(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094576
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の再生システム、使用済高吸水性樹脂の処理方法、および使用済高吸水性樹脂の再生方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/04 20060101AFI20240703BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240703BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240703BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08J11/04
B01J20/34 G
B01J20/34 H
B01J20/26 D
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211207
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182314
【氏名又は名称】トータルケア・システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】小林 信弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 大祐
【テーマコード(参考)】
4F401
4G066
【Fターム(参考)】
4F401AA07
4F401AA18
4F401AD04
4F401AD07
4F401BA06
4F401BA13
4F401CA31
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4F401DA05
4F401DA08
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4F401EA28
4G066AC11A
4G066AC11B
4G066AC39A
4G066CA43
4G066DA12
4G066DA13
4G066EA05
4G066GA01
4G066GA11
4G066GA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題の一つは、使用済高吸水性樹脂の処理において、高吸水性樹脂の中和処理を効率化かつ安定化させることが可能な使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮処理部と、高吸水性樹脂を中和する中和処理部と、高吸水性樹脂を平板化する平板化手段とを備え、中和処理部は、平板状の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する薬剤添加手段を有する使用済高吸水性樹脂の処理装置およびこの装置を用いた処理方法を提供する。この発明によれば、含水状態(不定形)であることに起因する高吸水性樹脂間の間隙や、高吸水性樹脂の付着水による影響を低減させ、含水状態の高吸水性樹脂に添加した際の粉体状薬剤の偏在化を抑制し、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済高吸水性樹脂の処理装置であって、
酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮処理部と、
前記高吸水性樹脂を中和する中和処理部と、
前記高吸水性樹脂を平板化する平板化手段と、を備え、
前記中和処理部は、平板状の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する薬剤添加手段を有することを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項2】
前記薬剤添加手段は、平板状の高吸水性樹脂の幅方向一様に粉体状薬剤を添加することを特徴とする、請求項1に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項3】
前記中和処理部は、
前記薬剤添加手段の後段に、高吸水性樹脂と粉体状薬剤を撹拌混合する撹拌混合手段を備え、
前記薬剤添加手段と前記撹拌混合手段の間に、前記撹拌混合手段への投入が可能となるように平板状の高吸水性樹脂を縮幅する縮幅手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項4】
前記平板化手段の前段に、前記含水状態の高吸水性樹脂を供給する供給部を更に備え、
前記供給部は、往復移動しながら前記含水状態の高吸水性樹脂を供給することを特徴とする、請求項1に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置。
【請求項5】
使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離手段と、
前記分離手段で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理手段とを備え、
前記分離手段は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水手段を含み、
前記再生処理手段は、
分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄部と、
前記洗浄部の後段で高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応部と、
前記酸反応部の後段で高吸水性樹脂を濃縮する濃縮部と、
前記濃縮部の後段で高吸水性樹脂を中和する中和部と、
前記中和部の後段で高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥部と、を備え、
前記濃縮部および前記中和部は、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用済高吸水性樹脂の処理装置であることを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の再生システム。
【請求項6】
使用済高吸水性樹脂の処理方法であって、
酸反応工程後の含水状態の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮処理工程と、
前記高吸水性樹脂を中和する中和処理工程と、
前記高吸水性樹脂を平板化する平板化工程と、を備え、
前記中和工程は、平板状の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する薬剤添加工程を有することを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の処理方法。
【請求項7】
使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理工程とを備え、
前記分離工程は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水工程を含み、
前記再生処理工程は、
分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄工程と、
前記洗浄工程後の高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応工程と、
前記酸反応工程後の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮工程と、
前記濃縮工程後の高吸水性樹脂を中和する中和工程と、
前記中和工程後の高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
前記濃縮工程および前記中和工程は、請求項6に記載の使用済高吸水性樹脂の処理方法によるものであることを特徴とする、使用済高吸水性樹脂の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法に関するものである。
また、本発明は、使用済高吸水性樹脂の再生システムおよび使用済高吸水性樹脂の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッドのように、体液を吸収させることを目的とした物品(以下、「体液吸収性物品」と呼ぶ)は、主にパルプ、高吸水性樹脂(以下、「SAP」とも呼ぶ)、プラスチックから構成されており、幅広く利用されている。特に、高齢者社会を迎える中、一般家庭、病院や福祉施設において、紙おむつの使用量は年々増加している。
そして、大量に排出される使用済の体液吸収性物品の処分については、廃棄物として主に焼却処理が行われている。
