(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094643
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】グラップルバケット装置
(51)【国際特許分類】
A01G 23/089 20060101AFI20240703BHJP
A01G 23/08 20060101ALI20240703BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A01G23/089
A01G23/08 501B
A01G23/08 501C
E02F3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211315
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】598099132
【氏名又は名称】松本システムエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】松本 良三
【テーマコード(参考)】
2D012
【Fターム(参考)】
2D012FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】立木の伐倒作業等における作業員の多大な負担を軽減するためのグラップルバケット装置の提供。
【解決手段】グラップルバケット装置30は、上下且つ水平方向に回動可能で且つそれ自体が回転可能なバケット32と、バケットの開口面との間で木材をグラップルする部材を備えたグラップル装置9と、バケットの一側端側に設けられた主カッター34と、他側端側に設けられた副カッター36と、主カッターをグラップルされた木材を切断するように動作させるシリンダ40と、副カッターを動作させるシリンダと、アーム側に取付けられたスイベルシャフトと、バケットにバケットと一体的に回転可能に取付けられたスイベルハウジングを備えたスイベルジョイントと、を有し、このスイベルジョイントは、両シリンダに油を供給することにより、主カッター及び副カッターを作動させて木材を切断することができるように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のアームに取付けられたグラップルバケット装置であって、
上下方向且つ水平方向に回動可能で且つそれ自体が回転可能なバケットと、
このバケットの開口面との間で木材をグラップルするグラップル部材を備え、このグラップル部材を上記バケットの開口部を閉じる方向に回動可能に上記バケットの開口基端部で枢支するグラップル装置と、
上記バケットの一側端側に設けられ、回動可能にバケットの開口基端部で枢支された主カッターと、
上記バケットの他側端側に設けられ、回動可能にバケットの開口基端部で枢支された副カッターと、
上記主カッターをバケットとグラップル部材によりグラップルされた木材を切断するように動作させる主カッター用シリンダと、
上記副カッターをバケットとグラップル部材によりグラップルされた木材を切断するように動作させる副カッター用シリンダと、
上記アーム側に取付けられたスイベルシャフトと、上記バケットにバケットと一体的に回転可能に取付けられたスイベルハウジングを備えたスイベルジョイントと、を有し、
このスイベルジョイントは、上記主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダに油を供給することにより、上記主カッター及び副カッターを作動させて木材を切断することができるように構成されている、グラップルバケット装置。
【請求項2】
上記スイベルジョイントは、上記主カッター及び副カッターの何れか一方のみが作動するように、油を上記主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダに供給する、請求項1に記載のグラップルバケット装置。
【請求項3】
上記スイベルジョイントは、上記主カッターが作動可能なときには、上記副カッターは上記バケット内に収納され、上記副カッターが作動可能なときには、上記主カッターは上記バケット内に収納されるように構成されている、請求項2に記載のグラップルバケット装置。
【請求項4】
上記スイベルジョイントのスイベルハウジングが上記バケットと一体で回転するとき、上記スイベルハウジングは、上記主カッター及び副カッターがそれぞれの所定の回転領域でのみ作動可能となるように構成されている、請求項1に記載のブラップルバケット装置。
【請求項5】
上記主カッターの作動可能な回転領域は、上記副カッターの作動可能な回転領域よりも大である、請求項4に記載のグラップルバケット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面の掘削と、木材のグラップル(掴持)と、さらにグラップルした木材を切断できるようにしたグラップルバケット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上下方向に回動する建設機械のアームの先端部に、上下方向に回動可能に設けたバケットと、このバットの開口幅と略同一間隔に離隔した2本のグラップル部材をバケットの開口基端部に、バケットの開口部を閉じる方向に回動可能に枢支してなるグラップル装置とを備えたグラップルバケット装置が記載されている。
