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特開2024-94625エビ様食品、及びエビ様食品の製造方法
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  • 特開-エビ様食品、及びエビ様食品の製造方法 図1
  • 特開-エビ様食品、及びエビ様食品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094625
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】エビ様食品、及びエビ様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20240703BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20240703BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20240703BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240703BHJP
【FI】
A23J3/00 507
A23L17/40 A
A23L29/244
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211288
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆明
【テーマコード(参考)】
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LD10
4B041LE10
4B041LH08
4B041LH10
4B041LK02
4B041LK18
4B041LP01
4B041LP04
4B041LP13
4B041LP16
4B042AC05
4B042AD36
4B042AE03
4B042AE10
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP03
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP23
(57)【要約】
【課題】 噛み応えや弾力感に優れ、ダマが形成され難いエビ様食品を提供する。
【解決手段】 グルコマンナンを1.5重量%以上と、油脂と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質とを含む基材からなるエビ様食品であって、前記基材に細孔が存在し、前記細孔の空隙に油脂が存在するエビ様食品。直鎖性多糖類が、ゲル状態において0.01N以上の硬さを有することが好ましい。油脂が、グルコマンナンに対して等量以上の濃度で含有されていることが好ましい。また、油脂が、前記グルコマンナンに対して3倍以上又は5倍以上の濃度で含有されていることがより好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコマンナンを1.5重量%以上と、油脂と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質とを含む基材からなるエビ様食品であって、前記基材に細孔が存在し、前記細孔の空隙に油脂が存在する
ことを特徴とするエビ様食品。
【請求項2】
前記直鎖性多糖類が、ゲル状態において0.01N以上の硬さを有することを特徴とする請求項1記載のエビ様食品。
【請求項3】
前記油脂が、前記グルコマンナンに対して等量以上の濃度で含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載のエビ様食品。
【請求項4】
前記油脂が、前記グルコマンナンに対して3倍以上又は5倍以上の濃度で含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載のエビ様食品。
【請求項5】
前記油脂が、ごま油、菜種油、米油、大豆油、又はコーン油から選ばれる少なくとも1種類の油脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のエビ様食品。
【請求項6】
前記直鎖状多糖類が、カラギーナン、又はセルロースから選ばれる少なくとも1種類の直鎖状多糖類であることを特徴とする請求項1又は2記載のエビ様食品。
【請求項7】
前記タンパク質が、エンドウタンパク質、卵黄、又は大豆タンパク質から選ばれる少なくとも1種類のタンパク質であることを特徴とする請求項1又は2記載のエビ様食品。
【請求項8】
