(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094629
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240703BHJP
F16H 57/021 20120101ALI20240703BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20240703BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16H57/04 P
F16H57/021
F16H57/04 J
B60L15/00 Z
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211297
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】勝田 巧也
(72)【発明者】
【氏名】川村 和也
(72)【発明者】
【氏名】才木 美香
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
【テーマコード(参考)】
3J063
5H125
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB12
3J063AB13
3J063AC01
3J063AC11
3J063BA11
3J063CA01
3J063CA05
3J063CB02
3J063CD45
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD43
3J063XD47
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE14
3J063XE17
3J063XE18
3J063XE31
3J063XE38
5H125AA01
5H125FF01
5H125FF22
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD04
5H607EE33
5H607EE34
5H607EE36
(57)【要約】
【課題】ケースの第1収容室及び第2収容室のいずれかに油が偏ることを抑制可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】ケース9は、回転電機が収容された第1収容室C1と、差動歯車機構が収容された第2収容室C2と、収容室C1,C2を軸方向Lに区画する区画壁部91と、収容室C1,C2を連通する連通油路と、を備え、吸入口51は、第1収容室C1に配置され、連通油路は、第2収容室C2に配置される流入部と、第1収容室C1に配置される流出部と、を備え、車両に重力加速度以外の加速度が作用せず車両の車体が水平な状態におけるケース9内の油面を定常油面OL1とし、第1収容室C1の側から第2収容室C2の側に向かうに従って上側へ向かうように最も傾斜した状態の油面を特定傾斜油面OL2として、流入部と流出部とを結ぶ仮想線Iの定常油面OL1に対する角度θ1が、特定傾斜油面OL2の定常油面OL1に対する角度θ2以上である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを備えた回転電機と、
車両が備える車輪にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機のトルクを一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記ロータと前記差動歯車機構との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記回転電機、前記差動歯車機構、及び前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケース内の油を吸入口から吸入して吐出することで前記回転電機に冷却用の油を供給するオイルポンプと、を備え、
前記回転電機と前記差動歯車機構とが同軸上に配置された車両用駆動装置であって、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向として、
前記ケースは、前記回転電機が収容された第1収容室と、前記差動歯車機構が収容された第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを前記軸方向に区画する区画壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する連通油路と、を備え、
前記吸入口は、前記第1収容室に配置され、
前記連通油路は、前記第2収容室に配置されて油が流入する流入部と、前記第1収容室に配置されて油が流出する流出部と、を備え、
前記車両に重力加速度以外の加速度が作用せず前記車両の車体が水平な状態における前記ケース内の油面を定常油面とし、前記第1収容室の側から前記第2収容室の側に向かうに従って上側へ向かうように最も傾斜した状態の前記油面を特定傾斜油面として、
前記流入部と前記流出部とを結ぶ仮想線の前記定常油面に対する角度が、前記特定傾斜油面の前記定常油面に対する角度以上である、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転軸心は、前記車両の幅方向に沿うように配置され、
前記流入部は、前記回転軸心よりも前記車両の前方側に配置され、上側を向いて開口するように形成されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記回転軸心は、前記車両の幅方向に沿うように配置され、