【0003】
この従来のグラップルバケット装置について、
図1乃至
図3により説明する。
図1に示すように、建設機械の一部である車両1には、その基部が水平方向に回動可能であり且つ上下方向に回動可能なブーム2が取り付けられ、このブーム2の先端には、アーム3が連結されている。ブーム2には上下方向に回動するためのシリンダ4が取り付けられ、アーム3には同様にシリンダ5が取り付けられている。さらに、アーム3の先端には、グラップルバケット装置6が取り付けられている。
【0004】
図2及び
図3に示すように、グラップルバケット装置6は、アーム3の先端に上下方向に回動自在に連結されたブラケット7と、このブラケット7の先端に支持されたバケット8と、このバケット8の開口基端部にバケット8の開口部と対向する方向に回動自在に設けられグラップル装置9と、を備えている。
【0005】
ブラケット7の上部には、アーム3に沿って設けられたバケット用のシリンダ10がリンク機構11を介して連結されている。またバケット8はブラケット7内に設けた油圧モータ12により回転できるようになっている。このバケット8の先端部には、複数の掘削爪8aが設けられている。
【0006】
グラップル装置9は、バケット8の開口基部に設けられたブラケット13にバケット8の開口幅方向と平行に枢支された回転軸14と、この回転軸14の両端部にそれらの基部が固着され且つバケット8の開口部に対向して凹状に湾曲した2本のグラップル部材15a、15bを備えている。そして、これらのグラップル部材15a,15bの先端は、連結板16により連結されている。これらのグラップル部材15a、15bの間隔は、バケット8の開口幅と略同一になっているが、それぞれの先端部はバケット8の内側寸法より狭くなっていて、この先端部がバケット8の内壁面に沿ってバケット8の内側に少ない隙間をあけて入り込むようになっている。これらのグラップル部材15a、15bの幅が変る部分の外側段部がバケット8の開口縁に当接するストッパ17となっている。連結板16には鋸刃状のつかみ刃16aが設けられている。
【0007】
また、バケット8の基部に設けられたブラケット13の内側にグラップル用のシリンダ19が取り付けられ、このシリンダ19の一端部が、回転軸14に突設されたブラケット18に連結されている。このシリンダ19の伸縮動作によりグラップル部材15a、15bがバケット8に対して回動するようになっている。
【0008】
このような構造のグラップルバケット装置6においては、ブーム用シリンダ4とアーム用シリンダ5を伸縮動してブーム2とアーム3を上下方向に回動させると共にバケット用シリンダ10を伸縮動してバケット8を回動させることにより、グラップルバケット装置6の上下方向及び前後方向の位置の姿勢が変えることができ、さらにバケット8を油圧モータ12によりブラケット7に対して回転することによりバケット8の左右方向の姿勢を変えることができるようになっている。
【0009】
木材のグラップル作業時には、グラップル用のシリンダ19を伸縮動してグラップル部材15a、15bをバケット8に対して回動する。これにより
図3の鎖線で示すように、このグラップル部材15a、15bとバケット8の開口両側壁との間で木材20がグラップルされる。
【0010】
さらに、特許文献2には、特許文献1の装置の基本構造に対して、バケットの一端側に切断装置を取り付け、この切断装置により、木材をグラップルした状態で、立木を切断し、さらに長尺な木材を搬送する前に切断することができるようにして、作業員の負担を軽減したグラップルバケット装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-36355号公報
【特許文献2】特許第5911250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、大径の立木を切断するときには、先ず、「受け口作業」により立木の一方の側に切り込みを入れ、次に、「追い口作業」により他方の側を切断し、これにより、立木を伐倒していた。この作業は、作業員によるものであり、作業員の大きな負担になっていた。
【0013】
上述した特許文献2の装置を使用しても、この大径の立木の伐倒作業における作業員の負担を軽減することができない。そのため、この大径の立木の伐倒作業における作業員の負担を軽減することができる装置が要望されていた。
そのため、本発明の発明者らは、特許文献2の装置をベースにして、大径の立木を伐倒する際の作業者の多大な負担を軽減するための研究を鋭意押し進めることにより、本発明を見出したのである。
【0014】
