(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094646
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20240703BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L21/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211320
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】松林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】片寄 眞也
(72)【発明者】
【氏名】天野 滋子
【テーマコード(参考)】
3H015
3J106
【Fターム(参考)】
3H015AA05
3H015AC02
3H015BA01
3H015BB01
3H015BC02
3H015FA06
3J106AA06
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE01
3J106BE29
3J106CA02
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC01
3J106ED13
3J106EE02
(57)【要約】
【課題】樹脂管挿入の際、継手内に設けられたシールリングを確実に押して縮径しつつ挿入抵抗力の増大を軽減し、かつ管の先端がシールリングに引っ掛かることなく正確な管の接合ができると共に、管の挿入感を著しく改善させる。
【解決手段】継手本体2の内外筒11、12の差込み間隙G内に挿入した状態で接合する管10を案内する挿入ガイド6と、内筒11の外周面14に装着したシールリング3を有する。挿入ガイド6の内周面6aに先端側から後端側に向かう中心軸P方向に沿ってシールリング3の初期状態の外径よりも大きい径から小さい径となるように順次縮径していくテーパ状の押圧部位30を設け、押圧部位30よりも拡径する拡径部位31を挿入ガイド6の中心軸P方向に沿った逃げ溝として部分的に形成し、押圧部位30でシールリング3を押しつぶしながら逃げ溝31に逃げ込ませることによって管10の挿入抵抗力を軽減するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体の内外筒の差込み間隙内に挿入した状態で接合する管を案内する挿入ガイドと、前記内筒の外周面に装着したシールリングを有する管継手において、前記挿入ガイドの内周面に先端側から後端側に向かう中心軸方向に沿って前記シールリングの初期状態の外径よりも大きい径から小さい径となるように順次縮径していくテーパ状の押圧部位を設け、前記押圧部位よりも拡径する拡径部位を前記挿入ガイドの中心軸方向に沿った逃げ溝として部分的に形成し、前記押圧部位で前記シールリングを押しつぶしながら前記逃げ溝に逃げ込ませることによって管の挿入抵抗力を軽減するようにしたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記拡径部位は、前記シールリングの初期状態の外径よりも拡径した部位である請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記拡径部位は、前記逃げ溝の先端から後端までにわたり、前記挿入ガイドの中心軸から同径の位置が、前記中心軸方向から見て最も底部となるように設けられている請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記拡径部位の前記逃げ溝は、前記挿入ガイドの中心軸方向の後端側に沿って前記押圧部位が前記シールリングを押しつぶす後端領域である請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記押圧部位と前記拡径部位とが周方向になだらかにつながるように交互に設けられている請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項6】
初期状態の前記シールリングの外周と前記拡径部位との間で形成される空間の体積が、前記挿入ガイドの前記押圧部位によって押しつぶされる分の前記シールリングの体積と同じかそれよりも大きくした請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項7】
前記挿入ガイドの後端面は、後端面外周側が中心軸方向に対して先端側へ傾斜した傾斜面である請求項1に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、住宅設備の給水や給湯用の配管に、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの管をワンタッチで接続するための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅設備等の給水給湯配管は、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管を用いて施工されることが多く、これらの管を接続する場合、施工が容易であることから、挿入するだけでこの管を接続可能な、いわゆるワンタッチ式の管継手が用いられることが多い。このようなワンタッチ式管継手において、内周側に流路を有する内筒と、外筒とが設けられ、これら内筒と外筒との間に管を挿入して接続できるようにしたものが知られている。この管継手では、内筒の外周に環状の装着溝が形成され、この装着溝にOリングなどのシールリングが装着され、このシールリングによって管の内周をシールすることで接合後の外部への漏れを防ぐようになっている。
【0003】
このような管継手では、管先端のシールリングへの引っ掛かりによりこのシールリングを傷付けないようにしつつ、シールリング全体を装着溝と管内周との間に十分に押しつぶして確実にシールする必要がある。そのため、一般に、挿入ガイドと呼ばれる環状のガイド部材が用いられることが多く、この挿入ガイドは、管継手の内筒と外筒との間に装着され、接続用の管の先端側で押圧されて、その内周側がシールリングに対して摺動しながら管継手の奥側に移動することで、管を所定の接続位置まで案内可能になっている。
