IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図1
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図2
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図3
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図4
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図5
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図6
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図7
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図8
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図9
  • 特開-半導体装置及び電気機器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094612
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】半導体装置及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211266
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福成 航采
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS04
5H730BB02
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE59
5H730EE60
5H730FD01
(57)【要約】
【課題】電源電圧が大きい場合でも低消費電力化を図ることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置(1B)は、電源電圧に応じた周波数の第1クロック信号を生成するように構成された第1発振器(15)と、前記第1クロック信号に基づき動作し、前記電源電圧を昇圧した出力電圧を生成するように構成されたチャージポンプ回路(13)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧に応じた周波数の第1クロック信号を生成するように構成された第1発振器と、
前記第1クロック信号に基づき動作し、前記電源電圧を昇圧した出力電圧を生成するように構成されたチャージポンプ回路と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記電源電圧が第1範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数は、前記電源電圧が前記第1範囲より低い第2範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数より低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電源電圧が前記第2範囲より低い第3範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数は、前記電源電圧が前記第2範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数より高い、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
固定周波数の第2クロック信号を生成するように構成された第2発振器を備え、
前記チャージポンプ回路は、
起動から前記出力電圧が所定値に達する迄の期間、前記第1クロック信号に基づき動作するように構成され、
前記出力電圧が前記所定値に達してから後、前記第2クロック信号に基づき動作するように構成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1クロック信号と前記第2クロック信号とを択一的に選択するように構成されたセレクタを備える、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1発振器はバッファを備え、
