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特開2024-94640電動作業機、及び電動作業機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094640
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電動作業機、及び電動作業機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240703BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240703BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240703BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240703BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240703BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240703BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240703BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240703BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240703BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240703BHJP
【FI】
H02J7/02 J
E02F9/00 C
H02J7/00 X
H02J7/00 B
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/18
B60L15/20 J
B60L53/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211311
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丹波 大樹
(72)【発明者】
【氏名】下池 裕樹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB06
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA12
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BC06
5H125BC11
5H125BC15
5H125BC30
5H125DD02
5H125EE08
5H125EE25
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】充電時間が十分に確保できない場合であっても、効率よく充電を行う。
【解決手段】電動作業機は、複数のバッテリパックと、バッテリパックから供給される電力によって作動する作動機器と、各バッテリパックの残容量を検出するバッテリ監視装置と、各バッテリパックの残容量に基づいて複数のバッテリパックの充電及び放電を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、作動機器に電力を供給する放電モードでは、複数のバッテリパックのうち、いずれか1つを作動機器に電力を供給する放電用バッテリパックとして決定し、放電用バッテリパックから作動機器に電力を供給させ、バッテリパックの充電を行う充電モードでは、複数のバッテリパックのうち、残容量が多いバッテリパックを優先して充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの充電を行わせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリパックと、
前記バッテリパックから供給される電力によって作動する作動機器と、
前記各バッテリパックの残容量を検出するバッテリ監視装置と、
前記各バッテリパックの残容量に基づいて複数の前記バッテリパックの充電及び放電を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記作動機器に電力を供給する放電モードでは、複数の前記バッテリパックのうち、いずれか1つを前記作動機器に電力を供給する放電用バッテリパックとして決定し、前記放電用バッテリパックから前記作動機器に電力を供給させ、
前記バッテリパックの充電を行う充電モードでは、複数の前記バッテリパックのうち、残容量が多いバッテリパックを優先して前記充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの充電を行わせる電動作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記放電モードにおいて前記放電用バッテリパックの残容量が所定の第1閾値未満である場合には、前記放電用バッテリパックから前記作動機器に供給する電力を制限する制限処理を行う請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記充電モードでは、残容量が前記第1閾値よりも多い値に設定される第2閾値未満である前記バッテリパックのうち、残容量が多いバッテリパックを優先して前記充電用バッテリパックとして決定する請求項2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記充電モードにおいて、残容量が前記第2閾値未満である前記バッテリパックのうち、残容量が最も多い前記バッテリパックを優先して前記充電用バッテリパックとして決定する請求項3に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記バッテリ監視装置は、前記各バッテリパックの残容量に加えて、前記各バッテリパックの温度を検出し、
前記制御装置は、前記充電モードにおいて、残容量が前記第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満である前記バッテリパックのうち、残容量が最も多い前記バッテリパックを前記充電用バッテリパックとして決定する請求項3に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記充電モードにおいて、前記充電用バッテリパックの温度が前記第3閾値以上になった場合に、前記充電用バッテリパックを、残容量が前記第2閾値未満且つ温度が前記第3閾値未満である他の前記バッテリパックのうち、残容量が最も多い前記バッテリパックに切り替える請求項5に記載の電動作業機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記充電モードにおいて、前記充電用バッテリパックの温度が前記第3閾値未満であり、且つ当該充電用バッテリパックの残容量が前記第2閾値に達した場合、前記充電用バッテリパックを、残容量が前記第2閾値未満且つ温度が前記第3閾値未満である他の前記バッテリパックのうち残容量が最も多い前記バッテリパックに切り替える請求項6に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記充電モードにおいて、残容量が前記第2閾値未満且つ温度が前記第3閾値未満であり、且つ残容量が前記充電用バッテリパックの残容量よりも多いバッテリパックを検出した場合に、前記充電用バッテリパックを、当該バッテリパックに切り替える請求項6に記載の電動作業機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記充電モードにおいて、残容量が前記第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満である前記バッテリパックに対して所定時間充電を行った場合の当該バッテリパックの予想温度を算出し、前記予想温度が前記第3閾値未満である前記バッテリパックのうち、残容量が最も多いバッテリパックを前記充電用バッテリパックとして決定する請求項5に記載の電動作業機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記放電モードにおいて、前記放電用バッテリパックの温度が前記第3閾値以上である場合には前記放電用バッテリパックから前記作動機器に供給する電力を制限する制限処理を行う請求項5~9のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項11】
前記作動機器は、電動モータを含み、
前記制御装置は、前記放電モードでは、前記放電用バッテリパックの残容量が前記第1閾値未満である場合に、前記制限処理として、前記電動モータの回転数の上限値を制限する請求項2に記載の電動作業機。
【請求項12】
複数のバッテリパックと、前記バッテリパックから供給される電力によって作動する作動機器とを備えた電動作業機の制御方法であって、
前記作動機器に電力を供給する放電モードでは、複数の前記バッテリパックのうち、いずれか1つを前記作動機器に電力を供給する放電用バッテリパックとして決定し、前記放電用バッテリパックから前記作動機器に電力を供給させ、
前記バッテリパックの充電を行う充電モードでは、複数の前記バッテリパックのうち、残容量が多いバッテリパックを優先して充電用バッテリパックとして決定し、決定した前記充電用バッテリパックの充電を行う電動作業機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力で動作する電動作業機、及び電動作業機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリパック(バッテリ系統)を複数搭載し、いずれか1つのバッテリパックを選択して放電又は充電する電動式建設機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/130936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、複数のバッテリパックのうち残容量が最も少ないバッテリパックを充電用バッテリパックとして決定して充電を行うので、電動作業機の利用状況によっては最適な充電が行われない場合がある。
【0005】
例えば、放電用バッテリパックの残容量が閾値以下に低下すると出力制限が行われる電動作業機において、充電時間が十分に確保できない場合、残容量が最も少ないバッテリパックを充電用バッテリパックとして充電を行うと、閾値付近の残容量までしか充電ができず、充電直後に出力制限が行われて、充電時間で充電した電力を効率的に利用できない場合がある。より具体的には、例えば、バッテリの残容量が20%未満になると出力制限がかかる電動作業機において、バッテリの残容量が10%の時点から30%まで充電した場合、充電後に10%分を稼働させるだけで出力制限がかかる。この場合、20%分充電したにもかかわらず、充電後に出力制限がかからない状態での作業が10%分しかできない。
【0006】
また、残容量に応じた出力制限が行われない場合であっても、残容量が少ないバッテリパックを充電用バッテリパックとして充電した後に当該バッテリパックを放電用バッテリパックとして用いると、充電時間を十分に確保できていない場合には当該バッテリパックの残容量が早期に枯渇し、バッテリパックの切換作業が発生するなどして作業効率が低下する場合がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、充電時間が十分に確保できない場合であっても、効率よく充電を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る電動作業機は、複数のバッテリパックと、前記バッテリパックから供給される電力によって作動する作動機器と、前記各バッテリパックの残容量を検出するバッテリ監視装置と、前記各バッテリパックの残容量に基づいて複数の前記バッテリパックの充電及び放電を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記作動機器に電力を供給する放電モードでは、複数の前記バッテリパックのうち、いずれか1つを前記作動機器に電力を供給する放電用バッテリパックとして決定し、前記放電用バッテリパックから前記作動機器に電力を供給させ、前記バッテリパックの充電を行う充電モードでは、複数の前記バッテリパックのうち、残容量が多いバッテリパックを優先して前記充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの充電を行わせる。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、充電時間が十分に確保できない場合であっても、効率よく充電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における電動作業機の電気ブロック図である。
図2】第1実施形態における電動作業機の油圧回路図である。
図3】第1実施形態の変形例における電動作業機の油圧回路図である。
図4】第1実施形態の制御装置の放電制御の一連の流れを説明する図である。
図5】第1実施形態の制御装置の充電制御の一連の流れを説明する図である。
図6】第1実施形態の変形例における制御装置の充電制御の一連の流れを説明する図である。
図7】第2実施形態における電動作業機の電気ブロック図である。
図8】定電流充電を行った場合の経過時間、充電用バッテリパックの残容量、及び充電用バッテリパックに出力する直流電力の大きさ(充電電流値)の関係を示す例である。
図9】第2実施形態の制御装置の充電制御の一連の流れを説明する第1図である。
図10】第2実施形態の制御装置の充電制御の一連の流れを説明する第2図である。
図11】第2実施形態の制御装置の充電制御の一連の流れを説明する第3図である。
図12】電動作業機の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
先ず、電動作業機1の全体構成について説明する。
【0012】
図12は、電動作業機1の全体側面図である。電動作業機1は、バックホーであり、機体(旋回台)2と走行装置10と作業装置20等を備えている。機体2の上には、作業者が着座する運転席4と、運転席4を前後、左右、及び上方から保護する保護機構6が設けられている。
【0013】
以下の説明において、運転席4に着座した作業者が向く方向(図12の矢印A1方向)を前方、その反対方向(図12の矢印A2方向)を後方という。また、作業者の左側(図12の手前側)を左方、作業者の右側(図12の奥側)を右方という。また、前後方向(機体前後方向)に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。
【0014】
図12に示す保護機構6は、運転席4が保護機構6内に配置されている構成(キャビン仕様)である。なお、保護機構6は、キャビン仕様に限定されず、運転席4の上方が屋根(キャノピ)で覆われた構成(キャノピ仕様)であってもよく、運転席4の前後方向、機体幅方向、及び上方が外部に開放された構成であってもよい。キャビン仕様の保護機構6は、運転席4の周囲の空間と外部とを仕切っている。即ち、保護機構6により、運転席4を有する運転室4Rが形成されている。
【0015】
