(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094630
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】シート状接着剤、ダイシングダイボンドフィルム、及び、電子部品装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240703BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240703BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240703BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240703BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L21/78 M
C09J7/35
C09J133/14
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211298
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大西 謙司
(72)【発明者】
【氏名】畠山 義治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直子
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004FA05
4J040DF021
4J040DF061
4J040GA07
4J040GA11
4J040NA20
5F047BA34
5F047BA35
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5F063EE17
5F063EE18
5F063EE42
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】 良好な透明性を有しつつ、経時的な着色、及び、熱硬化処理による弾性率の極端な低下が抑制され、製品としての信頼性が比較的高いシート状接着剤などを提供することを課題としている。
【解決手段】 グリシジル基を分子中に有する第1アクリルポリマーと、カルボキシ基を分子中に有する第2アクリルポリマーとを含む、シート状接着剤、及び、該シート状接着剤を備えたダイシングダイボンドフィルムなどを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシジル基を分子中に有する第1アクリルポリマーと、カルボキシ基を分子中に有する第2アクリルポリマーとを含む、シート状接着剤。
【請求項2】
前記第1アクリルポリマーのエポキシ当量が、150以上1300未満であり、
前記第1アクリルポリマーが、前記グリシジル基を含有するグリシジル(メタ)アクリレート単位を分子中に有する、請求項1に記載のシート状接着剤。
【請求項3】
前記第1アクリルポリマーのガラス転移点が、-10℃以上30℃以下であるか、又は、前記第2アクリルポリマーのガラス転移点が、30℃以上80℃以下である、請求項1又は2に記載のシート状接着剤。
【請求項4】
メタルハライドランプを500時間照射する前と照射した後とで、色差計で測定したときのL*A*b*色空間のb*の差(Δb*)が、0.2以下である、請求項1又は2に記載のシート状接着剤。
【請求項5】
熱硬化処理された後の260℃におけるせん断接着力が1MPa以上10MPa以下である、請求項1又は2に記載のシート状接着剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のシート状接着剤と、該シート状接着剤の一方の面に重なるダイシングテープとを備える、ダイシングダイボンドフィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のシート状接着剤を備える、電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光半導体装置などの電子部品装置を製造するときに使用され得るシート状接着剤、該シート状接着剤を備えるダイシングダイボンドフィルム、及び、上記シート状接着剤を備える電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品装置の製造において使用されるダイシングダイボンドフィルムが知られている。この種のダイシングダイボンドフィルムは、例えば、ダイシングテープと、該ダイシングテープに積層され且つウエハに接着されるシート状接着剤と、を備える。シート状接着剤は、ダイボンドシートと言われる場合がある。ダイシングテープは、基材層と、シート状接着剤に接している粘着層とを有する。この種のダイシングダイボンドフィルムは、光半導体装置などの電子部品装置の製造において、例えば下記のように使用される。
【0003】
電子部品装置を製造する方法は、例えば、発光素子又は受光素子などの光半導体素子を基板などの被着体に固定する工程、光学部材を分割することによって光学部材を小片化し、小片化された光学部材(フィルター又はレンズなど)を取り出す小片化工程、及び、小片化された光学部材と光半導体素子とを組み合わせて組立てを行う組立工程などを備える。
【0004】
上記の小片化工程は、例えば、薄い板状の光学部材の片面をダイシングテープ上のシート状接着剤に重ね合わせて、シート状接着剤を介して光学部材をダイシングテープに固定するマウント工程と、光学部材をシート状接着剤とともに小片化することによって多数の光学部材の小片を得るダイシング工程と、ダイシングテープを面方向に引き伸ばして、隣り合う小片化された光学部材の間隔を広げるエキスパンド工程と、ダイシングテープと小片化されたシート状接着剤との間で剥離してシート状接着剤が貼り付いた状態の小片化された光学部材を取り出すピックアップ工程と、を備える。
また、上記の組立工程は、例えば、小片化された光学部材に貼り付いた状態のシート状接着剤を介して光学部材の小片を被着体に接着させる接着工程と、被着体上のシート状接着剤の小片を熱硬化処理するキュアリング工程と、を有する。電子部品装置は、例えばこれらの工程を経て製造される。
【0005】
上記のような電子部品装置の製造方法としては、例えば、基板上に固定された光半導体素子(光学センサなど)の光検知面を覆うように、上記の小片化された光学部材を配置し、光半導体素子を備えた電子部品装置を製造する方法が知られている。この際、シート状接着剤を介して、光半導体素子の光検知面を上記の小片化された光学部材で直接的又は間接的に覆う場合がある。
この種の製造方法で使用されるシート状接着剤としては、透明性の高いシート状接着剤が知られている。斯かるシート状接着剤としては、例えば、光半導体素子の検知感度を確保すべく、熱硬化性を有し、且つ、150℃で1時間の加熱により熱硬化した状態において波長域450~1200nmでの透過率が85%以上であるシート状接着剤が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
特許文献1に記載のシート状接着剤は、被着体に接したときでも所定のシート形状を有することから、光学部材と被着体とは、所定形状のシート状接着剤を介して、所望の安定した配置で互いに接着されることとなる。また、特許文献1に記載のシート状接着剤は、上記のごとく熱硬化後に比較的透明性が良好であることから、電子部品装置において光半導体素子の検知感度を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のシート状接着剤は、例えば長期間が経過すると着色を生じる場合がある。また、特許文献1に記載のシート状接着剤は、例えば熱硬化処理の後において、弾性率(硬さ)が低くなり過ぎる場合がある。このような現象がシート状接着剤に生じると、製造された電子部品装置及びシート状接着剤の、製品としての信頼性が低下し得ることとなる。
このような問題を防ぐべく、良好な透明性を有しつつ、経時的な着色、及び、熱硬化処理による弾性率の極端な低下などが抑制され、製品としての信頼性が高まるようにシート状接着剤を設計することが考えられる。
【0009】
しかしながら、良好な透明性を有しつつ、経時的な着色、及び、熱硬化処理による弾性率の極端な低下などが抑制され、製品としての信頼性が比較的高いシート状接着剤については、未だ十分に検討されているとはいえない。
【0010】
そこで、本発明は、良好な透明性を有しつつ、経時的な着色、及び、熱硬化処理による弾性率の極端な低下が抑制され、製品としての信頼性が比較的高いシート状接着剤を提供することを課題とする。また、上記シート状接着剤を備えるダイシングダイボンドフィルム、及び、上記シート状接着剤を備える電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明に係るシート状接着剤は、グリシジル基を分子中に有する第1アクリルポリマーと、カルボキシ基を分子中に有する第2アクリルポリマーとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、上記のシート状接着剤と、該シート状接着剤の一方の面に重なるダイシングテープとを備える。
本発明に係る電子部品装置は、上記のシート状接着剤を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシート状接着剤は、良好な透明性を有しつつ、経時的な着色、及び、熱硬化処理による弾性率の極端な低下が抑制され、製品としての信頼性が比較的高い。従って、本発明に係るダイシングダイボンドフィルム及び電子部品装置は、製品として比較的高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態のダイシングダイボンドフィルムを厚さ方向に切断した模式断面図。
【
図2】電子部品装置の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に表す断面図。
【
図3】電子部品装置の製造方法におけるダイシング工程の様子を模式的に表す断面図。
【
図4】電子部品装置の製造方法におけるエキスパンド工程の様子を模式的に表す断面図。
【
図5】電子部品装置の製造方法におけるピックアップ工程の様子を模式的に表す断面図。
【
図6】電子部品装置の一部における断面の一例を表す模式断面図。
【
図7】電子部品装置の一部における断面の他の例を表す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るシート状接着剤、及び、該シート状接着剤を備えたダイシングダイボンドフィルムの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、図面における各図は模式図であり、実物における縦横の長さ比と必ずしも同じではない。
【0016】
本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1は、
図1に示すように、ダイシングテープ20と、該ダイシングテープ20の粘着剤層22に積層され且つ光学部材に接着される本実施形態のシート状接着剤10(ダイボンドシートと称される場合がある)とを備える。本実施形態のシート状接着剤10は、電子部品装置の製造において、例えば、光半導体素子(発光素子又は受光素子など)と、小片化された光学部材との間に配置される。本実施形態のシート状接着剤10は、例えば、光半導体素子と光学部材(ガラス、レンズなど)の小片との間に空間を設けるように配置され、光学部材の小片に貼り付けられた状態で使用される。又は、本実施形態のシート状接着剤10は、例えば、光半導体素子に直接貼り付けられて使用される。
【0017】
本実施形態のシート状接着剤は、良好な透明性を有する。本実施形態のシート状接着剤は、小片化された光学部材と、光半導体素子との間の光透過を遮らないように、良好な透明性を有する部材である。
なお、本実施形態のシート状接着剤に貼り付けられる光学部材は、ガラス製であってもよい。斯かる光学部材は、単なるガラスであってもよく、フィルターであってもよく、又は、レンズであってもよい。
