(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094575
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の再生システム、使用済高吸水性樹脂の処理方法、および使用済高吸水性樹脂の再生方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/04 20060101AFI20240703BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240703BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240703BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08J11/04
B01J20/34 G
B01J20/34 H
B01J20/26 D
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211206
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182314
【氏名又は名称】トータルケア・システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】小林 信弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 大祐
【テーマコード(参考)】
4F401
4G066
【Fターム(参考)】
4F401AA07
4F401AA18
4F401AD04
4F401AD07
4F401BA06
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA03
4F401CA08
4F401CA31
4F401DA05
4F401DA16
4F401EA23
4G066AC11A
4G066AC11B
4G066AC39A
4G066CA43
4G066DA12
4G066DA13
4G066EA05
4G066GA01
4G066GA11
4G066GA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題の一つは、使用済高吸水性樹脂の処理において、含水状態の高吸水性樹脂を安定して均質に乾燥させることが可能な使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を乾燥する乾燥処理部と、乾燥処理部の後段で乾燥済の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂とを分離する未乾燥樹脂分離部と、を備え、未乾燥樹脂分離部で分離された未乾燥の高吸水性樹脂を、乾燥処理部の前段に返送する返送手段を有する使用済高吸水性樹脂の処理装置およびこの装置を用いた処理方法を提供する。この発明によれば、乾燥済となった高吸水性樹脂のみを系外に排出することができるため、含水状態の高吸水性樹脂に対し、安定かつ均質な乾燥を行うことが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済高吸水性樹脂の処理装置であって、
中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を乾燥する乾燥処理部と、
前記乾燥処理部の後段で乾燥済の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂とを分離する未乾燥樹脂分離部と、を備え、
前記未乾燥樹脂分離部で分離された未乾燥の高吸水性樹脂を、前記乾燥処理部の前段に返送する返送手段を有することを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項2】
前記乾燥処理部の前段に、前記高吸水性樹脂の形状調整を行う形状調整手段を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項3】
前記返送手段は、前記形状調整手段の前段に、未乾燥の高吸水性樹脂を返送することを特徴とする、請求項2に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項4】
前記形状調整手段の前段に、前記含水状態の高吸水性樹脂を供給する供給部を更に備え、
前記供給部は、往復移動しながら前記含水状態の高吸水性樹脂を供給することを特徴とする、請求項2に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項5】
使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離手段と、
前記分離手段で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理手段とを備え、
前記分離手段は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水手段を含み、
前記再生処理手段は、
分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄部と、
前記洗浄部の後段で高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応部と、
前記酸反応部の後段で高吸水性樹脂を濃縮する濃縮部と、
前記濃縮部の後段で高吸水性樹脂を中和する中和部と、
前記中和部の後段で高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥部と、を備え、
前記乾燥部は、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置を備えることを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の再生システム。
【請求項6】
使用済高吸水性樹脂の処理方法であって、
中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を乾燥する乾燥処理工程と、
前記乾燥処理工程の後段で乾燥済の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂とを分離する未乾燥樹脂分離工程と、を備え、
前記未乾燥樹脂分離工程で分離された未乾燥の高吸水性樹脂を、前記乾燥処理工程の前段に返送する返送工程を有することを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の処理方法。
【請求項7】
使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理工程とを備え、
前記分離工程は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水工程を含み、
前記再生処理工程は、
分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄工程と、
前記洗浄工程後の高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応工程と、
前記酸反応工程後の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮工程と、
前記濃縮工程後の高吸水性樹脂を中和する中和工程と、
前記中和工程後の高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
前記乾燥工程は、請求項6に記載の使用済高吸水性樹脂の処理方法によるものであることを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法に関するものである。
