(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094579
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】積雪量推定システム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20240703BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G01W1/00 J
G01W1/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211210
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 幸生
(72)【発明者】
【氏名】奥嶋 碧生
(57)【要約】
【課題】積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることが可能な技術の提供。
【解決手段】除雪車の走行履歴に基づいて前記除雪車による除雪が行われた道路区間である除雪区間を取得する除雪区間取得部と、前記除雪区間の降雪量を取得する降雪量取得部と、前記除雪区間の道路幅を取得する道路幅取得部と、前記降雪量に基づいて前記除雪区間の積雪量を推定する積雪量推定部であって、前記道路幅が小さいほど前記積雪量が多くなるように前記積雪量を補正する前記積雪量推定部と、を備える積雪量推定システムを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除雪車の走行履歴に基づいて前記除雪車による除雪が行われた道路区間である除雪区間を取得する除雪区間取得部と、
前記除雪区間の降雪量を取得する降雪量取得部と、
前記除雪区間の道路幅を取得する道路幅取得部と、
前記降雪量に基づいて前記除雪区間の積雪量を推定する積雪量推定部であって、前記道路幅が小さいほど前記積雪量が多くなるように前記積雪量を補正する前記積雪量推定部と、
を備える積雪量推定システム。
【請求項2】
前記積雪量推定部は、前記除雪車が前記除雪区間を通過した場合に前記積雪量を初期値に戻し、前記除雪車の通過後における前記積雪量を推定する、
請求項1に記載の積雪量推定システム。
【請求項3】
前記除雪区間を含む地域の気象情報を取得する気象情報取得部をさらに備え、
前記積雪量推定部は、
前記気象情報が示す温度が低いほど前記積雪量が多くなる補正と、
前記気象情報が示す湿度が低いほど前記積雪量が多くなる補正と、
の少なくとも一方を行う、
請求項1または請求項2に記載の積雪量推定システム。
【請求項4】
前記除雪区間を含む地域の気象情報を取得する気象情報取得部をさらに備え、
前記積雪量推定部は、
前記気象情報が示す風速が大きいほど前記積雪量が多くなる補正を行う、
請求項1または請求項2に記載の積雪量推定システム。
【請求項5】
前記積雪量推定部は、
前記道路幅が予め決められた幅以上である場合には、前記積雪量の補正を行わない、
請求項1または請求項2に記載の積雪量推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪量推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積雪量を特定するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、レーザービーム方式のセンサを用いて積もった雪の高さを測定し、降雪粒子サイズや風速等を用いて積雪量を予測する回帰式を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路上に積雪があった場合には、除雪車によって路面上の雪が除雪される場合がある。除雪車によって除雪された雪は、路肩など、道路の幅方向の端部に蓄積される。蓄積された雪は、こぼれ落ちることがあり、こぼれ落ちた雪は再度道路に積もる。こぼれ落ちた雪による積雪量の影響は、道路幅によって異なり得る。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みなされたもので、積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の積雪量推定システムは、除雪車の走行履歴に基づいて前記除雪車による除雪が行われた道路区間である除雪区間を取得する除雪区間取得部と、前記除雪区間の降雪量を取得する降雪量取得部と、前記除雪区間の道路幅を取得する道路幅取得部と、前記降雪量に基づいて前記除雪区間の積雪量を推定する積雪量推定部であって、前記道路幅が小さいほど前記積雪量が多くなるように前記積雪量を補正する前記積雪量推定部と、を備える。