前記流入部は、前記回転軸心よりも前記車両の後方側に配置され、下側を向いて開口するように形成されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記吸入口と前記流出部とが、前記区画壁部に設けられ、
前記流出部と前記吸入口とを接続する油路が、前記区画壁部に沿って形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
ロータを備えた回転電機と、
車両が備える車輪にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機のトルクを一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記ロータと前記差動歯車機構との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記回転電機、前記差動歯車機構、及び、前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケース内の油を吸入口から吸入して吐出することで前記回転電機に冷却用の油を供給するオイルポンプと、を備え、
前記回転電機と前記差動歯車機構とが同軸上に配置された車両用駆動装置であって、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向として、
前記ケースは、前記回転電機が収容された第1収容室と、前記差動歯車機構が収容された第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを前記軸方向に区画する区画壁部と、を備え、
前記吸入口は、前記第1収容室に配置され、
前記区画壁部には、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する連通口と、前記連通口を通る油の流れを規制する規制部材と、が設けられ、
前記規制部材は、前記第1収容室から前記第2収容室への油の流れを規制し、前記第2収容室から前記第1収容室への油の流れを許容するように構成されている、車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、車両が備える車輪にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材と、回転電機のトルクを一対の出力部材に分配する差動歯車機構と、回転電機のロータと差動歯車機構との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、それらを収容するケースと、当該ケース内の油を吸入口から吸入して吐出することで回転電機に冷却用の油を供給するオイルポンプと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置(1)が備えるケース(6)には、差動歯車機構(5)により掻き上げられた油を回転電機(2)に対して径方向の内側から供給する第1油路(91)と、オイルポンプ(96)から吐出された油を回転電機(2)に対して径方向の外側から供給する第2の油路(92)とが形成されている。
【0004】
ケース(6)の内部空間は、区画壁部(61c)によって、回転電機(2)が収容された第1収容室(81)と、差動歯車機構(5)が収容された第2収容室(82)とに区画されている。区画壁部(61c)には、第1収容室(81)と第2収容室(82)とを連通する連通口(68)が形成されている。ケース(6)内の油は、連通口(68)を通って、第1収容室(81)と第2収容室(82)との間で流動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の車両用駆動装置(1)では、車両の旋回に伴う慣性力や車両の傾き等により、第1収容室(81)及び第2収容室(82)のいずれかに油が偏ることがある。例えば、第1収容室(81)の側に油が偏り、第2収容室(82)の油が少なくなると、差動歯車機構(5)によって掻き上げられる油が減少し、第1油路(91)を介した回転電機(2)への油の供給が適切に行われない可能性があった。また、第1収容室(81)にオイルポンプ(96)の吸入口が配置されているような場合、第2収容室(82)の側に油が偏り、第1収容室(81)の油が少なくなると、オイルポンプ(96)による油の吸入が不十分となり、第2油路(92)を介した回転電機(2)への油の供給が適切に行われない可能性があった。
【0007】
そこで、ケースの第1収容室及び第2収容室のいずれかに油が偏ることを抑制可能な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
ロータを備えた回転電機と、
車両が備える車輪にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機のトルクを一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記ロータと前記差動歯車機構との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記回転電機、前記差動歯車機構、及び前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケース内の油を吸入口から吸入して吐出することで前記回転電機に冷却用の油を供給するオイルポンプと、を備え、
前記回転電機と前記差動歯車機構とが同軸上に配置された車両用駆動装置であって、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向として、
