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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094636
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】運搬車及び収穫物移送システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 43/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A01D43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211305
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 長浩
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075AA01
2B075AB10
2B075AC07
(57)【要約】
【課題】収穫作業機から運搬車に搭載される容器への収穫物の移送時に、効率よく容器内の収穫物の分布の偏りを低減できる運搬車を提供する。
【解決手段】 運搬車は、車体と、収穫物を収穫する収穫作業機より排出される前記収穫物を収容する容器と、前記容器に収容されている収穫物の状態である収容状態を取得し、前記取得した収容状態に基づいて前記容器内の収穫物の分布に偏りがあるか否かを判断し、前記収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、前記容器を動かして当該偏りを低減する制御装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
収穫物を収穫する収穫作業機より排出される前記収穫物を収容する容器と、
前記容器に収容されている収穫物の状態である収容状態を取得し、前記取得した収容状態に基づいて前記容器内の収穫物の分布に偏りがあるか否かを判断し、前記収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、前記容器を動かして当該偏りを低減する制御装置とを備える運搬車。
【請求項2】
前記制御装置は、前記容器の動きが前記容器内の収穫物に伝わることにより前記偏りが低減されるように前記容器を動かす請求項1に記載の運搬車。
【請求項3】
前記制御装置は、前記容器とともに前記車体を動かすことで、前記偏りを低減する請求項1又は2に記載の運搬車。
【請求項4】
前記制御装置は、前記運搬車の前進方向又は後進方向に前記車体を動かすことで、前記偏りを低減する請求項3に記載の運搬車。
【請求項5】
前記制御装置は、前記容器を前記車体に対して動かすことで、前記偏りを低減する請求項1又は2に記載の運搬車。
【請求項6】
前記制御装置は、前記運搬車の左方又は右方に前記容器を動かすことで、前記偏りを低減する請求項5に記載の運搬車。
【請求項7】
前記制御装置は、前記容器が往復動を繰り返すように前記容器を揺らすことで、前記偏りを低減する請求項5に記載の運搬車。
【請求項8】
前記偏りを低減するために前記容器を動かす場合に、前記容器を動かす旨の通知を、前記運搬車の外部に配置される通知取得装置へと伝達する通信装置を備えている請求項1又は2に記載の運搬車。
【請求項9】
前記制御装置は、前記収穫作業機が停止しているときに、前記偏りを低減するために前記容器を動かす請求項1又は2に記載の運搬車。
【請求項10】
前記制御装置は、前記偏りを認識しない間は、前記容器とともに前記車体が停止した状態を保持する請求項1又は2に記載の運搬車。
【請求項11】
請求項1に記載の前記収穫作業機及び前記運搬車を備え、
前記収穫作業機は、機体と、前記機体に支持され、前記収穫作業機にて収穫した収穫物を搬送する搬送体とを備え、
前記搬送体は、前記収穫物を排出するための排出口を有するとともに、前記機体に対する前記排出口の位置を変更可能であり、
前記収穫物が前記排出口より排出されて前記運搬車の備える前記容器へと収容されている間に、前記制御装置は、前記容器において前記収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、前記容器を動かすことに加えて、前記偏りを低減するように前記機体に対する前記排出口の位置を変更するよう前記搬送体を制御する収穫物移送システム。
【請求項12】
前記制御装置は、
前記容器の一方向である第1方向において前記収穫物の分布に偏りがあるときは、前記容器を前記第1方向に動かすことにより当該偏りを低減し、
前記容器の他方向である第2方向において前記収穫物の分布に偏りがあるときは、前記搬送体を制御して前記排出口を前記第2方向に移動させることにより当該偏りを低減する請求項11に記載の収穫物移送システム。
【請求項13】
前記搬送体は、前記収穫作業機の前記機体に対して回動可能であり、
前記制御装置は、前記容器の前記第2方向において収穫物の分布に偏りがあるときは、前記搬送体を前記機体に対し回動して前記排出口を前記第2方向に移動させることにより当該偏りを低減する請求項12に記載の収穫物移送システム。
【請求項14】
前記容器は、その上下方向において、前記収穫物の堆積高の上限位置を有しており、
前記排出口から前記容器への前記収穫物の収容中に、前記容器の第1位置において最大の増加率で前記収穫物の堆積高が増加している場合、前記制御装置は、前記第1位置での前記収穫物の堆積高が前記上限位置付近に達したことを知らせる情報を取得すると、前記最大の増加率で穀粒の堆積高を増加する位置を、前記第1位置から、前記第1位置とは異なる前記容器の第2位置へと切り換えるよう、前記容器を前記排出口に対し移動させる請求項11に記載の収穫物移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫作業機より排出される収穫物を容器に収容する運搬車に関する。また、本発明は、収穫作業機より運搬車の備える容器へと収穫物を移送する収穫物移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び特許文献2には、コンバイン(収穫作業機)の穀粒排出用オーガ(オーガ型の搬送用スクリュー及びこれを囲む筒体を併せて「オーガ」と称するものとする)先端の排出口より、運搬車の荷台等に構成される(あるいは設置される)容器に穀粒を排出する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2にて開示される技術では、カメラによる撮像にて、運搬車に備えられる容器内における穀粒の分布に偏りがあることがわかると、コンバインの前記オーガが伸縮又は回動されて先端の排出口を移動させ、容器内における穀粒の堆積高の小さいところへと穀粒を排出することにより、容器内全体において穀粒の堆積高が均平化される(穀粒が均等に分布する)。これにより、容器の容積を最大限に活かしての容器内における穀粒の収容が可能となる。
【0004】
また、例えば特許文献3には、コンバイン(収穫作業機)から運搬車へと穀粒(収穫物)を移送するため、自動走行にて収穫作業を行うコンバインが、穀粒タンク(グレンタンク)が穀粒(収穫物)で満杯になると、収穫作業を中止し、待機する運搬車の近傍に設定された排出ポイントへと移動し、そこで穀粒タンクに貯留された穀粒(収穫物)を、運搬車(の備える容器)へと排出するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-182945号公報
【特許文献2】特開2008-161085号公報
【特許文献3】特開2020-022428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2では、容器内の穀粒(収穫物)の分布の偏りを低減するのは、オーガを回動又は伸縮させてオーガ先端の穀粒排出口を移動させることによるものである。
【0007】
しかし、オーガの回動又は伸縮に基づく穀粒排出口の位置制御は難しく、容器内における穀粒の堆積量が少ない目標位置に穀粒排出口をうまく位置合わせできない可能性もある。
【0008】
また、特許文献3では、特にコンバインから移送される穀粒(収穫物)の分布における偏りを低減するためにコンバイン又は運搬車をどうするかということには言及されていない。
【0009】
本発明は、簡単な制御構造又は制御機能にて、容器に収容される収穫物の分布における偏りを効率よく確実に低減できる運搬車、及び、収穫作業機から運搬車の容器への収穫物の移送システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る運搬車は、車体と、収穫物を収穫する収穫作業機より排出される前記収穫物を収容する容器と、前記容器に収容されている収穫物の状態である収容状態を取得し、前記取得した収容状態に基づいて前記容器内の収穫物の分布に偏りがあるか否かを判断し、前記収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、前記容器を動かして当該偏りを低減する制御装置とを備える。
【0011】
前記制御装置は、前記容器の動きが前記容器内の収穫物に伝わることにより前記偏りが低減されるように前記容器を動かしてもよい。
【0012】
前記制御装置は、前記容器とともに前記車体を動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0013】
前記制御装置は、前記運搬車の前進方向又は後進方向に前記車体を動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0014】
前記制御装置は、前記容器を前記車体に対して動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0015】
前記制御装置は、前記運搬車の左方又は右方に前記容器を動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0016】
前記制御装置は、前記容器が往復動を繰り返すように前記容器を揺らすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0017】
前記運搬車は、前記偏りを低減するために前記容器を動かす場合に、前記容器を動かす旨の通知を、前記運搬車の外部に配置される通知取得装置へと伝達する通信装置を備えてもよい。
【0018】
前記制御装置は、前記収穫作業機が停止しているときに、前記偏りを低減するために前記容器を動かしてもよい。
【0019】
前記制御装置は、前記偏りを認識しない間は、前記容器とともに前記車体が停止した状態を保持してもよい。
【0020】
本発明の他の態様に係る収穫物移送システムは、前記収穫作業機及び前記運搬車を備えていてもよい。前記収穫作業機は、機体と、前記機体に支持され、前記収穫作業機にて収穫した収穫物を搬送する搬送体とを備えていてもよい。前記搬送体は、前記収穫物を排出するための排出口を有するとともに、前記機体に対する前記排出口の位置を変更可能であってもよい。前記収穫物が前記排出口より排出されて前記運搬車の備える前記容器へと収容されている間に、前記制御装置は、前記容器において前記収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、前記容器を動かすことに加えて、前記偏りを低減するように前記機体に対する前記排出口の位置を変更するよう前記搬送体を制御してもよい。
【0021】
前記制御装置は、前記容器の一方向である第1方向において前記収穫物の分布に偏りがあるときは、前記容器を前記第1方向に動かすことにより当該偏りを低減してもよい。また、前記制御装置は、前記容器の他方向である第2方向において前記収穫物の分布に偏りがあるときは、前記搬送体を制御して前記排出口を前記第2方向に移動させることにより当該偏りを低減してもよい。
