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特開2024-9462分解方法、分解システムおよび分解プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009462
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】分解方法、分解システムおよび分解プログラム
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B09B5/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111003
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 淳
(72)【発明者】
【氏名】溝部 公威
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AC05
4D004CA02
4D004CB05
4D004CB46
4D004DA16
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】効率的な分解作業を行うことができる分解方法、分解システムおよび分解プログラムを提供する。
【解決手段】分解方法は、分解対象物を撮像して画像データを取得する画像データ取得工程と、前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定する判定工程と、前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送する搬送工程と、前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みる分解工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解対象物を撮像して画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定する判定工程と、
前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送する搬送工程と、
前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みる分解工程と、を含むことを特徴とする分解方法。
【請求項2】
前記判定工程では、前記分解部位を有する場合に、前記分解対象物を分解するための作業種別を特定し、
前記分解工程では、前記判定工程において特定された前記作業種別に基づいて前記分解対象物の分解を試みる請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
前記分解工程において前記分解対象物の分解が成功した場合、
前記判定工程で用いた前記画像データおよび前記判定工程での特定結果を前記機械学習モデルの学習データに追加するデータ追加工程を含む請求項2に記載の分解方法。
【請求項4】
前記分解工程において前記分解対象物の分解が失敗した場合、
前記判定工程で用いた前記画像データをユーザーに提供するデータ提供工程と、
前記ユーザーから前記分解部位の正しい位置および前記作業種別を含む修正情報を受け付ける受付工程と、
前記ユーザーに提供した前記画像データおよび前記修正情報を前記機械学習モデルの学習データに追加するデータ追加工程と、を含む請求項2に記載の分解方法。
【請求項5】
前記データ追加工程後の前記学習データに基づいて前記機械学習モデルの再学習を行う再学習工程を含む請求項3または4に記載の分解方法。
【請求項6】
前記分解対象物の撮像は、3Dカメラで行われ、
前記画像データ取得工程では、前記画像データとして二次元画像データと深度情報とを取得し、
前記判定工程では、深層ニューラルネットワークを用いて前記分解部位の有無の判定および前記作業種別の特定を行う請求項2に記載の分解方法。
【請求項7】
分解対象物を撮像して画像データを取得し、
前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定し、
前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送し、
前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みることを特徴とする分解システム。
【請求項8】
分解システムに、
分解対象物を撮像して画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定する判定工程と、
