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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094632
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】エンジン用配管支持構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20240703BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F02M37/00 321B
F02M55/02 350H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211301
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】沖見 昇一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
(72)【発明者】
【氏名】藤木 駿
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AB02
3G066AC09
3G066AD04
3G066BA22
3G066BA46
3G066CD04
(57)【要約】
【課題】高圧燃料配管の中間部を支持するに当たり、エンジン側の固定部と高圧燃料配管との間隔のばらつき(寸法誤差)を吸収して、鋼管製の高圧燃料配管の中間部を無理なく支持することができるエンジン用配管支持構造を提供する。
【解決手段】サプライポンプ2による吐出燃料をコモンレール1に送る高圧燃料配管3を、高圧燃料配管3の長さ方向での中間部3Aでエンジンの固定部19に支持する配管支持機構Aを設け、配管支持機構Aは、配管に外囲して係止可能な配管係止部7x、7yを一対有する配管クランプ7と、配管クランプ7の一方の配管係止部7xに係止可能な被係止部8Bを備えて固定部19に取付可能な取付具8とを有してなり、固定部19に取付けられている取付具8の被係止部8Bが配管クランプ7の一方の配管係止部7xに係止され、かつ、配管クランプ7の他方の配管係止部7yに高圧燃料配管3が係止されているエンジン用配管支持構造。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライポンプによる吐出燃料をコモンレールに送る高圧燃料配管を、前記高圧燃料配管の長さ方向での中間部でエンジンの固定部に支持する配管支持機構を設け、
前記配管支持機構は、配管に外囲して係止可能な配管係止部を一対有する配管クランプと、前記配管クランプの一方の前記配管係止部に係止可能な被係止部を備えて前記固定部に取付可能な取付具とを有してなり、
前記固定部に取付けられている前記取付具の前記被係止部が前記配管クランプの一方の前記配管係止部に係止され、かつ、前記配管クランプの他方の前記配管係止部に前記高圧燃料配管が係止されているエンジン用配管支持構造。
【請求項2】
前記取付具は、前記固定部に螺装するための螺着部を有する取付本体に、一方の前記配管係止部に係止される棒状部材を前記被係止部として一体化することにより構成されている請求項1に記載のエンジン用配管支持構造。
【請求項3】
前記取付具は、前記固定部に螺装するための螺着部を有する取付本体の先端部を、一方の前記配管係止部で係止される前記被係止部に形成することにより構成されている請求項1に記載のエンジン用配管支持構造。
【請求項4】
前記取付本体は、ボルト挿通用孔でなる前記螺着部を有する金属板により形成されている請求項3に記載のエンジン用配管支持構造。
【請求項5】
前記先端部は、前記取付本体の幅を一方の前記配管係止部に内嵌可能な幅に狭めてなる内嵌部と、前記内嵌部における一方の前記配管係止部から突出する部分を側方に折り曲げ形成してなる最先端部とを有して形成されている請求項4に記載のエンジン用配管支持構造。
【請求項6】
前記内嵌部は、板厚方向に段差が存在する状態に屈曲形成されている請求項5に記載のエンジン用配管支持構造。
【請求項7】