前記バッファは、前記電源電圧を受け取るように構成された電源端子を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1発振器は、前記バッファを複数備え、定電流で駆動されるように構成されたインバータを複数備え、前記バッファと前記インバータとが交互に配置されるリングオシレータである、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記出力電圧を用いてデータの書き込みが行われるように構成されたメモリ部を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に接続され、前記半導体装置に対してデータの書き込み又は読み出しを指示するコマンドを出力するように構成された信号処理装置と、を備える、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、チャージポンプ回路を利用した半導体装置及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
チャージポンプ回路は、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-124078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、電源電圧Vccが大きい場合、出力電圧Vppの立ち上がりタイミングでチャージポンプ回路の消費電流が大きくなり、チャージポンプ回路を備える半導体装置の低消費電力化が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されている半導体装置は、電源電圧に応じた周波数の第1クロック信号を生成するように構成された第1発振器と、前記第1クロック信号に基づき動作し、前記電源電圧を昇圧した出力電圧を生成するように構成されたチャージポンプ回路と、を備える。
【0006】
本明細書中に開示されている電気機器は、前記出力電圧を用いてデータの書き込みが行われるように構成されたメモリ部をさらに備える上記構成の半導体装置と、前記半導体装置に接続され、前記半導体装置に対してデータの書き込み又は読み出しを指示するコマンドを出力するように構成された信号処理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書中に開示されている発明によれば、電源電圧が大きい場合でも低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、比較例に係る半導体装置の構成を示す図である。
図2図2は、比較例に係る半導体装置の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。
図3図3は、実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
図5図5は、発振器の構成例を示す図である。
図6図6は、発振器の構成例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る半導体装置の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。
図8図8は、実施形態に係る半導体装置の各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。
図9図9は、車両の外観斜視図である。
図10図10は、エアバックシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<比較例に係る半導体装置>
図1は、比較例に係る半導体装置1Aの構成(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。
【0010】
図1に示す比較例に係る半導体装置1Aは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)である。図1には、比較例に係る半導体装置1Aに接続される信号処理装置の例であるMPU(Micro Processing Unit)2も示されている。比較例に係る半導体装置1Aは、電源部10Aと、電圧選択部20と、メモリ部30と、制御部40と、電源入力端子VCCと、グランド端子GNDと、通信用端子COMと、を備える。比較例に係る半導体装置1Aを形成する各回路が半導体にて集積化されて半導体集積回路が構成される。
【0011】
電源部10Aは、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する。電源入力端子VCCに対し、比較例に係る半導体装置1Aの外部から正の直流電圧である電源電圧Vccが入力される。例えば1.6V以上且つ5.5以下の範囲内の電圧が電源電圧Vccとして入力される。これに対し、出力電圧Vppの目標となる基準電圧Vtgは例えば15V~20V程度に設定される。グランド端子GNDはグランドに接続される。
【0012】
電圧選択部20は、制御部40による制御の下、電源電圧Vcc及び電源部10Aの出力電圧Vppの内、何れか一方をメモリ駆動電圧Vmとしてメモリ部30に供給する。
【0013】