【0003】
しかし、水分を多く含む使用済の体液吸収性物品を焼却処理するには、高温処理や焼却設備の大型化が必要となり、炉の劣化を促進するなど、焼却設備への負荷が大きいという問題がある。また、資源の有効活用という観点からも、焼却処理によらず、使用済の体液吸収性物品から構成成分を分離回収し、再利用することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用済の体液吸収性物品の処理として、使用済体液吸収性物品に含有されるパルプと高吸水性樹脂(吸水性ポリマー)とのゲル状混合物に、金属塩の混合物を添加して高吸水性樹脂の脱水、収縮・固化を行うとともに、着色した後、パルプおよび高吸水性樹脂を分離回収し、この分離回収した高吸水性樹脂に対して酸処理、アルカリ処理を行うことで高吸水性樹脂の吸水力を回復させる使用済体液吸収性物品からのパルプおよび高吸水性樹脂の分離回収方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離回収する際に、金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水後、酸処理およびアルカリ処理を経ることで高吸水性樹脂の吸水力を回復させることは知られている。
このとき、高吸水性樹脂の中和処理(アルカリ処理)においては、液状薬剤(アルカリ水溶液等)を用いると、高吸水性樹脂が水分を吸収するため、中和された高吸水性樹脂の固形分濃度が低下してしまい、その結果、後段の乾燥処理で必要となるエネルギーが増加してしまう。このため、中和処理においては粉体状薬剤を添加するのが好ましい。一方、中和処理としては、酸による処理(酸反応)後の含水状態の高吸水性樹脂に対し、粉体状薬剤を供給することになるが、含水状態の高吸水性樹脂は不定形かつ付着水が存在することで、供給した粉体状薬剤が偏在しやすく、中和処理を均一に行うことが困難となる。しかしながら、特許文献1には中和処理において添加する薬剤の剤型や、薬剤と高吸水性樹脂の混合に係る詳細については何ら記載されていない。
【0007】
本発明の課題は、使用済高吸水性樹脂の処理において、高吸水性樹脂の中和処理を効率化かつ安定化させることが可能な使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を提供することである。
併せて、本発明の課題は、上記使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を用い、使用済体液吸収性物品の構成成分のうち、特に高吸水性樹脂を資源として有効に再利用することが可能となる使用済高吸水性樹脂の再生システムおよび使用済高吸水性樹脂の再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂の中和処理において、まず含水状態の高吸水性樹脂を濃縮した後、粉体状薬剤を添加する中和処理を行うことで、中和処理の効率化かつ安定化が可能となることを見出して、本発明を完成した。
また、本発明者は、高吸水性樹脂の中和に係る上記操作を含み、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離し、所定の順序で高吸水性樹脂の吸水性能を回復させるための各処理を行うことで、使用済高吸水性樹脂の再生処理を効果的に進行させ、使用済の体液吸収性物品の構成成分について資源としての利用が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置は、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮処理部と、高吸水性樹脂を中和する中和処理部と、高吸水性樹脂を平板化する平板化手段と、を備え、中和処理部は、平板状の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する薬剤添加手段を有するという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置は、強酸添加による酸反応を経て含水状態となった(使用済)高吸水性樹脂を平板化して濃縮処理した後に、粉体状薬剤を用いて中和処理を行うものである。これにより、含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を混合するにあたり、含水状態(不定形)であることに起因する高吸水性樹脂間の間隙や、高吸水性樹脂の付着水による影響を低減させ、粉体状薬剤の偏在化を抑制することができ、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となる。また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置は、濃縮処理した高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する中和処理を行うことで、中和処理後の高吸水性樹脂における水分率を処理装置導入前よりも低下させることが可能となる。これにより、中和処理後の高吸水性樹脂を再生品(製品)とするために乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することが可能となる。
【0010】
また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置の一実施態様としては、薬剤添加手段は、平板状の高吸水性樹脂の幅方向一様に粉体状薬剤を添加するという特徴を有する。
この特徴によれば、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を混合するにあたり、粉体状薬剤の偏在化をより一層抑制することができ、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが容易となる。
【0011】
また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置の一実施態様としては、中和処理部は、薬剤添加手段の後段に、高吸水性樹脂と粉体状薬剤を撹拌混合する撹拌混合手段を備え、薬剤添加手段と撹拌混合手段の間に、撹拌混合手段への投入が可能となるように平板状の高吸水性樹脂を縮幅する縮幅手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を混合するにあたり、薬剤添加に加えて撹拌混合を行うことで、高吸水性樹脂と粉体状薬剤との混合効率をより一層高めることが可能となる。また、撹拌混合に供する際に、薬剤が添加された平板状の高吸水性樹脂を縮幅することで凹型の形状となり、薬剤は高吸水性樹脂の表面だけではなく、一部が高吸水性樹脂内に取り込まれる形となり、撹拌混合における混合効率(接触効率)をより一層高めることが可能となる。これにより、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂の中和処理について、更なる効率化および安定化を図ることが可能となる。併せて、薬剤が添加された高吸水性樹脂を撹拌混合手段への投入に適した形状とすることが可能となり、効率的に撹拌混合手段へと投入することが可能となる。
【0012】
また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置の一実施態様としては、平板化手段の前段に、含水状態の高吸水性樹脂を供給する供給部を更に備え、供給部は、往復移動しながら含水状態の高吸水性樹脂を供給するという特徴を有する。