前記取付具は、冷却水の移送配管を支持する部材に兼用されている請求項1~6のいずれか一項に記載のエンジン用配管支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料配管や潤滑油配管などの配管を、シリンダブロックなどの固定部に支持させる構造の工夫であって、改良されたエンジン用配管支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農機や建機に適用される産業用ディーゼルエンジンなどのコモンレールを用いるエンジンでは、サプライポンプで昇圧された高圧の燃料をコモンレールに圧送供給している。サプライポンプは、プランジャ構造などによって燃料を圧送するものであり、近年の厳しい排ガス規制に対応すべく燃料噴霧をより微粒化できるように、燃料の圧力をより高くする傾向がある。
【0003】
サプライポンプとコモンレールとを繋ぐ燃料配管、即ち高圧燃料配管は、高圧に耐える必要があることから、強度のある鋼管が用いられることが多い。例えば、特許文献1(図1を参照)において開示されるように、サプライポンプ(3)とコモンレール(1)とを高圧燃料配管(5)で連通接続させる構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001‐329929号公報
【特許文献2】特開2004‐150339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サプライポンプの吐出圧を高圧化するには圧送量を増やす必要があるが、その高圧化によって振動が発生し易くなる傾向がある。その振動により、噴射管〔前述の特許文献1における高圧燃料配管(5):図1参照〕が振動によって振れ動くようになる。振れが長時間続いたり揺れ幅が大きくなったりすると、高圧燃料配管に損傷のリスクが生じる不利がある。高圧燃料配管の長さが長くなる場合には、前述の不利が増すので、高圧燃料配管の中間部を固定支持させる必要が出てくる。
【0006】
例えば、特許文献2の図4,5において開示されるように、燃料ホース(42)に巻回装備されるクランプ(43)をフレームなどの固定部にボルト止めさせる、という固定支持(クランプ)構造が考えられる。特許文献2で開示される支持構造(クランプを直接ボルト止め)は、柔軟性のある燃料ホースの支持に関するものである。
【0007】
しかしながら、特許文献2の開示構成を、柔軟性の無い鋼管に適用するには位置精度の点で無理がある。即ち、鋼管は硬くて剛性があるため(柔軟性はないため)、固定部のネジ孔との寸法誤差が大きいとクランプを固定部にボルト止めできないか、又は、ボルト止めするために強制的に鋼管を歪めるかのどちらかになるからである。従って、圧の高い高圧燃料配管の中間部を位置精度に融通の利くものとしながらしっかりと支持させるには、支持構造の見直しを含めたさらなる改良が必要である。
【0008】
本発明の目的は、鋭意研究により、高圧燃料配管の中間部を支持するに当たり、エンジン側の固定部と高圧燃料配管との間隔のばらつき(寸法誤差)を吸収して、鋼管製の高圧燃料配管の中間部を無理なく支持することができるエンジン用配管支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジン用配管支持構造において、
サプライポンプによる吐出燃料をコモンレールに送る高圧燃料配管を、前記高圧燃料配管の長さ方向での中間部位でエンジンの固定部に支持する配管支持機構を設け、
前記配管支持機構は、配管に外囲して係止可能な配管係止部を一対有する配管クランプと、前記配管クランプの一方の前記配管係止部に係止可能な被係止部を備えて前記固定部に取付可能な取付具とを有してなり、
前記固定部に取付けられている前記取付具の前記被係止部が前記配管クランプの一方の前記配管係止部に係止され、かつ、前記配管クランプの他方の前記配管係止部に前記高圧燃料配管が係止されていることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記取付具は、前記固定部に螺装するための螺着部を有する取付本体の先端部を、一方の前記配管係止部で係止される形状に形成することにより構成されていると好都合である。また、前記取付本体は、ボルト挿通用孔でなる前記螺着部を有する金属板により形成されているとより好都合である。