【0018】
本実施形態のシート状接着剤は、ダイシングダイボンドフィルム1のダイボンドシートとして使用される場合、すなわち、半導体チップなどを被着体に接着させるために使用される場合もあるが、以下では、ダイボンドシート以外の用途でも使用され得るシート状接着剤について説明する。
【0019】
<ダイシングダイボンドフィルムのシート状接着剤>
シート状接着剤10の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上200μm以下である。斯かる厚さは、3μm以上150μm以下であってもよく、5μm以上100μm以下であってもよい。なお、シート状接着剤10が積層体である場合、上記の厚さは、積層体の総厚さである。
【0020】
シート状接着剤10は、例えば
図1に示すように、単層構造を有してもよい。本明細書において、単層とは、同じ組成物で形成された層のみを有することである。同じ組成物で形成された層が複数積層された形態も単層である。
一方、シート状接着剤10は、例えば、2種以上の異なる組成物でそれぞれ形成された層が積層された多層構造を有してもよい。シート状接着剤10が多層構造を有する場合、シート状接着剤10を構成する少なくとも1層が、後に詳述する第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーを含んでいればよい。
【0021】
本実施形態のシート状接着剤10は、グリシジル基を分子中に有する第1アクリルポリマーと、カルボキシ基を分子中に有する第2アクリルポリマーとを含む。
【0022】
本実施形態のシート状接着剤10は、上記の第1アクリルポリマーと、上記の第2アクリルポリマーとを含むため、経時的な着色が抑制されている。また、本実施形態のシート状接着剤10は、熱硬化処理による弾性率の極端な低下が抑制されている。よって、本実施形態のシート状接着剤10は、製品としての信頼性が比較的高い。
【0023】
上記の第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーは、いずれも(メタ)アクリル酸エステルモノマーが少なくとも重合した高分子化合物である。
【0024】
上記の第1アクリルポリマーは、通常、側鎖にグリシジル基を有する。第1アクリルポリマーは、側鎖の末端にグリシジル基を有してもよい。なお、第1アクリルポリマーは、主鎖の両端のうち少なくとも一方にグリシジル基を有してもよい。
【0025】
上記の第2アクリルポリマーは、通常、側鎖にカルボキシ基を有する。第2アクリルポリマーは、側鎖の末端にカルボキシ基を有してもよい。なお、第2アクリルポリマーは、主鎖の両端のうち少なくとも一方にカルボキシ基を有してもよい。
【0026】
第1アクリルポリマーのグリシジル基と、第2アクリルポリマーのカルボキシ基とは、互いに反応して結合できる。よって、熱硬化処理を受けたシート状接着剤10中では、架橋反応が進行する。
なお、第1アクリルポリマーのグリシジル基は、第2アクリルポリマーが有し得るヒドロキシ基と反応する場合がある。また、第1アクリルポリマーのグリシジル基は、シート状接着剤10に含まれる第2アクリルポリマー以外の化合物と反応し得る。一方、第2アクリルポリマーのカルボキシ基は、シート状接着剤10に含まれる第1アクリルポリマー以外の化合物と反応し得る。
【0027】
例えば、上記の第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーは、いずれも、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの構成単位を分子中に有してもよい。
【0028】
第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーは、それぞれ、分子中の構成単位のうち、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの構成単位を質量割合で最も多く含むことが好ましい。当該アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アルキル基(炭化水素基)の炭素数が2以上18以下のC2~C18アルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0029】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」との表記は、メタクリル酸及びアクリル酸のうちの少なくとも一方を表し、「(メタ)アクリレート」との表記は、メタクリレート(メタクリル酸エステル)及びアクリレート(アクリル酸エステル)のうちの少なくとも一方を表す。「(メタ)アクリル」という用語も同様である。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマー、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は、飽和環状アルキル(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0031】
飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、又は、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、直鎖状アルキル基部分の炭素数は、2以上8以下であることが好ましい。
飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、又は、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、アルキル基部分は、iso構造、sec構造、neo構造、又は、tert構造のいずれかを有してもよい。
【0032】
上記の第1アクリルポリマーは、分子中に、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なグリシジル基含有モノマーに由来する構成単位を含む。
本実施形態における第1アクリルポリマーは、少なくともアルキル(メタ)アクリレートモノマーとグリシジル基含有モノマーとの共重合体である。具体的には、第1アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの構成単位と、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの構成単位とがランダムな順序でつながった構成を有し得る。
【0033】
第1アクリルポリマーは、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの構成単位として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートモノマーの構成単位、又は、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルモノマーの構成単位などを分子中に有する。
なお、構成単位とは、第1アクリルポリマーを得るためのモノマーが重合反応した後の各モノマー由来の構造である。第2アクリルポリマーの構成単位についても同様である。
【0034】
第1アクリルポリマーに占める、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの構成単位の含有割合は、10質量%以上85質量%以下であってもよく、14質量%以上60質量%以下であってもよい。
上記の割合が10質量%以上であることにより、シート状接着剤10が熱硬化処理されるときの架橋反応をより十分に進行させることができる。一方、上記の割合が85質量%以下であることにより、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより十分な柔軟性を有することができる。
【0035】
第1アクリルポリマーのエポキシ当量は、150[g/eq]以上1,300[g/eq]未満であることが好ましい。斯かるエポキシ当量は、200[g/eq]以上であることがより好ましく、250[g/eq]以上であることがさらに好ましい。また、斯かるエポキシ当量は、1,200[g/eq]以下であることがより好ましく、1,000[g/eq]以下であることがさらに好ましい。
第1アクリルポリマーのエポキシ当量が150[g/eq]以上であることによって、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより十分な柔軟性を有することができる。また、第1アクリルポリマーのエポキシ当量が1,300[g/eq]未満であることによって、熱硬化処理後のシート状接着剤10が、より良好な耐熱性を有することができる。
【0036】
第1アクリルポリマーのエポキシ当量は、JIS K7236:2001(指示薬滴定法/電位差滴定法)に準じた方法によって測定される。
【0037】
本実施形態のシート状接着剤10は、複数種の第1アクリルポリマーを含んでもよい。複数種の第1アクリルポリマーを含む場合、少なくともいずれかの第1アクリルポリマーのエポキシ当量が上記のごとき範囲であることが好ましく、複数種の第1アクリルポリマー全体のエポキシ当量が上記のごとき範囲であることがより好ましい。
【0038】
第1アクリルポリマーの質量平均分子量は、1万以上30万以下であってもよい。第1アクリルポリマーの質量平均分子量は、2万以上20万以下であってもよく、3万以上10万以下であってもよい。
第1アクリルポリマーの質量平均分子量が1万以上であることによって、シート状接着剤10のシート形状をより保ちやすくなる。また、第1アクリルポリマーの質量平均分子量が30万以下であることによって、被着体に対してより十分な接着性を有することができる。
【0039】
上記の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。測定条件は、以下の通りである。
GPC測定条件の詳細は、以下の通りである。
測定装置名(装置例):Agilent社製 製品名「1200」
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム:3本のカラムを直列に接続
東ソー社製 製品名「TSKgel SuperAWM-H / superAW4000/ superAW2500」(カラム径=6mm、カラム長=15cm)
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/min
注入量:40μL(試料濃度0.1質量%の溶離液調製溶液)
検量線作成のための標準物質:ポリスチレン
データ処理ソフトウェア:Waters社製 製品名「Empower3」
溶離液:テトラヒドロフラン(DMF)塩添加
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)等を測定
【0040】
第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgは、-10℃以上30℃以下であってもよい。斯かるガラス転移点Tgは、0℃以上であってもよく、5℃以上であってもよい。また、斯かるガラス転移点Tgは、25℃以下であってもよく、20℃以下であってもよい。
第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgが-10℃以上であることにより、被着体に対するシート状接着剤10の接着力がより高くなり得る。また、第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgが30℃以下であることにより、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより十分な柔軟性を有することができる。
【0041】