【0007】
上記積雪量推定システムは、降雪量に基づいて除雪車が除雪した除雪区間の積雪量を推定する際に、道路幅が小さいほど積雪量が多くなるように補正を行う。道路から雪が除雪された場合、除雪された雪の蓄積場所から道路上に雪がこぼれ落ちることによって再度道路上に雪が積もる。こぼれ落ちた雪による積雪量は、雪の蓄積量が同等である場合、道路幅が小さいほど大きくなる。このため、道路幅が小さいほど積雪量が多くなるように補正を行うことにより、補正を行わない場合と比較して、より正確に積雪量を推定可能である。このため、積雪量推定システムにおいては、積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2Aは除雪されていない道路区間の例、
図2Bは除雪された除雪区間の例を示す図である。
【
図3】
図3Aは比較的広い道路にこぼれ落ち雪によって積雪が発生した例を示す図、
図3Bは比較的狭い道路にこぼれ落ち雪によって積雪が発生した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の順序に従って実施の形態について説明する。
(1)積雪量推定システムの構成:
(2)積雪量推定処理:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)積雪量推定システムの構成:
図1は、積雪量推定システム20の構成を示すブロック図である。本実施形態において、積雪量推定システム20は、車載システム10、気象情報管理システム30、ユーザ端末40と協働する。車載システム10は、除雪車に搭載される。車載システム10は、除雪車の走行履歴を収集し、当該走行履歴を積雪量推定システム20に送信するシステムである。
【0011】
気象情報管理システム30は、気象情報を収集し、蓄積するシステムである。本実施形態において、気象情報には、降雪量、温度、湿度および風速が含まれる。本実施形態において、気象情報は、予め区画された地域毎に定義される。地域は、種々の手法で定義されて良く、本実施形態においては、既定の大きさの矩形であるメッシュ毎に気象情報が定義される。
【0012】
また、本実施形態において、降雪量は1時間あたりの積雪量で示され、温度、湿度および風速は1時間毎の平均値で示される。気象情報管理システム30は、現在以前の気象情報を収集し、図示しない記憶媒体に蓄積する。気象情報は時刻に応じて変化するため、気象情報管理システム30は、現在以前の1時間毎の気象情報のそれぞれに対して時刻を対応付けて記憶媒体に蓄積する。気象情報管理システム30は、積雪量推定システム20からの気象情報の送信要求に応じて、任意の時刻の気象情報を積雪量推定システム20に送信することができる。
【0013】
ユーザ端末40は、道路区間毎の積雪量を表示するための端末である。積雪量の表示を望むユーザは、ユーザ端末40を操作し、道路区間毎の積雪量の表示指示操作を行う。この操作に応じてユーザ端末40は、積雪量推定システム20に対して表示対象の道路区間とともに積雪量の要求を出力する。積雪量推定システム20は、当該要求に応じて、表示対象の道路区間の積雪量を取得し、ユーザ端末40に送信する。ユーザ端末40は、図示しない表示部を備えており、取得した積雪量を道路区間に対応付けて表示する。なお、積雪量の表示態様は、種々の態様であって良く、例えば、地図上において道路区間に対応付けて積雪量が表示されても良いし、地図上で道路区間が指定される操作に応じてポップアップによって積雪量が表示されても良い。
【0014】
図1においては、車載システム10およびユーザ端末40を1台ずつ示しているが、積雪量推定システム20は、複数の車載システム10から検出結果を受信し得る。また、積雪量推定システム20は、複数のユーザ端末40に対し、積雪量を出力し得る。
【0015】