保護機構6の内部(運転室4R)における運転席4の周囲には、電動作業機1を操作するための操作装置5が設けられている。
【0016】
走行装置10は、機体2を走行させる装置であって、走行フレーム(トラックフレーム)11と、走行機構12と、を有している。走行フレーム11は、周囲に走行機構12を取り付け、且つ上部に機体2を支持する構造体である。
【0017】
走行機構12は、例えばクローラ式の走行機構である。走行機構12は、走行フレーム11の左側と右側にそれぞれ設けられている。走行機構12は、アイドラ13と、駆動輪14と、複数の転輪15と、無端状のクローラベルト16と、走行モータML,MRと、を有している。
【0018】
アイドラ13は、走行フレーム11の前部に配置されている。駆動輪14は、走行フレーム11の後部に配置されている。複数の転輪15は、アイドラ13と駆動輪14との間に設けられている。クローラベルト16は、アイドラ13、駆動輪14、及び転輪15に亘って巻掛けられている。
【0019】
左用走行モータMLは、走行フレーム11の左側にある走行機構12に含まれている。右用走行モータMRは、走行フレーム11の右側にある走行機構12に含まれている。これら走行モータML,MRは、油圧モータから構成されている。各走行機構12では、走行モータML,MRの動力により、駆動輪14が回転駆動して、クローラベルト16を周方向に循環回走させる。
【0020】
機体2は、走行フレーム11上に旋回ベアリング3を介して、旋回軸心X回りに回転可
能に支持されている。機体2の内部には、旋回モータMTが設けられている。旋回モータMTは、油圧モータ(油圧アクチュエータ)から構成されている。機体2は、旋回モータMTの動力により旋回軸心X回りに旋回する。
【0021】
作業装置20は、機体2の前部に支持されている。作業装置20は、ブーム21と、アーム22と、バケット(作業具)23と、ドーザ装置25と、油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)C1~C5と、を有している。ブーム21の基端側は、スイングブラケット24に横軸(機体2の幅方向に延伸する軸心)廻りに回動可能に枢着されている。このため、ブーム21は上下方向(鉛直方向)に揺動可能になっている。アーム22は、ブーム21の先端側に横軸廻りに回動可能に枢着されている。このため、アーム22は、前後方向或いは上下方向に揺動可能になっている。バケット23は、アーム22の先端側にスクイ動作及びダンプ動作が可能に設けられている。
【0022】
電動作業機1は、バケット23に代えて、或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)を装着することが可能である。この他の作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、及びスノーブロア等が例示できる。
【0023】
スイングブラケット24は、機体2内に備えられたスイングシリンダC1の伸縮によって左右に揺動する。ブーム21は、ブームシリンダC2の伸縮によって上下(前後)に揺動する。アーム22は、アームシリンダC3の伸縮によって上下(前後)に揺動する。バケット23は、バケットシリンダ(作業具シリンダ)C4の伸縮によってスクイ動作及びダンプ動作を行う。スイングシリンダC1、ブームシリンダC2、アームシリンダC3、及びバケットシリンダC4は、油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)から構成されている。
【0024】
ドーザ装置25は、走行装置10の前部に装着されている。ドーザ装置25は、ドーザシリンダC5の伸縮によって上下に揺動する。ドーザシリンダC5は、走行フレーム11に取り付けられている。ドーザシリンダC5は、油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)から構成されている。
【0025】
電動作業機1は、上述した走行モータML,MRを有する走行装置10によって走行を行い、油圧シリンダC1~C5を有する作業装置20や旋回モータMTにより作業を行う。つまり、旋回モータMTは、電動作業機1が作業を行うための作業装置20といえる。また、以下の説明において、走行モータML,MRのことを走行系の油圧アクチュエータということがあり、油圧シリンダC1~C5、及び旋回モータMTのことを作業系の油圧アクチュエータということがある。
【0026】
次に、電動作業機1の電気的構成について説明する。図1は、第1実施形態における電動作業機1の電気ブロック図である。図1に示すように、電動作業機1は、制御装置30と、記憶装置31と、バッテリユニット40と、充電口42と、充電器43と、ジャンクションボックス44と、インバータ45と、電動モータ46と、DC/DCコンバータ47と、低圧バッテリ48と、を備えている。
【0027】
制御装置30は、機体2又は保護機構6の内部に設けられていて、電気・電子回路、CPU、メモリ等に格納されたプログラム等から構成された装置である。制御装置30は、電動作業機1が有する車載ネットワークNに接続された様々な機器を制御する。制御装置30は、図1に示すような、電動作業機1に備わる各部の動作を制御する。
【0028】
例えば、制御装置30は、バッテリユニット40が電動作業機1に備わる各部に電力を供給(放電)させる放電の制御(放電制御)と、バッテリユニット40の充電の制御(充電制御)と、を行うことができる。制御装置30は、電力によって作動する作動機器E(例えば後述の電動モータ46等)に電力を供給する放電モードと、バッテリユニット40の充電を行う充電モードと、に切り替えることができ、放電モードにおいて放電制御を行い、充電モードにおいて充電制御を行う。
【0029】
電動作業機1の操作装置5のうち、少なくとも一部の操作部材は、制御装置30と通信可能に接続されている。制御装置30は、操作装置5から出力された操作信号に基づいて、電動作業機1に備わる各部の動作を制御する。図1に示すように、操作装置5は、制御
装置30と接続された操作部材として、操作レバー5aと操作スイッチ5bとを有している。操作レバー5aと操作スイッチ5bは、運転席4に着座した作業者が操作可能になっている。図1では、便宜上、操作レバー5aと操作スイッチ5bをそれぞれ1つのブロックで示しているが、実際には、操作レバー5aと操作スイッチ5bはそれぞれ複数設けられている。
【0030】
図1に示すように、操作スイッチ5bは、モード切替スイッチ5b1を含んでいる。モード切替スイッチ5b1は、制御装置30の放電モードと充電モードとの切り替え指示を入力するためのスイッチである。
【0031】
制御装置30には、スタータスイッチ32が接続されている。スタータスイッチ32は、保護機構6の内部に設けられ、運転席4に着座した作業者が操作可能になっている。スタータスイッチ32は、電動作業機1を始動させたり停止させたりするために操作される。制御装置30は、スタータスイッチ32のオン操作に応じて電動作業機1に備わる各部を始動させ、スタータスイッチ32のオフ操作に応じて電動作業機1に備わる各部を停止させる。
【0032】
また、図1に示すように、制御装置30には、電動作業機1の状態を検出する状態検出装置35が接続されている。状態検出装置35は、検出した電動作業機1の状態を検出信号として制御装置30に出力する。状態検出装置35は、例えば、回転センサ35aを含んでいる。回転センサ35aは、電動モータ46の回転数を検出するセンサであり、制御装置30は、回転センサ35aから入力された検出信号に基づいて、電動モータ46の回転数を演算する。
【0033】
記憶装置31は、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶媒体であり、電動作業機1に関する様々な情報を記憶している。
【0034】
バッテリユニット40は、蓄電可能であり、蓄電した電力を放電(出力)する構造体である。バッテリユニット40は、複数のバッテリパック41を有している。当該バッテリパック41はいずれも同じ仕様(放電容量等が同一)である。図1に示す例においては、バッテリユニット40には、例えば2つのバッテリパック41が設けられている。なお、バッテリユニット40が有するバッテリパック41の数は2つに限定されず、3つ以上でもよい。また、複数のバッテリパック41の放電容量は同一でなくてもよい。
【0035】
複数のバッテリパック41は、作動機器Eに電力を供給する。各バッテリパック41は、少なくとも1つのバッテリから構成されたリチウムイオン電池等の二次電池(蓄電池)である。各バッテリパック41を複数のバッテリから構成した場合、当該複数のバッテリは電気的に直列及び/又は並列(直列及び並列の少なくとも一方)に接続される。また、各バッテリパック41を構成するバッテリは、内部に複数のセルを有しており、当該複数のセルが電気的に直列及び/又は並列に接続されて構成されている。複数のバッテリパック41は、電動作業機1の各部を所定時間稼働可能な放電容量を有している。複数のバッテリパック41同士は、並列に接続されている。
【0036】
また、複数のバッテリパック41には、それぞれBMU(battery management unit;バッテリ監視装置)41aが設けられている。BMU41aは、それぞれ対応するバッテリパック41内に設けられている。なお、BMU41aは、それぞれ対応するバッテリパック41に内蔵されていてもよいし、又はバッテリパック41の外側に設置されていてもよい。
【0037】
BMU41aは、対応するバッテリパック41を制御する。BMU41aは、バッテリパック41の内部に備わるリレーの開閉を制御して、バッテリパック41からの電力供給の開始及び停止を制御する。また、BMU41aは、それぞれ対応する各バッテリパック41の状態を検出(監視)する。BMU41aは、バッテリパック41の温度(実測の温度、実温度)、電圧、電流、又は内部のセルの端子電圧等を検出する。
【0038】
さらに、BMU41aは、例えばバッテリパック41の内部のセルの端子電圧に基づいて、電圧測定方式により各バッテリパック41の残容量(充電率)を検出する。本実施形態において、BMU41aは、バッテリパック41の残容量を百分率で検出する。
【0039】
なお、バッテリパック41の残容量の検出方法は、電圧測定方式に限定されず、クーロ
ン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式、インピーダンス・トラック方式などのような他の方式であってもよい。また、バッテリパック41の残容量を検出する容量検出部を、BMU41aとは別に設けてもよい。
【0040】
充電口42は、充電ケーブル(図示略)が嵌合されるコネクタ(図示略)と、接続検出装置(接続検出センサ)42aと、を有している。充電口42には、充電ケーブルを経由して外部電源(商用電源等)が接続される。
【0041】
なお、操作装置5が有するモード切替スイッチ5b1に代えて、或いは加えて充電口42には、外部電源が接続されているか否かを検出する接続検出装置42aが設けられていてもよい。接続検出装置42aは、充電口42に充電ケーブルが嵌合されて、外部電源が接続されたことを検出するセンサ等を有している。このため、制御装置30は、接続検出装置42aが充電口42に充電ケーブルが接続されていると検出した場合に、充電モードへ切り替え、接続検出装置42aが充電口42に充電ケーブルが接続されていないと検出した場合に、放電モードへ切り替える。
【0042】
また、制御装置30の放電モード及び充電モードの切り替えは、モード切替スイッチ5b1及び接続検出装置42aによらず、他の例として、例えば制御装置30は、スタータスイッチ32でオン操作(電動作業機1の始動操作)が行われた場合に、放電モードに切り替えたり、オン操作が行われていない場合に、充電モードに切り替えたりしてもよいし、走行装置10や作業装置20を操作する操作レバー5aや操作スイッチ5bに対する操作状態に基づいて、放電モード又は充電モードに切り替えてもよい。
【0043】
充電器43は、充電口42及びジャンクションボックス44と電気的に接続されており、外部電源から充電ケーブル及び充電口42を経由して入力された三相交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力をジャンクションボックス44に供給する。充電器43は、三相交流電力を直流電力に変換する整流器(図示略)と、ジャンクションボックス44に供給する直流電力の電流及び電圧を調整する電子回路(図示略)と、を有している。
【0044】
電子回路は、例えばスイッチング素子、ダイオード、抵抗器、及び電解コンデンサ等から構成される。本実施形態においては、充電器43は、電子回路によって、ジャンクションボックス44に供給する直流電力の電流及び電圧を調整して、定電流充電及び定電圧充電でバッテリパック41の充電を行う。制御装置30は、バッテリパック41の残容量に応じて、定電流充電及び定電圧充電を切り替える。また、定電流充電及び定電圧充電を行う際の直流電力の電流及び電圧は、記憶装置31に記憶された所定のテーブルによって定義されている。なお、充電器43は、定電流充電のみでバッテリパック41の充電を行ってもよい。
【0045】
ジャンクションボックス44は、バッテリユニット40と、充電器43と、インバータ45と、DC/DCコンバータ47と、に電気的に接続されている。ジャンクションボックス44は、充電器43から入力された電力をバッテリユニット40に出力する。また、ジャンクションボックス44は、バッテリユニット40から出力された電力をインバータ45やDC/DCコンバータ47に出力する。
【0046】
インバータ45は、電動モータ46及びジャンクションボックス44と電気的に接続されており、バッテリユニット40からジャンクションボックス44を経由して入力された直流電力を三相交流電力に変換し、当該三相交流電力を電動モータ46に供給する。また、インバータ45は、電動モータ46に供給する電力の周波数や電圧を任意に調整可能である。
【0047】
電動モータ46は、バッテリパック41から電力を供給され、供給された電力によって駆動し、動力を発生させる。電動モータ46は、インバータ45と電気的に接続されており、当該インバータ45を介してバッテリユニット40(バッテリパック41)から供給された電力によって駆動する。電動モータ46は、電動作業機1の駆動源であって、例えば永久磁石埋込式の三相交流同期モータから構成されている。電動モータ46は、回転可能なロータ(回転子)と、ロータを回転させるための力を発生させるステータ(固定子)とを有する。
【0048】
電動モータ46の回転数は、操作装置5である回転数操作具5cによって操作される。
図1に示すように、回転数操作具5cは、制御装置30に接続されており、制御装置30に操作信号を出力する。回転数操作具5cは、例えば、複数の切換位置を有したセレクタスイッチ等のダイヤル状のスイッチであり、複数の切換位置には、電動モータ46の回転数の目標値が割り当てられている。回転数操作具5cは、電動モータ46の回転数の目標値の範囲を1500~2600rpm/minの範囲で設定操作可能である。
【0049】
制御装置30は、回転数操作具5cから出力された操作信号に応じて、インバータ45に指示信号を送信する。インバータ45は、制御装置30から出力された指示信号に応じて、電動モータ46に供給する電力の周波数や電圧を調整し、電動モータ46のモータ回転数を変更する。
【0050】
なお、電動モータ46は、他の種類の同期モータであっても、交流モータでも直流モータでもよい。また、電動モータ46の回転数の操作は、回転数操作具5cに限定されず、操作装置5が有する他の部材であってもよい。例えば、電動モータ46の回転数は、操作装置5の操作量に応じて、予め設定されたテーブルに基づいて操作されるようなものであってもよい。
