(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094613
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】軸受装置、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
F16C 23/06 20060101AFI20240703BHJP
F16C 27/00 20060101ALI20240703BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20240703BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16C23/06
F16C27/00 Z
F16C35/077
F16C35/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211268
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 真人
【テーマコード(参考)】
3J012
3J117
【Fターム(参考)】
3J012AB03
3J012AB07
3J012BB01
3J012CB03
3J012DB07
3J012DB13
3J012FB10
3J117AA01
3J117CA06
3J117DB04
(57)【要約】
【課題】衝撃を吸収する機能を十分に備えつつ、組付精度を向上させることができる軸受装置、及び回転機械を提供する。
【解決手段】軸受装置は、軸線回りに回転する回転軸を非接触で支持する非接触軸受から、軸線方向に離間した位置に設けられる軸受と、回転軸を軸線の径方向外側から囲うケーシングに取り付けられ、軸受を支持する支持部材と、を備え、軸受は、回転軸と非接触軸受との径方向の隙間以下の隙間を空けて、回転軸を軸線の径方向外側から囲うように配置される内輪と、内輪を径方向外側から囲うように配置される外輪と、内輪と外輪との間に設けられ、外輪に対して内輪を軸線の周方向に回転可能とする転動体と、を有し、支持部材は、外輪を軸線方向に支持し、軸線方向に延びて径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転軸を非接触で支持する非接触軸受から、前記軸線方向に離間した位置に設けられる軸受と、
前記回転軸を前記軸線の径方向外側から囲うケーシングに取り付けられ、前記軸受を支持する支持部材と、
を備え、
前記軸受は、
前記回転軸と前記非接触軸受との前記径方向の隙間以下の隙間を空けて、前記回転軸を前記軸線の前記径方向外側から囲うように配置される内輪と、
前記内輪を前記径方向外側から囲うように配置される外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に設けられ、前記外輪に対して前記内輪を前記軸線の周方向に回転可能とする転動体と、
を有し、
前記支持部材は、前記外輪を前記軸線方向に支持し、前記軸線方向に延びて前記径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部を有する軸受装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記軸受に対して前記軸線方向片側に設けられている請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記軸受に対して前記軸線方向両側に設けられている請求項1に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記外輪と前記ケーシングによって前記径方向に挟まれるとともに、前記径方向に弾性変形可能かつ前記第1支持部よりも剛性の小さい第1ダンパー部材をさらに備える請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記外輪の前記軸線方向両側に設けられ、前記第1ダンパー部材が配置される前記外輪と前記ケーシングとの隙間を前記軸線方向両側から覆って閉塞するシール部をさらに備える請求項4に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記外輪を前記径方向に支持し、前記径方向に延びて前記軸線方向に弾性変形可能な金属製の第2支持部を有する請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記第2支持部よりも剛性の小さい、前記軸線方向に弾性変形可能な第2ダンパー部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記第1支持部によって前記外輪と接続され、前記外輪とともに前記第2ダンパー部材を前記軸線方向に挟む支持基部をさらに有する請求項6に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記外輪は、
前記内輪とともに前記転動体を前記径方向に挟み込む外輪本体と、
前記外輪本体を前記径方向外側から囲うとともに、前記外輪本体が嵌め込まれる嵌込溝を有するハウジングと、
を有し、
前記第1支持部は、前記ハウジングに接続されている請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項9】
軸線回りに回転する回転軸と、
前記回転軸を非接触で支持する非接触軸受と、
前記回転軸を前記軸線の径方向外側から囲うケーシングと、
前記非接触軸受とは別に前記回転軸を支持可能な軸受装置と、
を備え、
前記軸受装置は、
前記非接触軸受から前記軸線方向に離間した位置に設けられる軸受と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記軸受を支持する支持部材と、
を備え、
前記軸受は、
前記回転軸と前記非接触軸受との前記径方向の隙間以下の隙間を空けて、前記回転軸を前記径方向外側から囲うように配置される内輪と、
前記内輪を前記径方向外側から囲うように配置される外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に設けられ、前記外輪に対して前記内輪を前記軸線の周方向に回転可能とする転動体と、
を有し、
前記支持部材は、前記外輪を前記軸線方向に支持し、前記軸線方向に延びて前記径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部を有する回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置、及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターボ分子ポンプに搭載される磁気軸受装置が開示されている。軸受装置は、ロータシャフトの下端部を囲んで配置されたタッチダウン軸受と、タッチダウン軸受とその保持部材との間の環状隙間に挿入された波板状緩衝部材とを有する。磁気軸受の動作が急停止した場合や、磁気軸受やロータシャフトの動作が不安定になった場合、ロータシャフトがタッチダウン軸受に接触することがある。このとき、タッチダウン軸受にロータシャフトに直交する方向の衝撃が加わるが、波板状緩衝部材がばねとして作用し、衝撃を吸収することができる。