第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgは、例えば、第1アクリルポリマーを構成するグリシジル基含有モノマーの構成単位の含有割合を大きくすることによって、高めることができる。一方、例えば、第1アクリルポリマーを構成するグリシジル基含有モノマーの構成単位の含有割合を小さくすることによってガラス転移点Tgを下げることができる。
【0042】
第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgは、第1アクリルポリマーを構成するモノマーの組成からFOXの式により算出される。詳しくは、上記のガラス転移点Tgは、以下のFoxの式〔1〕から算出できる。
1/Tg=W1/Tg(1)+W2/Tg(2)+・・・+Wn/Tn 式〔1〕
ここで、W1、W2、・・・及び、Wnは、共重合体を構成するモノマー(1)、モノマー(2)、・・・及び、モノマー(n)の全モノマーに対する各質量分率(質量%)を表す。
また、Tg(1)、Tg(2)、・・・及び、Tg(n)は、モノマー(1)、モノマー(2)、・・・及び、モノマー(n)のホモポリマーのガラス転移点(単位は絶対温度:K)を表す。
なお、一般的なホモポリマーのガラス転移温度は、公知であり、例えば、J. Brandup, E. H. Immergut,E. A. Grulke : Polymer Handbook:JOHNWILEY & SONS, INCに記載されている。公知文献でガラス転移点Tgが記載されていないホモポリマーのガラス転移点Tgとしては、一般的な熱分析(例えば示差熱分析)又は動的粘弾性測定法等によって得られたガラス転移温度の値を採用することができる。
【0043】
本実施形態のシート状接着剤10が複数種の第1アクリルポリマーを含む場合、少なくともいずれかの第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgが上記のごとき範囲であることが好ましい。
【0044】
上記の第2アクリルポリマーは、分子中に、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なカルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を含む。
本実施形態における第2アクリルポリマーは、少なくともアルキル(メタ)アクリレートモノマーとカルボキシ基含有モノマーとの共重合体である。具体的には、第2アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの構成単位と、カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの構成単位とがランダムな順序でつながった構成を有し得る。
【0045】
第2アクリルポリマーは、カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの構成単位として、例えば、(メタ)アクリル酸モノマーの構成単位、カルボキシエチル(メタ)アクリレートモノマーの構成単位、又は、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)サクシネートモノマーの構成単位などを分子中に有する。
【0046】
第2アクリルポリマーに占める、カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの構成単位の含有割合は、1質量%以上30質量%以下であってもよく、5質量%以上20質量%以下であってもよい。
上記の割合が1質量%以上であることにより、シート状接着剤10が熱硬化処理されるときの架橋反応をより十分に進行させることができる。一方、上記の割合が30質量%以下であることにより、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより十分な柔軟性を有することができる。
【0047】
第2アクリルポリマーの酸価は、10[mgKOH/g]以上200[mgKOH/g]以下であることが好ましい。斯かる酸価は、20[mgKOH/g]以上であってもよく、30[mgKOH/g]以上であってもよい。また、斯かる酸価は、160[mgKOH/g]以下であってもよく、140[mgKOH/g]以下であってもよい。
第2アクリルポリマーの酸価が10[mgKOH/g]以上であることによって、熱硬化処理後のシート状接着剤10が、より良好な耐熱性を有することができる。また、第2アクリルポリマーの酸価が200[mgKOH/g]以下であることによって、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより十分な柔軟性を有することができる。
【0048】
第2アクリルポリマーの酸価は、JIS K0070-1992(電位差滴定方法)に準じて、以下の測定方法によって求められる。
(1)ジエチルエーテル及びエタノールを体積比で4:1(ジエチルエーテルの体積:エタノールの体積)に混合した混合溶剤にフェノールフタレイン溶液を指示薬として加える。その後、0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液(滴定液)を用いて、該指示薬を含む混合溶剤を中和する。これにより、滴定液である0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液のファクターfを求める。
(2)約5gの試料(第2アクリルポリマー)を秤量してビーカに入れた後、上記の混合溶剤をビーカに加え、加温及び撹拌しながら、試料を混合溶剤に溶解させる。
(3)0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液(滴定液)を用いて、試料が溶解した混合溶剤の電位差滴定を行う。そして、次の式(1)に従って試料(第2アクリルポリマー)の酸価を求める。
【数1】
【0049】
本実施形態のシート状接着剤10は、複数種の第2アクリルポリマーを含んでもよい。複数種の第2アクリルポリマーを含む場合、少なくともいずれかの第2アクリルポリマーの酸価が上記のごとき範囲であることが好ましく、複数種の第2アクリルポリマー全体の酸価が上記のごとき範囲であることがより好ましい。
【0050】
第2アクリルポリマーの質量平均分子量は、5,000以上5万以下であってもよい。第2アクリルポリマーの質量平均分子量は、7,000以上4万以下であってもよく、8,000以上3万以下であってもよい。
第2アクリルポリマーの質量平均分子量が5,000以上5万以下であることによって、高温時におけるシート状接着剤10が適度な粘度を有することができるため、後に詳述する接着工程などを円滑に実施できる。
【0051】
第2アクリルポリマーの質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、上述した測定条件と同じ条件で測定される。
【0052】
第2アクリルポリマーのガラス転移点Tgは、30℃以上80℃以下であることが好ましい。斯かるガラス転移点Tgは、40℃以上であってもよく、50℃以上であってもよい。また、斯かるガラス転移点Tgは、75℃以下であってもよい。
第2アクリルポリマーのガラス転移点Tgが30℃以上であることにより、被着体に対するシート状接着剤10の接着力がより高くなり得る。また、第2アクリルポリマーのガラス転移点Tgが80℃以下であることにより、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより十分な柔軟性を有することができる。
【0053】
第2アクリルポリマーのガラス転移点Tgは、例えば、第2アクリルポリマーを構成するカルボキシ基含有モノマーの構成単位の含有割合を大きくすることによって、高めることができる。一方、例えば、第2アクリルポリマーを構成するカルボキシ基含有モノマーの構成単位の含有割合を小さくすることによってガラス転移点Tgを下げることができる。
【0054】
第2アクリルポリマーのガラス転移点Tgは、第1アクリルポリマーのガラス転移点Tgと同様の方法によって求められる。
【0055】
本実施形態のシート状接着剤10が複数種の第2アクリルポリマーを含む場合、少なくともいずれかの第2アクリルポリマーのガラス転移点Tgが上記のごとき範囲であることが好ましい。
【0056】
第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーは、それぞれ、例えばラジカル重合開始剤を用いた一般的な重合方法によって合成できる。また、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーとしては、それぞれ市販品を採用できる。
【0057】
本実施形態のシート状接着剤10において、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーの総量に占める第1アクリルポリマーの質量割合は、0.30以上0.95以下であることが好ましい。斯かる質量割合は、0.40以上であってもよい。また、斯かる質量割合は、0.90以下であってもよい。
上記の質量割合が0.30以上であることによって、熱硬化処理を受けたシート状接着剤10が適度な柔軟性を有することができる。また、上記の質量割合が0.90以下であることによって、シート状接着剤10が被着体に対してより十分な接着性を有することができる。
【0058】
本実施形態のシート状接着剤10は、熱硬化処理前における室温(25℃)での引張弾性率(引張貯蔵弾性率E’)が0.2GPa以上3.0GPa以下であることが好ましい。
斯かる引張弾性率は、0.3GPa以上であってもよく、0.4GPa以上であってもよい。また、斯かる引張弾性率は、2.5GPa以下であってもよく、2.0GPa以下であってもよい。
上記の引張弾性率が0.3GPa以上3.0GPa以下であることによって、ダイシングテープ20に貼り付いたシート状接着剤10を、より容易にダイシングテープからピックアップできる。また、シート状接着剤10のタック性がより小さくなるため、シート状接着剤10のハンドリング性がより良好になる。
【0059】
熱硬化処理前のシート状接着剤10の室温における引張弾性率は、例えば、第1アクリルポリマー、又は、第2アクリルポリマーのガラス転移点をより高くすることによって高めることができる。一方、例えば、第1アクリルポリマー、又は、第2アクリルポリマーのガラス転移点をより低くすることによって引張弾性率を下げることができる。
【0060】
上記の引張弾性率は、以下の測定条件で動的粘弾性測定法によって測定される。測定方法の詳細は、実施例において説明する。
測定装置:固体動的粘弾性測定装置
サイズ:初期長さ40mm、幅10mm
昇温速度:10℃/min、
測定温度:-30~280℃の温度範囲での25℃における引張弾性率
チャック間距離:22.5mm
周波数:1Hz、
引張貯蔵弾性率E’の値を上記の引張弾性率とした。
【0061】
本実施形態のシート状接着剤10は、150℃で1時間の熱硬化処理後における260℃での引張弾性率(引張貯蔵弾性率)が0.1MPa以上60.0MPa以下であることが好ましい。
斯かる引張弾性率は、0.5MPa以上であってもよく、1.0MPa以上であってもよい。また、斯かる引張弾性率は、40.0MPa以下であってもよく、30.0MPa以下であってもよい。
上記の引張弾性率が0.1MPa以上60.0MPa以下であることによって、後に詳述するリフロー工程において高温環境下に暴露されても、シート状接着剤10がより十分にシート形状を維持することができる。
【0062】
上記のごとき熱硬化処理後のシート状接着剤10の引張弾性率は、例えば、第1アクリルポリマーを構成する、グリシジル基含有モノマーの構成単位の含有割合を大きくすること、又は、第2アクリルポリマーを構成する、カルボキシ基含有モノマーの構成単位の含有割合を大きくすることによって高めることができる。一方、例えば、第1アクリルポリマーを構成する、グリシジル基含有モノマーの構成単位の含有割合を小さくすること、又は、第2アクリルポリマーを構成する、カルボキシ基含有モノマーの構成単位の含有割合を小さくすることによって引張弾性率を下げることができる。
【0063】
上記の引張弾性率は、上述した引張貯蔵弾性率の測定方法と同様にして測定される。