この特徴によれば、含水状態の高吸水性樹脂の形状を平板化するための平板化手段の前段において、含水状態の高吸水性樹脂の形状を一定程度広がりやすくすることが可能となる。これにより、平板化手段による平板化がより一層容易となる。併せて、平板化において含水状態の高吸水性樹脂に掛かる圧力を小さくすることが容易となり、高吸水性樹脂の物性変化を抑制することが容易となる。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の再生システムとしては、使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離手段と、分離手段で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理手段とを備え、分離手段は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水手段を含み、再生処理手段は、分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄部と、洗浄部の後段で高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応部と、酸反応部の後段で高吸水性樹脂を濃縮する濃縮部と、濃縮部の後段で高吸水性樹脂を中和する中和部と、中和部の後段で高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥部と、を備え、濃縮部および中和部は、上述した使用済高吸水性樹脂の処理装置を備えるという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の再生システムは、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する分離手段と、分離された高吸水性樹脂の再生処理を行う再生処理手段とからなるものである。そして、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する際に、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水処理を行うことで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に外部に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めるものである。また、分離回収した高吸水性樹脂に対し、所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となるものである。特に、強酸添加による酸反応部の後段に設けられる濃縮部および中和部として、上述した処理装置を備えることで、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となるとともに、中和部の後段における乾燥部で乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することができる。また、大量に排出される使用済紙おむつ等の使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂の分離回収および再製品化を可能とすることで、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の処理方法は、酸反応工程後の含水状態の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮処理工程と、高吸水性樹脂を中和する中和処理工程と、を備え、濃縮処理工程は、高吸水性樹脂を平板化する平板化工程を有し、中和工程は、平板状の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する薬剤添加工程を有するという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の処理方法は、強酸添加による酸反応を経て含水状態となった(使用済)高吸水性樹脂を平板化して濃縮処理した後に、粉体状薬剤を用いて中和処理を行うものである。これにより、含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を混合するにあたり、含水状態(不定形)であることに起因する高吸水性樹脂間の間隙や、高吸水性樹脂の付着水による影響を低減させ、粉体状薬剤の偏在化を抑制することができ、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となる。また、本発明の使用済高吸水性樹脂の処理方法は、濃縮処理した高吸水性樹脂に粉体状薬剤を添加する中和処理を行うことで、中和処理後の高吸水性樹脂における水分率を処理装置導入前よりも低下させることが可能となる。これにより、中和処理後の高吸水性樹脂を再生品(製品)とするために乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することが可能となる。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済高吸水性樹脂の再生方法は、使用済の体液吸収性物品を、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する分離工程と、分離工程で分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理工程とを備え、分離工程は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水工程を含み、再生処理工程は、分離された高吸水性樹脂の洗浄を行う洗浄工程と、洗浄工程後の高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応工程と、酸反応工程後の高吸水性樹脂を濃縮する濃縮工程と、濃縮工程後の高吸水性樹脂を中和する中和工程と、中和工程後の高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、を備え、濃縮工程および中和工程は、上記使用済高吸水性樹脂の処理方法によるものであるという特徴を有する。
本発明の使用済高吸水性樹脂の再生方法は、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する分離工程と、分離された高吸水性樹脂の再生処理を行う再生処理工程とからなるものである。そして、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する際に、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水処理を行うことで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に外部に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めるものである。また、分離回収した高吸水性樹脂に対し、所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となるものである。特に、強酸添加による酸反応工程の後段に設けられる濃縮工程および中和工程を、上述した処理方法とすることで、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となるとともに、中和工程の後段における乾燥工程で乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することができる。また、大量に排出される使用済紙おむつ等の使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂の分離回収および再製品化を可能とすることで、新たな資源としての利用を促進することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用済高吸水性樹脂の処理において、高吸水性樹脂の中和処理を効率化かつ安定化させることが可能な使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を提供することができる。
併せて、本発明によれば、上記使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の処理方法を用い、使用済体液吸収性物品の構成成分のうち、特に高吸水性樹脂を資源として有効に再利用することが可能となる使用済高吸水性樹脂の再生システムおよび使用済高吸水性樹脂の再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置の別態様を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の再生システムの概略説明図(フロー図)である。
【
図4】本発明の第2の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第3の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における使用済高吸水性樹脂の処理方法および使用済高吸水性樹脂の再生方法は、本発明における使用済高吸水性樹脂の処理装置および使用済高吸水性樹脂の再生システムの構成および作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法については、本発明に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明における体液吸収性物品とは、一般に紙おむつ(子供用および大人用)、失禁パッド、生理用ナプキン、母乳パッド等、体液を吸収し、使い捨て衛生用品として販売、使用されている公知のものを指す。
体液吸収性物品の構造の一例としては、例えば、使用者の肌に直接触れる部分である表面材と、体液を吸収する吸水材と、物品の外側を覆う防水材(防水シート)を含むものが挙げられる。