前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送する搬送工程と、
前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みる分解工程と、を実行させることを特徴とする分解プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解方法、分解システムおよび分解プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているリサイクルシステムでは、リサイクル対象品群を複数の前仕分けグループに仕分ける前仕分け工程と、前仕分けグループに仕分けられたリサイクル対象品を分解してリサイクル部品とし、リサイクル部品を素材別グループに仕分ける素材分別工程と、素材別グループに仕分けられたリサイクル部品を以降に施されるリサイクル処理の種別に基づいて複数の後仕分けグループに仕分ける後仕分け工程と、後仕分けグループに仕分けられたリサイクル部品をリサイクル処理するリサイクル処理工程と、を実行することによりリサイクルを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-251323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなリサイクルシステムでは、前仕分け工程、素材分別工程、後仕分け工程の各々でなされるリサイクル対象品やリサイクル部品の仕分けに必要な情報をデータベースから取得する。しかしながら、リサイクル現場には多種多様なリサイクル対象物が搬入されるし、日々新たな製品が続々と発売されるため、データベースの整備が時間的、量的に困難であり、効率的なリサイクル処理を行うことが困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の分解方法は、分解対象物を撮像して画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定する判定工程と、
前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送する搬送工程と、
前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みる分解工程と、を含む。
【0006】
本発明の分解システムは、分解対象物を撮像して画像データを取得し、
前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定し、
前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送し、
前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みる。
【0007】
本発明の分解プログラムは、分解システムに、
分解対象物を撮像して画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データを機械学習モデルに入力して前記分解対象物に含まれる分解可能な分解部位の有無を判定する判定工程と、
前記分解部位を有すると判定された場合に、前記分解対象物を分解作業部に搬送する搬送工程と、
前記分解作業部において前記分解対象物の分解を試みる分解工程と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】好適な実施形態に係る分解システムの構成図である。
図2】分解システムにて行われる分解方法を示すフローチャートである。
図3】分解システムにて行われる分解方法を示すフローチャートである。
図4】物体検出アルゴリズムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の分解方法、分解システムおよび分解プログラムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、好適な実施形態に係る分解システムの構成図である。図2および図3は、それぞれ、分解システムにて行われる分解方法を示すフローチャートである。図4は、物体検出アルゴリズムを示すブロック図である。
【0011】
図1に示す分解システム1は、分解対象物Wを分解し、分解後の部品をリサイクル、リユースし易くするシステムでる。ただし、分解システム1の用途は、特に限定されず、例えば、修理、検証等のために分解対象物Wを分解する際に用いてもよい。このような分解システム1は、ロボットシステムを適用したものであり、分解対象物Wを搬送する搬送装置2と、搬送装置2により搬送される分解対象物Wを撮像する撮像装置3と、分解対象物Wの分解作業を行う分解作業部4と、各部を連動させて制御する制御装置5と、を有している。