【0022】
前記搬送体は、前記収穫作業機の前記機体に対して回動可能であってもよい。前記制御装置は、前記容器の前記第2方向において収穫物の分布に偏りがあるときは、前記搬送体を前記機体に対し回動して前記排出口を前記第2方向に移動させることにより当該偏りを低減してもよい。
【0023】
前記容器は、その上下方向において、前記収穫物の堆積高の上限位置を有してもよい。
前記排出口から前記容器への前記収穫物の収容中に、前記容器の第1位置において最大の増加率で前記収穫物の堆積高が増加している場合、前記制御装置は、前記第1位置での前記収穫物の堆積高が前記上限位置付近に達したことを知らせる情報を取得すると、前記最大の増加率で穀粒の堆積高を増加する位置を、前記第1位置から、前記第1位置とは異なる前記容器の第2位置へと切り換えるよう、前記容器を前記排出口に対し移動させてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前記容器の収容体の移動により穀粒排出口に対する収容体の相対位置を変更することで、低コストで効率よく安定して収容体における穀粒の堆積高の分布の偏りを低減させ、円滑に収容体における穀粒の堆積高の分布を均平化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】収穫物移送中の収穫作業機及び運搬車の平面略図である。
図2】収穫作業機の側面図である。
図3】運搬車の側面略図である。
図4】収穫作業機から運搬車への収穫物の移送を制御するための収穫物移送システムのブロック図である。
図5】容器の上方より撮像した容器内の収穫物の分布状態を示す撮像画像の図である。
図6】容器の上方より検出した容器内の収穫物の分布状態を示すデプス(DEPTH)画像の図である。
図7】略水平方向に撮像した容器内の収穫物の分布状態を示す撮像画像の図である。
図8】均平工程を含む収穫物の移送工程を示すフローチャート図である。
図9】第1実施形態に係る容器移動型均平構造を有する運搬車の平面略図である。
図10図9のX-X線矢視図である。
図11】第2実施形態に係る容器移動型均平構造を有する運搬車の平面略図である。
図12図11のXII-XII線矢視図である。
図13】第3実施形態に係る容器移動型均平構造を有する運搬車の平面略図である。
図14図13のXIV-XIV線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
収穫作業機1及び運搬車30の構造と、これらの間で行われる収穫物の移送態様の概要について説明する。図1は、収穫物移送中の収穫作業機1及び運搬車30の平面略図である。図2は、収穫作業機1の側面図である。図3は運搬車30の側面略図である。
【0027】
収穫作業機1は作物の収穫が行われる圃場80において設定された収穫物排出ポイントP1にて停止している。運搬車30は、圃場80の外郭線沿いに形成された畦道82上に設定された収穫物受取ポイントP2にて停止している。圃場80と畦道82との間には法面81が形成され、法面81の上下高の分、畦道82は圃場80より一段高くなっている
【0028】
なお、収穫作業車1の、収穫物排出ポイントP1までの移動及び収穫物排出ポイントP1からの移動については、作業者が搭乗して手動操作による移動でも、遠隔操作による移動でも、自動走行による移動でもよい。運搬車30の、収穫物受取ポイントP2までの移動及び収穫物受取ポイントP2からの移動についても、作業者が搭乗して手動操作による移動でも、遠隔操作による移動でも、自動走行による移動でもよい。
【0029】
また、収穫作業車1及び運搬車30の各車両の移動方法として、手動操作による移動、遠隔操縦による移動、及び自動走行の、3つの移動方法が考えられる中、収穫作業車1及び運搬車30の両車両を同じ移動方法で移動させてもよく、或いは、両車両の移動方法を異ならせてもよい。
【0030】
図1及び図2において、収穫作業機1は収穫物搬送体である穀粒(収穫物)排出オーガ10等を備えており、穀粒排出オーガ10の先端部に設けられた穀粒(収穫物)排出口11より排出される穀粒(収穫物)が、収穫物受取ポイントP2にて停止している運搬車30の容器40へと収容される。
【0031】
図1及び図2にて矢印X1で示す方向が、収穫作業機1の前方であり、矢印X2で示す方向が、収穫作業機1の後方である。図1に示すように、平面視で矢印X1、X2に対して直交する方向が、収穫作業機1の左右方向(幅方向)であり、矢印Y1で示す方向が収穫作業機1の左方、矢印Y2で示す方向が収穫作業機1の右方である。また、図2に示すように、側面視で矢印X1、X2に対して直交する方向が、収穫作業機1の上下方向であり、矢印Z1で示す方向が収穫作業機1の上方、矢印Z2で示す方向が収穫作業機1の下方である。
【0032】
一方、図1及び図3にて矢印X3で示す方向が、運搬車30の前方であり、矢印X4で示す方向が、運搬車30の後方である。図1に示すように、平面視で矢印X3、X4に対して直交する方向が、運搬車30の左右方向(幅方向)であり、矢印Y3で示す方向が運搬車30の左方、矢印Y4で示す方向が運搬車30の右方である。また、図3に示すように、側面視で矢印X3、X4に対して直交する方向が、運搬車30の上下方向であり、矢印Z3で示す方向が運搬車30の上方、矢印Z4で示す方向が運搬車30の下方である。
【0033】
なお、図1において、矢印X1、X2と矢印X3、X4とが平行であり、すなわち、収穫物排出ポイントP1における収穫作業機1と収穫物受取ポイントP2における運搬車30とで、前後を統一しており、これらが左右に並置された状態となっている。しかし、収穫物排出ポイントP1での収穫作業機1と収穫物受取ポイントP2での運搬車30との姿勢については図1に示すようなものに限られない。例えば、収穫作業機1と運搬車30とで前後を逆にしてもよく、また、これらを平面視で互いに斜めになるように配してもよい。
【0034】
収穫作業機1は、圃場等にて穀粒等の収穫物の収穫作業をすべく手動操作又は自動走行にて移動可能である。特に、図1及び図2に示す収穫作業機1は、主に米穀収穫用に構成されたコンバインである。図1及び図2にてこの収穫作業機1としてのコンバイン(以下、「コンバイン1」とする)の構造について説明する。
【0035】
コンバイン1は、機体2、機体2の下方に設けられる走行装置(本実施形態ではクローラ式走行装置)3、機体2の前方に備えられる刈取部4、機体2の右半前部に構成される操縦部13、機体2の右半部で、操縦部13の後方に設けられる穀粒タンク(グレンタンク)8等を備える。
【0036】
また、機体2の左半部において、図1に示すように、脱穀部6及び揺動選別部7が設けられている。揺動選別部7は脱穀部6の下方に配置されている。操縦部13の左側には、刈取部4から脱穀部6へと穀稈を搬送するための刈取穀稈搬送部5が設けられている。さらに、機体2の後端部には排藁処理部12が設けられ、その下端が排藁排出口12aとなっている。
【0037】
また、コンバイン1は、穀粒タンク8に貯留された穀粒(収穫物)を外部に排出するための搬送体である揚穀オーガ9及び穀粒排出オーガ10を備えている。
【0038】
揚穀オーガ9は上下方向に延伸する円筒状の揚穀筒9aと、揚穀筒9a内に設けられる上下軸心状の搬送スクリュー(図示せず)とを有し、揚穀筒9aが機体2に固定されている。
【0039】
穀粒排出オーガ10は、揚穀筒9aの上端より延伸される円筒状の穀粒排出筒10aと、穀粒排出筒10a内にてその軸心に沿って設けられる搬送スクリュー(図示せず)とを有する。穀粒排出オーガ10の搬送スクリューは揚穀オーガ9の搬送スクリューに対し連動するように接続される。
【0040】
穀粒排出オーガ10は、揚穀オーガ9の上下方向の中心軸回りに回動自在であり、また、当該中心軸に対する上下方向の角度を変更することも可能である。すなわち、穀粒排出筒10aは揚穀筒9aの上端に曲折自在に接続され、穀粒排出オーガ10の搬送スクリューは揚穀オーガ9の搬送スクリューの上端に曲折可能に接続されている。穀粒排出筒10aの先端(揚穀筒9aに接続される端部とは反対側の端部)には下向き開口状の穀粒(収穫物)排出口11が設けられている。
【0041】
なお、図2のコンバイン1は機体2の後部(穀粒タンク8の後方)にて揚穀オーガ9を設けているが、揚穀オーガ9の位置はこれに限られない。揚穀オーガ9は、コンバイン1における、穀粒タンク8の底部より排出される穀粒を上向きに搬送するのに適した位置に設けられていればよい。
【0042】
コンバイン1は、操縦部13にて備えられる運転席14に座るオペレータが操縦部13に備えられるレバー等の操作具を用いての手動走行が可能である。また、コンバイン1は自動走行にて移動可能な構造であってもよい。
【0043】
なお、運転席14はエンジンルームを構成する箱型フレーム15上に載置されている。箱型フレーム15にて構成されるエンジンルーム内には内燃機関や電動モータ等の原動機16が設置されており、原動機16の動力が走行装置3(例えば走行装置3の備える油圧モータや電動モータ等)に伝達されてコンバイン1が走行する。
【0044】
また、原動機16の動力が、刈取部4、刈取穀稈搬送部5、脱穀部6、揺動選別部7等にも伝達されることにより、コンバイン1は、圃場にて走行しながら作物の収穫作業を行う。
【0045】
すなわち、圃場80において走行するコンバイン1の刈取部4にて稲穂等の穀稈が刈り取られる。刈り取られた穀稈は、刈取穀稈搬送部5を介して脱穀部6へと搬入される。穀粒は脱穀部6にて穀稈(茎)より分離されて脱穀部6の下方の揺動選別部7へと落とされ、さらに揺動選別部7にて、稲の葉や藁屑等の夾雑物の混じる二番物より、夾雑物の混在のない一番物へと、穀粒が選別される。
【0046】
なお、コンバイン1の機体2には、図略の、二番物を再び揺動選別部7へと送り込む二番物コンベア(搬送体)、及び、一番物を穀粒タンク8へと搬入する一番物コンベア(搬送体)等が設けられている。
【0047】
上述の如く一番物として選別された穀粒は、図略の一番物コンベアを介して穀粒タンク8へと搬入され、穀粒タンク8にて貯留される。なお、脱穀及び選別後に残る藁や夾雑物は後方に搬送され、排藁処理部12にて切断等の処理を受け、排藁排出口12aより外部に放出される。
【0048】
揚穀オーガ9及び穀粒排出オーガ10(すなわち、揚穀筒9a及び穀粒排出筒10a内の搬送スクリュー)が原動機16の動力にて駆動されることで、穀粒タンク8内に貯留されていた穀粒は、揚穀筒9a内にて上向きに搬送され、穀粒排出筒10a内にて穀粒排出口11へと搬送され、穀粒排出口11より下向きに放出される(すなわち、落下する)。
【0049】
穀粒排出口11の近傍にて、穀粒排出筒10aの外面には収容状態検出装置25が取り付けられている。収容状態検出装置25は、穀粒排出口11より排出された穀粒(収穫物)の堆積状態を検出するように配置構成されている。
【0050】
すなわち、収穫物排出ポイントP1にあるコンバイン1の穀粒排出口11から排出される穀粒が収穫物受取ポイントP2にある運搬車30の容器40へと収容される状況においては、収容状態検出装置25は、容器40内に収容される穀粒(収穫物)の分布状態(収容状態)を検出する。
【0051】
なお、コンバイン1における収容状態検出装置25の取付位置は、上記の位置に限定されない。収穫物受取ポイントP2にある運搬車30における容器40内の当該収容状態を検出できる位置であれば、コンバイン1のどの位置に収容状態検出装置25を設けてもよい。
【0052】
収容状態検出装置25の構造については、後の収穫物移送システム100の構造の説明の中で詳述する。
【0053】
コンバイン1には、穀粒タンク8にて貯留していた穀粒を穀粒排出口11より排出するために揚穀オーガ9及び穀粒排出オーガ10の搬送スクリューを駆動する(原動機の動力を揚穀オーガ及び穀粒排出オーガに伝達する)機構として、穀粒排出駆動機構17(図4参照)を備えている。
【0054】