また、本発明は、使用済高吸水性樹脂の再生システムおよび使用済高吸水性樹脂の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッドのように、体液を吸収させることを目的とした物品(以下、「体液吸収性物品」と呼ぶ)は、主にパルプ、高吸水性樹脂(以下、「SAP」とも呼ぶ)、プラスチックから構成されており、幅広く利用されている。特に、高齢者社会を迎える中、一般家庭、病院や福祉施設において、紙おむつの使用量は年々増加している。
そして、大量に排出される使用済の体液吸収性物品の処分については、廃棄物として主に焼却処理が行われている。
【0003】
しかし、水分を多く含む使用済の体液吸収性物品を焼却処理するには、高温処理や焼却設備の大型化が必要となり、炉の劣化を促進するなど、焼却設備への負荷が大きいという問題がある。また、資源の有効活用という観点からも、焼却処理によらず、使用済の体液吸収性物品から構成成分を分離回収し、再利用することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用済の体液吸収性物品の処理として、使用済体液吸収性物品に含有されるパルプと高吸水性樹脂(吸水性ポリマー)とのゲル状混合物に、金属塩の混合物を添加して高吸水性樹脂の脱水、収縮・固化を行うとともに、着色した後、パルプおよび高吸水性樹脂を分離回収し、この分離回収した高吸水性樹脂に対して酸処理、アルカリ処理を行うことで高吸水性樹脂の吸水力を回復させる使用済体液吸収性物品からのパルプおよび高吸水性樹脂の分離回収方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離回収する際に、金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水後、酸処理およびアルカリ処理を経ることで高吸水性樹脂の吸水力を回復させることは知られている。
一方、吸水力を回復させた高吸水性樹脂を再生品(製品)として有効活用するには、高吸水性樹脂の乾燥を行う必要がある。しかしながら、特許文献1に記載されるように吸水力を回復する過程で酸処理およびアルカリ処理による処理(中和処理)を経ることで、高吸水性樹脂は粘性が上がるため、安定して均質に乾燥させることが困難となるが、特許文献1には乾燥処理に係る詳細については何ら記載されていない。
【0007】
本発明の課題は、使用済高吸水性樹脂の処理において、含水状態の高吸水性樹脂を安定して均質に乾燥させることが可能な使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を提供することである。
併せて、本発明の課題は、上記使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を用い、使用済体液吸収性物品の構成成分のうち、特に高吸水性樹脂を資源として有効に再利用することが可能となる使用済高吸水性樹脂の再生システムおよび使用済高吸水性樹脂の再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、含水状態の高吸水性樹脂の乾燥において、乾燥処理を行った後の高吸水性樹脂を、乾燥済のものと未乾燥のものに分離し、未乾燥のものを再度乾燥処理に供することで、安定かつ均質な乾燥が可能となることを見出して、本発明を完成した。
また、本発明者は、高吸水性樹脂の乾燥に係る上記操作を含み、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離し、所定の順序で高吸水性樹脂の吸水性能を回復させるための各処理を行うことで、使用済高吸水性樹脂の再生処理を効果的に進行させ、使用済の体液吸収性物品の構成成分について資源としての利用が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置は、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を乾燥する乾燥処理部と、乾燥処理部の後段で乾燥済の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂とを分離する未乾燥樹脂分離部と、を備え、未乾燥樹脂分離部で分離された未乾燥の高吸水性樹脂を、乾燥処理部の前段に返送する返送手段を有するという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置は、中和処理後の含水状態の(使用済)高吸水性樹脂を乾燥処理部で乾燥した後に、高吸水性樹脂を乾燥済のものと未乾燥のものに分離して、未乾燥のもののみを乾燥処理部に返送して繰り返し乾燥を行うものである。これにより、乾燥済となった高吸水性樹脂のみを系外に排出することができるため、含水状態の高吸水性樹脂に対し、安定かつ均質な乾燥を行うことが可能となる。また、乾燥処理部内に導入される高吸水性樹脂全てを一度に完全乾燥させる条件を乾燥処理部側で設定する必要がなく、乾燥時間の長時間化による過度な熱エネルギー消費や過乾燥を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置の一実施態様としては、乾燥処理部の前段に、高吸水性樹脂の形状調整を行う形状調整手段を更に備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、乾燥処理部に導入する含水状態の高吸水性樹脂の形状を、乾燥処理部での乾燥に適した形に調整することが可能となる。これにより、乾燥処理部内での乾燥効率をより向上させるとともに、乾燥処理部から排出される高吸水性樹脂の回収あるいは返送手段による移送の安定化が容易となる。
【0011】
また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置の一実施態様としては、返送手段は、形状調整手段の前段に、未乾燥の高吸水性樹脂を返送するという特徴を有する。
この特徴によれば、未乾燥の高吸水性樹脂と乾燥処理前の高吸水性樹脂とを併せて形状調整することができる。ここで、未乾燥の高吸水性樹脂は、乾燥処理前の高吸水性樹脂よりは水分率が少なく、塊状となっている。したがって、乾燥処理前の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂とを併せて形状調整することによって、塊状となっている未乾燥の高吸水性樹脂の形状調整を行うとともに、乾燥処理前の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂との接触効率を高め、乾燥処理前の高吸水性樹脂に含まれる水分を未乾燥の高吸水性樹脂に効率的に吸収させることができる。これにより、乾燥処理部内に導入した際における乾燥効率をより一層向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置の一実施態様としては、形状調整手段の前段に、含水状態の高吸水性樹脂を供給する供給部を更に備え、供給部は、往復移動しながら含水状態の高吸水性樹脂を供給するという特徴を有する。