【0004】
この種の挿入ガイドを用いた管継手として、例えば、特許文献1が開示されている。この管継手における挿入ガイドは、テーパ付リングからなり、軸心方向に対しその内周側には、前方拡がり状の円周状のフラットなテーパ面が先端側から後端側まで設けられている。樹脂管を接続する際には、挿入ガイドの後端面に樹脂管の先端面を押し付けつつ接続方向に挿入することで、管端面の接触によるシールリングの傷付きを防ぎつつ、挿入ガイドのテーパ面がシールリングを徐々に圧縮しながら装着溝に押しこむことで、挿入をスムーズにしようとしている。
【0005】
一方、特許文献2の管継手における挿入ガイド(パイプ誘導環体)は、軸心方向に対して傾斜する環状のテーパ部が内周面先方側に設けられ、このテーパ部に続けて軸心方向に対して平行な環状のストレート部が内周後端側までが設けられている。樹脂管を接続する際には、先ず、挿入ガイドのテーパ面がシールリングを徐々に圧縮し、続いて、ストレート部がシールリングを摺動するようになっている。このようにストレート部を設けることにより、挿入ガイドが安定姿勢を維持しつつシールリングをスムーズに乗り越えるようにしながら樹脂管接続をおこなうことが可能であるとしている。
【0006】
さらに、特許文献3には、管装着方向の後方側に、ガイド部が周方向に間隔をあけて複数形成されている管継手用ガイドリングが示されている。ガイド部は、後方側ほど周方向の幅が小さくなるように先細り形状(略三角形状)に形成されており、このガイド部が径方向に弾性変形し易いことで、管の内周面に対するガイド部の追従性がよくなり、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力が弱められ、管を挿入する力を低減できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-232692号公報
【特許文献2】特開2008-291886号公報
【特許文献3】特開2013-36542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者の特許文献1における挿入ガイドの場合、前方拡がり状のテーパ面が挿入ガイド内周の先端側から後端側まで設けられているため、樹脂管の接続時には、この樹脂管の挿入に伴ってシールリングとの摺動により生じる挿入抵抗が比例するように増加し続けるという問題がある。これにより、樹脂管を挿入しにくくなり、挿入感(挿入時の手応え)が悪くなるという問題を有している。これに加えて、シールリングが挿入ガイドのテーパ面によって過剰に圧縮されて装着溝に充填された状態で、さらにシールリングにテーパ面から押圧力が加わることでシールリングの逃げ場が無くなり、挿入抵抗が過大になったり瞬間的に増加するおそれもある。
【0009】
その上、斜め切りの樹脂管を接続する場合には、樹脂管の先方側から挿入ガイド端面に偏位荷重が加わることでより挿入抵抗がより大きくなり、挿入感が悪化して樹脂管を正確に接続できなくなることもある。
挿入ガイドからシールリングの全体や一部に過大な力が加わり続けることにより、シールリングがねじれたり脱落した状態で樹脂管が接続され、シール性を確保できなくなる可能性もある。
【0010】
一方、後者の特許文献2の管継手の場合には、挿入ガイドの内周面先方側に設けたテーパ部に続けて、その内周後端側までストレート部を設けていることで、後端側付近においては、樹脂管接続時にストレート部でシールリングを押圧して挿入抵抗の比例的な増加を抑えることは可能になる。
しかし、このように挿入ガイドの内周後端側にストレート部を設けた場合には、このストレート部ではシールリングに対する押圧力が不足して、シールリングを装着溝に対して十分に押しつぶした状態で装着できなくなる可能性がある。この場合、挿入ガイドに続けて樹脂管を継手本体に挿入するときに、シールリングが樹脂管先端に引っ掛かって傷付いたりすることで、樹脂管を正確に装着できなくなることにもつながる。
【0011】
さらに、特許文献3の管継手用ガイドリングによると、ガイド部が弾性シール部材を押さえつける力が弱められるため、シールリングを管に挿入するまでの抵抗力を低減するには不利となるおそれがある。
【0012】
これらのことから、シールリングへの管の引っ掛かりによる傷などを防いでシール性を確保した状態で管をガイドできる挿入ガイドとしながら、シールリングの押しつぶしによる過大な挿入抵抗力の増加を防ぎつつ、その挿入感を向上してスムーズに管を挿入して適切に接合できる挿入ガイドを備えた管継手の開発が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、樹脂管挿入の際、継手内に設けられたシールリングを確実に押して縮径しつつ挿入抵抗力の増大を軽減し、かつ管の先端がシールリングに引っ掛かることなく正確な管の接合ができると共に、管の挿入感を著しく改善させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手本体の内外筒の差込み間隙内に挿入した状態で接合する管を案内する挿入ガイドと、内筒の外周面に装着したシールリングを有する管継手において、挿入ガイドの内周面に先端側から後端側に向かう中心軸方向に沿ってシールリングの初期状態の外径よりも大きい径から小さい径となるように順次縮径していくテーパ状の押圧部位を設け、押圧部位よりも拡径する拡径部位を挿入ガイドの中心軸方向に沿った逃げ溝として部分的に形成し、押圧部位でシールリングを押しつぶしながら逃げ溝に逃げ込ませることによって管の挿入抵抗力を軽減するようにした管継手である。
【0015】
請求項2に係る発明は、拡径部位は、シールリングの初期状態の外径よりも拡径した部位である管継手である。
【0016】
請求項3に係る発明は、拡径部位は、前記逃げ溝の先端から後端までにわたり、挿入ガイドの中心軸から同径の位置か、中心軸方向から見て最も底部となるように設けられている管継手である。
【0017】
請求項4に係る発明は、拡径部位の逃げ溝は、挿入ガイドの中心軸方向の後端側に沿って押圧部位がシールリングを押しつぶす後端領域である管継手である。
【0018】
請求項5に係る発明は、押圧部位と拡径部位とが周方向になだらかにつながるように交互に設けられている管継手である。
【0019】