【0012】
[搬送装置2]
搬送装置2は、例えば、ベルトコンベアである。また、搬送装置2は、分解対象物Wが搬入される搬入口21と、搬入口21の下流側に位置し、分解対象物Wを撮像装置3の撮像エリアEに搬送する第1搬送エリア22と、第1搬送エリア22の下流側に位置し、分解対象物Wを分解作業部4に搬送する第2搬送エリア23と、分解作業部4での分解作業を終えた分解対象物Wを搬送する第3搬送エリア24と、分解対象物Wを搬出する搬出口25と、を有している。
【0013】
第2搬送エリア23では、3つのラインL1、L2、L3に分岐しており、このいずれか1つのラインL1、L2、L3に分解対象物Wが誘導される。また、第3搬送エリア24では、ラインL1、L2、L3が合流した後、分解対象物Wを第1搬送エリア22の上流側に合流させるラインL4と、分解対象物Wを搬出する搬出口25に繋がるラインL5とに分岐しており、このいずれか1つのラインL4、L5に分解対象物Wが誘導される。
【0014】
ただし、搬送装置2の構成は、後述する分解方法を実施することができれば、特に限定されない。
【0015】
[撮像装置3]
撮像装置3は、例えば、搬送装置2の直上に位置しており、撮像エリアE内を通過する分解対象物Wを撮像して画像データDwを取得する。撮像装置3としては、特に限定されないが、本実施形態では、3Dカメラ31を用いている。3Dカメラ31によれば、縦横の二次元情報だけでなく奥行き(深度)も撮像することができる。そのため、画像データDwとして、分解対象物Wの二次元画像データDw1と、分解対象物Wの深度情報Dw2とを取得することができる。3Dカメラ31としては、特に限定されず、例えば、ステレオカメラ方式、ToFカメラ方式、構造化照明方式等が挙げられる。ただし、撮像装置3としては、特に限定されず、例えば、2Dカメラであってもよい。
【0016】
[制御装置5]
制御装置5は、搬送装置2、撮像装置3および分解作業部4の駆動をそれぞれ制御する。制御装置5は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な分解プログラムPPが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された分解プログラムPPを読み込んで実行することができる。これにより、後述する分解方法が実現される。
【0017】
また、制御装置5は、機械学習部51を有している。機械学習部51は、予め収集された大量の学習データDに基づいて機械学習された機械学習モデルを有しており、この機械学習モデルに撮像装置3で得られた画像データDwが入力されると、画像データDw中の分解対象物Wに分解可能な部位である分解部位W1があるかないかを判定(予測)し、分解部位W1がある場合には、さらに、分解部位W1の位置と、分解対象物Wから分解部位W1を除去するための作業種別と、を特定(予測)する。
【0018】
なお、作業種別としては、特に限定されず、分解対象物Wの構成等によっても異なるが、例えば、ネジ外し、ツメ外し、ベルト外し、切断、穴あけ、人作業等が挙げられる。本実施形態では、説明の便宜上、作業種別として、ネジ外し、爪外し、人作業の3つを備えている場合について説明する。
【0019】
制御装置5は、分解対象物Wに分解部位W1がないと判定した場合、分解対象物Wをそれ以上分解できないため、ラインL1、L2、L3のいずれかを経由し、分解作業部4での分解処理を行うことなく搬出口25に誘導する。これにより、分解対象物Wが分解システム1から排除される。排除された分解対象物Wは、リサイクル、リユースに回され、リサイクルできないものは、破棄される。
【0020】
一方、制御装置5は、分解対象物Wに分解部位W1があると判定した場合、分解対象物Wを作業種別に応じてラインL1、L2、L3のいずれかに誘導する。具体的には、制御装置5は、作業種別が「ネジ外し」の場合にはラインL1に誘導し、作業種別が「爪外し」の場合にはラインL2に誘導し、作業種別が「人作業」の場合にはラインL3に誘導する。
【0021】
また、制御装置5は、ラインL1、L2、L3に誘導した分解対象物Wが分解作業部4で分解された後、分解済品を新たな分解対象物Wとして第1搬送エリア22に戻し、再び、分解部位W1の有無を判定する。このようにして、分解部位W1がなくなるまで分解を繰り返すことで、分解対象物Wを最小単位まで分解することができ、優れたリサイクル性を発揮することができる。
【0022】
[分解作業部4]
分解作業部4は、ラインL1に併設され、ラインL1に誘導された分解対象物Wの分解作業を行う第1処理部41と、ラインL2に併設され、ラインL2に誘導された分解対象物Wの分解作業を行う第2処理部42と、ラインL3に併設され、ラインL3に誘導された分解対象物Wの分解作業を行う第3処理部43と、を有している。