本発明は、従来からの要望を満たすためになされたものであり、立木の伐倒作業等における作業員の多大な負担を軽減することができるグラップルバケット装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は、建設機械のアームに取付けられたグラップルバケット装置であって、上下方向且つ水平方向に回動可能で且つそれ自体が回転可能なバケットと、このバケットの開口面との間で木材をグラップルするグラップル部材を備え、このグラップル部材をバケットの開口部を閉じる方向に回動可能にバケットの開口基端部で枢支するグラップル装置と、バケットの一側端側に設けられ、回動可能にバケットの開口基端部で枢支された主カッターと、バケットの他側端側に設けられ、回動可能にバケットの開口基端部で枢支された副カッターと、主カッターをバケットとグラップル部材によりグラップルされた木材を切断するように動作させる主カッター用シリンダと、副カッターをバケットとグラップル部材によりグラップルされた木材を切断するように動作させる副カッター用シリンダと、アーム側に取付けられたスイベルシャフトと、バケットにバケットと一体的に回転可能に取付けられたスイベルハウジングを備えたスイベルジョイントと、を有し、このスイベルジョイントは、主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダに油を供給することにより、主カッター及び副カッターを作動させて木材を切断することができるように構成されている。
このように構成された本発明においては、グラップルバケット装置が、主カッターと副カッターを備え、2つのカッターが使用できるので、例えば、大径の立木を伐倒するとき、副カッターによる「受け口作業」で立木の一方の側(右側)に切り口を入れ、主カッターにより「追い口作業」で立木の他方の側(左側)を切断することにより、立木を伐倒することができる。これにより、作業者の負担が大幅に低減する。さらに、本発明においては、スイベルジョイントは、アーム側に取付けられたスイベルシャフトと、バケットにバケットと一体的に回転可能に取付けられたスイベルハウジングを備えており、このスイベルジョイントにより、主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダに油を供給して、主カッター及び副カッターを作動させて木材を切断することができるようにしているので、簡易な構造により、2つのカッターを作動させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、スイベルジョイントは、主カッター及び副カッターの何れか一方のみが作動するように、油を主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダに供給する。
このように構成された本発明においては、スイベルジョイントが、主カッター及び副カッターの何れか一方のみが作動するように、油を主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダに供給するので、スイベルジョイント、主カッター用シリンダ及び副カッター用シリンダの構造や油の流れを簡素化することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、スイベルジョイントは、主カッターが作動可能なときには、副カッターはバケット内に収納され、副カッターが作動可能なときには、主カッターはバケット内に収納されるように構成されている。
このように構成された本発明においては、スイベルジョイントが、主カッターが作動可能なときには、副カッターはバケット内に収納され、副カッターが作動可能なときには、主カッターはバケット内に収納されるように構成されているので、主カッターによる木材の切断と副カッターによる木材の切断を別々に行うことができ、上述した「受け口作業」や「追い口作業」等を容易に行うことができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、スイベルジョイントのスイベルハウジングがバケットと一体で回転するとき、スイベルハウジングは、主カッター及び副カッターがそれぞれの所定の回転領域でのみ作動可能となるように構成されている。
このように構成された本発明においては、スイベルジョイントのスイベルハウジングがバケットと一体で回転するとき、スイベルハウジングが、主カッター及び副カッターがそれぞれの所定の回転領域でのみ作動可能となるように構成されているので、主カッターや副カッターの作動可能な回転領域をそれらの使用用途により任意に設定することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、主カッターの作動可能な回転領域は、副カッターの作動可能な回転領域よりも大である。
このように構成された本発明においては、主カッターの作動可能な回転領域が、副カッターの作動可能な回転領域よりも大であるので、副カッターは限られた使用用途、主カッターは多くの使用用途に使用できる。例えば、副カッターは立木を伐倒するとき「受け口作業」に使い、主カッターは「追い口作業」及びこの「追い口作業」以外で例えば立木を伐倒した後にグラップルした横方向に延びる木材を切断することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のグラップルバケット装置によれば、立木の伐倒作業等における作業員の多大な負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来のグラップルバケット装置を備えた建設機械の車両を示す全体斜視図である。
