(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094603
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ディスペンサ付容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20240703BHJP
B65D 33/36 20060101ALI20240703BHJP
B65D 33/14 20060101ALI20240703BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B65D33/36
B65D33/14 Z
B65D75/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211249
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝
【テーマコード(参考)】
3E014
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB08
3E014PC04
3E014PD15
3E014PE02
3E014PE03
3E014PE04
3E014PE05
3E014PE30
3E014PF08
3E014PF10
3E064AB23
3E064BA17
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3E067BA12A
3E067BB12A
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3E067EE56
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GA01
(57)【要約】
【課題】袋容器内に収容された内容液を応答性良くスムーズに吐出させることが可能であるディスペンサ付容器の提供。
【解決手段】ディスペンサ付容器1は、袋容器11とディスペンサ20とから構成されている。袋容器11は、縦方向及び横方向を有し、該縦方向の一端部12bにマチ部6を有し他端部12aにマチ部6を有していない。他端部12aにおける前記横方向の一部に、シート材間に注出部形成部材が固定されて注出部を形成している。ディスペンサ20は、蓋部41の押圧により、ポンプ室40A内の内容液が吐出口51aから吐出され、蓋部41の押圧の解除により、袋容器11内の内容液がポンプ室40A内に吸入されるようになされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物が収容された袋容器と該袋容器に取り付けられたディスペンサとを備え、該ディスペンサが下方に位置する状態に吊り下げて使用可能なディスペンサ付容器であって、
前記袋容器は、シート材により形成された袋本体と、注出部形成部材により形成された注出部とを備えており、
前記袋容器は、縦方向及び横方向を有し、該縦方向の一端部にマチ部を有し他端部にマチ部を有しておらず、該他端部における前記横方向の一部に、前記シート材間に前記注出部形成部材が固定されて形成された前記注出部を有しており、
前記ディスペンサは、凹部を有するディスペンサ本体と、該凹部の開口部を覆い、該凹部とともにポンプ室を形成する弾性変形可能な蓋部とを備え、該蓋部の押圧により、前記ポンプ室内の液状物が吐出口から吐出され、該蓋部の押圧の解除により、前記袋容器内の液状物が前記ポンプ室内に吸入されるようになされている、ディスペンサ付容器。
【請求項2】
前記ディスペンサ本体は、前記吐出口、液状物の吸入口、前記注出部に対する接続部、前記吐出口と前記ポンプ室とを連通する第1流路、前記吸入口と前記ポンプ室とを連通する第2流路とを有し、前記第1流路と前記第2流路とが一直線上に配されている、請求項1に記載のディスペンサ付容器。
【請求項3】