車載システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部11と記録媒体12と通信部13とGNSS受信部14と車速センサ15とジャイロセンサ16とを備えている。記録媒体12には、地図情報121が記録されている。通信部13は、外部の装置と無線通信を行うための装置である。制御部11による積雪量推定システム20との情報の送受信は、通信部13を介して行われる。GNSS受信部14は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置である。GNSS受信部14は、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して、除雪車の位置を算出するための信号を出力する。制御部11は、この信号を取得して除雪車の位置を取得する。
【0016】
車速センサ15は、除雪車が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部11は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ16は、除雪車の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、除雪車の向きに対応した信号を出力する。制御部11は、この信号を取得して除雪車の進行方向を取得する。車速センサ15およびジャイロセンサ16等は、除雪車の走行軌道を特定するために利用される。走行軌道は、GNSS受信部14の出力に基づいて取得された除雪車の位置に基づいて補正される。
【0017】
また、本実施形態において制御部11は、GNSS受信部14の出力に基づいて取得された除雪車の位置と、所定地点以後の除雪車の走行軌道と、地図情報121に基づいてマップマッチング処理を行う。マップマッチング処理が行われると、除雪車がリンク(道路区間)上に存在するか否か特定される。除雪車がリンク上に存在する場合、制御部11は、除雪車が存在するリンクを特定する。なお、地図情報121は、後述する地図情報222と同様の情報である。
【0018】
制御部11は、記録媒体12やROMに記憶された種々のプログラムを実行することができる。本実施形態の制御部11は、このプログラムの1つとして、走行履歴送信プログラム110を実行することができる。制御部11は、走行履歴送信プログラム110の処理により、除雪車の走行履歴122を取得し、除雪車の識別情報を対応付け、通信部13を介して積雪量推定システム20に送信する。
【0019】
本実施形態において、走行履歴122には、時刻毎の除雪車の位置の履歴と、マップマッチングしているリンクと、が含まれる。このため、制御部11は、マップマッチング処理によって時刻毎の除雪車の位置を取得し、除雪車の位置と時刻とを対応付ける。また、制御部11は、除雪車がマップマッチング処理によって特定されたリンク上に存在する場合、地図情報121を参照し、除雪車が存在する道路区間を示すリンクの識別情報を特定する。そして、制御部11は、除雪車の位置に対して当該位置が存在するリンクの識別情報を対応付ける。
【0020】
次に、積雪量推定システム20について説明する。積雪量推定システム20は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部21と記録媒体22と通信部23とを備えている。通信部23は、外部の装置と無線通信を行うための装置である。車載システム10や気象情報管理システム30、ユーザ端末40と、積雪量推定システム20との情報の送受信は、通信部23を介して行われる。
【0021】
記録媒体22には、走行履歴122,地図情報222,積雪量情報223が記録される。走行履歴122は、車載システム10から送信された情報である。但し、積雪量推定システム20の記録媒体22には、複数の除雪車から送信された走行履歴122が記録される。すなわち、制御部21は、車載システム10から定期的に送信される走行履歴122を取得し、送信元の除雪車の識別情報に対応付けて記録媒体22に記録する。
【0022】
地図情報222は、道路区間の端点に対応するノードの位置を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士を接続するリンクを示すリンクデータ、道路区間の周辺に存在する施設を示す施設データ等を含んでいる。ここで、ノードは、交差点に対応し、リンクは、交差点から交差点までの道路区間に対応する。リンクデータには、各リンクの道路幅を示す情報が対応付けられている。また、施設データには、施設の位置、名称、属性等の情報が対応付けられている。