【0064】
本実施形態のシート状接着剤10が熱硬化処理された後の260℃におけるせん断接着力は、1MPa以上10MPa以下であることが好ましく、1MPaよりも大きく10MPa未満であることがより好ましい。
斯かるせん断接着力が1MPa以上であることによって、シート状接着剤10が被着体から剥離することがより抑制され得る。一方、斯かるせん断接着力が10MPa以下であることによって、シート状接着剤10の内部応力による被着体からの剥離をより抑制できる。
【0065】
上記のせん断力は以下のようにして測定される。
ベアチップ(シリコンチップ)にシート状接着剤10を貼付し、さらに、シート状接着剤10をベアチップに接着させる。接着では、温度130℃、荷重0.2MPa、接着時間1秒という条件が採用される。さらに、150℃×1時間の熱硬化処理を実施して試験片を準備する。
せん断試験機を用いてせん断接着力(MPa)を測定する。測定時の条件としては、速度500μm/s、測定ギャップ100μm、温度260℃が採用される。
【0066】
熱硬化処理された後の260℃におけるシート状接着剤10のせん断接着力は、例えば、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーの各分子中における官能基の量を調整すること、又は、必要に応じてシート状接着剤10に配合され得るシランカップリング剤の添加量を調整すること等によって、高めたり又は下げたりすることができる。
【0067】
本実施形態のシート状接着剤10は、良好な透明性を有する。本実施形態のシート状接着剤10の透過率は、90%以上であることが好ましい。
上記の透過率は、分光光度計によって測定される。波長400nmにおける透過率を採用する。
【0068】
本実施形態のシート状接着剤10は、良好な透明性を有する。本実施形態のシート状接着剤10のヘイズ値は、0%以上2%以下であることが好ましい。
上記のヘイズ値は、JIS K7136:2000(プラスチック-透明材料のヘイズの求め方)に準じて測定される。
【0069】
なお、シート状接着剤10の透明性とは、光をほぼ透過させる特性である。透過される光は、赤外線、可視光、又は紫外線の少なくともいずれかである。換言すると、シート状接着剤10は、赤外線を透過させる特性を有してもよく、可視線を透過させる特性を有してもよく、紫外線を透過させる特性を有してもよい。なお、シート状接着剤10は、例えば、赤外線、可視光、及び紫外線のすべてを透過させる特性を有してもよい。
【0070】
本実施形態のシート状接着剤10は、比較的高い耐光性を有する。換言すると、本実施形態のシート状接着剤10は、光による経時的な変色が抑制されている。
本実施形態のシート状接着剤10は、例えば以下のような耐光評価試験を実施したときに、試験前と試験後とで、変色の度合が所定以下であることが好ましい。具体的には、本実施形態のシート状接着剤10は、メタルハライドランプを500時間照射する前と照射した後とで、色差計で測定したときのL*A*b*色空間のb*の差(Δb*)が、0.2以下であることが好ましい。
より具体的には、85℃、85RH%の条件下で、メタルハライドランプによって光を500時間照射して、耐光評価試験を実施する。耐光評価試験を実施する前と後とにおいて、それぞれシート状接着剤10を色差計で測定したときに、L*A*b*の色空間で表されるb*の値の差(Δb*)が、0.2以下であることが好ましい。
上記の測定は、JIS Z8781-4:2013(測色-第4部:CIE1976 L*A*b*色空間)に準じて実施される。
【0071】
本実施形態のシート状接着剤10が熱硬化処理を受ける前の140℃における粘度は、500[mPa・s]以上8000[mPa・s]以下であることが好ましい。斯かる粘度が上記範囲であることにより、後に詳述する接着工程において、表面に凹凸のある被着体にシート状接着剤10を貼り付けたときに、シート状接着剤10が凹凸形状に適度に追従できることから、表面の凹部とシート状接着剤10との間に隙間(ボイド)がより生じにくくなり得る。
【0072】
上記の粘度の測定は、測定装置としてレオメーターを用い、下記の測定条件によって実施される。
測定装置:レオメーター(例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 「Thermo SCIENTIFIC HAAKE MARS III」)
測定サンプルのサイズ:直径8mm、厚さ300μm(例えば、20μm厚さのシート状接着剤を積み重ねて作製)
昇温速度:5℃/min、
測定温度:80~180℃の測定温度範囲での140℃における粘度
測定周波数:1Hz、
【0073】
本実施形態のシート状接着剤10が、グリシジル基及びカルボキシ基の両方を分子中に有するアクリルポリマーを含む場合、斯かるアクリルポリマーの質量の半分が、それぞれ第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーに相当するとみなすことができる。
【0074】
シート状接着剤10は、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマー以外の高分子成分を含んでもよい。例えば、シート状接着剤10は、熱硬化性樹脂、又は、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマー以外の熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。
【0075】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、1種のみ、又は、2種以上が採用される。
【0076】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、又は、グリシジルアミン型の各エポキシ樹脂が挙げられる。
【0077】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得る。フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ビフェニルアラルキル型樹脂フェノール樹脂など)、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、フェノールキシリレン樹脂等が挙げられる。
【0078】
シート状接着剤10における斯かる熱硬化性樹脂の含有率は、5質量%未満(0質量%を包含する)であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。これにより、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより低い弾性率を有することができるため、熱硬化処理後のシート状接着剤10がより柔軟性を有することができる。
【0079】
シート状接着剤10に含まれ得る、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマー以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ポリアミド樹脂や6,6-ポリアミド樹脂等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、グリシジル基若しくはヒドロキシ基などの架橋性官能基を分子中に含まないアクリルポリマー、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、1種のみ、又は、2種以上が採用される。
【0080】
シート状接着剤10の総質量を100質量部としたときに、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーの合計質量は、好ましくは90質量部以上であり、より好ましくは95質量部以上であり、さらに好ましくは99質量部以上である。
【0081】
シート状接着剤10は、フィラーを含有してもよく、含有しなくてもよい。シート状接着剤10におけるフィラーの量を変えることにより、シート状接着剤10の弾性及び粘性をより容易に調整することができる。さらに、シート状接着剤10の導電性、熱伝導性、弾性率等の物性を調整することができる。
【0082】
フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。フィラーとしては、無機フィラーが好ましい。
【0083】
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶質シリカや非晶質シリカといったシリカなどを含むフィラーが挙げられる。また、無機フィラーの材質としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体や、合金などが挙げられる。ホウ酸アルミニウムウィスカ、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等のフィラーであってもよい。フィラーの形状は、球状、針状、フレーク状等の各種形状であってもよい。フィラーとしては、上記の1種のみ、又は、2種以上が採用される。
【0084】
上記フィラーの平均粒径は、例えば5nm以上10μm以下であってもよい。上記フィラーの平均粒径は、好ましくは5nm以上500nm以下であり、より好ましくは5nm以上100nm以下である。上記平均粒径が5nm以上であることによって、光学部材等の被着体(例えばガラス製)への濡れ性、接着性がより向上する。上記平均粒径が500nm以下であることによって、加えたフィラーによる特性をより十分に発揮させることができ、また、シート状接着剤10の耐熱性をより発揮させることができる。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(例えば、製品名「LA-910」、堀場製作所社製)を用いて求めることができる。
【0085】
上記フィラーの比表面積は、例えば35m2/g以上400m2/g以下であってもよい。上記比表面積が35m2/g以上であることによって、特に無機フィラー表面における-OH基が比較的多くなり、熱硬化反応による架橋反応がより進行しやすくなる。また、グリシジル基が、無機フィラー表面と結合しやすくなる。一方、上記比表面積が400m2/g以下であることによって、グリシジル基と、無機フィラー表面との過剰な結合を抑えることができる。フィラーの比表面積は、JIS Z8830:2013 に従って、BET法によって算出される。具体的には、試料を測定セルに入れ、200℃で30分間の加熱処理後に、液体窒素による冷却処理を行う。さらに実施する加熱処理に伴う窒素離脱時の気体量から比表面積を算出する。
【0086】
シート状接着剤10の上記フィラーの含有率は、シート状接着剤10の総質量の5質量%以下(0質量%を包含する)であってもよく、1質量%以下であってもよい。
【0087】
シート状接着剤10は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。上記他の成分としては、例えば、硬化触媒、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、染料等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記他の添加剤としては、1種のみ、又は、2種以上が採用される。
【0088】
シート状接着剤10は、より良好な透明性を有し得るという点で、好ましくは、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーを含み、熱硬化性樹脂及びフィラーのいずれも含まない。
【0089】
次に、本発明に係るダイシングダイボンドフィルムの実施形態について説明する。
【0090】
本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1は、上記のシート状接着剤10と、該シート状接着剤10に貼り合わされたダイシングテープ20とを備える。
【0091】