また、タッチダウン軸受とその保持部材との間の環状隙間に、波板状緩衝部材の代わりに、ゴム等からなるOリング等を設置する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、波板状緩衝部材がばねのように弾性変形するため、タッチダウン軸受とロータシャフトとの間に適切な隙間を設けることが難しい。
また、波板状緩衝部材の代わりにOリングを設置する場合も、Oリングが変形し易く、Oリング毎に僅かに硬さが異なるために、適切な隙間を設けることが困難とされている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、衝撃を吸収する機能を十分に備えつつ、組付精度を向上させることができる軸受装置、及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る軸受装置は、軸線回りに回転する回転軸を非接触で支持する非接触軸受から、前記軸線方向に離間した位置に設けられる軸受と、前記回転軸を前記軸線の径方向外側から囲うケーシングに取り付けられ、前記軸受を支持する支持部材と、を備え、前記軸受は、前記回転軸と前記非接触軸受との前記径方向の隙間以下の隙間を空けて、前記回転軸を前記軸線の前記径方向外側から囲うように配置される内輪と、前記内輪を前記径方向外側から囲うように配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、前記外輪に対して前記内輪を前記軸線の周方向に回転可能とする転動体と、を有し、前記支持部材は、前記外輪を前記軸線方向に支持し、前記軸線方向に延びて前記径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部を有する。
【0007】
本開示に係る回転機械は、軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸を非接触で支持する非接触軸受と、前記回転軸を前記軸線の径方向外側から囲うケーシングと、前記非接触軸受とは別に前記回転軸を支持可能な軸受装置と、を備え、前記軸受装置は、前記非接触軸受から前記軸線方向に離間した位置に設けられる軸受と、前記ケーシングに取り付けられ、前記軸受を支持する支持部材と、を備え、前記軸受は、前記回転軸と前記非接触軸受との前記径方向の隙間以下の隙間を空けて、前記回転軸を前記径方向外側から囲うように配置される内輪と、前記内輪を前記径方向外側から囲うように配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ、前記外輪に対して前記内輪を前記軸線の周方向に回転可能とする転動体と、を有し、前記支持部材は、前記外輪を前記軸線方向に支持し、前記軸線方向に延びて前記径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の軸受装置、及び回転機械によれば、衝撃を吸収する機能を十分に備えつつ、組付精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る回転機械の構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る軸受装置の構成図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る第1支持部を軸線方向から見た図である。
【
図4】本開示の第1実施形態の変形例に係る第1支持部を軸線方向から見た図である。
【
図5】本開示の第1実施形態の変形例に係る回転機械の構成図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係る軸受装置の構成図である。
【
図7】本開示の第3実施形態に係る軸受装置の構成図である。
【
図8】本開示の第3実施形態に係る第1支持部及び第2支持部を軸線方向から見た図である。
【
図9】本開示の第3実施形態の変形例に係る第1支持部及び第2支持部を軸線方向から見た図である。
【
図10】本開示の第4実施形態に係る軸受装置の構成図である。
【
図11】本開示の第4実施形態に係るシール部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
(回転機械の構成)
以下、本開示の実施形態に係る回転機械100について、
図1~
図3を参照して説明する。
本実施形態では、
図1に示す回転機械100が例えばターボ冷凍機等に搭載される遠心圧縮機である場合を例に説明する。回転機械100は、回転軸1と、羽根車2と、ケーシング3と、ラジアル磁気軸受4(非接触軸受)と、スラスト磁気軸受5と、ラジアル変位センサ6と、スラスト変位センサ7と、軸受装置20とを備える。
【0011】
(回転軸)
回転軸1は、軸心部8と、羽根車取付部9と、段差部10(
図2参照)とを有する。
軸心部8は、一方向に延びる円柱状に形成されている。本実施形態では、軸心部8は、水平方向に延在するように配置されている。
以下では、軸心部8の軸線Oを中心とした径方向を単に「径方向」と称し、軸線O回りの周方向を単に「周方向」と称して説明する。
【0012】
羽根車取付部9は、軸心部8の軸線O方向中央部に設けられている。羽根車取付部9は、軸心部8の外周面から径方向外側に張り出すように形成されている。
【0013】
図2に示すように、段差部10は、径方向外側に張り出したフランジ状の部分である。回転軸1の軸線O方向の各位置に形成されている。段差部10は、例えば軸心部8の外周面に軸線O方向に離間して一対設けられている。この一対の段差部10のうち、軸線O方向で羽根車取付部9側の段差部10を第1段差部11とし、軸線O方向で羽根車取付部9と反対側の段差部10を第2段差部12とする。これら一対の第1段差部11と第2段差部12の組は、羽根車取付部9の軸線O方向両側に設けられている。
なお、図面上では、回転軸1の形状は簡略化されている。回転軸1の形状は、上述した形状に限られない。例えば、回転軸1に形成される段差部10は、第1段差部11や第2段差部12のみに限られない。
【0014】
(羽根車)
羽根車2は、羽根車取付部9の軸線O方向中央部に設けられている。羽根車2は、軸線O方向に複数段配列されたインペラである。
【0015】
各羽根車2は、軸線O方向から流入する流体Gを径方向外側に圧送する。流体Gは、いわゆる作動流体である。流体Gの例として、例えば空気等が挙げられる。各羽根車2には、流体Gが流通する圧縮流路2aが形成されている。
上述した羽根車2及び回転軸1は、ケーシング3の内に収容されている。
【0016】
(ケーシング)