前記袋容器は、前記他端部における前記横方向の端部に前記ディスペンサが設けられており、該ディスペンサの取り付け位置の対角線上にある前記一端部の端部に、前記袋容器本体を吊り下げるための手段が設けられている、請求項1又は2に記載のディスペンサ付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンサ付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を定量吐出できるディスペンサと、ディスペンサが取り付けられる袋容器とを備えたディスペンサ付容器が知られている。例えば、特許文献1には、凹部を有する本体と該本体の開口部を覆う蓋部とでポンプ室が形成され、蓋部をポンプ室内に向かって押圧して変形させる吐出操作をすることでポンプ室内の液体をノズル部から吐出させ、押圧状態を解除することでポンプ室内に液体を流入させることのできる、ディスペンサ付容器が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のディスペンサ付容器は、吊り下げ具を介してタオルハンガー等に吊り下げた状態でも使用することもでき、吊り下げた状態で、袋容器内に収容された液体シャンプー等の内容液を吐出させることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のディスペンサ付容器では、袋容器内に収容された内容液を応答性良くスムーズに吐出させる観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は、袋容器内に収容された内容液を応答性良くスムーズに吐出させることが可能なディスペンサ付容器を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液状物が収容された袋容器と該袋容器に取り付けられたディスペンサとを備え、該ディスペンサが下方に位置する状態に吊り下げて使用可能なディスペンサ付容器に関する。
前記袋容器は、シート材により形成された袋本体と、注出部形成部材により形成された注出部とを備えていることが好ましい。
前記袋容器は、縦方向及び横方向を有し、該縦方向の一端部にマチ部を有し他端部にマチ部を有しておらず、該他端部における前記横方向の一部に、前記シート材間に前記注出部形成部材が固定されて形成された前記注出部を有していることが好ましい。
前記ディスペンサは、凹部を有するディスペンサ本体と、該凹部の開口部を覆い、該凹部とともにポンプ室を形成する弾性変形可能な蓋部とを備え、該蓋部の押圧により、前記ポンプ室内の液状物が吐出口から吐出され、該蓋部の押圧の解除により、前記袋容器内の液状物が前記ポンプ室内に吸入されるようになされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のディスペンサ付容器によれば、袋容器内に収容された内容液を応答性良くスムーズに吐出させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るディスペンサ付容器の概要を説明するための模式正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すディスペンサ付容器の袋容器の模式斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すディスペンサ付容器のディスペンサの模式斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すディスペンサ付容器のディスペンサの模式断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すディスペンサ付容器を吊り下げ具を介して被吊り下げ部に吊り下げた状態を示す模式正面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すディスペンサ付容器の模式断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る袋容器を吊り下げ具を介して被吊り下げ部に吊り下げた状態を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ディスペンサ付容器1]
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のディスペンサ付容器1は、袋容器11と、袋容器11に取り付けられたディスペンサ20とを含んで構成されている。ディスペンサ付容器1は、
図5に示すように、吊り下げ具70を介して、ディスペンサ20が鉛直方向の下方に位置する状態に吊り下げて使用可能である。
【0011】
[袋容器11]
