(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094595
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】濡れ性向上剤およびこれを含む樹脂組成物、ならびに親水化コーティング剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240703BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240703BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240703BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240703BHJP
C09D 183/02 20060101ALI20240703BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240703BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C09D7/40
C09D7/65
C09D201/00
C09D183/02
C09D201/02
C09D4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211233
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 博樹
(72)【発明者】
【氏名】塚本 祥実
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CH211
4J038CH212
4J038DF012
4J038DL021
4J038DL022
4J038EA011
4J038JA27
4J038JB01
4J038JC38
4J038JC42
4J038KA04
4J038KA09
4J038NA06
4J038PA06
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB08
4J038PC03
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】親水性塗膜において洗浄後も高い親水性を維持させうる手段を提供する。
【解決手段】下記化学式(1)で表されるイオン結合性塩またはその重合体と、下記化学式(A)で表されるシリケートまたはその縮合物と、を含む濡れ性向上剤である:
上記化学式(1)および化学式(A)における各符号は、明細書において定義されている通りである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1):
【化1】
化学式(1)中、
Q
n+は、1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオンを表し、
T
-は、アルキル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルリン酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオンまたはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルイオンを表し、
nは、Q
n+の原子価で1または2である、
で表されるイオン結合性塩またはその重合体と、
下記化学式(A):
【化2】
化学式(A)中、
Rは、同一または異なって水素原子または置換されていてもよい炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す、
で表されるシリケートまたはその縮合物と、
を含む、濡れ性向上剤。
【請求項2】
前記Qn+は、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオンおよびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の濡れ性向上剤。
【請求項3】
前記Qn+は、エチレン性不飽和結合を有する、請求項2に記載の濡れ性向上剤。
【請求項4】
前記Qn+は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである、請求項3に記載の濡れ性向上剤。
【請求項5】
前記化合物(1)において、T-は、アルキル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンまたはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオンである、請求項1または3に記載の濡れ性向上剤。
【請求項6】
前記化合物(1)において、(T
-)
nは、下記化学式(2):
【化3】
化学式(2)中、
R’は、置換されていてもよい炭素数12~14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数で2~50の整数であり、
(AO)
mは、少なくとも2種のオキシアルキレン基を含み、その配列はランダム型、ブロック型のいずれでもよく、
nは、Q
n+の原子価で1または2である、
で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンである、請求項5に記載の濡れ性向上剤。
【請求項7】
前記(AO)mは、オキシエチレン基およびオキシブチレン基を含む、請求項6に記載の濡れ性向上剤。
【請求項8】
前記(AO)mにおいて、オキシブチレン基の割合は3~90モル%である、請求項7に記載の濡れ性向上剤。
【請求項9】
請求項3に記載のイオン結合性塩由来の構成単位を有する重合体を含む、濡れ性向上剤。
【請求項10】
前記Rがメチル基またはエチル基である前記シリケートの4~10量体の縮合物を1種または2種以上含む、請求項1または3に記載の濡れ性向上剤。
【請求項11】
請求項1または9に記載の濡れ性向上剤と、樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂100質量部に対して、前記イオン結合性塩または前記イオン結合性塩由来の構成単位が0.1質量部以上5質量部未満含有される、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の濡れ性向上剤からなる、親水化コーティング剤。
【請求項14】
請求項11に記載の樹脂組成物からなる、親水化コーティング剤。
【請求項15】
前記樹脂組成物が光硬化性樹脂を含む、請求項14に記載の親水化コーティング剤。
【請求項16】
請求項13または14に記載の親水化コーティング剤を乾燥または硬化させた、親水性塗膜。
【請求項17】
表面の水に対する接触角(25℃)が20°以下である、請求項16に記載の親水性塗膜。
【請求項18】
成形品と、前記成形品の表面に配置された請求項16に記載の親水性塗膜と、を有する、親水性表面を有する成形品。
【請求項19】
請求項13または14に記載の親水化コーティング剤を成形品の表面に塗布して乾燥または硬化させることにより、前記成形品の表面に親水性塗膜を形成する工程を含む、親水性表面を有する成形品の製造方法。
【請求項20】
前記親水性塗膜の水に対する接触角(25℃)が20°以下である、請求項19に記載の成形品の製造方法。
【請求項21】
請求項11に記載の樹脂組成物からなる成形品。
【請求項22】
前記成形品表面の水に対する接触角が20°以下である、請求項21に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濡れ性向上剤、およびこれを含む樹脂組成物、ならびにこれらからなる親水化コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
風呂、トイレ、壁紙、窓ガラス、建物の外壁、光学フィルム等に用いられる部材には高い耐汚染性が求められており、これを達成するための方法の一つとして、部材表面を親水化処理する方法が挙げられる。かような処理を施すことにより、部材表面には均一な水膜が形成されるため、その上に汚れが付着しても、水で洗い流すことで汚れを容易に除去することができる。親水化処理としては、酸化チタン等の光触媒性能を有する無機化合物が一般的に用いられるが、透明性が低いほか、(紫外光等の)光照射下でないと高親水性を発揮しないため、実使用環境において十分な耐汚染性が得られず、かつ処理工程が煩雑になるという問題があった。
【0003】
ここで、従来、添加量が少ない場合であっても優れた親水性付与効果を示す濡れ性向上剤として、特許文献1には、少なくとも2種のオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンからなるアニオンと、1価もしくは2価の金属イオンまたは含窒素化合物イオンからなるカチオンとから構成されるイオン結合性塩を含むものが提案されている。特許文献1に記載の濡れ性向上剤は、例えば樹脂に配合されてコーティングされた後に硬化することで、水に対する接触角が非常に小さい親水性塗膜を形成するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の濡れ性向上剤を用いた場合、コーティングにより塗膜が形成された直後には高い親水性を示すものの、洗浄により親水性が低下するという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、親水性塗膜において洗浄後も高い親水性を維持させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するイオン結合性塩またはその重合体と、特定の構造を有するシリケートおよび/またはその縮合物を併用して濡れ性向上剤とすることによって上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態は、下記化学式(1):
【0009】
【0010】
化学式(1)中、
Qn+は、1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオンを表し、
T-は、アルキル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルリン酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオンまたはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルイオンを表し、
nは、Qn+の原子価で1または2である、
で表されるイオン結合性塩またはその重合体と、
下記化学式(A):
【0011】
【0012】
化学式(A)中、
Rは、同一または異なって水素原子または置換されていてもよい炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す、
で表されるシリケートおよび/またはその縮合物と、
を含む、濡れ性向上剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る濡れ性向上剤によれば、洗浄後も高い親水性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
【0015】
本明細書において、「塗膜(または成形品)表面の親水性が高い」との文言は、「塗膜(または成形品)表面の水に対する濡れ性が高い」との文言と同義であり、塗膜(または成形品)表面の水に対する接触角が、90°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下であることをいい、特に10°以下を「超親水性」という。
【0016】
また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0017】
<濡れ性向上剤>
[イオン結合性塩またはその重合体]
本発明の一形態に係る濡れ性向上剤は、まず、以下に示すイオン結合性塩またはその重合体を必須に含む。
【0018】
(イオン結合性塩の構造)
本形態に係る濡れ性向上剤に含まれるイオン結合性塩は、下記化学式(1)で表される。
【0019】
【0020】
前記化学式(1)において、T-は、アルキル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルリン酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオンまたはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルイオンを表す。中でも、T-は、好ましくはアルキル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンまたはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオンであり、より好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンまたはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオンであり、さらに好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンである。また、(T-)nは、特に好ましくは下記化学式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオンである。
【0021】
【0022】
前記化学式(2)において、R’は、置換されていてもよい炭素数12~14の直鎖状または分岐状のアルキル基、すなわち、直鎖状または分岐状のドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基のいずれかであるが、入手容易性の観点からトリデシル基が好ましい。R’が置換されている場合、そのような置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基などのアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基などのアシル基、メチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p-トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。