【0051】
DC/DCコンバータ47は、バッテリユニット40からジャンクションボックス44を経由して入力された直流電力の電圧を、異なる電圧に変換する電圧変換装置である。本実施形態では、DC/DCコンバータ47は、バッテリユニット40の高電圧を、電動作業機1に備わる電装品に応じた所定の低電圧に変換する降圧コンバータである。DC/DCコンバータ47は、電圧変換後に低圧バッテリ48へ電力を供給する。上記電装品は、DC/DCコンバータ47及び低圧バッテリ48を介して、バッテリユニット40から供給された電力によって作動する作動機器Eである。電装品は、例えば制御装置30、ラジエータ50のファンモータ50a、オイルクーラ52のファンモータ52a、空調装置55、及び各種ランプ(室内灯、作業灯、前照灯、信号ライト、操作部材のライト等)58が含まれている。
【0052】
低圧バッテリ48は、バッテリユニット40より低電圧の蓄電池である。低圧バッテリ48は、DC/DCコンバータ47から供給される電力により充電される。低圧バッテリ48は、電動作業機1に備わる電装品に電力を供給する。
【0053】
制御装置30は、各バッテリパック41の残容量に基づいて、複数のバッテリパック41の充電及び放電を制御する。制御装置30は、放電モードにおいて作動機器Eに電力を供給する放電用バッテリパックや、充電モードにおいて充電する充電用バッテリパックを決定したり、切り替えたりする。これにより、制御装置30は、放電用バッテリパックから作動機器Eに電力を供給させたり、充電用バッテリパックの充電を行わせたりする。図1に示すように、制御装置30は、放電制御や充電制御を行う制御部30aを有している。制御部30aは、CPUやメモリ等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0054】
制御部30aは、電動作業機1が備える接続切替装置の接続状態と遮断状態とに切り替えて、放電モードにおける放電用バッテリパックや充電モードにおける充電用バッテリパックを決定したり、切り替えたりする。接続切替装置は、バッテリパック41が有する接続切替部41bと、ジャンクションボックス44と、を含んでいる。接続切替部41bは、例えばリレー又はスイッチ等から構成されていて、接続状態と遮断状態とに切り替わり可能である。
【0055】
制御部30aは、放電モードでは、複数のバッテリパック41のうち、いずれか1つを放電用バッテリパックとして決定したり、放電用バッテリパックを他のバッテリパックに切り替えたりする。制御部30aは、放電モードにおいて、接続切替部41bのうち、一方の接続切替部41bを接続状態に切り替えて、他方の接続切替部41bを遮断状態に切り替える。これにより、制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、一方のバッテリパック41からジャンクションボックス44に電力を出力させ、他方のバッテリパック41からの電力の出力を停止させる。制御部30aは、ジャンクションボックス44を制御して、各バッテリパック41に対してインバータ45、DC/DCコンバータ47を接続させ、各バッテリパック41に対して充電器43(充電口42)を切断させる。
【0056】
また、制御部30aは、充電モードでは、複数のバッテリパック41のうち、いずれか
1つを充電する充電用バッテリパックとして決定したり、充電用バッテリパックを他のバッテリパックに切り替えたりする。制御部30aは、充電モードにおいて、接続切替部41bのうち、一方の接続切替部41bを接続状態に切り替えて、他方の接続切替部41bを遮断状態に切り替える。制御部30aは、ジャンクションボックス44を制御して、各バッテリパック41に対してインバータ45、DC/DCコンバータ47を切断させ、各バッテリパック41に対して充電器43(充電口42)を接続させる。これにより、制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、一方のバッテリパック41へジャンクションボックス44から入力された電力を出力させ、他方のバッテリパック41への電力の入力を停止させる。
【0057】
以上のように、制御部30aは、複数のバッテリパック41への電力の入力と入力停止とを制御する。
【0058】
以下、低圧バッテリ48が電力を供給する電装品又は当該電装品が設けられた機器の一例として、ラジエータ50、オイルクーラ52、及び空調装置55について説明する。
【0059】
ラジエータ50は、バッテリユニット40、インバータ45、電動モータ46、及びDC/DCコンバータ47等の高発熱型の電気機器を冷却するための冷却水を冷却する。高発熱型の電気機器とは、電力で動作することにより、電動作業機1に備わる他の電気機器より高い熱を発する電気機器のことである。冷却水は、単なる水ではなく、例えば寒冷地でも凍らないような液体から構成されている。
【0060】
ラジエータ50は、ファンモータ50aと、当該ファンモータ50aの動力により回転駆動するラジエータファン(図示略)及び熱交換部(図示略)と、を有している。ファンモータ50aは、低圧バッテリ48から供給された電力で駆動する。
【0061】
冷却用ポンプ51は、ラジエータ50及び上記の高発熱型の電気機器と共に、機体2内に配設された冷却水路(図示略)に設けられている。冷却用ポンプ51は、その冷却水路に対して冷却水を吐出及び循環させる。
【0062】
オイルクーラ52は、前述した油圧アクチュエータML,MR,MT,C1~C5や、後述する油圧ポンプP1,P2及びコントロールバルブVといった油圧機器を通過した作動油を冷却する。オイルクーラ52は、ファンモータ52aと、当該ファンモータ52aの動力により回転駆動するオイルクーラファン(図示略)及び熱交換部(図示略)と、を有している。ファンモータ52aは、低圧バッテリ48の電力で駆動する。
【0063】
空調装置55は、低圧バッテリ48の電力により作動して、運転席4の周囲(運転室4R)の空調を行う装置である。空調装置55は、運転室4Rの暖房及び冷房の少なくともいずれか一方を行うことができる。本実施形態においては、空調装置55は、暖房を行う電動暖房装置56と、冷房を行う電動冷房装置57と、を含んでいる。
【0064】
電動暖房装置56は、低圧バッテリ48の電力により作動して、保護機構6の内部の暖房を行う。電動暖房装置56は、例えば電気ヒータである。電動暖房装置56は、電熱線56aと、ファンモータ56bと、暖房ファン(図示略)と、を有している。電熱線56aは、通電されることにより高熱を発する。ファンモータ56bは、暖房ファンを回転駆動させる。暖房ファンは、電熱線56aにより暖められた周囲の空気を保護機構6の内部に向かって送風する。ファンモータ56bは、低圧バッテリ48の電力で駆動する。
【0065】
電動冷房装置57は、低圧バッテリ48の電力により駆動して、保護機構6の内部の冷房を行う。電動冷房装置57は、例えばエアコンである。
【0066】
次に、電動作業機1に備わる油圧回路Kについて説明する。図2は、第1実施形態における電動作業機1の油圧回路図である。図2に示すように、油圧回路Kには、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MT、コントロールバルブV、油圧ポンプP1,P2、作動油タンクT、オイルクーラ52、操作弁PV1~PV6、アンロード弁66、及び油路60等の油圧機器が設けられている。
【0067】
複数設けられた油圧ポンプP1,P2のうち、一方は作動用油圧ポンプP1であり、他方はコントロール用油圧ポンプP2である。これらの油圧ポンプP1,P2は、電動モータ46の動力により駆動する。
【0068】
作動用油圧ポンプP1は、作動油タンクTに貯留された作動油を吸引し、コントロール
バルブVへ作動油を吐出する。図2では、便宜上、作動用油圧ポンプP1を1つ図示しているが、これに限らず、各油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに作動油を供給する作動用油圧ポンプP1を適宜数設けてもよい。
【0069】
コントロール用油圧ポンプP2は、作動油タンクTの作動油を吐出することにより、信号用又は制御用等の油圧を出力する。即ち、コントロール用油圧ポンプP2はパイロット油を供給(吐出)する。コントロール用油圧ポンプP2も適宜数設ければよい。
【0070】
コントロールバルブVは、複数の制御弁V1~V8を有している。各制御弁V1~V8は、油圧ポンプP1,P2から各油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに出力する作動油の流量を制御(調整)する。スイング制御弁V1は、スイングシリンダC1に供給する作動油の流量を制御する。ブーム制御弁V2は、ブームシリンダC2に供給する作動油の流量を制御する。アーム制御弁V3は、アームシリンダC3に供給する作動油の流量を制御する。バケット制御弁V4は、バケットシリンダC4に供給する作動油の流量を制御する。ドーザ制御弁V5は、ドーザシリンダC5に供給する作動油の流量を制御する。左用走行制御弁V6は、左側の走行モータMLに供給する作動油の流量を制御する。右用走行制御弁V7は、右側の走行モータMRに供給する作動油の流量を制御する。旋回制御弁V8は、旋回モータMTに供給する作動油の流量を制御する。
【0071】
操作弁PV1~PV6は、操作装置5に備わる各種の操作レバー5aの操作に応じて作動する。各操作弁PV1~PV6の作動量(操作量)に比例して、パイロット油が各制御弁V1~V8に作用することで、各制御弁V1~V8のスプールが動かされる。そして、各制御弁V1~V8のスプールの動かされた量に比例する量の作動油が、制御対象の油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに供給される。さらに、各油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTが、各制御弁V1~V8から供給された作動油の供給量に応じて駆動する。
【0072】
言い換えれば、操作レバー5aが操作されることで、制御弁V1~V8に作用する作動油(パイロット油)が調整されて、制御弁V1~V8が制御される。そして、制御弁V1~V8から油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに供給される作動油の量が調整されて、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTの駆動と停止とが制御される。
【0073】
油路60は、油圧回路Kに設けられた各部を接続し、各部に対して作動油又はパイロット油を流す流路である。油路60には、第1油路61、第2油路62、第1吸引油路63、第2吸引油路64、及び制限油路65が含まれている。
【0074】
第1吸引油路63は、作動用油圧ポンプP1が作動油タンクTから吸引した作動油を流す流路である。第2吸引油路64は、コントロール用油圧ポンプP2が作動油タンクTから吸引した作動油を流す流路である。
【0075】
第1油路61は、作動用油圧ポンプP1が吐出した作動油をコントロールバルブVの制御弁V1~V8に向かって流す流路である。第1油路61は、コントロールバルブV内で複数に分岐して、各制御弁V1~V8に接続されている。
【0076】
第2油路62は、制御弁V1~V8を通過した作動油を作動油タンクTに向かって流す流路である。作動油タンクTは作動油を貯留する。第2油路62には、往復油路62aと排出油路62bとが含まれている。
【0077】
往復油路62aは、各制御弁V1~V8と制御対象の油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTとを2本1対で接続するように複数設けられている。往復油路62aは、接続された制御弁V1~V8から油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに作動油を供給したり、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTから制御弁V1~V8に作動油を戻したりする流路である。排出油路62bの一端側は複数に分岐して、各制御弁V1~V8に接続されている。排出油路62bの他端部は、作動油タンクTに接続されている。
【0078】
第1油路61を通っていずれかの制御弁V1~V8に流れた作動油の一部は、当該制御弁V1~V8を通過して往復油路62aの一方を通り、制御対象の油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに供給される。そして、その油圧アクチュエータC1~C5
,ML,MR,MTから排出された作動油は、往復油路62aの他方を通って接続された制御弁V1~V8に戻り、当該制御弁V1~V8を通過して、排出油路62b流れる。
【0079】
また、第1油路61を通っていずれかの制御弁V1~V8に流れた作動油の他部は、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTへ供給されることなく、当該制御弁V1~V8を通過して排出油路62bに流れる。排出油路62bには、オイルクーラ52が設けられている。オイルクーラ52は、いずれかの制御弁V1~V8から排出油路62bを通って流れて来た作動油を冷却する。
【0080】
オイルクーラ52で冷却された作動油は、排出油路62bを通って作動油タンクTに戻る。上述したように、油路61,62,63は、作動油を作動油タンクTと油圧ポンプP1とコントロールバルブVの制御弁V1~V8と(一部の作動油は油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTも)に対して循環させるように配設されている。
【0081】
制限油路65は、コントロール用油圧ポンプP2が吐出した作動油を操作弁PV1~PV6に流す流路である。制限油路65の一端部は、コントロール用油圧ポンプP2に接続され、他端側は複数に分岐して、各操作弁PV1~PV6の一次側のポート(一次ポート)に接続されている。
【0082】
制限油路65には、アンロード弁66が設けられている。アンロード弁66は、作動用油圧ポンプP1から油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTに対する作動油の供給を遮断することにより、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTの駆動、即ち走行装置10及び作業装置20の駆動を禁止する。
【0083】
アンロード弁66は、制御装置30からの指示信号に応じて供給位置と遮断位置とに切り替えられる。制御装置30は、操作レバー5aに含まれるアンロードレバー(図示略)から出力された操作信号に基づいて、アンロード弁66の消磁と励磁とを切り替える。アンロード弁66は、バネによって遮断位置(アンロード位置)に切り替えられる方向に付勢されていてソレノイドが消磁されることで遮断位置とされ、ソレノイドが励磁されることにより供給位置に切り替えられる。アンロード弁66は、アンロードレバーを下げた位置で励磁され、アンロードレバーを引き上げることにより消磁される。
【0084】
アンロード弁66が供給位置に切り替わることで、コントロール用油圧ポンプP2から制限油路65に吐出された作動油が操作弁PV1~PV6に供給されて、制御弁V1~V8の操作が可能になる。これにより、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MT、走行装置10、及び作業装置20の操作も可能となる。操作弁PV1~PV6から排出された作動油は、別の排出油路(図示略)を通って作動油タンクTに戻る。