本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1では、使用されるときに、活性エネルギー線(例えば紫外線)が照射されることによって、粘着剤層22が硬化される。詳しくは、一方の面に光学部材(ガラス、フィルターなど)が接着されたシート状接着剤10と、該シート状接着剤10の他方の面に貼り合わされた粘着剤層22とが積層した状態で、紫外線等が少なくとも粘着剤層22に照射される。例えば、基材層21が配置されている方から紫外線等を照射して、基材層21を経た紫外線等が粘着剤層22に届く。紫外線等の照射によって、粘着剤層22が硬化する。
照射後に粘着剤層22が硬化することによって、粘着剤層22の粘着力を下げることができるため、照射後に粘着剤層22から、シート状接着剤10(光学部材が接着した状態)を比較的容易に剥離させることができる。
【0092】
<ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープ>
上記のダイシングテープ20は、通常、長尺シートであり、使用されるまで巻回された状態で保管される。本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1は、分割される板状の光学部材よりも、ひと回り大きい内径を有する円環状の枠に張られ、カットされて使用される。
【0093】
上記のダイシングテープ20は、基材層21と、該基材層21に重なった粘着剤層22とを備える。
【0094】
基材層21は、単層構造であってもよく、積層構造を有してもよい。
基材層21の各層は、例えば、金属箔、紙や布などの繊維シート、ゴムシート、樹脂フィルムなどである。
基材層21を構成する繊維シートとしては、紙、織布、不織布などが挙げられる。
樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体等のエチレンの共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリアクリレート;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド(PPS);脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体);セルロース又はセルロース誘導体;含シリコーン高分子;含フッ素高分子などが挙げられる。これらは、1種が単独で又は2種以上が組み合わされて使用され得る。
【0095】
基材層21は、樹脂フィルムなどの高分子材料で構成されていることが好ましい。
基材層21が樹脂フィルムを有する場合、樹脂フィルムが延伸処理等を施され、伸び率などの変形性が制御されていてもよい。
基材層21の表面には、粘着剤層22との密着性を高めるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的方法又は物理的方法による酸化処理等が採用され得る。また、アンカーコーティング剤、プライマー、接着剤等のコーティング剤によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0096】
基材層21は、単層であってもよく、複数の層(例えば3層)で構成されていてもよい。基材層21の厚さ(総厚さ)は、80μm以上150μm以下であってもよい。
【0097】
基材層21の背面側(粘着剤層22が重なっていない側)には、剥離性を付与するために、例えば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等の離型剤(剥離剤)などによって離型処理が施されていてもよい。
基材層21は、背面側から紫外線等の活性エネルギー線を粘着剤層22へ与えることが可能となる点で、光透過性(紫外線透過性)の樹脂フィルム等であることが好ましい。
【0098】
上記のダイシングテープ20は、使用される前の状態において、粘着剤層22の一方の面(粘着剤層22が基材層21と重なっていない面)を覆うはく離ライナーを備えてもよい。はく離ライナーは、粘着剤層22を保護するために用いられ、粘着剤層22にシート状接着剤10を貼り付ける前に剥がされる。
【0099】
はく離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤によって表面処理された、プラスチックフィルム又は紙等を用いることができる。
なお、はく離ライナーは、粘着剤層22を支持するための支持材として利用できる。特に、はく離ライナーは、基材層21のうえに粘着剤層22を重ねるときに、好適に使用される。詳しくは、はく離ライナーと粘着剤層22とが積層された状態で粘着剤層22を基材層21に重ね、重ねた後にはく離ライナーを剥がす(転写する)ことによって、基材層21のうえに粘着剤層22を重ねることができる。
【0100】
本実施形態において、粘着剤層22は、例えば、アクリル系高分子化合物と、イソシアネート化合物と、重合開始剤とを含む。
粘着剤層22は、5μm以上40μm以下の厚さを有してもとい。粘着剤層22の形状および大きさは、通常、基材層21の形状および大きさと同じである。
【0101】
上記のアクリル系高分子化合物は、分子中に、アルキル(メタ)アクリレートの構成単位と、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位と、重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位と、を少なくとも有する。構成単位は、アクリル系高分子化合物の主鎖を構成する単位である。上記のアクリル系高分子化合物における各側鎖は、主鎖を構成する各構成単位に含まれる。
【0102】
粘着剤層22に含まれるアクリル系高分子化合物において、上記の構成単位は、1H-NMR、13C-NMRなどのNMR分析、熱分解GC/MS分析、及び、赤外分光法などによって確認できる。なお、アクリル系高分子化合物における上記の構成単位のモル割合は、通常、アクリル系高分子化合物を重合するときの配合量(仕込量)から算出される。
【0103】
上記のアルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する。換言すると、アルキル(メタ)アクリレートモノマーが重合反応したあとの分子構造が、アルキル(メタ)アクリレートの構成単位である。「アルキル」という表記は、(メタ)アクリル酸に対してエステル結合した炭化水素部分を表す。
アルキル(メタ)アクリレートの構成単位におけるアルキル部分の炭化水素部分は、飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素であってもよい。炭化水素部分の炭素数は、6以上10以下であってもよい。
【0104】
アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-またはiso-ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートなどの各構成単位が挙げられる。
【0105】
アクリル系高分子化合物は、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位を有し、斯かる構成単位の水酸基が、イソシアネート基と容易に反応する。
水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位を有するアクリル系高分子化合物と、イソシアネート化合物とを粘着剤層22に共存させておくことによって、粘着剤層22を適度に硬化させることができる。そのため、アクリル系高分子化合物が十分にゲル化できる。よって、粘着剤層22は、形状を維持しつつ粘着性能を発揮できる。
【0106】
水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、水酸基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートの構成単位であることが好ましい。「C2~C4アルキル」という表記は、(メタ)アクリル酸に対してエステル結合した炭化水素部分の炭素数を表す。換言すると、水酸基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸と、炭素数2以上4以下のアルコール(通常、2価アルコール)とがエステル結合したモノマーを示す。
C2~C4アルキルの炭化水素部分は、通常、飽和炭化水素である。例えば、C2~C4アルキルの炭化水素部分は、直鎖状飽和炭化水素、又は、分岐鎖状飽和炭化水素である。C2~C4アルキルの炭化水素部分は、酸素(O)や窒素(N)などを含有する極性基を含まないことが好ましい。
【0107】
水酸基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn-ブチル(メタ)アクリレート、又は、ヒドロキシiso-ブチル(メタ)アクリレートといったヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの各構成単位が挙げられる。なお、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの構成単位において、水酸基(-OH基)は、炭化水素部分の末端の炭素(C)に結合していてもよく、炭化水素部分の末端以外の炭素(C)に結合していてもよい。
【0108】
上記のアクリル系高分子化合物は、側鎖に重合性不飽和二重結合を有する重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位を含む。
上記のアクリル系高分子化合物が、重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位を含むことによって、ピックアップ工程の前に、粘着剤層22を、活性エネルギー線(紫外線等)の照射によって硬化させることができる。詳しくは、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって、光重合開始剤からラジカルを発生させ、このラジカルの作用によって、アクリル系高分子化合物同士を架橋反応させることができる。これによって、照射前における粘着剤層22の粘着力を、照射によって低下させることができる。そして、シート状接着剤10を粘着剤層22から良好に剥離させることができる。
なお、活性エネルギー線としては、紫外線、放射線、電子線が採用される。
【0109】
重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、具体的には、上述した水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位における水酸基に、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーのイソシアネート基がウレタン結合した分子構造を有してもよい。
【0110】
重合性基を有する重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、アクリル系高分子化合物の重合後に、調製され得る。例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとの共重合の後に、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位の一部における水酸基と、イソシアネート基含有重合性モノマーのイソシアネート基とを、ウレタン化反応させることによって、上記の重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位を得ることができる。
【0111】
上記のイソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーは、分子中にイソシアネート基を1つ有し且つ(メタ)アクリロイル基を1つ有することが好ましい。斯かるモノマーとしては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
【0112】