【0023】
前記化学式(2)において、Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(-CH2-CH(CH3)-)、n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基(-CH2-CH2-CH(CH3)-)、2-メチルプロピレン基(-CH2-CH(CH3)-CH2-)、ジメチルエチレン基(-CH2-C(CH3)2-)、エチルエチレン基(-CH2-CH(CH2CH3)-)等が挙げられる。なお、Aが炭素数3~4のアルキレン基である場合、分枝状のアルキレン基であることが好ましい。また、Aにおいて、(AO)mの主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。すなわち、Aは、エチレン基、プロピレン基およびエチルエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましく、少なくとも2種を有することがより好ましい。かような基を有することで、耐水性と表面親水性とを両立する塗膜または成形品を形成することができる。
【0024】
前記化学式(2)において、mは、AOの平均付加モル数であって、2~50の整数である。mは、粘度低下による作業性向上および濡れ性の観点から、好ましくは2~30であり、より好ましくは2~20である。
【0025】
前記化学式(2)において、(AO)mは、ポリオキシアルキレンを表し、少なくとも2種のオキシアルキレン基を含む。かようなポリオキシアルキレン構造とすることで、耐水性と表面親水性とを両立する塗膜または成形品を形成することができる。(AO)mは、好ましくは、オキシエチレン基(-C2H4O-、以下EOとも称する)、オキシプロピレン基(-C3H6O-、以下POとも称する)およびオキシブチレン基(-C4H8O-、以下BOとも称する)からなる群より選択される少なくとも2種を含む。(AO)mは、より好ましくは、オキシエチレン基およびオキシブチレン基を含む。なお、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、直鎖状または分枝状のアルキレン基を有することができるが、分枝状のアルキレン基を有することが好ましい。さらに、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、(AO)mの主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。すなわち、オキシプロピレン基は、下記化学式(P1)または(P2)で示される基の少なくとも一方を有することが好ましく、オキシブチレン基は、下記化学式(B1)または(B2)で示される基の少なくとも一方を有することが好ましい。かような基を有することで、耐水性と表面親水性とを両立する塗膜または成形品を形成することができる。
【0026】
【0027】
また、(AO)mにおいて、オキシブチレン基の割合は、好ましくは3~90モル%であり、より好ましくは10~80モル%である。なお、オキシブチレン基が2種以上の構造を有する場合、上記オキシブチレン基の割合は、各構造の割合(モル%)の合計を表す。少なくとも2種のオキシアルキレン基の配列は、ランダム型、ブロック型のいずれでもよいが、親水性の効果的な発揮および合成工程の簡便さの観点から、ブロック型であることが好ましい。なお、ブロック型の場合、配列の順序は問わない。すなわち、例えば、(AO)mがエチレンオキシド/ブチレンオキシドのブロック共重合体の場合、スルホン酸基にはポリオキシエチレン鎖が連結してもよいし、ポリオキシブチレン鎖が連結してもよい。
【0028】
(AO)mは、炭素数2~4のアルキレンオキシド付加物であり、かようなアルキレンオキシド付加物の構造は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド等のアルキレンオキシドの1種または2種以上により形成される構造である。中でも、エチレンオキシドおよび1,2-ブチレンオキシドを含むアルキレンオキシドにより形成される構造であることが好ましい。なお、(AO)mが2種以上の上記化合物により形成される場合、ランダム付加、ブロック付加のいずれで形成されてもよい。
【0029】
なお、本明細書によれば、(AO)mが上記とは異なる構造を含むアルキレンオキシド付加物であるような形態もまた、提供される。当該形態において、具体的には、アルキレンオキシド付加物である(AO)mが、上述した炭素数2~4のアルキレンオキシドに代えて、またはこれに加えて、単官能エポキシ化合物に由来するAO構造を有するものであってもよい。かような単官能エポキシ化合物としては、アルコールまたはフェノールがエピクロルヒドリンでエポキシ化されてなる化合物が例示される。この際、アルコールとしては、飽和または不飽和の、直鎖状、分岐状または環状の、炭素数1~24のアルコールが例示される。
【0030】
前記化学式(1)において、nは、Qn+の原子価を表し、1または2である。すなわち、Qn+が1価のカチオン(Q+)であればnは1であり、Qn+が2価のカチオン(Q2+)であればnは2である。
【0031】
前記化学式(1)において、Qn+は1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオンを表す。
【0032】
1価金属イオンの例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。
【0033】
2価金属イオンの例としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
【0034】
含窒素化合物イオンとしては、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオンおよびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。上記の各イオンは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有していてもよい。
【0035】
アンモニウムイオンの具体的な例としては、以下のようなイオンが挙げられる。例えば、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、モノプロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、モノブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、モノペンチルアンモニウムイオン、ジペンチルアンモニウムイオン、トリペンチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、モノヘキシルアンモニウムイオン、ジヘキシルアンモニウムイオン、モノヘプチルアンモニウムイオン、ジヘプチルアンモニウムイオン、モノオクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、モノノニルアンモニウムイオン、モノデシルアンモニウムイオン、モノウンデシルアンモニウムイオン、モノドデシルアンモニウムイオン、モノトリデシルアンモニウムイオン、モノテトラデシルアンモニウムイオン、モノペンタデシルアンモニウムイオン、モノヘキサデシルアンモニウムイオン、モノヘプタデシルアンモニウムイオン、モノオクタデシルアンモニウムイオン、モノノナデシルアンモニウムイオン、モノイコシルアンモニウムイオン、モノヘンイコシルアンモニウムイオン、モノドコシルアンモニウムイオン、モノトリコシルアンモニウムイオン、メチル(エチル)アンモニウムイオン、メチル(プロピル)アンモニウムイオン、メチル(ブチル)アンモニウムイオン、メチル(ペンチル)アンモニウムイオン、メチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、メチル(オクチル)アンモニウムイオン、メチル(ノニル)アンモニウムイオン、メチル(デシル)アンモニウムイオン、メチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、メチル(ドデシル)アンモニウムイオン、メチル(トリデシル)アンモニウムイオン、メチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、メチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、メチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、メチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、メチル(イコシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、メチル(トリコシル)アンモニウムイオン、エチル(プロピル)アンモニウムイオン、エチル(ブチル)アンモニウムイオン、エチル(ペンチル)アンモニウムイオン、エチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、エチル(オクチル)アンモニウムイオン、エチル(ノニル)アンモニウムイオン、エチル(デシル)アンモニウムイオン、エチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、エチル(ドデシル)アンモニウムイオン、エチル(トリデシル)アンモニウムイオン、エチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、エチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、エチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、エチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、エチル(イコシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、エチル(トリコシル)アンモニウムイオン、ジメチル(エチル)アンモニウムイオン、ジメチル(プロピル)アンモニウムイオン、ジメチル(ブチル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンチル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクチル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノニル)アンモニウムイオン、ジメチル(デシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ドデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(イコシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリコシル)アンモニウムイオン、トリメチル(エチル)アンモニウムイオン、トリメチル(プロピル)アンモニウムイオン、トリメチル(ブチル)アンモニウムイオン、トリメチル(ペンチル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、トリメチル(オクチル)アンモニウムイオン、トリメチル(ノニル)アンモニウムイオン、トリメチル(デシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ドデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(トリデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(イコシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、トリメチル(トリコシル)アンモニウムイオン等のアルキルアンモニウムイオン。
【0036】
モノビニルアンモニウムイオン、ジビニルアンモニウムイオン、トリビニルアンモニウムイオン、モノプロペニルアンモニウムイオン、ジプロペニルアンモニウムイオン、トリプロペニルアンモニウムイオン、モノブテニルアンモニウムイオン、ジブテニルアンモニウムイオン、トリブテニルアンモニウムイオン、モノペンテニルアンモニウムイオン、ジペンテニルアンモニウムイオン、トリペンテニルアンモニウムイオン、モノヘキセニルアンモニウムイオン、ジヘキセニルアンモニウムイオン、モノヘプテニルアンモニウムイオン、ジヘプテニルアンモニウムイオン、モノオクテニルアンモニウムイオン、ジオクテニルアンモニウムイオン、モノノネニルアンモニウムイオン、モノデセニルアンモニウムイオン、モノウンデセニルアンモニウムイオン、モノドデセニルアンモニウムイオン、モノトリデセニルアンモニウムイオン、モノテトラデセニルアンモニウムイオン、モノペンタデセニルアンモニウムイオン、モノヘキサデセニルアンモニウムイオン、モノヘプタデセニルアンモニウムイオン、モノオクタデセニルアンモニウムイオン、モノノナデセニルアンモニウムイオン、モノイコセニルアンモニウムイオン、モノヘンイコセニルアンモニウムイオン、モノドコセニルアンモニウムイオン、モノトリコセニルアンモニウムイオンなどのアルケニルアンモニウムイオン。
【0037】