【0085】
一方、アンロード弁66が遮断位置に切り替わることで、コントロール用油圧ポンプP2から制限油路65に吐出された作動油が作動油タンクTに排出されて、操作弁PV1~PV6に供給されなくなり(供給停止)、制御弁V1~V8の操作が禁止される。また、これにより、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MT、作業装置20、及び走行装置10の操作も禁止される。
【0086】
なお、上述した実施形態では、バッテリパック41から供給された電力で電動モータ46を駆動させ、電動モータ46の動力で油圧ポンプP1,P2を駆動させ、油圧ポンプP1,P2から吐出される作動油により油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTを駆動させ、油圧アクチュエータC1~C5,ML,MR,MTの動力で走行装置10及び作業装置20を駆動させる構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、走行装置10及び作業装置20は、バッテリパック41から供給された電力で駆動すればよく、走行装置10及び作業装置20に設けられたアクチュエータのうち一部又は全部を電動アクチュエータで構成し、当該電動アクチュエータをバッテリパック41の電力で駆動させて、当該電動アクチュエータの動力で走行装置10、作業装置20を駆動させる構成にしてもよい。
【0087】
以下、電動作業機1の制御方法のうち、放電制御及び充電制御について詳しく説明する。
【0088】
制御部30a(制御装置30)は、放電制御として、選択具5dの操作に応じて、放電用バッテリパックを決定する。選択具5dは、複数のバッテリパック41のうち、いずれ
か1つの選択操作を受け付ける操作部材である。本実施形態においては、選択具5dは、電動作業機1の状態(例えば電動モータ46の回転数やバッテリパック41の残容量)を表示するメータパネルに設けられている。メータパネルは、表示装置であり、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネルのいずれかの表示画面を有している。メータパネルは、電動作業機1の状態を画像として表示することができ、選択具5dは、表示画面に表示される表示画像である。表示装置は、制御装置30と通信可能に接続されており、選択具5dの操作信号は、制御装置30(制御部30a)に出力される。制御部30aは、選択具5dから出力された操作信号に基づいて、複数のバッテリパック41から、いずれか1つを放電用バッテリパックとして決定する。
【0089】
また、放電モードにおいて、制御装置30は、BMU41aが検出した各バッテリパック41の残容量を取得し、当該残容量に基づいて、放電制御を行う。制御装置30は、放電制御として放電用バッテリパックの残容量が所定の第1閾値未満である場合には放電用バッテリパックから作動機器Eに供給する電力を制限する制限処理を行う。作動機器Eは、放電用バッテリパックから電力を供給される電動モータ46を含んでいる。作動機器Eは、バッテリパック41から供給される電力によって作動する機器であればよく、バッテリパック41から電力を供給された電動モータ46が発生させた動力によって駆動する機器(例えば、走行装置10及び作業装置20)を含んでいてもよい。また、作動機器Eは、バッテリパック41から電力を供給された低圧バッテリ48から供給された電力によって作動する機器(例えばラジエータ50、オイルクーラ52、空調装置55、又は各種ランプ58)を含んでいてもよい。
【0090】
図1に示すように、制御装置30は、制限処理部30bを有している。制限処理部30bは、BMU41aから放電用バッテリパックの残容量を取得し、当該残容量が第1閾値未満であるか否かを判断する。第1閾値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、例えば20%として定義されている。なお、第1閾値は、20%に限定されず、15%であってもよいし、25%であってもよい。また、第1閾値は、制御装置30に接続され、且つ情報を入力する入力装置(例えば表示装置等、図示略)を操作することで、任意の値に変更できてもよい。また、第1閾値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0091】
制限処理部30bは、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満であると判断した場合、所定の制限処理を行う。制限処理部30bは、CPUやメモリ等に格納されたプログラム等から構成されている。制限処理部30bが実行する制限処理は、放電用バッテリパックから作動機器Eに出力する電力の消費を抑制する処理である。
【0092】
例えば、制限処理には、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合、作動機器E(電動モータ46)の回転数の上限値(上限回転数)を制限する処理(第1制限処理)が含まれている。制限処理部30bは、回転センサ35aから取得した検出信号に基づいて、電動モータ46の回転数を演算する。また、制限処理部30bは、回転数操作具5cから出力された操作信号に拘わらず、インバータ45へ出力する指示信号を補正し、電動モータ46の回転数が所定の上限回転数未満に制限する。上限回転数は、所定の値であって、例えば1400rpmとして定義されている。なお、上限回転数は、1400rpmに限定されず、1300rpmであってもよいし、1500rpmであってもよい。また、上限回転数は、入力装置を操作することで、任意の値に変更できてもよい。また、上限回転数は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0093】
制限処理は、放電用バッテリパックから出力する電力の消費を抑制する処理であればよく、電動モータ46の回転数を制限する第1制限処理に限定されない。例えば、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、作動機器E(空調装置55)の暖房又は冷房の出力(例えば空調装置55から運転席4の周囲に送風する空気の温度や、設定温度の上限値)を制限する処理を行ってもよい(第2制限処理)。第2制限処理において、制限処理部30bは、暖房及び/又は冷房(暖房及び冷房の少なくとも一方)の出力を制限したり、空調装置55への電力の供給を遮断
したりすることで空調装置55の暖房又は冷房の出力を制限する。
【0094】
また、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、作動機器E(ファンモータ50a)の回転数の上限値を制限する処理を行ってもよい(第3制限処理)。第3制限処理において、制限処理部30bは、第3制限処理を行わない場合に比べて、ファンモータ50aの回転数を低下させたり、ファンモータ50aへの電力の供給を遮断することでファンモータ50aの回転数を零に制限させたりする。
【0095】
また、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、作動機器E(ファンモータ52a)の回転数の上限値を制限する処理を行ってもよい(第4制限処理)。第4制限処理において、制限処理部30bは、第4制限処理を行わない場合に比べて、ファンモータ52aの回転数を低下させたり、ファンモータ52aへの電力の供給を遮断することでファンモータ52aの回転数を零に制限させたりする。
【0096】
また、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、作動機器E(ランプ58)の出力を制限する処理を行ってもよい(第5制限処理)。第5制限処理において、制限処理部30bは、低圧バッテリ48からランプ58に供給する電力を制限し、当該ランプ58の照度を減少させる。
【0097】
また、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、作動機器E(走行装置10及び作業装置20)の駆動を制限する処理を行ってもよい(第6制限処理)。第6制限処理において、制限処理部30bは、アンロード弁66を遮断位置に切り替え、走行装置10及び作業装置20の駆動を制限する。
【0098】
なお、上述した実施形態においては、図2に示すように、制限油路65に単一のアンロード弁66が設けられ、当該アンロード弁66が遮断位置に切り替わると、全ての操作弁PV1~PV6に供給されなくなるが、図3の変形例に示すように、制限油路65は、下流で複数に分岐し、且つ当該下流には、アンロード弁66が複数設けられ、制限処理部30bは、制限処理として、走行装置10の駆動と、作業装置20の駆動と、を別々に制限する処理を行う。図3は、第1実施形態の変形例における電動作業機1の油圧回路図である。
【0099】
まず、変形例における制限油路65及びアンロード弁66について説明する。図3に示すように、変形例において、制限油路65は、下流で複数に分岐し、操作弁PV1、PV2に接続される第1部分65aと、操作弁PV3~PV6に接続される第2部分65bを有し、第1部分65aには第1アンロード弁66Aが設けられ、第2部分65bには、第2アンロード弁66Bが設けられる。
【0100】
第1アンロード弁66Aが供給位置に切り替えられた場合、操作弁PV1、PV2に作動油が供給され、走行装置10の操作が可能となる。一方、第1アンロード弁66Aが遮断位置に切り替えられた場合、操作弁PV1、PV2に作動油が供給されなくなり、走行系の油圧アクチュエータの操作が禁止される。このため、第1アンロード弁66Aの切替位置を変更することで、走行装置10の駆動の禁止、又は許可を変更することができる。
【0101】
第2アンロード弁66Bが供給位置に切り替えられた場合、操作弁PV3~PV6に作動油が供給され、作業系の油圧アクチュエータの操作が可能となる。一方、第2アンロード弁66Bが遮断位置に切り替えられた場合、操作弁PV3~PV6に作動油が供給されなくなり、作業系の油圧アクチュエータの操作が禁止される。このため、第2アンロード弁66Bの切替位置を変更することで、作業装置20の駆動の禁止、又は許可を変更することができる。
【0102】
次に、第1実施形態の変形例における制限処理について説明する。変形例において、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、作動機器E(走行装置10)の駆動を制限する処理を行う(第7制限処理)。第7制限処理において、制限処理部30bは、第1アンロード弁66Aを遮断位置に切り替え、走行装置10の駆動を制限する。
【0103】
また、制限処理部30bは、制限処理として、放電用バッテリパックの残容量が第1閾
値未満である場合に、作動機器E(作業装置20)の駆動を制限する処理を行う(第8制限処理)。第8制限処理において、制限処理部30bは、第2アンロード弁66Bを遮断位置に切り替え、作業装置20の駆動を制限する。
【0104】
なお、変形例において、制限処理部30bは、第6制限処理を行う場合、第1アンロード弁66A及び第2アンロード弁66Bの両方を遮断位置に切り替え、走行装置10及び作業装置20の駆動を制限する。
【0105】
また、制限処理部30bは、第6~第8制限処理においては、少なくとも走行装置10及び/又は作業装置20(走行装置10及び作業装置20の少なくとも一方)の駆動を制限すればよく、その制限方法は上述した方法に限定されない。例えば、操作弁PV1~PV6が制御装置30からの指示信号に応じて開度を変更する電磁弁で構成され、制御装置30が操作部材(例えば操作レバー)から入力された操作信号と、操作信号と指示信号とを対応付けた所定のテーブルに基づいて、操作弁PV1~PV6に指示信号を出力する場合、制限処理部30bは、操作弁PV1~PV6の開度が小さくなるよう、操作信号とテーブルに基づく指示信号を補正することで、走行装置10及び/又は作業装置20の駆動を制限してもよい。
【0106】
また、制限処理部30bは、制限処理として、第1~第8制限処理のいずれかを組み合わせて処理を実行してもよいし、放電用バッテリパックの残容量に応じて、異なる組み合わせの処理を実行してもよい。
【0107】
また、制限処理部30bは、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満であると判断した場合に加えて、放電用バッテリパックの温度が所定値(第5閾値)以上であると判断した場合に、所定の制限処理を行ってもよい。本実施形態においては、制限処理部30bは、BMU41aから放電用バッテリパックの温度を取得し、当該温度が第5閾値以上であるか否かを判断する。第5閾値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、例えば45℃として定義されている。本実施形態において、制限処理部30bは、放電用バッテリパックの温度が第5閾値以上であると判断した場合、第1制限処理を行う。
【0108】
なお、第5閾値は、45℃に限定されず、40℃であってもよいし、50℃であってもよい。また、第5閾値は、入力装置を操作することで、任意の値に変更できてもよい。また、第5閾値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0109】
また、制御部30a(制御装置30)は、充電制御として、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1閾値よりも多い第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が多いバッテリパック41を優先して充電用バッテリパックとして決定する。また、制御部30aは、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41から順番に充電用バッテリパックとして決定することで、残容量が多いバッテリパック41を優先する。
【0110】
制御部30aは、BMU41aから各バッテリパック41の残容量を取得し、当該残容量が第2閾値未満であるか否かを判断する。第2閾値は、バッテリパック41の充電を完了する際の目標値である。第2閾値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、例えば100%として定義されている。
【0111】
なお、第2閾値は、100%に限定されず、90%であってもよいし、95%であってもよい。また、第2閾値は、入力装置を操作することで、任意の値に変更できてもよい。また、第2閾値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0112】
また、制御部30aが充電用バッテリパックを決定する条件は、各バッテリパック41の残容量に限定されず、他の条件に基づいて充電用バッテリパックを決定してもよい。例えば、制御部30aは、各バッテリパック41の残容量に加えて、各バッテリパック41の温度に基づいて充電用バッテリパックを決定する。制御部30aは、充電モードにおいて、残容量が第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する。
【0113】
制御部30aは、BMU41aから各バッテリパック41の温度を取得し、当該温度が第3閾値未満であるか否かを判断する。第3閾値は、バッテリパック41の充電効率が比較的安定している場合の最高温度である。第3閾値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、例えば45℃として定義されている。