ケーシング3は、羽根車2及び回転軸1のうち羽根車取付部9を含む領域を径方向外側から、周方向全周にわたって覆っている。ケーシング3の軸線O方向の両端部には、外部から流体Gを取り入れるための吸気口13と、ケーシング3内部で圧縮された流体Gを排除するための排気口14とが、それぞれ設けられている。ケーシング3の内側には、これら吸気口13と排気口14とを連通し、縮径と拡径を繰り返す内部空間が形成されている。この内部空間は、複数の羽根車2を収容するとともに、流体Gの流路17の一部を構成している。
さらに、ケーシング3には複数の羽根車2に対して軸線O方向両側に収容空間S1がそれぞれ設けられている。この収容空間S1には、回転軸1を非接触で支持するラジアル磁気軸受4、及びスラスト磁気軸受5が収容されている。
【0017】
(ラジアル磁気軸受)
ラジアル磁気軸受4は、非接触軸受の一例である。ラジアル磁気軸受4は、2つの収容空間S1内にそれぞれ設けられている。より詳細には、ラジアル磁気軸受4は、軸心部8を径方向外側から覆うように設けられている。ラジアル磁気軸受4は、第1軸受コア4aと、第1軸受コイル4bとを有する。
【0018】
第1軸受コア4aは、周方向に複数配列されている。第1軸受コア4aと羽根車取付部9との間には、径方向の隙間S2が設けられている。この隙間S2によって、第1軸受コア4aと回転軸1とが接触することなく、回転軸1は、軸線O回りに回転することができる。
【0019】
第1軸受コイル4bは、各第1軸受コア4aに設けられている。第1軸受コイル4bは、第1軸受コア4aに巻線を巻き付けられ、径方向に延びる円筒状に形成されている。第1軸受コイル4bに電流が流れると、回転軸1の周方向全周にわたって径方向の磁気力が働く。これにより、回転軸1は、ラジアル磁気軸受4から径方向に浮上した状態で支持される。
【0020】
スラスト磁気軸受5は、2つの収容空間S1のうち吸気口13側の収容空間S1内に設けられている。また、スラスト磁気軸受5は、収容空間S1内でラジアル磁気軸受4よりも軸線O方向で多段の羽根車2から離間した位置に設けられている。
以下では、軸線O方向のうち、スラスト磁気軸受5側を軸線O方向一方側と称し、スラスト磁気軸受5とは反対側を軸線O方向他方側と称して説明する場合がある。
スラスト磁気軸受5は、スラストディスク5aと、第2軸受コア5bと、第2軸受コイル5cとを有する。
【0021】
スラストディスク5aは、軸心部8の周りに設けられている。スラストディスク5aは、軸心部8の外周面に取り付けられている。スラストディスク5aは、軸心部8の外周面から径方向外側に鍔状に張り出している。
【0022】
第2軸受コア5bは、スラストディスク5aを挟んで軸線O方向両側に一対設けられている。第2軸受コア5bは、軸心部8を径方向外側から覆う円環状に形成されている。各第2軸受コア5bと、スラストディスク5aとの間には、軸線O方向の隙間S3が設けられている。この隙間S3によって、第2軸受コア5bとスラストディスク5aとが接触することなく、回転軸1が軸線O回りに回転することができる。
【0023】
スラストディスク5aと対向する側の各第2軸受コア5bの表面には、溝部15が設けられている。溝部15は、スラストディスク5aに向けて開口し、周方向に延びる円環状に形成されている。以下では、第2軸受コア5bのうち、溝部15によって囲われた径方向内側の部分を、巻付部16と称する。
【0024】
第2軸受コイル5cは、各第2軸受コア5bに設けられている。第2軸受コイル5cは、第2軸受コア5bの溝部15内に配置されている。第2軸受コイル5cは、第2軸受コア5bの巻付部16に巻線を巻き付けられ、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。第2軸受コイル5cに電流が流れると、スラストディスク5aに軸線O方向の磁気力が働く。これにより、回転軸1に取り付けられたスラストディスク5aが、スラスト磁気軸受5から軸線O方向に浮上した状態で支持される。
【0025】
上述したラジアル磁気軸受4は、回転軸1の径方向位置に応じてその磁気力を調整される。また、スラスト磁気軸受5は、回転軸1の軸線O方向位置に応じてその磁気力を調整される。
そのため、回転機械100には、回転軸1の径方向の変位を検知するラジアル変位センサ6と、回転軸1の軸線O方向の変位を検知するスラスト変位センサ7とが設けられている。
【0026】
(ラジアル変位センサ)
ラジアル変位センサ6は、ラジアル磁気軸受4毎に設けられている。ラジアル変位センサ6は、対応するラジアル磁気軸受4と同じ収容空間S1内に配置されている。ラジアル変位センサ6は、検知した回転軸1の径方向の変位を不図示のコントローラに送る。このコントローラは、ラジアル変位センサ6の検知結果に基づいて、ラジアル磁気軸受4の磁気力を調整する。
【0027】
(スラスト変位センサ)
スラスト変位センサ7は、スラスト磁気軸受5が配置される収容空間S1内に配置されている。さらに、スラスト変位センサ7は、軸心部8の軸線O方向一方側の端部と、軸線O方向に対向するように配置されている。スラスト変位センサ7は、検知した回転軸1の軸線O方向の変位をラジアル変位センサ6と同様に不図示のコントローラに送る。このコントローラは、スラスト変位センサ7の検知結果に基づいて、スラスト磁気軸受5の磁気力を調整する。
【0028】
回転軸1は、上述したラジアル磁気軸受4によって径方向に適切に支持されている。しかしながら、これらラジアル磁気軸受4が意図しないタイミングで動作を停止する、又は、ラジアル磁気軸受4や回転軸1の動作が不安定になると、回転中の回転軸1がラジアル磁気軸受4に接触する場合がある(タッチダウン)。このような事態を防ぐため、回転機械100には、タッチダウン対策としてラジアル磁気軸受4とは別に、回転軸1を支持可能な軸受装置20が設けられている。
【0029】
(軸受装置)
軸受装置20は、所謂応急軸受である。すなわち、軸受装置20は、意図しないタイミングで回転軸1とラジアル磁気軸受4とが接近した場合に、回転軸1とラジアル磁気軸受4との接触を防止する。軸受装置20は、ケーシング3内に収容されている。軸受装置20は、ケーシング3に全体又はその一部を交換可能に取り付けられている。軸受装置20は、羽根車取付部9を挟んで軸心部8の軸線O方向両端部に設けられている。軸受装置20は、羽根車取付部9を基準としてラジアル変位センサ6よりも軸線O方向外側に位置している。2つの軸受装置20のうち、軸線O方向一方側の軸受装置20は、軸線O方向でラジアル磁気軸受4とスラスト磁気軸受5との間に設けられている。なお、このような軸受装置20の配置は、あくまでも一例であり、状況に応じて適宜変更可能である。以下では、軸線O方向他方側の軸受装置20を例に説明する。
図2示すように、軸受装置20は、軸受30と、支持部材40と、第1ダンパー部材21とを備える。
【0030】
(軸受)
軸受30は、ラジアル磁気軸受4から軸線O方向に離間した位置に設けられている。軸受30は、内輪31と、外輪32と、転動体33とを有する。
【0031】