ジメチル(ビニル)アンモニウムイオン、ジメチル(プロペニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ブテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノネニル)アンモニウムイオン、ジメチル(デセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ウンデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ドデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(テトラデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキサデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノナデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(イコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘンイコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリコセニル)アンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルアンモニウムイオン、トリメチル(ビニル)アンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノメチルアンモニウムイオンなどのアルキル基およびアルケニル基を有するモノアンモニウムイオン。
【0038】
モノベンジルアンモニウムイオン、(1-フェネチル)アンモニウムイオン、(2-フェネチル)アンモニウムイオン(別名:モノフェネチルアンモニウムイオン)、ジベンジルアンモニウムイオン、ビス(1-フェネチル)アンモニウムイオン、ビス(2-フェネチル)アンモニウムイオン(別名:ジフェネチルアンモニウムイオン)などの芳香族置換アルキルアンモニウムイオン;モノシクロペンチルアンモニウムイオン、ジシクロペンチルアンモニウムイオン、トリシクロペンチルアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルアンモニウムイオン、ジシクロヘキシルアンモニウムイオン、モノシクロヘプチルアンモニウムイオン、ジシクロヘプチルアンモニウムイオンなどの炭素数5~16のシクロアルキルアンモニウムイオン;ジメチル(シクロペンチル)アンモニウムイオン、ジメチル(シクロヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチル(シクロヘプチル)アンモニウムイオン等のアルキル基およびシクロアルキル基を有するモノアンモニウムイオン;(メチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(メチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(ジメチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(ジメチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(エチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(エチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(メチルエチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(ジエチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(メチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、ビス(メチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(ジメチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(エチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、ビス(エチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(メチルエチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(ジエチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(メチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、ビス(メチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(ジメチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(エチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(メチルエチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(ジエチルシクロヘプチル)アンモニウムイオンなどのアルキルシクロアルキルアンモニウムイオン。
【0039】
モノメタノールアンモニウムイオン、ジメタノールアンモニウムイオン、トリメタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モノ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、ジ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、トリ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、モノイソプロパノールアンモニウムイオン、ジイソプロパノールアンモニウムイオン、トリイソプロパノールアンモニウムイオン、モノブタノールアンモニウムイオン、ジブタノールアンモニウムイオン、トリブタノールアンモニウムイオン、モノペンタノールアンモニウムイオン、ジペンタノールアンモニウムイオン、トリペンタノールアンモニウムイオン、モノヘキサノールアンモニウムイオン、ジヘキサノールアンモニウムイオン、モノヘプタノールアンモニウムイオン、ジヘプタノールアンモニウムイオン、モノオクタノールアンモニウムイオン、モノノナノールアンモニウムイオン、モノデカノールアンモニウムイオン、モノウンデカノールアンモニウムイオン、モノドデカノールアンモニウムイオン、モノトリデカノールアンモニウムイオン、モノテトラデカノールアンモニウムイオン、モノペンタデカノールアンモニウムイオン、モノヘキサデカノールアンモニウムイオン、モノメチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノエチルモノブタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノブチルモノブタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジメチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジエチルモノブタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジブチルモノブタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノメチルジエタノールアンモニウムイオン、モノメチルジプロパノールアンモニウムイオン、モノメチルジブタノールアンモニウムイオン、モノメチルジペンタノールアンモニウムイオン、モノエチルジエタノールアンモニウムイオン、モノエチルジプロパノールアンモニウムイオン、モノエチルジブタノールアンモニウムイオン、モノエチルジペンタノールアンモニウムイオン、モノプロピルジエタノールアンモニウムイオン、モノプロピルジプロパノールアンモニウムイオン、モノプロピルジブタノールアンモニウムイオン、モノプロピルジペンタノールアンモニウムイオン、モノブチルジエタノールアンモニウムイオン、モノブチルジプロパノールアンモニウムイオン、モノブチルジブタノールアンモニウムイオン、モノブチルジペンタノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルモノエタノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルジエタノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルジプロパノールアンモニウムイオン、モノ(β-アミノエチル)モノエタノールアンモニウムイオン、モノtert-ブチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノtert-ブチルジエタノールアンモニウムイオン、モノ(β-アミノエチル)イソプロパノールアンモニウムイオンジエチルモノイソプロパノールアンモニウムイオン、トリメチルモノエタノールアンモニウムイオン、トリエチルモノエタノールアンモニウムイオン、トリエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、トリエチルモノブタノールアンモニウムイオン、トリエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルエタノールアンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルモノメチルアンモニウムイオン、モノエチルモノメチルジエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルモノエタノールアンモニウムイオンなどのアルカノールアンモニウムイオン。入手容易性の観点から、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルエタノールアンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルアンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルモノメチルアンモニウムイオン、モノエチルジエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノメチルジエタノールアンモニウムイオンが好ましく、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルモノエタノールアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0040】
ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノ(2-イソシアノエチル)アンモニウムイオン、ジエチルモノ(2-シアノプロピル)アンモニウムイオン、ジエチルモノ(1,2-エポキシプロパン)アンモニウムイオン。
【0041】
なお、上記のアンモニウムイオンにおいて、N上の置換基であることを示す「N-」や「N,N-」などの記載は省略する。
【0042】
イミダゾリウムイオンの具体的な例としては、例えば、イミダゾリウムイオン、N-イソブチルイミダゾリウムイオン、2-メチルイミダゾリウムイオン、2-エチルイミダゾリウムイオン、2-n-プロピルイミダゾリウムイオン、2-イソプロピルイミダゾリウムイオン、2-n-ブチルイミダゾリウムイオン、2-フェニルイミダゾリウムイオン、4-メチルイミダゾリウムイオン、4-エチルイミダゾリウムイオン、4-ニトロイミダゾリウムイオン、4-フェニルイミダゾリウムイオン、2-メチル-4-フェニルイミダゾリウムイオン、4,5-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-イソブチル-2-メチルイミダゾリウムイオン、1-イソブチル-2,3-メチルイミダゾリウムイオン、2,4,5-トリメチルイミダゾリウムイオン、2,4,5-トリフェニルイミダゾリウムイオン、ベンズイミダゾリウムイオン、2-メチルベンズイミダゾリウムイオン、2-フェニルベンズイミダゾリウムイオンなどが挙げられる。入手容易性の観点から、1-イソブチル-2-メチルイミダゾリウムイオン、1-イソブチル-2,3-メチルイミダゾリウムイオンが特に好ましい。
【0043】
ピリジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピリジニウムイオン、2-イソブチルピリジニウムイオン、3-イソブチルピリジニウムイオン、3-メチルピリジニウムイオン、4-メチルピリジニウムイオン、2-エチルピリジニウムイオン、3-エチルピリジニウムイオン、4-エチルピリジニウムイオン、4-プロピルピリジニウムイオン、2-n-ヘキシルピリジニウムイオン、3-n-ヘキシルピリジニウムイオン、3,5-ジメチルピリジニウムイオン、3,5-ジエチルピリジニウムイオン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジニウムイオン、2-ベンジルピリジニウムイオン、4-ベンジルピリジニウムイオン、2-フェニルピリジニウムイオン、3-フェニルピリジニウムイオン、4-フェニルピリジニウムイオン、2,6-ジフェニルピリジニウムイオン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジニウムイオン、4-(3-フェニルプロピル)ピリジニウムイオン、2-ベンゾイルピリジニウムイオン、3-ベンゾイルピリジニウムイオン、4-ベンゾイルピリジニウムイオン、2-メトキシピリジニウムイオン、2-n-ブトキシピリジニウムイオン、2,6-ジメトキシピリジニウムイオン、2-メトキシ-6-メチルピリジニウムイオン、4-メトキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、3-エトキシ-2-ニトロピリジニウムイオン、2-メトキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、4-(4-ニトロベンジル)ピリジニウムイオン、2-ビニルピリジニウムイオン、4-ビニルピリジニウムイオン、2-ヒドロキシピリジニウムイオン、3-ヒドロキシピリジニウムイオン、4-ヒドロキシピリジニウムイオン、2,4-ジヒドロキシピリジニウムイオン、2,6-ジヒドロキシピリジニウムイオン、3-ヒドロキシメチルピリジニウムイオン、4-ヒドロキシメチルピリジニウムイオン、2-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-6-メチルピリジニウムイオン、3-ヒドロキシ-2-メチルピリジニウムイオン、5-ヒドロキシ-2-メチルピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-5-ニトロピリジニウムイオン、4-ヒドロキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、3-ヒドロキシ-2-ニトロピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-6-メチル-5-ニトロピリジニウムイオン、2-エテニルピリジニウムイオン、2-エチニルピリジニウムイオン、2-メチル-5-エチルピリジニウムイオン、4-エチル-2-メチルピリジニウムイオン、5-ブチル-2-メチルピリジニウムイオン、2-エチル-6-イソプロピルピリジニウムイオン、3-エチル-4-メチルピリジニウムイオン、2-メチル-5-ビニルピリジニウムイオン、4-(フェニルプロピル)ピリジニウムイオン、4-(1-ピペリジル)ピリジニウムイオン、4-ピロリジノピリジニウムイオン、2-ピロリジン-2-イルピリジニウムイオン、4-フェノキシピリジニウムイオン、2-メチル-3-エチルピリジニウムイオン、2-メチル-5-(イソ)プロピルピリジニウムイオン、2-アセチルピリジニウムイオン、3-アセチルピリジニウムイオン、4-アセチルピリジニウムイオン、2-メチル-5-アセチルピリジニウムイオン、2,6-ジアセチルピリジニウムイオン、2-フェノキシ-5-アセチルピリジニウムイオン、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)ピリジニウムイオン、2,2’-ビピリジニウムイオン、2,6-ビス(p-トリル)ピリジニウムイオン、N-Boc-3-ヒドロキシ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジニウムイオン、N-Boc-1,2,3,6-テトラヒドロピリジニウムイオンなどが挙げられる。