【0023】
制御部21は、記録媒体22やROMに記憶された種々のプログラムを実行することができる。本実施形態の制御部21は、このプログラムとして積雪量推定プログラム210を実行することができる。制御部21は、積雪量推定プログラム210の処理により、除雪区間取得部211,降雪量取得部212,道路幅取得部213,気象情報取得部214,積雪量推定部215として機能する。
【0024】
除雪区間取得部211は、除雪車の走行履歴に基づいて除雪車による除雪が行われた道路区間である除雪区間を取得する機能を制御部21に実現させる。すなわち、制御部21は、走行履歴122を参照し、除雪車が走行したリンク、すなわち除雪区間を特定する。この際、制御部21は、走行履歴122を参照し、除雪車がリンクを走行した時刻を特定する。同一のリンクを除雪車が複数回走行している場合、制御部21は、リンクを示す道路区間を除雪車が最後に走行した時刻を特定する。なお、除雪車が道路区間を走行したが、除雪をせずに単に通過することがあり得る場合、走行履歴122に除雪の有無を対応付けておき、制御部21は、除雪が行われた履歴のみを参照する。また、双方向通行が可能な道路区間においては、制御部21は、各方向について独立に、除雪が行われた時刻を取得する。
【0025】
降雪量取得部212は、除雪区間の降雪量を取得する機能である。すなわち、制御部21は、降雪量取得部212の機能により、除雪区間を含む地域の降雪量の送信要求を、気象情報管理システム30に送信する。気象情報管理システム30は、当該送信要求に応じて、除雪区間を含む地域の降雪量を積雪量推定システム20に返信する。制御部21は、通信部23を介して当該降雪量を取得し、図示しないRAM等に記録する。
【0026】
道路幅取得部213は、除雪区間の道路幅を取得する機能である。すなわち、制御部21は、道路幅取得部213の機能により、地図情報222が示す除雪区間のリンクデータを参照し、当該除雪区間の道路幅を取得する。制御部21は、取得した道路幅を、図示しないRAM等に記録する。
【0027】
気象情報取得部214は、除雪区間を含む地域の気象情報を取得する機能である。すなわち、制御部21は、気象情報取得部214の機能により、除雪区間を含む地域の気象情報の送信要求を、気象情報管理システム30に送信する。気象情報管理システム30は、当該送信要求に応じて、除雪区間を含む地域の気象情報を積雪量推定システム20に返信する。制御部21は、通信部23を介して当該気象情報を取得し、図示しないRAM等に記録する。なお、本実施形態においては、降雪量が気象情報に含まれるため、降雪量取得部212と気象情報取得部214の機能は、共通の機能であり、当該共通の機能によって降雪量、温度、湿度、風速を含む気象情報が取得されるように構成されていても良い。
【0028】
積雪量推定部215は、降雪量に基づいて除雪区間の積雪量を推定する積雪量推定部であって、道路幅が小さいほど積雪量が多くなるように積雪量を補正する機能である。すなわち、積雪量推定部215は、降雪量とその降雪量での降雪期間との積を累積することによって、積雪量を取得する。降雪期間の算出法は、除雪の有無に応じて変化し、除雪されていない道路区間については、降り始めから現在までの期間である。また、除雪された除雪区間については、最後に除雪された時刻から現在までの期間である。
【0029】
さらに、本実施形態において積雪量は、道路幅および気象情報(温度、湿度および風速)に基づいて補正される。すなわち、除雪された雪がこぼれ落ちると再度除雪区間に積もるが、こぼれ落ちる雪の量が同程度であっても、道路幅が狭い方が積雪量に与える影響は大きい。
【0030】
図2A,
図2B,
図3A,
図3Bは道路上の積雪量を模式的に示す図である。これらの図は、道路の進行方向に沿って道路を眺めた状態を示しており、積雪部分は断面図で示している。また、積雪部分はハッチングによって示している。また、これらの図は、車両が走行する道路の両脇に路肩が存在する道路である。
【0031】
図2Aは、除雪されていない状態を示しており、この例においては道路の積雪量がD1である。除雪車が道路を除雪した場合、当該道路区間は除雪区間となる。
図2Bは、除雪された後の状態を模式的に示している。除雪が行われると、
