(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094635
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両の遠隔操縦支援装置及び遠隔操縦支援システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240703BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240703BHJP
G05D 1/00 20240101ALN20240703BHJP
【FI】
H04Q9/00 301Z
A01B69/00 B
G05D1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211304
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小丸 千明
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
5K048
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA07
2B043DA17
2B043EA33
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE06
5H301AA01
5H301BB01
5H301BB02
5H301BB07
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301GG14
5H301GG17
5K048BA42
5K048BA48
5K048DA01
5K048DC01
5K048EB15
(57)【要約】
【課題】作業車両の遠隔操縦の停止中に物体が作業車両に近づいたことが検出され、かつ検出されなくなった場合に、遠隔操縦者が当該物体の有無等を確認してから作業車両の遠隔操縦を再開するようにする。
【解決手段】 作業車両の遠隔操縦支援装置が、作業車両に設けられ且つ物体を検出する検出装置から、前記物体の検出情報を取得する検出情報取得部と、遠隔操縦者にて操作可能な、前記作業車両の遠隔操縦を行うための操作装置と、前記操作装置の操作に基づき、前記作業車両に遠隔操縦信号を送信可能な送信部と、前記操作装置による前記作業車両の前記遠隔操縦が行われない非操縦時間において、前記検出情報が前記検出装置で前記物体を新たに検出し、且つ前記非操縦時間の終了時までに前記検出装置で当該物体を検出しなくなっていることを示している場合、当該物体をロスト物体とし、前記遠隔操縦を再開しようとする遠隔操縦者に、前記ロスト物体についての確認を促すための確認要求処理を実行する制御装置と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に設けられ且つ物体を検出する検出装置から、前記物体の検出情報を取得する検出情報取得部と、
遠隔操縦者にて操作可能な、前記作業車両の遠隔操縦を行うための操作装置と、
前記操作装置の操作に基づき、前記作業車両に遠隔操縦信号を送信可能な送信部と、
前記操作装置による前記作業車両の前記遠隔操縦が行われない非操縦時間において、前記検出情報が前記検出装置で前記物体を新たに検出し、且つ前記非操縦時間の終了時までに前記検出装置で当該物体を検出しなくなっていることを示している場合、当該物体をロスト物体とし、前記遠隔操縦を再開しようとする遠隔操縦者に、前記ロスト物体についての確認を促すための確認要求処理を実行する制御装置と、を備えている作業車両の遠隔操縦支援装置。
【請求項2】
情報を表示する表示装置を備え、
前記制御装置は、前記確認要求処理として、前記表示装置に、前記ロスト物体についての確認を遠隔操縦者に促すためのロスト物体表示を表示させる請求項1に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項3】
前記ロスト物体表示は、前記ロスト物体が検出されなくなったロスト地点の表示を含む請求項2に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項4】
前記ロスト物体表示は、前記検出装置で物体を検出できない不感領域のうち、前記ロスト物体が前記非操縦時間の終了時に存在する可能性のある要確認領域の表示を含む請求項2又は3に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項5】
前記ロスト物体表示は、前記非操縦時間内に前記検出装置が前記ロスト物体を検出していた間の前記ロスト物体の移動軌跡の表示を含む請求項2又は3に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項6】
前記ロスト物体表示は、前記ロスト物体の種類の表示を含む請求項2又は3に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項7】
前記ロスト物体表示は、前記非操縦時間内において、前記検出装置が前記ロスト物体を検出していた時間に関する情報の表示を含む請求項2又は3に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項8】
音声装置を備えており、
前記制御装置は、前記確認要求処理として、前記音声装置に、前記ロスト物体についての確認を遠隔操縦者に促すための警報音を発生させる請求項1に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記作業車両の遠隔操縦を許容する許容モードと、前記作業車両の遠隔操縦を禁止する禁止モードとに切換設定可能であり、
前記遠隔操縦支援装置は、前記禁止モードに設定されている前記制御装置を前記許容モードに切り換えるために遠隔操縦者にて操作可能なロック解除装置を備え、
前記制御装置は、前記許容モードに設定されている状態で、前記非操縦時間内にて前記検出装置が前記ロスト物体を検出すると、前記確認要求処理として、前記許容モードから前記禁止モードに切り換わり、遠隔操縦者が前記ロック解除装置を操作するまで、前記禁止モードで保持される請求項1に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記禁止モードにおいて、前記操作装置を、操作不能なロック状態に
するものであり、
前記ロック解除装置は、ロック状態にある前記操作装置を、遠隔操縦者による操作を許容する状態に切り換える装置である請求項9に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記禁止モードにおいて、前記送信部を、前記操作装置の操作に対応する遠隔操縦信号の前記作業車両への送信を拒絶するロック状態にするものであり、
前記ロック解除装置は、ロック状態にある前記送信部を、前記遠隔操縦信号の送信を許容する状態に切り換えるために遠隔操縦者にて操作可能な装置である請求項9に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記確認要求処理として、前記非操縦時間中に前記検出装置が前記ロスト物体を検出すると、前記作業車両を非作業状態に切り換えるよう前記送信部より該当の遠隔操縦信号を前記作業車両に送信し、遠隔操縦者が前記作業車両を作業状態にするよう前記操作装置を操作するまで、前記作業車両を前記非作業状態に保持する請求項1に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項13】
前記作業車両は、対地作業装置を接地位置と非接地位置とに位置切換可能なアクチュエータを備えており、
前記対地作業装置を前記接地位置に配置した状態を前記作業車両の前記作業状態とし、
前記対地作業装置を前記非接地位置に配置した状態を前記作業車両の前記非作業状態とする請求項12に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項14】
前記作業車両は、前記作業車両に連結される作業装置を駆動するための動力取出部を備えており、
前記動力取出部が前記作業車両より前記作業装置へと動力を伝達して前記作業装置を駆動する状態を前記作業車両の前記作業状態とし、
前記動力取出部が前記作業車両より前記作業装置へと動力を伝達せず前記作業装置を駆動しない状態を前記作業車両の前記非作業状態とする請求項12に記載の遠隔操縦支援装置。
【請求項15】
請求項1に記載の遠隔操縦支援装置と、
前記作業車両の備える前記検出装置とを備え、
前記検出装置は、撮像装置を含む作業車両の遠隔操縦支援システム。
【請求項16】
請求項1に記載の遠隔操縦支援装置と、
前記作業車両の備える前記検出装置とを備え、
前記検出装置は、レーザ発光器を含む作業車両の遠隔操縦支援システム。
【請求項17】
請求項1に記載の遠隔操縦支援装置と、
前記作業車両の備える前記検出装置とを備え、
前記検出装置は、超音波発生器を含む作業車両の遠隔操縦支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の遠隔操縦を支援する遠隔操縦支援装置及び遠隔操縦支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、フォークリフトの周囲の監視装置が開示されている。この監視装置は、フォークリフトの停車中に近傍カメラを用いて動体を検出する構成となっている。近傍カメラは下方を撮像するように配置され、死角を少なくしている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、作業車両周辺監視システムが開示されている。この監視システムは、作業車両の周辺の、現在映像と過去の停止時点映像と合成して表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7127597号公報
【特許文献2】特開2021-22804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の監視装置は、近傍カメラの死角を少なくしているとはいえ、死角を全てなくすことができるとはいえず、フォークリフト以外の、例えばトラクタのようにある程度車高が高い作業車両であれば、機体底部の下方が死角になる可能性もある。
【0006】
その一方で、特許文献1の監視装置は、停止中だった時の過去の映像を確認するものではなく、あくまで、停止状態から発進しようとする時等にリアルタイムで映像を確認できる構成である。
【0007】
したがって、仮にトラクタ等の作業車両を発進させようとする時に動物等が作業車両の機体底部下方のようなカメラの死角にいた場合に、作業者は、その存在を知らずに作業車両を発進させて、事故が生じる可能性がある。
【0008】
一方、特許文献2の監視システムは、上述のような合成映像で、現在は見えていない人や物体が過去に存在していたことを作業者が知ることができ、作業車両を発進する前に、このようなものが近くに存在していないか注意を喚起させ構成となっている。
【0009】
しかし、特許文献2の監視システムは、作業車両そのものに設けられており、実際に操縦者が乗り込んで直接操縦する作業車両に向けたものであり、作業車両の遠隔操縦支援装置や遠隔操縦支援システムに向けたものではない。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、作業車両の遠隔操縦を支援する遠隔操縦支援装置及び遠隔操縦支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る作業車両の遠隔操縦支援装置は、作業車両に設けられ且つ物体を
検出する検出装置から、前記物体の検出情報を取得する検出情報取得部と、遠隔操縦者にて操作可能な、前記作業車両の遠隔操縦を行うための操作装置と、前記操作装置の操作に基づき、前記作業車両に遠隔操縦信号を送信可能な送信部と、前記操作装置による前記作業車両の前記遠隔操縦が行われない非操縦時間において、前記検出情報が前記検出装置で前記物体を新たに検出し、且つ前記非操縦時間の終了時までに前記検出装置で当該物体を検出しなくなっていることを示している場合、当該物体をロスト物体とし、前記遠隔操縦を再開しようとする遠隔操縦者に、前記ロスト物体についての確認を促すための確認要求処理を実行する制御装置と、を備えている。
【0013】
前記遠隔操縦支援装置は、情報を表示する表示装置を備えてもよい。前記制御装置は、前記確認要求処理として、前記表示装置に、前記ロスト物体についての確認を遠隔操縦者に促すためのロスト物体表示を表示させてもよい。
【0014】
前記ロスト物体表示は、前記ロスト物体が検出されなくなったロスト地点の表示を含んでもよい。
【0015】
前記ロスト物体表示は、前記検出装置で物体を検出できない不感領域のうち、前記ロスト物体が前記非操縦時間の終了時に存在する可能性のある要確認領域の表示を含んでもよい。
【0016】
前記ロスト物体表示は、前記非操縦時間内に前記検出装置が前記ロスト物体を検出していた間の前記ロスト物体の移動軌跡の表示を含んでもよい。
【0017】
前記ロスト物体表示は、前記ロスト物体の種類の表示を含んでもよい。
【0018】
前記ロスト物体表示は、前記非操縦時間内において、前記検出装置が前記ロスト物体を検出していた時間に関する情報の表示を含んでもよい。
【0019】
前記遠隔操縦支援装置は、音声装置を備えてもよい。前記制御装置は、前記確認要求処理として、前記音声装置に、前記ロスト物体についての確認を遠隔操縦者に促すための警報音を発生させてもよい。
【0020】