前記基材に、前記グルコマンナン及び前記直鎖性多糖類を除いた多糖類から選ばれる少なくとも1種類の多糖類が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載のエビ様食品。
【請求項9】
グルコマンナンを1.5重量%以上と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質と、前記グルコマンナン及び前記直鎖性多糖類を除いた多糖類から選ばれる少なくとも1種類の多糖類を含む粉体に対して、油脂を混合し、得られた混合物に水を添加して混合し、次いで加熱した後に凍結する
ことを特徴とするエビ様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エビの代替食品であるエビ様食品の食感を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産や水産業界において、二酸化炭素の排出量や水の使用量といった環境負荷の増大や、耐性菌や感染症の発生などによる不安定な安全及び安心、並びに動物の殺処分といった倫理的観点の問題が社会的な課題となっている。
また、継続的な食肉摂取による健康への悪影響や担い手不足、輸入への高依存なども課題となっている。
【0003】
さらに、将来的には、資源枯渇、健康状態に併せたパーソナライズ食、宇宙や砂漠環境などの過酷環境における食品の生産等が課題になってくることが想定されるところである。
また、国外においては、食肉価格の上昇への対応や食糧自給率の向上を目的として、代替食品の製造が注目を集めている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6137412号公報
【特許文献2】特表2022-536605号公報
【特許文献3】特許第7075430号公報
【特許文献4】国際公開2021/193072号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、代替食品である代替肉の食感にはパサつきがあったり、あるいは噛み応えや弾力感が足りない場合が多いという問題があった。
特に、エビの代替食品であるエビ様食品の場合、その内部に大きな空隙が存在すると、噛み応えや弾力感の足りないパサパサした食感になりやすいという問題があった。
また、エビの肉の硬さを再現するために、エビ様食品にグルコマンナンを1.5重量%以上の濃度で添加すると、基材の混合時に大きいダマが形成され易く、ボソボソとした食感となり、エビに似た食感になり難いという問題があった。
【0006】
ここで、特許文献1には、小麦澱粉及び/又はハイアミロースコーンスターチ1~10重量%、こんにゃく粉1.5~8重量%、セルロース1~7重量%、アルカリ剤及び水を混合し、加熱した後凍結するエビ代替食品の製造法が開示されている。
しかしながら、この方法で製造したエビ代替食品は、エビ特有のプリプリ感や繊維感がやや乏しいという問題があった。
【0007】
また、特許文献2には、本物の甲殻類の身の自然な食感を模倣した甲殻類類似製品であって、重量で類似製品の1.5%~5%の程度のアルギン酸塩と;カルシウムイオンとのアルギン酸塩反応前に水に存在するあらゆる二価イオンをキレート化するのに十分な程度の金属イオン封鎖剤と;重量で類似製品の2%~6%の程度のデンプンと;重量で類似製品の3%~12%の程度のタンパク質と;重量で類似製品の2%~5%の程度のカルシウム塩と;コンニャク、液体充填アルギン酸カルシウムビーズ、またはコンニャクと液体充填アルギン酸カルシウムビーズとの組み合わせと;重量で類似製品の60%~75%の程度の水とを含む殻類類似製品が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、(A)グルコマンナン含量が3.5~12重量%、(B)水分含量が70~90重量%、(C)ゲルの長辺が7~20mm、(D)ゲルの厚みが0.5~1.5mm、(E)ゲルの断面における100μm2以上の細孔を計測した空隙率が9~17%、(F)ゲルの断面における最大細孔空隙率が3~6%、(G)冷凍変性されている、及び(H)加工澱粉の含量が4.5~18重量%の構成を有するコンニャクゲルが開示されている。また、このコンニャクゲル、グルコマンナン、タンパク質素材、加工澱粉、アルカリ剤、及び水を含む基材を含み、基材がグルコマンナン3~4.5重量%、タンパク質素材1~3重量%、加工澱粉8~15重量%を含み、基材のpHが9.5~10.5であり、基材を30~70重量%、コンニャクゲルを70~30重量%含むエビ様食品が開示されている。また、特許文献4にも、近い構成を有するコンニャクゲルやエビ様食品が開示されている。