【0023】
第1処理部41は、分解対象物Wのネジ外しを行う。第1処理部41の構成は、特に限定されないが、例えば、ラインL1から分解対象物Wをピップアップするロボット411と、ピックアップされた分解対象物Wのネジ外しを行うロボット412と、ネジが外された分解対象物Wから分解部位W1を取り除くロボット413と、分解後の分解対象物Wおよび分解部位W1をラインL1に戻すロボット414と、を有している。なお、ロボット411、412、413、414としては、特に限定されないが、例えば、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット等を用いることができる。
【0024】
第2処理部42は、分解対象物Wの爪外しを行う。第2処理部42の構成は、特に限定されないが、例えば、ラインL2から分解対象物Wをピップアップするロボット421と、ピックアップされた分解対象物Wの爪外しを行うロボット422と、爪が外された分解対象物Wから分解部位W1を取り除くロボット423と、分解後の分解対象物Wおよび分解部位W1をラインL2に戻すロボット424と、を有している。なお、ロボット421、422、423、424としては、特に限定されないが、例えば、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット等を用いることができる。
【0025】
第3処理部43には、第1、第2処理部41、42のようなロボットではなく、作業員Hつまり人間が配置されている。そして、第3処理部では、この作業員Hが、第1、第2処理部41、42で対応できない分解作業を行う。当該作業としては、特に限定されないが、例えば、切断、加熱、ベルト外し、穴あけ等が挙げられる。また、例えば、第1処理部41では対応できないサイズや場所のネジ外し、第2処理部42では対応できないサイズや場所の爪外し等であってもよい。このように、作業員Hを配置した第3処理部43を備えることにより、多種多様な分解作業が可能となり、分解システム1の分解効率が向上する。
【0026】
以上、分解システム1の構成について説明した。次に、分解システム1で行われる分解対象物Wの分解方法についてより詳細に説明する。なお、この分解方法は、制御装置5が分解プログラムPP等を読み込んで実行することにより実現される。
【0027】
分解方法は、図2に示すように、分解対象物Wを撮像して画像データDwを取得する画像データ取得工程S1と、画像データDwを機械学習モデルに入力して分解対象物Wに含まれる分解可能な分解部位W1の有無を判定する判定工程S2と、分解部位W1を有すると判定された場合に、分解対象物Wを分解作業部4に搬送する搬送工程S3と、分解作業部4において分解対象物Wの分解を試みる分解工程S4と、を含んでいる。このような方法によれば、機械学習によって分解部位W1の有無を判定することができるため、既知の分解対象物Wのみならず、未知の分解対象物Wについても対応することができ、効率的な分解作業を行うことができる。
【0028】
また、分解方法は、分解工程S4で分解対象物Wの分解が成功した場合に、その情報を機械学習モデルの学習データDに追加するデータ追加工程S5を含み、分解工程S4で分解対象物Wの分解が失敗した場合に、画像データDwをユーザーに提供するデータ提供工程S6と、ユーザーから修正情報を受け付ける受付工程S7と、修正情報を機械学習モデルの学習データDに追加するデータ追加工程S8と、を含む。また、分解方法は、データ追加工程S8後の新たな学習データDに基づいて機械学習モデルの再学習を行う再学習工程S9を含んでいる。以下、これら各工程について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0029】
[画像データ取得工程S1]
画像データ取得工程S1では、制御装置5は、撮像エリアEを通過する分解対象物Wを撮像装置3によって撮像し、分解対象物Wが写った画像データDwを取得し、記憶する。なお、本実施形態では、撮像装置3が3Dカメラ31であるため、画像データDwとして、分解対象物Wの二次元画像データDw1と、分解対象物Wの深度情報Dw2と、を取得することができる。
【0030】
[判定工程S2]
判定工程S2では、制御装置5は、取得した画像データDwを機械学習モデルに入力し、分解対象物Wに分解部位W1が含まれているか、分解部位W1が含まれている場合には分解部位W1の位置と、分解対象物Wから分解部位W1を除去するための作業種別を特定(予測)する。このように、分解部位W1の位置および作業種別を特定することで、分解工程S4において、より適した作業で分解対象物Wの分解を試みることができるため、分解対象物Wを分解できる可能性が高まる。したがって、効率的な分解作業を行うことができる。