【0044】
ピロリジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピロリジニウムイオン、N-メチルピロリジニウムイオン、N-エチルピロリジニウムイオン、N-プロピルピロリジニウムイオン、N-ブチルピロリジニウムイオン、N-フェニルピロリジニウムイオン、N-ニトロソピロリジニウムイオン、2-メチルピロリジニウムイオン、2-フェニルピロリジニウムイオン、3-フェニルピロリジニウムイオン、3-ヒドロキシ-1-メチルピロリジニウムイオン、3-(4-メチルフェニル)ピロリジニウムイオン、3-(ピロリジニウム-1-イルメチル)ピペリジン、2-ピロリジニウム-2-イルピリジンなどが挙げられる。
【0045】
ピロリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピロリニウムイオン、N-メチルピロリニウムイオン、2-アセチル-5-メチルピロリニウムイオン、ピロリニウム-1-カルボン酸メチル、2-アセチルピロリニウムイオン、3-アセチルピロリニウムイオン、2,5-ジメチル-1-(4-ニトロフェニル)-1H-ピロリニウムイオン、1-フルフリルピロリニウムイオン、1-(2-ニトロフェニル)ピロリニウムイオン、1,2,5-トリメチルピロリニウムイオン、2,4-ジメチルピロリニウム-3,5-ジカルボン酸ジエチル、4-メチルピロリニウム-3-カルボン酸エチル、4-フェニルピロリニウム-3-カルボン酸エチル、3,4,5-トリメチルピロリニウム-2-カルボン酸エチル、2,5-ジメチルピロリニウム-3-カルボン酸メチル、1,2,5-トリメチル-1H-ピロリニウム-3-カルボン酸メチル、N-トリメトキシシリルピロリニウムイオン、N-トリエトキシシリルピロリニウムイオン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロリニウムイオン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ピロリニウムイオンなどが挙げられる。
【0046】
ピペリジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、2,6-ジメチルピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-ピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジニウムイオン、2,2-6-6-テトラメチル-4-アセトキシピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-アセトアミドピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-プロポキシピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-ヒドロキシ-4-オキサペントキシ)ピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-オキシカルボニル-2-プロペンピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-フェニルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-(2-シクロプロピル-2-フェニルプロパノイル)オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-(2-シクロペンチル-2-ピリジン-3-イルプロパノイル)オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-(2-シクロブチル-2-フェニルプロパノイル)オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(4-メトキシフェニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(2-チエニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(5-メチル-2-チエニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-ブロモフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-ブロモフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-シアノフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-シアノフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-メチルチオフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-メチルチオフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-メチルスルホニルフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-メチルスルホニルフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-フルオロフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-クロロフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-フルオロフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、および1,3-ジメチル-4-[2-(5-クロロ-2-チエニル)-2-シクロブチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオンなどが挙げられる。
【0047】
ピラジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピラジニウムイオン、ピラジニウムカルボン酸メチル、ピラジニウム-2-カルボニトリル、ピラジニウムカルボキサミド、2-アセチル-3-エチルピラジニウムイオン、2-アセチル-3-メチルピラジニウムイオン、2-アセチルピラジニウムイオン、2-(アミノメチル)-5-メチルピラジニウムイオン、2-アミノ-3-(フェニルメチル)ピラジニウムイオン、2,3-ビス(2’-ピリジル)-5,6-ジヒドロピラジニウムイオン、2-シアノピラジニウムイオン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジニウムイオン、2,3-ジエチルピラジニウムイオン、6,7-ジヒドロ-5-メチル-5H-シクロペンタピラジニウムイオン、3,5-ジメチル-2-エチルピラジニウムイオン、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジニウムイオン、2,3-ジメチルピラジニウムイオン、2,5-ジメチルピラジニウムイオン、2,6-ジメチルピラジニウムイオン、2,3-ジフェニルピラジニウムイオン、2-エトキシ-3-エチルピラジニウムイオン、2-エトキシ-3-メチルピラジニウムイオン、2-エトキシピラジニウムイオン、5-エチル-2,3-ジメチルピラジニウムイオン、2-エチル-3-メトキシピラジニウムイオン、2-エチル-3-メチルピラジニウムイオン、エチルピラジニウムイオン、2-フルフリルチオピラジニウムイオン、5-イソブチル-2,3-ジメチルピラジニウムイオン、2-イソブチル-3-メトキシピラジニウムイオン、2-イソプロピルピラジニウムイオン、2-(2-メルカプトエチル)ピラジニウムイオン、2-メトキシ-3-エチルピラジニウムイオン、2-メトキシ-3-(1-メチルプロピル)ピラジニウムイオン、2-メトキシピラジニウムイオン、5-メチル-6,7-ジヒドロシクロペンタピラジニウムイオン、2-メチルメルカプト-3-メチルピラジニウムイオン、2-メチル-3-(メチルチオ)ピラジニウムイオン、2-メチル-3-n-プロピルピラジニウムイオン、2-メチルピラジニウムイオン、2-(メチルチオ)-3-エチルピラジニウムイオン、2-(メチルチオ)ピラジニウムイオン、2-プロピルピラジニウムイオン、2-(1H-ピラゾール-4-イル)ピラジニウムイオン、2,3,5,6-テトラメチルピラジニウムイオン、2,3,5-トリメチルピラジニウムイオン、2-ビニルピラジニウムイオンなどが挙げられる。
【0048】
ピリミジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピリミジニウムイオン、4-メチルピリミジニウムイオン、4-ヒドロキシピリミジニウムイオン、4,6-ジメチルピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシピリミジニウムイオン、2,4,5-トリヒドロキシピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシ-2-メチルピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシ-5-ニトロピリミジニウムイオン、2,4-ジメチル-6-ヒドロキシピリミジニウムイオン、4,6-ジメチル-2-ヒドロキシピリミジニウムイオン、2-[4-n-(ヘキシルオキシ)フェニル]-5-n-オクチルピリミジニウムイオン、4-ヒドロキシピラゾロ[3,4-d]-ピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシピラゾロ[3,4-d]ピリミジニウムイオンなどが挙げられる。
【0049】
トリアゾリウムイオンの具体的な例としては、例えば、1,2,3-トリアゾリウムイオン、1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-ヒドロキシ-1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-メチル-1,2,4-トリアゾリウムイオン、1-メチル-1,2,4-トリアゾリウムイオン、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾリウムイオン、4-メチル-1,2,3-トリアゾリウムイオン、ベンゾトリアゾリウムイオン、トリルトリアゾリウムイオン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾリウムイオン、4,5,6,7-テトラヒドロトリアゾリウムイオン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-アミノ-5-メチル-1,2,4-トリアゾリウムイオン、カルボキシベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオンなどが挙げられる。
【0050】
トリアジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、1,2,3-トリアジニウムイオン、1,2,4-トリアジニウムイオン、1,3,5-トリアジニウムイオン、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジニウムイオン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジニウムイオン、5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジニウムイオン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-s-トリアジニウムイオン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジニウムイオン、2-(4-ピリジニル)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリフェニル-s-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリ(2-ピリジル)-s-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1,3,5-トリス(4-ピリジル)-2,4,6-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1-(1,3,5-トリアジニウム-2-イル)ピペラジン、2,4,6-トリピリジル-s-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジニウムイオンなどが挙げられる。