穀粒排出駆動機構17は、どのような構造でもよく、例えば原動機の動力を伝達するベルトやチェーン等の無端帯伝動機構、ギア機構(ベベルギア機構等)、クラッチ(テンションクラッチ等)等を組み合わせたもの等が考えられる。
【0055】
また、前述のように穀粒排出オーガ10(穀粒排出筒10a)は揚穀オーガ9(揚穀筒9a)の上下方向の中心軸回りに回動自在であり、さらには、当該中心軸に対しての上下方向の角度を変更するように上下に傾動可能である。このような揚穀オーガ9に対する穀粒排出オーガ10の回動及び傾動により、コンバイン1は、揚穀筒9aを固定した機体2に対する穀粒排出口11の位置を変更可能である。
【0056】
さらに、穀粒排出筒10aは、穀粒排出口11を含む先端部を、穀粒排出オーガを内接する本体部に対して長手方向に移動(摺動)させることが可能である。すなわち、穀粒排出筒10aは、伸縮可能であり、揚穀筒9aの上端から穀粒排出口11までの穀粒の搬送距離を変更することができる。
【0057】
以上のように、穀粒排出オーガ10は、コンバイン(収穫作業機)1が収穫した穀粒(収穫物)の搬送体であり、機体2(に固定された揚穀筒9a)に対する穀粒排出口11の位置を変更可能な構造である。
【0058】
コンバイン1は、上述のように機体2に対する穀粒排出口11の位置を変更するための穀粒排出口移動機構18(図4参照)を備えている。穀粒排出口移動機構18は、どのような構造でもよく、例えば原動機16の動力を利用して作動する油圧アクチュエータやギア機構を備えたもの等が考えられる。
【0059】
以上のように、コンバイン1は、原動機16の動力を、走行装置32等を含む走行系駆動装置類26(図4参照)に伝達して走行し、また、刈取部4、刈取穀稈搬送部5、脱穀部6、揺動選別部7、排藁処理部12等の駆動機構や、前述の穀粒排出駆動機構17及び穀粒排出口移動機構18等を含む作業系駆動装置類27(図4参照)に伝達して、収穫作業を行う。
【0060】
後に図4を参照して詳述するように、コンバイン(収穫作業機1)には制御装置20が設けられており、コンバイン1が自動走行する場合は、走行系駆動装置類26及び作業系駆動装置類27が制御装置20にて電子制御される。また、作業者の手動操作にて走行する場合は、作業者が運転席14の近傍に配置されている操作部材を操作して、走行系駆動装置類26及び作業系駆動装置類27を制御する。この手動操作の場合にも、制御装置20が、操作部材の操作により発生する操作信号を取得し、この操作信号に基づき、走行系駆動装置類26及び作業系駆動装置類27を電子制御するものであってもよい。
【0061】
運搬車30は、例えば穀粒倉庫等と、前述のように設定された収穫物受取ポイントP2との間を手動操作又は自動走行にて移動可能である。
【0062】
詳しく言うと、運搬車30は、収穫物受取ポイントP2まで手動操作又は自動走行にて移動し、収穫物受取ポイントP2にて、収穫作業機(コンバイン)1より排出された穀粒(収穫物)を容器40で受け、収穫物受取ポイントP2より手動操作又は自動走行にて穀粒倉庫等まで移動して、穀粒倉庫等に容器40内の穀粒を搬入可能となっている。
【0063】
なお、トラックやユーティリティビークル(UTV)等の車両を運搬車30とし、このような車両の荷台に容器40を搭載すること、或いは荷台そのものを容器40とすることが考えられるが、収穫作業機1より排出される収穫物を収容する容器40を備えたものであれば、どのような様式や構造の車両でもよい。
【0064】
図1及び図3にて運搬車30の構造について説明する。運搬車30は、車体31を有し、車体31には、走行装置32が設けられている。走行装置32は、例えばそれぞれ差動機構を備えた前後一対の車軸駆動装置(トランスアクスル)32R、32Fであり、車体31の後部に支持される車軸駆動装置32Rより延伸される左右一対の車軸の各々に後輪33Rを、車体31の前部に支持される車軸駆動装置32Fより延伸される左右一対の車軸の各々に前輪33Fを備えた構造である。
【0065】
走行装置32は、前述のようなホイール型の走行装置の他、例えば左右一対の駆動輪を各別に駆動するための一対の走行モータ(油圧モータ、電動モータ等)を備えたクローラ式の走行装置等であってもよい。
【0066】
さらに、走行装置32(車軸駆動装置32F、32R)には、車輪33F、33R(走行装置32がクローラ式走行装置である場合は駆動輪)を制動するための制動装置32a
が備えられている。
【0067】
車体31にはまた、内燃機関や電動モータ等の原動機34、原動機34の動力を走行装置32(車軸駆動装置32F、32R)に伝達するための伝動(変速)装置35、例えば操舵可能に構成された前輪33Fを操舵するための操舵装置36、前輪33F及び後輪33Rを制動する制動装置(図3で図略、図4参照)が設けられている。
【0068】
また、車体31には運転席49が設けられており、運転席49の近傍に、様々な操作部材(レバー、ハンドル、スイッチ等)が配置されている。運転席49に座る作業者は、これらの操作部材を操作して、原動機34、伝動装置35、操舵装置36、制動装置32a等、運搬車30の移動のための各装置を操作する。また、これらのうち少なくとも一つが、後述の制御装置50及び収穫物移送システム100(図4参照)にて制御される。
【0069】
車体31には、容器40が搭載されており、容器40に、コンバイン(収穫作業機)1の穀粒(収穫物)排出口11より排出される(落下する)穀粒(収穫物)が収容される。
【0070】
なお、容器40に収容された穀粒(収穫物)を倉庫等に搬出する場合、運搬車30は、例えば容器40の一側を構成する側板部を開放可能とする等により、容器40に収容した穀粒(収穫物)を外部に排出可能である。
【0071】
容器40には収容状態検出装置55が取り付けられている。収容状態検出装置55は、容器40内に収容した穀粒(収穫物)の堆積状態、すなわち、容器40内における穀粒の分布の状態(収容状態)を検出する。
【0072】
なお、運搬車30における収容状態検出装置55の取付位置は、容器40に限定されない。容器40内の当該収容状態を検出できる位置であれば、運搬車30のどの位置に収容状態検出装置55を設けてもよい。
【0073】
収容状態検出装置55の構造については、後の収穫物移送システム100の説明の中でまた詳述する。
【0074】
以上のようにコンバイン1に設けた収容状態検出装置25及び運搬車30に設けた収容状態検出装置55により、コンバイン1の穀粒排出口11から運搬車30の容器40への穀粒(収穫物)の移送中に、容器40内にて穀粒(収穫物)がどのように分布して収容されているのか(収容状態)を検出することができ、その検出結果を、例えば後述の運搬車30の制御装置50(図4)の、当該分布に偏りがあるか否かの判断のために提供することができる。
【0075】
なお、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあるか否かの判断に必要な検出結果を、コンバイン1及び運搬車30のうち一方に設けた収容状態検出装置25又は収容状態検出装置55だけで十分に提供できるのであれば、その収容状態検出装置25又は収容状態検出装置55だけで十分であり、コンバイン1及び運搬車30のうちのもう一方については、収容状態検出装置25又は収容状態検出装置55を設けなくてもよい。
【0076】
運搬車30は、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55の検出結果に基づき、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断される場合に、当該偏りを低減するように容器40を動かす構造(以下、「均平構造」とする)を有している。
【0077】
なお、上述の「収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55」とは、「収容状態検出装置25及び収容状態検出装置55のうち少なくとも一方(一つ)」と同意であ
る。以下、「及び/又は」を含む文言について同様とする。
【0078】
この均平構造について、後述の図4の収穫物移送システム100では、運搬車30が、車体移動型均平構造56及び容器移動型均平構造57を有するものとしている。車体移動型均平構造56は、車体31(運搬車30)の移動を制御するための原動機34、伝動機構(変速機構)35、制動装置32aよりなるものとしている。容器移動型均平構造57については、図9~14で示すように様々な実施形態が考えられる。
【0079】
車体移動型均平構造56及び容器移動型均平構造57については、以下の、図4を参照しての収穫物移送システム100の説明、図5図7を参照しての容器40内における穀粒(収穫物)の収容状態を検出する構造の説明、及び、図8を参照しての収穫物移送工程の説明の後にて詳述する。
【0080】
ここからは、収穫作業機(コンバイン)1(以下、前述の「コンバイン1」を「収穫作業機1」に言い換えるものとする)から運搬車30の容器40への収穫物(穀粒)の移送を制御する収穫物(穀粒)移送システム100について、図4を参照して説明する。図4は収穫作業機1及び運搬車30の収穫物移送システム100のブロック図である。
【0081】
収穫物移送システム100において、収穫作業機1は、制御装置20、記憶装置21、通信装置22、機体位置検出装置23、収量検出装置24、及び収容状態検出装置25を備えている。一方、運搬車30は、制御装置50、記憶装置51、通信装置52、車体位置検出装置53、及び収容状態検出装置55を備えている。
【0082】
なお、前述の如く、収穫作業機1及び運搬車30のうち一方のみに収容状態検出装置(収容状態検出装置25又は収容状態検出装置55)を設け、他方には当該収容状態検出装置を設けないことも考えられる。
【0083】
さらに、収穫物移送システムシステム100は、収穫作業機1及び運搬車30の外部に配置される外部サーバとしての管理装置101を含んでいる。管理装置101は、収穫作業機1の通信装置22及び運搬車30の通信装置52と無線で通信可能な通信装置102を有している。当該無線通信には、例えば携帯電話通信網、インターネット、又は無線LAN等を用いることが考えられる。
【0084】
また、管理装置101は、オペレータによる操作を受付け可能な入力インタフェース103を有しており、入力インタフェース103を介して入力された操作信号を、制御信号として、通信装置102より収穫作業機1(通信装置22、制御装置20)及び/又は運搬車30(通信装置52、制御装置50)へと送信可能である。
【0085】
また、管理装置101は、表示装置104を有しており、収穫作業機1(通信装置22、制御装置20)及び/又は運搬車30(通信装置52、制御装置50)より発信される様々な情報(機体位置検出装置23や車体位置検出装置53等の検出装置による検出結果等)を通信部(通信装置)102にて受信し、受信した情報に基づく表示を表示装置104にて表示させることができる。
【0086】
管理装置101は、例えば、管理室とされる室内に設置されたコンピュータシステムや、収穫物排出ポイントP1及び収穫物受取ポイントP2の近傍に居るオペレータが携帯する携帯電話端末又はタブレット型通信端末であることが考えられる。
【0087】
また、以上に挙げた通信装置102、入力インタフェース103及び表示装置104は、管理装置101としての一つのユニットに内設されたものとしても、或いは、個々の装置として設けられ、これらを接続して統合したものを管理装置101としてもよい。
【0088】
収穫作業機1において、制御装置20はプロセッサを含む電子制御装置(ECU)等であり、通信装置22にて受信する制御信号に応じて、記憶装置21にて記憶されている走行ルートに沿って収穫作業機1が走行し、また収穫作業をするように、原動機16や前述の走行系駆動装置類26及び作業系駆動装置類27を制御する。
【0089】
記憶装置21は、制御装置20に内蔵される揮発性又は不揮発性のメモリ、或いは、制御装置20に対し外付けで接続されるソリッドステートドライブ(SSD)やハードディスクドライブ(HDD)等である。記憶装置21には、圃場内にて設定される走行ルートや、圃場外における地図情報等が記憶される。