袋容器11は、液状物としての内容液を収容する袋本体12と、袋本体12に取り付けられて、注出部17を形成する注出部形成部材15とを備えている。内容液は、特に限定されず、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプー、リンス、トリートメント、染毛剤、香水、飲料液または食品、例えば、醤油、味噌、酢、ホイップクリーム等であっても構わない。
【0012】
袋本体12は、可撓性を有するシート材により形成されている。より具体的には、袋本体12は、相対向する一対の側面シート部13,13と、底面シート部14とにより形成されている。側面シート部13,13及び底面シート部14は、可撓性を有するシート材によって形成されており、連続する一枚のシート材からなるものでも別体のシート材からなるものでもよい。
袋本体12は、一対の側面シート部13,13及び底面シート部14が所定箇所で熱圧着(ヒートシール)等により接合されて、内部に内容液の収容空間を有する袋状に形成されている。より具体的には、袋本体12は、一対の側面シート部13,13の両側縁同士が接合されたサイドシール部4,4、一対の側面シート部13,13の上縁部同士が接合された上縁シール部3、及び側面シート部13それぞれと側面シート部13,13間に折り込まれた底面シート部14との間が接合された下方シール部5を有している。サイドシール部4,4の下方においては、一対の側面シート部13,13と、その間に折り込まれた2層の底面シート部14とが一体的に接合されている。下方シール部5は、上縁部が下方に向かって円弧状に膨らんだ形状を有している。
【0013】
袋容器11は、縦方向Aの一端部12bに、底面シート部14によってマチ部6が形成されていると共に、縦方向Aの他端部12aにおける横方向Bの中央部に、注出部形成部材15が固定されている。一対の側面シート部13,13には、底面シート部14が接合される端部側に、吊り下げ具70を挿通可能な孔部13aが形成されている。
袋容器11は、縦方向A及び横方向Bを有しており、一対の側面シート部13,13間に底面シート部14が介在することによって、袋容器11の縦方向Aの一端部12bに、マチ部6が形成されている。すなわち、袋容器11は、底部に折り込みのマチ部6が付いたスタンディングパウチであり、内容液が収容された状態で、底面シート部14から形成されるマチ部6が、縦方向A及び横方向Bの両方向と直交する厚み方向Cに広がる。そのため、例えば、商品として陳列する際には、マチ部6を有する底部を設置した状態に自立させることができる。縦方向Aは、側面シート部13をその法線方向から視たときに、注出部17を有する側とマチ部6を有する側とを結ぶ方向であり、横方向Bは、該縦方向Aと交差する方向である(
図2参照)。
【0014】
袋本体12を形成するシート材は、シート同士の接合容易性の向上や、袋本体12に収容される内容液の品質保持を確保する観点から、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂のシート又はこれら合成樹脂の組み合わせからなる単層又は多層のシートであることが好ましい。また、袋本体12を形成するシート材は、前述した合成樹脂のシート又は合成樹脂の組み合わせからなる単層又は多層のシートに、アルミニウム、酸化ケイ素等の金属蒸着層、無機蒸着層が付加された積層シートであることも好ましい。更に、後述する注出部形成部材15に使用される材質との熱圧着による接合容易性の向上を図る観点等から、注出部形成部材15と接合する側の側面シート部13の材質は、注出部形成部材15と同質の材料であることが好ましい。なお、好ましい一例において、注出部形成部材15及び袋本体12を形成するシート材の注出部形成部材15に接する側の面は、熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン等から形成されている。
【0015】
注出部形成部材15は、
図2に示すように、袋本体12を形成するシート材間に固定されたシート間固定部16と、略筒状の注出部17とを有している。
シート間固定部16は、一対の側面シート部13,13に挟み込まれた状態で、袋本体12に熱圧着等することで接合されている。シート間固定部16は、底面及び上面が菱形、より詳しくは菱形における相対向する一対の角部に丸みを付けた略菱形の角柱形状を有し、注出部17に連通する貫通孔(図示省略)が軸方向に沿って形成されている。注出部17の外周部には、後述するディスペンサ20の雌ネジ部31a(