【0051】
キノリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、キノリニウムイオン、2-メチルキノリニウムイオン、3-メチルキノリニウムイオン、4-メチルキノリニウムイオン、8-メチルキノリニウムイオン、2,8-ジメチルキノリニウムイオン、3,8-ジメチルキノリニウムイオン、4,8-ジメチルキノリニウムイオン、7-メチルキノリニウムイオン、2,7-ジメチルキノリニウムイオン、3,7-ジメチルキノリニウムイオン、4,7-ジメチルキノリニウムイオン、6-メチルキノリニウムイオン、2,6-ジメチルキノリニウムイオン、3,6-ジメチルキノリニウムイオン、4,6-ジメチルキノリニウムイオン、8-エチルキノリニウムイオン、2-メチル-8-エチルキノリニウムイオン、4-メチル-8-エチルキノリニウムイオン、7-イソプロピル-2-メチルキノリニウムイオン、6-tert-ブチル-4-メチルキノリニウムイオンなどが挙げられる。
【0052】
イソキノリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、イソキノリニウムイオン、3-メチルイソキノリニウムイオン、4-メチルイソキノリニウムイオン、5-メチルイソキノリニウムイオン、6-メチルイソキノリニウムイオン、7-メチルイソキノリニウムイオン、8-メチルイソキノリニウムイオン、1,3-ジメチルイソキノリニウムイオン、5,8-ジメチルイソキノリニウムイオン、5,6,7,8-テトラメチルイソキノリニウムイオン、3-tert-ブチルイソキノリニウムイオン、4-tert-ブチルイソキノリニウムイオン、6-tert-ブチルイソキノリニウムイオン、7-tert-ブチルイソキノリニウムイオンなどが挙げられる。
【0053】
インドリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、インドリニウムイオン、3-メチルインドリニウムイオン、2-メチルインドリニウムイオン、1-メチル-3-メチルインドリニウムイオン、2,3-ジメチルインドリニウムイオン、3-エチルインドリニウムイオン、2-フェニルインドリニウムイオン、3-フェニルインドリニウムイオン、2,3-フェニルインドリニウムイオン、2,3-ジメチル-7-ニトロインドリニウムイオン、2,3-ジメチル-7-クロロインドリニウムイオン、3-エチル-7-メチルインドリニウムイオン、2,3-ジメチル-7-メトキシメチルインドリニウムイオン、7-メトキシメチル-3-メチルインドリニウムイオン、3-(ピリジン-2-イル)インドリウニムイオン、3-(ピリジン-2-イル)-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-7-エチル-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-7-メトキシメチル-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-2-ブトキシメチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジエトキシピリミジン-2-イル)-7-メトキシメチルインドリニウムイオンなどが挙げられる。
【0054】
キノキサリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、キノキサリニウムイオン、2-メチルキノキサリニウムイオン、2,3-ジメチルキノキサリニウムイオンなどが挙げられる。
【0055】
ピペラジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピペラジニウムイオン、N-メチルピペラジニウムイオン、N-エチルピペラジニウムイオン、N-(イソ)プロピルピペラジニウムイオン、N-ブチルピペラジニウムイオン、N-フェニルピペラジニウムイオン、2-メチルピペラジニウムイオン、2,5-ジメチルピペラジニウムイオン、2,6-ジメチルピペラジニウムイオン、1,4-ジフェニルピペラジニウムイオン、1-アセチルピペラジニウムイオン、1-アリルピペラジニウムイオン、1-(2-メチルアリル)ピペラジニウムイオン、1-(1-メチルブチル)ピペラジニウムイオン、1-ベンゾイルピペラジニウムイオン、1-シクロペンチルピペラジニウムイオン、1-ホルミルピペラジニウムイオン、1-フェネチルピペラジニウムイオン、1-(4-ピリジル)ピペラジニウムイオン、1-(2-ピロリジノエチル)ピペラジニウムイオン、1-(o-トリル)ピペラジニウムイオン、1,4-ジエチルピペラジニウムイオン、1,4-ジホルミルピペラジニウムイオン、1-(1,3-ジメチルブチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,3-ジメチルフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(2,6-ジメチルフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(3,4-ジメチルフェニル)ピペラジニウムイオン、N,N’-ジメチルピペラジニウムイオン、1-(2-エトキシエチル)ピペラジニウムイオン、1-(2-エトキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシエチル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メトキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(4-メトキシベンジル)ピペラジニウムイオン、1-(4-メトキシベンゾイル)ピペラジニウムイオン、1-[2-(フェノキシ)エチル]ピペラジニウムイオン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジニウムイオン、N-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルピペラジニウムイオン、N-4-ベンジル-2-フェニルピペラジニウムイオン、1-ベンジル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-ビフェニリル)ピペラジニウムイオン、1-(4-ビフェニリル)ピペラジニウムイオン、1-シクロヘキシル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,3-ジメチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,4-ジメチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,5-ジメチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-エチル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(1-エチルプロピル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペラジニウムイオン、2-メチル-1-(3-メチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、2-メチル-1-(3-メチルフェニル)-4-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-[(1-メチルピペリジン-3-イル)メチル]ピペラジニウムイオン、1-メチル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メチルピリジン-2-イル)ピペラジニウムイオン、1-(ピペリジン-3-イルメチル)-4-プロピルピペラジニウムイオン、1-(ピペリジン-4-イルメチル)-4-プロピルピペラジニウムイオン、1-アセチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジニウムイオンなどが挙げられる。
【0056】
オキサゾリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、オキサゾリニウムイオン、4-メチルオキサゾリニウムイオン、5-メチルオキサゾリニウムイオン、4-フェニルオキサゾリニウムイオン、4,5-ジフェニルオキサゾリニウムイオン、4-エチルオキサゾリニウムイオン、4,5-ジメチルオキサゾリニウムイオン、5-フェニルオキサゾリニウムイオン、ベンゾオキサゾリニウムイオン、5-クロロベンゾオキサゾリニウムイオン、5-メチルベンゾオキサゾリニウムイオン、5-フェニルベンゾオキサゾリニウムイオン、6-メチルベンゾオキサゾリニウムイオン、5,6-ジメチルベンゾオキサゾリニウムイオン、4,6-ジメチルベンゾオキサゾリニウムイオン、6-メトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、5-メトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、4-エトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、5-クロロベンゾオキサゾリニウムイオン、6-メトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、5-ヒドロキシベンゾオキサゾリニウムイオン、6-ヒドロキシベンゾオキサゾリニウムイオン、ナフト[1,2]オキサゾリニウムイオン、ナフト[2,1]オキサゾリニウムイオンなどが挙げられる。
【0057】
チアゾリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、チアゾリニウムイオン、2-アミノチアゾリニウムイオン、2-メチルチアゾリニウムイオン、2-メトキシチアゾリニウムイオン、2-エトキシチアゾリニウムイオン、2-イソブチルチアゾリニウムイオン、2-トリメチルシリルチアゾリニウムイオン、5-トリメチルシリルチアゾリニウムイオン、4-メチルチアゾリニウムイオン、4,5-ジメチルチアゾリニウムイオン、2-エチルチアゾリニウムイオン、2,4-ジメチルチアゾリニウムイオン、2-アミノ-5-メチルチアゾリニウムイオン、2-アミノ-4-メチルチアゾリニウムイオン、2,4,5-トリメチルチアゾリニウムイオン、ベンゾチアゾリニウムイオン、2-メチルベンゾチアゾリニウムイオン、2,5-ジメチルベンゾチアゾリニウムイオンなどが挙げられる。
【0058】
モルホリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、モルホリニウムイオン、N-メチルモルホリニウムイオン、N-エチルモルホリニウムイオン、N-(イソ)プロピルモルホリニウムイオン、N-(イソ)ブチルモルホリニウムイオン、N-アセチルモルホリニウムイオン、N-(2-ニトロブチル)モルホリニウムイオン、N-フェニルモルホリニウムイオン、4-モルホリノアセトフェノン、N-(メタ)アクリルモルホリニウムイオン、N-(メタ)アクリロイルモルホリニウムイオン、ビス(2-モルホリニウムエチル)エーテル、4-モルホリニウムニトロベンゼン、ジモルホリニウムメタン、アセトアセトモルホリド、4-tert-ブチル-2-(フェノキシメチル)モルホリニウムイオン、2,6-ジメチルモルホリニウムイオン、4-(2,3-エポキシプロピル)モルホリニウムイオン、N-ホルミルモルホリニウムイオン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリニウムイオン、N-(4-ニトロフェニル)モルホリニウムイオン、N-ノナノイルモルホリニウムイオンなどが挙げられる。入手容易性の観点から、N-メチルモルホリニウムイオン、N-エチルモルホリニウムイオンが特に好ましい。
【0059】
本発明において、Qn+は、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンであることが好ましい。Qn+は、より好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(2-イソシアノエチル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(2-シアノプロピル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(1,2-エポキシプロパン)アンモニウムイオンである。Qn+は、さらにより好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンである。Qn+は、特に好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオンである。
【0060】
Qn+がエチレン性不飽和結合を有する場合、本発明に係るイオン結合性塩が有するエチレン性不飽和結合の数は、特に制限されず、用途により任意に選択できるが、好ましくは1つである。
【0061】
前記化学式(1)で表されるイオン結合性塩のより好ましい化合物としては、下記化学式(3)~(6)で表されるイオン結合性塩が挙げられる。下記化学式(3)~(6)において、オキシブチレン基(-C4H8O-)は、特に制限されないが、分枝状のブチレン基を有することが好ましく、エチルエチレン基(-CH2-CH(CH2CH3)-)を有することがより好ましい。すなわち、オキシブチレン基は、上記化学式(B1)または/および(B2)で示される基を有することが好ましい。かような化合物であれば、耐水性と表面親水性とを両立する塗膜または成形品を形成することができる。なお、本形態に係る濡れ性向上剤において、イオン結合性塩は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、イオン結合性塩とその重合体とが併用されてもよい。