前記制御装置は、前記作業車両の遠隔操縦を許容する許容モードと、前記作業車両の遠隔操縦を禁止する禁止モードとに切換設定可能であってもよい。前記遠隔操縦支援装置は、前記禁止モードに設定されている前記制御装置を前記許容モードに切り換えるために遠隔操縦者にて操作可能なロック解除装置を備えてもよい。前記制御装置は、前記許容モードに設定されている状態で、前記非操縦時間内にて前記検出装置が前記ロスト物体を検出すると、前記確認要求処理として、前記許容モードから前記禁止モードに切り換わり、遠隔操縦者が前記ロック解除装置を操作するまで、前記禁止モードで保持されてもよい。
【0021】
前記制御装置は、前記禁止モードにおいて、前記操作装置を、操作不能なロック状態にするものであってもよい。前記ロック解除装置は、ロック状態にある前記操作装置を、遠隔操縦者による操作を許容する状態に切り換える装置であってもよい。
【0022】
前記制御装置は、前記禁止モードにおいて、前記送信部を、前記操作装置の操作に対応する遠隔操縦信号の前記作業車両への送信を拒絶するロック状態にするものであってもよい。前記ロック解除装置は、ロック状態にある前記送信部を、前記遠隔操縦信号の送信を許容する状態に切り換えるために遠隔操縦者にて操作可能な装置であってもよい。
【0023】
前記制御装置は、前記確認要求処理として、前記非操縦時間中に前記検出装置が前記ロ
スト物体を検出すると、前記作業車両を非作業状態に切り換えるよう前記送信部より該当の遠隔操縦信号を前記作業車両に送信し、遠隔操縦者が前記作業車両を作業状態にするよう前記操作装置を操作するまで、前記作業車両を前記非作業状態に保持してもよい。
【0024】
前記作業車両は、対地作業装置を接地位置と非接地位置とに位置切換可能なアクチュエータを備えていてもよい。前記対地作業装置を前記接地位置に配置した状態を前記作業車両の前記作業状態としてもよい。前記対地作業装置を前記非接地位置に配置した状態を前記作業車両の前記非作業状態としてもよい。
【0025】
前記作業車両は、前記作業車両に連結される作業装置を駆動するための動力取出部を備えていてもよい。前記動力取出部が前記作業車両より前記作業装置へと動力を伝達して前記作業装置を駆動する状態を前記作業車両の前記作業状態としてもよい。前記動力取出部が前記作業車両より前記作業装置へと動力を伝達せず前記作業装置を駆動しない状態を前記作業車両の前記非作業状態としてもよい。
【0026】
本発明の一態様に係る作業車両の遠隔操縦支援システムは、前記遠隔操縦支援装置と、前記作業車両の備える前記検出装置とを備えてもよい。前記検出装置は、撮像装置を含んでもよい。
【0027】
本発明の一態様に係る作業車両の遠隔操縦支援システムは、前記遠隔操縦支援装置と、前記作業車両の備える前記検出装置とを備えてもよい。前記検出装置は、レーザ発光器を含んでもよい。
【0028】
本発明の一態様に係る作業車両の遠隔操縦支援システムは、前記遠隔操縦支援装置と、前記作業車両の備える前記検出装置とを備えてもよい。前記検出装置は、超音波発生器を含んでもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、作業車両の遠隔操縦が行われない非操縦時間において物体が新たに検出され、且つ前記非操縦時間の終了時までに当該物体が検出されなくなっている場合に、遠隔操縦者が、当該物体についての確認をしてから遠隔操縦を再開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】作業車両の遠隔操縦支援システムのブロック図である。
【
図5】ロスト物体表示等を表示する撮像画面を示す図である。
【
図6】ロスト物体表示等を表示する検出画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態の遠隔操縦支援システム100の構成図である。遠隔操縦支援システム100は、作業車両1の備える作業車両操縦システム20及び遠隔操縦支援装置30を備えている。遠隔操縦支援システム100及び遠隔操縦支援装置30では、作業車両1の遠隔操縦及び作業車両1の遠隔監視が可能である。
【0032】
作業車両1は、遠隔操縦支援装置30による遠隔操縦(例えば、遠隔走行及び遠隔作業等)が可能な構造である。遠隔操縦可能な作業車両1としては様々なものが考えられる。
【0033】
図2は遠隔操縦される作業車両1の典型例を示す。作業車両1には、作業装置3が連結される。さらにいえば、
図2の示す作業車両1は、作業車両1の典型例であるトラクタであり、作業車両1に連結されている作業装置3は、作業装置3の典型例であるロータリ耕耘装置である。すなわち、ロータリ耕耘装置等の作業装置3をトラクタ等の作業車両1に連結することで、作業車両1は農業用作業車両として用いられる。
【0034】
農業用作業車両としての作業車両1は、作業装置3を連結しない、例えばコンバイン等の作業車両1であってもよい。また、作業車両1は、農業機械以外に、例えば建設機械等であってもよい。
【0035】
なお、
図2に矢印A1で示す方向が、作業車両1の前方である。矢印A2で示す方向が、作業車両1の後方である。矢印Z1で示す方向が、作業車両1の上方である。矢印Z2で示す方向が、作業車両1の下方である。
【0036】
そして、矢印A1、A2、Z1、Z2に対して直行する方向が、作業車両1の幅方向(左右方向)である。
図2に向かって手前側が作業車両1の左方であり、奥側が作業車両1の右方である。
【0037】
作業車両1は、車体2を備えている。車体2には、走行装置7である後車軸駆動装置(リアトランスアクスル)7R及び前車軸駆動装置(フロントトランスアクスル)7Fが支持されている。
【0038】
後車軸駆動装置7Rは、車体2の後部に支持される後車軸駆動ケース7Raを有する。後車軸駆動ケース7Raが左右一対の後車軸7Rbを支持し、且つ、左右後車軸間に介設される後車軸差動機構(図示せず)を収容している。各後車軸7Rbの外端には左右各後輪7Rcが固着されている。
【0039】
前車軸駆動装置7Fは、車体2の前部に支持される前車軸駆動ケース7Faを有する。前車軸駆動ケース7Faが左右一対の前車軸7Fbを支持し、且つ、左右前車軸7Fb間に介設される前車軸差動機構(図示せず)を収容している。各前車軸7Fbの外端に前輪7Fcが操舵可能に接続されている。
【0040】
後車軸駆動装置7Rの差動機構及び/又は前車軸駆動装置7Fの差動機構はデフロック可能となっており、デフロック用のアクチュエータが、後述のアクチュエータ群27に含まれており、後述の操縦装置11にて当該アクチュエータを操作可能である。
【0041】
なお、本実施例に係る作業車両1は後述の如く原動機4及び走行変速装置6を備え、走行装置7である後車軸駆動装置7R及び前車軸駆動装置7Fは、走行変速装置6を介して原動機4の動力を受けて駆動するものであり、モータを備えていない。
【0042】
しかし、後述のように、作業車両1は原動機4に代えてバッテリを備え、走行装置が当該バッテリからの電力にて駆動する電動モータ等を備えるものであってもよい。
【0043】
また、
図2に示す作業車両1の走行装置7はホイール(車輪)型走行装置であるが、これに代えて、クローラ型の装置であってもよい。この場合は、例えば左右一対の油圧モータ又は左右一対の電動モータを車体2に支持し、各モータの出力軸に左右各クローラ走行装置の駆動輪を駆動連結するものとしてもよい。
【0044】
さらに車体2には、原動機4、走行クラッチ5、走行変速装置6、制動装置13(
図1
)、操舵装置14(
図1)、駆動モード変更装置15(
図1)、PTO(動力取出)伝動装置が搭載又は支持されている。
【0045】
原動機4は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関(エンジン)である。なお、原動機4は、電動モータであってもよい。或いは、回転力のような動力を出力する原動機4に代えて、車体2には、動力源としてのバッテリを設けてもよい。
【0046】
原動機4の動力は走行変速装置6に伝達される。前述のように原動機4が内燃機関である場合、原動機4と走行変速装置6との間に走行クラッチ5が介設されており、走行クラッチ5を切ることで、停止中の前輪7Fc及び後輪7Rcを、駆動し続ける原動機4の出力から遮断することができる。
【0047】
走行変速装置6は、車体2に支持されるミッションケース6aを有し、ミッションケース6aは、ギアや油圧式変速装置(HST)等の変速機構を収容している。この変速機構にて入力回転数と出力回転数との比率を変更し、走行装置7の支持する前輪7Fc及び後輪7Rcの回転数及び推進力(トルク)を変更する。
【0048】
走行変速装置6の出力は、後車軸駆動装置7R及び前車軸駆動装置7Fに伝達され、それぞれの差動機構を介して左右の後輪7Rc及び左右の前輪7Fcに伝達されることで、作業車両1が走行する。
【0049】
なお、ミッションケース6a内(または前車軸駆動ケース7Fa内)に、駆動モード変更装置15が設けられている。駆動モード変更装置15は、走行変速装置6から前車軸差動機構への動力伝達の入り切りを行う前輪クラッチ15aと、後輪7Rcに対する前輪7Fcの速度比を、例えば高低2段に変更可能な、前輪変速機構15bとを含む。
【0050】
駆動モード変更装置15は、前輪クラッチ15aを入れることで、作業車両1を、走行変速装置6の出力を後輪7Rcにも前輪7Fcにも伝達する4輪(全輪)駆動モード(4WDモード)に設定し、一方、前輪クラッチ15aを切ることで、作業車両1を、走行変速装置6の出力を後輪7Rcのみに伝達する2輪(後輪)駆動モード(2WDモード)に設定する。
【0051】
また、駆動モード変更装置15は、前輪クラッチ15aを入れた状態で、前輪変速機構15bを低速段に設定することで、作業車両1を、後輪7Rcと前輪7Fcとを等速に駆動する通常の駆動モードに設定し、一方、前輪変速機構15bを高速段に設定することで、作業車両1を、前輪7Fcの回転速度を後輪7Rcの回転速度よりも大きくする増速モードに設定する。
【0052】
また、走行変速装置6は、作業車両1の前進、後進の切り換えを行う。走行変速装置6は、ミッションケース6a内に収容される例えば油圧クラッチ等の前進/後進切換用の機構を備えている。前進/後進切換用の機構としては、スライドシフタを有するタイプのものや、吐出方向を切換可能な可動斜板式の油圧ポンプとすることも考えられる。
【0053】
制動装置13は前輪7Fc及び後輪7Rcを制動する。制動装置13は、例えば前輪7Fc及び後輪7Rcのそれぞれに付設されているディスクブレーキ等である。また、前述のように走行装置がクローラ走行装置であって、電動モータや油圧モータ等を備えている構造である場合は、モータ軸に付設されてモータ軸を制動するものであってもよい。
【0054】
操舵装置14は車体2(前車軸7Fb)に対し前輪7Fcを左右に旋回する。操舵装置14は、例えば後述の操縦装置11に含まれる操作部材の一つであるステアリングハンド
ル11aの回転方向及び回転角度を前輪7Fcに伝達するギア等の伝達機構である。
【0055】
なお、操舵装置14を用いて前輪7Fcを左右に旋回させる際に、前輪変速機構15bを前述の高速段にすることで、前輪7Fcを後輪7Rcよりも速く回転させ、これにより、小さな旋回半径で、迅速に車体2を旋回させることができる。
【0056】
なお、原動機4を電動モータとする場合、その出力回転数を可変とすることで、走行変速装置6等を不要とすることも考えられる。また、後車軸駆動装置7R、前車軸駆動装置7Fをそれぞれ電動モータとし、原動機4に代わるバッテリより供給される電力によりこれらの電動モータを駆動するものとした場合、駆動モード変更装置15を、これら電動モータの駆動制御に適した構成に変更することが考えられる。
【0057】
作業車両1は無人で、すなわち遠隔操縦にて、走行(運転)し、作業機3に作業させることが可能である。一方で、作業車両1の車体2には運転席10が設けられており、運転席10に着座した作業者が、車体2に設けられた操縦装置11を操作することによって、作業車両1を走行させ、作業機3に作業させることも可能である。
【0058】
車体2の上部には、保護機構の一例であるキャビン9が設けられている。キャビン9の内部に、運転席10と操縦装置11が設けられている。キャビン9は、運転席10の前方、後方、上方及び左右側方を取り囲むことにより、運転席10を保護する。なお、保護機構は、キャビン9に限定されるものではなく、ロプスやキャノピー等であってもよい。
【0059】
作業車両1のキャビン9の前側には、ボンネット12が設けられている。ボンネット12は、車体2に取り付けられている。ボンネット12と車体2の間には、収容ルームが形成されている。その収容ルームには、原動機4、図示されない冷却ファン、ラジエータ、バッテリ等が収容されている。
【0060】
車体2の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8は、1本のトップリンク8a及び左右2本のロアリンク8bよりなる3点リンク機構を有している。連結装置8、すなわちトップリンク8a及び両ロアリンク8bの後端には、作業装置3が着脱可能である。
【0061】
連結装置8に作業装置3を連結し、原動機4の動力で走行装置7(前輪7Fc、後輪7Rc)を駆動することで作業車両1が走行することにより、作業車両1が作業装置3を牽引することができる。
【0062】
連結装置8は、油圧シリンダ等である昇降用アクチュエータ8cを備え、昇降用アクチュエータ8cの作動により左右ロアリンク8bを上下動させて作業装置3を昇降することができる。
【0063】
なお、本実施例では作業装置3が前述どおり対地作業装置であるロータリ耕耘装置であり、連結装置8にて昇降されることにより、作業装置3の位置が、地面に接している接地位置と、地面より離れて地面より上方の非接地位置とに切り替えられる。
【0064】
また、連結装置8は、油圧シリンダ等である姿勢制御用アクチュエータ(図示せず)を備え、姿勢制御用アクチュエータの作動により左右ロアリンク8b同士の上下位置の差を調整することで作業装置3の姿勢(左右方向の傾き)を調整することができる。