内輪31は、回転軸1とラジアル磁気軸受4との径方向の隙間S2以下の隙間S4を空けて、回転軸1を軸線Oの径方向外側から囲うように配置されている。内輪31は、軸線O方向に並んで2つ設けられている。また、これらの内輪31は、例えば軸線O方向に隣り合う2つの段差部10(本実施形態では第1段差部11と第2段差部12)の間に、軸線O方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0032】
外輪32は、内輪31を径方向外側から囲うように配置されている。外輪32は、ケーシング3の内周面3aと径方向に所定の隙間S5を空けて配置されている。外輪32は、外輪本体34と、ハウジング35とを有する。
外輪本体34は、軸線Oを中心とした、周方向に延びる円環状の部材である外輪本体34は、内輪31と同一の軸線O方向位置に内輪31と同数だけ設けられている。すなわち、外輪本体34は、2つ設けられている。
【0033】
ハウジング35は、外輪本体34を径方向外側から囲っている。ハウジング35は、底壁部36と、側壁部37と、嵌込溝38とを有する。
底壁部36は、外輪本体34と同様に、軸線Oを中心とした、周方向に延びる円環状に形成されている。底壁部36の外周面には、径方向外側に開口する第1溝36aが形成されている。第1溝36aは、軸線O方向に並んで2つ設けられている。第1溝36aは、周方向に延びる円環状に形成されている。
【0034】
側壁部37は、底壁部36の軸線O方向両端部に設けられている。各側壁部37は、底壁部36と同様に、軸線Oを中心とした、周方向に延びる円環状に形成されている。側壁部37の外周面は、底壁部36の外周面と面一となっている。側壁部37の内周面は、底壁部36の内周面よりも径方向内側に位置している。
【0035】
嵌込溝38は、上記底壁部36及び、一対の側壁部37によって囲われて形成されている。嵌込溝38は、径方向内側に開口している。嵌込溝38には、上記2つの外輪本体34が嵌め込まれている。嵌込溝38を形成する底壁部36及び、一対の側壁部37には、外輪本体34が隙間なく当接している。
【0036】
転動体33は、内輪31と外輪32との間に設けられている。より詳細には、転動体33は、内輪31及び外輪本体34によって径方向に挟み込まれている。転動体33は、周方向に並んで複数配置されている。転動体33は、例えば玉であり、外輪32に対して内輪31を軸線Oの周方向に回転可能とする。
上述した軸受30は、支持部材40によって支持されている。
【0037】
(支持部材)
支持部材40は、ケーシング3に取り付けられている。支持部材40は、軸受30に対して軸線O方向片側に設けられている。より詳細には、支持部材40は、軸受30に対して軸線O方向で、ラジアル変位センサ6とは反対側に設けられている。支持部材40は、支持基部41と、第1支持部42とを有する。
支持基部41は、ケーシング3の内周面3aに取り付けられている。支持基部41は、軸線Oを中心とした周方向に延びる環状に形成されている。支持基部41は、例えばボルトによって締結固定され、ケーシング3に対して着脱可能とされている。
【0038】
第1支持部42は、支持基部41と外輪32とを接続している。第1支持部42は、外輪32を軸線O方向に支持している。より詳細には、第1支持部42の軸線O方向で軸受30側の端部は、ハウジング35の側壁部37に接続されている。第1支持部42は、軸線O方向に延びて径方向に弾性変形可能な金属製の部材である。軸受装置20に径方向の衝撃が加えられた時、第1支持部42が径方向に弾性変形することにより、径方向の衝撃が吸収される。
【0039】
図3に示すように、第1支持部42は、周方向に等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。
図2に示すように、各第1支持部42は、軸線O方向に延びる棒状に形成されている。ハウジング35の側壁部37、支持基部41、及び複数の第1支持部42によって、所謂かごばねを形成している。
【0040】
第1支持部42は、例えば1つの母材を削り出すことによって、ハウジング35及び支持基部41と一体に形成されている。
また、本実施形態では、上述した第1支持部42の他、径方向の衝撃をより良く吸収するために径方向に弾性変形可能な第1ダンパー部材21が設けられている。
【0041】
(第1ダンパー部材)
第1ダンパー部材21は、外輪32とケーシング3によって径方向に挟まれている。すなわち、第1ダンパー部材21は、外輪32とケーシング3との径方向の隙間S5に配置されている。第1ダンパー部材21は、外輪32及びケーシング3に密着している。第1ダンパー部材21の剛性は、第1支持部42の剛性よりも小さい。第1ダンパー部材21は、例えば、軸線Oを中心とした周方向に延びる円環状に形成されたゴム製のOリングである。このため、第1ダンパー部材21は、径方向だけでなく、軸線O方向及び周方向にも弾性変形可能である。第1ダンパー部材21は、外輪32の外周面に形成された第1溝36aに嵌め込まれている。第1ダンパー部材21は、ハウジング35の外周面よりも径方向外側に突出している。
【0042】
(軸受装置の動作)
続いて、上述した軸受装置20の動作について説明する。
例えば、ラジアル磁気軸受4が急停止する等してラジアル磁気軸受4と回転軸1とが接近すると、ラジアル磁気軸受4と回転軸1とが接触する前に、軸受装置20の内輪31と回転軸1とが接触する。この時、軸受装置20には、回転軸1からの径方向の衝撃が加えられるが、第1ダンパー部材21に加えて第1支持部42が径方向に弾性変形することにより、径方向の衝撃が吸収される。
【0043】
(作用効果)
上記構成の軸受装置20、及び回転機械100では、以下の作用効果を発揮することができる。
【0044】
本実施形態では、軸受装置20は、軸受30と、支持部材40とを備える。軸受30は、ラジアル磁気軸受4から、軸線O方向に離間した位置に設けられている。支持部材40は、回転軸1を軸線Oの径方向外側から囲うケーシング3に取り付けられ、軸受30を支持する。さらに、支持部材40は、軸受30の外輪32を軸線O方向に支持する第1支持部42を有する。第1支持部42は、軸線O方向に延びて径方向に弾性変形可能な金属製の部材である。
【0045】
例えば、ラジアル磁気軸受4が意図せずして動作を停止すると、回転軸1が軸受30に接触して軸受30に径方向の衝撃が加わる。本実施形態によれば、第1支持部42が径方向に弾性変形することにより、軸受30に加わる径方向の衝撃を吸収することができる。すなわち、回転軸1からの衝撃荷重に対するダンパー性能を軸受装置20に付与することができる。
また、第1支持部42は金属製であるため、第1支持部42はある一定以上の剛性を有する。このため、軸受装置20の取付時には第1支持部42の変形が抑制されるので、回転軸1と内輪31との隙間S4を適切に設定することが容易となる。よって、軸受装置20が衝撃を吸収する機能を十分に備えつつ、軸受装置20の組付精度を向上させることができる。
【0046】