前記ケースは、前記回転電機が収容された第1収容室と、前記差動歯車機構が収容された第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを前記軸方向に区画する区画壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する連通油路と、を備え、
前記吸入口は、前記第1収容室に配置され、
前記連通油路は、前記第2収容室に配置されて油が流入する流入部と、前記第1収容室に配置されて油が流出する流出部と、を備え、
前記車両に重力加速度以外の加速度が作用せず前記車両の車体が水平な状態における前記ケース内の油面を定常油面とし、前記第1収容室の側から前記第2収容室の側に向かうに従って上側へ向かうように最も傾斜した状態の前記油面を特定傾斜油面として、
前記流入部と前記流出部とを結ぶ仮想線の前記定常油面に対する角度が、前記特定傾斜油面の前記定常油面に対する角度以上である点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、特定傾斜油面が形成される状態において、流入部が流出部に対して上側に配置されることになる。これにより、ケース内の油面の状態に関わらず、連通油路の流入部に流入した第2収容室の油を、連通油路の流出部から第1収容室に流出させることができる。そのため、第1収容室に配置されたオイルポンプの吸入口から油が吸入されることによる、第1収容室の油面の低下を抑制することができる。したがって、ケースの第1収容室及び第2収容室のいずれかに油が偏ることを抑制することができる。
【0010】
また、上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
ロータを備えた回転電機と、
車両が備える車輪にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機のトルクを一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記ロータと前記差動歯車機構との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
前記回転電機、前記差動歯車機構、及び、前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケース内の油を吸入口から吸入して吐出することで前記回転電機に冷却用の油を供給するオイルポンプと、を備え、
前記回転電機と前記差動歯車機構とが同軸上に配置された車両用駆動装置であって、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向として、
前記ケースは、前記回転電機が収容された第1収容室と、前記差動歯車機構が収容された第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを前記軸方向に区画する区画壁部と、を備え、
前記吸入口は、前記第1収容室に配置され、
前記区画壁部には、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する連通口と、前記連通口を通る油の流れを規制する規制部材と、が設けられ、
前記規制部材は、前記第1収容室から前記第2収容室への油の流れを規制し、前記第2収容室から前記第1収容室への油の流れを許容するように構成されている点にある。
【0011】
この特徴構成によれば、第1収容室の油面が第2収容室の油面よりも高い場合には、規制部材が第1収容室から第2収容室への油の流れを規制する。一方、第2収容室の油面が第1収容室の油面よりも高い場合には、規制部材が第2収容室から第1収容室への油の流れを許容する。これにより、第1収容室に配置されたオイルポンプの吸入口から油が吸入されることによる、第1収容室の油面の低下を抑制することができる。したがって、ケースの第1収容室及び第2収容室のいずれかに油が偏ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
【
図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【
図3】軸方向における第1収容室の側から見たケースの内部を示す図
【
図5】軸方向を基準として第1収容室の側から第2収容室の側に向かうに従って上側へ向かうようにケース内の油面が最も傾斜した状態を示す模式図
【
図7】他の実施形態に係る流入部の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用駆動装置100は、ステータ11及びロータ12を備えた回転電機1と、車両が備える車輪WH(
図2参照)にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材2と、回転電機1のトルクを一対の出力部材2に分配する差動歯車機構3と、ロータ12と差動歯車機構3との間の動力伝達を行う動力伝達機構4と、を備えている。
【0014】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0015】
以下の説明では、ロータ12の回転軸心である軸心Xに沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、軸心Xに直交する方向を「径方向R」とする。そして、径方向Rにおいて、軸心Xの側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。
【0016】