より具体的には、体液吸収性物品の一つである紙おむつの構成成分としては、例えば、表面材としてはポリプロピレンやポリエステルなどの化学繊維からなる不織布などが挙げられる。また、吸水材としては、パルプ、高吸水性樹脂などが挙げられる。また、防水材としてはポリエチレンフィルムなどの樹脂製フィルムや、ポリエチレンラミネート紙およびポリエチレンラミネート不織布のように樹脂による加工処理がなされた紙や不織布などが挙げられる。
なお、本発明においては、体液吸収性物品の構成成分のうち、パルプ、高吸水性樹脂以外の構成成分である不織布、樹脂製フィルムおよび樹脂加工紙をまとめて「プラスチック」と称する。
【0020】
本発明において使用済体液吸収性物品とは、使用の状態については特に限定されない。例えば、固形状の汚物(大便等)が付着したもの、液体状の汚物(尿、経血等)が付着したもの、あるいはその両方が付着したものが挙げられるが、再生処理に係るコストや処理効率を鑑みると、尿を主成分として吸収している状態が好ましい。
また、本発明で用いる使用済体液吸収性物品は、例えば、一般家庭、病院や福祉施設など、体液吸収性物品を利用する使用者が居住ないしは滞在する施設などから排出されるものを収集・回収し、搬送されたものが挙げられる。
なお、以下の実施態様においては、使用済体液吸収性物品として、尿を主成分として吸収した紙おむつを主に例示して説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明における高吸水性樹脂(SAP)は、使用済体液吸収性物品における吸水材として用いられるものであればよく、具体的な構造や組成については特に限定されないが、例えば、親水性単量体を重合して得られる水膨潤性架橋重合体が挙げられる。より具体的には、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体、架橋され部分的に中和された澱粉-アクリル酸グラフトポリマー、イソブチレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体のケン化物、アクリルアミドや(共)重合体の加水分解物、アクリロニトリル重合体の加水分解物、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられ、アクリル酸またはその塩を主成分とするポリアクリル酸(塩)系架橋重合体が特に好ましく挙げられる。
【0022】
本発明の処理装置および処理方法による処理対象となる高吸水性樹脂は、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂(以下、「処理対象物P0」とも呼ぶ)である。より具体的には、使用済高吸水性樹脂の処理において、吸収した体液を排出させた高吸水性樹脂官能基の置換処理に伴う酸反応を行った後の含水状態の高吸水性樹脂を処理対象とするものである。特に、使用済高吸水性樹脂の再生処理において、酸反応により高吸水性樹脂官能基を水素置換した含水状態の高吸水性樹脂を処理対象とすることが挙げられる。
【0023】
〔第1の実施態様〕
(使用済高吸水性樹脂の処理装置)
図1は、本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
図1Aは、上方から見た平面図を、
図1Bは、側面から見た断面図を示すものである。
本実施態様に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置100A(以下、単に「処理装置100A」と呼ぶ)は、処理対象物P0を濃縮処理部110に導入するための導入部101と、濃縮処理部110と、中和処理部120と、を備えるものである。
【0024】
本実施態様における処理装置100Aは、主に使用済高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応を行った後の処理に係るものである。より具体的には、本実施態様における処理装置100Aは、後述する使用済高吸水性樹脂の再生システム1における再生処理手段20のうち、酸反応部22後段に設けられる濃縮部23および中和部24として適用することが挙げられる。
【0025】
以下、処理装置100Aにおける各構成について詳細に説明する。
(導入部)
導入部101は、処理対象物P0を濃縮処理部110に導入するためのものである。導入部101としては、処理対象物P0を濃縮処理部110の導入口まで移送させることができるものであればよく、コンベヤなど、駆動部を有する移送機構を用いることのほか、傾斜部を有する平板やトラフなど、重力による移送を行うものなどが挙げられる。
【0026】
(濃縮処理部)
濃縮処理部110は、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂(処理対象物P0)を濃縮し、処理対象物P0の水分率低下および高濃度化を行うためのものである。
本実施態様における濃縮処理部110は、処理対象物P0の濃縮とともに、後述する中和処理部120による中和処理用の薬剤(粉体状薬剤)の添加、混合に適した形態とするものである。より具体的には、本実施態様における濃縮処理部110としては、処理対象物P0を平板化する平板化手段111を備えるものが挙げられる。
【0027】
平板化手段111は、処理対象物P0の濃縮と平板化が可能なものであればよく、例えば、多重円板型濃縮機やベルト式ろ過濃縮機などが挙げられる。また、平板化手段111としては、処理対象物P0の濃縮および平板化以外に処理対象物P0の物性変化が生じるのを抑制することが好ましい。具体的には、平板化手段111による濃縮や平板化に必要となる処理対象物P0への圧力が最小限となるよう、処理条件や装置構造等を選択、調整することが好ましい。なお、本実施態様の濃縮処理部110における平板化手段111としては、
図1に示すように、処理対象物P0を載置したベルト112を移動させつつ、重力ろ過による濃縮と、それに伴う平板化を行うことができるベルト式ろ過濃縮機を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。また、このとき、ベルト112の材質や構造については、処理対象物P0の固体分を保持し、水分を透過できるものであればよく、詳細な構造については特に限定されない。
【0028】
図1に示すように、導入部101から、濃縮処理部110の導入口(図示省略)を介し、濃縮処理部110内に処理対象物P0が導入される。そして、本実施態様における平板化手段111において、ベルト112上に載置された処理対象物P0から重力によって透過した水分がろ液として排出されることで、処理対象物P0の濃縮と平板化が進行する。
なお、上述したように、処理対象物P0の物性変化を抑制するために、このとき処理対象物P0に掛かる圧力は最小限とすることが好ましい。一方、処理対象物P0の濃縮および平板化を迅速かつ効率的に進行させるために、処理対象物P0をベルト112上部から押圧する押圧ロール113を更に設けるものとしてもよい。また、このとき、必要に応じて複数本の押圧ロール113を設けるものとしてもよい。この場合、平板の厚みを徐々に整えるために、上流から下流に向けてベルト112との間隔を漸減させる構造を採用することが効果的である。
【0029】
本実施態様の平板化手段111によって処理対象物P0を濃縮かつ平板化することで、処理対象物P0に含まれる付着水を低減させるとともに、含水状態(不定形)であることに起因する高吸水性樹脂間の間隙を低減させることが可能となる。
そして、濃縮かつ平板化した処理対象物P0(以下、「平板状高吸水性樹脂P1」と呼ぶ)は、中和処理部120に導入される。
【0030】
(中和処理部)
中和処理部120は、濃縮処理部110の後段に設けられ、濃縮処理部110から導入される平板状高吸水性樹脂P1に対し、中和処理を行うためのものである。
酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂(処理対象物P0および平板状高吸水性樹脂P1)は、高吸水性樹脂官能基が水素に置換されたものであり、吸水性能が一定程度回復することが知られているが、再生品(製品)として利用するには十分とは言えない。したがって、中和処理を行うことで、水素置換された高吸水性樹脂を水素イオン以外の陽イオンで置換(アルカリ置換)し、使用前の高吸水性樹脂と同様の組成とすることで、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させることが可能となる。
【0031】
中和処理として、水素置換された高吸水性樹脂に対し、液体状の薬剤を添加すると、陽イオンへの置換反応と並行して吸水が生じてしまうため、中和された高吸水性樹脂の固形分濃度が低下してしまい、その結果、後段の乾燥処理において、高吸水性樹脂の乾燥に必要なエネルギーが増加してしまう。このため、中和処理部120で用いる薬剤は固体状薬剤とし、高吸水性樹脂との接触(混合)効率向上の面からは、粉体状薬剤が特に好ましく用いられる。