軸受装置20の組付精度が向上されるので、軸受装置20の定量的な評価が容易となる。例えば、ラジアル磁気軸受4の動作が急停止して回転中の回転軸1が落下した場合における、衝撃荷重や、軸受装置20の急加減速等に対する軸受装置20の寿命の評価が容易となる。このため、軸受装置20が、適用先の装置に適するか否かについて容易に判断することができるので、設計指針や設計プロセスの決定が容易となる。さらに、軸受装置20の適用に適するか否か、及び軸受装置20の交換時期を的確に判断することができるので、軸受装置20を健全に利用することができる。すなわち、健全性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、支持部材40は、軸受30に対して軸線O方向片側に設けられている。
【0048】
これにより、軸受30を基準として軸線O方向で支持部材40とは反対側の空きスペースに他の部材や装置を設置することができる。したがって、レイアウト性を向上させることができる。さらに、回転機械100を小型化することができる。
【0049】
本実施形態では、軸受装置20は、外輪32とケーシング3によって径方向に挟まれた径方向に弾性変形可能な第1ダンパー部材21をさらに備える。第1ダンパー部材21の剛性は、第1支持部42の剛性よりも小さい。
【0050】
これにより、軸受装置20は、第1支持部42に加えて、第1ダンパー部材21によって径方向の衝撃を吸収することができる。したがって、軸受装置20は、回転軸1からの衝撃をより良好に吸収することができる。すなわち、軸受装置20のダンパー性能をより一層向上させることができる。なお、軸受30は、第1ダンパー部材21よりも剛性の大きい第1支持部42によって支持されているため、軸受30の径方向の位置ずれが防止される。よって、組付精度を維持することができる。
【0051】
さらに、第1ダンパー部材21は、軸受30の外輪32及びケーシング3に密着している。
これにより、例えば第1ダンパー部材21間に油を封入して油膜を形成することができる。この油膜は、スクイーズ膜ダンパーとして機能するため、軸受装置に所謂スクイーズ効果を付与することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、外輪32は、外輪本体34と、ハウジング35とを有する。外輪本体34は、内輪31とともに転動体33を径方向に挟み込んでいる。ハウジング35は、外輪本体34を径方向外側から囲っている。さらに、ハウジング35は、外輪本体34が嵌め込まれる嵌込溝38を有する。
【0053】
これにより、ハウジング35が取り付けられた状態で、内輪31、外輪本体34、及び転動体33のみを交換することができる。このため、回転軸1からの衝撃が直接加えられる軸受装置20の径方向内側部分のみ交換することができる。よって、メンテナンス性が向上される。
【0054】
上記第1実施形態では、各第1支持部42は、軸線O方向に延びる棒状に形成され、ハウジング35の側壁部37、支持基部41、及び複数の第1支持部42によって、所謂かごばねを形成しているとしたが、これに限るものではない。例えば、
図4に示すように、第1支持部42は、軸線O方向に延びる板バネであってもよい。さらに、第1支持部42は、周方向に沿って湾曲している。この場合、第1支持部42の板厚方向は、径方向とおおむね一致している。この板状の第1支持部42は、周方向に等間隔に複数配置されている。なお、第1支持部42は、周方向に沿って湾曲していなくてもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態では、回転機械100が一対のラジアル磁気軸受4間に多段の羽根車2を有した遠心圧縮機である場合を例に説明したが、これに限られない。例えば
図5に示すように、回転機械100は、一対のラジアル磁気軸受4間に、ステータ18による電磁気力を受けて回転するロータ2Aを有した電動モータであってもよい。このように、軸受装置20は、遠心圧縮機の他、電動モータやLNGポンプ、タービン等、他の回転機械にも適用可能とされている。さらに、回転機械内における軸受装置20の配置も適宜変更可能である。
【0056】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態に係る回転機械200、及び軸受装置220について、
図6を参照して説明する。なお、第2実施形態では、上記実施形態と共通する構成については図中に同一の名称・符号を付す等して、その説明を適宜省略する。
【0057】
図6に示すように、本実施形態では、支持部材40が軸受30に対して軸線O方向両側に設けられている。
軸受30よりも軸線O方向で羽根車2側には、ラジアル変位センサ6が設置されているため、2つの支持部材40のうち、羽根車2側の支持部材40は、ラジアル変位センサ6分だけ羽根車2から軸線O方向に離間した位置に設けられている。
【0058】
(作用効果)
上記構成の軸受装置220、及び回転機械200では、以下の作用効果を発揮することができる。
【0059】
本実施形態では、支持部材40は、軸受30に対して軸線O方向両側に設けられている。
【0060】
これにより、軸受装置220は、一対の支持部材40によって軸受30を軸線O方向両側から支持することができる。したがって、回転軸1からの径方向の衝撃に対して、より良好に耐えることができる。軸受装置220の耐久性を向上させることができる。
【0061】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態に係る回転機械300、及び軸受装置320について、
図7、
図8を参照して説明する。なお、第3実施形態では、上記実施形態と共通する構成については図中に同一の名称・符号を付す等して、その説明を適宜省略する。
【0062】
図7に示すように、ケーシング303は、軸受330と径方向に重なる位置に、径方向内側に向けて突出した突出部303bを有する。突出部303bは、軸線Oを中心とした周方向に延びる環状に形成されている。このため、ケーシング303の内周面303aは、少なくとも軸受330の軸線O方向位置で径方向内側に向けて突出した段状に形成されている。
【0063】
また、本実施形態の外輪332のハウジング335は、側壁部337に第2溝337aを有する。
第2溝337aは、軸線O方向で底壁部36とは反対側の側壁部337の表面に形成されている。第2溝337aは、軸線O方向に開口している。第2溝337aは、軸線Oを中心とした周方向に延びる環状に形成されている。第2溝337aは、第1支持部42よりも径方向内側に設けられている。
【0064】
また、本実施形態の支持部材340は、第2実施形態と同様に、支持部材340が軸受330に対して軸線O方向両側に設けられている。支持部材340は、支持基部341と、第1支持部42と、第2支持部343とを有する。
本実施形態の支持基部341は、第1実施形態と同様に、支持基部341は、軸線Oを中心とした周方向に延びる環状に形成されている。ただし、支持基部341は、軸線Oを含む断面視で、L字状に形成されている。支持基部341は、第1基部344と、第2基部345とを有する。
【0065】