図4参照)に螺合可能な雄ネジ部17aが形成されている。袋本体12に収容された内容液は、注出部17の貫通孔及び後述するディスペンサ20の吐出口51a(
図1参照)を介して吐出することが可能になっている。
【0016】
図2に示すように、本実施形態に係る袋容器11は、マチ部6が設けられた側の端部である一端部12bと、マチ部6が設けられていない側の端部である他端部12aとを有しており、マチ部6が設けられていない他端部12aにおける横方向Bの中央部に注出部17を有している。注出部17は、側面シート部13,13間に注出部形成部材15が固定されて形成されている。
マチ部6は、一方の側面シート部13及び他方の側面シート部13との間に、2つ折り状態に折りたたまれた状態で配された底面シート部14から構成されている。底面シート部14は、その外周部が側面シート部13に熱圧着されている。本実施形態における下方シール部5は、
図2に示すように、袋本体12の横方向Bの両端に位置する広い面積の部分と、それらの間に介在する細幅の部分とを有するが、細幅の部分は無くてもよい。
【0017】
また、袋容器11はガセットパウチ形状を有し、
図2に示すように、マチ部6が設けられた一端部12bから、マチ部6が設けられていない他端部12aに向かうにつれて一対の側面シート部13,13の間隔が狭くなる形状を有している。すなわち、
図6に示すように、吊り下げ具70を介して被吊り下げ部80に吊り下げる等によって、ディスペンサ20が鉛直方向の下方に位置するように吊り下げた使用状態において、袋本体12に収容された内容液を注出部形成部材15に向けて集液しやすい形状となっている。
【0018】
[ディスペンサ20の構成]
ディスペンサ20は、
図3及び
図4に示すように、キャップ部30と、ポンプ部40と、ノズル部50とを備えている。
【0019】
[キャップ部30]
キャップ部30は、径方向の同一軸線上に袋部31とタンク部32とを備えている。
袋部31は、本体部31Aと鍔部31Bとを有している。
本体部31Aは、筒形状を有し、内周面には、注出部形成部材15の雄ネジ部17a(
図2参照)と螺合可能な雌ネジ部31aが形成されている。鍔部31Bは、円環形状を有し、本体部31Aの下流側の一端部から径方向内側に向けて突設されている。
タンク部32は、同一中心を持つ径の異なる4つの筒状部材、具体的には、外筒部32Aと、第1内筒部32Bと、第2内筒部32Cと、第3内筒部32Dとを有している。
外筒部32Aは、下流側端部から径方向外側に向けて突設される円環状の鍔部32aを有している。第1内筒部32Bは、外筒部32Aの内周面との間で間隙を空けた状態で配置され、外筒部32Aの上流側端部に連接されている。第2内筒部32Cは、第1内筒部32Bの外径よりも小さい外径を有し、第1内筒部32Bの下流側端部に段差状に連接されている。第3内筒部32Dは、第2内筒部32Cの外径よりも小さい外径を有し、第2内筒部32Cの下流側端部に段差状に連接されている。
【0020】
キャップ部30とポンプ部40との組み付けは、(1)袋部31に、後述するケーシング42の上流側端部を挿入する、(2)タンク部32の第2内筒部32Cに、後述する吸入弁61を装着する、(3)外筒部32Aと第1内筒部32Bとの間に形成される隙間に、ケーシング42の上流側の端部を篏入する、といった順で行われる。これにより、吸入弁61がポンプ部40内の上流側に配置されることとなる。なお、タンク部32とケーシング42との接続状態を保持する観点から、例えば、タンク部32の外筒部32Aの内周面に円環状の溝部を形成すると共に、ケーシング42の外周面に当該溝部に篏合可能な環状の凸部を形成することが好ましい。
【0021】
このようにして組み付けられたディスペンサ20と、袋容器11(
図2参照)との組み付けは、(1)円環状のパッキン部材63をタンク部32の鍔部32a上に配置する、(2)袋部31の雌ネジ部31aと注出部形成部材15の雄ネジ部17a(
図2参照)とを螺合させた状態で、袋部31を締め込む、といった順に行われる。これにより、ディスペンサ20が袋容器11に液密状に装着されることとなる。
【0022】
タンク部32は、ディスペンサ20を袋容器11(