メモリ部30は、マトリクス状に配置される複数のメモリセルから構成されたメモリアレイを含む。各メモリセルにて1ビット分のデータが記憶される。メモリ部30は、電源入力端子VCCに対する電源電圧Vccの供給が途絶えても、各メモリセルでの記憶内容を保持できる不揮発性メモリである。メモリ部30において多数のアドレスから成るアドレス空間が定義され、各アドレスに8ビット分のデータを記憶することができる。
【0014】
制御部40は、制御ロジック、アドレスレジスタ、アドレスデコーダ及びデータレジスタなどを含み、MPU2から受信したコマンドに基づき、電源部10A及び電圧選択部20の動作を制御すると共にメモリ部30に対するデータの読み書きを実行する。
【0015】
MPU2がEEPROMに対して送信するコマンドには、比較例に係る半導体装置1Aに対してデータの書き込みを指示するライトコマンド、及び、比較例に係る半導体装置1Aに対してデータの読み出しを指示するリードコマンドが含まれる。MPU2が比較例に係る半導体装置1Aに対して送信するコマンドに、ライトコマンド及びリードコマンド以外のコマンドが更に含まれ得る。
【0016】
比較例に係る半導体装置1Aにてリードコマンドが受信されたとき、制御部40は、以下のリード処理を実行する。リード処理において、制御部40は、メモリ駆動電圧Vmとして電源電圧Vccがメモリ部30に供給されるよう電圧選択部20を制御した状態で、リードコマンドにて指定されるアドレス内のデータをメモリ部30から読み出し、読み出したデータを通信用端子COMを介してMPU2に送信する。
【0017】
比較例に係る半導体装置1Aにてライトコマンドを受信したとき、制御部40は、以下のライト処理を実行する。ライト処理において、制御部40は、メモリ駆動電圧Vmとして出力電圧Vppがメモリ部30に供給されるよう電圧選択部20を制御した状態で、ライトコマンドにて指定されるメモリ部30内のアドレスに対しライトコマンドにて指定されるデータを書き込む。比較例に係る半導体装置1Aにおいてメモリ部30内のデータを消去するイレース処理も実行可能であるが、イレース処理は規定の値(例えば“0”の値)をメモリ部30に書き込むことに相当するため、以下ではイレース処理もライト処理の一種であると考える。
【0018】
電源部10Aが行う動作であって、且つ、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する動作を昇圧動作と称する。昇圧動作の実行時において、出力電圧Vppは、出力電圧Vppに対して予め設定された目標電圧である基準電圧Vtg(所定値)にて安定化される。ここにおける安定化とは、出力電圧Vppが概ね基準電圧Vtg近辺に保たれることを意味し、一時的に出力電圧Vppが基準電圧Vtgを多少上回ることもあるし、基準電圧Vtgを多少下回ることもある。
【0019】
制御部40は、チャージポンプ回路13による昇圧動作の実行、非実行を制御する機能を備える。具体的には、制御部40は、ライト処理が行われる区間においてチャージポンプ回路13に昇圧動作を実行させ、それ以外の区間においてチャージポンプ回路13による昇圧動作を停止させる。相対的に高い電圧(Vpp)はデータの書き込みの際にのみ必要となるからである。従って、リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では昇圧動作は停止せしめられる。尚、昇圧動作を開始してから或る程度時間が経過しないと出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達さないが、メモリ部30における実際のデータの書き込みは、昇圧動作の開始後、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達してから実行される。
【0020】
電源部10Aは、発振器11と、クロックドライバ12と、チャージポンプ回路13と、電圧検出回路14と、を備える。
【0021】
発振器11は、固定周波数(例えば5MHz)の基準クロック信号PCLK1を生成及び出力する。発振器11は、必要なときにのみ基準クロック信号PCLK1の生成を行う回路である。即ち、発振器11は、比較例に係る半導体装置1Aにてライトコマンドが受信されたことに応答して基準クロック信号PCLK1の生成及び出力を開始し、ライト処理の完了に応答して基準クロック信号PCLK1の生成を停止する。リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では基準クロック信号PCLK1の生成は停止される。但し、発振器11にて基準クロック信号PCLK1が常時生成されるようにしても構わない。
【0022】
クロックドライバ12は、発振器11から出力される基準クロック信号PCLK1と同相のクロック信号CLK1を出力すると共に、発振器11から出力される基準クロック信号PCLK1と逆相のクロック信号CLK2を出力する。
【0023】
チャージポンプ回路13は、基準クロック信号PCLK1に基づき動作し、より詳細にはクロック信号CLK1及びCLK2に基づき動作し、電源電圧Vccを昇圧した出力電圧Vppを生成する。チャージポンプ回路13としては、例えばディクソン型のチャージポンプ回路を用いることができる。但し、ディクソン型と異なるトポロジーであるチャージポンプ回路が用いられても良い。