この特徴によれば、含水状態の高吸水性樹脂の形状を乾燥処理部での乾燥に適した形に調整するための形状調整手段の前段において、含水状態の高吸水性樹脂の形状を一定程度広がりやすくすることが可能となる。これにより、形状調整手段による形状調整がより一層容易となる。併せて、乾燥処理部内での乾燥効率がより向上するとともに、乾燥処理部から排出される高吸水性樹脂の回収あるいは返送手段による移送の安定化が容易となる。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の再生システムとしては、使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離手段と、分離手段で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理手段とを備え、分離手段は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水手段を含み、再生処理手段は、分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄部と、洗浄部の後段で高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応部と、酸反応部の後段で高吸水性樹脂を濃縮する濃縮部と、濃縮部の後段で高吸水性樹脂を中和する中和部と、中和部の後段で高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥部と、を備え、乾燥部は、上述した使用済高吸水性樹脂の処理装置を備えるという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の再生システムは、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する分離手段と、分離された高吸水性樹脂の再生処理を行う再生処理手段とからなるものである。そして、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する際に、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水処理を行うことで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に外部に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めるものである。また、分離回収した高吸水性樹脂に対し、所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となるものである。特に、中和処理後の高吸水性樹脂に対する乾燥部として、上述した処理装置を備えることで、安定かつ均質な乾燥を可能とすることができる。また、大量に排出される使用済紙おむつ等の使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂の分離回収および再製品化を可能とすることで、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の処理方法は、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を乾燥する乾燥処理工程と、乾燥処理工程の後段で乾燥済の高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂とを分離する未乾燥樹脂分離工程と、を備え、未乾燥樹脂分離工程で分離された未乾燥の高吸水性樹脂を、乾燥処理工程の前段に返送する返送工程を有するという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の処理方法は、中和処理後の含水状態の(使用済)高吸水性樹脂を乾燥処理工程で乾燥した後に、高吸水性樹脂を乾燥済のものと未乾燥のものに分離して、未乾燥のもののみを乾燥処理工程に返送して繰り返し乾燥を行うものである。これにより、乾燥済となった高吸水性樹脂のみを系外に排出することができるため、含水状態の高吸水性樹脂に対し、安定かつ均質な乾燥を行うことが可能となる。また、高吸水性樹脂全てを一度に完全乾燥させる条件を乾燥処理工程時に設定する必要がなく、乾燥時間の長時間化による過度な熱エネルギー消費や過乾燥を抑制することが可能となる。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の再生方法は、使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離工程と、分離工程で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理工程とを備え、分離工程は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水工程を含み、再生処理工程は、分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄工程と、洗浄工程後の高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応工程と、酸反応工程後の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮工程と、濃縮工程後の高吸水性樹脂を中和する中和工程と、中和工程後の高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、を備え、乾燥工程は、上記使用済高吸水性樹脂の処理方法によるものであるという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の再生方法は、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する分離工程と、分離された高吸水性樹脂の再生処理を行う再生処理工程とからなるものである。そして、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する際に、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水処理を行うことで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に外部に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めるものである。また、分離回収した高吸水性樹脂に対し、所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となるものである。特に、中和処理後の高吸水性樹脂に対する乾燥工程を、上述した処理方法とすることで、安定かつ均質な乾燥を可能とすることができる。また、大量に排出される使用済紙おむつ等の使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂の分離回収および再製品化を可能とすることで、新たな資源としての利用を促進することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用済高吸水性樹脂の処理において、含水状態の高吸水性樹脂を安定して均質に乾燥させることが可能な使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を提供することができる。
併せて、本発明によれば、上記使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を用い、使用済体液吸収性物品の構成成分のうち、特に高吸水性樹脂を資源として有効に再利用することが可能となる使用済高吸水性樹脂の再生システムおよび使用済高吸水性樹脂の再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の再生システムの概略説明図(フロー図)である。
【
図3】本発明の第2の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における使用済高吸水性樹脂の処理方法および使用済高吸水性樹脂の再生方法は、本発明における使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の再生システムの構成および作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法については、本発明に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明における体液吸収性物品とは、一般に紙おむつ(子供用および大人用)、失禁パッド、生理用ナプキン、母乳パッド等、体液を吸収し、使い捨て衛生用品として販売、使用されている公知のものを指す。
体液吸収性物品の構造の一例としては、例えば、使用者の肌に直接触れる部分である表面材と、体液を吸収する吸水材と、物品の外側を覆う防水材(防水シート)を含むものが挙げられる。