【0090】
通信装置22は、携帯電話通信網、インターネット、又は無線LANを介して、無線で通信するためのアンテナ、IC(集積回路)、及び電気回路等である。
【0091】
機体位置検出装置23は、衛星測位システムを利用して、自己(機体2)の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する。即ち、機体位置検出装置23は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、当該信号に基づいて自己(機体2)の位置を検出する。
【0092】
機体位置検出装置23は、測位衛星からの信号を受信可能な基地局(基準局)からの補正等の信号に基づいて補正した位置を、自己(機体2)の位置として検出してもよい。また、機体位置検出装置23は、ジャイロセンサや加速度センサ等の慣性計測装置を有していてもよい。この場合、機体位置検出装置23は、測位衛星から受信した信号に基づいて検出した位置(緯度、経度)を、慣性計測装置によって補正して、当該補正後の位置を自己(機体2)の位置として検出してもよい。
【0093】
収穫作業機1における収量検出装置24は、穀粒タンク8に貯蔵される穀粒の量を収量として検出する。なお、穀粒タンク8を満杯にする収量の上限値が設定されており、この上限値が記憶装置21及び/又は記憶装置51に記憶されている。
【0094】
運搬車30の制御装置50、記憶装置51、通信装置52及び車体位置検出装置53は、以上に述べた収穫作業機1の制御装置20、記憶装置21、通信装置22及び機体位置検出装置23と同様の構造もしくは機能を有するものであり、これらの説明については省略する。
【0095】
収穫作業機1の収容状態検出装置25及び運搬車30の収容状態検出装置55は、それぞれ、容器40内での位置の違いによる穀粒(収穫物)の堆積量の変化(差)、すなわち、容器40内に収容される穀粒(収穫物)の分布の状態(収容状態)を検出する。
【0096】
収容状態検出装置25及び収容状態検出装置55は、例えば、撮像装置(カメラ)や、レーザを用いた光学センサ(LiDARセンサ)等であることが考えられるが、容器40内の穀粒の堆積量(堆積高)の分布(位置の違いによる変化)の状態を、後述の如き均平工程を実行するのに必要な精度で検出できるものであればどのような構造のものでもよい。
【0097】
前述の如く、収穫作業機1の収容状態検出装置25は、図1及び図2にて示すように、穀粒(収穫物)排出口11の近傍に配置されることで、容器40内の穀粒(収穫物)の分布状態を上方から検出する。このような収容状態検出装置25の上方からの検出により、容器40の全体にわたっての容器40の分布状態、すなわち、容器40のどの部分で穀粒
(収穫物)が堆積しており、どの部分で堆積していないかを明確に把握できる。
【0098】
一方、運搬車30の収容状態検出装置55は、例えば容器40の側板部(図1図3では後端の側板部)上端に設けられることで、容器40内の穀粒(収穫物)の分布状態を略水平方向の視線(感知方向)で検出する。このような収容状態検出装置55の略水平方向の検出により、容器40内での位置の違いによる堆積量(堆積高)の変化、すなわち、容器40内のどこに穀粒が多く(すなわち高く)堆積され、どこに穀粒が少なく(すなわち低く)堆積されているかを明確に把握できる。
【0099】
収穫作業機1においては、以上の如き記憶装置21、通信装置22、機体位置検出装置23、収量検出装置24及び収容状態検出装置25を、制御装置20に電気接続している。その電気接続手段として、CAN、LIN、又はFlexRay等の車載ネットワークを用いてもよい。
【0100】
また、運搬車30における記憶装置51、通信装置52、車体位置検出装置53及び収容状態検出装置55の制御装置50への電気接続についても同様である。
【0101】
収穫作業機1の通信装置22と運搬車30の通信装置52とは、携帯電話通信網、インターネット、又は無線LANを介して、互いに通信可能である。これにより、収穫作業機1と運搬車30にて、例えばこれらのうち一方に設けた検出装置による検出結果等の情報が共有される。
【0102】
例えば、容器40内の収穫物の収容状態を、収穫作業機1に設けられる収容状態検出装置25のみで検出する場合に、その検出結果についての情報を、通信装置22と通信装置52との通信にて、運搬車30の制御装置50が把握することができる。
【0103】
なお、このように収穫作業機1と運搬車30とが互いに通信可能な状態において、収穫作業機1及び運搬車30のうちいずれか一方の制御装置(制御装置20又は制御装置50)より、他方の制御装置(制御装置20又は制御装置50)に制御信号を送信して、当該一方にて当該他方を遠隔操縦可能としてもよい。
【0104】
例えば、後述の均平工程として容器40を動かすための制御信号を、収穫作業機1の制御装置20から出力し、通信装置22と通信装置52との間の通信にて、制御装置50に伝達することで、収穫作業機1の制御装置20にて運搬車30(の容器40)を遠隔操縦することが考えられる。
【0105】
制御装置20及び/又は制御装置50は、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55の検出した収容状態に基づき、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあるか否かを判断する。
【0106】
この判断の基準としては、例えば、容器40内での穀粒の堆積が多いところでの堆積量(最大堆積量)と、穀粒の堆積が少ない(あるいは体積が無い)ところでの堆積量(最小堆積量)との差について、閾値T1(図8のステップS9を参照)を設定し、当該差が閾値T1以上であれば当該偏りがあると判断し、当該差が閾値T1未満であれば当該偏りがないと判断するものとしてもよい。この閾値T1を記憶装置21及び/又は記憶装置51にて記憶しておいてもよい。
【0107】
制御装置20及び/又は制御装置50は、容器40内の穀粒の分布に偏りがあると判断すると、当該偏りを低減する(穀粒の堆積を均平化する)ため容器40を動かす旨の通知に該当する信号を、通信装置22及び/又は通信装置52から管理装置101の通信装置
102へと送信する。
【0108】
管理装置101は、通信装置102にて受信した当該信号に基づき、当該偏りを低減するため容器40を動かす旨の表示を表示装置104に表示させる。この表示は、その旨の文言の表示に限られず、例えば、照明の点灯や点滅等であってもよい。或いは、音声による報知でもよい。
【0109】
このような管理装置101による当該通知内容の表示又は報知により、例えば作業者が、管理装置101としての携帯電話端末を持ち、運搬車30の近傍に立っている場合に、表示装置104でもある当該携帯電話端末が表示する当該通知内容や、当該携帯電話端末の発する音声による当該通知内容を作業者が確認できる。
【0110】
当該通知内容を確認した作業者は、容器40が動く(あるいは容器40ごと運搬車30の車体31が動く)ことを認識し、例えば容器40や車体31と接触してしまう可能性を認識し、当該接触を回避する行動をとることができる。
【0111】
また、制御装置20及び/又は制御装置50は、管理装置101の表示装置104に、図5図7に示すような、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55の検出した収容状態を示す画像を表示させてもよい。
【0112】
図5は、容器40の上方より撮像した容器40内の穀粒(収穫物)の分布状態を示す撮像画像90の図である。図6は、容器40の上方より検出した容器40内の穀粒(収穫物)の分布状態を示すデプス(Depth)画像93の図である。図7は、略水平方向に撮像した容器40内の収穫物の分布状態を示す撮像画像96の図である。
【0113】
すなわち、図5の撮像画像90は、カメラ等の撮像装置を収容状態検出装置25として図1及び図2に示すように収穫作業機1に設けた場合における当該収容状態検出装置25にて撮像された容器40内の収容状態の画像である。
【0114】
図6のデプス画像93は、LiDARセンサ等の、周辺の環境に存在する物体の各計測点までの距離を測定可能な検出装置を収容状態検出装置25として図1及び図2に示すように収穫作業機1に設けた場合における当該収容状態検出装置25にて検出された容器40内の収容状態の画像である。
【0115】
図7の撮像画像96は、カメラ等の撮像装置を収容状態検出装置55として図1及び図3に示すように運搬車30に設けた場合における当該収容状態検出装置55にて撮像された容器40内の収容状態の画像である。
【0116】
図5の撮像画像90では、少なくとも、容器40内の、穀粒(収穫物)が堆積されているところ(堆積領域91)と、堆積されていないところ(未堆積領域92)との違いが、穀粒(収穫物)の色で彩色されたところと、穀粒(収穫物)の色ではなく容器40の底面の色が彩色されたところとの違いとなって表れている。
【0117】
穀粒が堆積されている堆積領域91については、位置の違いにより穀粒(収穫物)の堆積量が異なっていても、堆積領域91全体が略同じ穀粒(収穫物)の色で彩色されていて、堆積量(堆積高)の変化がわかりにくい可能性がある。この点については、例えば、堆積領域91の中で影となっている部分の色合い又は明度の微妙な変化等を詳細に測定することで、所々の堆積量の違い等を検出可能とすることが考えられる。
【0118】
なお、後述の如く容器40内の穀粒(収穫物)の分布における偏りを低減するために容
器40を動かすか否かの判断のもととなる、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあるか否かの判断基準を、例えば撮像画像90に未堆積領域92が表れているか否か(撮像画像90に表されている容器40内全域が堆積領域91で占められているか否か)という程度のものとするのであれば、堆積領域91内での明度等の細かな違いを測定する必要はなく、堆積領域91と未堆積領域92との区別として、色彩の違いが撮像画像90に表れていれば十分である。
【0119】
一方、図6のデプス画像93では、穀粒(収穫物)が堆積されている堆積領域94と、堆積されていない未堆積領域95との違いのみならず、堆積領域94の中で、穀粒(収穫物)の堆積高の違いが、色彩の違い(或いは色の明度の違い)となって表されている。図6のデプス画像93では、収容状態検出装置25からの距離が近いものほど黒く、遠いものほど白く表されている。したがって、収穫物の堆積領域94の中で、堆積高の大きいところほど、収容状態検出装置25までの距離が小さくなって黒くなっており、堆積領域94における堆積高の小さいところほど、収容状態検出装置25までの距離が大きくなって白くなっている。また、容器40の底面が露出している未堆積領域95も、収容状態検出装置25までの距離が大きいので、白くなっている。
【0120】
このようなデプス画像93の表示は、収容状態検出装置25を、周辺の環境に存在する物体の各計測点までの距離を測定可能なセンシング装置(LiDARセンサ、カメラ等)とすることで可能である。収容状態検出装置25を距離測定可能なセンシング装置にすれば、容器40の上方からの検出であっても、レーダが容器40内にて堆積される穀粒(収穫物)に届くまでの距離値を取得でき、この距離値の変化は穀粒(収穫物)の堆積高(容器40上方の撮像装置から見れば、穀粒(収穫物)の厚み)の変化を反映している。
【0121】
これにより、例えば堆積高の変化に拘わらず穀粒(収穫物)が容器40内の全域で堆積されているようなケースであっても、容器40内における穀粒(収穫物)の分布に偏りがあるか否かを判断することができる。例えば、図6に示される堆積領域94の中で、堆積量(堆積高)が大きい領域94b、堆積量(堆積高)が中程度の領域、堆積量(堆積高)が小さい領域が異なる色彩にて色分けされている。
【0122】