【0024】
電圧検出回路14は、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となると、“0”の論理値を有するイネーブル信号CPENをクロックドライバ12に出力し、これを受けてクロック信号CLK1及びCLK2の出力が停止される。その後、負荷での電力消費により出力電圧Vppが基準電圧Vtgを下回ると、“1”の論理値を有するイネーブル信号CPENの生成を通じ、クロック信号CLK1及びCLK2の出力が再開される。これらの動作の繰り返しにより、出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺にて安定化される。
【0025】
図2は、比較例に係る半導体装置1Aの各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。出力電圧Vppが電源電圧Vccから基準電圧Vtgに昇圧しきるまでの期間T1は、チャージポンプ回路13の消費電流Icpが過渡的に大きくなる。特に、電源電圧Vccが大きい場合に、消費電流Icpの増大が顕著になり、チャージポンプ回路13の消費電力の増大も顕著になる。なお、出力電圧Vppが基準電圧Vtgにまで昇圧した後は、イネーブル信号CPENによってチャージポンプ回路13が間欠的に動作することになるため、チャージポンプ回路13の消費電力は少なくなる。なお、図2並びに後述する図7及び図8では、期間T1の後、出力電圧Vppは基準電圧Vtgと等しいように図示されているが、実際には負荷での電力消費により出力電圧Vppは変動する。
【0026】
上記の考察に鑑み、以下では、電源電圧が大きい場合でも低消費電力化を図ることができる新規な実施形態を提案する。
【0027】
<実施形態に係る半導体装置>
図3は、実施形態に係る半導体装置1Bの構成を示す図である。図3に示す実施形態に係る半導体装置1Bは、EEPROMである。図3には、実施形態に係る半導体装置1Bに接続される信号処理装置の例であるMPU2も示されている。実施形態に係る半導体装置1Bは、比較例に係る半導体装置1Aにおいて電源部10Aが電源部10Bに置換された構成である。実施形態に係る半導体装置1Bを形成する各回路が半導体にて集積化されて半導体集積回路が構成される。
【0028】
図3に示す実施形態に係る半導体装置1Bに関する説明において、図1に示す比較例に係る半導体装置1Aに関する説明と重複する部分については適宜説明を省略する。
【0029】
図4は、実施形態に係る半導体装置1Bの外観斜視図である。実施形態に係る半導体装置1Bは、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。実施形態に係る半導体装置1Bの筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には、図3に示される電源入力端子VCC、グランド端子GND及び通信用端子COMを含む。
【0030】
電源部10Bは、発振器11と、クロックドライバ12と、チャージポンプ回路13と、電圧検出回路14と、発振器15と、セレクタ16と、を備える。
【0031】
発振器11は、固定周波数(例えば5MHz)の基準クロック信号PCLK1を生成及び出力する。
【0032】
図5は、発振器11の構成例を示す図である。図5に示す構成例の発振器11は、定電流源CS1~CS3と、Nチャネル型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタQ1~Q3と、キャパシタC1~C3と、インバータINV1と、を備える。
【0033】
定電流源CS1及びMOS電界効果トランジスタQ1は1段目のインバータを構成している。1段目のインバータは後段のインバータと共にリングオシレータの一部を構成している。定電流源CS1は、定電流をMOS電界効果トランジスタQ1に供給する。1段目のインバータの出力即ちMOS電界効果トランジスタQ1のドレインと接地電位との間にはキャパシタC1が設けられている。キャパシタC1によって1段目のインバータの遅延時間が調整され、遅延時間の設定によってリングオシレータ全体の発振周波数が設定されている。
【0034】
定電流源CS2及びMOS電界効果トランジスタQ2は2段目のインバータを構成している。2段目のインバータも前段及び後段のインバータと共にリングオシレータの一部を構成している。定電流源CS2は、定電流をMOS電界効果トランジスタQ2に供給する。MOS電界効果トランジスタQ2のゲートは1段目のインバータの出力であるMOS電界効果トランジスタQ1のドレインに接続されている。MOS電界効果トランジスタQ2のドレインと接地電位との間にはキャパシタC2が設けられている。キャパシタC2によって2段目のインバータの遅延時間が調整され、1段目のインバータの遅延時間と共にリングオシレータの発振周波数が設定されている。