回転電機1と差動歯車機構3とは、同軸上に配置されている。つまり、差動歯車機構3が、軸心X上に配置されている。本実施形態では、一対の出力部材2及び動力伝達機構4も、軸心X上に配置されている。そして、回転電機1、動力伝達機構4、及び差動歯車機構3は、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて記載の順に配置されている。
【0017】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機1、差動歯車機構3、及び動力伝達機構4を収容するケース9を更に備えている。
【0018】
ケース9は、第1収容室C1と、第2収容室C2と、を備えている。第1収容室C1には、回転電機1が収容されている。第2収容室C2には、差動歯車機構3が収容されている。本実施形態では、第2収容室C2には、動力伝達機構4が更に収容されている。
【0019】
また、ケース9は、区画壁部91を備えている。本実施形態では、ケース9は、周壁部92と、第1カバー部93と、第2カバー部94と、を備えている。
【0020】
区画壁部91は、第1収容室C1と第2収容室C2とを軸方向Lに区画するように形成されている。本実施形態では、区画壁部91は、周壁部92から径方向内側R1に延在するように形成されている。
図1に示す例では、区画壁部91は、周壁部92と一体的に形成されている。
【0021】
周壁部92は、軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2が開口した筒状に形成されている。周壁部92は、回転電機1、一対の出力部材2、差動歯車機構3、及び動力伝達機構4を径方向外側R2から覆うように配置されている。
【0022】
第1カバー部93は、周壁部92の軸方向第1側L1の開口を塞ぐように形成されている。第1カバー部93は、周壁部92に対して軸方向第1側L1から接合されている。
図1に示す例では、第1カバー部93は、周壁部92に対してボルトにより締結されている。
【0023】
第2カバー部94は、周壁部92の軸方向第2側L2の開口を塞ぐように形成されている。第2カバー部94は、周壁部92に対して軸方向第2側L2から接合されている。
図1に示す例では、第2カバー部94は、周壁部92に対してボルトにより締結されている。
【0024】
本実施形態では、第1収容室C1は、区画壁部91、周壁部92、及び第1カバー部93によって形成されている。つまり、ケース9の内部における区画壁部91と周壁部92と第1カバー部93とによって囲まれた空間が、第1収容室C1として形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、第2収容室C2は、区画壁部91、周壁部92、及び第2カバー部94によって形成されている。つまり、ケース9の内部における区画壁部91と周壁部92と第2カバー部94とによって囲まれた空間が、第2収容室C2として形成されている。
【0026】
回転電機1は、一対の車輪WH(
図2参照)の駆動力源として機能する。回転電機1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機1は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機1は、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機1は、一対の車輪WHの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0027】
図1に示すように、回転電機1のステータ11は、円筒状のステータコア11aを備えている。ステータコア11aは、ケース9(ここでは、周壁部92)に固定されている。回転電機1のロータ12は、円筒状のロータコア12aを備えている。ロータコア12aは、ステータコア11aに対して回転可能に支持されている。本実施形態では、ロータコア12aは、ロータコア12aと同軸の筒状に形成されている。そして、ロータコア12aは、ロータ軸12bと一体的に回転するように連結されている。
【0028】
本実施形態では、回転電機1はインナロータ型の回転電機である。そのため、ロータコア12aが、ステータコア11aに対して径方向内側R1に配置されている。また、ロータ軸12bが、ロータコア12aに対して径方向内側R1に配置されている。
【0029】
また、本実施形態では、回転電機1は回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータ11は、ステータコイルを更に備えている。本実施形態では、ステータコイルは、ステータコア11aに対して軸方向Lの両側に突出したコイルエンド部11bが形成されるように、ステータコア11aに巻装されている。また、図示は省略するが、ロータコア12aには、永久磁石が設けられている。
【0030】
本実施形態では、動力伝達機構4は、サンギヤSGと、キャリヤCRと、第1リングギヤRG1と、第2リングギヤRG2と、を備えた遊星歯車機構である。そして、動力伝達機構4は、ロータ12の回転を減速して差動歯車機構3に伝達する減速機として機能する。
【0031】
本実施形態では、サンギヤSGは、ロータ12と一体的に回転するように連結されている。
図1に示す例では、サンギヤSGは、溶接によりロータ軸12bと一体的に回転するように連結されている。
【0032】
本実施形態では、キャリヤCRは、第1ピニオンギヤPG1及び第2ピニオンギヤPG2を回転自在に支持するように構成されている。第1ピニオンギヤPG1と第2ピニオンギヤPG2とは、互いに一体的に回転するように連結されている。第1ピニオンギヤPG1は、サンギヤSGと第1リングギヤRG1とに噛み合っている。第2ピニオンギヤPG2は、第2リングギヤRG2に噛み合っている。本実施形態では、第2ピニオンギヤPG2は、第1ピニオンギヤPG1よりも小径に形成されている。