図2参照)に装着した状態で、注出部形成部材15内に挿入配置され、第1内筒部32B、第2内筒部32C及び第3内筒部32Dの各内部空間は、内容液が流通する流体流入路33として機能する。このように構成されたタンク部32では、第3内筒部32Dの開口端が、流体流入路33内の内容液を、ポンプ部40に流出させている。
【0023】
本実施形態では、前述したように、タンク部32の第2内筒部32C及び第3内筒部32Dに、吸入弁61が取り付けられる配置構造となっている。
吸入弁61は、弾性変形可能な部材、例えば、樹脂成型品からなり、平板状の弁本体61Aと、弁本体61Aを囲むように配される固定部61Bと、弁本体61Aと固定部61Bとの間を連結する連結部61Cとを有している。固定部61Bは、円筒形状を有し、その内径が、第2内筒部32Cの外径よりも若干小さい大きさに形成されている。連結部61Cは、薄板形状を有し、例えば、周方向に沿って複数の孔部を形成することが可能である。
【0024】
吸入弁61は、第2内筒部32Cに固定部61Bを嵌め込むことにより、流体流入路33と、後述するポンプ室40Aの吸入路441との間を仕切るように、ポンプ部40内に配置される。吸入弁61は、ポンプ部40内に配置された状態で、弁本体61Aが第3内筒部32Dの開口端と面接触し、吸入口34を閉塞する。
【0025】
吸入弁61は、後述する蓋部41を押圧することによって、ポンプ室40Aの内圧が上昇すると、閉弁して吸入口34を閉塞するようになっている(
図4の「吐出操作方向Xb」参照)。これにより、袋容器11からポンプ室40A内への内容液の流通を阻止することが可能である。
一方、吸入弁61は、蓋部41が押圧位置から復帰位置(
図4に示す状態)に移動することにより、ポンプ室40Aの内圧が低下すると、開弁するようになる(
図4の「復元方向Xa」参照)。これにより、袋容器11内の内容液を、ポンプ室40A内に吸入させることが可能になっている。
【0026】
[ポンプ部40]
ポンプ部40は、蓋部41と、内部に一対の凹部49,49を有し、蓋部41が装着されるケーシング42とを備えている。本実施形態では、蓋部41とケーシング42とによってポンプ室40Aが形成される構成となっている。
ケーシング42は、樹脂製部材からなり、有底円筒形状を成している。ケーシング42は、その軸線方向Xの端面42aと対向するように開口部43が形成されている。ケーシング42には、軸線方向Xと直交とする直径方向Yに延びる断面円形の流路が形成されている。流路の上流側は吸入路441を形成し、流路の下流側は吐出路442を形成している。吸入路441及び吐出路442は、それぞれがポンプ室40Aと連通している。
【0027】
蓋部41は、ケーシング42の開口部43を覆うようにして、当該ケーシング42に装着される。蓋部41は、ドーム形状を有し、平坦状の頂面41aと、開口端から径方向外側に突設される円環状のフランジ部41bとを有している。蓋部41は、例えば、弾性変形可能な部材、例えば、エラストマーにより形成することができる。蓋部41は、吐出操作前(変形前)においてはケーシング42から矢印Xaで示す外方に突出する方向(以下、「復元方向Xa」という)に膨設される。
【0028】
本実施形態では、ポンプ部40内に、蓋部41を復元方向Xaに向かって付勢するコイルばね48が内接されている。コイルばね48は、所謂圧縮ばねであり、蓋部41の内面側とケーシング42の底面42bとのそれぞれに当接させた状態で配置される。これにより、蓋部41の頂面41aとケーシング42の端面42aとを、2本の指(例えば、親指及び人差し指)で摘んだ際に、当該指の力をコイルばね48に伝達することができる一方、指を離した際に、蓋部41を確実に吐出操作前の形状に復元することが可能になっている。
【0029】
フランジ部41bは、ケーシング42の開口部43の周囲に形成された円環状の環状溝45に嵌入可能な形状を有している。
ケーシング42への蓋部41の取り付けは、(1)コイルばね48をポンプ室40A内に挿入する、(2)次に、ケーシング42の環状溝45に蓋部41のフランジ部41bを嵌入する、(3)その後、環状溝45に円環状の止め部材47を嵌入して固定する、といった順に行われる。これにより、蓋部41が、ポンプ室40A内にコイルばね48が配置された状態で、ケーシング42に液密状に装着されるようになっている。
【0030】