【0035】
定電流源CS3及びMOS電界効果トランジスタQ3は3段目のインバータを構成している。3段目のインバータは前段の2段目、1段目と共にリングオシレータの一部を構成している。定電流源CS3は、定電流をMOS電界効果トランジスタQ3に供給する。MOS電界効果トランジスタQ3のゲートは2段目のインバータの出力であるMOS電界効果トランジスタQ2のドレインに接続されている。MOS電界効果トランジスタQ3のドレインと接地電位との間にはキャパシタC3が設けられている。キャパシタC3によって3段目のインバータの遅延時間が調整され、前段の2段目及び1段目のインバータの遅延時間と共にリングオシレータの発振周波数が設定されている。
【0036】
MOS電界効果トランジスタQ3の出力即ちドレインはMOS電界効果トランジスタQ1の入力即ちゲートに結合されている。即ち、3段目のインバータの出力が1段目のインバータの入力に接続されインバータ全体に正帰還がかかるように回路構成が施されている。良く知られたことではあるがインバータでリングオシレータを構成するには奇数段のインバータを用意し、最終段のインバータの出力を初段のインバータの入力側に帰還することで得られる。本発明ではリングオシレータを3段のインバータで構成したが、5段、7段等で構成してもよい。なお、遅延時間を調整するために用意したキャパシタC1~C3は所定の発振周波数に調整するために用意したものであるので不可欠な回路要素ではない。
【0037】
MOS電界効果トランジスタQ3から出力される信号は、インバータINV1によって反転されて基準クロック信号PCLK1となる。
【0038】
発振器15は、電源電圧Vccに応じた周波数の基準クロック信号PCLK2を生成及び出力する。発振器15は、必要なときにのみ基準クロック信号PCLK2の生成を行う回路である。即ち、発振器15は、実施形態に係る半導体装置1Bにてライトコマンドが受信されたことに応答して基準クロック信号PCLK2の生成及び出力を開始し、ライト処理の完了に応答して基準クロック信号PCLK2の生成を停止する。リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では基準クロック信号PCLK2の生成は停止される。但し、発振器15にて基準クロック信号PCLK2が常時生成されるようにしても構わない。
【0039】
図6は、発振器15の構成例を示す図である。図6に示す構成例の発振器15は、定電流源CS11~CS13と、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ11~Q13と、キャパシタC11~C13と、バッファB1~B3と、インバータINV1と、を備える。バッファB1~B3はそれぞれ、電源電圧Vccを受け取るように構成された電源端子と、接地電位に接続されるように構成されたグランド端子と、を有する。バッファB1~B3はそれぞれ、入力端子に供給される電圧が電源電圧Vccの1/2以上になると、入力端子に供給された電圧と同じ値の電圧を出力端子から出力する。即ち、バッファB1~B3はそれぞれ、入力端子に供給される電圧が電源電圧Vccの1/2以上になると、オン状態となる。
【0040】
定電流源CS11及びMOS電界効果トランジスタQ11は1段目のインバータを構成している。1段目のインバータは後段のインバータと共にリングオシレータの一部を構成している。定電流源CS11は、定電流をMOS電界効果トランジスタQ11に供給する。1段目のインバータの出力即ちMOS電界効果トランジスタQ1のドレインと接地電位との間にはキャパシタC11が設けられている。キャパシタC11によって1段目のインバータの遅延時間が調整され、遅延時間の設定によってリングオシレータ全体の発振周波数が設定されている。
【0041】
定電流源CS12及びMOS電界効果トランジスタQ12は2段目のインバータを構成している。2段目のインバータも前段及び後段のインバータと共にリングオシレータの一部を構成している。定電流源CS12は、定電流をMOS電界効果トランジスタQ12に供給する。MOS電界効果トランジスタQ2のゲートは、バッファB2を介して、1段目のインバータの出力であるMOS電界効果トランジスタQ1のドレインに接続されている。MOS電界効果トランジスタQ2のドレインと接地電位との間にはキャパシタC12が設けられている。キャパシタC12によって2段目のインバータの遅延時間が調整され、1段目のインバータの遅延時間及びバッファB2の電源端子に供給される電源電圧Vccの値と共にリングオシレータの発振周波数が設定されている。
【0042】