【0065】
さらに、作業車両1の車体2の後部には、後方突出状に動力取出(PTO)軸17が設けられており、連結装置8に連結された作業装置3の入力軸にPTO軸17が駆動連結さ
れる。作業装置3がロータリ耕耘装置である場合、PTO軸17から作業装置3の入力軸に入力された動力は、耕耘爪軸等を駆動する。
【0066】
作業車両1には、PTOクラッチ16a及びPTO変速機構16bを有するPTO伝動装置16(
図1)が設けられている。原動機4の動力は、走行変速装置6を介して走行装置7に伝達される一方、PTO伝動装置16を介してPTO軸17にも伝達され、作業装置3の有する耕耘爪軸等の駆動装置を駆動する。
【0067】
上述のように連結装置8に着脱可能であり、連結装置8に装着されることによって作業車両1に連結される作業装置3としては、
図2に図示されるようなロータリ耕耘装置等の耕耘装置の他、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、畦塗りを行う畦塗装置、畝立てを行う畝立装置等の、圃場や牧場に対して農作業を行う農作業装置がある。
【0068】
以上の作業装置3としての農作業装置のうち、耕耘装置、畦塗装置、及び畝立装置等は、土壌に直接作業を施す対地作業装置であり、前述のような連結装置8の上下動にて昇降されることで、作業状態である接地位置と、非作業装置である非接地位置とに切り換えられる。
【0069】
また、上述の農作業装置のうち、例えば肥料散布装置や成形装置等は、ロータリ耕耘装置の耕耘爪軸のように、作業車両1のPTO軸17より動力を得て駆動される駆動装置を備えている。
【0070】
このように駆動装置を備える作業装置3については、PTO伝動装置16のPTOクラッチ16aを入れて作業車両1の原動機4の動力を作業装置3の駆動装置に伝達している状態を作業状態とし、PTOクラッチ16aを切って作業車両1の原動機4の動力を作業装置3の駆動装置から遮断している状態を非作業状態とするものとしてもよい。
【0071】
作業車両1の連結装置8に着脱自在の作業装置3としては、上述のような農作業装置以外に、建設作業装置や路上清掃装置等が考えられ、その用途は限定されない。
【0072】
図1に示すように、作業車両1には、作業車両操縦システム20が構成されている。作業車両操縦システム20は、作業車両1に設けられる車載制御装置21、車載通信装置23、位置検出装置24、物体検出装置25、状態検出装置26、操縦装置11、アクチュエータ群27、及び、アクチュエータ群27に含まれる各アクチュエータにて作動される操縦対象装置群28を備える。
【0073】
また、作業車両1には、CAN、LIN、又はFlexRay等の車載ネットワークが構築されている。車載制御装置21には、当該車載ネットワークを介して、車載通信装置23、位置検出装置24、物体検出装置25、状態検出装置26、操縦装置11、アクチュエータ群27等が電気的に接続され、さらに、作業車両1に連結された作業装置3の有する検出装置や駆動装置等を制御する制御部22が電気的に接続されている。
【0074】
車載制御装置21は、プロセッサ21aとメモリ21bとを含んだECU(電子制御装置)から構成されている。車載制御装置21は、作業車両1の各部の動作を制御するコントローラである。
【0075】
メモリ21bは、揮発性又は不揮発性のメモリ等から構成されている。車載制御装置21のメモリ21bには、車載制御装置21が作業車両1の各部の動作を制御するための各
種の情報とデータが読み書き可能に記憶される。また、作業車両1は、例えば、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置を備えてもよい。
【0076】
車載通信装置23は、携帯電話通信網、インターネット、又は無線LANを介して、無線で通信するためのアンテナ、IC(集積回路)、及び電気回路等から構成されている。車載制御装置21は、車載通信装置23により遠隔操縦支援装置30と無線で通信する。また、車載制御装置21は、RTC(リアルタイム・クロック)を備えており、日時を計時することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、作業車両1に備えられる作業車両操縦システム20と作業車両1から離れて設置される遠隔操縦支援装置30とが携帯電話通信網等を介して通信する例を示しているが、これ以外に、例えば作業車両1の作業車両操縦システム20と遠隔操縦支援装置30とが携帯電話通信網等と、サーバ又は中継器等の外部装置を介して通信するようにしてもよい。
【0078】
また、作業車両1の作業車両操縦システム20と遠隔操縦支援装置30とが、例えばBLU(Bluetooth(登録商標) Low Energy)信号又はUHF(Ultra High Frequency)信号等のような近距離無線信号で直接通信してもよい。この場合、車載通信装置23と遠隔操縦支援装置30とに、近距離無線通信用のインタフェイスがそれぞれ設けられていればよい。
【0079】
位置検出装置24は、例えばキャビン9(
図2)の上部に設置されている。なお、位置検出装置24の設置位置は、キャビン9の上部に限定せず、作業車両1の別の箇所又は作業装置3の所定の箇所でもよい。
【0080】
位置検出装置24は、衛星測位システムを利用して、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する。即ち、位置検出装置24は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、当該信号に基づいて自己の位置を検出する。
【0081】
位置検出装置24は、測位衛星からの信号を受信可能な基地局(基準局)からの補正等の信号に基づいて補正した位置を、自己の位置として検出してもよい。
【0082】
また、位置検出装置24は、ジャイロセンサや加速度センサ等の慣性計測装置を有していてもよい。この場合、位置検出装置24は、測位衛星から受信した信号に基づいて検出した位置(緯度、経度)を、慣性計測装置によって補正して、当該補正後の位置を自己の位置として検出してもよい。
【0083】
位置検出装置24は、検出した自己の位置を作業車両1の位置とする。また、位置検出装置24は、検出した自己の位置と、予め記憶された作業車両1の外形情報とに基づいて、作業車両1の位置を算出してもよい。
【0084】
また、位置検出装置24は、検出した自己(作業車両1)の位置と、予め記憶された作業装置3の外形情報と、作業車両1の車体2に対する作業装置3の取り付け位置とに基づいて、作業装置3の位置を算出してもよい。
【0085】
物体検出装置25は、作業車両1の周辺における物体を監視(センシング)する。詳しくは、物体検出装置25は、例えば、レーザ発光器を有するレーザセンサ25a、超音波発生器を有する超音波センサ25b、撮像装置としてのカメラ25c、及び物体検出用演
算部25dを有している。
【0086】
本実施例では、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bを、それぞれ複数設けており、作業車両1の前方、後方、及び左右側方等の周辺状況及び当該周辺にある物体を検出すべく、複数のレーザセンサ25a及び複数の超音波センサ25bが、作業車両1の前部、後部、及び左右側部等の所定箇所にそれぞれ設置されている。
【0087】
また、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bは、作業車両1から所定の目標検出距離以内で且つ車体2よりも低い位置にある物体でも検出できるよう、作業車両1(車体2)の所定位置にそれぞれ設置されている。
【0088】
レーザセンサ25a及び超音波センサ25bは、物体検出装置25のセンサの一例である。なお、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bのいずれか一方のみが、一つ以上、物体検出装置25に設けられてもよい。また、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bに加えて、或いはこれらに代わって、他の種類のセンサが、一つ以上、物体検出装置25に設けられてもよい。
【0089】
レーザセンサ25aは、ライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging)等の光学式のセンサから構成されている。レーザセンサ25aは、レーザダイオード等の光源から1秒間に何百万回ものパルス状の測定光(レーザ光)を照射し、当該測定光を回転ミラーで反射することにより水平方向又は鉛直方向に走査して、所定の検出範囲(センシング範囲)に投光する。そして、レーザセンサ25aは、測定光の物体による反射光を、受光素子で受光する。
【0090】
物体検出用演算部25dは、レーザセンサ25aの受光素子から出力された受光信号に基づいて、物体の有無、物体の位置、及び物体の種類等を検出する電気回路又はIC等から構成されている。
【0091】
物体検出用演算部25dは、レーザセンサ25aにより測定光を照射してから、反射光を受光するまでの時間に基づいて、物体までの距離を検出する(TOF(Time of
Flight)法)。
【0092】
物体検出用演算部25dが検出する物体には、作業車両1が走行及び作業を行う圃場等の現場に置かれている農具等の物体、圃場に植えられている作物、現場や圃場に侵入した動物や人等の動体等が含まれている。さらには、窪み、突起、水たまり等の、圃場や路面等における特徴等も含めてもよい。
【0093】
超音波センサ25bは、ソナー等の空中超音波センサから構成されている。超音波センサ25bは、送波器により測定波(超音波)を所定の検出範囲に発信し、当該測定波が物体で反射した反射波を受波器で受信する。
【0094】
物体検出用演算部25dは、超音波センサ25bの受波器から出力された信号に基づいて、物体の有無、物体の位置、及び物体の種類等を検出(判断)する。また、物体検出用演算部25dは、超音波センサ25bにより測定波を発信してから、反射波を受波するまでの時間に基づいて、物体までの距離を検出(演算)する(TOF法)。
【0095】
カメラ25cは、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサを搭載したCCDカメラ、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを搭載したCMOSカメラ等から構成されている。
【0096】
カメラ25cは、
図2に示すように、作業車両1(及び作業装置3)の前部、後部、左右側部、及びキャビン9の内部等の所定箇所にそれぞれ設置されていて、作業車両1(及び作業装置3)の前方、後方、及び左右側方等の周辺を撮像して、当該撮像画像のデータを出力する。カメラ25cは、撮像装置の一例である。
【0097】
例えば、作業車両1には、複数のカメラ25cが設置されている。作業車両1に設置された複数のカメラ25cのうち、
図2に示すようにキャビン9の内部に設置された内部カメラ25c1は、運転席10から作業車両1の前方を撮像する。より詳しくは、内部カメラ25c1は、運転席10に着座した作業者と略同様の視野で作業車両1の前方(進行方向)を撮像する。つまり、内部カメラ25c1によれば、作業車両1の進行方向に見られる光景を撮像した撮像画像が得られる。
【0098】
物体検出用演算部25dは、カメラ25cから出力された撮像画像のデータに基づいて、物体の有無、物体の位置、及び物体の種類等を検出することも可能である。
【0099】
物体検出装置25は、レーザセンサ25a、超音波センサ25b、カメラ25c、及び物体検出用演算部25dにより、作業車両1(及び作業装置3)の周辺状況を監視(センシング)し、その結果を示す検出情報を生成し(特に物体検出装置25の生成する検出情報を「物体検出情報」とする)、物体検出情報を車載制御装置21に出力する。
【0100】
物体検出情報には、少なくとも物体検出用演算部25dの生成した検出情報とカメラ25cの撮像画像のデータとが含まれているが、これら以外にレーザセンサ25a及び/又は超音波センサ25bによる検出結果についての検出情報が物体検出情報に含まれていてもよい。
【0101】
状態検出装置26は、作業車両1及び作業装置3の動作状態を検出する。具体的には、状態検出装置26には、作業車両1及び作業装置3の各部に設置された各種センサと、演算器とが含まれていて、演算器が各種センサからの出力信号に基づいて、作業車両1及び作業装置3の動作状態を検出(演算)する。
【0102】
状態検出装置26が検出する作業車両1の状態には、作業車両1の各部の駆動と停止の状態、作業車両1の進行方向、走行速度、加速度、及び姿勢等が含まれている。状態検出装置26が検出する作業装置3の状態には、作業装置3の各部の駆動と停止の状態及び姿勢等が含まれている。
【0103】
状態検出装置26は、位置検出装置24により検出された車体2の位置(作業車両1の位置)を所定の周期で取得し、当該車体2の位置から作業装置3の位置を検出(算出)したり、車体2の位置の変化を検出したりしてもよい。また、状態検出装置26は、車体2の位置の変化から、車体2の走行速度を検出してもよい。
【0104】
他の例として、前輪7Fc、後輪7Rcの回転数又は前輪7Fc、後輪7Rcを転動させる走行モータの回転数を検出する回転数センサを設け、状態検出装置26が当該回転数センサの出力信号に基づいて、車体2の走行速度を検出してもよい。
【0105】
状態検出装置26は、検出した作業車両1及び作業装置3の動作状態を示す検出情報を生成し(特に状態検出装置26の生成する検出情報を「状態検出情報」とする)、状態検出情報を車載制御装置21に出力する。
【0106】
例えば、状態検出装置26の生成する状態検出情報には、作業車両1及び作業装置3の