本実施形態では、蓋部41を、ポンプ室40Aに向けて押圧する操作(
図4の吐出操作方向Xbの操作、以下、「吐出操作」という)をすることによって、ポンプ室40Aの内圧が上昇される一方、吐出操作が解除されて蓋部41が復元方向Xaに移動すると、ポンプ室40Aの内圧が低下されるように構成される。
本実施形態では、蓋部41を吐出操作方向Xbに移動させると、ポンプ室40A内の内容液が第1流路55を通じてノズル部50から吐出される一方、蓋部41が復元方向Xaに移動すると、ポンプ室40A内に第2流路56を通じて袋容器11内の内容液が吸入されるようになっている。第1流路55はポンプ室40Aと吐出口51aとを連通する流路であり、第2流路56は吸入口34とポンプ室40Aとを連通する流路である。
【0031】
ポンプ部40の下流側には、ポンプ室40Aを区画する外壁(凹部49)から外方に突出する筒状突出部443及びノズル装着部444が設けられている。
筒状突出部443は、ポンプ室40Aと連通し、その内部が、内容液をポンプ部40から吐出する吐出路442を構成する。本実施形態では、筒状突出部443の下流側の開口端が、ポンプ室40A内の内容液を排出する排出口443aとなっている。詳しくは後述するが、排出口443aには、吐出弁62が面接触した状態で取り付けられ、当該吐出弁62が開弁することにより、ポンプ室40A内の内容液が吐出されるように構成される。ノズル装着部444は、円筒形状を有し、筒状突出部443を囲むようにして配置される。ノズル装着部444の外周面には、後述するポンプ装着部52の環状溝部52aと篏合可能な環状凸部444aが形成されている。
【0032】
[ノズル部50]
ノズル部50は、筒状本体部51と、筒状本体部51の上流側を囲むように配される筒状のポンプ装着部52とを備えている。
筒状本体部51は、内容液の吐出流路である第1流路55と、内容液を外部に吐出する吐出口51aとを有している。ポンプ装着部52は、筒状本体部51の外周面に連接され、当該外周面との間に隙間を空けて配置される。ポンプ装着部52の内周面には、ノズル装着部444の環状凸部444aと篏合可能な環状溝部52aが形成されている。
【0033】
ポンプ部40とノズル部50との組み付けは、(1)先ず、後述する吐出弁62をノズル装着部444に挿入する、(2)次に、ノズル装着部444を、筒状本体部51とポンプ装着部52との間に形成された隙間に差し込んで、環状凸部444aと環状溝部52aとを篏合させる、といった作業手順で行われる。これにより、吐出弁62が、吐出路442と第1流路55との間に介在させた状態で、ポンプ部40及びノズル部50の内部で保持されるようになっている。
【0034】
吐出弁62は、吸入弁61と同様に、弾性変形可能な部材、例えば、樹脂成型品からなり、平板状の弁本体62Aと、弁本体62Aを囲むように配される固定部62Bと、弁本体62Aと固定部62Bとの間を連結する連結部62Cとを有している。
固定部62Bは、円筒形状を有し、その外径が、ノズル装着部444の内径よりも若干小さい大きさに形成されている。連結部62Cは、薄板形状を有し、例えば、周方向に沿って複数の孔部を形成することが可能である。
【0035】
吐出弁62は、ポンプ部40とノズル部50とを組み付けた状態で、筒状本体部51の開口端に面接触、すなわち、排出口443aを閉塞するように配される。
【0036】
吐出弁62は、蓋部41を押圧することによって、ポンプ室40Aの内圧が上昇すると、開弁するようになっている(
図4の「吐出操作方向Xb」参照)。これにより、ポンプ室40A内の内容液を、第1流路55を通じて、吐出口51aから吐出させることが可能になる。
一方、吐出弁62は、蓋部41が押圧位置から復帰位置(
図4に示す状態)に復帰することで、ポンプ室40Aの内圧が低下すると、閉弁して排出口443aを閉塞するようになる(
図4の「復元方向Xa」参照)。これにより、吐出口51aからの内容液の吐出を停止させることが可能になっている。
【0037】
すなわち、本実施形態では、蓋部41を押圧すると、ポンプ室40Aの内圧が上昇するため、前述した吸入弁61が閉弁する一方、吐出弁62が開弁するようになっている。これにより、ポンプ室40A内に貯留した内容液が、第1流路55を通じて、吐出口51aから吐出されるようになっている。