【0009】
しかしながら、噛み応えや弾力感により優れたエビ様食品の開発が望まれており、またダマが形成され難い組成や製造方法を案出することが好ましい。
そこで、本発明者は鋭意研究して、噛み応えや弾力感により優れ、ダマが形成され難いエビ様食品、及びその製造方法を開発することに成功して、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、噛み応えや弾力感に優れると共に、ダマが形成され難いエビ様食品、及びエビ様食品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のエビ様食品は、グルコマンナンを1.5重量%以上と、油脂と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質とを含む基材からなるエビ様食品であって、前記基材に細孔が存在し、前記細孔の空隙に油脂が存在する構成としてある。
【0012】
また、本発明のエビ様食品を、前記直鎖性多糖類が、ゲル状態において0.01N以上の硬さを有する構成とすることが好ましい。
また、本発明のエビ様食品を、前記油脂が、前記グルコマンナンに対して等量以上の濃度で含有されている構成とすることも好ましい。
また、本発明のエビ様食品を、前記油脂が、前記グルコマンナンに対して3倍以上又は5倍以上の濃度で含有されている構成とすることも好ましい。
【0013】
また、本発明のエビ様食品を、前記油脂が、ごま油、菜種油、米油、大豆油、又はコーン油から選ばれる少なくとも1種類の油脂である構成とすることも好ましい。
また、本発明のエビ様食品を、前記直鎖状多糖類が、カラギーナン、又はセルロースから選ばれる少なくとも1種類の直鎖状多糖類である構成とすることも好ましい。
また、本発明のエビ様食品を、前記タンパク質が、エンドウタンパク質、卵黄、又は大豆タンパク質から選ばれる少なくとも1種類のタンパク質である構成とすることも好ましい。
【0014】
また、本発明のエビ様食品を、前記基材に、前記グルコマンナン及び前記直鎖性多糖類を除いた多糖類から選ばれる少なくとも1種類の多糖類が含まれる構成とすることも好ましい。
さらに、本発明のエビ様食品を、上記のエビ様食品を様々に組み合わせた構成とすることも好ましい。
【0015】
また、本発明のエビ様食品の製造方法は、グルコマンナンを1.5重量%以上と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質と、前記グルコマンナン及び前記直鎖性多糖類を除いた多糖類から選ばれる少なくとも1種類の多糖類を含む粉体に対して、油脂を混合し、得られた混合物に水を添加して混合し、次いで加熱した後に凍結する方法とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、噛み応えや弾力感に優れると共に、ダマが形成され難いエビ様食品、及びエビ様食品の製造方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】試験1における本発明の実施形態に係るエビ様食品、比較例のエビ様食品、及び生エビの細孔内の状態の顕微鏡写真(500倍)を示す説明図である。
図2】試験2における本発明の実施形態に係るエビ様食品の細孔内の状態の顕微鏡写真(明視野100倍,400倍)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のエビ様食品、及びエビ様食品の製造方法の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態及び後述する実施例の具体的な内容に限定されるものではない。
本実施形態のエビ様食品は、グルコマンナンを1.5重量%以上と、油脂と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質とを含む基材からなるエビ様食品であって、基材に細孔が存在し、細孔の空隙に油脂が存在することを特徴とする。
【0019】
最初に、多糖類と油脂を様々な濃度割合で混合して得られた多糖類溶液における多糖類の粒子径の測定結果について説明する。
まず、多糖類としてグルコマンナン(レオックスRS,清水化学株式会社)とカラギーナン(ソアギーナMV101,三菱ケミカル株式会社)を準備し、油脂として食用油(日清ヘルシーリセッタ,日清オイリオグループ株式会社)を準備した。
そして、以下の表1に示す混合比率でこれらを混合して多糖類溶液を得た。
【0020】
【表1】
【0021】