本実施形態におけるダイシングテープ20の粘着剤層22は、さらにイソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物の一部は、ウレタン化反応などによって反応した後の状態であってもよい。
イソシアネート化合物は、分子中に複数のイソシアネート基を有する。イソシアネート化合物が分子中に複数のイソシアネート基を有することによって、粘着剤層22におけるアクリル系高分子化合物間の架橋反応を進行させることができる。詳しくは、イソシアネート化合物の一方のイソシアネート基をアクリル系高分子化合物の水酸基と反応させ、他方のイソシアネート基を別のアクリル系高分子化合物の水酸基と反応させることで、イソシアネート化合物を介した架橋反応を進行させることができる。
【0113】
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、又は、芳香脂肪族ジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。
【0114】
さらに、イソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネートの二量体や三量体等の重合ポリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートが挙げられる。
【0115】
加えて、イソシアネート化合物としては、例えば、上述したイソシアネート化合物の過剰量と、活性水素含有化合物とを反応させたポリイソシアネートが挙げられる。活性水素含有化合物としては、活性水素含有低分子量化合物、活性水素含有高分子量化合物などが挙げられる。
なお、イソシアネート化合物としては、アロファネート化ポリイソシアネート、ビウレット化ポリイソシアネート等も用いることができる。
上記のイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
上記のイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネートと活性水素含有低分子量化合物との反応物が好ましい。芳香族ジイソシアネートの反応物は、イソシアネート基の反応速度が比較的遅いため、斯かる反応物を含む粘着剤層22は、過度に硬化してしまうことが抑制される。上記のイソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を3つ以上有するものが好ましい。
【0117】
粘着剤層22に含まれる重合開始剤は、加えられた熱や光のエネルギーによって重合反応を開始できる化合物である。粘着剤層22が重合開始剤を含むことによって、粘着剤層22に熱エネルギーや光エネルギーを与えたときに、アクリル系高分子化合物間における架橋反応を進行させることができる。詳しくは、重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位を有するアクリル系高分子化合物間において、重合性基同士の重合反応を開始させて、粘着剤層22を硬化させることができる。これにより、粘着剤層22の粘着力を低下させ、ピックアップ工程において、硬化した粘着剤層22からシート状接着剤10を容易に剥離させることができる。
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤又は熱重合開始剤などが採用される。重合開始剤としては、一般的な市販製品を使用できる。
【0118】
粘着剤層22は、上述した成分以外のその他の成分をさらに含み得る。その他の成分としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、軽剥離化剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて、適切に選択され得る。
【0119】
本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1は、以下のような物性を有することが好ましい。
粘着剤層22に対して、上述したような熱エネルギーや光エネルギーを与えて粘着剤層22を硬化させる前において、粘着剤層22とシート状接着剤10との間の剥離力は、0.05N/20mm以上3.00N/mm以下であることが好ましく、0.30N/20mm以上であることがより好ましい。これにより、後に詳述するダイシング工程において、粘着剤層22とシート状接着剤10との間で剥離してしまう現象をより抑制できる。
【0120】
また、粘着剤層22に対して、上述したような熱エネルギーや光エネルギーを与えて粘着剤層22を硬化させた後において、粘着剤層22とシート状接着剤10との間の剥離力は、0.01N/20mm以上0.50N/mm以下であることが好ましく、0.20N/mm以下であることがより好ましい。これにより、後に詳述するピックアップ工程において、粘着剤層22からシート状接着剤10を剥離させて、小片化されたシート状接着剤が貼り付いた光学部材Xの小片をより簡便にピックアップできる。
【0121】
粘着剤層22とシート状接着剤10との間の剥離力は、以下のようにして測定される。
ダイシングダイボンドフィルム1のシート状接着剤10に裏打ちテープを貼り合わせた後、幅50mm、長さ120mmのサイズの試験片を切り出す。切り出した試験片を用いて、T型剥離試験を行い、剥離力[N/20mm]を測定する。測定における温度条件は23℃、剥離速度は300mm/分とする。
なお、硬化処理を施す場合、裏打ちテープを貼り合わせる前に、22℃の温度条件下で、ダイシングテープの基材層の側から粘着剤層に対して300mJ/cm2(照射強度150mW/cm2、2秒間)の紫外線を照射する。
【0122】
粘着剤層22を硬化させる前及び後において、粘着剤層22が有する粘着力を大きくするためには、例えば、粘着剤層22中のアクリル系高分子化合物における水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位の割合を上げる。一方、粘着剤層22が有する粘着力を小さくするためには、例えば、粘着剤層22中のアクリル系高分子化合物における水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位の割合を下げる。
【0123】
本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1は、使用される前の状態において、シート状接着剤10の一方の面(シート状接着剤10が粘着剤層22と重なっていない面)を覆うはく離ライナーを備えてもよい。はく離ライナーは、シート状接着剤10を保護するために用いられ、シート状接着剤10に被着体(例えばガラス板)を貼り付ける直前に剥離される。
このはく離ライナーは、シート状接着剤10を支持するための支持材として利用できる。はく離ライナーは、粘着剤層22にシート状接着剤10を重ねるときに、好適に使用される。詳しくは、はく離ライナーとシート状接着剤10とが積層された状態でシート状接着剤10を粘着剤層22に重ね、重ねた後にはく離ライナーを剥がす(転写する)ことによって、粘着剤層22にシート状接着剤10を重ねることができる。
【0124】
続いて、本実施形態のシート状接着剤、及び、ダイシングダイボンドフィルムの製造方法について説明する。
【0125】
<ダイシングダイボンドフィルムの製造方法>
本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1の製造方法は、
シート状接着剤10を作製する工程と、
ダイシングテープ20を作製する工程と、
製造されたシート状接着剤10とダイシングテープ20とを重ね合わせる工程とを備える。
【0126】
<シート状接着剤を作製する工程>
シート状接着剤10を作製する工程は、
シート状接着剤10を形成するためのポリマー組成物を調製するポリマー組成物調製工程と、
ポリマー組成物からシート状接着剤10を形成するシート状接着剤形成工程と、を有する。
【0127】
ポリマー組成物調製工程では、例えば、上記の第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーと、溶媒とを混合して、両ポリマーを溶媒に溶解させることによって、ポリマー組成物を調製する。溶媒の量を変化させることによって、組成物の粘度を調整することができる。
【0128】
シート状接着剤形成工程では、例えば、上記のごとく調製したポリマー組成物を、はく離ライナーに塗布する。塗布方法としては、特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等の一般的な塗布方法が採用される。次に、必要に応じて、脱溶媒処理や硬化処理等によって、塗布した組成物を固化させて、シート状接着剤10を形成する。
【0129】
<ダイシングテープを作製する工程>
ダイシングテープを作製する工程は、
アクリル系高分子化合物を合成する合成工程と、
上述したアクリル系高分子化合物と、イソシアネート化合物と、重合開始剤と、溶媒と、目的に応じて適宜追加するその他の成分と、を含む粘着剤組成物から溶媒を揮発させて粘着剤層22を作製する粘着剤層作製工程と、
基材層21を作製する基材層作製工程と、
粘着剤層22と基材層21とを貼り合わせることによって、基材層21と粘着剤層22とを積層させる積層工程と、を備える。
【0130】
合成工程では、例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと、をラジカル重合させることによって、アクリル系高分子化合物中間体を合成する。
ラジカル重合は、一般的な方法によって行うことができる。例えば、上記の各モノマーを溶媒に溶解させて加熱しながら撹拌し、重合開始剤を添加することによって、アクリル系高分子化合物中間体を合成できる。アクリル系高分子化合物の分子量を調整するために、連鎖移動剤の存在下において重合を行ってもよい。
次に、アクリル系高分子化合物中間体に含まれる、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位の一部の水酸基と、イソシアネート基含有重合性モノマーのイソシアネート基とを、ウレタン化反応によって結合させる。これにより、水酸基含有(メタ)アクリレートの構成単位の一部が、重合性基含有(メタ)アクリレートの構成単位となる。
ウレタン化反応は、一般的な方法によって行うことができる。例えば、溶媒及びウレタン化触媒の存在下において、加熱しながらアクリル系高分子化合物中間体とイソシアネート基含有重合性モノマーとを撹拌する。これにより、アクリル系高分子化合物中間体の水酸基の一部に、イソシアネート基含有重合性モノマーのイソシアネート基をウレタン結合させることができる。
【0131】
粘着剤層作製工程では、例えば、アクリル系高分子化合物と、イソシアネート化合物と、重合開始剤とを溶媒に溶解させて、粘着剤組成物を調製する。溶媒の量を変化させることによって、組成物の粘度を調整することができる。次に、粘着剤組成物をはく離ライナーに塗布する。塗布方法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等の一般的な塗布方法が採用される。塗布した組成物に、脱溶媒処理や固化処理等を施すことによって、塗布した粘着剤組成物を固化させて、粘着剤層22を作製する。
【0132】
基材層作製工程では、一般的な方法によって製膜して基材層を作製できる。製膜する方法としては、例えば、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、ドライラミネート法等が挙げられる。共押出し成形法を採用してもよい。なお、基材層21として、市販されているフィルム等を用いてもよい。
【0133】
積層工程では、はく離ライナーに重なった状態の粘着剤層22と基材層21とを重ねて積層させる。なお、はく離ライナーは、使用前まで粘着剤層22に重なった状態であってもよい。
なお、架橋剤とアクリル系高分子化合物との反応を促進するため、また、架橋剤と基材層21の表面部分との反応を促進するために、積層工程の後に、50℃環境下で、48時間のエージング処理工程を実施してもよい。
【0134】