その後、蓋部41が指等による押圧の解除によって復元されると、ポンプ室40Aの内圧が低下していくため、吸入弁61が開弁して、第2流路56を通じて、ポンプ室40A内へ内容液が流入されると共に、吐出弁62が閉弁して吐出口51aからの内容液の吐出を停止させることが可能になっている。
【0038】
[吊り下げ具70]
図5に示すように、吊り下げ具70を介して、被吊り下げ部80に吊り下げた状態で、使用することが可能な容器である(
図5参照)。吊り下げ具70は、ステンレス等の金属や硬質の樹脂等の硬質の部材からなり、第1係合部72と、第2係合部73とを有しており、平面視において略S字状に形成されている。
吊り下げ具70は、第1係合部72を吊り下げ具70の袋容器11の孔部13aに挿入すると共に、第2係合部73をタオルハンガー等の被吊り下げ部80に引っ掛ける、といった作業を行うことで使用することが可能となっている。なお、第1係合部72を被吊り下げ部80に引っ掛けると共に、第2係合部73を袋容器11の孔部13aに挿入してもよい。吊り下げ具70は、C字型のフック等であってもよい。
【0039】
ディスペンサ付容器1は、上述したように、マチ部6が設けられた一端部12bから、マチ部6が設けられていない他端部12aに向かうにつれて一対の側面シート部13,13の間隔が狭くなる形状を有している。すなわち、吊り下げ具70を介して被吊り下げ部80に吊り下げられた使用状態において、袋容器11内の内容液を注出部形成部材15に向けて必然的に集液することができ、ポンプ室40A内に内容液を十分に貯留することが可能となる。したがって、本実施形態のディスペンサ付容器1は、残液を抑えながら、且つポンプ室40A内に内容液を十分に供給することができ、内容液を応答性良くスムーズに吐出を行うことができる。
【0040】
残液の抑制及び応答性のよい吐出の観点から、注出部形成部材15のシート間固定部16は、
図2に示すように、袋容器11の幅方向Bに沿う方向の長さが、袋容器11の厚み方向Cに沿う長さよりも長い形状であることが好ましい。またシート間固定部16は、幅方向Bに沿う方向の前記長さの、前記厚み方向に沿う前記長さの比が、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上であり、また好ましくは6以下、より好ましくは4以下であり、また好ましくは1.1以上6以下、より好ましくは1.5以上4以下である。
また注出部形成部材15のシート間固定部16の前記厚み方向Cに沿う方向の長さは、
図6に示すように、袋容器11におけるマチ部6を有する側の一端部12bにおける一対の側面シート部13,13の内面どうし間の最大長さよりも短いことが好ましく、より好ましくは1/2以下、更に好ましくは1/3以下である。側面シート部13,13の内面どうし間の最大長さは、内容液の収容状態で且つ自立させた状態で計測する。
【0041】
吊り下げ具70を介して吊り下げられた使用状態において、残液を抑えつつ、内容液を応答性良くスムーズにノズル部50の吐出口51aから吐出させる観点から、ディスペンサ本体20は、
図6に示すように、第1流路55と第2流路56とが一直線状に位置するように配されていることが好ましい。ディスペンサ20の第1流路55及び第2流路56が一直線状に配されるとは、ポンプ室40A、吐出口51a及び吸入口34の中心が同一の直線状に位置するように直列に配されていることを意味する。本実施形態のディスペンサ付容器1は、
図6に示すように、ポンプ室40Aを介して吸入口34から吐出口51aが一直線状に配されるため、より応答性良くスムーズに内容液の吐出を行うことができる。
【0042】
本実施形態におけるディスペンサ20においては、ポンプ室40A内に配され、蓋部41を復元方向Xaに向かって付勢する手段がコイルばね48である。コイルばね48は、蓋部41の内面側とケーシング42の底面42bとのそれぞれに当接させた状態で配置されており、コイルばね48の内側に他の構造体が配されていない。斯かる構成により、コイルばね48が、内容液の吐出の妨げになりにくいため、内容液を、一層、応答性良くスムーズに吐出させることができる。
【0043】
上記実施形態では、注出部形成部材15が、袋容器11の他端部12aにおける横方向Bの中央部に固定されていたが、
図7に示すディスペンサ付容器100のように、注出部形成部材15及びディスペンサ20を、袋容器11のマチ部6を有しない他端部12aにおける横方向Bの端部に取り付け、袋本体12を吊り下げる手段としての袋容器11の孔部13aを、ディスペンサ20の取り付け位置の対角線上にある、袋容器11の一端部12bにおける横方向端部に設けることもできる。