請求項6に係る発明は、初期状態のシールリングの外周と拡径部位との間で形成される空間の体積が、挿入ガイドの押圧部位によって押しつぶされる分のシールリングの体積と同じかそれよりも大きくした管継手である。
【0020】
請求項7に係る発明は、挿入ガイドの後端面は、後端面外周側が中心軸方向に対して先端側へ傾斜した傾斜面である管継手である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、挿入ガイド内周面のテーパ状の押圧部位で継手内に設けられたシールリングを押しつぶしながら逃げ溝に逃げ込ませるように変形させることで、逃げ溝を設けない場合に比べて、シールリングが押圧部位で押しつぶされた分の圧縮による反発力を小さくでき、これによりシールリングの押しつぶしに伴う挿入抵抗力の増大を軽減し、かつ、テーパ状押圧部位によりシールリングを徐々に圧縮しつつ管の内部に導入することにより、管の先端がシールリングに引っ掛かってこのシールリングを傷つけたり、シールリングのねじれや脱落を生じることなく挿入ガイドにより管を接合できる。これにより、管を所定の状態に正確に接合でき、管の挿入感を著しく改善させることができる。
【0022】
請求項2に係る発明によると、拡径部位をシールリングの初期状態の外径よりも拡径した部位とすることで、拡径部位がシールリングを押しつぶすことを阻止し、管挿入時の拡径部位とシールリングとの接触による挿入抵抗力の増加を防いでいる。シールリングに拡径部位が到達したときには、この拡径部位が逃げ溝として機能することで、押圧部位によるシールリングの押しつぶしによる挿入抵抗力の増加分を吸収することができるので、管挿入時の抵抗を軽減して挿入感を一層向上することが可能になる。
【0023】
請求項3に係る発明によると、後端に向かって縮径する押圧部位に対して、拡径部位の深さが後端側ほど増すようになるため、押圧部位の順次縮径する形状に伴ってシールリングがつぶされる量が増すのに対して、そのつぶされた分を吸収するのに有利となり、挿入感がさらに向上する。
【0024】
請求項4に係る発明によると、拡径部位の逃げ溝が押圧部位がシールリングを押しつぶす後端領域であることにより、挿入ガイドを挿入するにつれてテーパ状押圧部位により増加するシールリングの変形部分を確実に逃げ溝に逃がし、シールリングを過剰に圧縮することなく挿入ガイドを挿入できる。これにより、挿入抵抗が過大になったり、瞬間的に増加することを防いで挿入感を向上できる。管がシールリングに到達したときには、このシールリングにおける、それまで挿入ガイドの押圧部位で押圧していた部分と逃げ溝に逃がしていた部分とを確実に管内周面まで案内し、高シール性を発揮した状態で管を接合して密封性を向上できる。
【0025】
請求項5に係る発明によると、挿入ガイド内周面に設けられる凸状の押圧部位と凹状の拡径部位とが周方向に交互になだらかにつながっていることで、挿入ガイドのガイド時の基準径となる基準ガイド径に沿う部位によって押しつぶされるシールリングが、押圧部位から拡径部位に変形しながら移動することが容易になり、挿入抵抗力を一層軽減できる。
【0026】
請求項6に係る発明によると、挿入ガイドの内周面によって押しつぶされる分のシートリングのほぼ全部が、確実に拡径部位に逃げこむように変形できるので、挿入抵抗力の軽減効果がさらに向上する。
【0027】
請求項7に係る発明によると、管の先端が垂直に切断されている場合、及び斜め切り状態に切断されている何れの場合であっても、管を挿入したときにその先端内径側に対して、常に挿入ガイド後端面の内径側の角部が面である管端面に当接する、角当りの状態にできる。そのため、挿入ガイドは、その内径側に設けられる角部においてのみ管からの押込み力を受けて、全周方向に渡って均一に押し込まれる。これにより、管先端の切断形状に影響されることなく安定して挿入ガイドによってこの管をガイドしつつ、確実に継手本体内の所定位置まで挿入して強固に固定することができる。
このように、挿入ガイド後端面の角部に対して管の内径側が接触した内径当たりの状態となることで、その中心軸から内径当たりの接触位置までの距離が短くなるため、挿入ガイドの傾きを抑えつつ管を挿入し、挿入抵抗力を軽減した状態でスムーズな管の接合が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の管継手の実施形態を示す半截断面図である。
【
図2】
図1の管継手に管を挿入するときの初期状態を示す断面図である。
【
図4】(a)は、挿入ガイドの縦断面図である。(b)は、挿入ガイドの側面図である。
【
図5】挿入ガイドとシールリングとの関係を示す概念説明図である。
【
図6】
図2の状態から管を挿入した状態を示す断面図である。
【
図7】
図6の状態からさらに管を挿入した状態を示す断面図である。
【
図8】管の挿入が完了した状態を示す断面図である。
【
図9】斜め切りの管を挿入する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明における管継手の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明における管継手の実施形態の半截断面図を示しており、
図2においては、
図1の管継手に管を挿入する初期状態の断面図、
図3においては、挿入ガイドの斜視図を示している。
【0030】
図において、本発明における管継手(以下、管継手本体1という)は、継手本体2、シールリング3、キャップ4、ロックリング5を有し、管継手本体1内には挿入ガイド6が装着されている。管継手本体1は、例えば、給水・給湯用の管10をワンタッチで接続して抜け止め状態で接合可能に設けられ、この接合用の管10は、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管により設けられる。管10は、これら以外にも、金属強化ポリエチレン管等の各種の樹脂管、或は銅管等の金属管であってもよい。
【0031】
継手本体2には、内筒11が一体に形成され、この内筒11の外周側には別体に設けられた外筒12が取付けられる。これら内筒11と外筒12との間には差し込み間隙Gが形成され、この差込み間隙G内に、管10が挿入された状態で接合される。継手本体2は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂により筒状に形成され、内周側には通水用の流路口13が設けられる。内筒11は、管10の内径に応じた適宜の外径に設けられており、継手本体2とは別体に設けられていてもよい。