定電流源CS13及びMOS電界効果トランジスタQ13は3段目のインバータを構成している。3段目のインバータは前段の2段目、1段目と共にリングオシレータの一部を構成している。定電流源CS13は、定電流をMOS電界効果トランジスタQ13に供給する。MOS電界効果トランジスタQ13のゲートは、バッファB3を介して、2段目のインバータの出力であるMOS電界効果トランジスタQ12のドレインに接続されている。MOS電界効果トランジスタQ13のドレインと接地電位との間にはキャパシタC13が設けられている。キャパシタC13によって3段目のインバータの遅延時間が調整され、前段の2段目及び1段目のインバータの遅延時間並びにバッファB2及びB3の電源端子に供給される電源電圧Vccの値と共にリングオシレータの発振周波数が設定されている。
【0043】
MOS電界効果トランジスタQ13の出力即ちドレインは、バッファB1を介して、MOS電界効果トランジスタQ11の入力即ちゲートに結合されている。即ち、3段目のインバータの出力が1段目のインバータの入力に接続されインバータ全体に正帰還がかかるように回路構成が施されている。良く知られたことではあるがインバータでリングオシレータを構成するには奇数段のインバータを用意し、最終段のインバータの出力を初段のインバータの入力側に帰還することで得られる。本発明ではリングオシレータを3段のインバータで構成したが、5段、7段等で構成してもよい。なお、遅延時間を調整するために用意したキャパシタC11~C13は所定の発振周波数に調整するために用意したものであるので不可欠な回路要素ではない。
【0044】
MOS電界効果トランジスタQ13から出力される信号は、インバータINV11によって反転されて基準クロック信号PCLK2となる。
【0045】
電源電圧Vccが小さいほどバッファB1~B3は早くオン状態になるため、電源電圧Vccが小さいほど基準クロック信号PCLK2の周波数は高くなる。したがって、電源電圧Vccが第1範囲(過電)であるときの基準クロック信号PCLK2の周波数は、電源電圧Vccが第1範囲(過電)より低い第2範囲(通常範囲)であるときの基準クロック信号PCLK2より低くなる。また、電源電圧Vccが第2範囲(通常範囲)より低い第3範囲(減電)であるときの基準クロック信号PCLK2の周波数は、電源電圧Vccが第2範囲(通常範囲)であるときの基準クロック信号PCLK2の周波数より高くなる。
【0046】
セレクタ16は、基準クロック信号PCLK1と基準クロック信号PCLK2とを択一的に選択し、選択した信号を基準クロック信号PCLKとしてクロックドライバ12に出力する。
【0047】
クロックドライバ12は、セレクタ16から出力される基準クロック信号PCLKと同相のクロック信号CLK1を出力すると共に、セレクタ16から出力される基準クロック信号PCLKと逆相のクロック信号CLK2を出力する。
【0048】
チャージポンプ回路13は、基準クロック信号PCLK1又はPCLK2に基づき動作し、より詳細にはクロック信号CLK1及びCLK2に基づき動作し、電源電圧Vccを昇圧した出力電圧Vppを生成する。
【0049】
電圧検出回路14は、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となると、“0”の論理値を有するイネーブル信号CPENをクロックドライバ12に出力し、これを受けてクロック信号CLK1及びCLK2の出力が停止される。その後、負荷での電力消費により出力電圧Vppが基準電圧Vtgを下回ると、“1”の論理値を有するイネーブル信号CPENの生成を通じ、クロック信号CLK1及びCLK2の出力が再開される。これらの動作の繰り返しにより、出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺にて安定化される。
【0050】
本実施形態では、電圧検出回路14は、クロックドライバ12のみならず、セレクタ16も制御する。電圧検出回路14の制御に従って、セレクタ16は、半導体装置1Bの起動から出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達するまで基準クロック信号PCLK2を選択する。そして、電圧検出回路14の制御に従って、セレクタ16は、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達した後、出力電圧Vppが電源電圧Vccに下がるまで基準クロック信号PCLK1を選択する。電圧検出回路14の制御に従って、セレクタ16は、出力電圧Vppが電源電圧Vccに下がった後、出力電圧Vppが再度基準電圧Vtgに達するまで基準クロック信号PCLK2を選択する。
【0051】
図7は、電源電圧Vccが第1範囲(過電)に含まれる5.5[V]であるときの、実施形態に係る半導体装置1Bの各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。なお、図7において、破線で示された消費電流Icpは、比較例に係る半導体装置1Aでのチャージポンプ回路13の消費電流である。
【0052】
電源電圧Vccが第1範囲(過電)である場合、出力電圧Vppが電源電圧Vccから基準電圧Vtgに昇圧しきるまでの期間T1においてクロック信号CLK1及びCLK2の周波数が低くなり、チャージポンプ回路13でのスイッチング頻度が低くなる。これにより、電源電圧Vccが第1範囲(過電)である場合でも、出力電圧Vppが電源電圧Vccから基準電圧Vtgに昇圧しきるまでの期間T1におけるチャージポンプ回路13の消費電流が小さくなり、低消費電力化を図ることができる。