より具体的には、体液吸収性物品の一つである紙おむつの構成成分としては、例えば、表面材としてはポリプロピレンやポリエステルなどの化学繊維からなる不織布などが挙げられる。また、吸水材としては、パルプ、高吸水性樹脂などが挙げられる。また、防水材としてはポリエチレンフィルムなどの樹脂製フィルムや、ポリエチレンラミネート紙およびポリエチレンラミネート不織布のように樹脂による加工処理がなされた紙や不織布などが挙げられる。
なお、本発明においては、体液吸収性物品の構成成分のうち、パルプ、高吸水性樹脂以外の構成成分である不織布、樹脂製フィルムおよび樹脂加工紙をまとめて「プラスチック」と称する。
【0020】
本発明において使用済体液吸収性物品とは、使用の状態については特に限定されない。例えば、固形状の汚物(大便等)が付着したもの、液体状の汚物(尿、経血等)が付着したもの、あるいはその両方が付着したものが挙げられるが、再生処理に係るコストや処理効率を鑑みると、尿を主成分として吸収している状態が好ましい。
また、本発明で用いる使用済体液吸収性物品は、例えば、一般家庭、病院や福祉施設など、体液吸収性物品を利用する使用者が居住ないしは滞在する施設などから排出されるものを収集・回収し、搬送されたものが挙げられる。
なお、以下の実施態様においては、使用済体液吸収性物品として、尿を主成分として吸収した紙おむつを主に例示して説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明における高吸水性樹脂(SAP)は、使用済体液吸収性物品における吸水材として用いられるものであればよく、具体的な構造や組成については特に限定されないが、例えば、親水性単量体を重合して得られる水膨潤性架橋重合体が挙げられる。より具体的には、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体、架橋され部分的に中和された澱粉-アクリル酸グラフトポリマー、イソブチレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体のケン化物、アクリルアミドや(共)重合体の加水分解物、アクリロニトリル重合体
の加水分解物、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられ、アクリル酸またはその塩を主成分とするポリアクリル酸(塩)系架橋重合体が特に好ましく挙げられる。
【0022】
本発明の処理装置および処理方法による処理対象となる高吸水性樹脂は、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂(以下、「処理対象物P0」とも呼ぶ)である。より具体的には、使用済高吸水性樹脂の処理において、吸収した体液を排出させた高吸水性樹脂末端の置換処理に伴う中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を処理対象とするものである。特に、使用済高吸水性樹脂の再生処理において、中和処理により高吸水性樹脂末端をナトリウム置換した含水状態の高吸水性樹脂を処理対象とすることが挙げられる。
【0023】
〔第1の実施態様〕
(使用済高吸水性樹脂の処理装置)
図1は、本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
図1Aは、上方から見た平面図を、
図1Bは、側面から見た断面図を示すものである。
本実施態様に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置100A(以下、単に「処理装置100A」と呼ぶ)は、処理対象物P0を乾燥処理部110に導入するための導入部101と、乾燥処理部110と、未乾燥樹脂分離部120と、未乾燥樹脂分離部120で分離された未乾燥の高吸水性樹脂を乾燥処理部110の前段に返送する返送手段130と、を備えるものである。
【0024】
本実施態様における処理装置100Aは、主に使用済高吸水性樹脂を中和処理した後の乾燥処理に係るものである。より具体的には、本実施態様における処理装置100Aは、後述する使用済高吸水性樹脂の再生システム1における再生処理手段20のうち、中和部24後段に設けられる乾燥部25として適用することが挙げられる。
【0025】
以下、処理装置100Aにおける各構成について詳細に説明する。
(導入部)
導入部101は、処理対象物P0を乾燥処理部110に導入するためのものである。導入部101としては、処理対象物P0を乾燥処理部110の導入口まで移送させることができるものであればよく、コンベヤなど、駆動部を有する移送機構を用いることのほか、傾斜部を有する平板やトラフなど、重力による移送を行うものなどが挙げられる。
【0026】
(乾燥処理部)
乾燥処理部110は、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂(処理対象物P0)を乾燥させるためのものである。
乾燥処理部110は、処理対象物P0に対し加熱(直接または間接)を行うことで処理対象物P0に含まれる水分率を低下させることができるものであればよい。また、本実施態様における乾燥処理部110としては、乾燥処理部110内において、処理対象物P0に対して移送に伴う振動や回転駆動による遠心力等の外力を付与することができ、処理対象物P0の分散を促進し、集塊化を抑制できるものがより好ましい。具体的には、例えば、バンド乾燥機やドラム乾燥機などが挙げられる。
なお、本実施態様における乾燥処理部110としては、
図1に示すように、処理対象物P0を載置したコンベヤ111を移動させつつ、熱風による乾燥を行うバンド乾燥機を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、導入部101から、乾燥処理部110の導入口(図示省略)を介し、乾燥処理部110内に処理対象物P0が導入され、乾燥が進行すると、処理対象物P0の一部は自身の粘性により塊状となっていく(中間処理物P1)。そしてさらに乾燥が進行することで、中間処理物P1の表面が乾いていき、十分乾燥した箇所から分離し、分離したものが粒子化していく。この中間処理物P1の表面から分離したもの(粒子)は、水分率が20%以下で、粘性が低下した状態の乾燥済高吸水性樹脂P2として乾燥処理部110から排出される。一方、中間処理物P1として塊状を維持したままのもの(塊状物)は、水分率が十分低減していない状態の未乾燥の高吸水性樹脂P3として乾燥処理部110から排出される。
【0028】
本実施態様における乾燥処理部110では、導入した処理対象物P0を全て乾燥させるのではなく、処理対象物P0の一部を、未乾燥の高吸水性樹脂P3として排出することを許容するものである。したがって、乾燥処理部110における乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間)については、従来の乾燥条件よりも低温度、短時間で実施することが可能となる。
乾燥処理部110における乾燥条件については、例えば、乾燥処理部110から排出される乾燥済高吸水性樹脂P2と未乾燥の高吸水性樹脂P3の比率(重量比)に基づき設定するものとしてもよい。具体的には、乾燥処理部110から排出されるものとして、未乾燥の高吸水性樹脂P3の割合が15%以下、より好ましくは10%以下となるように、乾燥処理部110における乾燥条件を設定することが挙げられる。これにより、安定かつ均質な乾燥をより確実に行うことが可能となるとともに、乾燥済高吸水性樹脂P2の回収率を最適化(あるいは最大化)した処理を行うことが可能となる。
【0029】
乾燥処理部110を経た処理対象物P0は、乾燥済高吸水性樹脂および未乾燥の高吸水性樹脂の混合物P4として排出され、未乾燥樹脂分離部120に導入される。
【0030】
(未乾燥樹脂分離部)
未乾燥樹脂分離部120は、乾燥処理部110の後段に設けられ、乾燥処理部110から導入される混合物P4を、乾燥済高吸水性樹脂P2と未乾燥の高吸水性樹脂P3に分離するためのものである。
本実施態様における未乾燥樹脂分離部120は、混合物P4を、乾燥済高吸水性樹脂P2(粒子)と未乾燥の高吸水性樹脂P3(塊状物)とに分離することができるものであればよい。未乾燥樹脂分離部120の具体例としては、例えば、振動付与機構121と、粒度選別機構122を備えるものが挙げられる。