【0032】
本実施態様における中和処理部120は、平板状高吸水性樹脂P1に対し、中和処理を行うための薬剤(粉体状薬剤R)を添加して、高吸水性樹脂の中和処理(アルカリ置換)を行うものであり、例えば、濃縮処理部110から導入された平板状高吸水性樹脂P1を搬送する搬送部121と、搬送部121上の平板状高吸水性樹脂P1に対し粉体状薬剤Rを添加する薬剤添加手段122を備えるものが挙げられる。
【0033】
搬送部121は、濃縮処理部110から導入される平板状高吸水性樹脂P1を搬送することができるものであればよく、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)を有するものが好ましい。
【0034】
薬剤添加手段122は、平板状高吸水性樹脂P1に対し粉体状薬剤Rを添加するためのものである。
従来、含水状態の高吸水性樹脂に対し粉体状薬剤を供給すると、含水状態(不定形)であることに起因する高吸水性樹脂間の間隙や、高吸水性樹脂の付着水の存在により、粉体状薬剤が偏在化しやすく、高吸水性樹脂全体を均一に中和処理することが困難であった。
一方、上述したように、濃縮処理部110を経た平板状高吸水性樹脂P1は、高吸水性樹脂間の間隙や、高吸水性樹脂の付着水が低減した状態となっており、ここに粉体状薬剤Rを添加することで、処理効率を低下させることなく、かつ安定した中和処理を行うことが可能となる。
【0035】
ここで、粉体状薬剤Rとしては、水素置換された高吸水性樹脂を、水素イオン以外の陽イオンで置換することができる薬品であればよく、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等を挙げることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの群から少なくとも1つ選択され得る。アルカリ金属塩は、1種類であってもよく、複数の種類のアルカリ金属塩の混合物であってもよい。より具体的には、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
本実施態様における粉体状薬剤Rとしては、粉末状態で入手しやすいことおよびコスト面を鑑み、炭酸ナトリウムが特に好適に用いられる。
【0036】
薬剤添加手段122は、粉体状薬剤Rを平板状高吸水性樹脂P1に対して添加することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されないが、平板状高吸水性樹脂P1の所定領域内に対し、粉体状薬剤Rを一様に添加することが可能なものが好ましい。これにより、高吸水性樹脂との混合において粉体状薬剤Rの偏在化をより一層抑制することが可能となる。
【0037】
本実施態様における薬剤添加手段122の一例としては、例えば、
図1に示すように、粉体状薬剤Rを貯留した薬剤貯留部123と、薬剤貯留部123から供給される粉体状薬剤Rを受け止め、平板状高吸水性樹脂P1上方から粉体状薬剤Rを供給するシュート124と、シュート124の排出口を平板状高吸水性樹脂P1と平行に往復動させる移動機構125を備えるものが挙げられる。これにより、往復動するシュート124を介し、搬送部121上の平板状高吸水性樹脂P1の所定領域内に対して粉体状薬剤Rが均一に供給される。
【0038】
このとき、シュート124の幅を、平板状高吸水性樹脂P1の幅方向と略同じ長さとすることが好ましい。これにより、平板状高吸水性樹脂P1の幅方向一様に粉体状薬剤Rを添加することが可能となる。その結果、含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤Rを混合するにあたり、粉体状薬剤Rの偏在化をより一層抑制することができ、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが容易となる。
【0039】
また、
図2は、本実施態様の処理装置100Aに係る薬剤添加手段122の別態様を示すものである。
図2Aは、上方から見た平面図を、
図2Bは、側面から見た断面図を示すものである。なお、
図1に示したものと同じ構造については説明を省略する。
図2に示すように、薬剤添加手段122の別態様としては、粉体状薬剤Rを貯留した薬剤貯留部123と、薬剤貯留部123から供給される粉体状薬剤Rを平板状高吸水性樹脂P1上方から圧縮空気とともに供給するノズル126aを有する噴霧手段126を備えるものが挙げられる。これにより、噴霧手段126を介し、搬送部121上の平板状高吸水性樹脂P1の所定領域内に対して粉体状薬剤Rが均一に供給される。
このとき、噴霧手段126のノズル126aは、噴霧(供給)する領域が、平板状高吸水性樹脂P1の幅方向と略同じ長さとなるものを用いることが好ましい。これにより、平板状高吸水性樹脂P1の幅方向一様に粉体状薬剤Rを添加することができ、薬剤添加手段122の好適な別態様として示されるものとなる。
【0040】
中和処理部120によって中和された中和処理後の高吸水性樹脂(以下、単に「高吸水性樹脂P2」とも呼ぶ)は、系外に排出される。
系外に排出された中和処理後の高吸水性樹脂P2は、再生品(製品)として利用するため、乾燥処理に供することが好ましい。このとき、本実施態様における処理装置100Aでは、濃縮処理した高吸水性樹脂(平板状高吸水性樹脂P1)に粉体状薬剤Rを添加する中和処理を行うことから、高吸水性樹脂P2における水分率を処理装置100A導入前よりも低下させることが可能となる。これにより、高吸水性樹脂P2を再生品(製品)とするために乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することが可能となる。
【0041】
以上のように、本実施態様における処理装置100Aは、酸反応後の含水状態の(使用済)高吸水性樹脂を平板化して濃縮した後に、粉体状薬剤を用いて中和処理を行うものである。これにより、含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を混合するにあたり、含水状態(不定形)であることに起因する高吸水性樹脂間の間隙や、高吸水性樹脂の付着水による影響を低減させ、粉体状薬剤の偏在化を抑制することができ、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となる。
【0042】
(使用済高吸水性樹脂の再生システム(SAP再生システム))
図3は、本発明の第1の実施態様における使用済高吸水性樹脂の再生システムを示す概略説明図である。なお、
図3は、本実施態様における使用済高吸水性樹脂の再生システムによる使用済高吸水性樹脂の再生プロセスを示すフロー図である。
本実施態様に係る使用済高吸水性樹脂の再生システム1(以下、「SAP再生システム1」と呼ぶ)は、
図3に示すように、使用済体液吸収性物品をパルプ、高吸水性樹脂(SAP)、プラスチックに分離する分離手段10、分離された高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理手段20を備えるものである。また、
図3において、太線で示された矢印(ラインL1~L6)は、高吸水性樹脂(SAP)の移動経路(順路)を示すものであり、配管や移送機構(コンベヤ等)からなるものである。
【0043】
本実施態様のSAP再生システム1において、使用済体液吸収性物品を分離手段10に投入することで、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分離する。ここで、分離手段10には、高吸水性樹脂の脱水を行う脱水手段12が設けられていることで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に高吸水性樹脂外に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めるものである。また、分離手段10によって分離回収した高吸水性樹脂に対し、再生処理手段20によって所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となるものである。
以下、SAP再生システム1における分離手段10および再生処理手段20の詳細について説明する。
【0044】
(分離手段)
本実施態様の分離手段10は、使用済体液吸収性物品をパルプ、高吸水性樹脂、プラスチックに分類する分離工程を行うためのものである。
分離手段10としては、
図3に示すように、使用済体液吸収性物品が投入され、分離処理が行われる分離部11と、分離部11内の高吸水性樹脂を脱水する脱水手段12を備えるものが挙げられる。
【0045】
分離部11は、使用済体液吸収性物品とともに、調整水が供給され、使用済体液吸収性物品を各構成成分に分離するためのものである。