具体的には、油脂:多糖類の混合比率を0:1としたもの(油脂0重量%,グルコマンナン0.1重量%,カラギーナン0.1重量%)、同混合比率を1:1としたもの(油脂0.2重量%,グルコマンナン0.1重量%,カラギーナン0.1重量%)、同混合比率を3:1としたもの(油脂0.6重量%,グルコマンナン0.1重量%,カラギーナン0.1重量%)、同混合比率を5:1としたもの(油脂1.0重量%,グルコマンナン0.1重量%,カラギーナン0.1重量%)の4種類の多糖類溶液を調製した。
【0022】
次に、レーザー粒度分布計(SALD2000,株式会社島津製作所)に設置された水槽内に調製した多糖類溶液を数ミリ滴下して、レーザー回析/散乱法により多糖類の粒子径の測定を行った。粒子径は、メディアン粒径(レーザー回折/散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径)として得た。
その結果、油脂:多糖類の混合比率が0:1,1:1,3:1,5:1の多糖類溶液における多糖類の粒子径は、それぞれ103.7μm,108.8μm,44.6μm,50.7μmであった。
【0023】
すなわち、多糖類溶液における多糖類に対する油脂の混合比率を増加させることによって、測定されたメディアン粒径は、相対的に小さくなった。
ここで、上述したように、従来のエビ様食品においては、エビの肉の硬さを再現するために、エビ様食品にグルコマンナンを1.5重量%以上の濃度で添加すると、基材の混合時に大きいダマが形成され易く、ボソボソとした食感となり、エビに似た食感になり難いという問題があった。
【0024】
そこで、本発明者は上記の知見にもとづいて、エビ様食品にグルコマンナンを1.5重量%以上の濃度で添加する場合において、多糖類に対する油脂の混合比率を増加させることにより、基材の混合時に大きいダマが形成され易いという問題を解消することに成功した。
また、後述するように、エビ様食品の製造方法において、グルコマンナンを含む粉体に対して油脂を混ぜて分散させた後、水を混合する方法を行うことにより、本実施形態のエビ様食品は、さらにダマを含み難いものになっている。
【0025】
本実施形態のエビ様食品は、このような観点から、油脂が、グルコマンナンに対して等量以上の濃度で含有されていることが好ましい。
また、本実施形態のエビ様食品は、油脂が、グルコマンナンに対して3倍以上の濃度で含有されていることがより好ましく、5倍以上の濃度で含有されていることがさらに好ましい。
本実施形態のエビ様食品における油脂とグルコマンナンの混合比率をこのような構成にすることによって、エビ様食品にダマが含まれることを好適に防止することが可能になっている。
【0026】
また、このように本実施形態のエビ様食品における油脂の含有濃度を増加させることによって、エビ様食品の細孔の空隙内に油脂を充填するように存在させることができる。
これにより、後述する実施例において詳述するように、従来のエビ様食品に比較して、本実施形態のエビ様食品の破断応力及び破断歪みを高めることができ、エビ様食品の食感を改善することが可能になっている。
【0027】
また、本実施形態のエビ様食品は、直鎖性多糖類が、ゲル状態において0.01N以上の硬さを有することが好ましい。
本実施形態のエビ様食品をこのような構成にすることによって、エビの肉の硬さを好適に再現することが可能である。
【0028】
本実施形態のエビ様食品において、油脂は、ごま油、菜種油、米油、大豆油、又はコーン油から選ばれる少なくとも1種類の油脂であることが好ましい。
また、本実施形態のエビ様食品において、直鎖状多糖類は、カラギーナン、又はセルロースから選ばれる少なくとも1種類の直鎖状多糖類であることが好ましい。
さらに、本実施形態のエビ様食品において、タンパク質は、エンドウタンパク質、卵黄、又は大豆タンパク質から選ばれる少なくとも1種類のタンパク質であることが好ましい。
【0029】
また、本実施形態のエビ様食品は、基材に、グルコマンナン及び直鎖性多糖類を除いた多糖類から選ばれる少なくとも1種類の多糖類が含まれることが好ましい。
グルコマンナン及び直鎖性多糖類を除いた多糖類としては、アミロペクチンなどを好適に用いることができる。
【0030】
本実施形態のエビ様食品の製造方法は、グルコマンナンを1.5重量%以上と、可溶性の直鎖状多糖類と、タンパク質と、前記直鎖性多糖類を除いた多糖類から選ばれる少なくとも1種類の多糖類を含む粉体に対して、油脂を混合し、得られた混合物に水を添加して混合し、次いで加熱した後に凍結することを特徴とする。
本実施形態のエビ様食品の製造方法をこのような方法にすれば、一旦上記の材料からなる粉体に油脂を混合し、次いで得られた混合物に水を添加して混合するという二段階の混合手順を行うことで、混合時にダマが生じ難くすることが可能になっている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のエビ様食品、及びエビ様食品の製造方法によれば、噛み応えや弾力感に優れ、ダマを含まないエビ様食品を得ることができる。