【0011】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、特許請求の範囲における請求項2及び請求項5~7を参照のこと。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、詳細は「発明を実施するための形態」において説明するが、取付具と配管クランプとの2つの部品を介して高圧燃料配管を固定部に支持させる構成としたので、1つの部品で取り付ける従来の手段に比べて、寸法誤差の許容範囲を無理なく拡げることが可能になる。
【0013】
即ち、固定部における取付具の取付部(例:吸気マニホルドの外壁に形成されたネジ孔)と高圧燃料配管の中間部との所定の間隔の寸法誤差が大きくても、高圧燃料配管の中間部に応力を掛けずにしっかりと支持することができる。
【0014】
その結果、高圧燃料配管の中間部を支持するに当たり、エンジン側の固定部と高圧燃料配管との間隔のばらつき(寸法誤差)を吸収して、鋼管製の高圧燃料配管の中間部を無理なく支持することができるエンジン用配管支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】産業用ディーゼルエンジンの部分的な右側面図
図2図1に示すエンジンの平面図
図3】(A)図1に示すエンジンの正面図、(B)冷却水戻り配管を示す正面図
図4】(A)冷却水戻り配管を示す平面図、(B)冷却水戻り配管を示す右側面図
図5】(A)配管支持構造を示す要部の斜め上方から見た斜視図、(B)配管クランプと取付具との組付け構造を示す要部の縦断面図
図6】取付具を示し、(A)斜め上方から見た斜視図、(B)先端部の正面図
図7】配管クランプの要部を示し、(A)一方の保持片の平面図、(B)一方の保持片の係止溝側から見た側面図
図8】(A)別実施形態の取付具を示す斜め上方から見た斜視図、(B)別実施形態の配管支持構造を示す斜め上方から見た斜視図、
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明によるエンジン用配管支持構造の実施の形態を、農機や建機等に好適に使用される直列4気筒の産業用ディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。なお、エンジンの前後左右については、気筒直列方向を前後方向として、エンジン冷却ファン18のある側を前、その反対側を後、吸気マニホルド19のある側を右、その反対を左、とする。
【0017】
図1図3(A)にコモンレール式ディーゼルエンジンの一部が示され、シリンダブロック11(図1参照)の上にシリンダヘッド12が組付けられ、シリンダヘッド12の上にヘッドカバー13が組付けられ、シリンダブロック11の前に伝動ケース(調時伝動ケース)14が組付けられている。伝動ケース14の上部にウォータポンプ15が内装され、その上方にウォータフランジ16が設けられている。
【0018】
図1に示されるように、ウォータポンプ15の駆動軸(図示省略)には伝動ベルト27が巻回されるポンププーリ17が取付けられ、ポンププーリ17にはエンジン冷却ファン18が装備されている。シリンダヘッド12の右側には吸気マニホルド19が設けられ、吸気マニホルド19の吸入部19Cには、シリンダヘッド12の左側に配置される過給機(図示省略)の出力側である圧搾空気の供給ダクト20が連通接続されている。
【0019】
図1図3(A)に示されるように、ヘッドカバー13の下端部のすぐ右横で吸気マニホルド19の直上には、気筒直列方向である前後方向に延びるコモンレール1が配備されており、シリンダブロック11の右上張り出しケース部11Aには、燃料を加圧するサプライポンプ2が収容されている。そして、サプライポンプ2から吐出される加圧燃料をコモンレール1に送る高圧燃料配管3が設けられている。
【0020】
つまり、サプライポンプ2から右斜め上方向く加圧燃料出口部2aと、コモンレール1の上面1aに上向き姿勢で設けられた加圧燃料入力部1Aとに亘って、鋼管製の高圧燃料配管3が配策されている。高圧燃料配管3は、吸気マニホルド19の横外側(右側)を下から上に向けて通されており、数か所で曲げながらも垂直に上下方向に向く姿勢の中間部3Aを有している。
【0021】
コモンレール1の上面1aには、ヘッドカバー13に設けられた複数個(例:4個)のインジェクタ4のそれぞれへ加圧燃料を送る複数の供給配管5の取出し部5Aが設けられている。例えば、加圧燃料入力部1Aの前側には1箇所の、かつ、後側には前後に並ぶ3箇所の計4箇所に、上向き姿勢の取出し部5Aが配置されている。各取出し部5Aには、対応するインジェクタ4に連通接続される供給配管5が架設されている。