【0031】
振動付与機構121は、混合物P4に対して振動を付与し、未乾燥の高吸水性樹脂P3の表面に付着した乾燥済高吸水性樹脂P2を剥離するためのものである。
振動付与機構121としては、混合物P4に対し、振動を付与することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されないが、未乾燥の高吸水性樹脂P3自体を崩壊させない程度の振動付与が可能なものが好ましい。例えば、混合物P4を貯留した容器に対し振動源となる外力(衝撃、超音波など)を付与するものや、振動コンベヤを用いて搬送と振動付与を同時に行うものなどが挙げられる。これにより、混合物P4から乾燥済高吸水性樹脂P2を最大収量で回収し、分離することが可能となる。
【0032】
振動付与機構121により、未乾燥の高吸水性樹脂P3の表面から乾燥済高吸水性樹脂P2を剥離させた後、粒度選別機構122により乾燥済高吸水性樹脂P2と未乾燥の高吸水性樹脂P3の分離を行う。
【0033】
粒度選別機構122は、粒度(サイズ)による分離が可能となるものであればよく、例えば、金網、金属板に孔を設けたパンチングメタル、ウェッジワイヤー等を用いた篩(スクリーン)が挙げられる。このとき、乾燥済高吸水性樹脂P2(粒子)は粒度選別機構122を通過し、未乾燥の高吸水性樹脂P3(塊状物)が粒度選別機構122上に残るように、メッシュ(目開き)や孔径を決定する。これにより、混合物P4から乾燥済高吸水性樹脂P2と未乾燥の高吸水性樹脂P3の分離を速やかに行うことが可能となる。
【0034】
なお、未乾燥樹脂分離部120としては、振動付与機構121と粒度選別機構122を一体化したものとしてもよい。例えば、振動スクリーンのように、対象物(混合物P4)を振動輸送しながら、搬送面に取り付けた篩(スクリーン)により粒度選別を行うものを用いることなどが挙げられる。
【0035】
未乾燥樹脂分離部120によって分離された乾燥済高吸水性樹脂P2は、系外に排出され、再生品として使用することができる。なお、再生品としての利用価値を高めるために、乾燥済高吸水性樹脂P2に対して、さらに粉砕や篩い分けを行う粒度調整手段や、成型を行う成型手段を設け、所定の粒度や形状を有するものに加工してもよい。これにより、乾燥済高吸水性樹脂P2は再生SAPとして各種用途に好適に利用することができる。
【0036】
一方、未乾燥樹脂分離部120によって分離された未乾燥の高吸水性樹脂P3は、返送手段130によって回収され、乾燥処理部110の前段に送られる。
【0037】
返送手段130は、未乾燥樹脂分離部120によって分離された未乾燥の高吸水性樹脂P3を乾燥処理部110の前段に返送するためのものである。
返送手段130としては、混合物P4から分離された未乾燥の高吸水性樹脂P3を再度乾燥処理するために、乾燥処理部110の前段に返送することができるものであればよく、例えば、粒度選別機構122上に残った未乾燥の高吸水性樹脂P3を回収する回収部131と、回収した未乾燥の高吸水性樹脂P3を乾燥処理部110の前段に搬送する搬送部132とを備えるものが挙げられる。
【0038】
回収部131は、粒度選別機構122上に残った未乾燥の高吸水性樹脂P3を回収することができるものであればよく、例えば、吸引機構や掻き寄せ機構を設けることが挙げられる。
そして、搬送部132は、回収部131で回収した未乾燥の高吸水性樹脂P3を乾燥処理部110の前段に搬送することができるものであればよく、例えば、コンベヤや配管を用いることが挙げられる。なお、搬送部132としては、未乾燥の高吸水性樹脂P3が搬送中に付着することを抑制するための構造や材を用いることが好ましく、例えば、搬送部132は撥水性を有する材からなるものや、目開きの細かい網状部材からなるものを用いることが挙げられる。
【0039】
返送手段130により、未乾燥の高吸水性樹脂P3は、乾燥処理前の高吸水性樹脂(処理対象物P0)と混合され、再度乾燥処理部110に導入されることになる。そして、再度乾燥処理に供されることにより、未乾燥の高吸水性樹脂P3は、順次、乾燥済高吸水性樹脂P2として系外に排出されていくことになる。
【0040】
なお、返送手段130により乾燥処理部110に返送する未乾燥の高吸水性樹脂P3には、乾燥済高吸水性樹脂P2が一部含まれるものであってもよい。これにより、処理対象物P0との混合において、処理対象物P0の含水率をより低下させることが可能となるため、乾燥効率をより一層向上させることが可能となる。また、粒度選別機構122に求められる選別精度に係る要件が緩和されるため、粒度選別機構122として用いる装置コストや装置設計に係るコストの低減が可能となる。
【0041】
以上のように、本実施態様における処理装置100Aは、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を乾燥処理部で乾燥した後に、高吸水性樹脂を乾燥済のものと未乾燥のものに分離して、未乾燥のもののみを乾燥処理部に返送して繰り返し乾燥を行うものである。これにより、乾燥済となった高吸水性樹脂のみを系外に排出することができるため、含水状態の高吸水性樹脂に対し、安定かつ均質な乾燥を行うことが可能となる。また、乾燥処理部内に導入される高吸水性樹脂全てを一度に完全乾燥させる条件を乾燥処理部側で設定する必要がなく、乾燥時間の長時間化による過度な熱エネルギー消費や過乾燥を抑制することが可能となる。
【0042】
(使用済高吸水性樹脂の再生システム(SAP再生システム))
図2は、本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の再生システムを示す概略説明図である。なお、
図2は、本実施態様における使用済高吸水性樹脂の再生システムによる使用済高吸水性樹脂の再生プロセスを示すフロー図である。
本実施態様に係る使用済高吸水性樹脂の再生システム1(以下、「SAP再生システム1」と呼ぶ)は、
図2に示すように、使用済体液吸収性物品をパルプ、高吸水性樹脂(SAP)、プラスチックに分離する分離手段10、分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理手段20を備えるものである。また、
図2において、太線で示された矢印(ラインL1~L6)は、高吸水性樹脂(SAP)の移動経路(順路)を示すものであり、配管や移送機構(コンベヤ等)からなるものである。
【0043】
本実施態様のSAP再生システム1において、使用済体液吸収性物品を分離手段10に投入することで、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する。ここで、分離手段10には、高吸水性樹脂の脱水を行う脱水手段12が設けられていることで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に高吸水性樹脂外に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めるものである。また、分離手段10によって分離回収した高吸水性樹脂に対し、再生処理手段20によって所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となるものである。
以下、SAP再生システム1における分離手段10および再生処理手段20の詳細について説明する。
【0044】
(分離手段)
本実施態様の分離手段10は、使用済体液吸収性物品をパルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分類する分離工程を行うためのものである。
分離手段10としては、
図2に示すように、使用済体液吸収性物品が投入され、分離処理が行われる分離部11と、分離部11内の高吸水性樹脂を脱水する脱水手段12を備えるものが挙げられる。
【0045】
分離部11は、使用済体液吸収性物品とともに、調整水が供給され、使用済体液吸収性物品を各構成成分に分離するためのものである。