操縦情報が含まれる。この操縦情報は、例えば、作業車両1の走行速度(又は加速度)、原動機4の回転速度、走行クラッチ5の入り切り、走行変速装置6の設定速度段及び設定走行方向(前進か後進か)、制動装置13の制動位置・非制動位置、操舵装置14による前輪7Fcの切れ角、駆動モード変更装置15(前輪クラッチ15a、前輪変速機構15b)により設定される駆動モード、作業装置3の操作状態(すなわち、連結装置8にて制御される作業装置3の位置及び姿勢、PTO伝動装置16(PTOクラッチ16aにて制御される作業車両1から作業装置3への動力伝達の入り切り、PTO変速機構16bにて制御される作業装置3の駆動速度)等の情報を含む。
【0107】
位置検出装置24及び状態検出装置26は、所定の周期又は所定のタイミングで検出した結果を示す検出情報(位置検出情報及び状態検出情報)を車載制御装置21に随時出力する。また、物体検出装置25も、所定の周期又は所定のタイミングで監視(センシング)した結果を示す物体検出情報を車載制御装置21に随時出力する。
【0108】
車載制御装置21は、位置検出装置24、状態検出装置26、及び物体検出装置25から入力された位置検出情報、状態検出情報及び物体検出情報を、内部のメモリ21bに記憶させる。
【0109】
また、車載制御装置21は、内部のメモリ21bに記憶させた位置検出情報、状態検出情報、物体検出情報を、遠隔運転の場合には所定の周期又は所定のタイミングで車載通信装置23の有する送信部により遠隔操縦支援装置30に逐次に送信する。
【0110】
アクチュエータ群27には、作業車両1における操縦対象装置群28に含まれる各作動部を作動させるための電動式若しくは油圧式のモータ、シリンダ、及び制御弁等のアクチュエータが含まれている。
【0111】
操縦対象装置群28に含まれる作動部には、例えば、原動機4(内燃機関である場合はスロットルバルブ等)、走行クラッチ5、走行変速装置6(における前進/後進切換用クラッチ及び変速段切換用シフタ等)、走行装置7(の差動機構のデフロック機構等)、制動装置13(のブレーキシュー等)、操舵装置14(のパワーステアリングシリンダ等)、駆動モード変更装置15(の前輪クラッチ15a及び前輪変速機構15b)、連結装置8(の昇降用アクチュエータ8c及び姿勢制御用アクチュエータ)、PTO伝動装置16(のPTOクラッチ16a及びPTO変速機構16b)等が含まれている。
【0112】
なお、作業車両1が、原動機4として電動モータを備えている場合は、走行クラッチ5及び/又は走行変速装置6を設けないことも考えられ、アクチュエータ群27からは、これらの操作のためのアクチュエータを除くことが考えられる。
【0113】
また、走行装置7として電動モータを備え、原動機4に代わるバッテリからこの電動モータに電力を供給する場合は、原動機4、走行クラッチ5及び/又は走行変速装置6に代えて、走行装置7としての電動モータの出力回転数を変更するためのアクチュエータをアクチュエータ群27に含めることも考えられる。
【0114】
操縦装置11には、ステアリングハンドル11a(
図2)、アクセルペダル、ブレーキペダル、走行変速レバー、走行クラッチ切換用操作部材(スイッチ等)、駆動モード変更用操作部材(スイッチ等)等の、作業車両1の走行制御用の操縦部材群が含まれている。
【0115】
車載制御装置21は、操縦装置11の走行用操縦部材群の操作状態に応じて、アクチュエータ群27に含まれる所定のアクチュエータを作動させて、原動機4、走行クラッチ5、走行変速装置6、制動装置13、操舵装置14、駆動モード変更装置15等を制御し、
作業車両1の走行と操舵を制御する。
【0116】
また、操縦装置11は、PTO伝動装置16のPTOクラッチ16a及びPTO変速機構16bを操作するためのPTO制御用操作部材(スイッチ等)、作業装置3の上下位置や左右方向の傾き等を制御すべく連結装置8の昇降用アクチュエータ8cや姿勢制御用アクチュエータ等を操作するための作業装置3の位置・姿勢制御用の操作部材(スイッチ等)等の、作業装置3の制御用の操作部材群が含まれる。
【0117】
車載制御装置21は、操縦装置11の作業制御用操縦部材群の操作状態に応じて、アクチュエータ群27に含まれる所定のアクチュエータ(連結装置8の昇降用アクチュエータ8c及び姿勢制御用アクチュエータ等を含む)を作動させて、PTOクラッチ16a、PTO変速機構16b、連結装置8等を制御し、作業装置3の位置・姿勢及び駆動状態を制御する。
【0118】
なお、作業装置3は、作業車両1の備えるPTO伝動装置16や連結装置8の制御とは別に独自の制御を必要とする作動部等を備えていてもよく、
図1に示すように、作業装置3は、この作動部を制御するために車載制御装置21とは別個の制御部22を備えていてもよい。制御部22は、例えば、CPU、メモリ等で構成されている。
【0119】
作業車両1の操縦装置11は、このような作業装置3の作動部を制御するための操作部材を含んでいてもよい。この操作部材の操作に応じて、車載制御装置21は、制御部22と通信して、制御部22に作業装置3の作動部を制御させる。
【0120】
車載制御装置21は、物体検出装置25からの物体検出情報と、状態検出装置26からの状態検出情報と、位置検出装置24からの位置検出情報等に基づいて、作業車両1の走行、作業装置3による作業、及び作業車両1のその他の動作をそれぞれ制御する。
【0121】
また、車載制御装置21は、遠隔操縦支援装置30から送信された遠隔操縦信号を車載通信装置23により受信した場合には、上記各情報に加えて、当該遠隔操縦信号に基づいて、作業車両1の走行、作業装置3による作業、及び作業車両1のその他の動作をそれぞれ制御する。
【0122】
さらに、車載制御装置21は、作業車両1の走行又は作業装置3による作業を制御する際に、物体検出用演算部25dの演算結果を含む物体検出情報から、物体が作業車両1又は作業装置3に所定距離未満で接近して、接触する危険があるか否かを判断する。
【0123】
そして、車載制御装置21は、物体が作業車両1又は作業装置3に所定距離未満で接近して、接触する危険があると判断した場合に、走行クラッチ5、制動装置13、走行装置7、又は作業装置3等を制御して、作業車両1の走行又は作業を自動で停止し、物体との接触を回避する。
【0124】
次に、遠隔操縦支援装置30について説明する。
図1に示すように、遠隔操縦支援装置30は、作業車両1から離れた位置に配置されている。
【0125】
遠隔操縦支援装置30によれば、遠隔操縦者(オペレータ)による操縦によって作業車両1を遠隔操縦することができ、また、作業車両1の状態、作業車両1の周辺状況等を監視することができる。
【0126】
遠隔操縦支援装置30は、制御装置31、記憶装置32、通信装置33、表示装置34、操作装置35、報知装置36、警報解除装置37、及びロック解除装置38等を備えて
いる。
【0127】
制御装置31は、遠隔操縦支援装置30の各部の動作を制御するプロセッサである。このプロセッサは、例えば、記憶装置32に記憶された遠隔制御プログラムを実行することにより、遠隔操縦支援装置30の各部の動作を制御する制御装置31として機能する。
【0128】
制御装置31に設けられた内部メモリ32aは、揮発性又は不揮発性のメモリである。内部メモリ32aには、制御装置31が遠隔操縦支援装置30の各部の動作を制御するための各種の情報とデータが読み書き可能に記憶される。
【0129】
記憶装置32は、作業車両1を遠隔運転するための遠隔制御プログラム、作業車両1を遠隔監視するための遠隔監視プログラム等の制御プログラム、各種のデータ等を予め記憶している。記憶装置32は、例えば、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等である。
【0130】
通信装置33は、携帯電話通信網、インターネット、又は無線LANを介して、無線で通信するためのアンテナ、IC、及び電気回路等から構成されている。通信装置33は、制御装置31による制御下、作業車両1と無線で通信する。
【0131】
通信装置33は、検出情報取得部としての受信部33aを有し、受信部33aにて、車載通信装置23から送信される各種データ(位置検出装置24からの位置検出情報、状態検出装置26からの状態検出情報、及び物体検出装置25からの物体検出情報等)を受信する。例えば、通信装置33の受信部33aは、作業車両1の位置情報と作業車両1の進行方向を撮像した撮像画像とを対応付けた対応データを受信する。
【0132】
また、通信装置33は、遠隔操縦信号を送信するための送信部33bを有する。後述の操作装置35が有するいずれかの操作部材が遠隔操縦者にて操作されると、制御装置31は、当該操作に対応する遠隔操縦信号を、送信部33bより作業車両1の車載通信装置23へと送信する。
【0133】
表示装置34は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。表示装置34には、作業車両1を遠隔で操作するための情報が表示される。例えば、表示装置34は、遠隔運転画面としての撮像画面40(
図3)を表示する。撮像画面40には、内部カメラ25c1による撮像画像が表示される。
【0134】
また、表示装置34は、その表示画面にタッチパネルが備えられており、表示画面に対するタッチ操作を検出可能である。即ち、表示装置34が、遠隔操縦者により操作可能な操作装置35の一部として機能し得る。
【0135】
操作装置35は、作業車両1を遠隔操縦するための装置である。操作装置35は、作業車両1に乗り込んで直接操縦しているような感覚で操縦できるように、作業車両1の操縦装置11と略同じ構造となっている。
【0136】
即ち、操作装置35は、操縦装置11のステアリングハンドル11a(
図2)、アクセルペダル、ブレーキペダル、走行変速レバー、走行クラッチ切換用操作部材(スイッチ等)、駆動モード変更用操作部材(スイッチ等)、PTO制御用操作部材(スイッチ等)、作業装置3(連結装置8)の位置・姿勢制御用の操作部材(スイッチ等)等に相当する操作部材等を備えている。
【0137】
なお、前述のように作業装置3が車載制御装置21とは別の独自の制御部22を備え、
制御部22にて制御される独自の作動部を備える場合に対応して、操作装置35は、制御部22と通信して当該作動部を制御するための操作部材を含んでいてもよい。
【0138】
また、このような作業装置3の操作については、オプショナルの操作アプリケーションとして、例えば操作装置35の有するタッチパッド等に任意にダウンロードするものとしてもよい。
【0139】
操作装置35のこれらの操作部材は、遠隔操縦席(図示せず)の周囲に配置されている。遠隔操縦者は、遠隔操縦席に座って操作装置35を操作することによって、作業車両1の走行又は作業装置3による作業を遠隔で操縦する。
【0140】
また、遠隔操縦者は、作業車両1と周辺の状況を表示装置34により監視する。また、遠隔操縦者は、操作装置35を操作することによって、遠隔操縦支援装置30に所定の情報又は指示を入力可能である。なお、操作装置35は、タッチパッド又はハードウェア型のスイッチ等であってもよい。
【0141】
報知装置36は、遠隔操縦者に対して報知の音声(後述の警報音52を含む)を出力するスピーカを備えている。
【0142】
警報解除装置37は、遠隔操縦者により操作可能なスイッチ(物理的なスイッチでなくてもよく、例えば、表示装置34に表示されて、画面上で操作可能なスイッチでもよい)等の操作部材を含むものであり、後述のように物体の検出に基づきロスト物体表示50及び警報表示51を表示する状態に設定された表示装置34、及び、警報音52を発生する状態に設定された報知装置36をリセットするものである。
【0143】
ロック解除装置38は、遠隔操縦者により操作可能なスイッチ(物理的なスイッチでなくてもよく、例えば、表示装置34に表示されて、画面上で操作可能なスイッチでもよい)等の操作部材を含むものであり、後述のように物体の検出に基づきロック状態に設定された通信装置33又は操作装置35をリセットするものである。
【0144】
遠隔操縦者が操作装置35を操作して、作業車両1の動作指示を入力すると、制御装置31が、当該動作指示に対応する遠隔操縦信号を生成し、当該遠隔操縦信号を通信装置33の有する送信部により作業車両1に送信する。
【0145】
つまり、操作装置35における前述の操作部材のうちのいずれかが操作されると、その操作に応じた遠隔操縦信号が作業車両1に送信される。
【0146】
作業車両1の車載制御装置21は、遠隔操縦支援装置30からの遠隔操縦信号を車載通信装置23により受信すると、当該遠隔操縦信号と、位置検出装置24の生成した位置検出情報と、物体検出装置25の生成した物体検出情報と、状態検出装置26の生成した状態検出情報とに基づいて、作業車両1の各部を動作させて、作業車両1の走行及び操舵を制御したり、作業装置3の作業動作を制御したりする。
【0147】
また、車載制御装置21は、位置検出装置24からの位置検出情報、状態検出装置26からの状態検出情報、物体検出装置25からの物体検出情報を、車載通信装置23により遠隔操縦支援装置30に送信する。
【0148】
遠隔操縦支援装置30の制御装置31は、位置検出情報、状態検出情報、物体検出情報を、通信装置33により受信すると、これらの情報を内部メモリ32aに記憶させたり、表示装置34に表示させたりする。
【0149】
なお、
図1に示すように、遠隔操縦支援装置30は、表示端末70と操作装置35とで構成されてもよい。即ち、表示端末70は、制御装置31、記憶装置32、通信装置33、表示装置34、及び報知装置36を備える端末装置としてもよい。
【0150】
表示端末70は、例えば、タブレット装置若しくはスマートフォン等の携帯型の端末装置、又は基地局(図示省略)に設置された据え置き型のコンピュータ等が挙げられる。また、表示端末70は、ユーザインタフェイス装置であってもよい。
【0151】
次に、
図3~
図6により、物体検出装置25の検出した物体の表示態様について説明する。