【0031】
なお、作業種別は、前述したように、ネジ外し、爪外し、人作業の3つの中から選択される。また、分解部位W1の位置は、二次元画像データDw1中の二次元座標値(px,py)と、深度情報Dw2中の二次元座標値(px,py)と対応する点の3次元座標値(x,y,z)と、で表される。つまり、判定工程S2では、6つの変数[px,py,x,y,z,作業種別]で分解部位W1の位置および作業種別が特定される。
【0032】
なお、機械学習モデルとしては、特に限定されず、例えば、深層ニューラルネットワーク(DNN)等の各種深層学習モデルを用いてもよいし、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン等の深層学習以外の学習モデルを用いてもよい。本実施形態では、深層ニューラルネットワーク(DNN)を用いている。深層ニューラルネットワーク(DNN)を用いることにより、分解部位W1の有無、分解部位W1の位置および作業種別の特定を精度よく行うことができる。
【0033】
深層ニューラルネットワーク(DNN)を用いた機械学習は、例えば、図4に示すようにして行われる。同図では、物体検出アルゴリズムであるFaster R-CNNを用い、二次元画像データDw1の中から分解部位W1を囲む矩形領域(bounding box)を抽出し、抽出した各分解部位W1について、前述した6つの変数[px,py,x,y,z,作業種別]を特定する構成となっている。なお、矩形領域(bounding box)の中心位置が二次元の座標値となり、それを深度情報Dw2と3Dカメラのキャリブレーション情報とに基づいて座標変換することにより三次元座標値(x,y,z)が得られる。ただし、6つの変数[px,py,x,y,z,作業種別]を特定する方法は、限定されない。
【0034】
判定工程S2の結果、分解対象物Wに分解部位W1がない場合、制御装置5は、分解対象物WをラインL1、L2、L3のいずれかを経由し、分解作業部4での分解処理を行うことなく搬出口25に誘導する。これにより、分解対象物Wが分解システム1から排除される。一方、分解対象物Wに分解部位W1がある場合、制御装置5は、搬送工程S3に移行する。
【0035】
[搬送工程S3]
搬送工程S3では、制御装置5は、判定工程S2で特定した作業種別に基づいて、分解対象物WをラインL1、L2、L3のいずれかへ誘導する。具体的には、作業種別が「ネジ外し」の場合には分解対象物WをラインL1に誘導し、作業種別が「爪外し」の場合には分解対象物WをラインL2に誘導し、作業種別が「人作業」の場合には分解対象物WをラインL3に誘導する。
【0036】
ここで、判定工程S2において、複数の分解部位W1について異なる作業種別が特定された場合、制御装置5は、これら複数の作業種別の優先度を算出し、最も優先度の高い作業種別に対応したラインに分解対象物Wを誘導する。なお、作業種別の優先度は、分解対象物W毎に個別に算出してもよいし、ユーザーが予め設定してもよい。
【0037】
また、作業種別の優先度の決定方法は、特に限定されず、例えば、鉛直方向の高さに基づいて決定してもよい。例えば、分解対象物Wに分解部位W1としてのネジと分解部位W1としての爪とがあり、ネジの頭の方が、爪よりも作業方向手前側に位置する場合、先にネジを外した方が分解対象物Wの分解が容易であると推測される。そのため、このような場合には、作業種別「ネジ外し」の優先度を作業種別「爪外し」の優先度よりも高くすることが好ましい。
【0038】
[分解工程S4]
分解工程S4では、制御装置5は、第1処理部41および第2処理部42の駆動を制御して、分解対象物Wの分解を試みる。つまり、第1処理部41では、分解対象物Wのネジ外しと、ネジを外した箇所を起点とする分解対象物Wの分解と、を試みる。同様に、第2処理部42では、分解対象物Wの爪外しと、爪を外した箇所を起点とする分解対象物Wの分解を試みる。この際、判定工程S2で特定した分解部位W1の位置に基づいて作業が行われる。これにより、スムーズな分解作業が可能となる。また、第3処理部43では、作業員Hが分解対象物Wの分解を試みる。
【0039】
分解工程S4の結果、分解対象物Wの分解が成功した場合、制御装置5は、データ追加工程S5に移行する。反対に、分解対象物Wの分解が失敗した場合、制御装置5は、データ提供工程S6に移行する。なお、分解が成功したかを判定する方法は、特に限定されず、作業毎に種々の方法を用いることができる。例えば、図示しないカメラによって作業後の分解対象物Wを撮像し、得られた画像データに基づいて判定してもよい。また、ネジ外しの場合には、分解が成功すれば、ネジ分だけ分解対象物Wの重量が減少するはずなので、分解対象物Wの重量に基づいて判定してもよい。また、分解対象物Wから取り外したネジの置き場がある場合には、その置き場にネジ分の重量が加算されているかで判定してもよい。