【
図2】
図1のブラップルバケット装置を斜め下方からみた斜視図である。
【
図3】
図1のブラップルバケット装置を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるグラップルバケット装置を示す背面図である。
【
図5】
図4のA方向からみたグラップルバケット装置の右側面図である。
【
図6】
図4のB方向から見たグラップルバケット装置の左側面図である。
【
図7】
図4のC方向から見たブラップルバケット装置の下面図である。
【
図8】スイベルジョイントの回路図及びそのA―A線に沿って見た断面図である。
【
図9】主カッターが作動可能な状態を示すグラップルバケット装置の側面図及び主カッターが作動可能な状態のスイベルジョイントのスイベルハウジングの位置を示す回路図である。
【
図10】副カッターが作動可能な状態を示すグラップルバケット装置の側面図及び副カッターが作動可能な状態のスイベルジョイントのスイベルハウジングの位置を示す回路図である。
【
図11】スイベルジョイントの取付構造を示す部分側面図(及びA矢視図)である。
【
図12】立木を切断するときの「受け口作業」及び「追い口作業」を説明するための図である。
【
図13】本発明の実施形態によるブラップルバケット装置による立木を切断するときの「受け口作業」を説明するための図である。
【
図14】本発明の実施形態によるブラップルバケット装置による立木を切断するときの「追い口作業」を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるグラップルバケット装置を説明する。
本実施形態によるグラップルバケット装置は、上述した従来のグラップルバケット装置に2つの切断装置(カッター)を付加したものであり、そのため、以下の説明において、従来の装置の構成と同一のものには同一符号を付して説明する。
【0023】
先ず、
図4乃至
図7により、本実施形態によるグラップルバケット装置の基本構造について説明する。
図4は本発明の実施形態によるグラップルバケット装置を示す背面図であり、
図5は
図4のA方向からみたグラップルバケット装置の右側面図であり、
図6は
図4のB方向から見たグラップルバケット装置の左側面図であり、
図7は
図4のC方向から見たブラップルバケット装置の下面図である。
【0024】
図4乃至
図7に示すように、本実施形態によるグラップルバケット装置30は、上述したアーム3の先端に上下方向に回動自在に連結されるブラケット7と、このブラケット7の先端にアーム3の延長方向の軸心を中心にして回転自在に支持されたバケット32と、このバケット32の開口基端部にバケット32の開口部と対向する方向に回動自在に設けたグラップル装置9と、バケット32の幅方向の両側部のそれぞれに設けられた切断装置である主カッター34及び副カッター36を備えている。
図4に示すように、背面から見て(車両1の運転席から見て)、主カッター34はバケット32の右側に設けられ、副カッター36はバケット32の左側に設けられている。
【0025】
図7に示すように、バケット32には、その右側の側壁32aと、この側壁32aの外側へ主カッター34が回動可能な隙間をあけて設けられた枠壁32bとからなる押し切り受け枠38が設けられている。主カッター34は、この押し切り受け枠38により形成された隙間内を回動するようになっている。さらに、
図5に示すように、主カッター34を回動駆動するための主カッター用シリンダ40が設けられている。
【0026】
同様に、
図7に示すように、バケット32には、その左側の側壁32cと、この側壁32cの外側へ副カッター36が回動可能な隙間をあけて設けられた枠壁32dとからなる押し切り受け枠42が設けられている。副カッター36は、この押し切り受け枠42により形成された隙間内を回動するようになっている。さらに、
図6に示すように、副カッター36を回動駆動するための副カッター用シリンダ44が設けられている。
【0027】
側壁32a、32c及び枠壁32b、32dを備えた押し切り受け枠38、42のそれぞれの開放側の形状は、バケット32の開放側の形状と同じ凹円弧状に形成され、グラップル装置9のグラップル部材15a,15bにてグラップルされた木材Wの外周が沿う形状になっている。
【0028】
図5に示すように、主カッター34は、上述したグラップル装置9のシリンダ19にて回転される回転軸14に、グラップル装置9とは別に、回転自在に取付けられており、主カッター34に設けられたアーム46が主カッター用シリンダ40の先端に連結されており、この主カッター用シリンダ40の伸縮動により、主カッター34が、押し切り受け枠38に対して出没する方向に回動するようになっている。
【0029】
同様に、