【0033】
本実施形態では、第1リングギヤRG1は、ケース9に固定されている。
図1に示す例では、第1リングギヤRG1は、ケース9の区画壁部91に固定されている。
【0034】
本実施形態では、差動歯車機構3は、差動ケース31と、軸部材32と、第1傘歯車33と、一対の第2傘歯車34と、を備えている。
【0035】
差動ケース31は、軸心Xを中心として回転するように構成されている。差動ケース31は、差動歯車機構3の入力要素である。本実施形態では、差動ケース31は、動力伝達機構4の第2リングギヤRG2と一体的に回転するように連結されている。
【0036】
軸部材32は、差動ケース31と一体的に回転するように、差動ケース31に支持されている。軸部材32は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、軸部材32は、径方向Rに沿って放射状に形成された構成(例えば、軸方向Lに沿う軸方向視で、十字状に形成された構成)となっている。
【0037】
第1傘歯車33は、軸部材32によって回転自在に支持されている。より詳細には、第1傘歯車33は、その軸心を中心として回転(自転)自在、かつ、軸心Xを中心として回転(公転)自在に構成されている。本実施形態では、複数の第1傘歯車33が、それらの公転方向に沿って配置されている。
【0038】
一対の第2傘歯車34は、軸部材32に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されている。一対の第2傘歯車34は、第1傘歯車33に噛み合っている。一対の第2傘歯車34は、軸心Xを中心として回転するように構成されている。一対の第2傘歯車34は、それぞれ一対の出力部材2と一体的に回転するように連結されている。
【0039】
以下の説明では、一対の出力部材2のうち、軸方向第1側L1に配置されている方を「第1出力部材2A」とし、軸方向第2側L2に配置されている方を「第2出力部材2B」とする。
【0040】
本実施形態では、第1出力部材2Aは、出力軸部21Aと、第1連結部22Aと、を備えている。
【0041】
出力軸部21Aは、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、出力軸部21Aは、動力伝達機構4のサンギヤSG及び回転電機1のロータ軸12bに対して径方向内側R1を軸方向Lに貫通するように配置されている。また、出力軸部21Aは、ケース9の第1カバー部93を軸方向Lに貫通するように配置されている。また、本実施形態では、出力軸部21Aは、軸方向第1側L1の車輪WHに駆動連結された第1ドライブシャフトDS1(
図2参照)と一体的に回転するように連結されている。
【0042】
第1連結部22Aは、出力軸部21Aと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1連結部22Aは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第1連結部22Aは、出力軸部21Aを径方向外側R2から覆うように配置されている。
図1に示す例では、第1連結部22Aに対して径方向内側R1に軸方向第1側L1から出力軸部21Aが挿入され、それらがスプライン係合によって互いに連結されている。
【0043】
本実施形態では、第2出力部材2Bは、第2連結部22Bを備えている。第2連結部22Bは、軸方向第2側L2の車輪WHに駆動連結された第2ドライブシャフトDS2(
図2参照)と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2連結部22Bは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第2連結部22Bは、ケース9の第2カバー部94を軸方向Lに貫通するように配置されている。
図1に示す例では、第2連結部22Bは、当該第2連結部22Bに対して径方向内側R1に軸方向第2側L2から第2ドライブシャフトDS2が挿入され、それらがスプライン係合によって互いに連結するように構成されている。
【0044】
図3は、軸方向Lにおける第1収容室C1の側、つまり、軸方向第1側L1から見たケース9の内部を示す図である。なお、
図3においては、説明の便宜上、ケース9の第1カバー部93、及び回転電機1等の図示を省略している。
【0045】
以下の説明では、車両用駆動装置100が搭載される車両の前後方向を「前後方向D」とする。そして、車両の前方側を「前方側D1」とし、車両の後方側を「後方側D2」とする。また、車両用駆動装置100が搭載される車両の幅方向を「幅方向W」とする。幅方向Wは、軸方向Lに沿う方向である。また、鉛直方向を「上下方向V」とする。そして、鉛直上側を「上側V1」とし、鉛直下側を「下側V2」とする。
【0046】
図3に示すように、車両用駆動装置100は、車両に搭載された状態において、軸心Xが前後方向D及び上下方向Vに直交するように配置されている。
【0047】
車両用駆動装置100は、オイルポンプ5を更に備えている。オイルポンプ5は、ケース9内の油を吸入口51から吸入して吐出することで、回転電機1に冷却用の油を供給するポンプである。本実施形態では、オイルポンプ5は、第1収容室C1に配置されている。そして、オイルポンプ5は、ケース9の区画壁部91に固定されている。また、本実施形態では、オイルポンプ5により吐出された油が、区画壁部91に設けられた供給部材52から回転電機1の一対のコイルエンド部11b(