【0053】
図8は、電源電圧Vccが第3範囲(減電)に含まれる1.6[V]であるときの、実施形態に係る半導体装置1Bの各部電圧波形等を示すタイミングチャートである。なお、図8において、破線で示された消費電流Icpは、比較例に係る半導体装置1Aでのチャージポンプ回路13の消費電流である。
【0054】
電源電圧Vccが第3範囲(減電)である場合、出力電圧Vppが電源電圧Vccから基準電圧Vtgに昇圧しきるまでの期間T1においてクロック信号CLK1及びCLK2の周波数が高くなる。これにより、出力電圧Vppが電源電圧Vccから基準電圧Vtgに昇圧しきるまでの期間T1におけるチャージポンプ回路13の消費電流が若干増えるものの、チャージポンプ回路13の昇圧効率を高めることができるので、チャージポンプ回路13の回路サイズを小さくしたままで、電源電圧Vccの減電に対処することができる。半導体装置1Bではチャージポンプ回路13の回路サイズを小さくすることができるので、半導体装置1Bは、回路サイズ低減によるコスト低減も可能となる。
【0055】
<用途>
実施形態に係る半導体装置1Bは、任意の電気機器に搭載される。電気機器は一般に電子機器に分類される機器を含み、以下の説明における電気機器を電子機器と読み替えても良い。実施形態に係る半導体装置1Bが搭載される電気機器は、例えば、情報端末、携帯電話機(スマートホンに分類される携帯電話機を含む)、パーソナルコンピュータ、テレビ受信機、洗濯機、空調機を含む他、車載用の電気機器であっても良い。
【0056】
図9は、自動車である車両CRの外観図の例を示す図である。車両CRは、図示されないバッテリと、バッテリの出力電圧に基づく駆動電圧の供給を受けて動作する電気機器E11~E18と、を搭載している。尚、図9に示される電気機器E11~E18の搭載位置は例に過ぎず、それらの搭載位置は様々に変更され得る。実施形態に係る半導体装置1Bを電気機器E11~E18の何れに対しても組み込むことが可能である。
【0057】
電気機器E11は、車両CRのエンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御及びオートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。電気機器E12は、車両CRに設けられたHID(high intensity discharged lamp)及びDRL(daytime running lamp)などの点灯制御及び消灯制御を行うランプコントロールユニットである。電気機器E13は、車両CRのトランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。電気機器E14は、車両CRの運動に関連する制御、例えば、ABS(anti-lock brake system)制御、EPS(electric power steering)制御及び電子サスペンション制御などを行うボディコントロールユニットである。
【0058】
電気機器E15は、車両CRのドアロック、防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。電気機器E16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ及び電動シートなど、標準装備品又はメーカーオプション品として、車両CRの工場出荷段階で車両CRに組み込まれる電気機器である。電気機器E17は、車載A/V(audio/visual)機器、カーナビゲーションシステム及びETC(electronic toll collection system)用機器など、ユーザオプション品として任意で車両CRに装着される電気機器である。電気機器E18は、車両CRにおけるブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電気機器である。
【0059】
図10は、車両CRに搭載可能なエアバッグシステム100の例を示す図である。図10に示すエアバッグシステム100は、ECU(Electronic Control Unit)110、衝突検知センサ120、着火装置(スクイブ)130及びエアバッグ140を備えている。ECU110は、MPU111、点火回路112及びEEPROM113を含んで構成される。EEPROM113として、実施形態に係る半導体装置1Bを用いることができ、MPU111は図3のMPU2として機能する。
【0060】