ここでの調整水とは、使用済体液吸収性物品を分離部11内で各構成成分に分離する際に、パルプおよび高吸水性樹脂をスラリー化し、分離効率を高めるために供給される水である。このため、清澄度が若干劣る水を使用でき、下水処理水等の比較的清澄度の低い処理水、再生水のほか、循環水を用いることができる。
【0046】
分離部11において、使用済体液吸収性物品を各構成成分に分離する具体的な手段については特に限定されない。
本実施態様に係る分離部11としては、使用済体液吸収性物品が投入される分離槽を備え、使用済体液吸収性物品の各構成成分への分離に係る各種処理を行うための手段を分離槽に対して設けるものとすることが挙げられる。
【0047】
分離部11としては、例えば、使用済体液吸収性物品を物理的に分解し、槽内に構成成分を分散させるための分散手段として、破袋手段や細分化手段を分離槽内あるいは分離槽外に設けることが挙げられる。
ここで、破袋手段とは、使用済体液吸収性物品を収集・搬送する際に用いられる包装体(袋体)を破断するものである。また、細分化手段とは、使用済体液吸収性物品の表面材や防水材を破断し、後段における溶解、撹拌等の機械的処理に適合する形状にするとともに、内側の吸水材(パルプおよび高吸水性樹脂)を外部に放出させることができるものである。
分散手段の具体的な例としては、例えば、強撹拌を行うもの、破砕刃による裁断を行うもの、多数の針がついた部材を繰り返し刺し込むものなどが挙げられる。
【0048】
また、分離部11としては、分散手段により分離槽内に分散した構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を設けることが挙げられる。
分離回収手段としては、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックを構成成分ごとに分離回収することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、サイズによる分級、比重差による分離のほか、分離槽とは別の処理槽を更に設け、溶媒・薬品に対する可溶性又は不溶性に基づく分離を行うものなどが挙げられる。
そして、分離回収手段によって分離された高吸水性樹脂は、ラインL1を介して再生処理手段20に導入される。一方、パルプおよびプラスチックは、配管あるいは移送機構からなるラインL7を介してSAP再生システム1系外に排出される。
なお、本実施態様におけるSAP再生システム1では、分離手段10において高吸水性樹脂は薬品等による溶解(分解)を行わずに、分散あるいは濃縮状態で回収し、ラインL1を介して再生処理手段20に導入するものであるが、その他の構成成分であるパルプおよびプラスチックについては、分離手段10において溶解した状態(溶解液)として分離回収するものであってもよい。
【0049】
脱水手段12は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水工程を行うためのものである。
高吸水性樹脂は、通常、液中で陽イオン(塩成分)が解離するため、高吸水性樹脂の官能基(例えば、カルボキシル基等)がマイナスの電荷を有することや、樹脂の外側にある水とのイオン濃度差が生じることにより、水が高吸水性樹脂内部に引き寄せられる力(静電相互作用や浸透圧に基づく力)が働くことで吸水が行われる。一方、体液を吸収した使用済高吸水性樹脂に対し、体液(水)の代わりに高吸水性樹脂に取り込まれるものとして多価金属塩(多価金属イオン)を存在させることで、使用済高吸水性樹脂の脱水が可能となる。
したがって、脱水手段12としては、使用済高吸水性樹脂に対し、水の存在下で多価金属塩を添加することが挙げられる。
【0050】
脱水手段12は、
図2に示すように、使用済体液吸収性物品および調整水が投入された分離部11(分離槽)に、多価金属塩を添加することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
例えば、多価金属塩を貯留する槽と、この槽と分離槽を接続する供給用配管とを備えるものが挙げられる。なお、多価金属塩は固体状態または水に溶解した水溶液状態のいずれの形態であってもよい。また、供給用配管に、多価金属塩の供給量を制御する制御機構を備えるものとしてもよい。
【0051】
多価金属塩としては、2価以上の価数を有する金属の塩であればよく、例えば、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩が挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの水溶性の塩が使用できる。好ましいアルカリ土類金属塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられ、中でも、コストや脱水効果等の点から、塩化カルシウムがより好ましい。
遷移金属塩としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の水溶性の塩が挙げられる。遷移金属塩としては、吸水性ポリマーに取り込まれるものであれば、無機酸塩、有機酸塩、錯体等を問わず用いられる。そのうち、コストや入手容易性等の点から、遷移金属塩としては、無機酸塩または有機酸塩が好ましい。無機酸塩としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩;塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩;塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩;塩化銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。有機酸塩類としては、例えば、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0052】
脱水手段12より多価金属塩が添加されることで、分離部11内の高吸水性樹脂は、吸収した体液を放出し、吸水性能をほとんど失う状態となる。これにより、高吸水性樹脂は、沈降性および水からの分離性が向上した粒子状態となる。したがって、上述した分離回収手段による分離効率が向上することになる。
【0053】
また、分離手段10としては、上述した分離部11および脱水処理手段12以外にも、使用済体液吸収性物品を各構成成分(パルプ、高吸水性樹脂、プラスチック)へと効果的・効率的に分類するための手段や、分離手段10の後段における各処理工程に対し適切な状態で導入するための手段を備えるものとしてもよい。例えば、分離処理中あるいは分離処理後の各構成成分の濃度を調整するための濃度調整槽を設けることなどが挙げられる。
【0054】
(再生処理手段)
分離手段10を経た高吸水性樹脂はラインL1を介して再生処理手段20に導入される。
再生処理手段20は、高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理工程を行うためのものである。
本実施態様における再生処理手段20としては、
図2に示すように、上述した処理装置100Aからなる洗浄部21と、酸反応部22と、濃縮部23と、中和部24と、乾燥部25を備え、それぞれがラインL2~L5により接続されているものが挙げられる。また、再生処理済の高吸水性樹脂(再生SAP)は、乾燥部25からラインL6を介して排出される。
【0055】
洗浄部21は、分離手段10において分離され、ラインL1を介して回収された高吸水性樹脂を洗浄する洗浄工程を行うためのものである。
洗浄部21としては、高吸水性樹脂の表面(外面)に付着した状態の夾雑物(汚物や分離し切れなかったパルプ等)を洗浄水により除去することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。ここで、洗浄水としては、清澄度が若干劣る水を使用でき、下水処理水等の比較的清澄度の低い処理水、再生水のほか、循環水を用いることができる。
洗浄部21の具体例としては、例えば、高吸水性樹脂と洗浄水が投入・貯留される洗浄槽を設け、洗浄槽内部で撹拌することで、高吸水性樹脂から夾雑物を除去するものなどが挙げられる。