【0032】
内筒11の外周面14の管接合時の入口側には、この外周面14よりもやや拡径した拡径部15が設けられる。拡径部15は、内筒11の奥側に向けて拡径する拡径テーパ面部15aと、この拡径テーパ面部15aの終端側から円周面状に形成される拡径面部15bと、この拡径面部15bの終端側から奥側に向けて縮径する縮径テーパ面部15cとを有している。
【0033】
拡径テーパ面部15aは、接合用管10を案内可能な緩やかな適宜の角度に設けられ、この拡径テーパ面15aにより、斜め切りの管や寸法精度の低い管であっても拡径面部15bまで案内可能になる。拡径面部15bの外周には装着溝15dが形成され、この装着溝15dは、管10接合時の入口側と、この入口側よりも奥側との2ヶ所に形成される。各装着溝15d、15dには、例えば、EPDM等のゴム製のシールリング3がそれぞれ装着され、このシールリング3のシール側(管10とのシール側)には、環状の突出シール部3aが形成される。シールリング3は、後述するロックリング5とほぼ対向する位置に配設される。
【0034】
後述するように、入口側シールリング、奥側シールリングの各シールリング3は、管10接合後には、管10の内周面により押し潰された状態でそれぞれの装着溝15d内に収容される。
このように、管継手本体1は、管10の内周をシールリング3で密封シールしつつ、ロックリング5で抜け出しを阻止する内周シール構造のワンタッチ継手構造になっている。
【0035】
継手本体2の略中央付近の外周囲には凹凸状の係合部16が形成され、この係合部16を介して外筒12が装着される。継手本体2の内筒11の形成側との反対側(管接合側と他端側)には、雄ネジ部17が設けられ、この雄ネジ部17には図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部の配管が接続される。継手本体2は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などに設けられていてもよい。
【0036】
外筒12は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの樹脂により透明或は半透明に設けられ、この外筒12の外部から管10や挿入ガイド6の挿入状態を透視可能に設けられる。
【0037】
外筒12の継手本体2への取り付け側の内周には、継手本体2の係合部16とスナップ嵌合可能な係合部18が設けられ、また、継手本体2における係合部18との他端側の外周には、凹凸状の係合段部19が設けられている。外筒12は、係合部16のスナップ嵌合により継手本体2に一体化され、嵌合後には、外筒12と継手本体2とが相互に回転可能に設けられる。外筒12の内径は、管10の外径の寸法と略同じかやや大きい寸法に設けられ、管10が無理なくその内周面側に挿入できるようになっている。外筒12内周における管10の挿入側には、内向きのテーパ面20とこのテーパ面20からなだらかにつながるR面21が形成されている。外筒12内周の所定位置には、その内周面からやや拡径した凹状収納部22が所定長さにより設けられる。
【0038】
図3、
図4(a)、
図4(b)に示した挿入ガイド6は、管継手本体1内に管10を案内可能に設けられ、継手本体2の内筒11と外筒12との差込み間隙Gに挿入される。挿入ガイド6は、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂製、或は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの軟質樹脂製などを材料として形成される。
【0039】
挿入ガイド6の内周面6aには、その内周方向に凸状の押圧部位30が設けられ、この押圧部位30は、その先端側から後端側に向かう中心軸P方向に沿ってシールリング3の初期状態の外径よりも大きい径から小さい径となるように順次縮径していくテーパ状に形成される。ここで、「挿入ガイドの先端」とは、挿入ガイド6の継手本体2への挿入側であり、一方、「挿入ガイドの後端」とは、挿入ガイド6の先端の反対側を意味し、この挿入ガイド後端に管10(の先端側)が接触可能になっている。
【0040】
さらに、挿入ガイド6の後端側の内周面6aには、押圧部位30よりも拡径するように、この押圧部位30に対して凹状となる拡径部位31が等間隔に設けられ、この拡径部位31は、挿入ガイド6の中心軸Pに沿った逃げ溝として部分的に形成され、押圧部位30でシールリング3を押しつぶしながらこのシールリング3を逃げ溝31に逃げ込ませるようになっている。これにより、管10の挿入時に、挿入ガイド6を介して管10の挿入抵抗力を軽減するようにしている。
【0041】
押圧部位30と拡径部位31は、挿入ガイド6の円周方向の任意の位置において、シールリング3押しつぶし量と逃げ込む量とがほぼ一致するように形成することが望ましい。
なお、本実施形態において、挿入ガイド6の中心軸、管10の中心軸(管軸)は、継手本体2の中心軸Pと一致するものとし、これらを同一符号によってあらわすものとする。
【0042】
上記の拡径部位31は、シールリング3の初期状態の外径、すなわち、シールリング3に外力が加わっていない状態における外径と同じか、それよりも拡径した部位となる大きさに形成される。これにより、シールリング3は、その初期状態において拡径部位31にちょうど接触するか、又は接触することが回避されるようになっている。
【0043】
これに加え、拡径部位31は、逃げ溝31の先端から後端にわたって形成され、この挿入ガイド6の中心軸Pから同径の位置が、中心軸P方向から見て最も底部となるように設けられている。
【0044】
拡径部位の逃げ溝31は、挿入ガイド6の中心軸P方向の後端側に沿って押圧部位30がシールリング3を押しつぶす後端領域である。すなわち、挿入ガイド6の挿入によってそのテーパ状押圧部位30でシールリング3を押しつぶすときに、挿入ガイド6の後端領域側において変形したシールリング3が拡径部位の逃げ溝31に逃げ込むようになっている。
【0045】