図2Bに示されるように、除雪された雪が道路脇(
図2Bに示す例では路肩上)に蓄積する。
【0032】
図2Bのように、除雪され、蓄積された雪は、再度道路側にこぼれ落ちることがある。
図3A,
図3Bは、こぼれ落ちた後の状態を例示している。但し、
図3Aは、
図3Bよりも道路幅が大きい。このように、道路幅が異なると、こぼれ落ちる雪の量が同程度であってもこぼれ落ちた後の除雪区間における積雪量が異なる。
図3A、
図3Bにおいては、雪がこぼれ落ちた後の積雪量(道路上の平均値)をDa,Dbとして示しており、Da<Dbである。
【0033】
本実施形態において制御部21は、このように、道路幅による積雪量への影響の多寡を反映するための補正を行う。このために、積雪量推定部215は、道路幅取得部213で取得した除雪区間の道路幅を参照し、道路幅が小さいほど大きくなる係数を積雪量に乗じることで積雪量を補正する。この構成によれば、こぼれ落ち雪が積雪量に与える影響が道路幅によって異なることを反映して積雪量を推定することができる。このため、積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることが可能である。
【0034】
さらに、本実施形態においては、気象環境による積雪量への影響を加味して積雪量を推定する。このために、積雪量推定部215は、気象情報取得部214で取得した除雪区間を含む地域の気象情報を参照し、除雪区間の温度を特定する。そして、積雪量推定部215は、温度が低いほど大きくなる係数を積雪量に乗じることで積雪量を補正する。この構成によれば、温度が積雪量に与える影響、例えば、気温によって雪が解けずに残りやすくなる等の、積雪量への影響を反映して積雪量を推定することができる。このため、積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることが可能である。
【0035】
さらに、積雪量推定部215は、気象情報取得部214で取得した除雪区間を含む地域の気象情報を参照し、除雪区間の湿度を特定する。そして、積雪量推定部215は、湿度が低いほど大きくなる係数を積雪量に乗じることで積雪量を補正する。この構成によれば、湿度が積雪量に与える影響、例えば、雪等の蒸発により熱が奪われやすく、この結果、雪が解けにくくなる等の、積雪量への影響を反映して積雪量を推定することができる。このため、積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることが可能である。
【0036】
さらに、積雪量推定部215は、気象情報取得部214で取得した除雪区間を含む地域の気象情報を参照し、除雪区間の風速を特定する。そして、積雪量推定部215は、風速が大きいほど大きくなる係数を積雪量に乗じることで積雪量を補正する。この構成によれば、風速が積雪量に与える影響、例えば、道路脇に蓄積している雪が風によって再度除雪区間に移動する等の、積雪量への影響を反映して積雪量を推定することができる。このため、積雪量の推定精度が向上する可能性を高めることが可能である。
【0037】
以上のようにして、積雪量が推定され、補正されると、推定された積雪量が道路区間を示す識別情報に対応付けられ、積雪量情報223として記録媒体22に記録される。ユーザは、任意のタイミングでユーザ端末40を操作し、道路区間毎の積雪量の表示指示操作を行う。当該操作に応じてユーザ端末40は、積雪量推定システム20に対して表示対象の道路区間とともに積雪量の要求を出力する。積雪量推定システム20は、当該要求に応じて、表示対象の道路区間の積雪量を取得し、ユーザ端末40に送信する。送信された積雪量は、ユーザ端末40の表示部に表示される。以上の構成により、ユーザは、所望の道路区間の積雪量を知ることができる。
【0038】
(2)積雪量推定処理:
図4は積雪量推定処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、複数の除雪車から任意のタイミングで走行履歴122が送信される。制御部21は、当該走行履歴122を受信し、記録媒体22に順次記録していく。このようにして、走行履歴122が記録されていく状況において、制御部21は、一定期間毎に積雪量推定処理を実行する。一定期間の長さは限定されないが、本実施形態においては、積雪量推定処理の結果得られた値が現況の積載量と見なせるような長さに設定される。