洗浄部21で洗浄された高吸水性樹脂は、除去された夾雑物が含まれる洗浄水とは分離し、ラインL2を介して酸反応部22に導入される。
【0056】
酸反応部22は、洗浄部21の後段に設けられ、高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応工程を行うためのものである。
上述したように、分離手段10における脱水手段12により、酸反応部22に導入される高吸水性樹脂は多価金属塩の陽イオンにより吸水性能を失った状態にある。
酸反応部22は、この高吸水性樹脂に強酸を加えてpHを低下させることで、高吸水性樹脂における多価金属塩由来の陽イオン(例えば、カルシウムイオン)を水素イオンと置換するものである。
【0057】
酸反応部22としては、例えば、ラインL2を介して導入される高吸水性樹脂を貯留することができ、強酸の添加手段が接続された酸反応槽を備えることが挙げられる。なお、強酸の添加手段については特に限定されないが、例えば、強酸を貯留する槽および供給用配管を備えるものなどが挙げられる。
【0058】
酸反応部22で添加される強酸としては、酸反応部22内のpHを3以下、好ましくは2以下とすることができるものであればよく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
また、酸反応部22では、高吸水性樹脂と強酸との反応を好適に進行させるために、調整水を添加し、高吸水性樹脂濃度(水中における高吸水性樹脂含有量)について調整を行うことが好ましい。このとき、酸反応部22における好適な高吸水性樹脂濃度としては、酸反応部22における撹拌混合が容易となる範囲とすることが好ましく、具体的には、5質量%以下、より好ましくは3質量%以下とすることが挙げられる。
【0059】
酸反応部22で処理された高吸水性樹脂は、スラリー(分散液)としてラインL3を介して濃縮部23に導入される。
【0060】
濃縮部23は、酸反応部22の後段に設けられ、高吸水性樹脂を濃縮する濃縮工程を行うためのものである。
ここで、濃縮部23による濃縮工程とは、酸反応部22から導入されるスラリー(分散液)から水分を除去し、水素置換された高吸水性樹脂の濃度増加を図るものであり、濃縮部23の具体的な構造については特に限定されない。
【0061】
酸反応部22において水素置換された高吸水性樹脂は、金属に対する付着性が増加し、かつ粘性の高い含水状態となる。したがって、濃縮部23としては、ラインL3を介して導入されるスラリー(分散液)に対し、ウェッジワイヤースクリーンのように通水が可能な固液分離機構を用い、調整水による洗浄と併せ、高吸水性樹脂の濃縮(高吸水性樹脂の濃度増加)を行うものが挙げられる。これにより、金属付着性および粘性によるハンドリングの影響を低減することが可能となる。また、濃縮部23による濃縮工程を行うことで、次工程以降(中和工程や乾燥工程)における処理効率を向上させることが可能となる。
濃縮部23において濃縮された高吸水性樹脂はラインL4を介して中和部24に導入される。
【0062】
中和部24は、濃縮部23の後段に設けられ、高吸水性樹脂を中和する中和工程を行うためのものである。
水素置換された高吸水性樹脂は、吸水性能が一定程度回復するが、再生品(製品)として利用するには十分ではない。したがって、中和部24による中和を行うことで、水素置換された高吸水性樹脂を水素イオン以外の陽イオンで置換(アルカリ置換)し、使用前の高吸水性樹脂と同様の組成とすることで、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させることが可能となる。
【0063】
中和部24としては、例えば、ラインL4を介して導入される高吸水性樹脂と中和剤とを混合することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、高吸水性樹脂と中和剤とを撹拌混合する槽を備えるものなどが挙げられる。
【0064】
中和部24で添加される中和剤としては、水素置換された高吸水性樹脂を、水素イオン以外の陽イオンで置換することができる薬品であればよく、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等を挙げることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの群から少なくとも1つ選択され得る。アルカリ金属塩は、1種類であってもよく、複数の種類のアルカリ金属塩の混合物であってもよい。より具体的には、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
ここで、中和部24における中和工程では、水素置換された高吸水性樹脂に対し、液体状の中和剤を添加すると、陽イオンへの置換反応と並行して吸水が生じてしまうため、中和された高吸水性樹脂の固形分濃度が低下してしまい、その結果、後段の乾燥部25において、高吸水性樹脂の乾燥に必要なエネルギーが増加してしまう。このため、中和部24で添加する中和剤としては固体状であることが好ましく、高吸水性樹脂との接触(混合)効率向上の面からは粉末状であることが特に好ましい。したがって、中和部24で添加される中和剤としては、粉末状態で入手しやすいことおよびコスト面を鑑み、炭酸ナトリウムが特に好適に用いられる。
【0065】
中和部24において中和(アルカリ置換)された高吸水性樹脂は、ラインL5を介して乾燥部25に導入される。
【0066】
乾燥部25は、中和部24の後段に設けられ、高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程を行うためのものである。
中和部24により中和された高吸水性樹脂は含水状態となっており、これを乾燥部25で乾燥させることで十分な吸水性能が回復した再生品(製品)として利用することが可能となる。
【0067】
本実施態様における乾燥部25としては、上述した処理装置100Aを用いる。これにより、中和部24から導入される含水状態(不定形)の高吸水性樹脂を、安定かつ均質に乾燥することが可能となる。
【0068】
乾燥した高吸水性樹脂は、再生SAPとして、ラインL6を介してSAP再生システム1系外に排出される。再生SAPは、使用前の高吸水性樹脂と同様の用途に使用することが可能であり、例えば、体液吸収性物品の吸水材として再利用するほか、その他の吸水材として利用することが可能である。また、上述したように、乾燥部25(処理装置100A)の後段に、再生SAPとしての利用価値を更に向上させるための手段を設けるものとしてもよい。例えば、粒度調整手段や成型手段を設けることが挙げられる。
【0069】
以上のように、本実施態様におけるSAP再生システム1は、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する分離手段と、分離された高吸水性樹脂の再生処理を行う再生処理手段とからなるものである。そして、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する際に、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水処理を行うことで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に外部に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めることができる。また、分離回収した高吸水性樹脂に対し、所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となる。特に、中和処理後の高吸水性樹脂に対する乾燥部として、上述した処理装置を備えることで、安定かつ均質な乾燥を可能とすることができる。また、各施設から大量に排出される使用済紙おむつ等の使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂の分離回収および再製品化を可能とすることで、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0070】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