【0022】
また、図1図3(A)に示されるように、シリンダヘッド12の右側の後部上部(図示省略)の図示されない冷却水路と、ウォータポンプ15の戻り口15A(図1参照)とを連通接続させる冷却水戻り配管(「冷却水の移送配管)の一例)6が設けられている。冷却水戻り配管6は、若干の曲がり部を有するがほぼ前後真っ直ぐに延びて配策され、後端には可撓性を有する材料製の戻りホース6Hが接続されている。
【0023】
冷却水戻り配管6の前端は戻り口15Aに液密に嵌合されるとともに、冷却水戻り配管6に一体に設けられた前ステー6aが伝動ケース14の側面にボルト止めされている。そして、冷却水戻り配管6の後端部に一体に設けられた後ステー6bが「 」にボルト止めされている。冷却水戻り配管6は、高圧燃料配管3の下部と吸気マニホルド19との間(左右間)を通されており、例えば金属パイプにより形成されている。
【0024】
次に、高圧燃料配管3の中間部を支持するエンジン用配管支持構造について説明する。本発明のエンジンでは、高圧燃料配管3の中間部3Aを吸気マニホルド19(「エンジンの固定部」の一例)に支持させる配管支持機構Aが設けられている。この配管支持機構Aには3種の構成(構造)があり、図1図3(A)に示されるものを第1の配管支持機構A1(A)、図3(B)~図7に示されるものを第2の配管支持機構A2(A)、図8に示されるものを第3の配管支持機構A3(A)と呼ぶ。
【0025】
詳しくは後述するが、第1の配管支持機構A1と第2の配管支持機構A2の違いは、取付具8が冷却水戻り配管6の支持を兼ねるか否かの点であり、第3の配管支持機構A3は、第1の配管支持機構A1と取付具8の構造が一部異なる点である。説明の都合上、基本的に第2の配管支持機構A2で説明するものとする。
【0026】
〔第2の配管支持機構A2〕
図3(B)~図7に示されるように、第2の配管支持機構A2(配管支持機構A)は、高圧燃料配管3に外囲して係止可能な配管係止部7x,7yを一対有する配管クランプ7と、配管クランプ7の一方の配管係止部7xに係止可能な被係止部8Bを備えて固定部19に取付可能な取付具8とを有して構成されている。
組付け状態では、図5(A)に示されるように、吸気マニホルド19に取付けられている取付具8の被係止部8Bが配管クランプ7の一方の配管係止部7xに係止され、かつ、配管クランプ7の他方の配管係止部7yに高圧燃料配管3の中間部3Aが係止されている
【0027】
図5及び図7に示されるように、配管クランプ7は、両端部に係止溝7a,7bを有する第1の保持片7Aと、両端部に係止溝7c,7dを有する第2の保持片7Bとからなる汎用部品である。第1の保持片7Aの中央部にはボルト挿通用の円孔7eが形成され、第2の保持片7Bの中央部には雌ネジ7fが形成されている。各係止溝7a~7dに、ゴムなどの弾性材でなる緩衝片7hを設けてもよい〔図5(B)を参照〕。また、これら第1及び第2の保持片7A,7Bは、円孔7e及び雌ネジ7f以外は互いに同一のものであるが、多少異なっていてもよい。なお、図7(B)は、図7(A)において紙面上での上から見下げた状態の第1の保持片7Aを描き、ついでに係止溝7aと被係止部8B(先端部8B)との関係も示したもので、いわゆる製図法に則った描き方ではない。
【0028】
一方の配管係止部7xは、第1の保持片7Aの一方の係止溝7aと第2の保持片7Bの一方の係止溝7cとにより構成され、他方の配管係止部7yは、第1の保持片7Aの他方の係止溝7bと第2の保持片7Bの他方の係止溝7dとにより構成されている。第1及び第2の保持片7A,7Bを、円孔7eに取付ボルト9を通して雌ネジ7fに螺着させた組付け状態では、取付具8の被係止部8Bが一方の配管係止部7xに挟まれて係止(クランプ)されており、高圧燃料配管3の中間部3Aが他方の配管係止部7yに挟まれて係止(クランプ)されている。
【0029】
つまり、配管クランプ7は、1つの取付ボルト9を締付けて第1及び第2の保持片7A,7Bどうしを相対固定することにより、一方及び他方の配管係止部7x,7yのそれぞれに被係止部8B及び中間部3A(共に配管の一例)を挟み込んで支持させる、という2つの機能を発揮させることができる。配管クランプ7の各配管係止部7x,7yは略円形断面を持つものであるから、取付ボルト9を緩めれば、中間部3A及び被係止部8Bのそれぞれとは配管係止部7x,7yの軸心方向(上下方向)周りには位置ずれ、即ち相対回動移動が可能である。