ここでの調整水とは、使用済体液吸収性物品を分離部11内で各構成成分に分離する際に、パルプおよび高吸水性樹脂をスラリー化し、分離効率を高めるために供給される水である。このため、清澄度が若干劣る水を使用でき、下水処理水等の比較的清澄度の低い処理水、再生水のほか、循環水を用いることができる。
【0046】
分離部11において、使用済体液吸収性物品を各構成成分に分離する具体的な手段については特に限定されない。
本実施態様に係る分離部11としては、使用済体液吸収性物品が投入される分離槽を備え、使用済体液吸収性物品の各構成成分への分離に係る各種処理を行うための手段を分離槽に対して設けるものとすることが挙げられる。
【0047】
分離部11としては、例えば、使用済体液吸収性物品を物理的に分解し、槽内に構成成分を分散させるための分散手段として、破袋手段や細分化手段を分離槽内あるいは分離槽外に設けることが挙げられる。
ここで、破袋手段とは、使用済体液吸収性物品を収集・搬送する際に用いられる包装体(袋体)を破断するものである。また、細分化手段とは、使用済体液吸収性物品の表面材や防水材を破断し、後段における溶解、撹拌等の機械的処理に適合する形状にするとともに、内側の吸水材(パルプおよび高吸水性樹脂)を外部に放出させることができるものである。
分散手段の具体的な例としては、例えば、強撹拌を行うもの、破砕刃による裁断を行うもの、多数の針がついた部材を繰り返し刺し込むものなどが挙げられる。
【0048】
また、分離部11としては、分散手段により分離槽内に分散した構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を設けることが挙げられる。
分離回収手段としては、パルプ、高吸水性樹脂、プラスチックを構成成分ごとに分離回収することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、サイズによる分級、比重差による分離のほか、分離槽とは別の処理槽を更に設け、溶媒・薬品に対する可溶性又は不溶性に基づく分離を行うものなどが挙げられる。
そして、分離回収手段によって分離された高吸水性樹脂は、ラインL1を介して再生処理手段20に導入される。一方、パルプおよびプラスチックは、配管あるいは移送機構からなるラインL7を介してSAP再生システム1系外に排出される。
なお、本実施態様におけるSAP再生システム1では、分離手段10において高吸水性樹脂は薬品等による溶解(分解)を行わずに、分散あるいは濃縮状態で回収し、ラインL1を介して再生処理手段20に導入するものであるが、その他の構成成分であるパルプおよびプラスチックについては、分離手段10において溶解した状態(溶解液)として分離回収するものであってもよい。
【0049】
脱水手段12は、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水工程を行うためのものである。
高吸水性樹脂は、通常、液中で陽イオン(塩成分)が解離するため、高吸水性樹脂の官能基(例えば、カルボキシル基等)がマイナスの電荷を有することや、樹脂の外側にある水とのイオン濃度差が生じることにより、水が高吸水性樹脂内部に引き寄せられる力(静電相互作用や浸透圧に基づく力)が働くことで吸水が行われる。一方、体液を吸収した使用済高吸水性樹脂に対し、体液(水)の代わりに高吸水性樹脂に取り込まれるものとして多価金属塩(多価金属イオン)を存在させることで、使用済高吸水性樹脂の脱水が可能となる。
したがって、脱水手段12としては、使用済高吸水性樹脂に対し、水の存在下で多価金属塩を添加することが挙げられる。
【0050】
脱水手段12は、
図3に示すように、使用済体液吸収性物品および調整水が投入された分離部11(分離槽)に、多価金属塩を添加することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
例えば、多価金属塩を貯留する槽と、この槽と分離槽を接続する供給用配管とを備えるものが挙げられる。なお、多価金属塩は固体状態または水に溶解した水溶液状態のいずれの形態であってもよい。また、供給用配管に、多価金属塩の供給量を制御する制御機構を備えるものとしてもよい。
【0051】
多価金属塩としては、2価以上の価数を有する金属の塩であればよく、例えば、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩が挙げられる。 アルカリ土類金属塩としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの水溶性の塩が使用できる。好ましいアルカリ土類金属塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられ、中でも、コストや脱水効果等の点から、塩化カルシウムがより好ましい。
遷移金属塩としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の水溶性の塩が挙げられる。遷移金属塩としては、吸水性ポリマーに取り込まれるものであれば、無機酸塩、有機酸塩、錯体等を問わず用いられる。そのうち、コストや入手容易性等の点から、遷移金属塩としては、無機酸塩または有機酸塩が好ましい。無機酸塩としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩;塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩;塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩;塩化銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。有機酸塩類としては、例えば、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0052】
脱水手段12より多価金属塩が添加されることで、分離部11内の高吸水性樹脂は、吸収した体液を放出し、吸水性能をほとんど失う状態となる。これにより、高吸水性樹脂は、沈降性および水からの分離性が向上した粒子状態となる。したがって、上述した分離回収手段による分離効率が向上することになる。
【0053】
また、分離手段10としては、上述した分離部11および脱水処理手段12以外にも、使用済体液吸収性物品を各構成成分(パルプ、高吸水性樹脂、プラスチック)へと効果的・効率的に分類するための手段や、分離手段10の後段における各処理工程に対し適切な状態で導入するための手段を備えるものとしてもよい。例えば、分離処理中あるいは分離処理後の各構成成分の濃度を調整するための濃度調整槽を設けることなどが挙げられる。
【0054】
(再生処理手段)
分離手段10を経た高吸水性樹脂はラインL1を介して再生処理手段20に導入される。
再生処理手段20は、高吸水性樹脂の吸水性能を回復させる再生処理工程を行うためのものである。
本実施態様における再生処理手段20としては、
図3に示すように、上述した処理装置100Aからなる洗浄部21と、酸反応部22と、濃縮部23と、中和部24と、乾燥部25を備え、それぞれがラインL2~L5により接続されているものが挙げられる。また、再生処理済の高吸水性樹脂(再生SAP)は、乾燥部25からラインL6を介して排出される。
【0055】
洗浄部21は、分離手段10において分離され、ラインL1を介して回収された高吸水性樹脂を洗浄する洗浄工程を行うためのものである。
洗浄部21としては、高吸水性樹脂の表面(外面)に付着した状態の夾雑物(汚物や分離し切れなかったパルプ等)を洗浄水により除去することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。ここで、洗浄水としては、清澄度が若干劣る水を使用でき、下水処理水等の比較的清澄度の低い処理水、再生水のほか、循環水を用いることができる。
洗浄部21の具体例としては、例えば、高吸水性樹脂と洗浄水が投入・貯留される洗浄槽を設け、洗浄槽内部で撹拌することで、高吸水性樹脂から夾雑物を除去するものなどが挙げられる。
洗浄部21で洗浄された高吸水性樹脂は、除去された夾雑物が含まれる洗浄水とは分離し、ラインL2を介して酸反応部22に導入される。
【0056】
酸反応部22は、洗浄部21の後段に設けられ、高吸水性樹脂に強酸を添加する酸反応工程を行うためのものである。
上述したように、分離手段10における脱水手段12により、酸反応部22に導入される高吸水性樹脂は多価金属塩の陽イオンにより吸水性能を失った状態にある。
酸反応部22は、この高吸水性樹脂に強酸を加えてpHを低下させることで、高吸水性樹脂における多価金属塩由来の陽イオン(例えば、カルシウムイオン)を水素イオンと置換するものである。
【0057】
酸反応部22としては、例えば、ラインL2を介して導入される高吸水性樹脂を貯留することができ、強酸の添加手段が接続された酸反応槽を備えることが挙げられる。なお、強酸の添加手段については特に限定されないが、例えば、強酸を貯留する槽および供給用配管を備えるものなどが挙げられる。