これら工程によって、ダイシングテープ20を製造することができる。
【0135】
<シート状接着剤10とダイシングテープ20とを重ね合わせる工程>
シート状接着剤10とダイシングテープ20とを重ね合わせる工程では、上記のごとく製造したダイシングテープ20の粘着剤層22にシート状接着剤10を貼り付ける。
【0136】
斯かる貼り付けでは、ダイシングテープ20の粘着剤層22、及び、シート状接着剤10からそれぞれはく離ライナーを剥離し、シート状接着剤10と粘着剤層22とが直接接触するように、両者を貼り合わせる。例えば、圧着することによって貼り合わせることができる。貼り合わせるときの温度は、特に限定されず、例えば、30℃以上50℃以下であり、好ましくは35℃以上45℃以下である。貼り合わせるときの線圧は、特に限定されないが、好ましくは0.1kgf/cm以上20kgf/cm以下であり、より好ましくは1kgf/cm以上10kgf/cm以下である。
なお、上記の貼り付けの前又は後に、ダイシングテープ20の粘着剤層22に紫外線等を照射することで、粘着剤層22をある程度硬化させてもよい。これにより、粘着剤層22の粘着力を適度に低下させて、粘着剤層22の保存安定性を向上させることができる。
【0137】
上述した工程を経て、上記のごとく製造されたダイシングダイボンドフィルム1は、例えば、電子部品装置を製造するための補助用具として使用される。製造される電子部品装置は、ダイシングダイボンドフィルム1のうちのシート状接着剤10の一部を有することとなる。具体的には、小片化されたシート状接着剤10が光学部材Xの小片と被着体との間に配置され、斯かるシート状接着剤10の小片を介して、光学部材Xの小片と被着体とが接着されてなる部材を電子部品装置が有することとなる。
【0138】
電子部品装置としては、例えば、光半導体素子を有する光半導体装置などが挙げられる。光半導体素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、垂直共振器型発光レーザ(VCSEL)、フォトダイオード(PD)、コンタクトイメージセンサ(CIS)、又は、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)などが挙げられる。
また、例えば光半導体装置としては、光学センサを有する光センサモジュールなどが挙げられる。光学センサとしては、例えば、フォトカプラ、フォトインタラプタ、エンコーダ、照度センサ、又は、測距センサなどが挙げられる。
【0139】
続いて、上記のごとき電子部品装置を製造するために使用されるダイシングダイボンドフィルム1(シート状接着剤10)の使用方法の具体例について説明する。
【0140】
<電子部品装置を製造するときのダイシングダイボンドフィルムの使用方法>
電子部品装置を製造する方法は、例えば、発光素子又は受光素子などの光半導体素子を被着体に固定する工程を備える。また、光学部材を分割することによって光学部材を小片化し、小片化された光学部材(フィルター又はレンズなど)を取り出す小片化工程、及び、小片化された光学部材と光半導体素子とを組み合わせて組立てを行う組立工程をさらに備える。
【0141】
小片化工程は、例えば、光学部材の片面をシート状接着剤10に貼り付けたうえで、ダイシングテープ20に光学部材を固定するマウント工程と、光学部材及びシート状接着剤10を分割して小片化するダイシング工程と、ダイシングテープ20を引き延ばすことによって、隣り合う小片化された光学部材の間隔を広げるエキスパンド工程(必要に応じて実施)と、シート状接着剤10と粘着剤層22との間を剥離してシート状接着剤10が貼り付いた状態で小片化された光学部材を取り出すピックアップ工程と、を備える。
組立工程は、例えば、小片化された光学部材に貼り付いたシート状接着剤10の小片を被着体に接着させる接着工程と、被着体に接着したシート状接着剤10の小片を硬化させるキュアリング工程と、被着体上の光半導体素子の周囲を熱硬化性樹脂によって封止する封止工程(必要に応じて実施)と、を備える。これらの工程を実施するときに、本実施形態のダイシングダイボンドフィルム1が製造補助用具として使用される。
【0142】
マウント工程では、
図2に示すように、シート状接着剤10を介して、光学部材Wをダイシングテープ20に固定する。詳しくは、ダイシングテープ20の粘着剤層22にダイシングリングRを取り付けつつ、シート状接着剤10の露出した面に光学部材Wを貼り付ける。
【0143】
ダイシング工程では、例えば
図3に示すように、ダイシングソーSなどによって、シート状接着剤10および光学部材Wを切断して小片化し、小片化されたシート状接着剤10’と小片化された光学部材Xとをダイシングテープ20の上で作製する。
【0144】
必要に応じて実施されるエキスパンド工程では、
図4に示すように、小片化された隣り合う光学部材Xの間隔を広げる。詳しくは、エキスパンド装置が備える突き上げ部材Uを、ダイシングダイボンドフィルム1の下側から突き上げることによって、ダイシングダイボンドフィルム1を面方向に広げるように引き延ばす。これにより、隣り合う小片化された光学部材Xをフィルム面の面方向に引き離して、カーフ(間隔)を広げる。
【0145】
ピックアップ工程では、
図5に示すように、シート状接着剤の小片10’が貼り付いた状態の小片化された光学部材Xをダイシングテープ20の粘着剤層22から剥離する。詳しくは、ピン部材Pを上昇させて、ピックアップ対象の小片化された光学部材X及びシート状接着剤の小片10’を、ダイシングテープ20を介して突き上げる。突き上げられた小片化された光学部材X及びシート状接着剤の小片10’を吸着治具Jによって保持する。
【0146】
接着工程では、
図6及び
図7に示すように、シート状接着剤の小片10’が貼り付いた状態の小片化された光学部材Xを被着体Zに接着させる。光学部材Xは、例えば、ガラス製基板、フィルター、レンズ等であってもよい。
【0147】
接着工程では、例えば
図6に示すように、発光素子などの光半導体素子Aと、シート状接着剤の小片10’との間に空間を設けるように、シート状接着剤の小片10’及び小片化された光学部材Xを配置する場合がある。この場合、被着体Zは、例えば液晶ポリマー(LCP)などである。
一方、接着工程では、例えば
図7に示すように、発光素子などの光半導体素子Aに直接シート状接着剤の小片10’を貼り付ける場合がある。この場合、被着体Zは、例えば、センサウエハ、又は発光素子などの光半導体素子(LED、VCSEL、PD、CIS、SPADなど)等であってもよい。
【0148】
キュアリング工程では、例えば80℃以上225℃以下の温度で加熱処理(硬化処理)を行い、シート状接着剤の小片10’に含まれる第1アクリルポリマーのグリシジル基などの反応活性を高めて、シート状接着剤10の硬化を進行させる。
【0149】
封止工程では、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂によって、少なくとも光半導体素子の周囲を封止する。封止工程では、熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させるために、例えば150℃以上200℃以下の温度で加熱処理を行う。通常、外界と光半導体素子との間における光の通過経路を封止しないように熱硬化性樹脂を配置する。
【0150】
なお、厚さの薄い光学部材を小片化して多数の小片化された光学部材を得るために、上述したダイシングソーを使用せず、レーザ光を使用して光学部材の内部に脆弱部位を形成した後、斯かる脆弱部位を境界にして光学部材を分割して小片化する方法(ステルス方式など)を採用することができる。
【0151】
本実施形態のシート状接着剤は、上述したようにダイシングダイボンドフィルム1の構成部材(シート状接着剤10)として使用されてもよいが、本実施形態のシート状接着剤の用途は、上記の例に限定されない。
本実施形態のシート状接着剤は、センサーチップ又は発光素子もしくは受光素子などの光半導体素子を保護する用途などにおいて使用できる。
【0152】
本実施形態のシート状接着剤、ダイシングダイボンドフィルム、及び電子部品装置は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示のシート状接着剤、ダイシングダイボンドフィルム、及び電子部品装置に限定されない。
即ち、一般的なシート状接着剤、ダイシングダイボンドフィルム、及び電子部品装置において用いられる種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【0153】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
(1)
グリシジル基を分子中に有する第1アクリルポリマーと、カルボキシ基を分子中に有する第2アクリルポリマーとを含む、シート状接着剤。
(2)
前記第1アクリルポリマーのエポキシ当量が、150以上1300未満であり、
前記第1アクリルポリマーが、前記グリシジル基を含有するグリシジル(メタ)アクリレート単位を分子中に有する、上記(1)に記載のシート状接着剤。
(3)
前記第1アクリルポリマーのガラス転移点が、-10℃以上30℃以下であるか、又は、前記第2アクリルポリマーのガラス転移点が、30℃以上80℃以下である、上記(1)又は(2)に記載のシート状接着剤。
(4)
メタルハライドランプを500時間照射する前と照射した後とで、L*A*b*色空間のb*の差(Δb*)が、0.2以下である、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のシート状接着剤。
(5)
熱硬化処理された後の260℃におけるせん断接着力が0.5MPa以上10MPa以下である、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のシート状接着剤。
(6)
上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のシート状接着剤と、該シート状接着剤の一方の面に重なるダイシングテープとを備える、ダイシングダイボンドフィルム。
(7)
上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のシート状接着剤を備える、電子部品装置。
【実施例0154】
次に、実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0155】
以下のようにして、シート状接着剤を製造した。また、このシート状接着剤をダイシングテープと貼り合わせて、ダイシングダイボンドフィルムを製造した。
【0156】
<シート状接着剤の配合原料>
(第1アクリルポリマー)グリシジル基を含有
[A1-1]
第1アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*グリシジルメタクリレート(GMA):32質量%
*エチルアクリレート(EA):32質量%
*ブチルメタクリレート(BMA):36質量%
(エポキシ当量444eq/100g、ガラス転移点11℃、質量平均分子量Mw=7万)
[A1-2]
第1アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*グリシジルメタクリレート(GMA):77質量%
*エチルアクリレート(EA):23質量%
(エポキシ当量184eq/100g、ガラス転移点27℃、質量平均分子量Mw=5万)
[A1-3]
第1アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*グリシジルメタクリレート(GMA):14質量%
*エチルアクリレート(EA):49質量%
*ブチルアクリレート(BA):14質量%
*アクリロニトリル(AN):23質量%
(エポキシ当量1014eq/100g、ガラス転移点1℃、質量平均分子量Mw=5万)
[A1-4]
第1アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*グリシジルメタクリレート(GMA):7質量%
*エチルアクリレート(EA):81質量%
*ブチルアクリレート(BA):12質量%