図3は、遠隔操縦時の撮像画面40を示す。この撮像画面40は、表示装置34又は表示端末70に表示される。
【0152】
撮像画面40は、キャビン9内の内部カメラ25c1により撮像された作業車両1の前方の光景を示すものであり、作業車両1の運転席10に座る操縦者の視線で見られる光景と略同じである。
【0153】
したがって、遠隔操縦者は、通常の遠隔操縦用の撮像画面40を見ながら、作業車両1に乗り込んで実際に操縦装置11の各操作部材を操縦しているような感覚で、操作装置35を操縦することができる。
【0154】
さらに、撮像装置であるカメラ25cは、内部カメラ25c1も含めて作業車両1に複数設けられていて、通信装置33はこれら複数のカメラ25cの撮像データを受信する。
【0155】
制御装置31は、表示装置34を用いること等により遠隔操縦者が表示画像の切換操作をすると、これに応じて、複数のカメラ25cの撮像データの中から該当のものを選択して表示装置34または表示端末70に表示させる。
【0156】
なお、これらの撮像画面は、一つ一つ切り換えて表示する以外に、複数の画面を同時に映し出すものとしてもよい。
【0157】
さらに制御装置31は、作業車両1(及び作業装置3)に設けられるレーザセンサ25a、超音波センサ25b、及びカメラ25cによる検出結果を、
図4に示すような検出画面41として表示装置34又は表示端末70に表示する。
【0158】
図4は、遠隔操縦時の検出画面41を示す。例えば、検出画面41の中心部には作業車両1及び作業装置3の平面略図が描かれている。すなわち、検出画面41は、作業車両1及びその周辺の平面略図に該当する。
【0159】
さらに、作業車両1におけるレーザセンサ25a、超音波センサ25b及びカメラ25cのレイアウト、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bの感知領域、カメラ25cの撮像領域等が、略図化されて、検出画面41に映し出される。
【0160】
なお、
図4の検出画面41では感知領域42が示されているが、これは、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bの感知領域、カメラ25cの撮像領域を総合したものとして、或いはそのうちのいずれかの感知領域又は撮像領域として、略図化したものとする。
【0161】
逆に、検出画面41において図形化された感知領域42が映し出されることで、この感知領域42に含まれていない領域は、レーザセンサ25a、超音波センサ25b、カメラ25cにより検出できない不感領域して認識できる。たとえば、作業車両1の車体2の下
方は不感領域であることがわかる。
【0162】
図3に示すように、小動物等の物体Xが圃場等に侵入して作業車両1に近づいて、いずれかのカメラ25c(内部カメラ25c1)がその姿を撮像すると、撮像された物体Xが撮像画面40に現れる。
【0163】
また、
図4に示すように、いずれかのレーザセンサ25a及び/又はいずれかの超音波センサ25bが物体Xを検出すると、検出画面41において、物体検出用演算部25dにて算出した位置に対応する位置に物体Xが略図化されて表示される。
【0164】
遠隔操縦者が操作装置35を使って作業車両1を遠隔操縦している時に表示装置34等に映し出される撮像画面40(
図3)は、基本的に作業車両1の前方光景をリアルタイムで映し出すものである。
【0165】
また、遠隔操縦中において、レーザセンサ25aや超音波センサ25b等による検出結果を表示する検出画面41(
図4)も、現実に存在している物体Xが検出されていることを遠隔操縦者に知らせるためのものなので、やはりリアルタイムの表示である。
【0166】
なお、前述のように、物体検出情報は内部メモリ32aにて記憶されるので、内部メモリ32aにて記憶された過去の物体検出情報の中から引き出して、当該物体検出情報に対応する撮像画面40や検出画面41を表示装置34等に表示させることは可能ではある。しかし、リアルタイムの画面を過去の画面に切り換えるには、遠隔操縦者の意思による操作を必要とする。
【0167】
したがって、もし遠隔操縦者が、作業車両1の走行を停止し、遠隔操縦席より離席して再び遠隔操縦席に戻った時に見る撮像画面40も、遠隔操縦者が離席中の撮像画面を見ようとして画面の切換操作をしない限り、遠隔操縦者が遠隔操縦席に戻った時のリアルタイムの画像である。
【0168】
万一、遠隔操縦者の離席中に、例えば動物が停止中の作業車両1に近づいてきて、そのときは撮像された姿が撮像画面40に現れていたとしても、その動物が、例えば作業車両1の車体2と地面との間の空間等、カメラ25cのみならず、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bでも検出できないような場所に入り込んだ状態のときに、遠隔操縦者が遠隔操縦席に戻ってきた場合、その時には、撮像画面40に当該動物の姿は映っていないので、遠隔操縦者は、そのような物体の存在に気付かずに遠隔操縦を再開させてしまう可能性がある。
【0169】
上記の場合、リアルタイムの撮像画面40を見て、物体が存在しないと判断した遠隔操縦者が遠隔操縦を再開させて作業車両1を走行開始させると、前記隙間空間にいる動物は、作業車両1に牽引される作業装置3とぶつかる等して、作業車両1の走行や作業に支障をきたすおそれがある。
【0170】
本発明に係る遠隔操縦支援装置30は、このように、物体検出装置25では検出されない物体の存在に気付かずに作業車両1の遠隔操縦を再開させてしまうことにより生じる不具合を防止するための構成を備えている。
【0171】
ここで、遠隔操縦者が遠隔操縦席から離席している間は、操作装置35を用いての作業車両1の遠隔操縦が行われていない。このように遠隔操縦が行われていない時間を非操縦時間Tとすると、非操縦時間Tは、遠隔操縦者が操作装置35の操作を停止してから、離れていた遠隔操縦席に再び戻って操作装置35の操縦を再開するまで持続することとなる
。
【0172】
非操縦時間Tにおいて、制御装置31は、検出情報取得部としての通信装置33が受信する物体検出装置25の検出情報である物体検出情報を読み取る。制御装置31が読み取った当該物体検出情報が、非操縦時間Tにおいて物体検出装置25で物体を新たに検出し、且つ非操縦時間Tの終了時(すなわち、操作装置35の操縦再開時)までに物体検出装置25で当該物体を検出しなくなっていることを示している場合、制御装置31は、遠隔操縦を再開しようとする遠隔操縦者に、当該検出されなくなった物体(これを「ロスト物体Y」と称する)について(物体の有無、物体の種類等)の確認を促すための処理を実行する。この処理を確認要求処理(
図7、
図8の「確認要求処理P」)と称するものとする。
【0173】
確認要求処理Pは、遠隔操縦者が操縦を停止して遠隔操縦席から離れようとした時に認識した作業車両1又は遠隔操縦支援装置30の状態に対し、遠隔操縦者が遠隔操縦席に戻って遠隔操縦を再開しようとした時の作業車両1又は遠隔操縦支援装置30の状態を異ならせることで、遠隔操縦者に異変を気づかせる処理である。
【0174】
確認要求処理Pの一つとして、制御装置31は、
図5及び
図6に示すように、表示装置34(または表示端末70)に、ロスト物体Yについての確認を遠隔操縦者に促すためのロスト物体表示50を表示させる。
【0175】
図5は、非操縦時間中に物体を撮像した場合の撮像画面40を示す。また、
図6は、非操縦時間中に物体を検出した場合の検出画面41を示す。
【0176】
図5及び
図6に示すように、ロスト物体表示50は、リアルタイムの画像を映し出している撮像画面40及び/又は検出画面41に、重畳表示される。ロスト物体表示50は、少なくとも、非操縦時間T内にて検出されてその後検出されなくなった物体が検出されなくなったロスト地点50aの表示(例えば、赤丸印、点滅する図形表示等)を含む。
【0177】
なお、
図5及び
図6は、非操縦時間T内に複数の物体Y1、Y2が圃場内に侵入してきたことが検出(撮像)され、非操縦時間Tの終了時(遠隔操縦の再開時)までにいずれも検出(撮像)されなくなっている(ロスト状態)場合の撮像画面40及び検出画面41を示している。
【0178】
離席後に遠隔操縦席に戻った遠隔操縦者は、リアルタイム画面であるはずの撮像画面40及び/又は検出画面41にロスト地点50aの表示が映し出されているのを見て、少なくとも、今は撮像又は検出されていない物体が自分の離席中に作業車両1の近くにいたことを知り、且つ、その物体が撮像(検出)されなくなったロスト地点50aの位置等を把握することができる。
【0179】
図5及び
図6は、前述のように複数の物体Y1、Y2を非操縦時間T中に検出したことを示すが、遠隔操縦者は、撮像画面40及び検出画面41のそれぞれに、少なくともロスト地点50aが複数表示されているのを見て、複数の物体Y1、Y2が検出され、且つ今は検出されなくなっていることを知ることができる。
【0180】
また、ロスト物体表示50は、物体検出装置25で物体を検出できない不感領域(感知領域42に含められていない領域)のうち、検出されなくなった物体が非操縦時間Tの終了時に存在する可能性のある要確認領域50bの表示を含む。
【0181】
不感領域としては例えば前述のような作業車両1の車体2と地面との間の空間が考えら
れるが、その他にも、例えば圃場に農具小屋のような建屋43(
図5、
図6)があると、作業車両1の物体検出装置25のカメラ25cでは建屋43の裏側になって撮像できない領域、また、レーザセンサ25aより照射光されるレーザ光や超音波センサ25bより発振される超音波が建屋43に遮られて届かないような領域等が考えられる。また、作業車両1からは作業装置3の陰になるような領域も不感領域となる可能性がある。
【0182】
物体の存在する可能性のある要確認領域50bは、このような不感領域のうち、物体が検出されなくなったロスト地点50aとの位置関係から考えて、物体が存在している可能性が考えられる要確認領域50bである。
【0183】
制御装置31は、通信装置33を介して取得した位置検出情報、状態検出情報、物体検出情報をもとに、現在位置の作業車両1の物体検出装置25が物体を検出できない不感領域を割り出し、さらに、これらの検出情報から物体が検出されなくなったロスト地点50aを算出し、不感領域と当該ロスト地点50aとの位置関係から、物体が存在する可能性のある要確認領域50bを算出する。
【0184】
例えば、
図5及び
図6の示す状況においては、物体Y1のロスト地点50aが作業車両1の近傍であることから、
図6の検出画面41は、作業車両1の図形でカバーされている領域、すなわち作業車両1の車体2と地面との間の空間、及び作業装置3近傍の不感領域に含まれる領域を、物体Y1の存在する可能性のある要確認領域50b(斜線ハッチング部分)として表示している。
【0185】
また、物体Y2のロスト地点50aが作業小屋等の建屋43の近傍であることから、
図6の検出画面41は、作業車両1から見て建屋43の陰になって、カメラ25cでは撮像できず、またレーザセンサ25aや超音波センサ25bで感知しにくい領域を、検出されなくなった物体Y2の存在する可能性のある要確認領域50b(斜線ハッチング部分)として表示している。
【0186】
さらに、制御装置31は、位置検出情報、状態検出情報、物体検出情報により、ロスト物体Yの種類(動物、人、農具等の識別)を判定し、また、ロスト物体Yを検出していた時間、ロスト物体Yが検出されていたときの移動軌跡を算出する。
【0187】
制御装置31は、これらロスト物体Yの種類、ロスト物体Yを検出していた時間(検出開始時刻及び検出終了(ロスト)時刻を含む)、検出中の物体Xの移動軌跡にも基づいて、前記の要確認領域50bを算出してもよい。
【0188】
ロスト物体表示50は、また、前述の如く制御装置31が算出した、非操縦時間T内に物体検出装置25がロスト物体Yを検出していた間の当該ロスト物体Yの移動軌跡50cの表示を含んでいる。具体的には、検出されていた間のロスト物体Yの移動に沿って延伸する曲線が、この移動軌跡50cとして表示される。
【0189】
このロスト物体Yの移動軌跡50cとしての曲線は、撮像画面40や検出画面41に重畳表示されており、その曲線の終点として前記のロスト地点50aが表示されている。なお、複数の物体Y1、Y2を検出した場合の
図5の撮像画面40及び
図6の検出画面41においては、物体Y1、Y2それぞれの移動軌跡50cが表示されている。
【0190】
遠隔操縦席に戻った遠隔操縦者は、このような移動軌跡50cの表示を見て、検出されていたロスト物体Yの移動態様を把握することで、ロスト物体Yの種類を判断したり、作業車両1がロスト物体Yとの接触等で破損している可能性がないか否かの判断をしたりすることもできる。
【0191】
なお、移動軌跡50cの表示形態としては、
図5及び
図6に見られるような曲線に限られない。例えば、撮像画面40においては、カメラ25cで撮像し続けていたロスト物体Y(物体Y1、Y2)の複数の撮像画像を、撮像画面40及び検出画面41における該当の移動軌跡に沿った状態で、連続写真のように並べて重畳表示してもよい。
【0192】
また、制御装置31が判定したロスト物体Yの種類や、制御装置31が算出したロスト物体Yの検出していた時間(時間の長さ、検出開始時刻、検出終了時刻等を含む)については、ロスト物体表示50に含めて表示してもよい。これらは、撮像画面40又は検出画面41に重畳表示してもよいし、表示装置34等の、撮像画面40及び検出画面41以外の部分に表示してもよい。
【0193】
例えば、
図5に示すように、検出(撮像)したロスト物体Yについて推定される物体の種類を表示する推定種類表示50d、及び、物体を検出していた時間経緯(検出開始時刻、検出終了(物体が検出されなくなった)時刻、検出開始時刻から検出終了時刻までの時間)を示す時間経緯表示50eを、表示装置34などにおける撮像画面40の近傍にて表示している状態を示している。