逃げ溝31は、挿入ガイド6の挿入時に、この挿入ガイド6の中心軸P方向において、シールリング3の外径と押圧部位30の内径とが略一致する位置付近から始まり、挿入ガイド6の後端側にかけて上記のように形成されていることが望ましい。
【0046】
押圧部位30と拡径部位31とは、挿入ガイド6の内周面6aにおいて、その周方向になだらかにつながるように交互に設けられる。本例においては、拡径部位31は、挿入ガイド6内周側の8ヶ所に円弧状に設けられ、それぞれの拡径部位31とこれに隣接する押圧部位30とが、緩やかなアール部位によって接続されている。
【0047】
本例における挿入ガイド6は、その内周面6aにおいて、先端側から後端側に向かって縮径する押圧部位30に対し、この押圧部位30に対して凹状の拡径部位31を設けるため、中心軸P方向に凸の押圧部位30と凹の拡径部位31とが、周方向に交互に配置される。そして、押圧部位30による凸部は、後端側に向かって縮径するので、後端側に向かって徐々にシールリング3のつぶし量が増大する。
【0048】
一方、本例では、拡径部位31を挿入ガイド6の先端側から後端側に向かって溝状に設け、その底部を中心軸Pから一定の距離に設けつつ、その周方向の幅が後端側に向かって徐々に広くなるようにしている。したがって押圧部位30の径位置から拡径部位31により囲まれる空間の体積は、後端側に向かって徐々に増大することになる。
【0049】
このような押圧部位30と拡径部位31との関係により、押圧部位30により徐々に増大するシールリング3の潰し量に対応して、潰されたシールリング3が逃げ込む拡径部位(逃げ溝)31を徐々に大きくすることができ、挿入ガイド6によるシールリング3の押しつぶしによる挿入抵抗力を軽減し、しかも先端側から後端側にわたって、ほぼ一定にすることが可能となる。
【0050】
そして、このように凸状の押圧部位30と凹状の拡径部位31とを交互に連続して設けることで、拡径部位31においても剛性を保ちつつシールリング3を抑えることが可能になるので、シールリング3のはみだし等を生じさせることなく、一定の径の範囲内におさえることが可能となる。その結果、例えば押圧部位30のみを隙間をあけつつ複数形成した場合に比べて、シールリング3を確実に押圧することが可能であり、拡径部位31にシールリング3の潰し分を逃がし、挿入力を軽減しながらも確実にシールリング3を管10内に挿入することが可能となる。
【0051】
拡径部位31の形状は、上記例のように、その深さが一定で幅を後端側に向けて広くする形態でもよいが、幅を一定とし、徐々に深さを深くする形態でもよく、またそれらの組み合わせてあってもよい。
【0052】
ここで、挿入ガイド6内周の押圧部位30によるシールリング3の押しつぶしと拡径部位31による逃げについて、
図5を参照して模式的に説明する。
図5において、挿入ガイド6をその後端側から見た端面図を示しており、押圧部位30が最も縮径され、拡径部位31がもっとも幅広となった状態を示している。図中の二点破線は、シールリング3の初期状態(挿入ガイド6による押圧前)の外径位置を示している。
【0053】
図5に示す通り、好適な場合、挿入ガイド6の拡径部位31の中心軸Pからみて底部となる位置の径は、初期状態のシールリング3の外径よりもやや大きい径とする。
図5に示す端面の位置で見ると、シールリング3が押圧部位30により圧しつぶされる分(つぶし量)は、図中のAで示される右上がりのハッチングで示した領域の断面積分となる。一方、同位置で見た場合、初期状態のシールリング3の外径位置と拡径部位31とで囲まれる空間は、図中のBの左上がりのハッチングで示した領域で示される断面積分となる。
【0054】
そして、理論的には、図中で示される領域Aにおいてシールリング3のつぶされた部分は、図中の領域B内に逃げ込むことで、シールリング3全体として一定の体積が維持され、シールリング3の圧縮に伴う挿入ガイド6内周面に対する摩擦力の増大、ひいては管10の挿入力の増大を防ぐことができる。
したがって、図中の領域Aと領域Bとは、領域A≦領域Bの関係を満たすようにすれば、押圧部位30と拡径部位31とを設けることによる管10の挿入力の増大を好適に低減することが可能となる。
【0055】
ただし、現実的には、シールリング3の多少の圧縮は、管10の挿入抵抗に影響しない場合もあり、また、シールリング3の潰し分は、内筒11の装着溝15dにも逃げることが可能であるため、上記の関係を満たすことが好ましいが、必ずしも厳密に満たす必要は無い。例えば、挿入ガイド6の拡径部位31の底部は、本実施例のように初期状態のシールリング3の外径よりもやや大きい径でなくてもよく、
図2に示すように、初期状態のシールリングの外径とほぼ同じ径としてもよい。その場合、本例のように、押圧部位30で押しつぶされたシールリング3が逃げ込む空間は形成されないが、シールリング3の押しつぶしによる応力は拡径部位31で緩和することができるので、挿入抵抗の軽減には十分に寄与することができる。本実施例においては、先端側から後端側に向かって、押圧部位30によるシールリング3のつぶし量が増大するのに対応して、拡径部位31による逃がし領域(押圧部位30の径位置と拡径部位31により囲まれる領域)が増大するように拡径部位31を設けることが好ましく、例えば、この逃がし領域の断面積の増大の割合が、つぶし量の増大の割合と同程度であると更に好ましい。
【0056】
挿入ガイド6の後端面32は、後端面外周側が中心軸P方向に対して先端側に傾斜した傾斜面であり、後端側が、中心軸P方向断面において、外径側から内径側に向かうほど後方に向けて突出するテーパ形状となっている。傾斜面(後端面)32の角度は、管10に許容される寸法精度(先端面の角度)などの各種条件に応じて任意に設定可能となる。
【0057】
上記の傾斜面32により、挿入ガイド6の後端側内周の頂部側には角部33が形成される。角部33の内径は、シールリング3を押しつぶして装着溝15dに充填可能となるように、内筒11の拡径面部15bの外径と同じか、或はそれよりもやや小径に設けられる。これに加えて、角部33の内径は、管10の内周径よりもやや大径となるように設けられ、この角部33が、接合時に、内筒11外周の拡径テーパ面部15a及び拡径面部15bにより拡径されながら挿入された管10の先端面の内径側に当接するようになっている。
【0058】