【0040】
分解工程S4での分解作業を終えた分解対象物Wは、再びラインL1、L2、L3に戻されて搬送装置2により搬送される。ここで、分解作業が成功した場合、分解対象物Wは複数のパーツに分解されることになるが、これら全てのパーツが新たな分解対象物Wとして搬送装置2に戻され、撮像エリアEの上流側に合流する。これにより、分解対象物Wがより細かく、最小単位まで分解されてゆく。これに対して、分解作業が失敗した場合、分解対象物Wは、搬送装置2に戻されることなく回収される。または、搬送装置2に戻された後、速やかに搬出口25から搬出される。
【0041】
[データ追加工程S5]
データ追加工程S5は、分解工程S4において分解対象物Wの分解が成功したときに行われる。本工程では、制御装置5は、判定工程S2で用いた画像データDwおよび判定工程S2での特定結果を機械学習モデルの学習データDに追加する。具体的には、制御装置5は、判定工程S2で用いた画像データDwと、判定工程S2で得した分解部位W1の位置および作業種別と、を学習データDに追加する。これにより、正しい情報を学習データDに蓄えることができ、機械学習モデルを更新することで、その予測精度をより高めることができる。
【0042】
[データ提供工程S6]
データ提供工程S6は、分解工程S4において分解対象物Wの分解が失敗したときに行われる。本工程では、制御装置5は、判定工程S2で用いた画像データDwを失敗データとして記憶する。また、制御装置5は、判定工程S2で用いた画像データDwをユーザーに提供する。画像データDwをユーザーに提供する提供方法は、特に限定されず、例えば、制御装置5に接続されている図示しないディスプレイに表示する方法、画像データDwを電子メール等でユーザーの端末に送信する方法等が挙げられる。
【0043】
[受付工程S7、データ追加工程S8]
受付工程S7では、ユーザーは、データ提供工程S6で提供された画像データDwに基づいて、分解部位W1の正しい位置および作業種別を定め、その結果を制御装置5に入力する。なお、入力方法としては、特に限定されず、例えば、制御装置5に接続されている図示しないキーボード、マウス等の入力装置を用いる方法が挙げられる。
【0044】
制御装置5は、ユーザーが定めた分解部位W1の正しい位置および作業種別を含む修正情報を受け付けたら、その修正情報を学習データDに追加する。具体的には、制御装置5は、データ提供工程S6においてユーザーに提供した画像データDwと、ユーザーにより定められた分解部位W1の位置および作業種別と、を学習データDに追加する。これにより、正しい情報を学習データDに蓄えることができ、機械学習モデルを更新することで、その予測精度をより高めることができる。
【0045】
[再学習工程S9]
再学習工程S9では、制御装置5は、データ追加工程S5、S8において情報が追加された新たな学習データDに基づいて機械学習モデルの再学習を行う。これにより、機械学習モデルが更新され、機械学習モデルの予測精度が高まる。このように、分解システム1では、実際に分解作業を行いながら学習を深めていくため、使用を継続することで分解対象物Wの分解精度を高めることができる。また、未知の分解対象物Wについても対応可能であり、効率的にリサイクル、リユースを推進することができる。
【0046】
なお、再学習工程S9は、データ追加工程S5、S8が行われる毎に実施してもよいし、データ追加工程S5、S8が複数回行われ、新しい情報がある程度溜まってから実施してもよい。前者によれば、新たな情報を迅速に機械学習モデルに反映させることができる。後者によれば、機械学習モデルの再学習に要する時間的、費用的なコストを削減することができる。
【0047】
以上、分解システム1で行われる分解方法について説明した。このような分解方法は、前述したように、分解対象物Wを撮像して画像データDwを取得する画像データ取得工程S1と、画像データDwを機械学習モデルに入力して分解対象物Wに含まれる分解可能な分解部位W1の有無を判定する判定工程S2と、分解部位W1を有すると判定された場合に、分解対象物Wを分解作業部4に搬送する搬送工程S3と、分解作業部4において分解対象物Wの分解を試みる分解工程S4と、を含んでいる。このような方法によれば、機械学習によって分解部位W1の有無を判定することができるため、未知の分解対象物Wについても対応でき、効率的な分解作業を行うことができる。
【0048】
また、前述したように、判定工程S2では、分解部位W1を有する場合に、分解対象物Wを分解するための作業種別を特定し、分解工程S4では、判定工程S2において特定された作業種別に基づいて分解対象物Wの分解を試みる。これにより、より適した作業で分解対象物Wの分解を試みることができるため、分解対象物Wを分解できる可能性が高まる。したがって、効率的な分解作業を行うことができる。