また、廉価なエビ様食品を提供できると共に、エビ養殖などが抱える非持続的な生産や環境破壊などの問題を抑止することも可能となっている。
さらに、本実施形態における製造技術を、プリプリ感を付与する食品としてエビ以外のイカ、貝、タコなどの代替食品にも適用することが可能である。
【実施例0032】
以下、本発明のエビ様食品、及びエビ様食品の製造方法の効果を確認するために行った試験について説明する。
[試験1]
本実施形態のエビ様食品と従来のエビ様食品を作製して、これらの細孔の空隙の状況を観察し、生エビの細孔の空隙と比較する試験を行った。
【0033】
具体的には、比較例1の生エビとして、東京都内のスーパーで販売されているブラックタイガーを使用した。
また、比較例2のエビ様食品として、特許文献1の段落0024に記載にもとづいて、以下の手順でエビ様食品を作製した。
1.アルカリ剤以外の原料を、ミキサーで10秒間混合した。
2.アルカリ剤を添加した。
3.ミキサーでさらに10秒間混合した。
4.95度10分間蒸し、加熱した。
5.マイナス80度にて4日間冷凍した。
【0034】
アルカリ剤以外の原料として、こんにゃく粉(レオックスRS,清水化学株式会社)と、セルロース製剤(粉末セルロース,バブルスター株式会社社)と、小麦澱粉(小麦澱粉浮粉,三和澱粉工業株式会社)と、加工澱粉(加工馬鈴薯でんぷん,フランス ロケット社)を使用した。
アルカリ剤としては、炭酸ナトリウム(食品添加物用,富士フイルム和光純薬株式会社)を使用した。
加熱には、蒸気滅菌機(オートクレーブ,株式会社トミー精工)を使用した。また、冷却には、マイナス80度に設定した超低温フリーザー(PHCbi,PHC株式会社)を使用した。
【0035】
また、実施例1の本実施形態のエビ様食品を、以下の手順で作製した。
1.容器内で油脂とグルコマンナンを箸で撹拌しながら混合して15分間放置した。これにより、粉体を油脂全体に分散させた。
2.適量の水を加え、30分間室温で撹拌して混合した。
3.混合物に、カラギーナン、タンパク質、加工澱粉を添加して混合した。このとき、大きなダマが発生しないように撹拌し、容器内に粉体が沈殿していないことを確認した。
4.上記混合物に、アルカリ剤を混合した。
5.混合物を80度で30分間加熱した。
6.マイナス80度にて4日間冷凍した。
【0036】
油脂として食用油(日清ヘルシーリセッタ,日清オイリオグループ株式会社)を準備した。また、グルコマンナン(レオックスRS,清水化学株式会社)、カラギーナン(ソアギーナMV101,三菱ケミカル株式会社)、タンパク質(エンドウタンパク質PP-CS,オルガノフードテック株式会社」、加工澱粉(アドバンススノウ,上越スターチ株式会社)を使用した。また、アルカリ剤として、塩化カリウム(0.2%重量、関東化学社製食品添加物用)、炭酸ナトリウムを(0.1%重量、和光純薬製食品添加物用)を使用した。
加熱には、蒸気滅菌機(オートクレーブ,株式会社トミー精工)を使用した。また、冷却には、マイナス80度に設定した超低温フリーザー(PHCbi,PHC株式会社)を使用した。
【0037】
生エビ(比較例1)と、従来のエビ様食品(比較例2)、及び本実施形態のエビ様食品(実施例1)の各サンプルを10mm×10mm×10mm程度にカットした。
そして、これらのサンプルを使用して、生エビとエビ様食品の細孔の空隙を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス)を用いて観察し、500倍で写真撮影を行った。その結果を図1に示す。
【0038】
比較例1の生エビには、小さい空隙は存在するが、大きな空隙は存在していなかった。
一方、比較例2のエビ様食品には、種々の大きさの空隙が存在していた。
これに対して、実施例1のエビ様食品には、大きな空隙は存在せず、また空隙は油脂で満たされていた。
この結果から、本実施形態のエビ様食品において、大きな空隙は存在しないこと、及び細孔の空隙に油脂が存在することが確認された。
【0039】
[試験2]
本実施形態のエビ様食品の細孔の空隙に充填された油脂の状態を観察するために、油脂を染色して観察した。
具体的には、実施例2のエビ様食品を、以下の手順で作製した。なお、材料は試験1と同じものを使用した。
【0040】
1.容器内で油脂とグルコマンナンを箸で撹拌しながら混合して15分間放置した。これにより、粉体を油脂全体に分散させた。
2.オイルレッド(和光純薬株式会社)を終濃度が1重量%となるように添加した。
3.適量の水を加え、30分間室温で撹拌して混合した。