図6に示すように、副カッター36は、上述したグラップル装置9のシリンダ19にて回転される回転軸14に、グラップル装置9とは別に、回転自在に取付けられており、副カッター36に設けられたアーム48が副カッター用シリンダ44の先端に連結されており、この副カッター用シリンダ44の伸縮動により、副カッター36が、押し切り受け枠38に対して出没する方向に回動するようになっている。
【0030】
図5に示すように、主カッター34は、押し切り受け枠38内に没入する側の側縁が切刃34aとなっており、この切刃34aは、押し切り受け枠38側への回動方向に対して後退する方向に円弧状に反らされた形状となっている。ここで、切刃34aの円弧状の形状には、複数の曲率半径の円弧を組合せたものや、複数の直線を組み合わせたものが含まれる。この主カッター34の切刃34aは、主カッター34の回動中心O1とアーム46の主カッター用シリンダ40との連結点O2を結ぶ線に対してバケット32の開口縁側へずれた位置に設けられている。
【0031】
同様に、
図6に示すように、副カッター36は、押し切り受け枠42内に没入する側の側縁が切刃36aとなっており、この切刃36aは、押し切り受け枠42側への回動方向に対して後退する方向に円弧状に反らされた形状となっている。ここで、切刃36aの円弧状の形状には、複数の曲率半径の円弧を組合せたものや、複数の直線を組み合わせたものが含まれる。この副カッター36の切刃36aは、副カッター36の回動中心O3とアーム48の副カッター用シリンダ44との連結点O4を結ぶ線に対してバケット32の開口縁側へずれた位置に設けられている。
【0032】
本実施形態によるブラップルバケット装置30においては、
図5に示されているように、主カッター34により木材を切断するときには、副カッター36は、バケット32内に収納されており、一方、
図6に示されているように、副カッター36により木材を切断するときには、主カッター34は、バケット32内に収納されている。このように、本実施形態においては、主カッター34と副カッター36の両方が同時に使用される(同時に木材を切断する)ことないようになっている。
【0033】
次に、
図8乃至
図11により、上述した主カッター34及び副カッター36を作動させるためのスイベルジョイントについて説明する。
図8(a)に示すように、スイベルジョイント50は、スイベルシャフト52とスイベルハウジング54を備えている。本実施形態においては、スイベルシャフト52は、本体側であるブラケット7に固定されており、回転しないようになっている。スイベルハウジング54は、バケット32に固定されており、バケット32と一体的に360度連続回転できるようになっている。
【0034】
図8(a)(b)に示すように、スイベルシャフト52には、外部の油圧ポンプから油をスイベルシャフト52内に供給する入口ポート56と、スイベルシャフト52外へ油を排出する出口ポート58とが形成されている。
さらに、スイベルシャフト52のB―B線に沿った断面の部分に、スイベルシャフト52の表面に270度の範囲(油が流れる範囲)の溝60(
図8(a)、
図9(c)、
図10(c)参照)が形成されている。同様に、スイベルシャフト52のC―C線に沿った断面の部分に、スイベルシャフト52の表面に30度の範囲(油が流れる範囲)の溝62(
図8(a)、
図9(b)、
図10(b)参照)が形成されている。
【0035】
スイベルハウジング54には、A―A線に沿った断面の部分にB7ポートが形成され、B―B線に沿った断面の部分にA7ポートが形成され、C―C線に沿った断面の部分にA8ポートが形成されている。
さらに、スイベルハウジング54のA―A線に沿った断面の部分の内周側には、円環形状の溝64(
図8(b)参照)が形成されている。
【0036】
図8(a)に示すように、スイベルハウジング54のB7ポートは、主カッター用シリンダ40の閉ポートに接続され、且つ、副カッター用シリンダ42の閉ポートにも接続されている。上述した円環形状の溝64により、B7ポートがどの位置にあっても、B7ポートからは、主カッター用シリンダ40及び副カッター用シリンダ42の両方に油が流れるようになっている。
【0037】
さらに、スイベルハウジング54のA8ポートは、副カッター用シリンダ42の閉ポートに接続されている。また、スイベルハウジング54のA7ポートは、主カッター用シリンダ42の開ポートに接続され、この開ポートから油を出口ポート58に排出することができるようになっている。
【0038】
次に、
図11により、スイベルジョイントの取付構造について説明する。
図11に示すように、スイベルジョイント50のスイベルシャフト52は、ブラケット7の先端部に取付けられたシャフト固定板70に取付け固定されている。このため、スイベルシャフト52は、回転しない状態となっている。
【0039】
次に、スイベルハウジング54のブラケット7の側は、直径D1の円形で形成され、一方、ハウジング32の側は、平行な2面で形成された2面幅W1(W1<D1)を持つ形状で形成されている。これに対し、バケット32の背板72にも、同様な2面幅W1を持つ形状の開口74が形成されている。スイベルハウジング54の2面幅W1を持つ部分が、このバケット32の2面幅W1を持つ開口74に挿入されることにより、スイベルハウジング54の2面幅の部分とバケット32の2面幅の部分とが嵌合し、スイベルハウジング54がバケット32に固定されるようになっている。これにより、スイベルハウジング54は、バケット32と一体となって360度回転可能となっている。