このように構成すれば、吊り下げ具70を介して吊り下げられた使用状態において、被吊り下げ部80、孔部13a及びディスペンサ付容器100の吐出口51aを一直線上に配することができる。一直線上に配する態様は、被吊り下げ部80、孔部13a及びディスペンサ付容器100の吐出口51aの中心が同一の直線上に位置するように直列に配されていることが好ましい。こうすることで、内容液が注出部形成部材15に向けてより一層集液されやすくなり、残液も最小限に抑えつつ、応答性良くスムーズに内容液をノズル部50の吐出口51aから吐出することが可能となる。
【0044】
以上、本発明を、その好ましい実施形態等に基づき説明したが、本発明は、上述した実施態様及び変形例等に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態において、袋本体12の外表面に、印刷(印字)されていてもよい。印刷面は袋本体12の裏面側であっても袋本体12の正面側でもよい。印刷の絵柄は、例えば、文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合を表示してもよく、色数は制限されない。
またディスペンサ付容器の表面、商品として販売する際に必要に応じて設ける包装材等に、ディスペンサを下方に位置する状態に吊り下げて使用することを推奨する表示を設けることが好ましい。包装材は、箱であってもシュリンクフィルム等であってもよい。
また、上記各実施形態において、底部側のマチ部が設けられた一端部12bから、マチ部が設けられていない他端部12aに向かうにつれて、袋本体12の横方向Bの長さ又は収容空間の幅方向Bの長さは次第に狭くなっていく形状であってもよい。幅方向Bの長さは注出部形成部材15に向かって収束することが好ましい。
【0045】
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下のディスペンサ付容器を開示する。
<1>
液状物が収容された袋容器と該袋容器に取り付けられたディスペンサとを備え、該ディスペンサが下方に位置する状態に吊り下げて使用可能なディスペンサ付容器であって、
前記袋容器は、シート材により形成された袋本体と、注出部形成部材により形成された注出部とを備えており、
前記袋容器は、縦方向及び横方向を有し、該縦方向の一端部にマチ部を有し他端部にマチ部を有しておらず、該他端部における前記横方向の一部に、前記シート材間に前記注出部形成部材が固定されて形成された前記注出部を有しており、
前記ディスペンサは、凹部を有するディスペンサ本体と、該凹部の開口部を覆い、該凹部とともにポンプ室を形成する弾性変形可能な蓋部とを備え、該蓋部の押圧により、前記ポンプ室内の液状物が吐出口から吐出され、該蓋部の押圧の解除により、前記袋容器内の液状物が前記ポンプ室内に吸入されるようになされている、ディスペンサ付容器。
<2>
前記ディスペンサ本体は、前記吐出口、液状物の吸入口、前記注出部に対する接続部、前記吐出口と前記ポンプ室とを連通する第1流路、前記吸入口と前記ポンプ室とを連通する第2流路とを有し、前記第1流路と前記第2流路とが一直線上に配されている、前記<1>に記載のディスペンサ付容器。
<3>
前記袋容器は、前記他端部における前記横方向の端部に前記ディスペンサが設けられており、該ディスペンサの取り付け位置の対角線上にある前記一端部の端部に、前記袋容器本体を吊り下げるための手段が設けられている、前記<1>又は<2>に記載のディスペンサ付容器。
<4>
前記注出部形成部材における、前記シート材間に固定されたシート間固定部の形状は、前記袋容器の前記幅方向に沿う方向の長さが、前記縦方向及び前記横方向の両方向と直交する厚み方向に沿う方向の長さよりも長い形状である、前記<1>~<3>のいずれか1に記載のディスペンサ付容器。
【符号の説明】
【0046】
1 ディスペンサ付容器
6 マチ部
11 袋容器
12 袋本体 12a 他端部 12b 一端部
15 注出部形成部材
20 ディスペンサ
40A ポンプ室
41 蓋部
51a 吐出口
55 第1流路
56 第2流路
70 吊り下げ具
72 第1係合部
73 第2係合部
80 被吊り下げ部