挿入ガイド6の内周の先端側には、アール面状或はテーパ状の案内部34が形成され、挿入ガイド6を管継手本体1の差込み間隙Gを挿入するときには、案内部34を介して挿入ガイド6先端側がシールリング3を乗り越えることが可能になっている。
【0059】
挿入ガイド6の外周においては、その先端側付近に円周状の円周面部35が設けられ、この円周面部35に続けて、徐々に拡径するテーパ面部36が挿入ガイド6の後端側に形成される。これら円周面部35とテーパ面部36との境界位置には、係止段部37が形成されている。円周面部35、テーパ面部36、係止段部37は、挿入ガイド6の円周方向に等間隔に形成され、円周方向におけるこれらの間には、平面状のフラット面部38が等間隔に形成される。本実施形態では、挿入ガイド6の円周方向において、フラット面部38と、テーパ面部36・係止段部37・円周面部38とが交互にそれぞれ4ヶ所に設けられる。
【0060】
各フラット面部38における先端側付近には、舌状の弾性舌片39がそれぞれ突出形成されている。弾性舌片39は、フラット面部38から外側に弓状に反るように形成され、その形状によって外径方向に弾発する弾性力を有している。弾性舌片39の先端は、外筒12の内周面の径よりも大きくなるように形成され、凹状収容部22の内径と同一か、やや大きい外径となるように設定される。
【0061】
図1において、キャップ4は、例えば、外筒12よりも引張り弾性率が高いポリアセタールなどの樹脂等の材料により形成されている。キャップ4の内周側には、外筒12の係合段部19にスナップ嵌合可能な係合段部40が形成されている。キャップ4は、これら係合段部19と係合段部40のスナップ嵌合により外筒12の開口側に取付けられ、その取付け後には、キャップ4と外筒12とが相互に回転可能となる。キャップ4の端部側には、内周方向に突設する環状突部41が形成される。キャップ4は、透明性を有する材料により形成してもよい。
【0062】
ロックリング5は、ステンレス鋼などの金属材料等により環状に形成され、環状部50と、この環状部50の内径側の爪部51とを有している。爪部51は、環状部50から所定の傾斜角度で屈曲形成され、管10の表面に係止可能に設けられる。ロックリング50は、外筒12の後端面側とキャップ4の環状突部41との間に挟まれ、この環状突部41によって抜け出しが阻止された状態で装着される。ロックリング5は、その爪部51の傾きによって管10の挿入をスムーズにしつつ、管10の接合後(挿入後)には、爪部51が管10の外周側に食い込むように係止し、管10に引抜き荷重が加わった場合でも強い引抜き阻止力を発揮する。
【0063】
管継手本体1に挿入ガイド6を組み付けたときには、この挿入ガイド6の外周側において、係止段部37にロックリング5の爪部51先端が係止すると共に、挿入側の内周側において、中心軸P方向における押圧部位30と拡径部位31との境界部付近よりもやや押圧部位30側に入口側のシールリング3が接触する。これにより、挿入ガイド6がロックリング5とシールリング3との間に仮止めされた状態で管継手本体1内の所定位置に装着され、挿入ガイド6の継手本体2からの自然の脱落も防がれている。
【0064】
管継手本体1への挿入ガイド6の装着(仮着)後には、シールリング3が挿入ガイド6内周の押圧部位30によって少し押し潰され、この押し潰された分が、挿入ガイド6内周の拡径部位(逃げ溝)31に押し出された状態となる。この状態から管10を挿入するときには、その初期状態において、拡径部位31により形成される空間の体積が、挿入ガイド6の押圧部位30によって押しつぶされ、圧縮許容量を超えて弾性変形する分のシールリング3の体積と同じか、或は、それよりも大きくなるように、押圧部位30と拡径部位31とが形成されている。
【0065】
なお、上記実施形態では、拡径部位(逃げ溝)31が挿入ガイド6内周の8ヶ所に円弧状に形成されているが、挿入ガイド6の挿入時(管10の接合時)に押圧部位30でシールリング3を押しつぶしながら逃げ込ませて管10の挿入抵抗力を軽減できるものであれば、その数や形状を任意に設定できる。さらに、拡径部位31は逃げ溝に限らず、適宜の形状に設けることで押しつぶしたシールリング3を逃げ込ませる態様に設けることも可能である。
【0066】
挿入ガイド6後端面内周の角部33の内径は、管10の内周径と同等に設けることができ、この場合、管10の挿入時には、その先端内周縁が、挿入ガイド6の後端面(傾斜面)32に当接した状態から管10が案内される。そのため、挿入ガイド6によって管10の内周縁の角部がシールリング3に接触することを防ぎ、管10の内周縁の角部との接触によりシールリング3を傷つけることなく、この管10を接合可能になる。
【0067】
内筒11に対してシールリング3を2ヶ所に装着しているが、必要なシール力などに応じて、シールリング3の装着数を適宜変更することもできる。シールリング3は、突出シール部3aを備えた形状である以外にも、例えば、一般的なOリングや、軸方向に長尺状の形状、挿入ガイド6との対向面にテーパ状面が設けられた形状などの各種の断面形状のものを使用できる。
【0068】
内筒11(継手本体2)と外筒12とが別体に設けられているが、これらは一体に形成されていてもよい。
また、ロックリング5の数やその爪部51の形状や角度、キャップ4の取付け構造などについても適宜変更可能であり、内筒11と外筒12との差込み間隙G内に挿入した管10を挿入ガイド6を用いて案内し、内筒11に装着したシールリング3で管10をシールするものであれば、管継手本体1を各種の内部構造に設けることもできる。
【0069】
続いて、上述した管継手本体1に管10を挿入して接続するときの動作並びに作用を説明する。
図2において、管10を接続するときの初期状態では、挿入ガイド6の外周側には、ロックリング5の爪部51が係止し、入口側シールリング3がその内周側に接触していることで、挿入ガイド6は、管継手本体1内の所定位置に装着されている。挿入ガイド6は、内周側の押圧部位30が入口側のシールリング3に接触した状態で装着され、これにより、入口側シールリング3は、所定のつぶし代よりもごく弱い状態で圧縮されている。このとき、挿入ガイド6は、ロックリング5とシールリング3とにより、略芯出しされた状態で継手本体2に仮着され、挿入ガイド6の後端面(傾斜面)32の内周端側の角部33は、拡径面部31よりも内径側に位置している。
【0070】