(エポキシ当量2029eq/100g、ガラス転移点-25℃、質量平均分子量Mw=5万)
[A1-5]
第1アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*グリシジルメタクリレート(GMA):98質量%
*メチルメタクリレート(MMA):2質量%
(エポキシ当量145eq/100g、ガラス転移点47℃、質量平均分子量Mw=4万)
(第2アクリルポリマー)カルボキシ基を含有
[A2-1]
第2アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*メタクリル酸(MAA):10質量%
*エチルアクリレート(EA):36質量%
*メタクリル酸メチル(MMA):54質量%
(酸価60、ガラス転移点50℃、質量平均分子量Mw=2万)
[A2-2]
第2アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*メタクリル酸(MAA):10質量%
*エチルアクリレート(EA):23質量%
*メタクリル酸メチル(MMA):67質量%
(酸価125、ガラス転移点70℃、質量平均分子量Mw=2万)
[A2-3]
第2アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*メタクリル酸(MAA):6質量%
*エチルアクリレート(EA):30質量%
*メタクリル酸メチル(MMA):64質量%
(酸価40、ガラス転移点57℃、質量平均分子量Mw=2万)
[A2-4]
第2アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*メタクリル酸(MAA):3質量%
*エチルアクリレート(EA):55質量%
*メタクリル酸メチル(MMA):43質量%
(酸価20、ガラス転移点23℃、質量平均分子量Mw=2万)
[A2-5]
第2アクリルポリマーを下記のモノマー組成で重合した。
*メタクリル酸(MAA):24質量%
*エチルアクリレート(EA):14質量%
*メタクリル酸メチル(MMA):62質量%
(酸価150、ガラス転移点94℃、質量平均分子量Mw=2万)
(フェノール樹脂)
製品名「MEHC-7800H」 宇部興産社製
(水酸基価179)
【0157】
(実施例1~7)
表1に示す各組成で第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマー等と有機溶媒(メチルエチルケトン)とを混合して、固形分濃度が20質量%となるように接着剤組成物溶液を調製した。
調製した接着剤組成物溶液を、はく離ライナー(シリコーン離型処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム)に塗布した。その後、130℃で2分間乾燥処理することによって、厚さ(平均厚さ)20μmのシート状接着剤を作製した。
【0158】
(比較例)
表1に示す各組成で第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマー等と有機溶媒(メチルエチルケトン)とを混合して、固形分濃度が20質量%となるように接着剤組成物溶液を調製した。
さらに、上記の方法と同様の方法によって、接着剤組成物溶液から厚さ(平均厚さ)20μmのシート状接着剤を作製した。
【0159】
<ダイシングテープの作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、下記の各原料を入れた。窒素気流中で60℃にて10時間重合を行い、アクリル系高分子化合物Aを得た。
・2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):100質量部、
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)26質量部、
・過酸化ベンゾイル:0.4質量部、
・トルエン:80質量部、
上記のごとく重合して得たアクリル系高分子化合物Aを含む液に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、MOIともいう)1.2質量部を加えた。その後、空気気流中で50℃にて60時間、付加反応処理をし、アクリル系高分子化合物A’を得た。
次に、アクリル系高分子化合物A’100部に対して、下記の配合成分を加えて、粘着剤溶液を調製した。
・ポリイソシアネート化合物:1.6質量部
(製品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)
・光重合開始剤:3質量部
(製品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
上記のごとく調製した粘着剤溶液を、はく離ライナー(シリコーン処理を施したPETフィルム)の処理面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。
続いて、粘着剤層面と、基材層(EVAフィルム(115μm厚) グンゼ社製)とを貼り合わせ、23℃にて72時間保存し、ダイシングテープを製造した。
【0160】
<ダイシングダイボンドフィルムの製造>
ダイシングテープの粘着剤層上に、各実施例及び各比較例のシート状接着剤を、ハンドローラーを用いて貼り合せることによって、ダイシングダイボンドフィルムを製造した。
【0161】
各実施例及び各比較例におけるシート状接着剤の組成を表1に示す。
【0162】
【0163】
<シート状接着剤の物性測定>
各実施例及び各比較例のシート状接着剤について、以下のようにして物性及び性能を評価した。
【0164】
(140℃におけるシート状接着剤の粘度)
硬化処理を施す前のシート状接着剤の粘度を測定した。測定条件の詳細は、上述した通りであり、レオメーターを用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0165】
(硬化処理前の室温における引張弾性率)
測定条件の詳細は、上述した通りである。
詳しくは、測定装置として、固体粘弾性測定装置(型式RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック社製)を使用した。
長さ40mm(測定長さ)、幅10mmの試験片を切り出し、周波数1Hz、昇温速度10℃/min、チャック間距離22.5mmの条件において、-30℃~280℃の温度範囲で試験片の引張貯蔵弾性率E’を測定した。室温(25℃)における引張貯蔵弾性率E’の測定値を読み取った。測定結果を表1に示す。
【0166】
(硬化処理後の260℃における引張弾性率)
シート状接着剤に対して150℃にて1時間の硬化処理を施した後、該シート状接着剤の260℃における引張貯蔵弾性率を測定した。260℃における引張貯蔵弾性率E’の測定値を読み取った点以外、測定方法は、上記と同様である。
【0167】
(透過率)
実施例及び比較例の各シート状接着剤を測定サンプルとした。紫外可視近赤外分光光度計(製品名「V-670DS」、日本分光社製)、および、積分球ユニットを使用して、300nm~2000nmの波長域における全光線透過率スペクトルを測定した。得られたスペクトルから波長400nmにおける透過率を読み取った。
【0168】
(ヘイズ値)
JIS K7136:2000(プラスチック-透明材料のヘイズの求め方)に準じてヘイズ値を測定した。
【0169】
(シート状接着剤の耐光性(経時的な着色の抑制性能))
測定条件の詳細は、上述した通りである。
詳しくは、光を長期間照射し続けた前と後とで、色差計で測定したときのL*A*b*色空間のb*の差(Δb*)を求めた。測定条件は、JIS Z8781-4:2013(測色-第4部:CIE1976 L*A*b*色空間)に準じた。
【0170】
(260℃におけるシート状接着剤のせん断接着力)
厚さ0.5mm、3mm×3mmのベアチップ(シリコンチップ)に、シート状接着剤を貼付した。貼付条件は、温度80℃、速度10mm/s、圧力0.15MPaであった。
さらに、シート状接着剤をベアチップ(0.5mm、10mm×10mm)に接着させた。接着では、ダイボンダー(新川社製、製品名「ダイボンダーSPA-300」)を用いた。また、接着条件は、ステージ温度130℃、ダイボンド荷重0.2MPa、ダイボンド時間1秒であった。
続いて、150℃×1時間の熱硬化処理を実施し、各試験片を準備した。
せん断試験機(Dage社製、Dage4000)を用いて、各試験片に対してせん断力を与え、せん断接着力(MPa)を測定した。測定時の条件は、速度500μm/s、測定ギャップ100μm、ステージ温度260℃であった。なお、試験片を測定ステージに置いてから20秒が経過した後に測定を実施した。
【0171】
(シート状接着剤とダイシングテープの粘着剤層との間の剥離力)
粘着剤層に対して以下の硬化処理を施す前、及び、硬化処理を施した後(22℃で紫外線照射後)において、シート状接着剤とダイシングテープの粘着剤層との間の剥離力をそれぞれ測定した。測定方法は、上述した通りである。測定法の詳細を以下に記載する。
まず、シート状接着剤にPETはく離ライナーが貼り付いた状態のシート状接着剤付きダイシングテープを用意した。
硬化処理を施す場合、22℃の温度条件下で、ダイシングテープの基材層の側から粘着剤層に対して300mJ/cm2(照射強度150mW/cm2、2秒間)の紫外線を照射した(高圧水銀ランプを使用)。
次に、PETはく離ライナーを剥離した後、シート状接着剤に裏打ちテープ(製品名「BT-315」、日東電工社製)を貼り合わせた。
続いて、裏打ちテープが貼り合わされたシート状接着剤付きダイシングテープから、幅50mm、長さ120mmのサイズの試験片を切り出した。切り出した試験片を用いて、T型剥離試験機(製品名「オートグラフAG-20KNSD」、島津製作所社製)を使用してT型剥離試験を行い、剥離力(N/20mm)を測定した。測定における温度条件は23℃、剥離速度は300mm/分とした。
【0172】
上記の結果から把握されるように、実施例のシート状接着剤は、比較例のシート状接着剤に比べて、経時的な着色が抑制されていた。また、熱硬化処理による弾性率の極端な低下が抑制されていた。従って、実施例のシート状接着剤は、製品としての信頼性が比較的高い。
シート状接着剤が芳香族化合物(フェノール樹脂など)を含有しないことによって、シート状接着剤の経時的な着色がさらに抑制された。
第1アクリルポリマーのエポキシ当量が150[g/eq]以上であり、且つ、第2アクリルポリマーの酸価が140[mgKOH/g]以下であることによって、シート状接着剤が硬化された後の弾性率が必要以上に高くなることがさらに抑制された。又は、第1アクリルポリマーに占める、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーの構成単位の含有割合が85質量%以下であり、第2アクリルポリマーに占める、カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの構成単位の含有割合が20質量%以下であることによって、シート状接着剤が硬化された後の弾性率が必要以上に高くなることがさらに抑制された。
【0173】
実施例のシート状接着剤は、グリシジル基を含有する第1アクリルポリマー及びカルボキシ基を含有する第2アクリルポリマーを含み、良好な透明性を有する。
このような実施例のシート状接着剤(ダイシングダイボンドフィルム)を、電子部品装置の製造において使用することによって、例えば光半導体素子などを有する電子部品装置を効率良く製造することができる。
例えば、ガラス又はレンズなどの光学部材と、光半導体素子などとを接着するために使用される実施例のごときシート状接着剤は、第1アクリルポリマー及び第2アクリルポリマーの両方を含むため、良好な透明性を有しつつ、経時的な着色、及び、熱硬化処理による弾性率の極端な低下が抑制されている。よって、実施例のごときシート状接着剤を有するダイシングダイボンドフィルムを使用して光学センサモジュール(光半導体装置)などを製造することによって、光学センサモジュールなどの製品としての信頼性が比較的高くなり得る。