図1参照)に滴下されるように構成されている。なお、本実施形態では、オイルポンプ5は、電動モータ(図示を省略)により駆動される電動式のポンプである。
【0048】
吸入口51は、第1収容室C1に配置されている。本実施形態では、吸入口51は、区画壁部91における軸方向第1側L1を向く面に開口している。そして、吸入口51は、当該吸入口51から吸入された油に含まれる異物を除去するストレーナに連通している。
【0049】
図4は、後方側D2から見たケース9の内部を示す断面図である。なお、
図4においては、説明の便宜上、ケース9の第1カバー部93及び第2カバー部94、回転電機1、差動歯車機構3、並びに動力伝達機構4等の図示を省略している。
【0050】
図4に示すように、ケース9は、第1収容室C1と第2収容室C2とを連通する連通油路95を更に備えている。連通油路95は、第2収容室C2から第1収容室C1に油が流動する油路である。連通油路95は、第2収容室C2に配置されて油が流入する流入部95aと、第1収容室C1に配置されて油が流出する流出部95bと、を備えている。
【0051】
本実施形態では、連通油路95は、傾斜面96、下面97、上面98、及び一対の側面99(
図3参照)により形成されている。
【0052】
傾斜面96は、第1収容室C1の側から第2収容室C2の側に向かうに従って上側V1へ向かうように、軸方向Lに対して傾斜している。傾斜面96は、区画壁部91から第2収容室C2の側に向かうように延在している。下面97は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。下面97は、区画壁部91から第1収容室C1の側に向かうように延在している。傾斜面96及び下面97のそれぞれは、上側V1を向くように形成されている。傾斜面96と下面97とは、区画壁部91を軸方向Lに貫通した状態で、互いに連続するように形成されている。
【0053】
上面98は、傾斜面96及び下面97に対向するように下側V2を向く面である。上面98は、区画壁部91を軸方向Lに貫通するように、軸方向Lに沿って延在している。
【0054】
図3に示すように、一対の側面99は、互いに前後方向Dに対向するように形成されている。一対の側面99は、傾斜面96と上面98とを接続するように、上下方向Vに沿って延在している。一対の側面99は、傾斜面96における前方側D1及び後方側D2の端部から上側V1に延在するように形成されている。
【0055】
本実施形態では、流入部95aは、傾斜面96と上面98と一対の側面99とによって形成された開口である。そして、流出部95bは、下面97と上面98と一対の側面99とによって形成された開口である。
【0056】
本実施形態では、流入部95aは、上側V1を向いて開口するように形成されている。そのため、差動歯車機構3の回転により掻き上げられた第2収容室C2の油が、流入部95aに流入する。
【0057】
図5は、軸方向Lを基準として第1収容室C1の側から第2収容室C2の側に向かうに従って上側V1へ向かうように、ケース9内の油面が最も傾斜した状態を示す模式図である。ここで、「最も傾斜した状態」とは、車両用駆動装置100が搭載された車両の車体の傾斜による重力加速度の変化と、当該車両の走行による加速度の変化との合計で、想定される範囲で最も大きくケース9内の油面が傾いた状態である。また、ここでの「上側V1」は、軸方向Lを基準としたものであり、軸方向Lが水平に配置されている状態で鉛直上側と一致する。
【0058】
以下の説明では、車両に重力加速度以外の加速度が作用せず、当該車両の車体が水平な状態におけるケース9内の油面を「定常油面OL1」とする。そして、軸方向Lを基準として第1収容室C1の側から第2収容室C2の側に向かうに従って上側V1へ向かうように最も傾斜した状態の油面を「特定傾斜油面OL2」とする。
図5は、車体の傾斜による重力加速度の変化のみによって油面が特定傾斜油面OL2となっている状態を示しているが、車両の走行による加速度の変化がある場合には、車両用駆動装置100が
図5に示す程度に傾斜していなくても油面が特定傾斜油面OL2となり得る。
【0059】
図5に示すように、仮想線Iの定常油面OL1に対する角度θ1は、特定傾斜油面OL2の定常油面OL1に対する角度θ2以上である。
図4に示すように、仮想線Iは、流入部95aと流出部95bとを結ぶ仮想線である。本実施形態では、仮想線Iは、傾斜面96の軸方向第2側L2の端部と、下面97の軸方向第1側L1の端部とを結ぶ仮想線である。このように、本実施形態では、仮想線Iは、連通油路95の底面(本例では、傾斜面96及び下面97によって形成される面)における軸方向Lの両端部を結ぶ仮想線である。そして、本実施形態では、連通油路95の底面の全体が、仮想線Iと同じかそれよりも下側V2に配置されており、連通油路95の底面は仮想線Iよりも上側V1に突出した部分を有していない。
【0060】
以上のように、車両用駆動装置100は、
ロータ12を備えた回転電機1と、
車両が備える車輪WHにそれぞれが駆動連結される一対の出力部材2と、
回転電機1のトルクを一対の出力部材2に分配する差動歯車機構3と、
ロータ12と差動歯車機構3との間の動力伝達を行う動力伝達機構4と、
回転電機1、差動歯車機構3、及び動力伝達機構4を収容するケース9と、
ケース9内の油を吸入口51から吸入して吐出することで回転電機1に冷却用の油を供給するオイルポンプ5と、を備え、
回転電機1と差動歯車機構3とが同軸上に配置された車両用駆動装置100であって、
ケース9は、回転電機1が収容された第1収容室C1と、差動歯車機構3が収容された第2収容室C2と、第1収容室C1と第2収容室C2とを軸方向Lに区画する区画壁部91と、第1収容室C1と第2収容室C2とを連通する連通油路95と、を備え、
