料とは区別され、有機顔料および無機顔料とは異なった種類のものを用いることができる。
【0054】
シール材用ゴム組成物がフッ素樹脂のフィラーを含む場合、架橋物の耐オゾン性や機械的強度をさらに向上させ得る。フッ素樹脂は、例えばフッ素樹脂粒子としてシール材用ゴム組成物に含有させることができる。
【0055】
フィラーとして用いるフッ素樹脂は、分子内にフッ素原子を有する樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF-HFP共重合体)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(VDF-HFP-TFE共重合体)等であることができる。フッ素樹脂は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記の中でも、高温環境下で樹脂が溶融して圧縮永久歪等の特性が損なわれることを防ぐ観点から、PFA、PTFE等の融点が比較的高いフッ素樹脂を用いることが好ましい。
【0057】
フィラーとして用いるフッ素樹脂は官能基を含有するものであってもよい。官能基は、例えば当該官能基を有するモノマーを共重合させることによって導入できる。官能基を有するモノマーとして上述の架橋部位モノマーを共重合させると、上記架橋剤によってフッ素樹脂とパーフルオロエラストマーとの架橋も進行するので、パーフルオロエラストマー組成物の架橋物の機械的強度等をさらに高め得る。官能基を含有するフッ素樹脂の例として、特開2013-177631号公報に記載されるニトリル基含有ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、フッ素樹脂は、例えば「TFM変性PTFE」(ダイニオン社製)のような、変性されたフッ素樹脂であることもできる。
【0058】
シール材用ゴム組成物がパーフルオロエラストマーとフッ素樹脂のフィラーとを含む場合、例えば1)パーフルオロエラストマー粉末とフッ素樹脂粉末とをミキシングロールを用いて混練する方法、2)パーフルオロエラストマー粉末またはペレットとフッ素樹脂粉末またはペレットとをミキサーや二軸押出機等の装置を用いて溶融混練する方法のほか、3)パーフルオロエラストマーの調製段階でフッ素樹脂を添加する方法により製造したフッ素樹脂入りパーフルオロエラストマーを用いることができる。
【0059】
上記3)の方法としては、いずれも乳化重合法で得られたパーフルオロエラストマーの水性分散液とフッ素樹脂の水性分散液とを混合した後、共凝析によりパーフルオロエラストマーとフッ素樹脂との混合物を得る方法を挙げることができる。
【0060】
シール材用ゴム組成物は、架橋性ゴム成分と、ドナー・アクセプター型分子化合物と、必要に応じて添加される架橋剤等とを均一に混練りすることにより調製できる。混練り機としては、例えばミキシングロール、加圧ニーダー、インターナルミキサー(バンバリーミキサー)等の従来公知のものを用いることができる。各配合成分は一度に混合して混練してもよいし、各配合成分のうち、架橋反応に寄与する成分(架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋剤等)を除く成分を先に均一に混練しておき、その後、架橋反応に寄与する成分を混練する等、複数段に分けて混練してもよい。
【0061】
<シール材>
本発明のシール材は、上述のシール材用ゴム組成物の架橋物を含む。シール材は、シール材用ゴム組成物を架橋(加硫)および成形することにより製造することができる。架橋および成形するための方法は、インジェクション成形、圧縮成形、移送成形等の従来公知の方法を採用することができる。
【0062】
成形時における加熱温度(一次架橋温度)は、例えば120℃以上220℃以下であってよく、加熱時間(一次架橋時間)は、例えば0.5分以上120分以下であってよい。加硫成形後、二次架橋を行ってもよい。二次架橋温度は、例えば120℃以上280℃以下であってよく、二次架橋時間は、例えば0.5時間以上24時間以下であってよい。
【0063】
シール材は、表面電位が例えば-2000V以上であってよく、好ましくは-1500V以上0以下であり、より好ましくは-500V以上0V以下である。シール材は上記範囲の表面電位を有することにより帯電防止性に優れる傾向にある。
【0064】
本発明のシール材は、帯電防止性に優れることから、真空チャンバのゲートに設けられるゲートシール等として好適に用いることができる。とりわけ、本発明のシール材は、例えば、高温環境、腐食性環境、UV環境、プラズマ環境下等で使用されるゲートシール、例えば、半導体製造装置用のゲートシールとして好適に用いることができる。本発明のシール材の形状は特に限定されないが、例えばOリングであることができる。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記のない限り、質量%および質量部である。
【0066】
<実施例1~12、比較例1~2>
次の手順に従って、シール材用ゴム組成物を調製し、次いでシール材を作製した。まず、表1に示される配合組成に従って(表1における配合量の単位は重量部である)、各配合剤の所定量をオープンロールにより混練した。次に、得られたシール材用ゴム組成物を、下記の条件でプレス成形した後、下記の条件で熱による2次架橋を行ってシール材(Oリング)を得た。
プレス成形条件:180℃×20分。
2次架橋条件:200℃×4時間。
【0067】
【0068】
表1中の配合成分の詳細は以下のとおりである。
〔FFKM1〕
テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)-ニトリル基含有モノマー共重合体であるパーフルオロエラストマー〔3M社製「PFE 131T」〕
〔FFKM2〕
テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)-ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルモノマー共重合体であるパーフルオロエラストマー〔ソルベイ社製「PFR94」〕
〔BOAP〕
オキサゾール架橋剤、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、東京化成工業株式会社製
〔パーヘキサ25B〕
パーオキサイド架橋剤、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、日油株式会社製
〔TAIC〕
トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製
〔PTFE〕
ダイキン工業株式会社「ルブロンL5」
〔ビオミセルSIS-105〕
株式会社ボロン研究所製「ビオミセルBN-105」をシリカに担持させたドナー・アクセプター型分子化合物。
〔TG-3000〕
下記式で表されるドナー・アクセプター型帯電防止剤(太陽化工株式会社製)
【化22】
【0069】
(シール材の評価)
得られた架橋成形品(シール材)について、下記の項目を測定、評価した。結果を表1に示す。
〔1〕表面電位測定
厚さ2mmに成形した架橋成形品(シール材)のシートを温度23℃および湿度50%の環境下で、イオナイザーによって除荷し、ウエスでゴムシートを10回こすって帯電させた後、表面電位計(トレック・ジャパン製、A.C.フィードバック表面電位計 Model 520-1)を用いて表面電位を測定した。なお比較例1および2では、検出範囲を超え、測定不能であった。
【0070】
ドナー・アクセプター型分子化合物を含む実施例1~12のシール材は、ドナー・アクセプター型分子化合物を含まない比較例1及び2のシール材に比べ低い表面電位を有していた。したがって、本願発明のシール材は帯電しにくく、半導体製造プロセスにおいてパーティクルの吸着を抑制し易いことが理解される。