【0062】
【0063】
(イオン結合性塩の製造方法)
上記反応性基を有するイオン結合性塩の製造方法は、特に制限されず、例えば、アニオン交換法、中和法、酸エステル法などが挙げられる。また、硫酸エステルのアンモニウム塩またはスルホン酸エステルのアンモニウム塩と、窒素含有化合物とを反応させアンモニアを留去して反応性基を有するイオン結合性塩を得る脱アンモニア法なども好適に用いられる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る濡れ性向上剤は、Qn+がエチレン性不飽和結合を有する(好ましくは、Qn+がエチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオンである)上記イオン結合性塩由来の構成単位を有する重合体を含む。当該重合体は、イオン結合性塩の単独重合体またはイオン結合性塩およびその他のモノマーの共重合体のいずれであってもよい。
【0065】
ここで、その他のモノマーは、上記イオン結合性塩と共重合可能なモノマーであれば特に制限されないが、単官能の(メタ)アクリルモノマーが好ましく、置換または非置換のC1~C20アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、置換または非置換のC1~C8アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらにより好ましく、置換または非置換のC1~C4アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが特に好ましく、置換または非置換のC1~C2アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが最も好ましい。
【0066】
C1~C20アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。
【0067】
その他のモノマーに含まれうる置換基としては、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。
【0068】
その他のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(メタ)アクリル酸-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン含有α,β-不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β-不飽和芳香族炭化水素、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましい。
【0069】
上記重合体が共重合体である場合、上記イオン結合性塩由来の構成単位の含有量は、重合体を構成する全構成単位の合計量100質量%に対して、好ましくは0.1~99質量%であり、より好ましくは0.5~95質量%であり、1.0~90質量%であり、1.5~85質量%である。後述する実施例7のように、当該含有量が高い重合体を調製し、樹脂に少量配合することで、樹脂本体の性質を損ねることなく樹脂表面の親水性を高めることができる。なお、当該含有量は、重合体を製造する際の全モノマーの合計質量に対するイオン結合性塩の質量の割合と実質的に同等である。
【0070】
重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは500~1,000,000であり、より好ましくは1,000~500,000である。なお、重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)を用いて測定した値である。
【0071】
(重合体の製造方法)
上記重合体は、イオン結合性塩、ならびに必要に応じて他のモノマー、溶媒、添加剤等を混合し、加熱あるいは(紫外線等の)光照射等により重合させて得ることができる。重合方法は特に制限されず、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、乳化重合法、気相重合法等の公知の方法を用いることができる。
【0072】
重合においては、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤や、チーグラー-ナッタ触媒、メタロセン触媒等の重合触媒を使用することが好ましく、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の添加量は、全単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部であることが好ましい。
【0073】
熱重合開始剤の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;等が挙げられる。なお、これらの熱重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
光重合開始剤の例としては、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;オキシムエステル類;カチオン系光重合開始剤;分子内水素引抜型光重合開始剤;等が挙げられる。なお、これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
また、乳化剤として本発明に係るイオン結合性塩を用い、重合開始剤の存在下、水性溶媒中でその他のモノマーを乳化重合させて上記重合体を得る方法や、有機溶媒中で本発明のイオン結合性塩とその他のモノマーとを重合開始剤の存在下、溶液重合または紫外線重合させて上記重合体を得る方法も優れた生産性を有することから好適に用いられる。この際、乳化剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の他の界面活性剤を、上記イオン結合性塩と共に使用することができる。
【0076】
溶液重合法で用いられる溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよく、水との混合溶媒としてもよい。
【0077】
溶液重合法における重合条件は、特に制限されず、例えば、重合温度は使用する触媒の種類によって適宜設定することができるが、好ましくは50~120℃である。また、重合時間についても、特に制限されないが、好ましくは1~10時間である。重合方法についても、特に制限されず、例えば、モノマーの一括仕込みによる重合、滴下による重合、パワーフィード重合等が挙げられる。
【0078】
紫外線を照射して重合する場合、照射光源としては、水銀ランプ(例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ)、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線の照射条件は、特に制限されないが、積算光量は100mJ/cm2以上が好ましく、200mJ/cm2以上がより好ましい。
【0079】
[シリケートまたはその縮合物]
本形態に係る濡れ性向上剤は、上述したイオン結合性塩またはその重合体に加えて、以下に示すシリケートまたはその縮合物をも必須に含む。
【0080】
(シリケートの構造)
本形態に係る濡れ性向上剤に含まれるシリケートは、下記化学式(A)で表される。
【0081】
【0082】
前記化学式(A)において、Rは、同一または異なって水素原子または置換されていてもよい炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。ここで、Rのうち、好ましくは少なくとも1つが、より好ましくは少なくとも2つが、さらに好ましくは少なくとも3つが、特に好ましくは4つ全てが上記炭化水素基である。
【0083】
1価の炭化水素基は、直鎖状、分枝状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等が挙げられる。
【0084】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-t-ブチル-2-メチルプロピル基、n-ノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、イソデシル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
【0085】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基が挙げられる。
【0086】
アルキニル基としては、例えば、2-ブチニル基、3-ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基等の炭素数2~10のアルキニル基が挙げられる。
【0087】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。
【0088】
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の炭素数3~10のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0089】
シクロアルキニル基としては、例えば、シクロブチニル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基、シクロデシニル基等の炭素数3~10のシクロアルキニル基が挙げられる。
【0090】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基が挙げられる。中でも、フェニル基が好ましい。
【0091】
Rとしての1価の炭化水素基に導入されうる置換基は、特に制限されず、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。ただし、置換された構造が置換される前の基と同じになる形態は除外される。したがって、例えば、Rがアルキル基である場合に、当該アルキル基がさらにアルキル基で置換されることはない。
【0092】
本発明の効果のさらなる向上の観点から、Rは、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基または置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基であることが好ましく、形成される塗膜の耐水性のさらなる向上の観点から、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましい。さらに、Rとしてのアルキル基の炭素数は、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0093】
シリケートのうち、4つのRが全て炭化水素基である化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシランが挙げられる。
【0094】
なお、本形態に係る濡れ性向上剤において、シリケートは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、シリケートとその縮合物とが併用されてもよい。さらに、同一分子中に異なったアルコキシシリル基を含有するオルガノシリケートが用いられてもよい。例えば、メチルエチルシリケート、メチルプロピルシリケート、メチルブチルシリケート、エチルプロピルシリケート、プロピルブチルシリケートなども用いられうる。これらの置換基の比率0~100%の間で各置換基の割合を任意に変更可能である。
【0095】
また、本形態に係る濡れ性向上剤においては、上述したシリケートの部分加水分解・縮合物(本明細書中、単に「縮合物」とも称する)が用いられてもよい。ここで、当該縮合物を構成するシリケートのモル数について特に制限はないが、シリケートの2~18量体が好ましく、3~14量体がより好ましく、4~10量体が特に好ましい。
【0096】
本発明に係る濡れ性向上剤におけるシリケートまたはその縮合物の含有量は、上記イオン結合性塩またはその重合体の含有量100質量%に対して、好ましくは50~250質量%であり、より好ましくは65~200質量%であり、さらに好ましくは80~150質量%である。
【0097】
本形態に係る濡れ性向上剤には、上記イオン結合性塩またはその重合体、および、上記シリケートまたはその縮合物以外の成分が含まれてもよい。そのような成分としては、例えば、化学式(A)における4つのOR基の1つ以上がR基に置換された(Si-R結合を有する)化合物が挙げられる。このような化合物は、化学式(A)における4つのOR基のうち、1~3個のOR基がR基に置換されていることが好ましく、1~2個のOR基がR基に置換されていることがより好ましく、1個のOR基がR基に置換されていることが特に好ましい。化学式(A)における4つのOR基のうち1個のOR基がR基に置換されている化合物の例としては、いわゆるシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤においては通常、OR基を置換したR基の末端に、(メタ)アクリル基、ビニル基、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基といった種々の反応性官能基が存在する。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルプロピルトリメトキシシラン(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、スチリルシラン、ウレイドシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。これらの中でも、シランカップリング剤としては、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤またはアミノ基含有シランカップリング剤が好ましく、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤またはビニル基含有シランカップリング剤がより好ましく、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤が特に好ましい。なお、本発明は、上述したシリケートまたはその縮合物に代えてシランカップリング剤を用いた濡れ性向上剤をも提供する。すなわち、本発明によれば、上記化学式(1)で表されるイオン結合性塩またはその重合体と、シランカップリング剤とを含む、濡れ性向上剤もまた、提供される。このような濡れ性向上剤もまた、上述した課題を解決することができる。