【0039】
積雪量推定処理が開始されると、制御部21は、除雪区間取得部211の機能により、対象地域のリンクを取得する(ステップS100)。対象地域は、積雪量の推定対象となる地域として予め決められている。制御部21は、地図情報222を参照し、当該地域に含まれるリンクを特定しリンクの識別情報を取得する。
【0040】
次に、制御部21は、除雪区間取得部211の機能により、走行例歴を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部21は、走行履歴122を参照し、ステップS100で取得されたリンクの識別情報と同一の識別情報が対応付けられた走行履歴を取得する。
【0041】
次に、制御部21は、ステップS100で取得されたリンクのそれぞれを対象としてステップS110~S155のループ処理を行う。ステップS110において、制御部21は、ステップS100で取得されたリンクの中から、ステップS110~S155の処理対象が行われていない未処理のリンクを処理対象として選択する。
【0042】
次に、制御部21は、除雪区間取得部211の機能により、処理対象のリンクが示す道路区間を除雪車が走行したか否か判定する(ステップS115)。すなわち、制御部21は、ステップS105で取得した走行履歴を参照し、処理対象のリンクの識別情報と同一の識別情報が対応付けられた走行履歴が存在するか否か判定する。走行履歴が存在する場合、制御部21は、処理対象のリンクが示す道路区間を除雪区間と見なす。また、制御部21は、走行履歴に基づいて、除雪が行われた時刻も特定する。処理対象のリンクの識別情報と同一の識別情報が対応付けられた走行履歴が存在しない場合、制御部21は、処理対象のリンクは除雪区間ではないと見なす。
【0043】
ステップS115において処理対象のリンクが示す道路区間を除雪車が走行したと判定されない場合、制御部21は、積雪量推定部215の機能により、降り始めからの積雪量を推定する(ステップS120)。すなわち、制御部21は、降雪量取得部212の機能により、現在以前の時刻毎の降雪量を示す情報を参照し、雪の降り始めの時刻および降り始めからの時刻毎の降雪量を特定する。そして、制御部21は、降雪量とその降雪量での降雪期間との積を累積することによって積雪量を推定する。例えば、降り始めから現在まで3時間が経過しており、最初の1時間における降雪量が5cm/時間であり、次の2時間における降雪量が10cm/時間である場合、制御部21は、1×5+2×10=25によって積雪量が25cmであると推定する。
【0044】
一方、ステップS115において処理対象のリンクが示す道路区間を除雪車が走行したと判定された場合、制御部21は、積雪量推定部215の機能により、積雪量をリセットする(ステップS125)。すなわち、制御部21は、処理対象のリンクが示す除雪区間を除雪車が通過した時刻を取得し、当該時刻の積雪量を初期値に戻す。初期値は、予め決められていれば良く、例えば、0cmであっても良いし、
図2B示すように、除雪直後に若干の積雪が残るのであれば、その積雪量が初期値になっていても良い。
【0045】
次に、制御部21は、積雪量推定部215の機能により、最後に除雪車が通過した後の積雪量を推定する(ステップS130)。すなわち、制御部21は、ステップS105で取得した走行履歴を参照し、処理対象のリンクが示す除雪区間を除雪車が最後に通過した(除雪しながら通過した)時刻を特定する。また、制御部21は、降雪量取得部212の機能により、現在以前の時刻毎の降雪量を示す情報を参照し、処理対象のリンクが示す除雪区間を除雪車が最後に通過した時刻以後の降雪量を特定する。そして、制御部21は、降雪量とその降雪量での降雪期間との積を累積することによって積雪量を推定する。例えば、処理対象のリンクが示す除雪区間を除雪車が最後に通過した時刻から現在まで2時間が経過しており、最初の1時間における降雪量が10cm/時間であり、次の1時間における降雪量が15cm/時間であり、初期値が5cmである場合、制御部21は、1×10+1×15+5=30によって積雪量が30cmであると推定する。
【0046】