【0114】
なお、第3閾値は、45℃に限定されず、40℃であってもよいし、50℃であってもよい。また、第3閾値は、入力装置を操作することで、任意の値に変更できてもよい。また、第3閾値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0115】
また、制御部30aは、充電用バッテリパックを決定する条件として、例えば残容量が最も多いバッテリパック41が複数ある場合、当該バッテリパック41のうち、温度が最も低いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定してもよい。
【0116】
次に、充電用バッテリパックを充電させている場合における、制御部30aによる充電用バッテリパックの切替について説明する。制御部30aは、充電モードにおいて、充電用バッテリパックの温度が第3閾値以上になった場合に、充電用バッテリパックを、残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾値未満である他のバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41に切り替える。
【0117】
また、制御部30aは、充電モードにおいて、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であり、且つ当該充電用バッテリパックの残容量が第2閾値に達した場合、充電用バッテリパックを、残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾値未満である他のバッテリパック41のうち残容量が最も多いバッテリパック41に切り替える。
【0118】
即ち、制御部30aは、図1に示すバッテリユニット40を例に説明すると、充電用バッテリパック(一方のバッテリパック41A)の温度が上昇して、当該温度が第3閾値以上になった場合には、充電用バッテリパックを他のバッテリパック41(他方のバッテリパック41B)に切り替えるが、他方のバッテリパック41Bの温度が第3閾値未満である場合には、残容量が第2閾値に達するまでの間、充電用バッテリパックは切り替えない。つまり、斯かる場合において、一方のバッテリパック41Aの温度が第3閾値未満に低下したとしても、他方のバッテリパック41Bが継続して充電される。
【0119】
なお、制御部30aは、残容量が最も多いバッテリパック41が複数ある場合、充電用バッテリパックを、当該バッテリパック41のうち温度が最も低いものに切り替えてもよい。
【0120】
また、制御部30aは、充電モードにおいて、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41の全ての温度が所定の第3閾値以上である場合、充電用バッテリパックを、当該残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾値以上であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41に決定、又は切り替える。
【0121】
ただし、制御部30aは、残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾値以上であるバッテリパック41を充電用バッテリパックに決定した場合や切り替えた場合、定電流充電における電流の大きさ(充電電流値)を制限する。制御部30aは、充電器43に指示信号を出力し、充電器43は、電子回路によって、バッテリパック41に出力する直流電力の電流及び電圧を調整して、充電電流値を低くする。
【0122】
以下、図4図5を用いて、本実施形態における電動作業機1の制御方法のうち、放電制御及び充電制御の一連の流れを説明する。図4は、第1実施形態の制御装置30の放電制御の一連の流れを説明する図である。図5は、第1実施形態の制御装置30の充電制御の一連の流れを説明する図である。図4図5に示す一連の処理は、制御装置30のメモリに予め記憶されたソフトウェアプログラムに基づいて、CPUにより実行される。また、図4図5等では、便宜上、バッテリパック41を「BP」と示し、放電用バッテリパックを「放電用BP」と示し、充電用バッテリパックを「充電用BP」と示している。
【0123】
まず、図4を用いて、制御装置30の放電制御の一連の流れを中心に説明する。制御部30aは、制御装置30の現在のモードが放電モードであるか、充電モードであるかを判断する(S1)。制御部30aは、充電口42に充電ケーブルが接続されているか否かに
応じて、或いは作業者が放電モードと充電モードとを切り替えるためのモード切替スイッチ5b1の切替状態に応じて制御装置30の現在のモードが放電モードであるか、充電モードであるかを判断する。
【0124】
制御部30aは、制御装置30の現在のモードが放電モードであると判断すると(S1:Yes)、選択具5dから制御装置30に出力された操作信号を取得する(S2)。制御部30aは、取得した選択具5dの操作信号に応じて、複数のバッテリパック41から放電用バッテリパックを決定する(S3)。
【0125】
制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御して、放電用バッテリパックの電力をインバータ45とDC/DCコンバータ47に供給(放電)する(S4)。なお、制御装置30は、DC/DCコンバータ47を制御して、DC/DCコンバータ47から低圧バッテリ48に電力を供給して、低圧バッテリ48を随時充電する(S5)。
【0126】
つぎに、BMU41aが各バッテリパック41の状態を検出し、制限処理部30bは、当該BMU41aから放電用バッテリパックの残容量及び温度を取得し(S6)、当該残容量が第1閾値未満であるか否かを判断する(S7)。制限処理部30bは、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満であると判断した場合(S7:Yes)、所定の制限処理(例えば第1~第8制限処理のいずれか)を行う(S8)。
【0127】
制限処理部30bが放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満ではないと判断した場合(S7:No)、放電用バッテリパックの温度が第5閾値以上であるか否かを判断する(S9)。制限処理部30bは、放電用バッテリパックの温度が第5閾値以上であると判断した場合(S9:Yes)、第1制限処理を行う(S10)。
【0128】
制限処理部30bがS8において、所定の制限処理を行った場合(S8)、制限処理部30bがS9において放電用バッテリパックの温度が第5閾値以上ではないと判断した場合(S9:No)、及び制限処理部30bがS10において、第1制限処理を行った場合(S10)、制御部30aは、選択具5dから制御装置30に出力される操作信号を取得して、選択具5dが操作されたかを判断する(S11)。制御部30aは、取得した選択具5dの操作信号に応じて、選択具5dが操作されたと判断した場合(S11:Yes)、取得した選択具5dの操作信号に応じて、放電用バッテリパックを、複数のバッテリパック41のうちのいずれかに切り替え(S12)、S4の処理に進む。
【0129】
なお、制御部30aは、取得した選択具5dの操作信号に応じて、選択具5dが操作されていないと判断した場合(S11:No)、放電用バッテリパックの切替を行わずに、S6の処理に進む。
【0130】
また、図4に示した電動作業機1の放電制御を示したフローチャートは、一例であって、上述した流れに限定されない。例えば、図4において、制御部30aは、放電モード又は充電モードを判断してから、放電用バッテリパック又は充電用バッテリパックを決定しているが、逆に、放電用バッテリパック又は充電用バッテリパックを決定してから放電モード又は充電モードを判断してもよい。
【0131】
次に、図5を用いて、制御装置30の充電制御の一連の流れを説明する。制御部30aは、S1において、制御装置30の現在のモードが放電モードであると判断すると(S1:No)、BMU41aから各バッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S13)。
【0132】
制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S14)。制御部30aは、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S14:No)、一連の処理を終了する。
【0133】
一方、制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S14:Yes)、当該第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S15)。
【0134】
制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(
S15:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する(S16)。このため、制御部30aは、充電モードに切り替えられたときに、BMU41aから取得した各バッテリパック41の状態の検出結果に基づいて、放電用バッテリパックを決定する。制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御し、外部電源から充電ケーブル及び充電口42を経由して充電器43に入力された電力で充電用バッテリパックを充電させる(S17)。
【0135】
また、制御部30aは、S15において、第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S15:No)、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する(S18)。制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御し、充電器43に指示信号を出力し、制限した電流(低く設定した充電電流値)で充電用バッテリパックを充電させる(S19)。
【0136】
制御部30aは、S17及びS19で充電用バッテリパックを充電させると(S17、S19)、BMU41aから充電用バッテリパックの残容量及び温度を取得する(S20)。制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第2閾値未満であるかを判断する(S21)。
【0137】
制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第2閾値未満であると判断すると(S21:Yes)、当該充電用バッテリパックの温度は、第3閾値未満であるかを判断する(S22)。制御部30aは、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であると判断すると(S22:Yes)、S20の処理に進む。
【0138】
一方、制御部30aは、充電用バッテリパックの温度が第3閾値以上であると判断すると(S22:No)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S23)。
【0139】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S24)。制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S24:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S25)。
【0140】
制御部30aは、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S25:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定し(S26)、S17の処理に進む。
【0141】
なお、制御部30aは、S24において、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S24:No)、及びS25において、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41がないと判断した場合(S25:No)、充電用バッテリパックの切替を行わず、S19の処理を行う。
【0142】
また、制御部30aは、S21において、充電用バッテリパックの残容量が第2閾値以上であると判断すると(S21:No)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S27)。
【0143】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S28)。制御部30aは、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S28:No)、一連の処理を終了する。
【0144】
一方、制御部30aは、S28において、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S28:Yes)、当該残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S29)。制御部30aは、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S29:Yes)、S26
の処理を行う。
【0145】
また、制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S29:No)、充電用バッテリパックを、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41に切り替え(S30)、S19の処理を行う。
【0146】
以上のように説明した本実施形態における電動作業機1の制御方法(充電制御)によれば、図1に示すバッテリユニット40を例に説明すると、例えば一方のバッテリパック41Aの残容量が10%であって、他方のバッテリパック41Bの残容量が40%であり、充電時間が確保できず、いずれか一方のバッテリパック41を20%しか充電できない場合であっても、制御部30aは、残容量が多い他方のバッテリパック41Bを充電用バッテリパックとして決定する。このため、電動作業機1は、他方のバッテリパック41Bを60%まで充電することができる。
【0147】
ここで、仮に、一方のバッテリパック41Aを充電用バッテリパックとして充電した場合には、30%までしか充電することができない。つまり、制御部30aが一方のバッテリパック41Aを放電用バッテリパックとして決定した場合には、電動作業機1は、制限処理部30bが制限処理を行うまで、残容量を20%しか使用することができない。
【0148】
従って、本実施形態における電動作業機1の制御方法(充電制御)では、上記場合において、他方のバッテリパック41Bを60%まで充電することができ、当該他方のバッテリパック41Bを放電用バッテリパックとして決定した場合には、制限処理部30bが制限処理を行うまで、残容量を40%使用することができる。
【0149】