第1基部344は、軸線Oを含む断面視で径方向に長い矩形状に形成されている。第1基部344は、ケーシング303の内周面303aとの間に径方向の隙間を空けて設けられている。第1基部344は、第1支持部42によって軸線O方向に外輪332を構成するハウジング335と接続されている。
【0066】
第2基部345は、第1基部344から軸線O方向で軸受330側に延びている。第2基部345との側壁部337との間には、軸線O方向の隙間が設けられている。第2基部345は、第1支持部42よりも径方向内側に位置している。第2基部345は、ハウジング335に形成された第2溝337aと、軸線O方向に対向している。
【0067】
第2支持部343は、第1基部344とケーシング303との隙間に設けられている。第2支持部343は、第1基部344の外周面とケーシング303の内周面303aとを径方向に接続している。本実施形態では、第2支持部343は、支持基部341及び第1支持部42を介して外輪332に接続されている。このため、第2支持部343は、支持基部341及び第1支持部42を介して外輪332を径方向に支持している。
【0068】
第2支持部343は、径方向に延びて軸線O方向に弾性変形可能な金属製の部材である。軸受装置320に軸線O方向の衝撃が加えられた時、第2支持部343が軸線O方向に弾性変形することにより、軸線O方向の衝撃が吸収される。
【0069】
図8に示すように、第2支持部343は、周方向に等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。複数の第2支持部343は、例えば複数の第1支持部42と同一の周方向位置に設けられている。
図7に示すように、各第2支持部343は、径方向に延びる棒状に形成されている。
【0070】
第2支持部343は、例えば1つの母材を削り出すことによって、ハウジング335、支持基部341、及び第1支持部42と一体に形成されている。
また、本実施形態では、上述した第2支持部343の他、径方向の衝撃をより良く吸収するために、軸受装置320は、軸線O方向に弾性変形可能な第2ダンパー部材322をさらに備える。
【0071】
第2ダンパー部材322は、外輪332と支持基部341の第2基部345とによって軸線O方向に挟まれている。すなわち、第2ダンパー部材322は、外輪332と支持基部341との径方向の隙間に配置されている。第2ダンパー部材322は、外輪332及び支持基部341に密着している。第2ダンパー部材322の剛性は、第1支持部42の剛性、及び第2支持部343の剛性よりも小さい。第2ダンパー部材322は、例えば、軸線Oを中心とした周方向に延びる円環状に形成されたゴム製のOリングである。このため、第2ダンパー部材322は、軸線O方向だけでなく、径方向及び周方向にも弾性変形可能である。第2ダンパー部材322は、外輪332の軸線O方向の端面に形成された第2溝337aに嵌め込まれている。第2ダンパー部材322は、ハウジング335の軸線O方向の端面よりも軸線O方向で支持部材340側に突出している。
【0072】
(作用効果)
上記構成の軸受装置320、及び回転機械300では、以下の作用効果を発揮することができる。
【0073】
本実施形態では、支持部材340は、外輪332を径方向に支持する第2支持部343を有する。第2支持部343は、径方向に延びて軸線O方向に弾性変形可能な金属製の部分である。
【0074】
これにより、軸受330に軸線O方向の衝撃が加えられた時、第2支持部343が軸線O方向に弾性変形することにより、軸線O方向の荷重を吸収することができる。
また、第2支持部343は金属製であるため、第2支持部343はある一定以上の剛性を有する。このため、軸受装置320の取付時には第2支持部343の変形が抑制されるので、軸受330の軸線O方向の位置決めを容易に行うことができる。
よって、軸線O方向の荷重を吸収する機能を軸受装置320に付与しつつ、組付精度を向上させることができる。
【0075】
本実施形態では、軸受装置320は、第2支持部343よりも剛性の小さい、軸線O方向に弾性変形可能な第2ダンパー部材322をさらに備える。支持部材340は、第1支持部42によって外輪332と接続され、外輪332とともに第2ダンパー部材322を軸線O方向に挟む支持基部341をさらに有する。
【0076】
これにより、軸受装置320は、第2ダンパー部材322によって軸線O方向の衝撃を吸収することができる。したがって、軸受装置320は、軸線O方向の荷重をより良好に吸収することができる。なお、軸受330は、第2ダンパー部材322より剛性の大きい第2支持部343によって支持されているため、軸受330の軸線O方向の位置ずれが防止される。
【0077】
上記第3実施形態では、各第2支持部343は、径方向に延びる棒状に形成されているとしたが、これに限るものではない。例えば、
図9に示すように、第2支持部343は、径方向に延びる板バネであってもよい。この場合、第2支持部343の板厚方向は、軸線O方向とおおむね一致している。この板状の第2支持部343は、周方向に等間隔に複数配置されている。
【0078】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態に係る回転機械400、及び軸受装置420について、
図10、
図11を参照して説明する。なお、第4実施形態では、上記実施形態と共通する構成については図中に同一の名称・符号を付す等して、その説明を適宜省略する。
【0079】
図10に示すように、本実施形態の支持部材40は、第2実施形態と同様に、支持部材40が軸受30に対して軸線O方向両側に設けられている。
【0080】
軸受装置420は、シール部450をさらに備える。シール部450は、例えばメタルシールである。
【0081】
シール部450は、外輪32の軸線O方向両側に設けられている。シール部450は、第1ダンパー部材21が配置される外輪32とケーシング3との径方向の隙間を軸線O方向両側から覆って閉塞している。シール部450は、軸線Oを中心とした周方向に延びる円環状に形成されている。
図11に示すように、シール部450は、取付部451と、シール部本体452と、第1支持部42とを有する。
【0082】
取付部451は、ケーシング3の内周面3aに重ねて配置されている。取付部451は、不図示のボルトによってケーシング3に着脱可能に取り付けられている。
シール部本体452は、取付部451の軸線O方向で軸受30側の端部に設けられている。シール部本体452は、取付部451から径方向内側に延びている。シール部本体452は、外輪32とケーシング3との径方向の隙間S5を軸線O方向から覆っている。シール部本体452は、接続壁部453と、接触壁部454とを有する。
【0083】
接続壁部453は、第1接続壁455と、第2接続壁456とを有する。
第1接続壁455は、軸線Oを含む断面視で、取付部451から径方向内側に直線状に延びている。
第2接続壁456は、第1接続壁455の径方向内側の端部からさらに径方向内側に延びている。第2接続壁456は、径方向内側に向かうにしたがって漸次軸受30に接近するように軸線O方向に傾斜している。