【0098】
本発明に係る濡れ性向上剤における「化学式(A)における4つのOR基の1つ以上がR基に置換された(Si-R結合を有する)化合物」(好ましくはシランカップリング剤)の含有量は、上記イオン結合性塩またはその重合体の含有量100質量%に対して、好ましくは0~30質量%であり、より好ましくは0~20質量%であり、さらに好ましくは0~15質量%である。
【0099】
本形態に係る濡れ性向上剤には、上記のほかにも、溶媒、無機系または有機系充填剤、各種界面活性剤、多価イソシアネート化合物、エポキシ化合物、有機金属化合物などの反応性化合物、酸化防止剤、加工助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スリップ防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、光安定剤、滑剤、軟化剤、有色染料、その他の安定剤等が含有されうる。
【0100】
<樹脂組成物>
本発明は、上記の濡れ性向上剤と、樹脂と、を含む樹脂組成物についても提供する。樹脂としては、熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。以下、各樹脂について説明する。なお、本明細書において、「樹脂」との概念には、モノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびポリマーが包含される。
【0101】
[熱可塑性樹脂]
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂など)、ポリスルホン樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの誘導体樹脂、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0102】
(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、単官能(メタ)アクリルモノマーおよびその単独重合体または共重合体、多官能(メタ)アクリルモノマーおよびその単独重合体または共重合体、単官能または多官能(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0103】
単官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の炭素数1~10の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0104】
多官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、デカンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0105】
前記(メタ)アクリルモノマーの単独重合体または共重合体の具体例としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル-スチレン共重合体(AAS樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。
【0106】
スチレン樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-アクリロニトリル共重合体、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)等が挙げられる。
【0107】
オレフィン樹脂としては、オレフィンモノマーの単独重合体の他、オレフィンモノマーの共重合体、オレフィンモノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。オレフィンモノマーの具体例としては、例えば、鎖状オレフィン[エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素数2~20のα-オレフィンなど]、環状オレフィン[例えば、シクロペンテンなどの炭素数4~10のシクロアルケン;シクロペンタジエンなどの炭素数4~10のシクロアルカジエン;ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの炭素数7~20のビシクロアルケンまたは炭素数7~20のビシクロアルカジエン;ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの炭素数10~25のトリシクロアルケンまたはトリシクロアルカジエンなど]などが挙げられる。これらのオレフィンモノマーは、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。上記オレフィンモノマーのうち、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~4のα-オレフィンなどの鎖状オレフィンが好ましい。
【0108】
前記オレフィンモノマーと共重合可能な他の共重合性モノマーの具体例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマー;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)など];ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性モノマーは、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0109】
前記オレフィン樹脂のさらに具体的な例としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなど)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体などの鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)の(共)重合体などが挙げられる。また、オレフィンモノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン(特に、エチレン、プロピレンなどの炭素数2~4のα-オレフィン)と脂肪酸ビニルエステルモノマーとの共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピオン酸ビニル共重合体など);鎖状オレフィンと(メタ)アクリルモノマーとの共重合体[鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)と(メタ)アクリル酸との共重合体(例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなど);鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体など);など];鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)とジエンとの共重合体(例えば、エチレン-ブタジエン共重合体など);エポキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)、カルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン-無水マレイン酸共重合体)、エポキシおよびカルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン-無水マレイン酸-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)などの変性ポリオレフィン;オレフィンエラストマー(エチレン-プロピレンゴムなど)などが挙げられる。
【0110】
ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、(イ)ジカルボン酸またはその誘導体およびジオールまたはその誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、ならびに(ハ)ラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を重縮合してなる重合体または共重合体が挙げられる。
【0111】
上記ジカルボン酸またはその誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。上記ジオールまたは誘導体としては、例えば、炭素数2~20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200~100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物、すなわち4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、およびこれらの誘導体などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸およびこれらの誘導体などが挙げられる。上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5-オキセパン-2-オンなどが挙げられる。また、前記ポリエステル樹脂には、ポリエステルエラストマーも含まれる。
【0112】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、2価以上のフェノール化合物と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステル化合物とを反応させて得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0113】
前記2価以上のフェノール化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-(4-イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-ナフチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4-メチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。また、上記2価フェノール化合物以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが2価のフェノール化合物として使用できる。
【0114】
これら2価以上のフェノール化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、共重合成分として、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族2価カルボン酸を用いても良い。
【0115】
ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド;ポリ-1,4-ノルボルネンテレフタルアミド、ポリ-1,4-シクロヘキサンテレフタルアミドポリ-1,4-シクロヘキサン-1,4-シクロヘキサンアミドなどの脂環式ポリアミド;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド;これらのポリアミドのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドなどが挙げられる。なお、前記ポリアミド樹脂には、ポリアミドエラストマーも含まれる。
【0116】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,5-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレンエーテル)などの単独重合体、これらの単独重合体をベースとして構成された変性ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリフェニレンエーテル単独重合体またはその共重合体にスチレン重合体がグラフトしている変性グラフト共重合体などが挙げられる。
【0117】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の具体例としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどが挙げられる。
【0118】
上記熱可塑性樹脂は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。合成品の場合、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、乳化重合法、気相重合法等の公知の方法を用いて樹脂(樹脂ポリマー)を合成し、樹脂組成物に適用してもよい。その際、上述の熱重合開始剤または光重合開始剤を用いてもよい。
【0119】
なお、上記熱可塑性樹脂が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0120】
上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含み、より好ましくは(メタ)アクリル樹脂を含む。
【0121】
[熱硬化性樹脂]
本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、特に制限されないが、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0122】