なお、上述した実施形態において、制御部30aは、充電モードにおいて、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満である場合には、当該充電用バッテリパックの残容量が第2閾値に達するまでの間、継続して充電を行うが(S20~S22)、制御部30aは、少なくとも残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が多いバッテリパック41を優先して充電用バッテリパックとして決定すればよい。このため、制御部30aは、充電モードにおいて充電用バッテリパックを充電させている最中に、充電用バッテリパックの残容量が第2閾値未満且つ第3閾値未満であっても、充電用バッテリパックの残容量よりも多いバッテリパック41を検出した場合に、充電用バッテリパックを当該バッテリパック41に切り替えるような構成を採用してもよい。
【0150】
図1に示すバッテリユニット40を例に、充電用バッテリパックが一方のバッテリパック41Aである場合を例に説明すると、変形例において、制御部30aは、充電用バッテリパック(一方のバッテリパック41A)の温度が上昇して、当該温度が第3閾値以上になった場合には、充電用バッテリパックを他のバッテリパック41(他方のバッテリパック41B)に切り替える。一方、他方のバッテリパック41Bが充電用バッテリパックであって充電されている場合に、一方のバッテリパック41Aの温度が第3閾値未満に低下すると、制御部30aは、他方のバッテリパック41Bの残容量が第2閾値に達するまで又は温度が第3閾値に達するまでに、元の一方のバッテリパック41Aを充電用バッテリパックに切り替える。
【0151】
以下、図6を用いて、第1実施形態の変形例における電動作業機1の充電制御の一連の流れを説明する。なお、当該変形例の充電制御のフローチャートは、図5に示す第1実施形態の充電制御のフローチャートと、制御部30aがS22において、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であると判断したあと(S22:Yes)の処理が異なるため、異なる部分であるS40~S44の処理を説明する。
【0152】
図6に示すように、制御部30aは、S22において、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であると判断すると(S22:Yes)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S40)。
【0153】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S41)。制御部30aは、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S41:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S42)。
【0154】
制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(
S42:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41の残容量は、充電用バッテリパックの残容量よりも多いかを判断する(S43)。
【0155】
制御部30aは、最も残容量が多いバッテリパック41の残容量は、充電用バッテリパックの残容量よりも多いと判断すると(S43:Yes)、充電用バッテリパックを当該バッテリパック41に切り替え(S44)、S17の処理に進む。
【0156】
なお、制御部30aは、S41において、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S41:No)、S42において、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S42:No)、及びS43において、最も残容量が多いバッテリパック41の残容量は、充電用バッテリパックの残容量よりも少ないと判断した場合(S43:No)、充電用バッテリパックの切替を行わず、S20の処理に進む。
【0157】
また、制御部30aは、充電用バッテリパックを決定又は切替を行う条件として、バッテリパック41の温度が第3閾値未満であるという条件に加え、当該温度が第3閾値未満である所定の第4閾値以上を満たすという条件を採用してもよい。第4閾値は、バッテリパック41の充電効率が比較的安定している場合の最低温度である。第4閾値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、例えば0℃として定義されている。第4閾値は、0℃に限定されず、-5℃であってもよいし、5℃であってもよい。また、第4閾値は、入力装置を操作することで、任意の値に変更できてもよい。また、第4閾値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0158】
なお、上述した変形例における電動作業機1の充電制御の一連の流れは、図5に示す第1実施形態における充電制御のフローチャートのS15、S22、S25、及びS29の「第3閾値未満」との記載、並びに図6に示す第1実施形態の変形例における充電制御のフローチャートのS22及びS42の「第3閾値未満」との記載を「第4閾値以上、且つ第3閾値未満」と読み換えればよいため、詳細な説明を省略する。
【0159】
また、上述した実施形態では、制御部30aは、充電モードにおいて、BMU41aが検出した各バッテリパック41の温度(実温度)に基づいて、充電用バッテリパックを決定又は切り替えている場合を例に説明したが、バッテリパック41の温度が第3閾値未満であるか否かの判断は、実温度に限定されない。つまり、制御装置30は、残容量が第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満であるバッテリパック41に対して所定時間(例えば15分や30分等)充電を行った場合の当該バッテリパック41の予想温度を算出し、制御部30aは、当該予想温度に基づいて充電用バッテリパックを決定又は切り替えてもよい。記憶装置31は、バッテリパック41の実温度と、充電時間と、の関係を示す演算マップを記憶し、制御装置30は、BMU41aが検出した各バッテリパック41の温度(実温度)と、当該演算マップと、に基づいて予想温度を算出する。これにより、制御装置30(制御部30a)は、予想温度が第3閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41を充電用バッテリパックに決定又は切り替える。
【0160】
また、上述した実施形態において、制限処理部30bは、放電用バッテリパックの温度が第5閾値以上であると判断した場合に、第1制限処理を行う場合について説明したが、第5閾値として第3閾値を採用してもよい。
【0161】
上述した第1実施形態の電動作業機1、及び電動作業機1の制御方法は、以下の効果を奏する。
【0162】
上述した電動作業機1は、複数のバッテリパック41と、バッテリパック41から供給される電力によって作動する作動機器Eと、各バッテリパック41の残容量を検出するバッテリ監視装置41aと、各バッテリパック41の残容量に基づいて複数のバッテリパック41の充電及び放電を制御する制御装置30と、を備え、制御装置30は、作動機器Eに電力を供給する放電モードでは、複数のバッテリパック41のうち、いずれか1つを作動機器Eに電力を供給する放電用バッテリパックとして決定し、放電用バッテリパックから作動機器Eに電力を供給させ、バッテリパック41の充電を行う充電モードでは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が多いバッテリパック41を優先して充電用バッテ
リパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの充電を行わせる。
【0163】
また、電動作業機1の制御方法は、複数のバッテリパック41と、バッテリパック41から供給される電力によって作動する作動機器Eとを備えた電動作業機1の制御方法であって、作動機器Eに電力を供給する放電モードでは、複数のバッテリパック41のうち、いずれか1つを作動機器Eに電力を供給する放電用バッテリパックとして決定し、放電用バッテリパックから作動機器Eに電力を供給させ、バッテリパック41の充電を行う充電モードでは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が多いバッテリパック41を優先して充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの充電を行う。
【0164】
上記の電動作業機1及び電動作業機1の制御方法によれば、残容量が多いバッテリパック41を優先して充電することで、充電時間が十分に確保できない場合であっても、充電後の作業を適切に実施できるように効率よく充電を行うことができる。
【0165】
また、制御装置30は、放電モードにおいて放電用バッテリパックの残容量が所定の第1閾値未満である場合には、放電用バッテリパックから前記作動機器に供給する電力を制限する制限処理を行う。
【0166】
上記構成によれば、充電時間が十分に確保できない場合であっても、充電直後に出力制限が行われることを抑制できる。
【0167】
また、制御装置30は、充電モードでは、残容量が第1閾値よりも多い値に設定される第2閾値未満であるバッテリパックのうち、残容量が多いバッテリパックを優先して充電用バッテリパックとして決定する。
【0168】
上記構成によれば、充電時間が十分に確保できない場合であっても、充電後の作業を適切に実施できるように効率よく充電を行うことができる。
【0169】
また、制御装置30は、充電モードにおいて、残容量が第2閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41を優先して充電用バッテリパックとして決定する。
【0170】
上記構成によれば、残容量が最も多いバッテリパック41を優先して充電することで、当該バッテリパック41は、第1閾値に対して十分に充電される。これにより、充電時間が十分に確保できない場合であっても、効率よく充電を行うことができる。
【0171】
また、バッテリ監視装置41aは、各バッテリパック41の残容量に加えて、各バッテリパック41の温度を検出し、制御装置30は、充電モードにおいて、残容量が第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する。
【0172】
上記構成によれば、所定温度以上温度が上昇したバッテリパック41は、充電効率が低下するが、温度が比較的低いバッテリパック41を優先して充電することで、作業機全体の充電効率を向上させることができる。
【0173】
また、制御装置30は、充電モードにおいて、充電用バッテリパックの温度が第3閾値以上になった場合に、充電用バッテリパックを、残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾値未満である他のバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41に切り替える。
【0174】
上記構成によれば、所定温度以上温度が上昇したバッテリパック41は、充電効率が低下するが、充電用バッテリパックを比較的温度の低いバッテリパック41に切り替えることで、作業機全体の充電効率を向上させることができる。
【0175】
また、制御装置30は、充電モードにおいて、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であり、且つ当該充電用バッテリパックの残容量が第2閾値に達した場合、充電用バッテリパックを、残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾値未満である他のバッテリパック41のうち残容量が最も多いバッテリパック41に切り替える。
【0176】
上記構成によれば、所定のバッテリパック(充電用バッテリパック)41の充電が完了した場合にも、引き続き、残容量が多く且つ温度が比較的低いバッテリパック41を優先して充電することで、作業機の作業効率及び作業機全体の充電効率を向上させることができる。
【0177】
また、制御装置30は、充電モードにおいて、残容量が第2閾値未満且つ温度が第3閾
値未満であり、且つ残容量が充電用バッテリパックの残容量よりも多いバッテリパック41を検出した場合に、充電用バッテリパックを、当該バッテリパック41に切り替える。
【0178】
上記構成によれば、所定温度以上温度が上昇したバッテリパック41に代えて、他のバッテリパック41を充電している場合であっても、当該温度が上昇したバッテリパック41の温度が低下し、且つ依然としてこのバッテリパック41の残容量が多い場合には、当該バッテリパック41を優先して充電することで、作業機の作業効率及び作業機全体の充電効率を向上させることができる。
【0179】
また、制御装置30は、充電モードにおいて、残容量が第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満であるバッテリパック41に対して所定時間充電を行った場合の当該バッテリパック41の予想温度を算出し、予想温度が第3閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する。
【0180】
上記構成によれば、充電直後にバッテリパック41の温度が第3閾値以上になり、すぐに充電用バッテリパックを切り替えることを抑制できる。
【0181】
また、制御装置30は、放電モードにおいて、放電用バッテリパックの温度が第3閾値以上である場合には放電用バッテリパックから作動機器Eに供給する電力を制限する制限処理を行う。
【0182】
上記構成によれば、放電用バッテリパックの寿命が短くなることを抑制できる。
【0183】
また、作動機器Eは、電動モータ46を含み、制御装置30は、放電モードでは、放電用バッテリパックの残容量が第1閾値未満である場合に、制限処理として、電動モータ46の回転数の上限値を制限する。
【0184】
上記構成によれば、放電用バッテリパックの残容量が比較的少なくなり、且つ継続して当該放電用バッテリパックから電動モータ46に電力を供給し、当該電動モータ46を駆動させる場合に、放電用バッテリパックの残容量が急激に減少することを抑制できる。
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態における電動作業機1の電気ブロック図である。以下、第2実施形態の電動作業機1及び電動作業機1の制御方法について、上述した実施形態(第1実施形態)と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。第1実施形態において、制御装置30(制御部30a)は、残容量が第2閾値未満且つ温度が所定の第3閾値未満であるバッテリパック41のうち、残容量が最も多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定し、当該充電用バッテリパックが第2閾値に達するまで、又は温度が第3閾値以上になった場合等に、充電用バッテリパックを他のバッテリパック41に切り替えていたが、第2実施形態において、制御部30aは、上記条件に代えて、或いは加えて、異なる条件に基づいて充電用バッテリの決定及び切替を行う。
【0185】