【0084】
接触壁部454は、接続壁部453によって取付部451と接続されている。接触壁部454は、第2接続壁456の径方向内側の端部に設けられている。接触壁部454は、軸線Oを含む断面視で、第2接続壁456から径方向内側に直線状に延びている。接触壁部454は、外輪32のハウジング35に接触している。なお、接触壁部454は、接続壁部453の弾性力により、軸受30に対して軸線O方向に押し付けられている。
【0085】
上述した軸線O方向両側のシール部450によって閉塞された外輪32とケーシング3との間の隙間S5には、第1ダンパー部材21の劣化を抑制するガスを封入することもできる。
【0086】
(作用効果)
上記構成の軸受装置420、及び回転機械400では、以下の作用効果を発揮することができる。
【0087】
本実施形態では、外輪32の軸線O方向両側に設けられ、第1ダンパー部材21が配置される外輪32とケーシング3との隙間を軸線O方向両側から覆って閉塞するシール部450をさらに備える。
【0088】
これにより、第1ダンパー部材21が冷媒やオイル等の外部の作動流体に晒されることを抑制することができる。よって、第1ダンパー部材21の劣化を抑制することができる。すなわち、第1ダンパー部材21の耐環境性の劣化が遅くなるので、作動流体中での第1ダンパー部材21の耐久性を向上させることができる。
【0089】
本実施形態では、軸線O方向両側のシール部450によって閉塞された外輪32とケーシング3との間の空間には、第1ダンパー部材21の劣化を抑制するガスを封入することもできる。
【0090】
これにより、第1ダンパー部材21の劣化をより一層抑制することができる。すなわち、第1ダンパー部材21の耐環境性の劣化がより一層遅くなるので、作動流体中での第1ダンパー部材21の耐久性をより一層向上させることができる。
【0091】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、軸心部8は、水平方向に延在するように配置されているとしたが、これに限るものではない。例えば、軸心部8は、水平方向に交差する方向に延在するように配置されていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、上記実施形態では非接触軸受は、磁気軸受であるとしたが、これに限るものではない。例えば、非接触軸受は、ガス軸受であってもよい。
【0093】
上記実施形態では、軸受装置20,220,320,420は、回転軸1の羽根車取付部9を挟んで軸心部8の軸線O方向両端部に設けられているとしたが、これに限るものではない。例えば、軸受装置20,220,320,420は、回転軸1の羽根車取付部9を挟んで軸心部8の軸線O方向片側にのみ設けられていてもよい。また、軸受装置20,220,320,420は、軸心部8の径方向外側だけでなく、羽根車取付部9の径方向外側に設けられていてもよい。
【0094】
上記実施形態では、軸受30,330を構成する内輪31、及び外輪本体34がそれぞれ2つずつ設けられている場合について説明したが、これに限るものではない。内輪31、及び外輪本体34は、それぞれ1つずつ設けられていてもよい。また、内輪31、及び外輪本体34は、それぞれ3つ以上設けられていてもよい。
【0095】
上記実施形態では、外輪32,332は、外輪本体34と、ハウジング35,335とを有するとしたが、これに限るものではない。例えば、外輪32,332は、ハウジング35,335を有さず、外輪本体34のみから構成されていてよい。この場合、外輪本体34が第1支持部42によって直接支持される。
【0096】
上記実施形態では、第1支持部42は、例えば1つの母材を削り出すことによって、外輪32,332のハウジング35,335及び支持基部41,341と一体に形成されているとしたが、これに限られない。第1支持部42は、外輪32,332及び支持基部41,341とは別体として形成された後、外輪32,332及び支持基部41,341に溶接されてもよい。
【0097】
上記実施形態では、第2支持部343は、支持基部341及び第1支持部42を介して外輪332に接続されているとしたが、これに限られない。支持部材340は、支持基部341を有しておらず、第2支持部343と第1支持部42とが直接接続されていてもよい。すなわち、第2支持部343は、第1支持部42のみを介して外輪332に接続されていてもよい。
【0098】
上記実施形態では、軸受装置20,220,320,420が第1ダンパー部材21を有する場合について説明したが、これに限られない。軸受装置20,220,320,420は、第1ダンパー部材21を備えていなくてもよい。
【0099】
上記実施形態では、第1ダンパー部材21は、例えば、軸線Oを中心とした周方向に延びる円環状に形成されたゴム製のOリングであるとしたが、これに限られず、例えば他の素材で形成されたリング、またはコイルばね等であってもよい。
【0100】
上記実施形態では、軸線O方向両側のシール部450によって閉塞された外輪32とケーシング3との間の空間には、第1ダンパー部材21の劣化を抑制するガスを封入してもよいとしたが、これに限られない。線方向両側のシール部450によって閉塞された外輪32とケーシング3との間の空間には、単に空気を封入してもよい。
【0101】
上記全ての実施形態及び変形例では、第1実施形態と同様に、遠心圧縮機の他、電動モータやLNGポンプ、タービン等、他の回転機械にも適用可能とされ、回転機械内における軸受装置20の配置も適宜変更可能である。
【0102】
<付記>
各実施形態に記載の軸受装置20,220,320,420、及び回転機械100,200,300,400は、例えば以下のように把握される。
【0103】
(1)第1の態様に係る軸受装置20,220,320,420は、軸線O回りに回転する回転軸1を非接触で支持する非接触軸受から、前記軸線O方向に離間した位置に設けられる軸受30,330と、前記回転軸1を前記軸線Oの径方向外側から囲うケーシング3,303に取り付けられ、前記軸受30を支持する支持部材40,340と、を備え、前記軸受30,330は、前記回転軸1と前記非接触軸受との前記径方向の隙間S2以下の隙間S4を空けて、前記回転軸1を前記軸線Oの前記径方向外側から囲うように配置される内輪31と、前記内輪31を前記径方向外側から囲うように配置される外輪32,332と、前記内輪31と前記外輪32,332との間に設けられ、前記外輪32,332に対して前記内輪31を前記軸線Oの周方向に回転可能とする転動体33と、を有し、前記支持部材40は、前記外輪32,332を前記軸線O方向に支持し、前記軸線O方向に延びて前記径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部42を有する。
非接触軸受の例として、上述したラジアル磁気軸受4や、ガス軸受等が挙げられる。
【0104】