吸入口51は、第1収容室C1に配置され、
連通油路95は、第2収容室C2に配置されて油が流入する流入部95aと、第1収容室C1に配置されて油が流出する流出部95bと、を備え、
車両に重力加速度以外の加速度が作用せず車両の車体が水平な状態におけるケース9内の油面を定常油面OL1とし、第1収容室C1の側から第2収容室C2の側に向かうに従って上側へ向かうように最も傾斜した状態の油面を特定傾斜油面OL2として、
流入部95aと流出部95bとを結ぶ仮想線Iの定常油面OL1に対する角度θ1が、特定傾斜油面OL2の定常油面OL1に対する角度θ2以上である。
【0061】
この構成によれば、特定傾斜油面OL2が形成される状態において、流入部95aが流出部95bに対して上側V1に配置されることになる。これにより、ケース9内の油面の状態に関わらず、連通油路95の流入部95aに流入した第2収容室C2の油を、連通油路95の流出部95bから第1収容室C1に流出させることができる。そのため、第1収容室C1に配置されたオイルポンプ5の吸入口51から油が吸入されることによる、第1収容室C1の油面の低下を抑制することができる。したがって、ケース9の第1収容室C1及び第2収容室C2のいずれかに油が偏ることを抑制することができる。
【0062】
図4に示すように、区画壁部91には、第1収容室C1と第2収容室C2とを連通する連通口6と、当該連通口6を通る油の流れを規制する規制部材7と、が設けられている。
【0063】
連通口6は、区画壁部91を軸方向Lに貫通するように形成されている。
図3に示すように、本実施形態では、連通口6は、軸心Xよりも後方側D2に配置されている。そして、連通口6は、軸心Xよりも下側V2に配置されている。
図3に示す例では、連通口6は、連通油路95の下面97よりも下側V2に配置されている。
【0064】
規制部材7は、第1収容室C1から第2収容室C2への油の流れを規制し、第2収容室C2から第1収容室C1への油の流れを許容するように構成されている。本実施形態では、規制部材7は、蓋部71と、固定部72と、蝶番部73と、を備えている。蓋部71、固定部72、及び蝶番部73は、第1収容室C1に配置されている。
【0065】
蓋部71は、軸方向Lに沿う軸方向視で、連通口6よりも大きい面積を有している。本実施形態では、蓋部71の一部が、第2収容室C2の側に突出し、連通口6を塞ぐように形成されている。
【0066】
固定部72は、区画壁部91に固定されている。本実施形態では、固定部72は、区画壁部91に対して第1収容室C1の側からボルトにより締結されている。
【0067】
蝶番部73は、蓋部71と固定部72とを接続するように形成されている。蝶番部73は、固定部72に対して蓋部71が揺動し、連通口6を開閉するように構成されている。
【0068】
本実施形態では、規制部材7は、車両に重力加速度以外の加速度が作用せず車両の車体が水平な状態で、蓋部71が連通口6を塞がないように区画壁部91から離間した第1姿勢(
図4において実線で示す蓋部71参照)となるように構成されている。例えば、上記の状態で規制部材7が第1姿勢となるように、蓋部71の重心が設定される。蝶番部73に、上記の状態で規制部材7の姿勢を第1姿勢とするための付勢部材が設けられる構成としても良い。
【0069】
第1収容室C1の油面が第2収容室C2の油面よりも高い場合、油によって蓋部71が区画壁部91に向けて押圧され、蓋部71が連通口6を塞ぐように区画壁部91に接近した姿勢(
図4において2点鎖線で示す蓋部71参照)となる。その結果、第1収容室C1から第2収容室C2への油の流れが、蓋部71によって遮断される。
【0070】
一方、第2収容室C2の油面が第1収容室C1の油面よりも高い場合、油によって蓋部71が区画壁部91から離れるように押圧され、蓋部71が第1姿勢となる。その結果、第2収容室C2から第1収容室C1への油の流れが許容される。
【0071】
以上のように、車両用駆動装置100は、
ロータ12を備えた回転電機1と、
車両が備える車輪WHにそれぞれが駆動連結される一対の出力部材2と、
回転電機1のトルクを一対の出力部材2に分配する差動歯車機構3と、
ロータ12と差動歯車機構3との間の動力伝達を行う動力伝達機構4と、
回転電機1、差動歯車機構3、及び、動力伝達機構4を収容するケース9と、
ケース9内の油を吸入口51から吸入して吐出することで回転電機1に冷却用の油を供給するオイルポンプ5と、を備え、
回転電機1と差動歯車機構3とが同軸上に配置された車両用駆動装置100であって、
ケース9は、回転電機1が収容された第1収容室C1と、差動歯車機構3が収容された第2収容室C2と、第1収容室C1と第2収容室C2とを軸方向Lに区画する区画壁部91と、を備え、
吸入口51は、第1収容室C1に配置され、
区画壁部91には、第1収容室C1と第2収容室C2とを連通する連通口6と、当該連通口6を通る油の流れを規制する規制部材7と、が設けられ、
規制部材7は、第1収容室C1から第2収容室C2への油の流れを規制し、第2収容室C2から第1収容室C1への油の流れを許容するように構成されている。
【0072】
この構成によれば、第1収容室C1の油面が第2収容室C2の油面よりも高い場合には、規制部材7が第1収容室C1から第2収容室C2への油の流れを規制する。一方、第2収容室C2の油面が第1収容室C1の油面よりも高い場合には、規制部材7が第2収容室C2から第1収容室C1への油の流れを許容する。これにより、第1収容室C1に配置されたオイルポンプ5の吸入口51から油が吸入されることによる、第1収容室C1の油面の低下を抑制することができる。したがって、ケース9の第1収容室C1及び第2収容室C2のいずれかに油が偏ることを抑制することができる。