衝突検知センサ120は、車両CRの前方及び側方からの衝撃を検出する。MPU111は、衝突検知センサ120の検知結果に基づいて衝撃評価値を演算し、演算された衝撃評価値が所定の衝突判定値を超える場合に点火回路112を作動させる。これにより、着火装置130に電流が流れてエアバッグ140が展開される。EEPROM113は、エアバッグシステム100の動作状況についてのデータを格納することができる。当該データは、故障診断により故障が検知された場合などにEEPROM113に書き込まれて良い。書き込まれたデータは故障原因の解析等に有益となる。
【0061】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0062】
例えば、実施形態に係る半導体装置1Bにおいて、発振器11及びセレクタ16が取り除かれてもよい。
【0063】
また例えば、チャージポンプ回路13の出力電圧Vppは、メモリ部30へのデータ書き込み以外の用途で用いられても良い。
【0064】
また例えば、図5に示す構成例では、電源電圧Vccの値に応じて基準クロック信号PCLK2の周波数が連続的に変化するが、基準クロック信号PCLK2の周波数は電源電圧Vccの値に応じて離散的に(段階的に)変化しても良い。
【0065】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0066】
本開示の半導体装置(1B)は、電源電圧に応じた周波数の第1クロック信号を生成するように構成された第1発振器(15)と、前記第1クロック信号に基づき動作し、前記電源電圧を昇圧した出力電圧を生成するように構成されたチャージポンプ回路(13)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0067】
上記第1の構成の半導体装置において、前記電源電圧が第1範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数は、前記電源電圧が前記第1範囲より低い第2範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数より低い構成(第2の構成)であってもよい。
【0068】
上記第2の構成の半導体装置において、前記電源電圧が前記第2範囲より低い第3範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数は、前記電源電圧が前記第2範囲であるときの前記第1クロック信号の周波数より高い構成(第3の構成)であってもよい。
【0069】
上記第1~第3いずれかの構成の半導体装置において、固定周波数の第2クロック信号を生成するように構成された第2発振器(11)を備え、前記チャージポンプ回路は、起動から前記出力電圧が所定値に達する迄の期間、前記第1クロック信号に基づき動作するように構成され、前記出力電圧が前記所定値に達してから後、前記第2クロック信号に基づき動作するように構成されている構成(第4の構成)であってもよい。
【0070】
上記第4の構成の半導体装置において、前記第1クロック信号と前記第2クロック信号とを択一的に選択するように構成されたセレクタ(16)を備える構成(第5の構成)であってもよい。
【0071】
上記第1~第5いずれかの構成の半導体装置において、前記第1発振器はバッファ(B1~B3)を備え、前記バッファは、前記電源電圧を受け取るように構成された電源端子を有する構成(第6の構成)であってもよい。
【0072】
上記第6の構成の半導体装置において、前記第1発振器は、前記バッファを複数備え、定電流で駆動されるように構成されたインバータ(CS11~CS11、Q11~Q13)を複数備え、前記バッファと前記インバータとが交互に配置されるリングオシレータである構成(第7の構成)であってもよい。
【0073】
上記第1~第7いずれかの構成の半導体装置において、前記出力電圧を用いてデータの書き込みが行われるように構成されたメモリ部(30)を備える構成(第8の構成)であってもよい。
【0074】
本開示の電気機器(E11~E18)は、上記第8の構成の半導体装置と、前記半導体装置に接続され、前記半導体装置に対してデータの書き込み又は読み出しを指示するコマンドを出力するように構成された信号処理装置(2)と、を備える構成(第9の構成)である。
【符号の説明】
【0075】
1A 比較例に係る半導体装置
1B 実施形態に係る半導体装置
2、111 MPU
10A、10B 電源部
11、15 発振器
12 クロックドライバ
13 チャージポンプ回路
14 電圧検出回路
16 セレクタ
20 電圧選択部
30 メモリ部
40 制御部
100 エアバッグシステム
110 ECU
112 点火装置
113 EEPROM
120 衝突検知センサ
130 着火装置
140 エアバッグ
B1~B3 バッファ
C1~C3、C11~C13 キャパシタ
COM 通信用端子
CR 車両
CS1~CS3、CS11~CS13 定電流源
E11~E18 電気機器
GND グランド端子
INV1、INV11 インバータ
Q1~Q3、Q11~Q13 MOS電界効果トランジスタ
VCC 電源入力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10