例えば、非接触軸受が意図せずして動作を停止すると、回転軸1が軸受30,330に接触して軸受30,330に径方向の衝撃が加わる。本態様によれば、第1支持部42が径方向に弾性変形することにより、軸受30,330に加わる径方向の衝撃を吸収することができる。
また、第1支持部42は金属製であるため、第1支持部42はある一定以上の剛性を有する。このため、軸受装置20,220,320,420の取付時には第1支持部42の変形が抑制されるので、回転軸1と内輪31との隙間S4を適切に設定することが容易となる。
【0105】
(2)第2の態様に係る軸受装置20は、(1)の態様の軸受装置20であって、前記支持部材40は、前記軸受30に対して前記軸線O方向片側に設けられていてもよい。
【0106】
これにより、軸受30を基準として軸線O方向で支持部材40とは反対側の空きスペースに他の部材や装置を設置することができる。
【0107】
(3)第3の態様に係る軸受装置220,320,420は、(1)の態様の軸受装置220,320,420であって、前記支持部材40,340は、前記軸受30,330に対して前記軸線O方向両側に設けられていてもよい。
【0108】
これにより、軸受装置220,320,420は、一対の支持部材40,340によって軸受30,330を軸線O方向両側から支持することができる。
【0109】
(4)第4の態様に係る軸受装置20,220,320,420は、(1)から(3)のいずれか1つの態様の軸受装置20,220,320,420であって、前記外輪32,332と前記ケーシング3,303によって前記径方向に挟まれるとともに、前記径方向に弾性変形可能かつ前記第1支持部42よりも剛性の小さい第1ダンパー部材21をさらに備えてもよい。
【0110】
これにより、軸受装置20,220,320,420は、第1支持部42に加えて、第1ダンパー部材21によって径方向の衝撃を吸収することができる。
【0111】
(5)第5の態様に係る軸受装置420は、(4)の態様の軸受装置420であって、前記外輪32の前記軸線O方向両側に設けられ、前記第1ダンパー部材21が配置される前記外輪32と前記ケーシング3との隙間を前記軸線O方向両側から覆って閉塞するシール部450をさらに備えてもよい。
【0112】
これにより、第1ダンパー部材21が冷媒やオイル等の外部の作動流体に晒されることを抑制することができる。
【0113】
(6)第6の態様に係る軸受装置320は、(1)から(5)のいずれか1つの態様の軸受装置320であって、前記支持部材340は、前記外輪32を前記径方向に支持し、前記径方向に延びて前記軸線O方向に弾性変形可能な金属製の第2支持部343を有してもよい。
【0114】
これにより、軸受330に軸線O方向の衝撃が加えられた時、第2支持部343が軸線O方向に弾性変形することにより、軸線O方向の荷重を吸収することができる。
また、第2支持部343は金属製であるため、第2支持部343はある一定以上の剛性を有する。このため、軸受装置320の取付時には第2支持部343の変形が抑制されるので、軸受330の軸線O方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0115】
(7)第7の態様に係る軸受装置320は、(6)の態様の軸受装置320であって、前記第2支持部343よりも剛性の小さい、前記軸線O方向に弾性変形可能な第2ダンパー部材322をさらに備え、前記支持部材340は、前記第1支持部42によって前記外輪332と接続され、前記外輪332とともに前記第2ダンパー部材322を前記軸線O方向に挟む支持基部341をさらに有してもよい。
【0116】
これにより、軸受装置320は、第2ダンパー部材322によって軸線O方向の衝撃を吸収することができる。
【0117】
(8)第8の態様に係る軸受装置20,220,320,420は、(1)から(7)のいずれか1つの態様の軸受装置20,220,320,420であって、前記外輪32,332は、前記内輪31とともに前記転動体33を前記径方向に挟み込む外輪本体34と、前記外輪本体34を前記径方向外側から囲うとともに、前記外輪本体34が嵌め込まれる嵌込溝38を有するハウジング35,335と、を有し、前記第1支持部42は、前記ハウジング35,335に接続されていてもよい。
【0118】
これにより、ハウジング35,335が取り付けられた状態で、内輪31、外輪本体34、及び転動体33のみを交換することができる。よって、メンテナンス性を向上させることができる。
【0119】
(9)第9の態様に係る回転機械100,200,300,400は、軸線O回りに回転する回転軸1と、前記回転軸1を非接触で支持する非接触軸受と、前記回転軸1を前記軸線Oの径方向外側から囲うケーシング3,303と、前記非接触軸受とは別に前記回転軸1を支持可能な軸受装置20,220,320,420と、を備え、前記軸受装置20,220,320,420は、前記非接触軸受から前記軸線O方向に離間した位置に設けられる軸受30,330と、前記ケーシング3,303に取り付けられ、前記軸受30,330を支持する支持部材40,340と、を備え、前記軸受30,330は、前記回転軸1と前記非接触軸受との前記径方向の隙間S2以下の隙間S4を空けて、前記回転軸1を前記径方向外側から囲うように配置される内輪31と、前記内輪31を前記径方向外側から囲うように配置される外輪32,332と、前記内輪31と前記外輪32,332との間に設けられ、前記外輪32,332に対して前記内輪31を前記軸線Oの周方向に回転可能とする転動体33と、を有し、前記支持部材40,340は、前記外輪32,332を前記軸線O方向に支持し、前記軸線O方向に延びて前記径方向に弾性変形可能な金属製の第1支持部42を有する。
【符号の説明】
【0120】
1…回転軸、2…羽根車、2A…ロータ、3…ケーシング、3a…内周面、4…ラジアル磁気軸受(非接触軸受)、4a…第1軸受コア、4b…第1軸受コイル、5…スラスト磁気軸受、5a…スラストディスク、5b…第2軸受コア、5c…第2軸受コイル、6…ラジアル変位センサ、7…スラスト変位センサ、8…軸心部、9…羽根車取付部、10…段差部、11…第1段差部、12…第2段差部、13…吸気口、14…排気口、15…溝部、16…巻付部、17…流路、18…ステータ、20…軸受装置、21…第1ダンパー部材、30…軸受、31…内輪、32…外輪、33…転動体、34…外輪本体、35…ハウジング、36…底壁部、36a…第1溝、37…側壁部、38…嵌込溝、40…支持部材、41…支持基部、42…第1支持部、100…回転機械、200…回転機械、220…軸受装置、300…回転機械、303…ケーシング、303a…内周面、303b…突出部、320…軸受装置、322…第2ダンパー部材、330…軸受、332…外輪、335…ハウジング、337…側壁部、337a…第2溝、340…支持部材、341…支持基部、343…第2支持部、344…第1基部、345…第2基部、400…回転機械、420…軸受装置、450…シール部、451…取付部、452…シール部本体、453…接続壁部、454…接触壁部、455…第1接続壁、456…第2接続壁、O…軸線、S1…収容空間、S2…隙間、S3…隙間、S4…隙間、S5…隙間