【0073】
図3に示すように、本実施形態では、流出部95bと吸入口51とを接続する接続油路Pが、区画壁部91に沿って形成されている。
図3に示す例では、吸入口51が、前後方向Dの中央部であって、流出部95bを形成する下面97よりも下側V2に配置されている。また、流出部95bが、吸入口51よりも前方側D1に配置されている。そして、接続油路Pは、連通油路95を通って第1収容室C1に供給された油が、下面97から区画壁部91に沿って吸入口51に向かうように形成されている。
【0074】
このように、本実施形態では、吸入口51と流出部95bとが、区画壁部91に設けられ、
流出部95bと吸入口51とを接続する接続油路Pが、区画壁部91に沿って形成されている。
【0075】
この構成によれば、連通油路95の流出部95bから流出した油を、区画壁部91に沿って吸入口51に流動させ易い。したがって、オイルポンプ5の吸入口51から吸入される油の量を充分に確保し易い。
【0076】
図6に示すように、本実施形態では、流入部95aは、軸心Xよりも車両の前方側D1に配置されている。また、上述したように、本実施形態では、連通油路95の流入部95aは、上側V1を向いて開口するように形成されている。
図6に示す例では、流入部95aは、差動歯車機構3の差動ケース31よりも前方側D1に配置されている。更に、流入部95aは、差動ケース31の回転軌跡における上側V1の端部よりも下側V2に配置されている。
【0077】
このように、本実施形態では、軸心Xは、車両の幅方向Wに沿うように配置され、
流入部95aは、軸心Xよりも車両の前方側D1に配置され、上側V1を向いて開口するように形成されている。
【0078】
この構成によれば、車両が前進している状態での差動歯車機構3の回転により掻き上げられた第2収容室C2の油を、上側V1を向いて開口する流入部95aに流入させ易い。したがって、連通油路95を通して第2収容室C2から第1収容室C1に流動する油の量を充分に確保し易い。
【0079】
また、上記構成に代えて、
図7に示すように、流入部95aが、軸心Xよりも車両の後方側D2に配置され、下側V2を向いて開口するように形成された構成としても良い。
【0080】
この構成によれば、車両が前進している状態での差動歯車機構3の回転により、第2収容室C2に貯留した油に、下側V2を向いて開口する流入部95aに向けた流れを生じさせることができる。これにより、連通油路95の流入部95aに油を流入させ易い。したがって、連通油路95を通して第2収容室C2から第1収容室C1に流動する油の量を充分に確保し易い。
【0081】
また、図示は省略するが、
図6に示す構成に代えて、流入部95aが、軸心Xよりも車両の前方側D1に配置され、下側V2を向いて開口するように形成された構成としても良い。この場合であっても、傾斜による油面の上昇によって流入部95aから連通油路95に油を導入させて、第2収容室C2から第1収容室C1に油を流動させることができる。
【0082】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、吸入口51が、区画壁部91における軸方向第1側L1を向く面に開口し、ストレーナに連通した構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、吸入口51が第1収容室C1に配置されたストレーナの吸入口であっても良い。
【0083】
(2)上記の実施形態では、動力伝達機構4がロータ12の回転を減速して差動歯車機構3に伝達する減速機である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、動力伝達機構4がロータ12の回転を増速して差動歯車機構3に伝達する増速機であっても良い。或いは、動力伝達機構4が、選択された変速段に応じた変速比でロータ12の回転を変速して差動歯車機構3に伝達する変速機であっても良い。また、動力伝達機構4が、ロータ12の回転をそのまま差動歯車機構3に伝達する構成であっても良い。
【0084】
(3)上記の実施形態では、ケース9が連通油路95を備えると共に、区画壁部91に連通口6と規制部材7とが設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケース9が連通油路95を備えるが、区画壁部91に連通口6と規制部材7とが設けられていない構成であっても良い。或いは、区画壁部91に連通口6と規制部材7とが設けられているが、ケース9が連通油路95を備えていない構成としても良い。
【0085】
(4)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示に係る技術は、回転電機と、車両が備える車輪にそれぞれが駆動連結される一対の出力部材と、回転電機のトルクを一対の出力部材に分配する差動歯車機構と、回転電機のロータと差動歯車機構との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、それらを収容するケースと、当該ケース内の油を吸入口から吸入して吐出することで回転電機に冷却用の油を供給するオイルポンプと、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
100:車両用駆動装置、1:回転電機、12:ロータ、2:出力部材、3:差動歯車機構、4:動力伝達機構、5:オイルポンプ、51:吸入口、6:連通口、7:規制部材、9:ケース、91:区画壁部、95:連通油路、P:接続油路(油路)、WH:車輪、X:軸心(回転軸心)、L:軸方向、D1:前方側、D2:後方側、W:幅方向、V1:上側、V2:下側