図7の撮像画像96は、運搬車30において、収容状態検出装置55としての撮像装置(カメラ)を、例えば容器40の側板部上端に設け、容器40内を略水平方向に見る状態で撮像することで得られる画像である。
【0123】
図7の撮像画像96では、穀粒(収穫物)が堆積する堆積領域97が穀粒(収穫物)の色で覆われた部分として表されており、その上方に、収穫物の堆積がまだ届いていない未堆積領域98が、容器40の内壁の色で覆われた部分として表されている。
【0124】
図7の撮像画像96では、堆積領域97が、穀粒(収穫物)が高く堆積して形成された複数の山97aを含んでいる。山97aと山97aとの間の谷97bや、容器40の内壁に近接して形成される山97aの裾野97cは、穀粒(収穫物)の堆積量(堆積高)の小さいところである。
【0125】
このように、運搬車30における収容状態検出装置55にて撮像された撮像画像96では、容器40内に収容される穀粒(収穫物)の堆積量(堆積高)が、堆積領域97における上下高となって表れ、位置の違いによる堆積量(堆積高)の変化は堆積領域97の山97a、谷97b、裾野97c等の図形の変化となって表れる。よって、堆積領域97が、距離測定可能なセンシング装置(LiDARセンサ、カメラ等)等を用いないと実現できないような堆積量の変化に応じた色彩の変化がない状態であっても、その図形の変化によって、穀粒(収穫物)の分布の状態(堆積量の変化)が可視化されている。
【0126】
なお、収容状態検出装置55の略水平方向での撮像で取得される撮像画像96では、画像に表されている山97aの背後にて堆積される穀粒(収穫物)が山97aに隠れてしまい、隠された部分の穀粒(収穫物)の分布状態(堆積高の変化)を視認できない。すなわち、容器40内の全域にわたっての穀粒(収穫物)の分布状態を把握することができない。
【0127】
この点については、同じく撮像装置として構成された場合の収穫作業機1の収容状態検出装置25で容器40の上方から撮像すれば、容器40内の全域にわたって、穀粒(収穫物)が堆積されているか否かの判断をすることができる。
【0128】
すなわち、同じく撮像装置(カメラ)を用いたものであっても、収穫作業機1の収容状態検出装置25及び運搬車30の収容状態検出装置55の両方で撮像することにより、図5のような撮像画像90及び図7のような撮像画像96の両方を得て、容器40内の全域にわたっての穀粒(収穫物)の分布で偏りがあるか否かの判断の精度を高めることが考えられる。
【0129】
一方、容器40内の穀粒(収穫物)の分布状態を容器40の上方から検出する収容状態検出装置25を、距離測定可能なセンシング装置(LiDARセンサ、カメラ等)とすれば、図6に示すように、容器40内の全域にわたる穀粒(収穫物)の堆積量の変化をより正確に把握することができる。
【0130】
したがって、運搬車30においては収容状態検出装置55を設けず、距離測定可能なセンシング装置(LiDARセンサ、カメラ等)にて構成した収穫作業機1の収容状態検出装置25のみで容器40内の収容状態を検出することも考えられる。このように収容状態検出装置を一つにすることで、高コスト化を抑えることが考えられる。
【0131】
なお、運搬車30の収容状態検出装置55を、距離測定可能なセンシング装置(LiDARセンサ、カメラ等)のようなレーザを用いる光学センサとすることも考えられる。
【0132】
制御装置20及び/又は制御装置50は、以上の如き収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55にて検出(撮像)した収容状態に関する情報を取得し、当該情報をもとに、容器40内の穀粒の分布に偏りがあるか否かを判断する。
【0133】
この判断の基準としては、例えば、容器40内での穀粒(収穫物)の堆積が多いところでの堆積量(最大堆積量)と、穀粒(収穫物)の堆積が少ない(あるいは堆積が無い)ところでの堆積量(最小堆積量)との差について、閾値(図8のステップS9における閾値T1)を設定し、当該差が閾値T1以上であれば当該偏りがあると判断し、当該差が閾値T1未満であれば当該偏りがないと判断するものとしてもよい。この閾値T1を記憶装置21及び/又は記憶装置51にて記憶しておいてもよい。
【0134】
或いは、図5の撮像画像90でもわかる程度の、容器40内のどこかに穀粒(収穫物)の堆積が無いところがないか否かを判断するものであってもよい。
【0135】
なお、容器40内での穀粒(収穫物)の堆積量(堆積高)には上限値が設定されている。言い換えれば、穀粒(収穫物)排出口11より落下した穀粒(収穫物)が容器40の底面より堆積して形成される穀粒(収穫物)の山の頂端について上限位置H0(図7参照)が設定されている。
【0136】
さらに、穀粒(収穫物)の山の頂端が当該上限位置H0に到達する前に、容器40内の
穀粒(収穫物)の分布に偏りがあるか否かを見て、穀粒(収穫物)排出口11に対する容器40の相対位置を変更する必要があるか否かを判断するため、容器40において、上限位置H0より低い閾値位置H1が設定されている。
【0137】
上限位置H0及び閾値位置H1については、値として記憶装置21及び/又は記憶装置51に記憶しておいてもよく、或いは、図7にて例示したように、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55にて検出できるように、容器40の内壁に印されるものであってもよい。
【0138】
以上の如き構成の収穫物移送システム100は、収穫作業機1及び運搬車30が自動走行にて移動する場合のこれらの自動走行を制御するシステムとして適用可能なものであってもよい。
【0139】
収穫作業機1及び運搬車30が自動走行にて移動するものである場合、収穫作業機1及び運搬車30は、それぞれ、収穫物排出ポイントP1及び収穫物受取ポイントP2に到達するまで、以下のように自動走行することが考えられる。
【0140】
収穫作業機1において、制御装置20は、収量検出装置24にて検出される現収量が、記憶装置21に記憶された上限値に達した時点で、収穫作業(刈取部4等の駆動)を停止し、その地点から、運搬車30に穀粒を移送するのに適切な畦際の収穫物排出ポイントP1を算出し、収穫物排出ポイントP1へと収穫作業機1を移動する。
【0141】
一方、収穫物排出ポイントP1についての情報が収穫作業機1の通信装置22から運搬車30の通信装置52へと送信される(通信装置102を中継してもよい)。運搬車30の制御装置50は、収穫物排出ポイントP1に対応して、運搬車30が収穫作業機1の穀粒(収穫物)排出口11より排出される穀粒(収穫物)を受けるべき位置としての収穫物受取ポイントP2を算出し、運搬車30を、収穫物受取ポイントP2へと移動させる。
【0142】
こうして、圃場内の収穫物排出ポイントP1にて収穫作業機1が停止し、その近傍の畦道上等の収穫物受取ポイントP2にて運搬車30が停止する。この状態において、収穫作業機1の穀粒(収穫物)搬送体である揚穀オーガ9(揚穀筒9a内搬送スクリュー)及び穀粒排出オーガ10(穀粒排出筒10a内の搬送スクリュー)が駆動され、穀粒(収穫物)排出口11より穀粒(収穫物)が排出されて運搬車30の容器40内へと収容される。
【0143】
なお、収穫物受取ポイントP2は、収穫作業機1の制御装置20にて算出し、制御装置20の算出した収穫物受取ポイントP2を運搬車30の通信装置52へと送信するものとしてもよい。
【0144】
また、収穫作業機1の制御装置20は、機体位置検出装置23にて検出される自己(機体2)の位置、及び、収量検出装置24にて検出される現収量をもとに、穀粒(収穫物)タンク8が満杯になる(すなわち、穀粒(収穫物)が記憶装置21に記憶された収量の上限値に達する)時刻及び走行ルート上の位置を予測し、その予測値をもとに、適切な収穫物排出ポイントP1を算出するものとしてもよい。
【0145】
このように予め収穫物排出ポイントP1を設定することで、それに対応する収穫物受取ポイントP2も予め設定することができる。したがって、収穫作業機1の穀粒(収穫物)タンク8が満杯になって収穫物排出ポイントP1に到達するまでに、運搬車30を収穫物受取ポイントP2にて停止させ、収穫作業機1が収穫物排出ポイントP1に来るまで待機させることもできる。
【0146】
次に、収穫物排出ポイントP1にある収穫作業機1から収穫物受取ポイントP2にある運搬車30への穀粒(収穫物)の移送工程について、図8を参照して説明する。図8は均平工程を含む穀粒(収穫物)の移送工程を示すフローチャート図である。この移送工程は、収穫物(穀粒)移送システム100を用いて実行されるものである。
【0147】
収穫作業機1の制御装置20は、機体位置検出装置23からの検出信号にて、収穫作業機1(の機体2)が収穫物排出ポイントP1にあることを認識し(S1:YES)、且つ、通信装置22と通信装置52との通信を介して取得される車体位置検出装置53からの検出信号にて、運搬車30(の車体31)が収穫物受取ポイントP2にあることを認識する(S2:YES)と、穀粒排出駆動機構17に制御信号を出力し、穀粒排出駆動機構17のスイッチ(クラッチ)をONする等して、穀粒(収穫物)搬送体である揚穀オーガ9及び穀粒排出オーガ10を駆動する(S3)。
【0148】
これにより、穀粒タンク8内の穀粒(収穫物)が、揚穀筒9a及び穀粒排出筒10aを通過して穀粒排出口11より排出され、運搬車30の容器40内へと収容される。すなわち、穀粒排出口11から容器40へと穀粒(収穫物)が移送される(S4)。
【0149】
穀粒排出口11より容器40への穀粒(収穫物)の移送が行われている間、収穫作業機1は、設定された収穫物排出ポイントP1にて停止した状態で保持される(S5)。すなわち、走行装置3を非駆動状態に保持し、前進も後進もしないものとする。
【0150】
穀粒排出口11より容器40への穀粒の移送が行われている間、収穫作業機1の備える収容状態検出装置25及び/又は運搬車30の備える収容状態検出装置55は、容器40内に収容されている穀粒(収穫物)の状態(収容状態)を検知し、制御装置20及び/又は制御装置50は、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55より出力される検出信号、すなわち、収容状態に関する情報を取得する(S6)。
【0151】
なお、通信装置22と通信装置52との間での通信により、収穫作業機1の制御装置20は、運搬車30の収容状態検出装置55からの検出信号を取得可能であり、運搬車30の制御装置50は、収穫作業機1の収容状態検出装置25からの検出信号を取得可能である。
【0152】
制御装置20及び/又は制御装置50は、収容状態に関する情報の取得により、容器40内における穀粒排出口11の直下の位置にて最大の増加率にて穀粒(収穫物)が増加して堆積されることで形成される穀粒(収穫物)の山の頂端が、前述のように容器40について設定された穀粒(収穫物)の堆積についての上限位置H0へと接近するのを監視する。すなわち、前記の閾値位置H1に穀粒(収穫物)の山の頂端が到達したか否かを判断する(S7)。
【0153】
穀粒(収穫物)の山の頂端が閾値位置H1に到達するまでは(S7:NO)、車体31も容器40も動かさない(即ち、運搬車30(車体31)を停止し、容器40の車体31に対する位置も動かさない)(S8)。
【0154】
穀粒(収穫物)の山の頂端が閾値位置H1に到達すると(S7:YES)、制御装置20及び/又は制御装置50は、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55が検出した容器40内の穀粒(収穫物)の収容状態に関する情報を取得し、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあるか否かを判断する(S9)。
【0155】
例えば、前述のように容器40内における穀粒の最大堆積量と最小堆積量との差について閾値T1が設定されている場合に、当該差である堆積量差Dと閾値T1とが比較される
(S9)。
【0156】