【0049】
また、前述したように、分解方法は、分解工程S4において分解対象物Wの分解が成功した場合、判定工程S2で用いた画像データDwおよび判定工程S2での特定結果を機械学習モデルの学習データDに追加するデータ追加工程S5を含んでいる。これにより、正しい情報を学習データDに蓄えることができ、機械学習モデルを更新することで、その予測精度をより高めることができる。
【0050】
また、前述したように、分解方法は、分解工程S4において分解対象物Wの分解が失敗した場合、判定工程S2で用いた画像データDwをユーザーに提供するデータ提供工程S6と、ユーザーから分解部位W1の正しい位置および作業種別を含む修正情報を受け付ける受付工程S7と、ユーザーに提供した画像データDwおよび修正情報を機械学習モデルの学習データDに追加するデータ追加工程S8と、を含んでいる。これにより、正しい情報を学習データDに蓄えることができ、機械学習モデルを更新することで、その予測精度をより高めることができる。
【0051】
また、前述したように、分解方法は、データ追加工程S5、S8後の学習データDに基づいて機械学習モデルの再学習を行う再学習工程S9を含んでいる。これにより、機械学習モデルが更新され、機械学習モデルの予測精度が高まる。
【0052】
また、前述したように、分解対象物Wの撮像は、3Dカメラ31で行われ、画像データ取得工程S1では、画像データDwとして二次元画像データDw1と深度情報Dw2とを取得し、判定工程S2では、深層ニューラルネットワークを用いて分解部位W1の有無の判定および作業種別の特定を行う。これにより、分解部位W1の有無の判定および作業種別の特定をより精度よく行うことができる。
【0053】
また、前述したように、分解システム1は、分解対象物Wを撮像して画像データDwを取得し、画像データDwを機械学習モデルに入力して分解対象物Wに含まれる分解可能な分解部位W1の有無を判定し、分解部位W1を有すると判定された場合に、分解対象物Wを分解作業部4に搬送し、分解作業部4において分解対象物Wの分解を試みる。このようなシステムによれば、機械学習によって分解部位W1の有無を判定することができるため、未知の分解対象物Wについても対応でき、効率的な分解作業を行うことができる。
【0054】
また、前述したように、分解プログラムPPは、分解システム1に、分解対象物Wを撮像して画像データDwを取得する画像データ取得工程S1と、画像データDwを機械学習モデルに入力して分解対象物Wに含まれる分解可能な分解部位W1の有無を判定する判定工程S2と、分解部位W1を有すると判定された場合に、分解対象物Wを分解作業部4に搬送する搬送工程S3と、分解作業部4において分解対象物Wの分解を試みる分解工程S4と、を実行させる。このようなプログラムによれば、機械学習によって分解部位W1の有無を判定することができるため、未知の分解対象物Wについても対応でき、効率的な分解作業を行うことができる。
【0055】
以上、本発明の分解方法、分解システムおよび分解プログラムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0056】
また、前述した実施形態では、判定工程S2において、分解対象物Wを分解するための作業種別を制御装置5が求めているが、これに限定されず、例えば、ユーザーが指定してもよい。つまり、制御装置5は、作業種別をユーザーから受け付けてもよい。これにより、学習データDのデータ量が少なく、機械学習モデルの予測精度が不十分な導入初期であっても、適切な作業種別を特定することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…分解システム、2…搬送装置、21…搬入口、22…第1搬送エリア、23…第2搬送エリア、24…第3搬送エリア、25…搬出口、3…撮像装置、31…3Dカメラ、4…分解作業部、41…第1処理部、411…ロボット、412…ロボット、413…ロボット、414…ロボット、42…第2処理部、421…ロボット、422…ロボット、423…ロボット、424…ロボット、43…第3処理部、5…制御装置、51…機械学習部、D…学習データ、Dw…画像データ、Dw1…二次元画像データ、Dw2…深度情報、E…撮像エリア、H…作業員、L1…ライン、L2…ライン、L3…ライン、L4…ライン、L5…ライン、PP…分解プログラム、S1…画像データ取得工程、S2…判定工程、S3…搬送工程、S4…分解工程、S5…データ追加工程、S6…データ提供工程、S7…受付工程、S8…データ追加工程、S9…再学習工程、W…分解対象物、W1…分解部位
図1
図2
図3
図4