具体的には、制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるいずれか1つを充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達するまで充電用バッテリパックを定電流充電する(第1充電処理)。また、制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達すると、充電用バッテリパックを、残容量が第1目標値未満である他のバッテリパック41のうち、いずれか1つに切り替え、切り替え後の充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達するまで当該充電用バッテリパックを定電流充電させる(第2充電処理)。つまり、制御部30aは、バッテリユニット40に設けられた複数のバッテリパック41の全ての残容量が第1目標値に達するまで、充電用バッテリパックを切り替え、第1目標値未満のバッテリパック41を充電させる。
【0186】
また、制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41がない場合、残容量が第1目標値よりも多い所定の第2目標値未満であるバッテリパック41のうち、いずれか1つを充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達するまで充電用バッテリパックを定電流充電させる(第3充電処理)。制御部30aは、充電用バッテリパックを充電させている場合、当該充電用バッテリパックの残容量が第1目標値未満から第1目標値に
達し、且つ第1目標値未満のバッテリパック41がない場合、当該充電用バッテリパックを継続して定電流充電させる。
【0187】
そして、制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達すると、充電用バッテリパックを、残容量が第2目標値未満である他のバッテリパック41のうちのいずれか1つに切り替え、切り替え後の充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達するまで当該充電用バッテリパックを定電流充電させる(第4充電処理)。
【0188】
このため、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満である最後のバッテリパック41が充電されている場合、当該バッテリパック41の残容量が第1目標値に達すると、制御部30aは、充電用バッテリパックを切り替えずに、当該バッテリパック41を継続して定電流充電させる。また、制御部30aは、それぞれのバッテリパック41の残容量が第2目標値に達するまで、充電用バッテリパックを切り替える。
【0189】
また、第2実施形態では、制御装置30(制御部30a)は、充電モードにおいて、充電器43に指示信号を出力し、充電器43は、電子回路によって、直流電力の電流及び電圧を調整して、定電流充電のみでバッテリパック41の充電を行う。
【0190】
次に、第1目標値及び第2目標値について説明する。第1目標値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、第1閾値よりも多く、満充電未満の値である。第1目標値は、定電流充電による充電効率が低下する残容量を基準に定義(設定)されていることが好ましい。
【0191】
図8は、定電流充電を行った場合の経過時間、充電用バッテリパックの残容量、及び充電用バッテリパックに出力する直流電力の大きさ(充電電流値)の関係を示す例である。図8に示すように、各バッテリパック41を構成するバッテリの特性上、定電流充電で充電を行う場合には、満充電に近づくにつれて、充電用バッテリパックに出力する充電電流値を低く設定する必要がある。このため、図8に示す例においては、制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が80%以上になったあとから、充電電流値を段階的に低くしている。即ち、充電用バッテリパックの残容量が80%以降である場合には、当該充電用バッテリパックの充電速度が低下している。本実施形態において、記憶装置31に予め記憶された第1目標値は、例えば、予め80%として定義されている。
【0192】
なお、図8に示す定電流充電を行った場合の経過時間、充電用バッテリパックの残容量、及び充電用バッテリパックに出力する充電電流値の関係は例示に過ぎない。また、第1目標値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。
【0193】
また、第1目標値は、目標値設定処理によって設定(定義)される。制御装置30が有する目標値設定部30cが目標値設定処理を行い、当該第1目標値を設定する値である。目標値設定部30cは、CPUやメモリ等に格納されたプログラム等から構成されている。目標値設定部30cは、取得部30dが取得した情報に基づいて、第1目標値を満充電未満の範囲で任意に設定する。目標値設定部30cは、取得部30dが取得した設定操作具5eの操作信号に基づいて、第1目標値を満充電未満の範囲で任意に設定する。
【0194】
取得部30dは、充電モードにおいて、バッテリパック41の充電の第1目標値を設定するための情報を取得する。取得部30dは、CPUやメモリ等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0195】
図7に示すように、電動作業機1は、第1目標値を設定するための操作が可能な操作具(設定操作具)5eを備えており、取得部30dは、当該設定操作具5eから出力された操作信号を取得する。設定操作具5eは、例えばメータパネル等の表示画面に表示される表示画像である。設定操作具5eは、第1目標値を増加させる第1操作具5e1と、第1目標値を減少させる第2操作具5e2と、を有している。また、表示画面には、設定操作具5eによって設定操作された第1目標値を表示する表示部(図示略)が表示されてもよい。
【0196】
つまり、作業者が第1操作具5e1を操作すると、表示部に表示されている第1目標値が増加し、作業者が第2操作具5e2を操作すると、表示部に表示されている第1目標値が減少する。設定操作具5eの操作信号は、制御装置30に出力され、目標値設定部30
cは、当該操作信号に基づいて記憶装置31に記憶されている第1目標値を設定(更新)する。目標値設定部30cは、例えば記憶装置31に記憶されているテーブルと、取得した操作信号とに基づいて、操作信号に対応する第1目標値を取得する。
【0197】
以上により、制御装置30は、操作具5eに対する操作に基づいて、第1目標値を満充電未満の範囲で任意に設定することができる。
【0198】
なお、設定操作具5eは、第1目標値の設定操作ができればよく、複数の切換位置を有したセレクタスイッチ等のダイヤル状のスイッチであってもよい。
【0199】
本実施形態において、目標値設定部30cは、操作信号に基づいて、第1目標値を50%以上、100%未満の範囲で連続的に設定することができる。目標値設定部30cが第1目標値を設定できる範囲は、少なくとも充電用バッテリパックの残容量が満充電未満の範囲であり、図8に示すような定電流充電を行った場合の経過時間と充電用バッテリパックの残容量の関係に基づいて、充電効率が低下する前の残容量(例えば70%)、充電効率が低下する傾向が生じた際の残容量(例えば80%)、充電効率が低下した後の残容量(例えば90%)を含む範囲で定義されていることが好ましい。斯かる場合、制御装置30(制御部30a)は、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値以上である場合の定電流充電に用いる充電電流値を、第1目標値未満である場合の定電流充電の充電電流値よりも少なく設定するといえる。
【0200】
なお、目標値設定部30cが設定する第1目標値の範囲は、50%以上、100%未満の範囲に限定されず、例えば30%以上、90%未満の範囲でもよいし、60%以上、95%未満の範囲であってもよい。
【0201】
また、目標値設定部30cは、第1目標値を満充電未満の範囲で任意に設定すればよく、その値を連続的に設定できなくてもよい。即ち、目標値設定部30cは、複数の既定の値に基づいて、第1目標値を設定してもよい。記憶装置31は、第1目標値の候補となる規定の複数の値として、例えば40%、50%、60%、70%、80%の値を記憶し、設定操作具5eは、記憶装置31に記憶された規定の複数の値の選択操作を受け付ける。
【0202】
第2目標値は、例えば記憶装置31に予め記憶された所定の値であって、例えば第2目標値は、バッテリパック41が満充電されたときの残容量として、100%に定義されている。
【0203】
なお、第2目標値は、入力装置を操作することで、任意の値に設定できてもよい。また、第2目標値は、チャタリングを抑制するために上限値と下限値を含む所定の値の範囲で定義されていてもよい。斯かる場合、第2目標値(満充電)を80%や85%に定義すれば、充電と放電を繰り返すことによるバッテリパック41の劣化を抑制することができる。
【0204】
従って、本実施形態においては、制御部30aは、一方のバッテリパック41の充電を行い(第1充電処理)、一方のバッテリパック41の残容量が第1目標値に達すると、充電用バッテリパックを他方のバッテリパック41に切り替える(第2充電処理)。また、他方のバッテリパック41の残容量が第1目標値に達すると、制御部30aは、充電用バッテリパックを他方のバッテリパック41から切り替えず、継続して当該他方のバッテリパック41を充電させる(第3充電処理)。そして、他方のバッテリパック41の残容量が第2目標値に達すると、制御部30aは、充電用バッテリパックを一方のバッテリパック41に切り替え、残容量が第2目標値に達するまで当該一方のバッテリパック41を充電させる(第4充電処理)。
【0205】
以下、図9図10図11を用いて、第2実施形態における電動作業機1の充電制御の一連の流れを説明する。図9は、第2実施形態の制御装置30の充電制御の一連の流れを説明する第1図である。図10は、第2実施形態の制御装置30の充電制御の一連の流れを説明する第2図である。また、図11は、第2実施形態の制御装置30の充電制御の一連の流れを説明する第3図である。
【0206】
制御部30aは、S1やS11において、制御装置30の現在のモードが放電モードであると判断すると(S1:Yes、S11:Yes)、取得部30dは、設定操作具5eが制御装置30に出力した操作信号を取得する(S50)。目標値設定部30cは、取得
部30dが取得した操作信号と、記憶装置31に記憶されている第1目標値と、を参照して、当該第1目標値を更新(設定)するか否かを判断する(S51)。目標値設定部30cは、第1目標値を更新すると判断した場合(S51:Yes)、記憶装置31に記憶されている第1目標値を更新して、第1目標値を設定する(S52)。
【0207】
目標値設定部30cが第1目標値を更新した場合(S52)、及び目標値設定部30cがS51において第1目標値を更新しないと判断した場合(S51:No)、制御部30aは、BMU41aから各バッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S53)。制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S54)。
【0208】
制御部30aは、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S54:Yes)、当該残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S55)。
【0209】
制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S55:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する(S56)。制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御し、充電用バッテリパックを充電させる(S57)。
【0210】
また、制御部30aは、S55において温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S55:No)、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する(S58)。制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御し、充電器43に指示信号を出力し、制限した電流(低く設定した充電電流値)で充電用バッテリパックを充電させる(S59)。
【0211】
図10に示すように、制御部30aは、S57及びS59で充電用バッテリパックを充電させると(S57、S59)、目標値設定部30cは、取得部30dが取得した操作信号と、記憶装置31に記憶されている第1目標値と、を参照して、当該第1目標値を更新(設定)するか否かを判断する(S60)。
【0212】
目標値設定部30cは、第1目標値を更新すると判断した場合(S60:Yes)、記憶装置31に記憶されている第1目標値を更新し、第1目標値を設定する(S61)。
【0213】
目標値設定部30cが第1目標値を更新した場合(S61)、及び目標値設定部30cが第1目標値を更新しないと判断した場合(S60:No)、制御部30aは、BMU41aから充電用バッテリパックの残容量及び温度を取得する(S62)。制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値未満であるかを判断する(S63)。
【0214】
制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値未満であると判断すると(S63:Yes)、当該充電用バッテリパックの温度は、第3閾値未満であるかを判断する(S64)。制御部30aは、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であると判断すると(S64:Yes)、S60の処理に進む。
【0215】
一方、制御部30aは、充電用バッテリパックの温度が第3閾値以上であると判断すると(S64:No)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S65)。
【0216】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S66)。制御部30aは、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S66:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S67)。制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S67:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定し(S68)、S57の処理に進む。
【0217】
なお、制御部30aは、S66において、他のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S66:No)、及びS
67において、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41がないと判断した場合(S67:No)、充電用バッテリパックの切替を行わず、S59の処理を行う。
【0218】
また、制御部30aは、S63において、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値以上であると判断すると(S63:No)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S69)。