制御装置20及び/又は制御装置50が、容器40内の穀粒の分布に偏りがある(堆積量差Dが閾値T1以上である)と判断した場合(S9:YES)、当該偏りを低減するために容器40を動かす(S10)。
【0157】
なお、「当該偏りを低減する」とは、容器40内にて堆積される穀粒(収穫物)を均平化する、すなわち、容器40内における穀粒(収穫物)の堆積量(高)を均一にすることを意味する。以下、制御装置20及び/又は制御装置50が実行する「当該偏りを低減するために容器40を動かす」工程を「均平工程」と称するものとする。
【0158】
一方、ステップS9において、容器40内の穀粒の分布に偏りがない(堆積量差Dが閾値T1未満である)と判断される状況(S9:NO)とは、容器40内の収容状態が、容器40内において、穀粒が満遍なく分布された状態で満杯に近づいている状態であることを意味している。
【0159】
したがって、制御装置20及び/又は制御装置50は、容器40内の穀粒の分布に偏りがない(堆積量差Dが閾値T1未満である)と判断した時点で、穀粒排出駆動機構17に制御信号を出力し、穀粒排出駆動機構17のスイッチ(クラッチ)をOFFする等して、穀粒(収穫物)搬送体である揚穀オーガ9及び穀粒排出オーガ10の駆動を停止する(S10)。これにより、穀粒排出口11からの穀粒(収穫物)の排出、すなわち、収穫作業機1から運搬車30の容器40への穀粒(収穫物)の移送を停止する(S11)。
【0160】
次に、前記の均平工程についてのいくつかの態様、及び均平工程を実行するための前記均平構造についてのいくつかの実施形態について説明する。
【0161】
均平工程とは前述の如く容器40を動かし容器40内の穀粒(収穫物)の分布における偏りを低減する工程であるが、当該偏りが低減する(すなわち穀粒(収穫物)の堆積が均平される)態様としては主に二つの態様がある。
【0162】
一つは、容器40の動きが容器40内にて堆積される穀粒(収穫物)に力として伝わることにより、穀粒(収穫物)の堆積にて形成されている穀粒(収穫物)の高い山が崩れて、当該山より崩れ落ちる穀粒(収穫物)が、容器40内における穀粒(収穫物)の堆積の少ない部分へと流れ、結果として容器40内の全体にわたって穀粒(収穫物)の堆積高が均一になるという態様である。
【0163】
この態様を第1均平態様と称するものとする。この第1均平態様を実現するには、容器40の動きを、穀粒の堆積の山を崩すような力となって容器40内の穀粒に伝わるものとしなければならない。
【0164】
この第1均平態様において、容器40を動かすのは、容器40内で穀粒(収穫物)が均平化するような動きを生じさせるためであって、容器40の穀粒排出口11に対する相対位置を変更するためではない。したがって穀粒排出口11の位置は重要ではない。
【0165】
もう一つは、容器40内において穀粒排出口11より排出される穀粒が高く積もって形成された穀粒の山を崩すためではなく、穀粒の堆積の少ない部分が穀粒排出口11の直下に配置されるように容器40を動かすことで、当該堆積の少なかった部分の堆積高が、高く堆積されていた部分の堆積高に近づくものであり、これを繰り返すことで、最終的に容器40内が満杯になるときに容器40内の全域で穀粒(収穫物)の堆積高が均一となる。
【0166】
この態様を第2均平態様と称するものとする。この第2均平態様では、容器40の動きは、容器40内で穀粒(収穫物)を動かすのが目的ではなく、穀粒排出口11に対する容器40の相対位置を変更するのが目的である。したがって、穀粒排出口11の位置は重要である。
【0167】
以上のように、均平工程の実行による容器40内の穀粒(収穫物)の均平化の態様としては第1均平態様と第2均平態様とが考えられるが、いずれの態様を生じさせるものであっても、それを実現するために容器40を動かす均平構造については共通させることができる。
【0168】
例えば、均平構造の一つとして、前述の如く容器40ごと運搬車30(車体31)を動かす車体移動型均平構造56があるが、この場合、車体31を動かすという共通の構造を用いて、その動きを、発進時の加速度や制動時の減速度を大きくすることで、第1均平態様を現出可能であり、これらの加速度や減速度を小さくすることで、第2均平態様を現出可能である。
【0169】
また、共通の均平構造を用いて、第1均平態様を現出するには、往復動を繰り返すような態様で容器40を動かす、すなわち、容器40を揺らすことで、容器40内の穀粒(収穫物)を揺らすことが考えられる。一方、第2均平態様を現出する場合は、容器40内の穀粒(収穫物)を揺らすように容器40を揺らす(往復動を繰り返す)という容器40の動きは考えられない。
【0170】
なお、第2均平態様を現出するには、穀粒排出口11に対する容器40の相対位置についての目標位置を設定した上で容器40を動かす必要があるが、第1均平態様を現出する際には特にこのような目標位置を設定する必要はない。
【0171】
また、第2均平態様を現出する場合の当該目標位置については、図8のフローチャートでは、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断した時に設定することが考えられる。
【0172】
容器40の目標位置としては、例えば、容器40の中で、穀粒の最小堆積量に該当する部分を、穀粒排出口11の直下位置(穀粒排出口11より排出される穀粒が落下する位置)に配置するような、穀粒排出口11に対する容器40の相対位置とすることが考えられる。
【0173】
以上のように、第1均平態様を現出する場合にも第2均平態様を現出する場合にも共通の均平構造が用いられることを前提として、以下、均平構造に関するいくつかの実施形態について説明する。
【0174】
前述のように、容器40内の穀粒(収穫物)の偏りを低減するために容器40を動かす均平構造としては、主に二つの構造が考えられる。一つは、容器40内の穀粒の分布の偏りがあると判断した場合に、収穫物(穀粒)移送システム100を用いて、自動で容器40ごと運搬車30(車体31)を移動させる車体移動型均平構造56、もう一つは、運搬車30(車体31)は停止したままで、容器40を車体31に対して移動させる容器移動型均平構造57である。
【0175】
車体移動型均平構造56は、容器40を載置した状態の車体31を動かすという運搬車30が本来有する構造を利用して制御装置50にて当該車体31の動きを制御するものであり、車体31や容器40に特別の加工を施す必要はなく、当該加工のためのコストを削減できる。また、運搬車30の走行可能な方向で車体31を動かすことが可能である。
【0176】
一方、容器移動型均平構造57は、運搬車30の車体31や容器40に、容器40を車体31に対し移動可能とするための特別な加工を施す必要があるが、車体移動型均平構造では容器40(車体31)を動かすことが難しい方向でも容器40を動かせる可能性がある。
【0177】
運搬車30は、以上のような車体移動型均平構造56及び容器移動型均平構造57それぞれの特徴を考慮して、これらのうち一方だけを備えるものでも、両方を併せ持つものでもよい。
【0178】
なお、運搬車30が上記構造の両方を併せ持つ場合には、容器移動型均平構造57を、容器40が車体31に対し運搬車30の左右方向に移動可能な構造とし、容器40を運搬車30の前後方向に動かしたいときに車体移動型均平構造56を用いて車体31(運搬車30)を前進又は後進させ、容器40を運搬車30の左右方向に動かしたいときに容器移動型均平構造57を用いて容器40を車体31に対し当該左右方向に動かすことが考えられる。
【0179】
このように、運搬車30の前後方向にも左右方向にも容器40を動かすことができるようにすることにより、容器40内の穀粒(収穫物)を効率よく均平する(分布の偏りを低減する)ことができる。
【0180】
図1図3図4を参照して、車体移動型均平構造56について説明する。なお、本実施形態では、運搬車30の制御装置50が、容器40内の穀粒の分布に偏りがあるか否かを判断し、偏りの低減のために運搬車30(車体31)を移動させる(すなわち、均平工程を実行する)ものとして説明するが、前述の如く、収穫作業機1の制御装置20が均平工程を実行して、運搬車30(車体31)を動かすものとしてもよい。
【0181】
図8のフローチャートにおけるステップS9にて、制御装置50は、収容状態検出装置25及び/又は収容状態検出装置55にて検出される収容状態を見て、容器40内の穀粒の分布の偏りがあると判断する(S9:YES)と、容器40ごと車体31(運搬車30)を動かすべく、停止中の原動機34を駆動し、伝動装置35を介して走行装置32に原動機34の動力を伝達し、これにより前輪33F及び/又は後輪33Rを前進方向又は後進方向に回転駆動し、また、制動装置32aを制御して回転駆動する前輪33F及び/又は後輪33Rを制動する。
【0182】
このように、車体31(運搬車30)を動かすことで容器40を動かす車体移動型均平構造56を用いて、第1均平態様を現出させる場合は、例えば制御装置50が、原動機34の回転数の操作部材であるアクセルを制御して、大きな加速度で車体31(運搬車30)を前進又は後進させ、また、制動装置32aを制御して、大きな減速度で車体31(運搬車30)を減速し停止するようにすることが考えられる。このような車体31(運搬車30)の動きにより、車体31と一体に動く容器40内の穀粒(収穫物)に当該加速度や減速度に対応する力が加わり、容器40内にて堆積された穀粒(収穫物)が、その分布の偏りを低減するように(均平されるように)動く。
【0183】
また、車体31(運搬車30)の往復動を繰り返すことで、すなわち、運搬車30の前進及び後進を交互に繰り返すことで、容器40を揺らすことも考えられる。このような容器40の揺らしにより、容器40内の穀粒(収穫物)には互いに逆方向となる二方向の力が交互に繰り返し付加され、より確実に、穀粒(収穫物)が堆積してできた穀粒(収穫物)の山を崩して、穀粒(収穫物)の分布の偏りを低減することができる。
【0184】
なお、上述のように容器40を揺らすように車体31を往復動させる方法としては、例えば、原動機34が逆転可能な電動モータである場合は、当該電動モータの回転方向の切換を繰り返すことが考えられる。
【0185】
また、原動機34が内燃機関(エンジン)である場合は、当該エンジンと走行装置32との間に介設される伝動(変速)装置35の有する前進/後進切換機構の前進設定と後進設定との切換を繰り返すことが考えられる。
【0186】
一方、車体移動型均平構造56を用いて、第2均平態様を現出させる場合は、まず、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断される(図8、ステップS9:YES)と、容器40内における穀粒(収穫物)の堆積高の低い箇所を穀粒排出口11の直下に配するように、穀粒排出口11に対する容器40の相対位置についての目標位置が決定され、当該容器40をこの目標位置に配するための車体31(運搬車30)の目標位置(すなわち、車体31(運搬車30)の現在の停止位置からの目標移動距離)が設定される。
【0187】
制御装置50は、例えばアクセル及び制動装置32aの制御で車体31(運搬車30)を当該目標位置まで移動させる。なお、目標位置が現在の車体31(運搬車30)より前方であれば車体31(運搬車30)を前進させ、目標位置が現在の車体31(運搬車30)より後方であれば車体31(運搬車30)を後進させる。この移動には、容器40内の穀粒(収穫物)に揺れを起こすような大きな加速度や減速度は要しない。
【0188】
車体31及び容器40が目標位置に達すると、あとは当該目標位置にて停止している運搬車30の車体31上の容器40に穀粒排出口11から排出される穀粒(収穫物)が収容され、堆積することで、当該偏りが低減されていく。
【0189】
次に、図9図14を参照して、容器移動型均平構造57に関するいくつかの実施形態について説明する。
【0190】
図9及び図10に示す容器移動型均平構造57の第1実施形態に係る容器移動型均平構造57Aについて説明する。図9は、容器移動型均平構造57Aを有する運搬車30の正面略図である。図10は、図9のX-X線矢視図である。