【0040】
次に、
図8乃至
図10によりスイベルジョイン50の動作について説明する。
先ず、
図9(a)に示すように、副カッター36がバケット32内に収納され、主カッター34が作動可能な状態のとき、副カッター用シリンダ44においては、
図9(b)に示すように、スイベルジョイント50のB7ポートからシリンダ44の閉ポートに油が流れるが、スイベルジョイント50のA8ポートが閉じているので、シリンダ44の開ポートからA8ポートに油は流れない。このため、副カッター36は、バケット32内に収容された状態で動作しないようになっている。
【0041】
一方、主カッター用シリンダ40においては、
図9(c)に示すように、スイベルジョイント50のB7ポートからシリンダ40の閉ポートに油が流れ、さらに、スイベルジョイント50のA7ポートも開いているので、シリンダ40の開ポートからA7ポートに油が流れるようになっている。これにより、主カッター34は、作動可能であり、木材を切断することができる。
【0042】
次に、
図10(a)に示すように、主カッター34がバケット32内に収納され、副カッター36が作動可能な状態のとき、カッター用シリンダ40においては、
図10(c)に示すように、スイベルジョイント50のB7ポートからシリンダ40の閉ポートに油が流れるが、スイベルジョイント50のA7ポートが閉じているので、シリンダ40の開ポートからA7ポートに油は流れない。このため、主カッター34は、バケット32内に収容された状態で動作しないようになっている。
【0043】
一方、副カッター用シリンダ44においては、
図10(c)に示すように、スイベルジョイント50のB7ポートからシリンダ44の閉ポートに油が流れ、さらに、スイベルジョイント50のA8もポートも開いているので、シリンダ44の開ポートからA8ポートに油が流れるようになっている。これにより、副カッター36は、作動可能であり、木材を切断することができる。
【0044】
次に、
図12乃至
図14により、上述した本実施形態によるブラップルバケット装置30の動作について説明する。
図12は立木を切断するときの「受け口作業」及び「追い口作業」を説明するための図であり、
図13は本実施形態によるブラップルバケット装置による立木を切断するときの「受け口作業」を説明するための図であり、
図14は本実施形態によるブラップルバケット装置による立木を切断するときの「追い口作業」を説明するための図である。
【0045】
先ず、
図12に示すように、立木Wを伐倒する際には、先ず、「受け口作業」を行って木材Wの一方の側(右側)に切り込み(受け口E)を入れ、次に、「追い口作業」により他方の側(左側)を切断し(追い口F)、これにより、立木Wを矢印Rで示す右側に伐倒する。以下、本実施形態のグラップルバケット装置50による伐倒作業について説明する。
【0046】
先ず、
図13(b)に示すように、グラップルブラケット装置30を、ブーム2とアーム3を操作して立木Wの地面の近くまで移動させ、次に、上述した油圧モータ12(
図3参照)により、ブラップルバケット50を回転させて、主カッター34が上方で副カッター36が下方となる立木Wに沿った垂直方向の姿勢とする。このとき、
図13(a)に示すように、ブラップルバケット装置50において、主カッター34はバケット32内に収納された状態であり、副カッター36は、作動可能な状態となっている。
この
図13(b)に示す状態から、副カッター36を作動させて、「受け口作業」を行うことにより、立木Wの一方の側(右側)に切り込み(受け口E)を入れる。
【0047】
次に、グラップルバケット装置30を、
図13(b)に示す姿勢から、ブーム2の基部を回転させて、立木Wから離し、次に、上述した油圧モータ12(
図3参照)により、ブラップルバケット装置30を180度回転させて、副カッター36が上方で主カッター34が下方となる立木Wに沿った垂直方向の姿勢とする。このとき、
図14(a)に示すように、ブラップルバケット装置50において、副カッター36はバケット32内に収納された状態であり、主カッター34は、作動可能な状態となっている。
この
図14(b)に示す状態から、主カッター34を作動させて、「追い口作業」を行うことにより、立木Wの他方の側(左側)を切断して「追い口F」を入れる。
この状態で、立木Wに横方向の力を作用させ、立木WをR方向に伐倒し、作業が完了する。
【0048】
本実施形態によるグラップルバケット装置30においては、副カッター36の可動範囲は、
図10(b)に示すように、30度という狭い範囲であるので、副カッター36は、主に、上述した「受け口作業」に使用するようになっている。
【0049】
これに対し、主カッター36の可動範囲は、
図9(c)に示すように、270度という広い範囲となっている。このため、主カッター36は、上述した「追い口作業」以外の種々な使い方が可能となっている。例えば、立木Wを伐倒した後、グラップルバケット装置30により、その姿勢を水平方向に変更して、木を横方向にグラップルし、その状態で、主カッター34により、木を切断するようなことも可能である。