【0058】
酸反応部22で添加される強酸としては、酸反応部22内のpHを3以下、好ましくは2以下とすることができるものであればよく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
また、酸反応部22では、高吸水性樹脂と強酸との反応を好適に進行させるために、調整水を添加し、高吸水性樹脂濃度(水中における高吸水性樹脂含有量)について調整を行うことが好ましい。このとき、酸反応部22における好適な高吸水性樹脂濃度としては、酸反応部22における撹拌混合が容易となる範囲とすることが好ましく、具体的には、5質量%以下、より好ましくは3質量%以下とすることが挙げられる。
【0059】
酸反応部22で処理された高吸水性樹脂は、スラリー(分散液)としてラインL3を介して濃縮部23に導入される。
【0060】
濃縮部23は、酸反応部22の後段に設けられ、高吸水性樹脂を濃縮する濃縮工程を行うためのものである。
ここで、濃縮部23による濃縮工程とは、酸反応部22から導入されるスラリー(分散液)から水分を除去し、水素置換された高吸水性樹脂の濃度増加を図るものである。これにより、次工程以降(中和工程や乾燥工程)における処理効率を向上させることが可能となる。
【0061】
濃縮部23において濃縮された高吸水性樹脂はラインL4を介して中和部24に導入される。
【0062】
中和部24は、濃縮部23の後段に設けられ、高吸水性樹脂を中和する中和工程を行うためのものである。
上述したように、強酸の添加により水素置換された高吸水性樹脂は、吸水性能が一定程度回復するが、再生品(製品)として利用するには十分ではない。したがって、中和部24による中和を行うことで、水素置換された高吸水性樹脂を水素イオン以外の陽イオンで置換(アルカリ置換)し、使用前の高吸水性樹脂と同様の組成とすることで、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させることが可能となる。
【0063】
本実施態様における濃縮部23および中和部24、並びにラインL4としては、上述した処理装置100Aを用いる。
これにより、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となるとともに、中和部の24後段における乾燥部25で乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することができる。
【0064】
中和部24(処理装置100A)において中和(アルカリ置換)された高吸水性樹脂は、ラインL5を介して乾燥部25に導入される。
【0065】
乾燥部25は、中和部24の後段に設けられ、高吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程を行うためのものである。
中和部24により中和された高吸水性樹脂は含水状態となっており、これを乾燥部25で乾燥させることで十分な吸水性能が回復した再生品(製品)として利用することが可能となる。
【0066】
乾燥部25としては、含水状態(不定形)の高吸水性樹脂を粒子状態としてハンドリング可能となるまで乾燥することができるものであればよく、例えば、バンド乾燥機やドラム乾燥機として公知のものを用いることが挙げられる。
【0067】
乾燥した高吸水性樹脂は、再生SAPとして、ラインL6を介してSAP再生システム1系外に排出される。再生SAPは、使用前の高吸水性樹脂と同様の用途に使用することが可能であり、例えば、体液吸収性物品の吸水材として再利用するほか、その他の吸水材として利用することが可能である。また、乾燥部25の後段に、再生SAPとしての利用価値を更に向上させるための手段を設けるものとしてもよい。例えば、粒度調整手段や成型手段を設けることが挙げられる。
【0068】
以上のように、本実施態様におけるSAP再生システム1は、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する分離手段と、分離された高吸水性樹脂の再生処理を行う再生処理手段とからなるものである。そして、使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を分離する際に、多価金属塩の添加による高吸水性樹脂の脱水処理を行うことで、高吸水性樹脂が吸収した体液をより確実に外部に放出させるとともに、高吸水性樹脂の分離回収効率を高めることができる。また、分離回収した高吸水性樹脂に対し、所定の順序で処理を行うことにより、高吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復させ、再生品(製品)としての有効活用(再製品化)が可能となる。特に、強酸添加による酸反応部の後段に設けられる濃縮部および中和部として、上述した処理装置を備えることで、中和処理の効率化かつ安定化を図ることが可能となるとともに、中和部の後段における乾燥部で乾燥を行う際、乾燥に必要となるエネルギー(熱エネルギー)を大幅に低減することができる。また、大量に排出される使用済紙おむつ等の使用済体液吸収性物品から高吸水性樹脂の分離回収および再製品化を可能とすることで、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0069】
〔第2の実施態様〕
図4は、本発明の第2の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る処理装置100Bは、第1の実施態様における処理装置100Aにおいて、中和処理部120として、薬剤添加手段122の後段に、高吸水性樹脂と粉体状薬剤を撹拌混合する撹拌混合手段127を更に備え、また、薬剤添加手段122と撹拌混合手段127の間に、平板状高吸水性樹脂P1を縮幅する縮幅手段128を備えるものである。
ここで、
図4は、
図1に示した第1の実施態様における処理装置100Aに対し、撹拌混合手段127および縮幅手段128を設けるものを示しているが、これに限定されるものではなく、
図2に示した第1の実施態様における処理装置100Aに対し、撹拌混合手段127および縮幅手段128を設けるものとしてもよい。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0070】
撹拌混合手段127は、薬剤添加手段122の後段に設けられ、薬剤添加手段122により粉体状薬剤Rが添加された平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)を撹拌混合するためのものである。
撹拌混合手段127は、搬送部121から排出される高吸水性樹脂P2を貯留し、かつ撹拌を行うことができるものであればよく、例えば、撹拌機構127aを備える処理槽127bを設けることが挙げられる。これにより、薬剤添加手段122により粉体状薬剤Rが一様に添加された高吸水性樹脂P2について、撹拌混合処理を行うことが可能となり、高吸水性樹脂と粉体状薬剤との混合効率をより一層高め、中和処理の更なる効率化および安定化を図ることが可能となる。
なお、高吸水性樹脂P2の性状がゲルであり、粘性が非常に高いために、液体用撹拌機では混合がうまくいかないことがある。そのため、撹拌混合手段127としては、ミキサー等、固形分を混練するための混練機を使用することが好ましい。このとき、混練機の入口構造に合わせた投入が可能となるように平板状高吸水性樹脂P1の形状を加工することが必要となる。
【0071】
縮幅手段128は、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)を撹拌混合手段127に導入する前に、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)の幅を狭めるためのものである。
縮幅手段128としては、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)の幅を狭めることができるものであればよく、例えば、
図4に示すように、搬送部121上に進行方向に向かって縮幅するように配置されたガイド板128aを設けることのほか、搬送部121から排出される高吸水性樹脂P2を受け止め、撹拌混合手段127の処理槽127bに導入するための逆円錐台形状を有するホッパを設けることなどが挙げられる。
例えば、縮幅手段128としてガイド板128aを設けた場合、ガイド板128aにより進行方向に向かって平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)の幅が縮幅されることで、ガイド板128a側の平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)は、ガイド板128aに沿って押し上げられる形となり、進行方向に向かって断面が凹型となる形状を形成する(