【0030】
図5及び図6に示されるように、取付具8は、吸気マニホルド19固定部に固定ボルト10で螺装するためのボルト挿通用孔(螺着部の一例)8aを有する取付本体8Aの先端部(被係止部)8Bを、一方の配管係止部7xで係止される形状に形成する金属板により構成されている。平面視では、前後向きの取付本体8Aと左右向きの中間部8C(後述)と、前後向きの先端部8Bとにより、取付具8は前方開放の「コ」字形状を呈している。なお、図5(A)に示されるように、吸気マニホルド19に突出形成された部品取付座19Bが、取付本体8Aの前端縁(符記省略)に近接して沿っているので、固定ボルト10を締め付ける際の取付具8の廻り止め機能が発揮される利点がある。
【0031】
取付本体8Aの後部を、まず右に屈曲してなる中間部8Cを設け、その中間部8Cの右部を前方に屈曲することで先端部8Bが形成されている。取付本体8Aの下部は下方に湾曲状に延設され、冷却水戻り配管6の前後中間部に取付けられる突出片8Dに形成されている。冷却水戻り配管6と突出片8Dとの相対取付手段は、溶着等による一体化や、ボルト等による着脱可能な支持など、種々の構造が可能である。
【0032】
図3(B)、図4図5(A)に示される冷却水戻り配管6は、図1図2(A)に示される冷却水戻り配管6とは前部の形状や前端部の取付構造が異なる仕様とされている。第1の配管支持機構A1に用いられる冷却水戻り配管6は、前部が側面視で直線的に延びており、かつ、取付具8では支持されない構成(図1参照)である。第2の配管支持機構A2に用いられる冷却水戻り配管6は、取付具8が一体に設けられた前部は側面視でも曲がっている形状であり、かつ、サプライポンプ側となる前端部には、ゴムなどの可撓性を有する材料製の屈曲ホース26が設けられている。
【0033】
図6に示されるように、先端部8Bは、取付本体8Aの幅を一方の配管係止部7xに内嵌可能な幅に狭めてなる縦向き姿勢(上向き姿勢)の内嵌部22と、内嵌部22における一方の配管係止部7xから上方に突出する部分を右側方に折り曲げ形成してなる最先端部23とを有して形成されている。そして、内嵌部22は、板厚方向に段差が存在する状態に屈曲形成されている。
【0034】
具体的には、図6(B)に示されるように、先端部8Bは、中間部8Cから曲げられた部分である先端下部21と、先端下部21から上方に延設される小幅の内嵌部22とからなる。内嵌部22には、その上下中間部を右方に張り出す段差状に屈曲してなる膨出部(段差の一例)24が形成されている。これは、断面円形の配管を一方の配管係止部7xに安定的に挟む状態と同等の状態を得るための形状工夫である〔図7(A)を参照〕。なお、配管係止部7x,7yに緩衝片7hが設けられている場合は、図5(B)に示すような組付け状態になる。
【0035】
つまり、平面視で略円形を呈する一方の配管係止部7xに内嵌部22が挟まれた状態では、内嵌部22が前後左右に位置ずれしないように、内嵌部22の幅(前後)寸法及び膨出部24を含めた左右寸法が定められている。加えて、内嵌部22より後方に張り出している先端下部21と、右方に曲げられている最先端部23とにより、内嵌部22が一方の配管係止部7xで係止された状態〔図5(B)を参照〕では、先端部8Bと一方の配管係止部7xとの、つまりは取付具8と配管クランプ7とが所定量以上で上下に位置ずれされないストッパー機能が生じるように構成されている。
【0036】
一方の配管係止部7xは、「配管に外囲して係止可能な」ものであるが、屈曲形成された板金部材でなる内嵌部22は、中間部3Aの軸心方向視(上下方向視)では、平面視で略円形を呈する配管係止部7xに4点接触し、かつ、側面視では膨出部24の突出端とその上下における内嵌部22との3点接触されるので、配管と同様に安定的に内嵌部22が係止される利点がある。
【0037】
〔第1の配管支持機構A1〕
図1図3(A)に示されるように、第1の配管支持機構A1(配管支持機構A)は、取付具8の突出片8Dが省略されている以外は第2の配管支持機構A2と同じである。つまり、取付具8は冷却水戻り配管6は支持しないものであり、中間部3Aを支持する専用のものとされている。従って、異なる箇所の説明のみ行うものとし、対応する箇所には第2の配管支持機構A2のものと同じ符号を付すものとする。
【0038】
〔第3の配管支持機構A3〕