次に、制御部21は、道路幅取得部213の機能により、道路幅を取得する(ステップS135)。すなわち、制御部21は、地図情報222を参照し、処理対象のリンクの識別情報が対応付けられた道路区間の道路幅を取得する。次に、制御部21は、積雪量推定部215の機能により、道路幅に応じて積雪量を補正する(ステップS140)。すなわち、制御部21は、道路幅に対応する係数を特定し、ステップS130で推定された積雪量に当該係数を乗じる補正を行う。
【0047】
ステップS120またはステップS140が実行されると、制御部21は、気象情報取得部214の機能により、気象情報を取得する(ステップS145)。すなわち、制御部21は、地図情報222を参照し、処理対象のリンクの識別情報が対応付けられた道路区間を含む地域の気象情報を取得する。次に、制御部21は、積雪量推定部215の機能により、気象情報に応じて積雪量を補正する(ステップS150)。すなわち、制御部21は、気象情報、すなわち、温度、湿度および風速に対応する係数を特定し、ステップS140またはステップS120で推定された積雪量に当該係数を乗じる補正を行う。補正後の積雪量は、処理対象のリンクの識別情報が対応付けられ、積雪量情報223として記録媒体22に記録される。
【0048】
次に、制御部21は、ステップS100で取得されたリンクの全てについて、ステップS110~S155のループ処理が終了したか否か判定し(ステップS155)、終了したと判定されるまで、ステップS110以降の処理を繰り返す。
【0049】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、積雪量推定システム20は、複数の装置によって実現されるシステムであってもよい。積雪量推定システム20を構成する除雪区間取得部211,降雪量取得部212,道路幅取得部213,気象情報取得部214,積雪量推定部215の少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在してもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0050】
例えば、除雪区間取得部211,降雪量取得部212,道路幅取得部213,気象情報取得部214,積雪量推定部215の機能の少なくとも一部が車載システム10やユーザ端末40で実行される構成であってもよい。さらに、気象情報の差異による積雪量の差異が大きくない場合、気象情報による補正が省略されても良いし、気象情報である温度、湿度、速度の少なくとも一部が省略されても良いし、他の気象情報が加味されても良い。
【0051】
除雪区間取得部は、除雪車の走行履歴に基づいて除雪車による除雪が行われた道路区間である除雪区間を取得することができればよい。すなわち、除雪が行われた区間は除雪によって積雪量が変動するため、道路脇に雪が蓄積され、蓄積された雪がこぼれ落ちて再度道路に積もるという状況が発生し得る。このような道路においては、再度道路に積もる雪によって降雪量と異なる積雪量になり得るため、補正対象の道路となる。除雪区間取得部は、このような補正対象の道路を決定するために、除雪区間を取得することができればよい。
【0052】
除雪車の走行履歴は、種々の手法で取得されて良い。例えば、上述のように、除雪車において検出された時刻毎の除雪車の現在地の履歴が走行履歴となってもよい。また、道路や道路周辺に設置された各種センサによって除雪車の走行が検出され、除雪車の走行履歴が取得されても良い。除雪区間は除雪が行われた道路区間であれば良いが、除雪区間は除雪が行われた時刻とともに特定されることが好ましい。例えば、同一の道路区間において、早朝と夜の双方に除雪されたのであれば、除雪が行われた時刻が特定されることで、それぞれの除雪の後の積雪量を推定することができる。
【0053】
降雪量取得部は、除雪区間の降雪量を取得することができればよい。すなわち、降雪量取得部は、少なくとも除雪が行われた後における除雪区間の降雪量を取得することができればよい。降雪量は、積雪量を推定する際の基になる情報であれば良く、上述のように1時間あたりで定義されても良いし、他の時間間隔で定義されても良い。また、一般に、降雪量は、地域毎に変化するため、同一地域の除雪区間毎の降雪量は同一と見なされるが、同一地域に含まれる除雪区間であっても、統計等に基づいて、例えば、山岳地と平地とで異なる降雪量になるように補正が行われてもよい。
【0054】