上記の状態において、管10の端面側が挿入ガイド6の後端側に接触した状態にセットする。管10は、端面が管軸に対して垂直に切断されたものを用いている。この場合、挿入ガイド6の傾斜面32の内周縁である角部33が、管10の先端面の内径側に当接することで、管軸の中心と挿入ガイド6(管継手本体1)の中心軸Pとが略一致した状態となり、芯ずれを防ぎつつ引き続き管を挿入できる。
【0071】
この状態から管10に挿入方向の力を加えることで、管10が、内筒11の拡径テーパ面部15aにより拡径されつつ、挿入ガイド6が、挿入方向に押された差込み間隙の奥に向かって挿入され、この挿入ガイド6の弾性舌片39が外筒12内周に当接し、弾性力を働かせながらも挿入ガイド6のそれ以上の外筒12方向への拡径が押さえられる。これにより、挿入ガイド6内周の押圧部位30によって入口側のシールリング3が押しつぶされる。この押しつぶされた部分は、ある程度は圧縮されるが、圧縮の許容量を超える分は弾性変形して、装着溝15d内の空隙や挿入ガイド6内周の拡径部位(逃げ溝)31に移動する。
【0072】
この場合、押圧部位30は、シールリング3の初期状態の外径よりも大きい径から小さい径となるように順次縮径していくテーパ状に形成していることから、挿入ガイド6の挿入に伴ってシールリング3に加わる押圧力は次第に大きくなる。この押圧力により、シールリング3は、徐々に弾性変形する割合が大きくなり、装着溝15d内や拡径部位31により多く移動するようになる。
【0073】
このように、挿入ガイド6の内周面6aに押圧部位30と、部分的に形成した拡径部位の逃げ溝31を設けていることで、シールリング3を押圧部位30で押しつぶしながら、円周方向の逃げ溝31が設けられた位置では、この逃げ溝31に逃げ込ませるように変形させつつ、挿入ガイド6が入口側シールリング3を乗り越えるようになっている。
【0074】
この場合、
図5において、挿入ガイド6の円周方向において、シールリング3に対して押圧部位30が対向する位置である領域Aでは、この押圧部位30によってシールリング3が押圧され、一方、シールリング3に対して拡径部位31が対向する位置である領域Bでは、シールリング3が逃げ込むようになる。このことから、シールリング3は、円周方向において、押圧部位30のみが対向する位置では、縮径方向に略環状に変形し、押圧部位30と拡径部位31とが対向する位置では、挿入ガイド6の内周面6aに沿って幾何学的に変形した状態となる。
【0075】
仮に挿入ガイド6に拡径部位31が無いとすると、徐々に縮径する挿入ガイド6の内周(押圧部位30)によってシールリング3の圧縮率が増大し、この圧縮に対するシールリング3の反発力により、挿入ガイド内周面6aとの摩擦抵抗が増し、その結果、管10の挿入に必要な力が増大する。これに対し、押圧部位30によって押しつぶされる分のシールリング3が移動できる拡径部位(逃げ溝)31を設けることで、シールリング3からの反発力を低減し、これにより、挿入抵抗の大きさが過大になったり、挿入抵抗が瞬間的に増加することを防いで管10の挿入抵抗力を著しく軽減し、挿入方向に挿入抵抗力に対抗する強い力を必要とすることなく円滑に管を挿入可能となる。そのため、管10の挿入感を向上して管継手本体1に対して正確に接合できる。
【0076】
しかも、挿入ガイド6によりガイドされて挿入された管10の内周面によりシールリング3が装着溝15d内で押しつぶされ、両者の接触面圧が高められた状態となるように管10を接合していることで、シールリング3による封止性を最大限に発揮させた状態で挿入ガイド6を管10の内周側に案内し、管10の接合後には、高シール性を発揮して漏れを確実に防止可能となる。
【0077】
さらに、拡径部位31をシールリング3の初期状態の外径よりも拡径した部位とする場合には、拡径部位31がシールリング3に差し掛かるときには、この拡径部位31がシールリング3を圧縮することがなく、シールリング3は、拡径部位31側に広がろうとする変形のみが許容される。そのため、拡径部位31にシールリング3が逃げ込むときには、拡径部位31からシールリング3を押しつぶそうとする力が働くことがなく、挿入抵抗力の増加を防いでいる。
【0078】
図1~
図4に示すように、拡径部位は、逃げ溝31の先端から後端までにわたり、挿入ガイド6の中心軸Pから同径の位置が、中心軸P方向から見て最も底部となるように設けているので、押圧部位30の傾斜度合いに比例するように後端に向かってシールリング3のつぶし量が増えるのに対応して、拡径部位31により形成される拡径空間が増えるようになる。このことから、押圧部位30の傾斜角度を予め適宜の大きさに設定することで、挿入抵抗を最小限に抑えつつ、この押圧部位30でつぶされたシールリング3を拡径部位31に案内できる。
【0079】
拡径部位の逃げ溝31を、押圧部位30がシールリング3を押しつぶす後端領域に設けていることで、挿入ガイド6挿入時に拡径部位31によって次第に増加するシールリング3の変形部分を確実に逃げ溝31に逃がすように変形させて、押圧部位30よりも挿入ガイド6内周側に突出することを防ぐ。これによって、挿入ガイド6に続いて挿入される管10の先端がシールリング3を傷つけることがない。
【0080】
押圧部位30と拡径部位31とが、周方向になだらかにつながるように交互に設けられていることで、シールリング3の一部が押圧部位30によって縮径方向に変形し、シールリング3のそれ以外の部分が拡径部位31側に逃げ込むようにスムーズに変形する。これにより、シールリング3変形時の抵抗を抑えて挿入抵抗力が低減する。
【0081】
さらには、初期状態のシールリング3の外周と拡径部位31との間で形成される空間の体積が、挿入ガイド6の押圧部位30によって押しつぶされる分のシールリング3の体積と同じかそれよりも大きくなるように押圧部位30と拡径部位31とを形成するようにしている。これにより、管10内周とのシールに必要な体積分が逃げ溝31に充填された状態で、さらに押圧部位30から押圧力が比例的に増加するときに、押圧部位30の押圧により比例的に変形しようとするシールリング3の体積分を拡径部位31に逃がすことが可能になる。そのため、それ以降の挿入抵抗力の増加を抑えながらシールリング3に対して挿入ガイド6を通過させることができる。
【0082】