【0191】
容器移動型均平構造57Aにおいて、図9及び図10に示すように、車体31には左右方向に延伸する1つ以上のレール37が固設されている。レール37には、容器40に設けられたローラ43が転動可能に載置されている。
【0192】
また、容器40には、ローラ43を駆動するための正逆転可能なモータ41が設けられている。モータ41は電動モータや油圧モータ等であることが考えられるが、ローラ43を正逆いずれの方向にも回転駆動できるものであればどのようなモータでもよい。
【0193】
また、図9及び図10の第1実施形態では、容器40に、モータ41の動力をローラ43に伝達するための無端帯伝動機構42が設けられている。無端帯伝動機構42は、ベルト式でもチェーン式でもよく、或いは無端帯伝動機構に代えてギア式の伝動機構を容器40に設けてもよい。さらには、このような伝動機構を設けずに、モータ41の出力軸をそのままローラ43の回転中心軸としてもよい。
【0194】
図9及び図10の実施形態では、無端帯伝動機構42は、モータ41と同軸の駆動プーリ42a、ローラ43と同軸の従動プーリ42b、駆動プーリ42a及び従動プーリ42bに巻装されるベルト42cを含むベルト式電動機構となっている。
【0195】
モータ41の一方向の回転にてローラ43がこれに対応する方向に回転することにより容器40がレール37に沿って、車体31に対し左方(矢印Y3の指す向き)に移動する。モータ41の他方向の回転にてローラ43がこれに対応する方向に回転することにより容器40がレール37に沿って、車体31に対し右方(矢印Y4の指す向き)に移動する。
【0196】
図9及び図10に示す容器移動型均平構造57Aを有する運搬車30において、制御装置50は、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断すると、運搬車30(車体31)を停止したままで、モータ41の回転方向を選択した上で、モータ41を回転させ、ローラ43を回転させて、容器40をレール37に沿って左方又は右方に移動させる。
【0197】
なお、容器40には、容器40を車体31に係止する係止状態と、容器40の車体31への係止を解除する解除状態とに切換可能なストッパ44が設けられている。制御装置50は、容器40を車体31に対し移動させる際にはストッパ44を解除状態にし、それ以外の時にはストッパ44を係止状態にしておく。
【0198】
ストッパ44はどのような構造でもよく、例えば図9及び図10に手示すように、油圧シリンダ等で構成されるアウトリガをストッパ44とすることが考えられる。
【0199】
また、レール37には、容器40の左方移動制限位置を画する左端ストッパ38Lと、容器40の右方移動制限位置を画する右端ストッパ38Rとが設けられている。容器40の一部、或いはローラ43が、左端ストッパ38Lに当接することで、容器40の車体31に対してのそれ以上の左方移動が防止され、右端ストッパ38Rに当接することで、容器40の車体31に対してのそれ以上の右方移動が防止される。
【0200】
以上のような容器移動型均平構造57Aを用いて、第1均平態様を現出させる場合は、制御装置50が、モータ41の回転駆動を制御して、レール37に沿って大きな加速度で容器40を移動させ、また、移動させた容器40を左端ストッパ38L又は右端ストッパ38Rに当接させて急停止するようにすることが考えられる。このような容器40の動きにより、容器40内の穀粒(収穫物)に容器40の急加速や急停止で発生する力が加わり、容器40内にて堆積された穀粒(収穫物)が、その分布の偏りを低減するように(均平されるように)動く。
【0201】
また、モータ41の正逆回転方向の切換を繰り返すことで、容器40の往復動を繰り返す、すなわち、容器40を揺らすことも考えられる。このような容器40の揺らしにより、容器40内の穀粒(収穫物)には互いに逆方向となる二方向の力が交互に繰り返し付加され、より確実に、穀粒(収穫物)が堆積してできた穀粒(収穫物)の山を崩して、穀粒(収穫物)の分布の偏りを低減することができる。
【0202】
一方、容器移動型均平構造の第1実施形態を用いて、第2均平態様を現出させる場合は、まず、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断される(図8、ステップS9:YES)と、容器40の目標位置が設定される。制御装置50は、モータ41の駆動制御で容器40を当該目標位置まで移動させる。この移動には、容器40内の穀粒(収穫物)に揺れを起こすような急加速や急停止は要しない。
【0203】
容器40が目標位置に達すると、あとは当該目標位置に配置された容器40に穀粒排出口11から排出される穀粒(収穫物)が収容され、堆積することで、当該偏りが低減されていく。
【0204】
図11及び図12に示す容器移動型均平構造57の第2実施形態に係る容器移動型均平構造57Bについて説明する。図11は、容器移動型均平構造57Bを有する運搬車30の正面略図である。図12は、図11のXII-XII線矢視図である。
【0205】
容器移動型均平構造57Aと同様に、車体31には左右方向に延伸する1つ以上のレール37が固設されている。なお、各レール37には前述と同様の左端ストッパ38L及び右端ストッパ38Rが設けられている。レール37には、容器40に設けられたローラ43が嵌合している。なお、ローラ43のような回転部材ではなく、レール37上を摺動可能な摺動部材を容器40に取り付けて、レール37に接するものとしてもよい。
【0206】
容器40の前端部及び後端部にはそれぞれステー40aが形成され、各ステー40aに対応して、車体31の左端部又は右端部のいずれか一方にアクチュエータステー31a、他方にバネステー31bが設けられている。
【0207】
容器40の各ステー40aに、伸縮アクチュエータ45の一端が接続され、車体31の各アクチュエータステー31aに、伸縮アクチュエータ45の他端が接続されている。なお、伸縮アクチュエータ45は、油圧シリンダやエアシリンダ等であることが考えられるが、伸縮動するものであればどのような構造でもよい。
【0208】
伸縮アクチュエータ45が油圧シリンダである場合、運搬車30には当該油圧シリンダへの作動油給排用の油圧回路が構成されている。制御装置50は油圧回路に含まれる図略の制御弁を制御することで、伸縮アクチュエータ45の伸縮動を制御する。
【0209】
伸縮アクチュエータ45が伸長又は収縮することで、容器40がレール37に沿って、車体31に対し左方(矢印Y3の指す向き)又は右方(矢印Y4の指す向き)に移動する。
【0210】
また、容器40の各ステー40aに、各伸縮アクチュエータ45に対向するように、戻しバネ46の一端が接続され、車体31の各バネステー31bに、戻しバネ46の他端が接続されている。戻しバネ46は、伸縮アクチュエータ45の伸縮動に抗して容器40を初期位置に付勢する。
【0211】
容器移動型均平構造57Bを用いて、制御装置50は、前記制御弁の制御により、伸縮アクチュエータ45への作動油の供給流量及び供給方向を制御することによって、レール37に沿っての容器40の移動速度や加速度及び移動方向等を制御する。
【0212】
第1均平態様を現出させるときは、伸縮アクチュエータ45への作動油の供給量を急速に増加させて、容器40を急加速させ、また、移動させた容器40を左端ストッパ38L又は右端ストッパ38Rに当接させて急停止させることで、容器40内にて堆積された穀粒(収穫物)の分布の偏りを低減することが考えられる。
【0213】
また、伸縮アクチュエータ45の伸長と収縮を交互に繰り返すことで、容器40の往復動を繰り返す、すなわち、容器40を揺らすことも考えられる。
【0214】
一方、第2均平態様を現出させる場合は、制御装置50は、モータ41の駆動制御で容器40を、穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断したときに設定した目標位置まで移動させる。この移動には、容器40内の穀粒(収穫物)に揺れを起こすような急加速や急停止は要しない。
【0215】
その他、容器移動型均平構造57Aについて説明した構造が、適宜、容器移動型均平構
造57Bでも適用されているものとする。
【0216】
図13及び図14に示す容器移動型均平構造57の第3実施形態に係る容器移動型均平構造57Cについて説明する。図13は、容器移動型均平構造57Cを有する運搬車30の正面略図である。図14は、図13のXIV-XIV線矢視図である。
【0217】
容器40の前端部の直前方の位置、及び、容器40の後端部の直後方の位置において、車体31にステー31cが形成されている。容器40の前端部は、その直前方に配置されているステー31cに、前後方向軸心状の枢軸40bを介して枢支されている。容器40の後端部は、その直後方に配置されているステー31cに、前後方向軸心状の枢軸40bを介して枢支されている。容器40の前方の枢軸40bと容器40の後方の枢軸40bとは、互いに同一軸心上に配置されている。
【0218】
容器40は前後一対の枢軸40bの前後方向の軸心を中心に左右に(平面視で矢印Y3及びY4の向きに)揺動可能となっている。
【0219】
前方のステー31cにはモータ47が設けられている。なお、モータ47は前後いずれのステー31cに設けてもよいが、ここでは前方のステー31cにモータ47が設けられているものとして、以下説明する。
【0220】
当該ステー31cに沿って、モータ47から枢軸41bに回転力を伝動するための無端帯伝動機構48が設けられている。無端帯伝動機構48はベルト式でもチェーン式でもよく、また、ギア伝動機構に置き換えてもよい。
【0221】
図示の実施形態では、無端帯伝動機構48はベルト式伝動機構であり、モータ47の出力軸47aに固設された駆動プーリ48a、枢軸40bに固設された従動プーリ48b、駆動プーリ48a及び従動プーリ48bに巻装されたベルト48cを含む。
【0222】
このように、モータ47の回転を無端帯伝動機構48にて枢軸40bに伝えることにより枢軸40bをその中心軸回りに回動し、容器40が枢軸40bに連れて揺動する構造となっている。なお、モータ47と枢軸40bとの間にこのような伝動機構を介設せず、モータ47の出力軸に枢軸40bを直結してもよい。
【0223】
また、枢軸40bの中心軸回りに容器40を揺動させる装置としては、このようなモータ47に限られない。例えば、図11及び図12に示すような伸縮アクチュエータを容器40と車体31との間に介装し、伸縮アクチュエータの伸縮動で容器40を動かすことも考えられる。
【0224】
容器40の底部は、揺動時に車体31と干渉しないように、正面視で半円又は半楕円状に湾曲している。車体31には、容器40の底部と摺接するように曲線上のレール部材39が設けられ、容器40の揺動を案内するように構成されている。しかし、車体31及び容器40の形状についてはこれに限られず、車体31が、枢軸40bを中心としての容器40の揺動を許容するように、形成されていればよい。
【0225】
図9図12の容器移動型均平構造57A、57Bは、車体31に対し容器40を直線移動させる構造であるのに対し、図13及び図14の容器移動型均平構造57Cは、車体31に対し容器40を揺動(回動)させる構造である。この構造は、第2均平態様よりも第1均平態様を現出するのに適した構造となっている。
【0226】
この容器移動型均平構造57Cを用いて第1均平態様を現出する場合には、制御装置5
0は、モータ47を駆動して枢軸40bを回動し、容器40を揺動させる。本実施形態では、容器40を揺動させて傾けるので、容器40の移動につれ、容器40内の穀粒(収穫物)に重力モーメントがかかって穀粒(収穫物)が動くため、容器移動型均平構造57A、57Bのような直線移動に要求された大きな加速度や大きな減速度(急停止)等を必要としない。
【0227】