道路幅取得部は、除雪区間の道路幅を取得することができればよい。すなわち、道路脇に蓄積された除雪後の雪が道路にこぼれ落ちて再度積もる量を見積もる指標として道路幅を取得することができればよい。道路幅は、種々の手法で取得されて良く、上述のように、道路区間毎に道路の実際の幅が特定され、地図情報に記録されていても良いし、より簡易的に取得されても良い。例えば、道路種別毎の平均的な道路幅が予め特定され、道路区間の道路種別に応じて道路幅が取得されるような構成であっても良い。また、除雪車の種類や除雪の際に並列走行したか否か等に応じて道路幅が取得されても良い。
【0055】
積雪量推定部は、降雪量に基づいて除雪区間の積雪量を推定する積雪量推定部であって、道路幅が小さいほど積雪量が多くなるように積雪量を補正することができればよい。積雪量の推定は、降雪量に基づいて実施することができればよい。すなわち、除雪区間において、除雪後の経過時間と時間あたりの降雪量との積を特定すれば、積雪量を推定することができる。このように、積雪量を推定可能であるが、除雪区間毎の道路幅や環境に応じて、積雪量は変動し得る。積雪量推定部は、この変動を評価することにより、補正を行うことができればよい。
【0056】
補正を行う際には、少なくとも、道路幅に基づいて補正を行うことができればよい。また、補正は、道路幅が小さいほど積雪量が多くなるように実施されればよい。なお、道路幅と補正量との関係を規定する際に、道路幅や補正量は段階的に変化しても良いし連続的に変化しても良い。また、補正の手法も種々の手法を採用可能である。補正量が段階的に変化しても良いし、連続的に変化しても良い点は、他の要素についての補正、例えば、気象情報に応じた補正等においても同様である。
【0057】
補正の手法としては、上述のように、道路幅で決まる係数を積雪量の推定値に乗じる手法以外にも種々の構成を採用可能である。例えば、上乗せする積雪量が道路幅毎に決まっていても良い。また、道路の端部と中央とで異なる積雪量となるように補正が行われてもよい。さらに、時間の経過に応じて補正量を変化させても良い。例えば、除雪後の経過時間が長いほどこぼれ落ちる雪が多くなるとみなし、経過時間が長くなるほど補正量が大きくなるような補正が行われてもよい。
【0058】
除雪車が除雪区間を通過した場合に積雪量を初期値に戻す構成において、初期値は状況に応じて変動しても良い。例えば、除雪前の積雪量が多いほど除雪後に残る積雪が多くなるとみなし、除雪前の積雪量が多いほど初期値が大きくなる構成であっても良い。
【0059】
さらに、積雪量推定部において、補正を行わない場合と補正を行う場合があっても良い。例えば、道路幅が予め決められた幅以上である場合には、積雪量の補正を行わない構成であっても良い。具体的には、ステップS140において道路幅に応じて積雪量を補正する際に、制御部21は、道路幅が予め決められた幅以上であるか否か判定し、予め決められた幅以上である場合、補正を行わない。
【0060】
道路幅が大きい場合、こぼれ落ちた雪が再度道路区間に積もることによって積雪量に与える変動は小さい。例えば、片側2車線以上の道路区間において、こぼれ落ちた雪による影響はほとんどない。そこで、道路幅に関して閾値を予め決めておけば、補正が必要ない状況において補正が行われることを防止することができる。
【0061】
補正を行うか否かを規定するための幅は、予め決められていれば良く、例えば、片側1車線(合計2車線)より大きい幅のように幅が決められていても良いし、10m等のように距離によって幅が決められていても良く、種々の手法で幅が決められて良い。
【0062】
さらに、以上のようなシステムはプログラムや方法としても適用可能である。また、このようなプログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置で共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…片側、2…片側、10…車載システム、11…制御部、12…記録媒体、13…通信部、14…GNSS受信部、15…車速センサ、16…ジャイロセンサ、20…積雪量推定システム、21…制御部、22…記録媒体、23…通信部、30…気象情報管理システム、40…ユーザ端末、110…走行履歴送信プログラム、121…地図情報、122…走行履歴、210…積雪量推定プログラム、211…除雪区間取得部、212…降雪量取得部、213…道路幅取得部、214…気象情報取得部、215…積雪量推定部、222…地図情報、223…積雪量情報