挿入ガイド6の後端面32が、後端面外周側が中心軸P方向に対して先端側へ傾斜した傾斜面であるので、角部33が管10の先端の内径部付近に対して角当りの状態で接触する。これにより、挿入ガイド6には、その内径側角部30に対して管10からの押込み力が加わり、この挿入ガイド6を全周に渡って均一に押し込むことができる。このように、挿入ガイド後端面32の内径側の角部33に管10の内径側が当接した状態で管10を押し込むことで、これらの当接位置から中心軸Pまでの距離が短くなって挿入ガイド6の振れが少なくなり、管10の傾きを抑えた状態で接合可能になる。
【0083】
一方、挿入ガイド6の外周側では、弾性舌片39が外筒12内周のテーパ面20に接触し、管10の挿入に伴ってこのテーパ面20に続いて形成されたR面21に沿うようにこれらが変形しながら差込み間隙G内に収納される。
【0084】
図2に示すように、挿入ガイド6の挿入によって管10の先端内周面が拡径テーパ面部15aまで案内されると、管10は、拡径テーパ面10aでやや拡径されながら拡径面部15bまで案内される。このとき、挿入ガイド6の傾斜面32の角部33が、管10の先端面の内径側に当接していることで、挿入方向において、管10の先端面がシールリング3に対向することを回避している。そのため、挿入ガイド6を介して管10がシールリング3の位置に達したときには、その先端がシールリング3に引っ掛かって傷つけたりすることがなく、これら挿入ガイド6と管10が内径当たり、すなわち、挿入ガイド6と管10とが内周(内径)側で当接した状態を維持しながら、これらの内周側がシールリング3に当接することで、スムーズにシールリング3を乗り越え、管10の内周側を確実にシールリング3でシールした状態で挿入可能になっている。
【0085】
シールリング3は、それ自体がある程度の剛性を有することや、装着溝15d内にもある程度の空隙があることでこの装着溝15d内にも逃げ込むことができることにより、押圧部位31によって押しつぶされても、完全に逃げ溝31の最大深さの位置まで逃げ込むおそれがない。そのため、挿入ガイド6と管10との境界付近において、逃げ溝31に逃げ込んだシールリング3に管10の先端面が対向することにはなるものの、この管端面に接触しようとするシールリング3(逃げ溝31に逃げ込んだシールリング3)をわずかな量に抑えることで、管10の先端面がシールリング3をせん断するほどの段差とはならず、管10の挿入に伴って容易にシールリング3が管10の内側に引き込まれるなど、このシールリング3が挿入抵抗に与える影響は極めて少ない。
【0086】
続けて管を挿入すると、
図6に示すように、管10の先端内周面が入口側のシールリング3を乗り越え、この入口側シールリング3が管10の内周をシールした状態となる。この場合、挿入ガイド6が、奥側のシールリング3の位置に達したときに、上記の入口側シールリング3の場合と同様に、
図6に示すように、挿入ガイド6が奥側シールリング3を押しつぶして乗り越えながら、管10を挿入方向に案内できる。
【0087】
このようにして、
図7に示すように、挿入ガイド6と管10は、内径当たりを維持しながら奥側のシールリング3を乗り越える。これら挿入ガイドと管10の挿入時には、挿入ガイド6の弾性舌片39が外側の内周に当接した状態を維持し続け、この弾性舌片39が外径側に突っ張った状態で挿入ガイド6が差込み間隙G内に保持される。そのため、挿入ガイド6の内径側と、内筒11の外周面14との間にはクリアランスが生じている。
挿入ガイド6が入口側及び奥側の2ヶ所のシールリング3、3を乗り越えた後には、これらシールリング3、3で管10の内周面を確実にシールしながら、この管10を差込み間隙G内の所定位置までスムーズに挿入して強固に接合できる。
【0088】
図8においては、管の挿入を完了した状態を示している。この場合、挿入ガイド6が差込み間隙Gの先端側まで到達し、その弾性舌片39が凹状収納部22に弾発係止した状態で収納された状態となる。これにより、挿入ガイド6の挿入完了後には、その抜けが防がれている。
【0089】
上述したように、本実施形態における管継手本体1は、テーパ状押圧部位30により装着溝15d内にシールリング3を圧縮した状態で収容しつつ、その収容時には過度な押圧力を加えることを防いで挿入抵抗力を軽減できることで、シールリング3の破損などを防ぎつつ、このシールリング3を管10の内周全体に圧縮状態で当接させて全周に渡って確実にシールできる。
【0090】
図9は、管継手本体1に対して、管端面が管軸Pに対して垂直に切断されていない、いわゆる斜め切りの管60を挿入する場合を示しており、図において、二点鎖線は、管60先端側の斜め切りのラインLを示している。管60は、このような斜め切りによって端面上部側と端面下部側との間にずれが生じており、このような管60を管継手本体1に挿入する際には、端面下部側が先行して挿入されることになる。
【0091】
この場合、前述したように、挿入ガイド6の後端面32が、後端面外周側が中心軸P方向に対して先端側へ傾斜した傾斜面であるので、斜め切り管60を挿入したときに、その斜め切りの先端部に対し、図における管60の上部側において、挿入ガイド6後端面内径側の角部33が角当りの状態で当接する部分が生じる。そのため、管60を押し込むときには、この管60の上部付近における斜め切り先端部から挿入ガイド6の角部33に押込み力を働かせることができ、挿入ガイド6の後端面32の外径側の角部33が角当りとなる場合に比べて大幅に、挿入ガイド6を中心軸Pに対して傾かせることなく、管60全体を均一に押込みながら挿入できる。
【0092】
このように、斜め切りの管60を挿入する場合にも、その先端が垂直に切断されている場合と同様に挿入ガイド6によって確実に挿入方向に案内でき、挿入抵抗力を軽減しながらスムーズかつシール性を発揮した状態でこの管60を接合できる。さらに、管60の先端は、斜め切り以外の態様であってもよく、例えば、粗い切断面の状態であっても、その切断状態に影響されることなく、挿入ガイド6により安定して管60を接合可能となる。
【0093】
以上、本発明における管継手の実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0094】
1 管継手本体
2 継手本体
3 シールリング
6 挿入ガイド
6a 内周面
10 管
11 内筒
12 外筒
14 外周面
30 押圧部位
31 逃げ溝(拡径部位)
32 傾斜面(後端面)
G 差込み間隙
P 中心軸