【0219】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S70)。制御部30aは、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S70:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S71)。制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S71:Yes)、S68の処理を行う。
【0220】
一方、制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S71:No)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定し(S72)、S59の処理を行う。
【0221】
図11に示すように、制御部30aは、S54において、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S54:No)、及びS70において、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S70:No)、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S75)。制御部30aは、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S75:No)、一連の処理を終了する。
【0222】
制御部30aは、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S75:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S76)。制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S76:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する(S77)。制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御し、充電用バッテリパックを充電させる(S78)。
【0223】
また、制御部30aは、S76において温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S76:No)、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定する(S79)。制御部30aは、接続切替部41b及びジャンクションボックス44を制御し、充電器43に指示信号を出力し、制限した電流(低く設定した充電電流値)で充電用バッテリパックを充電させる(S80)。
【0224】
制御部30aは、S78及びS80で充電用バッテリパックを充電させると(S78、S80)、BMU41aから充電用バッテリパックの残容量及び温度を取得する(S81)。制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第2目標値未満であるかを判断する(S82)。
【0225】
制御部30aは、充電用バッテリパックの残容量が第2目標値未満であると判断すると(S82:Yes)、当該充電用バッテリパックの温度は、第3閾値未満であるかを判断する(S83)。制御部30aは、充電用バッテリパックの温度が第3閾値未満であると判断すると(S83:Yes)、S81の処理に進む。
【0226】
また、制御部30aは、充電用バッテリパックの温度が第3閾値以上であると判断すると(S83:No)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S84)。
【0227】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S85)。制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S85:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S86)。制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリ
パック41があると判断すると(S86:Yes)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定し、(S87)S78の処理に進む。
【0228】
なお、制御部30aは、S85において、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41がないと判断した場合(S85:No)、及びS86において、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41がないと判断した場合(S86:No)、S80の処理を行う。
【0229】
また、制御部30aは、S82において、充電用バッテリパックの残容量が第2目標値以上であると判断すると(S82:No)、BMU41aから充電用バッテリパック以外の他のバッテリパック41の残容量及び温度を取得する(S88)。
【0230】
制御部30aは、他のバッテリパック41のうち、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41があるかを判断する(S89)。制御部30aは、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S89:No)、一連の処理を終了する。
【0231】
一方、制御部30aは、S89において、残容量が第2目標値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S89:Yes)、当該バッテリパック41のうち、温度が第3閾値未満のバッテリパック41があるかを判断する(S90)。制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41があると判断すると(S90:Yes)、S87の処理を行う。
【0232】
また、制御部30aは、温度が第3閾値未満であるバッテリパック41がないと判断すると(S90:No)、これらのバッテリパック41のうち、最も残容量が多いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定し(S91)、S80の処理を行う。
【0233】
なお、目標値設定処理に対応するステップ(S52、S61)のことを「目標値設定ステップ」といい、第1充電処理に対応するステップ(S56、S57、S62、S63:Yes、S64)のことを「第1充電ステップ」という。また、第2充電処理に対応するステップ(S63:No、S69、S70:Yes、S71:Yes、S68、S57)のことを「第2充電ステップ」といい、第3充電処理に対応するステップ(S70:No、S75:Yes、S76:Yes、S77、S78、S81、S82)のことを「第3充電ステップ」という。
【0234】
上記構成によれば、定電流充電と他の充電方式との切り替えないため、当該充電用バッテリパックを安定して充電することができ、制御装置30は、第1目標値を設定できるため、第1目標値が比較的満充電に近い値に設定されている場合には、所定の充電用バッテリパックを他のバッテリパックに比べて優先的に充電でき、第1目標値が比較的満充電から遠い値に設定されている場合には、定電流充電による充電効率が多いバッテリパック41を優先して充電するため、複数のバッテリパック41のそれぞれの充電効率を向上させることができる。
【0235】
また、図9に示した電動作業機1の放電制御を示したフローチャートは、一例であって、上述した流れに限定されない。例えば、S77の処理を行う際に、制御部30aが、残容量が第2目標値未満且つ温度が第3閾値未満のバッテリパック41のうち、最も温度が低いバッテリパック41を充電用バッテリパックとして決定するように構成してもよい。上記処理に設定することで、バッテリパック41の温度が第3閾値に到達するまでの時間が比較的長いバッテリパック41を充電することができる。複数のバッテリパック41の充電効率をより向上させることができる。
【0236】
上述した第2実施形態の電動作業機1、及び電動作業機1の制御方法は、以下の効果を奏する。
【0237】
上述した電動作業機1は、複数のバッテリパック41と、バッテリパック41から供給される電力によって作動する作動機器Eと、各バッテリパック41の残容量を検出するバッテリ監視装置41aと、複数のバッテリパック41の残容量に基づいて複数のバッテリパック41の充電を制御する制御装置30と、を備え、制御装置30は、バッテリパック
41の充電の第1目標値を設定する目標値設定処理と、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるいずれか1つを充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達するまで充電用バッテリパックを定電流充電する第1充電処理と、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達すると、充電用バッテリパックを、残容量が第1目標値未満である他のバッテリパック41のうち、いずれか1つに切り替え、切り替え後の充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達するまで当該充電用バッテリパックを定電流充電する第2充電処理とを行い、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41がない場合、残容量が第1目標値よりも多い所定の第2目標値未満であるバッテリパック41のうち、いずれか1つを充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達するまで充電用バッテリパックを定電流充電する第3充電処理を行う。
【0238】
また、電動作業機1の制御方法は、複数のバッテリパック41と、バッテリパック41から供給される電力によって作動する作動機器Eと、を備えた電動作業機1の制御方法であって、バッテリパック41の充電の第1目標値を設定する第1目標値設定ステップと、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるいずれか1つを充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達するまで充電用バッテリパックを定電流充電する第1充電ステップと、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達すると、充電用バッテリパックを、残容量が第1目標値未満である他のバッテリパック41のうちのいずれか1つに切り替え、切り替え後の充電用バッテリパックの残容量が第1目標値に達するまで当該充電用バッテリパックを定電流充電する第2充電ステップと、複数のバッテリパック41のうち、残容量が第1目標値未満であるバッテリパック41がない場合、残容量が第1目標値よりも多い所定の第2目標値未満であるバッテリパック41のうちのいずれか1つを充電用バッテリパックとして決定し、決定した充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達するまで充電用バッテリパックを定電流充電する第3充電ステップと、を含む。
【0239】
上記電動作業機1及び電動作業機1の制御方法によれば、定電流充電と他の充電方式とを切り替えないため、当該充電用バッテリパックを安定して充電することができ、他の充電方式と切り換える場合に比べて制御を簡略化できる。また、一般にバッテリパックは、満充電付近では充電電流値を制限する必要があり充電速度が低下するが、上記構成によれば、充電用バッテリパックの充電が第1目標値まで完了すると充電用バッテリパックを他のバッテリパックに切り換える。これにより、複数のバッテリパックに対して効率よく充電を行うことができる。
【0240】
また、制御装置30は、充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達すると、充電用バッテリパックを、残容量が第2目標値未満である他のバッテリパック41のうちのいずれか1つに切り替え、切り替え後の充電用バッテリパックの残容量が第2目標値に達するまで当該充電用バッテリパックを定電流充電する第4充電処理を行う。
【0241】
上記構成によれば、定電流充電による充電効率が多いバッテリパック41を優先して充電したあと、複数のバッテリパック41のすべての残容量が第2目標値に達するよう充電を行うことができる。
【0242】
また、電動作業機1は、第1目標値を設定するための操作が可能な操作具5eを備え、制御装置30は、操作具5eに対する操作に基づいて、第1目標値を満充電未満の範囲で任意に設定する。
【0243】
上記構成によれば、作業者は、操作具5eを操作するという簡単な操作によって、所定のバッテリパック41を優先的に充電するか、複数のバッテリパック41のそれぞれの充電効率を向上させるか、を選択することができる。
【0244】
また、制御装置30は、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値未満から第1目標値に達し、且つ第1目標値未満のバッテリパック41がない場合、当該充電用バッテリパックを継続して定電流充電させる。
【0245】
上記構成によれば、充電用バッテリパックを切り換える回数を減らすことができ、複数
のバッテリパック41の充電効率を向上させることができる。
【0246】
また、第2目標値は、バッテリパック41が満充電されたときの残容量である。
【0247】
上記構成によれば、複数のバッテリパック41の残容量が第1目標値に達した場合、それぞれのバッテリパック41の残り容量を満充電まで充電することができる。これにより、複数のバッテリパック41の充電効率を向上させつつ、バッテリパック41を満充電まで充電することができる。
【0248】
また、制御装置30は、充電用バッテリパックの残容量が第1目標値以上である場合の定電流充電に用いる充電電流値を、第1目標値未満である場合の定電流充電の充電電流値よりも少なく設定する。
【0249】
上記構成によれば、残容量が比較的多くなって、充電効率が下がっている充電用バッテリパックの過電圧を抑制することができる。
【0250】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0251】
上述した実施形態では、本発明をバックホー等の電動作業機1に適用する場合の例について説明したが、本発明の適用対象はこれに限らず、例えば、ホイールローダ、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ等の他の建設機械に適用してもよく、トラクター、コンバイン、田植機、芝刈機等の農業機械に適用してもよい。
【0252】
また、第1実施形態及びその変形例の発明と、第2実施形態及びその変形例の発明は、適宜組み合わせることができ、その組み合わせは上述した例に限定されない。
【符号の説明】
【0253】
1 電動作業機
30 制御装置
41 バッテリパック
41a BMU(バッテリ監視装置)
46 電動モータ
E 作動機器
図1
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