図3Aは、上方から見たときの平面図を、
図3Bは、側面から見たときの断面図を示すものである。
第2の実施態様に係る処理装置100Bは、第1の実施態様における処理装置100Aにおいて、乾燥処理部110の前段に、高吸水性樹脂(処理対象物P0)の形状調整を行う形状調整手段140を更に設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0071】
形状調整手段140は、乾燥処理部110に導入する高吸水性樹脂(処理対象物P0)の形状を調整するためのものである。
ここで、本実施態様における形状調整手段140による形状調整とは、乾燥処理部110における乾燥効率を高めるために、乾燥処理部110に導入する高吸水性樹脂(処理対象物P0)の形状を調整することを指すものであり、例えば、処理対象物P0の厚さ(高さ)や面積(平面形状)を、乾燥処理部110の導入口や内部構造に合わせて成形することが挙げられる。
【0072】
本実施態様における形状調整手段140の具体例としては、例えば、
図3に示すように、乾燥処理部110の前段における導入部101上に押圧ロール141を設け、処理対象物P0を所定の厚さ(高さ)および幅を有する平板状に成形することが挙げられる。このとき、所定の厚さおよび幅は、乾燥処理部110の内部構造に合わせることで、乾燥処理部110内で効率よく加熱(乾燥)を行うことが可能となる。
また、形状調整手段140の他の例としては、導入部101上に乾燥処理部110の導入口や内部構造に合わせた型枠を設けることが挙げられる。これにより、型枠を通過した処理対象物P0のみが乾燥処理部110内に導入されるため、処理対象物P0を簡便かつ容易に成形することが可能となる。
【0073】
また、このとき、返送手段130は、形状調整手段140の前段に、未乾燥の高吸水性樹脂P3を返送させることが好ましい。上述のように、未乾燥の高吸水性樹脂P3は、乾燥処理前の高吸水性樹脂(処理対象物P0)よりは水分率が少なく、塊状となっているものである。したがって、乾燥処理前の高吸水性樹脂(処理対象物P0)と未乾燥の高吸水性樹脂P3とを併せて形状調整することによって、塊状となっている未乾燥の高吸水性樹脂P3の比表面積が増加するように形状を調整することが可能になるとともに、乾燥処理前の高吸水性樹脂(処理対象物P0)と未乾燥の高吸水性樹脂P3との接触効率を高め、乾燥処理前の高吸水性樹脂(処理対象物P0)に含まれる水分を未乾燥の高吸水性樹脂P3に効率的に吸収させることができる。これにより、乾燥処理部110における乾燥効率をより一層向上させることが可能となる。
【0074】
以上のように、本実施態様における処理装置100Bでは、乾燥処理部に導入する含水状態の高吸水性樹脂の形状を、乾燥処理部での乾燥に適した形に調整することが可能となる。これにより、乾燥処理部内での乾燥効率をより向上させるとともに、乾燥処理部から排出される高吸水性樹脂の回収あるいは返送手段による移送の安定化が容易となる。
併せて、本実施態様における処理装置100Bでは、返送手段は、形状調整手段の前段に、未乾燥の高吸水性樹脂を返送するように設けることで、未乾燥の高吸水性樹脂と乾燥処理前の高吸水性樹脂とを併せて形状調整することができる。これにより、乾燥処理部内に導入した際における乾燥効率をより一層向上させることが可能となる。
【0075】
また、本実施態様の処理装置100Bは、第1の実施態様に示したSAP再生システム1における乾燥部25として適用することができる。これにより、第1の実施態様と同様に、使用済高吸水性樹脂の再生処理を行うことが可能となる。
【0076】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
図4Aは、上方から見たときの平面図を、
図4Bは、側面から見たときの断面図を示すものである。
第3の実施態様に係る処理装置100Cは、第2の実施態様における処理装置100Bにおいて、形状調整手段140の前段に、処理対象物P0を供給する供給部150を更に設け、この供給部150が往復移動しながら処理対象物P0の供給を行うものである。なお、第2の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0077】
供給部150は、形状調整手段140の前段に設けられ、導入部101上に処理対象物P0を供給するためのものである。また、供給部150は、導入部101上で往復移動しながら処理対象物P0の供給を行うものである。
これにより、供給される処理対象物P0が導入部101上で広がりやすくなる。そして、導入部101上で広がった状態の処理対象物P0に対し、形状調整手段140による形状調整を行うことで、乾燥処理部110の導入口に合わせた成形がより一層容易となる。
【0078】
本実施態様における供給部150の具体例としては、例えば、
図4に示すように、形状調整手段140の前段に、供給ノズル151と、この供給ノズル151を往復移動させる移動機構152とを設けることが挙げられる。
供給ノズル151は、中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂を移送・排出することができるものであればよく、特に限定されない。
また、供給ノズル151を往復移動させる移動機構152は、供給ノズル151を導入部101上で往復移動させることができるものであればよく、具体的な機構(構造)については特に限定されない。
【0079】
このとき、移動機構152により供給ノズル151が移動する方向については特に限定されないが、
図4に示すように、導入部101の幅方向に対して往復移動させることが好ましい。これにより、導入部101上に供給される処理対象物P0の形状を、より迅速かつ確実に幅方向へ広げやすくすることが可能となり、後段の形状調整手段140による形状調整を最適化することが容易となる。
【0080】
以上のように、本実施態様における処理装置100Cでは、含水状態の高吸水性樹脂の形状を乾燥処理部での乾燥に適した形に調整するための形状調整手段の前段において、含水状態の高吸水性樹脂の形状を一定程度広がりやすくすることが可能となる。これにより、形状調整手段による形状調整がより一層容易となる。併せて、乾燥処理部内での乾燥効率がより向上するとともに、乾燥処理部から排出される高吸水性樹脂の回収あるいは返送手段による移送の安定化が容易となる。
【0081】
また、本実施態様の処理装置100Cは、第1の実施態様に示したSAP再生システム1における乾燥部25として適用することができる。これにより、第1の実施態様と同様に、使用済高吸水性樹脂の再生処理を行うことが可能となる。
【0082】
なお、上述した実施態様は、使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法の一例を示すものである。本発明に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法は、一般家庭、病院や福祉施設などから排出される使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を回収および再生し、再製品化する技術において好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 SAP再生システム、10 分離手段、11 分離部、12 脱水手段、20 再生処理手段、21 洗浄部、22 酸反応部、23 濃縮部、24 中和部、25 乾燥部、100A,100B,100C 処理装置、101 導入部、110 乾燥処理部、111 コンベヤ、120 未乾燥樹脂分離部、121 振動付与機構、122 粒度選別機構、130 返送手段、131 回収部、132 搬送部、140 形状調整手段、141 押圧ロール、150 供給部、151 供給ノズル、152 移動機構、L1~L7 ライン、P0 処理対象物(中和処理後の含水状態の高吸水性樹脂)、P1 中間処理物、P2 乾燥済高吸水性樹脂、P3 未乾燥の高吸水性樹脂、P4 乾燥済高吸水性樹脂と未乾燥の高吸水性樹脂の混合物