【0194】
なお、
図5に示すように、推定種類表示50d及び時間経緯表示50eは、複数の物体Y1、Y2が検出されたものである場合に対応して、物体Y1、Y2それぞれに対応しての推定種類表示50dおよび時間経緯表示50eを示している。
【0195】
また、制御装置31は、ロスト物体Yそのものの位置や状態等の表示であるロスト物体表示50以外に、非操縦時間T内にロスト物体Yを検出したことを警報として遠隔操縦者に伝えるための警報表示51を、表示装置34等に表示させてもよい。
【0196】
この警報表示51は、
図5に示すようなランプの点灯や点滅でもよい。或いは、警報表示51は、
図5の「注意!侵入物あり!」等の文字でのメッセージを伝えるものであってもよい。また、撮像画面40や検出画面41に重畳表示されるものであっても、これらの画面とは別に表示されるものであってもよい。
【0197】
また、遠隔操縦支援装置30の報知装置36は音声装置であり、制御装置31は、報知装置36に、ロスト物体Yについての確認を遠隔操縦者に促すための警報音を発生させてもよい。また、このような警報音を、警報表示51に代えて発生させても、警報表示51に加えて発生させてもよい。
【0198】
さらに、上述のような警報表示51の表示や警報音の発生は、非操縦時間T内にて新たに物体Yを検出した時から開始するものとし、その後に物体Yが検出されなくなったか否かにかかわらず、警報表示51の表示や警報音の発生を維持させておくことが考えられる。
【0199】
これにより、遠隔操縦者は、離席していた遠隔操縦席に戻ってきた時に、警報表示51及び/又は警報音に気が付き、少なくとも、非操縦時間T内に何らかの物体が検出されたという事実を知ることができる。
【0200】
また、遠隔操縦者は、警報表示51及び/又は警報音に気づくことで、撮像画面40及び/又は検出画面41を確認するよう促される。撮像画面40及び/又は検出画面41では検出された物体Y1、Y2が映し出されていないが、少なくとも物体Y1、Y2が検出されなくなったロスト地点50aの表示を含むロスト物体表示50が撮像画面40及び/又は検出画面41に重畳表示されていれば、遠隔操縦者は、現在は物体検出装置25にて
検出されていないロスト物体Yが作業車両1の近傍に存在する可能性があるものと認識し、その有無等を、遠隔操縦を再開する前に確認しようとする。
【0201】
なお、ロスト物体Yが危険動物等である場合も考えられるので、実際にロスト物体Yの有無を確認するのが困難な場合もあるが、少なくともロスト物体Yについての確認の必要性は、制御装置31の確認要求処理Pの実行により遠隔操縦者に認識させることができる。ここで、ロスト物体表示50は、遠隔操縦者に、ロスト物体Yの種類を判断又は推定させることも可能であり、これにより、遠隔操縦者に、ロスト物体Yの有無の確認のために安易に作業車両1に近づかないよう警戒させることも可能である。
【0202】
以上のように、非操縦時間Tにおいて物体検出装置25が物体Yを新たに検出し、且つ非操縦時間Tの終了時(すなわち、操作装置35の操縦再開時)までに物体検出装置25が当該物体Yを検出しなくなっている(ロスト状態)場合に、制御装置31は、遠隔操縦を再開しようとする遠隔操縦者に、当該ロスト物体Yについての確認を促すための確認要求処理Pに含まれる一工程として、少なくとも物体Yが検出されなくなったロスト地点50aを含むロスト物体表示50を撮像画面40又は検出画面41に重畳表示するものであり、さらには、このロスト物体表示50を遠隔操縦者に確認させるよう、警報表示51を表示し、且つ/又は警報音を発生させる。
【0203】
なお、ロスト物体表示50の表示、警報表示51の表示、警報音52の発生のうち、少なくとも一つを実行する処理工程を警報工程P1とする。警報工程P1として表示されたロスト物体表示50や警報表示51、及び/又は発生された警報音52は、例えばロスト物体Yの有無を確認した後等に、遠隔操縦者が、スイッチ等の警報解除装置37(
図1)を操作することで、消去(消音)することができる。すなわち、遠隔操縦者は自分の意志で警報工程P1を終了させることができる。
【0204】
制御装置31は、確認要求処理Pとして、警報工程P1に加え、或いは、警報工程P1に代えて、操縦禁止工程P2、及び/又は作業禁止工程P3を実行し得る。
【0205】
操縦禁止工程P2の態様について説明する。制御装置31は、作業車両1の遠隔操縦を許容する遠隔操縦許容モード(以下「許容モード」という)と、作業車両1の遠隔操縦を禁止する遠隔操縦禁止モード(以下「禁止モード」という)とに切換設定可能である。
【0206】
図1に示すように、遠隔操縦支援装置30は、禁止モードに設定されている制御装置31を許容モードに切り換えるためのロック解除装置38を備えている。ロック解除装置38は、遠隔操縦者にて操作可能な構造であり、具体的には、例えばレバー、スイッチ、ボタン等、遠隔操縦者にて操作可能な操作部材を備えている。
【0207】
制御装置31は、許容モードに設定された状態で、遠隔操縦者による操作装置35の操作に基づく遠隔操縦信号を通信装置33より作業車両1へと送信可能である。
【0208】
制御装置31は、許容モードに設定された状態で、非操縦時間T内にて物体検出装置25が物体Yを検出すると(詳しくは物体検出を知らせる物体検出情報を通信装置33の受信部33aが受信すると)、操縦禁止工程P2として、許容モードから禁止モードに切り換わり、遠隔操縦者がロック解除装置38を操作するまで、禁止モードで保持される。
【0209】
なお、禁止モードとは、制御装置31が、操作装置35をロック状態にする、すなわち、遠隔操縦者による操作を拒絶する状態にするモードである。より具体的には、禁止モードでは、制御装置31が、操作装置35におけるレバーやスイッチ等の操作部材をロックし、遠隔操縦者が操作装置35の操作部材を操作しようと当該操作部材に力を加えても、
操作部材が動かないようにする。
【0210】
或いは、禁止モードとは、操作装置35の操作部材は動かせるが、制御装置31が、操作部材の操作に応じて操作装置35より出力される操作信号を受け付けない状態、又は、制御装置31が、操作装置35より操作信号が出力されないようにする状態であるものとしてもよい。このように、操作装置35の操作部材は動かせても操作信号が制御装置31に入力されない状態も、操作装置35のロック状態とする。
【0211】
あるいは、禁止モードは、制御装置31が、通信装置33の送信部33bを、操作装置35の操作に基づく該当の遠隔操縦信号の作業車両1への送信を拒絶する状態にするモードであってもよい。すなわち、遠隔操縦者が操作装置35の操作部材を操作しても、遠隔操縦信号が作業車両1に送信されず、作業車両1が無反応である状態としてもよい。このように、送信部33bより作業車両1への遠隔操縦信号の送信が拒絶されている状態を通信装置33(送信部33b)のロック状態とする。
【0212】
操縦禁止工程P2の実行の効果について説明する。非操縦時間T内にて物体検出装置25が物体Yを検出した場合、離席していた遠隔操縦者が遠隔操縦席に戻って、遠隔操縦を再開すべく操作装置35の操作部材を操作しようとすると、操作部材が動かない、或いは操作部材の操作に対し作業車両1が無反応である、という異常な状況に気づく。これにより、遠隔操縦者は、例えば上記のロスト物体表示50や警報表示51を確認する等して、非操縦時間T内にロスト物体Yが検出され、ロスト物体Y(の有無や種類等)について確認しなければならない状況であることを知る。
【0213】
また、このように制御装置31が禁止モードにあることで、例えば遠隔操縦者が、ロスト物体表示50や警報表示51等に気づかずに(すなわち、非操縦時間T内に物体Xが検出されたことに気づかずに)操作装置35の操作部材を操作しても、通信装置33の送信部33bから遠隔操縦信号が作業車両1へと送信されることがないので、ロスト物体Yが作業車両1の近傍にあるにもかかわらず作業車両1が走行や作業等を開始することで生じる恐れのある問題を回避できる。
【0214】
遠隔操縦者は、例えば非操縦時間T中に検出されたロスト物体Yについて確認して安全性を確かめてから、スイッチ等であるロック解除装置38を操作することで、禁止モードにある制御装置31を許容モードに切り換えることができる。
【0215】
制御装置31の禁止モードから許容モードへの切換により、動かなくなっていた(ロックされていた)操作装置35の操作部材が動くようになる。或いは、制御装置31の禁止モードから許容モードへの切換により、操作装置35から制御装置31への操作信号の入力が許可されていなかった状態から許可される状態に切り換わるものであってもよい。或いは、制御装置31の禁止モードから許容モードへの切換により、通信装置33から作業車両1への遠隔操縦信号の送信が許可されていなかった状態から許可される状態に切り換わるものであってもよい。すなわち、操作装置35又は通信装置33(の送信部33b)のロック状態が解除されるものである。
【0216】
以上のように、制御装置31の禁止モードから許容モードへの切換には、遠隔操縦者の意志によるロック解除装置38の操作を必要とする構成とすることで、ロック解除装置38の当該操作のない限り、操作装置35の操作にかかわらず作業車両1が走行も作業もしない状態(非操縦状態)が保持されるので、作業車両1が物体Xと不測に接触することによる問題が発生するのを回避できる。
【0217】
もう一つの確認要求処理Pである作業禁止工程P3の態様について説明する。作業車両
1は(すなわち、作業装置3は)、操作装置35を用いての遠隔操縦にて、作業状態と非作業状態とに切り換えることができる。
【0218】
作業状態及び非作業状態については、例えば作業装置の種類や想定される状況等に応じて、様々に定義づけられてよい。
【0219】
例えば、
図2に示す作業車両1に連結した作業装置3は、作業車両1であるトラクタに連結されたロータリ耕耘装置であるが、これは対地作業装置の一種であり、連結装置8の上下動(詳しくは昇降用アクチュエータ8cである油圧シリンダの伸縮)により、接地位置(地面に接している状態)と非接地位置(地面より上方に浮いていて接地していない状態)とに位置切換可能となっている。
【0220】
そこで、作業装置3であるロータリ耕耘装置が接地位置にある状態を作業状態、非接地位置にある状態を非作業状態とすることが考えられる。この場合、作業車両1(作業装置3)の作業状態と非作業状態との切換は、アクチュエータ群27に含まれるアクチュエータのうち、連結装置8の上下位置を制御する昇降用アクチュエータ8c、又はこれを制御する油圧バルブ等の操作によるものとなる。
【0221】
あるいは、作業装置3であるロータリ耕耘装置の耕耘爪軸がPTO軸17より動力を受けて回転駆動している状態を作業状態、PTO軸17から動力を受けず、回転駆動していない状態を非作業状態とすることも考えられる。
【0222】
すなわち、作業装置3が作業車両1より動力を受けている状態を作業車両1(作業装置3)の作業状態、作業装置3が作業車両1より動力を受けていない状態を作業車両1(作業装置3)の非作業状態としてもよい。
【0223】
この場合、作業車両1(作業装置3)の作業状態と非作業状態との切換は、アクチュエータ群27に含まれるアクチュエータのうち、PTOクラッチ16aを制御する油圧バルブ等の操作によるものとなる。
【0224】
あるいは、作業装置3は、PTO軸17からの回転動力によらない独自の(例えば電動の)駆動部(作動部)を有し、その制御のために制御部22(
図1)を備えているものであることも考えられる。
【0225】
制御部22は、作業車両1(の車載通信装置23等)を介して、或いは作業車両1を介さずに直接、遠隔操縦支援装置30の通信装置33からの遠隔操縦信号を受信し、作業装置3の備える前記駆動部を制御する。
【0226】
このような場合に、作業装置3の制御部22が遠隔操縦信号を受信可能で、作業装置3の当該駆動部を制御できる状態を作業状態、制御部22が遠隔操縦信号を受信できないか、作業装置3の当該駆動部を制御できない状態を非作業状態としてもよい。
【0227】
制御装置31は、作業車両1(作業装置3)を作業状態に設定している状態で、非操縦時間T内にて物体検出装置25が物体Yを検出すると(詳しくは物体検出を知らせる物体検出情報を通信装置33が受信すると)、作業禁止工程P3として、作業車両1(作業装置3)の状態を非作業状態に切り換える。
【0228】
すなわち、制御装置31は、操作装置35の操作状態とは無関係に、通信装置33の送信部33bより作業車両1(の車載通信装置23)へと、作業装置3を非作業状態に切り換えるための遠隔操縦信号を送信させる。
【0229】
作業装置3を作業状態に戻す操作としては、作業禁止工程P3で非接地位置に上げられていた作業装置3を接地位置に戻すよう連結装置8を作動させる操作、作業禁止工程P3で切られていたPTOクラッチ16aを係合する操作、或いは、作業禁止工程P3で作業装置3を制御不能な状態とされていた制御部22を、作業装置3を制御可能な状態にする操作等が考えられる。
【0230】
いずれも、遠隔操縦者が、操作装置35における該当の操作部材を操作することで、実現可能である。なお、作業禁止工程P3にて非作業状態にされた作業装置3を作業状態に戻すのに、特別の操作部材等を設けてもよい。
【0231】
いずれにおいても、非作業状態にある作業装置3を遠隔操縦にて作業状態に戻すには、通信装置33の送信部33bより作業車両1の車載通信装置23へと遠隔操縦信号を送信する。
【0232】
ここで、制御装置31が前記の操縦禁止工程P2を実行せず、前記の警報工程P1及び作業禁止工程P3のみを実行する場合を想定して、作業禁止工程P3の効果について説明する。
【0233】