本発明の樹脂組成物において、化学式(1)で表されるイオン結合性塩またはイオン結合性塩由来の構成単位の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.1~40質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.1質量部以上5質量部未満であることが特に好ましい。かような含量範囲にあることで、樹脂組成物から形成される塗膜の表面は、樹脂本来の性質を損なうことなく良好な親水性および耐汚染性を発現することができる。
【0123】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、重合開始剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ラジカル捕捉剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤等の他の添加成分を、適宜配合することができる。例えば、樹脂モノマーを含む樹脂組成物を対象物に塗布して硬化させる場合、硬化を促進させるため、樹脂組成物は重合開始剤を配合することが好ましい。重合開始剤の例としては、上述したような熱重合開始剤および光重合開始剤などが挙げられる。
【0124】
本発明の樹脂組成物の形態は、特に制限されず、例えば、固形状、エマルジョン、半透明溶液、透明溶液などいずれの形態でもよいが、環境負荷低減の観点から、エマルジョンであることが好ましい。
【0125】
本発明の樹脂組成物は、イオン結合性塩またはその重合体、およびシリケートまたはその縮合物を含む濡れ性向上剤、樹脂、ならびに必要に応じて上記の添加剤を、撹拌または溶融混練などにより混合することで製造することができる。溶融混練方法は、特に制限されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、熱ロール、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、または各種ニーダー等の装置を使用する方法を採用することができる。
【0126】
<濡れ性向上剤およびこれを含む樹脂組成物の用途>
本発明に係る濡れ性向上剤およびこれを含む樹脂組成物は、親水化コーティング剤として好適に使用できる。具体的には、本発明に係る濡れ性向上剤または樹脂組成物からなる親水化コーティング剤を成形品の表面に塗布して乾燥または硬化させることで、成形品表面に親水性塗膜が形成される。得られる親水性塗膜の表面は、親水性に優れ、例えば、水に対する接触角が、90°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°未満である。ゆえに、上記親水性塗膜が表面に配置された成形品は、親水性ひいては耐汚染性に優れる。
【0127】
親水性を向上させる対象となる成形品としては、特に制限されないが、例えば、フィルム、プラスチック、ガラス、繊維、シートまたはテープ等が挙げられ、好ましくはフィルム、プラスチック、ガラスである。
【0128】
塗布方法としては、公知の塗布方法を適宜使用することができ、例えば、スピン塗布、ロール塗布、グラビア塗布、リバース塗布、スプレー塗布、エアーナイフ塗布、カーテン塗布、ロールブラッシュ、含浸、バーコーターによる塗布などの方法を用いることができる。
【0129】
乾燥条件は、成形品の耐熱性や親水化コーティング剤に含まれる溶媒の沸点等に応じて適宜調節できる。乾燥温度は、特に制限されないが、例えば、50~180℃、80~150℃、または110~130℃である。乾燥時間も、特に制限されないが、例えば、0.5~120分、1~60分、または1~10分である。乾燥雰囲気も、特に制限されないが、例えば、大気、不活性ガス(例えば窒素)、真空である。
【0130】
硬化方法は、光硬化または熱硬化のいずれであってもよいが、短時間硬化および成形品へのダメージ低減の観点から、光硬化であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態に係る親水化コーティング剤は、樹脂組成物が光硬化性樹脂を含む。光硬化性樹脂としては、[熱可塑性樹脂]の項で述べたような(メタ)アクリル樹脂が好ましく、多官能(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。
【0131】
光硬化の場合、紫外線を発生する光源を用いることが好ましく、水銀ランプ(例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ)、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線の照射条件は、特に制限されないが、積算光量は100~1000mJ/cm2が好ましく、200~500mJ/cm2がより好ましい。熱硬化の場合、上述の乾燥と同じ条件で実施してもよい。すなわち、乾燥および熱硬化は同時に進行してもよい。
【0132】
上記の親水性塗膜を形成するにあたり、乾燥および硬化の両方を実施してもよい。例えば、予備乾燥により親水化コーティング剤に含まれる溶媒を除去した後、光硬化を実施してもよい。
【0133】
形成される親水性塗膜の膜厚は、ドライ膜厚として、好ましくは1~50μmであり、より好ましくは5~20μmであり、さらにより好ましくは10~15μmである。かような範囲であれば、成形品表面の親水性に優れ、塗膜形成前後で表面硬度が良好に維持される。
【0134】
親水性塗膜中、イオン結合性塩由来の構成単位の含有量は、樹脂100質量%に対して、好ましくは0.1~800質量%であり、より好ましくは0.5~400質量%である。かような範囲であれば、成形品本来の性質を損ねることなく、成形品表面の親水性を向上させることができる。なお、当該含有量は、樹脂(例えば、樹脂モノマー)の合計質量に対するイオン結合性塩の質量の割合と実質的に同等である。
【0135】
本発明に係る濡れ性向上剤の他の用途としては、例えば、親水性を持たせる成形品の製造原料に混合することができる。成形品としては、特に制限されないが、例えば、フィルム、プラスチック、ガラス、繊維、シートまたはテープ等が挙げられ、好ましくはフィルム、プラスチック、ガラスである。
【0136】
本発明の樹脂組成物の他の用途としては、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、繊維助剤、建材フィルム、ハードコート等の保護フィルム、家電製品の筐体、製紙用途(表面コート剤など)、土木用途(コンクリート混和剤など)等が挙げられる。本発明の樹脂組成物からなる成形品を作製し、当該成形品をこれらの用途に適用してもよい。当該成形品の表面は、親水性に優れ、例えば、水に対する接触角が、90°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°未満でありうる。
【0137】
成形品は、射出成形、押出成形、トランスファー成形、インフレーション法、圧縮成形などの公知の方法により製造することができる。これらの方法は、得られる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。
【実施例0138】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は25℃で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0139】
(合成例1:[2M-AA][130305-S]の合成)
トリデカノール200.4質量部に、水酸化カリウム2質量部を添加し、170℃まで昇温した後、1,2-ブチレンオキシド216.3質量部を1.0MPa以下の条件にて圧入し、10時間反応させた。その後さらに、エチレンオキシド220.3質量部を1.0MPa以下の条件にて圧入し、10時間反応させ、ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル639質量部を得た。得られたポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル637質量部を110℃まで昇温し、スルファミン酸97.1質量部を加え、3時間反応させた。反応後、未反応のスルファミン酸を濾別し、ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩([C13H27-O-(BO)3-(EO)5-SO3
-][NH4
+])734.1質量部を得た。
【0140】
N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(略称:2M-AA)143.2質量部に、上記で合成したポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:130305-SF)を734.1質量部添加した後、50℃で1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩(略称:[2M-AA][130305-S]、前記化学式(2)で表される化合物)を860.1質量部得た。
【0141】
(合成例2:[2M-AA][707-S]の合成)
N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(略称:2M-AA)157.2質量部に、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の30%水溶液(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール707-SF、略称:N-707-SF)から水を減圧留去して得られたポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:707-SF)を920.1質量部添加した後、1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩(略称:[2M-AA][707-S])を1060.3質量部得た。なお、このイオン結合性塩は下記の化学構造を有する。
【0142】
【0143】
(実施例1~5および比較例1~8)
下記の表1および表2に示す組成(質量比)を有する混合溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)板上にウェット膜厚15μmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。その後、照射光源として紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、ECS-4011GX、水銀ランプ)を用いて積算光量300mJ/cm2で紫外線を照射することにより重合を行って、各実験例の試験片を得た。このようにして得られた試験片については、48時間エージングした後に、以下の評価に供した。
【0144】
なお、表1および表2に記載の各成分の詳細は、以下の通りである:
UV-7550B:ウレタンアクリレート樹脂、三菱ケミカル株式会社製、商品名紫光UV-7550B;
A-200:ポリエチレングリコールジアクリレート(オキシエチレン基の平均付加モル数4)、新中村化学工業社製、商品名NKエステルA-200;
イルガキュア184:光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
MMA:メチルメタクリレート;
[2M-AA][130305-S]:上記合成例1で得られた、化学式(1)で表されるイオン結合性塩(カチオンがエチレン性不飽和結合を有する);
[2M-AA][707-S]:上記合成例2で得られた、化学式(1)で表されるイオン結合性塩(カチオンがエチレン性不飽和結合を有する);
シリケートMS51:テトラメトキシシランの加水分解・縮合物(平均7~9量体、分子量800~1,000)、三菱ケミカル株式会社製、商品名メチルシリケートMS51;
KBM-503:シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業株式会社製、商品名信越シリコーンKBM-503。
【0145】
(親水性の評価)
上記実施例、比較例で得られた試験片について、水の接触角(25℃)を測定した。具体的には、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番:CA-XP)を用い、乾燥状態(25℃/50%RH)で、液体として純水を使用して約2μLの液滴を針先に作り、これを試験片の表面に接触させて試験片の表面上に液滴を作った。試験片と液体とが接する点における、液体表面に対する接線と試験片表面とがなす角で、液体を含む側の角度を接触角として測定した。各実施例および比較例について測定された接触角の値を下記の表1および表2に示す。
【0146】
(耐洗浄性試験)
水道水をスポンジに湿らせ、このスポンジを用いて試験片を10回擦り、水道水ですすき、水滴を拭き取った。この操作を2回繰り返し、それぞれの洗浄操作の後に上記と同じ手法を用いて接触角(25℃)を測定した。各実施例および比較例について測定された接触角の値を下記の表1および表2に示す。
【0147】
【0148】
【0149】
表1および表2から明らかなように、イオン結合性塩としての[2M-AA][130305-S]および所定のシリケート縮合物を使用して作製した塗膜(実施例1~5)は、当該所定のシリケート縮合物を用いずに作成した塗膜(比較例1~5)に比べて、水洗後における水接触角の値が低く維持されていた。
【0150】
また、実施例1~5の塗膜は、所定のシリケート縮合物を用いたものの本願所定のイオン結合性塩を用いずに作製した塗膜(比較例6~8)と比較しても、水洗後の水接触角の値を極めて低い値に維持することができた。このような顕著な効果は、比較例1~5の結果と比較例6~8の結果とを併せ見ても予測することができない相乗的なものであるといえる。なお、このような顕著な効果が得られるメカニズムとしては、シリケートが表面に親水性の高い層を形成することで、親水性の高い上記所定のイオン結合性塩(またはその重合体)を塗膜に留めるように作用する結果、上記のように水洗後であっても高い親水性が維持されるという効果が奏されるものと考えられる。
【0151】
以上のことから、本発明に係る濡れ性向上剤によれば、親水性塗膜における洗浄後も高い親水性を維持することができることが示された。