図9図14に示す容器移動型均平構造57では、運搬車30の左右方向(矢印Y3、Y4)に容器40を移動させる。一方、図1及び図3を参照して説明した車体移動型均平構造では、運搬車30の前後方向(矢印X3、X4)に車体31とともに容器40を移動させる。
【0228】
運搬車30は、容器40を前後方向(矢印X3、X4)に動かす構造として、車体移動型均平構造56を備え、且つ、容器40を左右方向(矢印Y3、Y4)に動かす構造として、図9図14に示す第1~第3実施形態のような容器移動型均平構造57を備えることにより、容器40を、運搬車30の前後方向にも左右方向にも動かすことができる。これにより、より確実に、容器40内の穀粒の分布における偏りを低減させることができる。
【0229】
なお、車体移動型均平構造56による前後方向(矢印X3、X4)の車体31(運搬車30)の動きと、容器移動型均平構造57による左右方向(矢印Y3、Y4)の車体31に対する容器40の動きとを、必ずしも交互に(一方の作動中は他方を停止する状態)実行する必要はなく、車体移動型均平構造56にて運搬車(車体31)を前方又は後方に移動している間に、容器移動型均平構造57にて車体31に対し容器40を左方又は右方に動かしてもよい。
【0230】
なお、容器移動型均平構造57を、容器40を車体31に対し運搬車30の前後方向にも移動できる構造にしてもよい。この場合、運搬車30(車体31)は停止したままで、容器40を車体31に対して前方又は後方に、或いは左方又は右方に移動させて、容器40内の穀粒の分布における偏りを低減できる。
【0231】
以上のように、収穫作業機1から運搬車30の容器40への穀粒(収穫物)の移送の際に、容器40内の穀粒の分布に偏りがある場合、運搬車30(車体31)を、容器40とともに動かすか、或いは運搬車(車体31)は停止したままで容器40を動かすことで、容器40内の穀粒(収穫物)の分布の偏りを低減する。
【0232】
さらに、運搬車30(車体31)の動きや運搬車30における容器40の動きに加えて、収穫作業機1において穀粒排出オーガ10を(揚穀オーガ9回りに)回動又は伸縮して穀粒排出口11を移動させて、容器40内の穀粒(収穫物)の均平化をアシストしてもよい。
【0233】
この場合、例えば、運搬車30は、車体31や容器40の加工を必要とする容器移動型均平構造57を備えずに、運搬車30を前後方向(矢印X3、X4)に動かす車体移動型均平構造56のみを備えるものとし、容器40内の穀粒(収穫物)の分布における偏りを低減するのに、運搬車30の左右方向(矢印Y3、Y4)での容器40と穀粒排出口11との相対位置を変更させたい場合には、収穫作業機1の穀粒排出オーガ10を回動又は伸縮させてもよい。
【0234】
すなわち、穀粒排出口11から容器40への穀粒(収穫物)の移送中に、容器40内の穀粒(収穫物)の分布に偏りがあると判断される(図8、ステップS9:YES)と、制御装置50及び/又は制御装置20は、当該偏りを低減するために、運搬車30の車体移
動型均平構造56を利用して容器40を動かすとともに、収穫作業機1における穀粒排出口移動機構18を制御して、穀粒排出オーガ10を回動又は伸縮し、穀粒排出口11を動かし、容器40内における穀粒排出口11から落下する穀粒(収穫物)を受ける位置を変更する。
【0235】
このように、運搬車30に、容器移動型均平構造57を設けるための車体31や容器40の加工をしなくても、運搬車30の有する車体移動型均平構造56の制御と、収穫作業機1の有する穀粒排出口移動機構18の制御とを併せることで、運搬車30の前後方向の動きと容器40に対する穀粒排出口11の左右方向の動きとで、効率よく容器40内の穀粒(収穫物)の分布における偏りを低減できる。
【0236】
以上のように、運搬車30は、車体31と、収穫物を収穫する収穫作業機1より排出される収穫物を収容する容器40と、容器40に収容されている収穫物の状態である収容状態を取得し、前記取得した収容状態に基づいて容器40内の収穫物の分布に偏りがあるか否かを判断し、収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、容器40を動かして当該偏りを低減する制御装置50とを備える。
【0237】
このような運搬車30を構成することにより、収穫作業機1から運搬車30の容器40への収穫物の移送中における容器40内の収穫物の均平(分布の偏りの低減)を、収穫作業機1における穀粒(収穫物)排出口11の移動制御に頼らず、運搬車30での容器40の制御で実行することができる。
【0238】
制御装置50は、容器40の動きが容器40内の収穫物に伝わることにより前記偏りが低減されるように容器40を動かしてもよい。
【0239】
これにより、容器40内にて堆積してできた収穫物の山に容器40の動きによる力が加わり、山が崩れて、堆積量の少ない箇所へと収穫物が流れ、効率よく容器40内の収穫物を均平する(分布の偏りを低減する)ことができる。
【0240】
制御装置50は、容器40とともに車体31を動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0241】
これにより、車体31や容器40に特別な加工を施すことなく、運搬車30が本来備える車体31を移動させる構造を用いて、経済的に容器40内の収穫物を均平する(分布の偏りを低減する)ことができる。
【0242】
制御装置50は、運搬車30の前進方向(X3)又は後進方向(X4)に車体31を動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0243】
これにより、車体31や容器40に特別な加工を施すことなく、運搬車30が本来備える車体31を前進方向及び後進方向に移動させる構造を用いて、経済的に容器40内の収穫物を均平する(分布の偏りを低減する)ことができる。
【0244】
制御装置50は、容器40を車体31に対して動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0245】
これにより、運搬車30が本来備える車体31を移動させる構造を用いるだけでは達成できなかった効率的な容器40内の収穫物の均平(分布の偏りの低減)を、車体31に対する容器40の動きによって、達成し得る。
【0246】
制御装置50は、運搬車30の左方(Y3)又は右方(Y4)に容器40を動かすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0247】
これにより、運搬車30が本来備える車体31を前進方向及び後進方向に移動させる構造を用いるだけではなし得なかった、運搬車30の左右方向での容器40の動きを起こすことができ、効率的に容器40内の収穫物を均平(分布の偏りを低減)できる。
【0248】
制御装置50は、容器40が往復動を繰り返すように容器40を揺らすことで、前記偏りを低減してもよい。
【0249】
このような容器40の揺らしにより、容器40内の収穫物には、互いに対向する方向の力が交互に繰り返しかかるので、より効率的に容器40内の収穫物を均平(分布の偏りを低減)できる。
【0250】
運搬車30は、前記偏りを低減するために容器40を動かす場合に、容器40を動かす旨の通知を、運搬車30の外部に配置される通知取得装置である管理装置101へと伝達する通信装置52を備えていてもよい。
【0251】
これにより、運搬車30の近くに立って収穫物の移送を見守っている作業者が、当該通知により容器40が動くことを予測し、容器40との接触等を回避する行動をとることができる。
【0252】
制御装置50は、収穫作業機1が停止しているときに、前記偏りを低減するために容器40を動かしてもよい。
【0253】
これにより、収穫物の移送中に、収穫作業機1の走行状態を監視する必要がなく、作業車の監視負担を軽減する。
【0254】
制御装置50は、前記偏りを認識しない間は、容器40とともに車体31が停止した状態を保持してもよい。
【0255】
これにより、収穫物の移送中に、容器40内の収穫物を均平する(分布の偏りを低減する)時だけ運搬車30及び容器40の動きを監視していればよく、作業車の監視負担を軽減する。
【0256】
収穫物移送システム100は、前記の収穫作業機1及び運搬車30を備えている。収穫作業機1は、機体2と、機体2に支持され、収穫作業機1にて収穫した収穫物を搬送する搬送体である穀粒排出オーガ10とを備えてもよい。穀粒排出オーガ10は、収穫物を排出するための排出口である穀粒排出口11を有するとともに、機体2に対する穀粒排出口11の位置を変更可能であってもよい。収穫物が穀粒排出口11より排出されて運搬車30の備える容器40へと収容されている間に、制御装置50は、容器40において収穫物の分布に偏りがあることを認識すると、容器40を動かすことに加えて、前記偏りを低減するように機体2に対する穀粒排出口11の位置を変更するよう収穫物搬送体である穀粒排出オーガ10を制御してもよい。
【0257】
このように、運搬車30による容器40の動きに加えて、収穫作業機1においても、収穫物搬送体である穀粒排出オーガ10を制御して穀粒排出口11を移動させることで、より効率的に、容器40内の収穫物を均平する(分布を低減する)ことができる。
【0258】
制御装置50は、容器40の一方向である第1方向(前後方向)において収穫物の分布
に偏りがあるときは、容器40を前記第1方向に移動させることにより当該偏りを低減してもよい。容器40の他方向である第2方向(左右方向)において収穫物の分布に偏りがあるときは、穀粒排出オーガ10を制御して穀粒排出口11を前記第2方向に移動させることにより当該偏りを低減してもよい。
【0259】
このように、第1方向(前後方向)での収穫物の分布の偏りの低減を運搬車30の容器40の動きによるものとし、さらには、これを、車体31や容器40に特別な加工を施す必要のない、運搬車30が本来備える車体31を移動させる構造にて実行することができる一方、この構造ではうまく対応できない第2方向での偏りの低減を、収穫作業機1における収穫物搬送体である穀粒排出オーガ10の制御によるものとすることで、経済的でかつ効率のよい容器40内の収穫物の均平を達成できる。
【0260】
穀粒排出オーガ10は、収穫作業機1の機体2に対して回動可能であってもよい。制御装置50は、容器40の前記第2方向において収穫物の分布に偏りがあるときは、穀粒排出オーガ10を機体2に対し回動して穀粒排出口11を前記第2方向に移動させることにより当該偏りを低減してもよい。
【0261】
これにより、穀粒排出口11の移動手段として、収穫作業機1としてのコンバインに本来備わっている穀粒排出オーガ10の機体2(揚穀オーガ9)に対する回動構造を用いて、経済的に容器40内の収穫物を均平(分布の偏りを低減)できる。
【0262】
容器40は、その上下方向において、収穫物の堆積高の上限位置H0を有していてもよい。穀粒排出口11から容器40への収穫物の収容中に、容器40の第1位置において最大の増加率で収穫物の堆積高が増加している場合、制御装置50は、第1位置での収穫物の堆積高が上限位置H0付近の閾値位置H1に達したことを知らせる情報を取得すると、最大の増加率で穀粒の堆積高を増加する位置を、第1位置から、第1位置とは異なる容器40の第2位置へと切り換えるよう、容器40を穀粒排出口11に対し移動させてもよい。
【0263】
これにより、収穫物の堆積による一つの収穫物の山の頂端が上限位置H0付近の閾値位置H1に達した時点で、堆積の少ない箇所に対し集中的に収穫物を堆積させるように穀粒排出口11に対する容器40の位置を切り換えることができ、容器40が満杯になる時点で確実に収穫物が均平された(偏りなく分布された)状態にすることができる。
【0264】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0265】
1 収穫作業機(コンバイン)
10 穀粒排出オーガ(搬送体)
11 穀粒排出口(排出口)
30 運搬車
31 車体
40 容器
100 収穫物移送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14