非操縦時間T内にて物体検出装置25が物体Yを検出した場合、離席していた遠隔操縦者が遠隔操縦席に戻って、遠隔操縦を再開すべく操作装置35の操作部材を操作しようとすると、例えば、接地位置にしておいたはずの作業装置3が非接地位置に引き上げられていたり、作業装置3の駆動が無反応であったりして、すぐに作業を開始できない、すなわち、遠隔操縦者の意志による操作装置35の操作に基づくものではない、異常な状態であるのに気づく。
【0234】
これにより、遠隔操縦者は、例えば上記のロスト物体表示50や警報表示51を確認する等して、非操縦時間T内に物体Yが検出され、ロスト物体Yについて確認しなければならない状況であることを知る。
【0235】
また、このように作業装置3が非作業状態であることで、例えば遠隔操縦者が、ロスト物体表示50や警報表示51等に気づかずに(すなわち、非操縦時間T内に物体Yが検出されたことに気づかずに)操作装置35の操作部材を操作しても、作業装置3を作業状態に戻す操作をしない限りは、作業装置3が非作業状態で保持されるので、その間、遠隔操縦者にとってはロスト物体Yについての確認のための時間を確保することができ、且つ、ロスト物体Yが作業装置3の近傍にあるにもかかわらず作業装置3が接地位置に配置されたり作業装置3の駆動が開始されたりすることで生じる恐れのある問題を回避できる。
【0236】
遠隔操縦者は、例えば非操縦時間T中に検出されたロスト物体Yについて確認して安全性を確かめてから、操作装置35における該当の操作部材を操作することで、作業装置3を作業状態に戻して作業を再開させることができる。
【0237】
非操縦時間T中の物体Yの検出の際、制御装置31は、操縦禁止工程P2と作業禁止工程P3とを併せて実行するものであってもよい。この場合、作業禁止工程P3として作業装置3を非作業状態にするための遠隔操縦信号が通信装置33(送信部33b)より作業車両1へと送信されてから、操縦禁止工程P2として操作装置35又は通信装置33の送信部33bがロック状態となるものとしてもよい。
【0238】
或いは、操縦禁止工程P2として現出されていた操作装置35又は通信装置33(送信部33b)のロック状態とは無関係に、作業禁止工程P3として作業装置3を非作業状態
にするための遠隔操縦信号が通信装置33(送信部33b)より作業車両1に送信されるものとしてもよい。
【0239】
遠隔操縦者がロック解除装置38を操作して制御装置31を許容モードに戻しても、作業車両1(作業装置3)を作業状態に戻す操作をしない限りは作業車両1(作業装置3)が非作業状態のままなので、例えばロスト物体Yについての確認が不十分なままでロック解除装置38を操作した場合に、もう一度、ロスト物体Yについての確認の機会が付与されることとなる。
【0240】
このように、制御装置31が操縦禁止工程P2と作業禁止工程P3とを併せて実行すれば、作業装置3による作業を再開させるには、遠隔操縦者によるロック解除装置38の操作、及び、作業装置3を作業状態に戻すための操作装置35の操作の両操作が必要である。
【0241】
詳しくは、ロック解除装置38の操作にて操作装置35又は通信装置33のロック状態を解除してから、操作装置35を操作して作業車両1(作業装置3)を作業状態にする。
【0242】
即ち、制御装置31が両工程P2、P3を併せて実行することで、遠隔操縦者に対し、物体Xについての確認の機会を増やし、遠隔操縦での作業車両1の走行や作業等を再開するにあたっての作業車両1の安全性を高めることができる。
【0243】
なお、警報工程P1によるロスト物体表示50や警報表示51の表示および/又は警報音52の発生は、前述の如く警報解除装置37の操作で解除(表示の消去、消音)可能であるが、制御装置31が警報工程P1を操縦禁止工程P2と併せて実行する場合には、例えば、禁止モードから許可モードへの切換のためのロック解除装置38の操作により、警報工程P1による表示や警報音52の発生も解除されるものとしてもよい。
【0244】
図1に示す遠隔操縦支援システム100の構成は、以上のとおりである。次に、
図7及び
図8にて、遠隔操縦支援システム100における車載制御装置21及び制御装置31の処理工程の流れについて説明する。
図7は作業機の遠隔操縦フローチャートであり、
図8は確認要求処理フローチャートである。
【0245】
遠隔操縦者によって遠隔操縦開始の要求があると、遠隔操縦支援装置30における制御装置31は、作業車両1で検出された情報を要求するリクエスト信号を、通信装置33の送信部33bによって作業車両1に送信させる(S1)。
【0246】
作業車両1の備える作業車両操縦システム20の車載制御装置21は、遠隔操縦支援装置30からのリクエスト信号を車載通信装置23により受信すると(S11)、位置検出装置24からの位置検出情報、状態検出装置26からの状態検出情報、及び、物体検出装置25からの物体検出情報を、車載通信装置23によって遠隔操縦支援装置30に送信させる(S12)。
【0247】
遠隔操縦支援装置30の制御装置31は、位置検出情報、状態検出情報、及び、物体検出情報(以下、これらをまとめて単に「検出情報」と称するものとする)が、これら検出情報の取得部である通信装置33の受信部33aにて受信されると(S2)、これらの検出情報を読み取り(S3)、読み取った情報をもとに、表示装置34に、
図3に示すような撮像画面40及び/又は
図4に示すような検出画面41を含む遠隔操縦画面を表示させる(S4)。
【0248】
なお、
図7のフローチャートには記載していないが、制御装置31は、通信装置33に
て受信された検出情報を、記憶装置32に記憶させてもよい。
【0249】
また、
図7に記載されていないが、ステップS12において、作業車両1(作業車両操縦システム20)からは、前記検出情報の他、作業車両1(及び作業装置3)の仕様(種類、型式等)を示す装置情報が送信される。
【0250】
遠隔操縦支援装置30では、当該装置情報が通信装置33にて受信されると、記憶装置32に記憶されるものとしてもよい。記憶装置32には、作業車両1が位置する地域の地図情報が予め記憶されていてもよい。
【0251】
前記ステップS3において、制御装置31は、作業車両1からの前記検出情報とともに、例えば記憶装置32にアクセスして、遠隔操縦対象の作業車両1に対応する前記装置情報及び前記地図情報を読み取る。
【0252】
ステップS4において、表示装置34の表示する遠隔操縦画面には、制御装置31が、検出情報とともに読み取った装置情報及び地図情報に基づく表示が含まれる。
【0253】
この場合、制御装置31は、位置検出情報から作業車両1の位置を抽出し、当該作業車両1の位置から所定距離以内の範囲を作業車両1の周辺とみなして、当該範囲の地図情報を記憶装置32から読み込み、検出画面41等にて、当該地図情報に基づく地図を表示する。
【0254】
なお、地図情報の読み取りについては、記憶装置32にて記憶しておいたものを読み取る以外の方法として、制御装置31が、ステップS3で、作業車両1の位置から所定距離以内の範囲の地図情報を、インターネット等を介して外部サーバから通信装置33により受信して、当該受信した地図情報を読み込んでもよい。
【0255】
こうして、撮像画面40及び検出画面41を含む遠隔操縦画面が表示装置34にて表示されている状態において、作業車両1に遠隔操縦信号を送信する送信部としての通信装置33より遠隔操縦信号が送信されている状態かどうか、すなわち、遠隔操縦支援装置30が非操縦時間Tにあるかどうかが判断される(S5)。なお、この時、制御装置31は許容モードにあることとする。
【0256】
遠隔操縦信号の送信が認められれば(S5:YES)、遠隔操縦支援装置30による作業車両1の遠隔操縦中であると判断され、制御装置31は、遠隔操縦中において必要な情報を取得し(S1~S2)、取得した情報を読み取り(S3)、該当の情報を遠隔監視画面にて表示する(S4)という工程を繰り返す。
【0257】
この一連の工程を繰り返すことにより、物体検出装置25からの物体検出情報をもとに物体Xが検出(撮像)されたことが読み取られる(S5:YES)と、
図3及び
図4に示すように、撮像画面40及び検出画面41には、物体Xの画像または物体Xを模した図形が表示されることとなる。
【0258】
なお、遠隔操縦中に物体Xが検出されれば(S6:YES)、操作装置35の操作状態にかかわらず制御装置31が例えば作業車両1に緊急停止用の信号を送信し、作業車両1にてこの信号の受信に基づき、例えば制動装置13を制動状態にしたり、走行クラッチ5を切ったりして、作業車両1の走行を停止させること等が考えられる。これらは、
図7のフローチャートにおいて、「問題回避処理の実行」として記載されている(S7)。
【0259】
一方で、作業車両1においては、車載通信装置23が遠隔操縦支援装置30からの遠隔
操縦信号を受信すると(S13:YES)、アクチュエータ群27のうちの該当のアクチュエータを作動させ(S14)、作業車両1における操縦対象装置群28のうちの該当の対象装置を操作する。また、遠隔操縦支援装置30からのリクエスト信号に応じて、検出情報を遠隔操縦支援装置30へと送信するという工程が繰り返される(S11~S12)。
【0260】
ステップS5で、遠隔操縦信号の送信が認められなければ(S5:NO)、非操縦時間Tが開始する(S8)。なお、この非操縦時間Tの開始は、物体Xが検出されていないことを前提とするものとする。
【0261】
非操縦時間Tは、物体Yが検出されない限り(S9:NO)、その後に遠隔操縦信号の送信が認められると(すなわち、中断されていた遠隔操縦が再開されると)終了する。一方、非操縦時間Tの継続中に、新たに物体Y(例えば
図5及び
図6に示す物体Y1、Y2)が検出される(通信装置33の受信した情報から、そのようなことを示す物体検出情報を読み取る)と(S9:YES)、制御装置31は、前述した確認要求処理Pを実行する(S10)。
【0262】
本実施例では、確認要求処理として、前述の警報工程P1(S10-11)、操縦禁止工程P2(S10-21)、作業禁止工程P3(S10-31)の全てが実行されるものとする。
【0263】
警報工程P1の実行により、物体Yが検出されると、表示装置34において、
図5に示すような警報表示51の表示がなされ、且つ/又は音声装置である報知装置36にて警報音52が発生する(S10-12)。
【0264】
物体Yが検出され続けている途中で、離席中の遠隔操縦者が警報表示51や警報音52に気が付いて、撮像画面40及び/又は検出画面41を見れば、
図3及び
図4に示すような、検出中の物体Xを映し出すリアルタイムの画像を確認することとなる(遠隔操縦画面の表示(S4))。なお、警報表示51及び警報音52については、警報解除装置37の操作にて断つことができる。
【0265】
非操縦時間Tの継続中に、検出されていた物体Y(Y1、Y2)が検出されなくなる(ロスト状態になる)(S10-13:YES)と、
図5及び
図6に示すように、ロスト地点50a、要確認領域50b、移動軌跡50c、推定種類表示50d、時間経緯表示50eを含むロスト物体表示50がなされる(S10-14)。
【0266】
なお、ロスト物体表示50は、少なくともロスト地点50aの表示が含まれていればよい。また、移動軌跡50cについては、物体Yが検出された時から表示し、物体Yの移動とともに延伸するように描かれるものであってもよい。推定種類表示50dも、物体Yを検出した時から表示してもよい。時間経緯表示50eも、物体Yを検出した時に開始時刻を表示し、開始時刻からの経過時間を表示するものとしてもよい。
【0267】
このロスト物体表示50の表示は、警報表示51及び警報音52とともに、遠隔操縦者が警報解除装置37を操作する(S10-15:YES)ことにより消去される(S10-16)。これにより、撮像画面40及び検出画面41は、
図5及び
図6に示すようにロスト物体表示50を重畳表示していた状態から、
図3及び
図4に示すようにリアルタイムの画像のみを映し出す画面にリセットされる。
【0268】
一方、操縦禁止工程P2の実行(S10-21)により、操作装置35又は通信装置33(送信部33b)がロック状態となる(S10-22)。操作装置35のロック状態、
通信装置33(送信部33b)のロック状態がそれぞれどのような状態かについては、前述のとおりである。
【0269】
このようなロック状態は、遠隔操縦者がロック解除装置38を操作する(S10-23:YES)ことにより解除され(S10-24)、作業車両1の遠隔操縦が許容された状態となる。その後、遠隔操縦者が操作装置35の操作を開始することにより、非操縦時間Tは終了することとなる。
【0270】
したがって、遠隔操縦者がロック解除装置38を操作するまでは操作装置35又は通信装置33(送信部33b)のロック状態が続くので、これにより、遠隔操縦者が物体Xについて確認する機会(時間)が確保され、かつ、安全性を考慮しての作業車両1の(走行及び作業の)停止状態が維持されることになる。
【0271】
さらに、作業禁止工程P3の実行(S10-31)により、該当の遠隔操縦信号が送信部33bから作業車両1へと送信され(S10-32)、作業装置3が非作業状態となる。作業装置3の非作業状態がどのような状態かについては、前述のとおりである。
【0272】
操縦禁止工程P2の実行により操作装置35又は通信装置33(送信部33b)がロック状態になっているが、遠隔操縦者がロスト物体Yについての確認をした後、ロック解除装置38を操作することで、前述の如く、操作装置35及び通信装置33(送信部33b)はロック状態から解除されている(S10-24)。つまり送信部33bより遠隔操縦信号が送信可能な状態となっている。
【0273】
そこで、遠隔操縦者が操作装置35における該当の操作部材を操作する(S10-33:YES)ことで、送信部33bより作業車両1へと、作業車両1(作業装置3)を作業状態に切り換えるための遠隔信号が送信され(S7-34)、作業装置3が作業状態となる(すなわち、作業車両1が作業状態となる)。
【0274】