【0050】
以下、本実施形態によるグラップルバケット装置の作用効果を説明する。
本実施形態によるグラップルバケッ30は、建設機械のアーム3に取付けられ、上下方向且つ水平方向に回動可能で且つそれ自体が回転可能なバケット32と、このバケット32の開口面との間で木材をグラップルするグラップル部材15a、15bを備え、このグラップル部材15a、15bをバケット32の開口部を閉じる方向に回動可能にバケット32 の開口基端部で枢支するグラップル装置9と、バケット32の一側端側に設けられ、回動可能にバケット32の開口基端部で枢支された主カッター34と、バケット30の他側端側に設けられ、回動可能にバケット30の開口基端部で枢支された副カッター36と、主カッター34をバケット32とグラップル部材15a、15bによりグラップルされた木材Wを切断するように動作させる主カッター用シリンダ40と、副カッター36をバケット32とグラップル部材15a、15bによりグラップルされた木材Wを切断するように動作させる副カッター用シリンダ44と、アーム側に取付けられたスイベルシャフト52と、バケット32にバケット32と一体的に回転可能に取付けられたスイベルハウジング54を備えたスイベルジョイント50と、を有し、このスイベルジョイント50は、主カッター用シリンダ40及び副カッター用シリンダ44に油を供給することにより、主カッター34及び副カッター36を作動させて木材Wを切断することができるように構成されている。
【0051】
このように構成された本実施形態においては、グラップルバケット装置30が、主カッター34と副カッター36を備え、2つのカッターが使用できるので、例えば、大径の立木Wを伐倒するとき、副カッター36による「受け口作業」で立木Wの一方の側(右側)に切り口を入れ、主カッター34により「追い口作業」で立木Wの他方の側(左側)を切断することにより、立木Wを伐倒することができる。これにより、作業者の負担が大幅に低減する。さらに、本実施形態においては、スイベルジョイント50は、アーム側に取付けられたスイベルシャフト52と、バケット32にバケット32と一体的に回転可能に取付けられたスイベルハウジング54を備えており、このスイベルジョイント50により、主カッター用シリンダ40及び副カッター用シリンダ44に油を供給して、主カッター34及び副カッター36を作動させて木材Wを切断することができるようにしているので、簡易な構造により、2つのカッターを作動させることができる。
【0052】
本実施形態において、スイベルジョイント50は、主カッター34及び副カッター36の何れか一方のみが作動するように、油を主カッター用シリンダ40及び副カッター用シリンダ44に供給する。
このように構成された本実施形態によれば、スイベルジョイント50、主カッター用シリンダ40及び副カッター用シリンダ44の構造や油の流れを簡素化することができる。
【0053】
本実施形態において、スイベルジョイント50は、主カッター34が作動可能なときには、副カッター36はバケット32内に収納され、副カッター36が作動可能なときには、主カッター34はバケット32内に収納されるように構成されている。
このように構成された本実施形態によれば、主カッター34による木材Wの切断と副カッター36による木材Wの切断を別々に行うことができ、「受け口作業」や「追い口作業」等を容易に行うことができる。
【0054】
本実施形態において、スイベルジョイント50のスイベルハウジング54がバケット32と一体で回転するとき、スイベルハウジング54は、主カッター34及び副カッター36がそれぞれの所定の回転領域でのみ作動可能となるように構成されている。
このように構成された本実施形態によれば、主カッター34や副カッター36の作動可能な回転領域をそれらの使用用途により任意に設定することができる。
【0055】
本実施形態において、主カッター34の作動可能な回転領域は、副カッター36の作動可能な回転領域よりも大である。
このように構成された本実施形態によれば、副カッター36は限られた使用用途、主カッター34は多くの使用用途に使用できる。例えば、副カッター36は立木Wを伐倒するとき「受け口作業」に使い、主カッター36は「追い口作業」及びこの「追い口作業」以外で例えば立木Wを伐倒した後にグラップルした横方向に延びる木材を切断することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 車体
2 ブーム
3 アーム
7 ブラケット
9 グラップル装置
10 バケット用シリンダ
11 リンク機構
12 油圧モータ
13 ブラケット
14 回転軸
19 シリンダ
30 グラップルバケット装置
32 バケット
34 主カッター
36 副カッター
40 主カッター用シリンダ
44 副カッター用シリンダ
50 スイベルジョイント
52 スイベルシャフト
54 スイベルハウジング
56 入口ポート
58 出口ポート
60、62、64 溝
70 シャフト固定板
72 背板
74 開口