図4(A)中の断面図)。なお、縮幅手段128として別の手段(ホッパなど)を用いた場合においても、進行方向に向かって平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)の幅を縮幅することで、ガイド板128aを設けた場合と同様に、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)は凹型の形状となる。
これにより、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)を撹拌混合手段127に導入する際、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)の表面に添加された粉体状薬剤Rの一部が、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)の縮幅とともに、平板状高吸水性樹脂P1(高吸水性樹脂P2)内部に取り込まれる(練り込まれる)形となる。すなわち、撹拌混合手段127の前段において、高吸水性樹脂と粉体状薬剤Rが一部混練された状態となり、撹拌混合手段127における混合効率(接触効率)をより一層高めることが可能となる。
また、併せて、撹拌混合手段127への投入に適した形状とすることが可能となる。
【0072】
縮幅手段128を介して撹拌混合手段127に高吸水性樹脂P2を投入する際、搬送部121上の高吸水性樹脂P2(ゲル状)は粘性が高いため、重力による落下を促進するために、
図4に示すように、搬送部121出口から急傾斜を設けることが好ましい。
また、ガイド板128aは縮幅に伴う縦方向への体積変化により、高吸水性樹脂P2が系外に落下しないよう板の高さについて設計することが望ましい。
【0073】
以上のように、本実施態様における処理装置100Bでは、含水状態の高吸水性樹脂に粉体状薬剤を混合するにあたり、薬剤添加に加えて撹拌混合を行うことで、高吸水性樹脂と粉体状薬剤との混合効率をより一層高めることが可能となる。また、撹拌混合に供する際に、薬剤が添加された平板状の高吸水性樹脂を縮幅することで、薬剤は高吸水性樹脂の表面だけではなく、一部が高吸水性樹脂内に取り込まれる形となり、撹拌混合における混合効率(接触効率)をより一層高めることが可能となる。これにより、含水状態の高吸水性樹脂の中和処理について、更なる効率化および安定化を図ることが可能となる。併せて、薬剤が添加された高吸水性樹脂を撹拌混合手段への投入に適した形状とすることが可能となり、効率的に撹拌混合手段へと投入することが可能となる。
【0074】
また、本実施態様の処理装置100Bは、第1の実施態様に示したSAP再生システム1における濃縮部23および中和部24として適用することができる。これにより、第1の実施態様と同様に、使用済高吸水性樹脂の再生処理を行うことが可能となる。
【0075】
〔第3の実施態様〕
図5は、本発明の第3の実施態様における使用済高吸水性樹脂の処理装置を示す概略説明図である。
図5Aは、上方から見たときの平面図を、
図5Bは、側面から見たときの断面図を示すものである。
第3の実施態様に係る処理装置100Cは、第1の実施態様における処理装置100Aにおいて、平板化手段111の前段に、処理対象物P0を供給する供給部130を更に設け、この供給部130が往復移動しながら処理対象物P0の供給を行うものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0076】
供給部130は、平板化手段111の前段に設けられ、導入部101上に処理対象物P0を供給するためのものである。また、供給部130は、導入部101上で往復移動しながら処理対象物P0の供給を行うものである。
これにより、供給される処理対象物P0が導入部101上で広がりやすくなる。そして、導入部101上で広がった状態の処理対象物P0に対し、平板化手段111による平板化を行うことで、処理対象物P0の平板化に係る処理が容易となり、平板化において処理対象物P0に掛かる圧力をより一層小さくすることが可能となる。
【0077】
本実施態様における供給部130の具体例としては、例えば、
図5に示すように、平板化手段111の前段に、供給ノズル131と、この供給ノズル131を往復移動させる移動機構132とを設けることが挙げられる。
供給ノズル131は、酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂を移送・排出することができるものであればよく、特に限定されない。なお、供給ノズル131の材質としては、耐酸性に優れるものが好ましい。
また、供給ノズル131を往復移動させる移動機構132は、供給ノズル131を導入部101上で往復移動させることができるものであればよく、具体的な機構(構造)については特に限定されない。
【0078】
このとき、移動機構132により供給ノズル131が移動する方向については特に限定されないが、
図5に示すように、導入部101の幅方向に対して往復移動させることが好ましい。これにより、導入部101上に供給される処理対象物P0の形状を、より迅速かつ確実に幅方向へ広げやすくすることが可能となり、後段の平板化手段111による平板化に係る操作を最適化することが容易となる。
【0079】
また、供給部130の別態様としては、導入部101上に堰構造を設けるものとし、堰構造を越流した処理対象物P0が幅方向に広がった状態で、平板化手段111に導入されるものとしてもよい。これにより、簡便な手段により、処理対象物P0の平板化に係る処理を容易とし、平板化において処理対象物P0に掛かる圧力をより一層小さくすることが可能となる。
【0080】
以上のように、本実施態様における処理装置100Cでは、含水状態の高吸水性樹脂の形状を平板化するための平板化手段の前段において、含水状態の高吸水性樹脂の形状を一定程度広がりやすくすることが可能となる。これにより、平板化手段による平板化がより一層容易となる。併せて、平板化において含水状態の高吸水性樹脂に掛かる圧力を小さくすることが容易となり、高吸水性樹脂の物性変化を抑制することが容易となる。
【0081】
また、本実施態様の処理装置100Cは、第1の実施態様に示したSAP再生システム1における濃縮部23および中和部24として適用することができる。これにより、第1の実施態様と同様に、使用済高吸水性樹脂の再生処理を行うことが可能となる。
【0082】
なお、上述した実施態様は、使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法の一例を示すものである。本発明に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法を変形してもよい。
【0083】
例えば、本実施態様の処理装置における濃縮処理部110のベルト112と、中和処理部120の搬送部121は、一体化するものとしてもよい。これにより、装置構成の簡略化を図ることができ、装置のイニシャルコストやランニングコストを低減することが可能となる。
【0084】
また、本実施態様の処理装置における濃縮処理部110と平板化手段111はそれぞれ独立した構成としてもよい。すなわち、平板化手段111により処理対象物P0を平板化し、平板状高吸水性樹脂P1としたものを濃縮処理部110に導入し、濃縮処理部110では、本実施態様の平板化手段111以外の手段によって濃縮処理を行い、平板状高吸水性樹脂P1として中和処理部120に導入するものとしてもよい。また、濃縮処理部110で本実施態様の平板化手段111以外の手段によって濃縮処理を行った後、平板化手段111により処理対象物P0を平板化し、平板状高吸水性樹脂P1として中和処理部120に導入するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の使用済高吸水性樹脂の処理装置、使用済高吸水性樹脂の処理方法、使用済高吸水性樹脂の再生システム、および使用済高吸水性樹脂の再生方法は、一般家庭、病院や福祉施設などから排出される使用済の体液吸収性物品から高吸水性樹脂を回収および再生し、再製品化する技術において好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 SAP再生システム、10 分離手段、11 分離部、12 脱水手段、20 再生処理手段、21 洗浄部、22 酸反応部、23 濃縮部、24 中和部、25 乾燥部、100A,100B,100C 処理装置、101 導入部、110 濃縮処理部、111 平板化手段、112 ベルト、113 押圧ロール、120 中和処理部、121 搬送部、122 薬剤添加手段、123 薬剤貯留部、124 シュート、125 移動機構、126 噴霧手段、126a ノズル、127 撹拌混合手段、128 縮幅手段、128a ガイド板、130 供給部、131 供給ノズル、132 移動機構、L1~L7 ライン、P0 処理対象物(酸反応後の含水状態の高吸水性樹脂)、P1 平板状高吸水性樹脂、P2 中和処理後の高吸水性樹脂、R 粉体状薬剤