このように、遠隔操縦者が作業車両1(作業装置3)を作業状態に戻すよう操作装置35を操作するまでは、安全性を考慮しての作業車両1(作業装置3)の非作業状態が維持され、また、遠隔操縦者がロスト物体Yについて確認する機会(時間)が確保されることになる。
【0275】
次に、作業機の遠隔操縦支援装置30及びそれを含む遠隔操縦支援システム100の効果について説明する。
【0276】
遠隔操縦支援装置30は、受信部33a(通信装置33)と、操作装置35と、送信部33b(通信装置33)と、制御装置31とを備える。受信部33aは、作業車両1に設けられ且つ物体X、Yを検出する物体検出装置25から、物体X、Yの物体検出情報を取得する検出情報取得部である。操作装置35は、遠隔操縦者にて操作可能な、作業車両1の遠隔操縦を行うための装置である。送信部33bは、操作装置35の操作に基づき、作業車両1に遠隔操縦信号を送信可能である。制御装置31は、操作装置35による作業車両1の遠隔操縦が行われない非操縦時間Tにおいて、物体検出情報が物体検出装置25で物体Yを新たに検出し、且つ非操縦時間Tの終了時までに物体検出装置25で当該物体Yを検出しなくなっていることを示している場合、当該物体Yをロスト物体Yとし、遠隔操縦を再開しようとする遠隔操縦者に、ロスト物体Yについての確認を促すための確認要求処理を実行する。
【0277】
これにより、離席する等して操作装置35の操作を中断していた遠隔操縦者がロスト物体Yの存在に気付かずに作業車両1の遠隔操縦を再開するという事態が防止され、遠隔操
縦される作業車両1の安全性を向上する。
【0278】
遠隔操縦支援装置30は、情報を表示する表示装置34を備える。制御装置31は、前記確認要求処理として、表示装置34に、ロスト物体Yについての確認を遠隔操縦者に促すためのロスト物体表示50を表示させる。
【0279】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体表示50を見ることで、ロスト物体Yの存在する可能性を認識し、ロスト物体Y(の有無や種類等)について確認しようとするので、遠隔操縦される作業車両1等の安全性向上に貢献する。
【0280】
ロスト物体表示50は、ロスト物体Yが検出されなくなったロスト地点50aの表示を含む。
【0281】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト地点50aの表示を見て、そこからロスト物体Yの存在する可能性のある領域(ロスト物体Yの有無等を確認すべき領域)を推定できる。
【0282】
ロスト物体表示50は、物体検出装置25で物体X、Yを検出できない不感領域(感知領域42に含まれない領域)のうち、ロスト物体Yが非操縦時間Tの終了時に存在する可能性のある要確認領域50bの表示を含む。
【0283】
これにより、遠隔操縦者は、要確認領域50bの表示を見て、簡単に、ロスト物体Yの存在する可能性のある領域(ロスト物体Yの有無等を確認すべき領域)を認識できる。
【0284】
ロスト物体表示50は、非操縦時間T内に物体検出装置25がロスト物体Yを検出していた間のロスト物体Yの移動軌跡50cの表示を含む。
【0285】
これにより、遠隔操縦者は、移動軌跡50cの表示を見て、そのような動きをする物体Yがどのようなものであるかを推定したり、移動軌跡50cにかかっている圃場等の状態を確認したりすること等が可能である。
【0286】
ロスト物体表示50は、ロスト物体Yの種類の表示である推定種類表示50dを含む。
【0287】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体Yが何であるか(人、モノ、動物、植物等)を把握でき、身体の安全性を考えてロスト物体Yの有無の確認をすべきか否か等を検討することができる。
【0288】
ロスト物体表示50は、非操縦時間T内において、物体検出装置25がロスト物体Yを検出していた時間に関する情報である時間経緯表示50eを含む。
【0289】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体Yの移動速度等を把握でき、また、そこからロスト物体Yの種類を推測することもでき、身体の安全性を考えてロスト物体Yの有無の確認をすべきか否か等を検討することもできる。
【0290】
遠隔操縦支援装置30は、音声装置である報知装置36を備えている。制御装置31は、確認要求処理として、音声装置である報知装置36に、ロスト物体Yについての確認を遠隔操縦者に促すための警報音52を発生させる。
【0291】
これにより、遠隔操縦者は、警報音52にて容易にロスト物体Yの存在の可能性を認識することができる。
【0292】
制御装置31は、作業車両1の遠隔操縦を許容する許容モードと、作業車両1の遠隔操縦を禁止する禁止モードとに切換設定可能である。遠隔操縦支援装置30は、禁止モードに設定されている制御装置31を前記許容モードに切り換えるために遠隔操縦者にて操作可能なロック解除装置38を備えている。制御装置31は、許容モードに設定されている状態で、非操縦時間T内にて物体検出装置25がロスト物体Yを検出すると、確認要求処理として、許容モードから禁止モードに切り換わり、遠隔操縦者がロック解除装置38を操作するまで、禁止モードで保持される。
【0293】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体Yの存在の可能性に気づかずに遠隔操縦を再開しようとすると、制御装置31が禁止モードになっていて、遠隔操縦ができない状態になっていることに気づき、これにより、ロスト物体Yが存在する可能性がある(ロスト物体Yについて確認する必要がある)ことを認識する。また、遠隔操縦者が安全性を確認してから自分の意志でロック解除装置38を操作しない限り、制御装置31が禁止モードに保持されていることで、ロスト物体Yの存在にかかわらず作業車両1の遠隔操縦が再開されるという事態が阻止され、不測の作業車両1とロスト物体Yとの接触等の事態を回避し、作業車両1の安全性を高める。
【0294】
制御装置31は、禁止モードにおいて、操作装置35を、操作不能なロック状態にするものである。ロック解除装置38は、ロック状態にある操作装置35を、遠隔操縦者による操作を許容する状態に切り換える装置である。
【0295】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体Yの存在の可能性に気づかずに遠隔操縦を再開しようと操作装置35を操作すると、操作装置35の操作部材が動かない、或いは操作装置35を操作してもそれに対応する操作信号が操作装置35より出力されない等、操作装置35がロック状態になっていることに気づき、これにより、ロスト物体Yが存在する可能性がある(ロスト物体Yについて確認する必要がある)ことを認識する。また、遠隔操縦者が安全性を確認してから自分の意志でロック解除装置38を操作しない限り、操作装置35がロック状態に保持されていることで、ロスト物体Yの存在にかかわらず作業車両1の遠隔操縦が再開されるという事態が阻止され、不測の作業車両1とロスト物体Yとの接触等の事態を回避し、作業車両1の安全性を高める。
【0296】
制御装置31は、禁止モードにおいて、送信部33b(通信装置33)を、操作装置35の操作に対応する遠隔操縦信号の作業車両1への送信を拒絶するロック状態にするものである。ロック解除装置38は、ロック状態にある送信部33b(通信装置33)を、遠隔操縦信号の送信を許容する状態に切り換えるために遠隔操縦者にて操作可能な装置である。
【0297】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体Yの存在の可能性に気づかずに遠隔操縦を再開しようと操作装置35を操作すると、送信部33bから遠隔操縦信号が送信されず作業車両1が無反応であることで、送信部33b(通信装置33)がロック状態になっていることに気づき、これにより、ロスト物体Yが存在する可能性がある(ロスト物体Yについて確認する必要がある)ことを認識する。また、遠隔操縦者が安全性を確認してから自分の意志でロック解除装置38を操作しない限り、送信部33b(通信装置33)がロック状態に保持されていることで、ロスト物体Yの存在にかかわらず作業車両1の遠隔操縦が再開されるという事態が阻止され、不測の作業車両1とロスト物体Yとの接触等の事態を回避し、作業車両1の安全性を高める。
【0298】
制御装置31は、確認要求処理として、非操縦時間T中に物体検出装置25がロスト物体Yを検出すると、作業車両1(作業装置3)を非作業状態に切り換えるよう送信部33b(通信装置33)より該当の遠隔操縦信号を作業車両1に送信し、遠隔操縦者が作業車
両1を作業状態にするよう操作装置35を操作するまで、作業車両1を非作業状態に保持する。
【0299】
これにより、遠隔操縦者は、ロスト物体Yの存在の可能性に気づかずに遠隔操縦を再開しようとすると、作業状態であったはずの作業車両1(作業装置3)が非作業状態であることで、送信部33b(通信装置33)がロック状態になっていることに気づき、これにより、ロスト物体Yが存在する可能性がある(ロスト物体Yについて確認する必要がある)ことを認識する。また、遠隔操縦者が安全性を確認してから自分の意志で作業車両1(作業装置3)を作業状態に戻すよう操作装置35を操作しない限り、作業車両1(作業装置3)が非作業状態に保持されていることで、ロスト物体Yの存在にかかわらず作業車両1が作業を再開されるという事態が阻止され、不測の作業車両1(作業装置3)とロスト物体Yとの接触等の事態を回避し、作業車両1の安全性を高める。
【0300】
作業車両1は、対地作業装置である、ロータリ耕耘装置等の作業装置3を接地位置と非接地位置とに位置切換可能な昇降用アクチュエータ8cを備えている。作業装置3を接地位置に配置した状態を作業車両1の作業状態とする。作業装置3を非接地位置に配置した状態を作業車両1の非作業状態とする。
【0301】
これにより、作業車両1の作業状態と非作業状態への切換を、例えば、作業車両1における作業車両1に作業装置3を連結する連結装置8の上下動という、遠隔操縦支援装置30による作業車両1の遠隔操縦にて可能な昇降用アクチュエータ8cの操作で実現できる。また、万一、ロスト物体Yの存在に気付かずに作業車両1が発進しても、作業装置3が非接地位置にあることにより、地面に存在するロスト物体Yとの接触を回避できる。
【0302】
作業車両1は、作業車両1に連結される作業装置3を駆動するための動力取出部であるPTO軸17を備えている。PTO軸17が作業車両1より作業装置3へと動力を伝達して作業装置3を駆動する状態を作業車両1の作業状態とし、PTO軸17が作業車両1より作業装置3へと動力を伝達せず作業装置3を駆動しない状態を作業車両1の非作業状態とする。
【0303】
これにより、作業車両1の作業状態と非作業状態への切換を、例えば、作業車両1のPTO軸17から作業装置3への動力伝達の断接を行うPTOクラッチ16aの操作等、遠隔操縦支援装置30による作業車両1の遠隔操縦にて可能な操作で実現できる。また、万一、ロスト物体Yの存在に気付かずに作業車両1が発進しても、作業装置3が駆動できない状態であることにより、駆動する作業装置3にロスト物体Yが巻き込まれる等の事態を回避できる。
【0304】
遠隔操縦支援システム100は、遠隔操縦支援装置30と、作業車両1の備える物体検出装置25とを備える。物体検出装置25は、撮像装置であるカメラ25cを含む。
【0305】
これにより、カメラ25cにて撮像された画像を物体検出情報として、物体Yの検出・非検出を判断できる。また、遠隔操縦者は撮像画像を肉眼にて視認することができる。
【0306】
遠隔操縦支援システム100は、遠隔操縦支援装置30と、作業車両1の備える物体検出装置25とを備える。物体検出装置25は、レーザ発光器を含むレーザセンサ25aを備える。
【0307】
これにより、レーザ発光器(レーザセンサ25a)より照射されたレーザ光による検出結果を物体検出情報として、物体Yの検出・非検出を精密に判断できる。また、レーザセンサ25aによる検出結果を画像化することで、当該検出結果を遠隔操縦者が肉眼にて視
認することができる。
【0308】
遠隔操縦支援システム100は、遠隔操縦支援装置30と、作業車両1の備える物体検出装置25とを備える。物体検出装置25は、超音波発生器を含む超音波センサ25bを備える。
【0309】
これにより、超音波発生器(超音波センサ25b)より発振された超音波による検出結果を物体検出情報として、物体Yの検出・非検出を精密に判断できる。また、超音波センサ25bによる検出結果を画像化することで、当該検出結果を遠隔操縦者が肉眼にて視認することができる。
【0310】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0311】
1 作業車両
3 作業装置
20 作業車両操縦システム
21 車載制御装置
22 (作業装置の)制御部
23 車載通信装置
24 位置検出装置
25 物体検出装置
25a レーザセンサ(発光器を含むセンサ)
25b 超音波センサ(超音波発生器を含むセンサ)
25c カメラ(撮像装置)
26 状態検出装置
30 遠隔操縦支援装置
31 制御装置
33 通信装置(検出情報取得部、送信部)
33a 受信部(検出情報取得部)
33b 送信部
34 表示装置
35 操作装置
36 報知装置(音声装置)
37 警報解除装置
38 ロック解除装置
40 撮像画面
41 検出画面
42 感知領域
50 検出物体表示
50a ロスト地点(物体が検出されなくなった地点)
50b 要確認領域(不感知領域の一部)
50c 移動軌跡
50d 推定種類表示
50e 時間経緯表示
100 作業機の遠隔操縦支援システム
P 確認要求処理
P1 警報工程
P2 操縦禁止工程
P3 作業禁止工程
T 非操縦時間
X 物体(遠隔操縦中に検出された物体)
Y 物体、ロスト物体(非操縦時間中に検出され且つ検出されなくなった物体)