図8(A),(B)に示されるように、第3の配管支持機構A3(配管支持機構A)は、取付具8の先端部8Bが異なる以外は第2の配管支持機構A2と同じである。従って、異なる箇所の説明のみ行うものとし、対応する箇所には第1の配管支持機構A1のものと同じ符号を付すものとする。
【0039】
第3の配管支持機構A32における取付具8の先端部8Bは、図8(A)に示されるように、第1の配管支持機構A1の内嵌部22が、鋼製の丸棒による棒状部材25を先端下部21に溶着してなる構造に置き換えられたものである。即ち、取付具8は、固定部19に螺装するための螺着部8aを有する取付本体8Aに、一方の配管係止部7xに係止される棒状部材25を被係止部8Bとして一体化することにより構成されている。
【0040】
棒状部材25は断面形状が円形であるから、図8(B)に示されるように、取付ボルト9で第1及び第2の保持片7A,7Bどうしを相対固定した組付け状態では、一方の配管係止部7xに棒状部材25が安定してしっかりと挟まれて係止されている。また、棒状部材25は剛性のある丸棒製であるから、外部入力に対して変形し難い利点もある。
【0041】
〔作用効果について〕
第1~第3の各配管支持機構A1~A3を設けたことによる作用効果としては、次の(1)~(4)が挙げられる。
(1)取付具8と配管クランプ7との2つの部品を介して高圧燃料配管3を固定部19に支持させるので、固定部19の取付具8の取付部(吸気マニホルド19の右側壁19Aのネジ孔)と中間部3Aとの所期する間隔の寸法誤差が大きくても、中間部3Aに応力を掛けずにしっかりと支持することができる。
(2)先端下部21の存在により、配管クランプ7の取付具8に対する下方移動が規制される利点がある。
【0042】
(3)配管クランプ7の構造上、取付具8と配管クランプ7及び中間部3Aと配管クランプ7は相対回動による位置調節が可能であるから、中間部3Aの取付具8に対する位置の融通がより効くようになり、前述の「応力を掛けずにしっかりと支持する」という作用効果を強化することができる。
(4)平面視で取付具8はコ字状に迂回された形状であるから、固定ボルト10で螺着される取付本体8Aに対する内嵌部22や棒状部材25が弾性的な撓み変形が可能になり、振動や外力が生じてもその負荷が中間部3Aに伝わり難い利点がある。
【0043】
第2の配管支持機構A2は、第3の配管支持機構A3に比べて、(5),(6)の作用効果を有している。
(5)最先端部23の存在により、配管クランプ7の取付具8に対する上方移動が規制される利点がある。
(6)第3の配管支持機構A3の取付具8は、取付本体8Aなどを含む板金部材と棒状部材25との2つの構成要素を溶着(溶接)させてなるに対して(図8を参照)、第2の配管支持機構A2の取付具8は1つの板金部材のみで済むので、生産性がより良く、かつ、コストダウンできる点で有利である。
【0044】
第2,3の配管支持機構A2,3は、第1の配管支持機構A1に比べて、(7)の作用効果を有している。
(7)取付本体8Aに下方に続く突出片8Dで冷却水戻り配管6を支持しているので、取付具8としての部品点数は同じとしながら、2つの配管を一挙に支持することができて、合理性が向上する利点がある。
【0045】
〔別実施形態〕
図6などに示される取付具8の内嵌部22は、「段差(膨出部24)の無いい平板のままの」、「前後方向視でクランク状(Z状)を呈するもの」、「膨出部24が2カ所以上あるもの」、「螺旋状に捻り形成されたもの」、などでも良い。
取付具8が、平面視で後方に膨らむ「コ」字状に形成されていると(図6を参照)、ボルト挿通孔8aの廻りの空間部が広く取れて固定ボルト10の工具による回し操作が行い易い利点があるが、平面視でL字状に屈曲されるなど、その他の形状も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 コモンレール
2 サプライポンプ
3 高圧燃料配管
3A 中間部
6 冷却水の移送配管
7 配管クランプ
7x 一方の前記配管係止部
7y 他方の前記配管係止部
8 取付具
8A 取付本体
8B 被係止部、先端部
8a 螺着部
19 固定部
22 内嵌部
23 最先端部
24 断差(膨出部)
A 配管支持機構
A1 第1の配管支持機構
A2 第2の配管支持機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8