4.混合物に、カラギーナン、タンパク質、加工澱粉を添加して混合した。このとき、大きなダマが発生しないように撹拌し、容器内に粉体が沈殿していないことを確認した。
5.上記混合物に、アルカリ剤を混合した。
6.混合物を80度で30分間加熱した。
7.マイナス80度にて4日間冷凍した。
【0041】
得られたサンプルを約10mm角で切り出し、油脂の流出を防ぐためにクライオスタット(CM3050S,Leica社)を使用して、厚さ数μmの切片を作製した。
作製した切片をMASコートされたスライドガラス(SMAS-01,松浪硝子株式会社)に載せて、観察用サンプルとした。
そして、観察用サンプルを、オールインワン蛍光顕微鏡(BZ-X800,株式会社キーエンス)を使用して明視野にて観察した。その結果を図2に示す。
【0042】
図2の写真において、小さな空隙にオイルレッドにより染色された油脂が存在することが分かる。また、よりサイズの大きい空隙にも同様に油脂が充填されていたと推定されるが、オイルレッドにより染色された油脂による確認はできなかった。その理由は、サンプル切断時に刃に油脂が付いて流出し、空隙から油脂が流出してしまったためであると考えられる。
【0043】
[試験3]
本実施形態のエビ様食品と従来のエビ様食品を作製して、これらの破断応力と破断歪みを生エビと比較する試験を行った。
具体的には、生エビ(比較例3)、従来のエビ様食品(比較例4)、及び本実施形態のエビ様食品(実施例3)として、試験1と同じものを準備した。そして、それぞれから約10mm角のサンプルを切り出して、測定装置としてテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社)を用いて、破断応力(N)と破断歪み(%)を測定した。測定治具には3mmプランジャーを使用した。
【0044】
破断歪みの算出には、以下の式を使用した。
破断歪み(%)=(破断応力を示した時に治具が入った距離(mm))/(サンプルの大きさ(mm))×100
また、比較例3では2つのサンプル、比較例4では3つのサンプル、実施例3では2つのサンプルを使用し、それらについての測定結果の平均値を算出した。その結果を以下の表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示されるように、比較例3の生エビの破断応力と破断歪みは、それぞれ5.9N,53.5%であった。
一方、比較例4のエビ様食品の破断応力と破断歪みは、それぞれ3.7N,39.6%であった。
これに対して、実施例3のエビ様食品の破断応力と破断歪みは、それぞれ5.0N,53.6%であった。
この結果から、本実施形態のエビ様食品は、従来のエビ様食品に比較して、破断応力と破断歪みが、それぞれ生エビにより近いことが分かった。
【0047】
[試験4]
本実施形態のエビ様食品と従来のエビ様食品を作製して、これら食感を生エビと比較する官能評価試験を行った。
具体的には、生エビ(比較例5)、従来のエビ様食品(比較例6)、及び本実施形態のエビ様食品(実施例4)として、試験1と同じものを準備した。
【0048】
パネラーは、20~40代の男性4名とし、サンプルの品温を室温とした。
そして、以下の評価基準(間隔尺度 1~5段階評価)を採用し、生エビの評点を「5」として、パネラーに各サンプルを評価してもらい、その平均値を算出した。その結果を以下の表3に示す。
【0049】
<評価基準>
5点:本物のエビと全く同等と感じられる
4点:本物のエビとよく似ている
3点:少し異なるが本物のエビと似ている部分もある
2点:異なるが本物のエビと似ている部分もある
1点:本物のエビとは全く異なる
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示されるように、比較例5の生エビの全体の食感、プリプリ感、及び繊維感を、それぞれ5,5,5とする。
比較例6のエビ様食品の全体の食感、プリプリ感、及び繊維感は、それぞれ2,2.25,1.5であった。
これに対して、実施例4のエビ様食品の全体の食感、プリプリ感、及び繊維感は、それぞれ3,3.25,2であった。
この結果から、本実施形態のエビ様食品は、従来のエビ様食品に比較して、全体の食感、プリプリ感、及び繊維感が、それぞれ生エビにより近いことが分かった。
【0052】
本発明は、以上の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、本実施形態のエビ様食品にさらにその他の成分を加えるなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、生エビの代替食品として、エビ様食品を製造する場合に好適に利用することが可能である。
図1
図2