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特開2024-94647車両移動用ドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具
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  • 特開-車両移動用ドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具 図1
  • 特開-車両移動用ドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094647
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両移動用ドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/12 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B60P3/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211322
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】513278068
【氏名又は名称】株式会社ALFA
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 好孝
(57)【要約】
【課題】広いスペースが確保できない場合であっても不動車を車積載車に容易に積載することを可能とする車両移動用ドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具を提供する。
【解決手段】左右一対のドーリー20を不動車両1の内側に配置したので、不動車両1の側方へはみ出すことがなく、不動車両1を車積載車上まで移動させるとき、支柱等と干渉することがない。また、枠体21の前後にキャスタを直列に配置したドーリー20を適用したので、ドーリー20,20の4つの車輪をそれぞれ独立して上下動させることができる。これにより、荒れた路面9であっても左右一対のドーリー20,20の4つの車輪を常時接地させることが可能となり、不動車両1を円滑に移動させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右一対の車輪を担持する一対のクロスバーの一側を受ける台座と、前記台座に設けられ、前後方向に間隔をあけて直列に配置される一対のキャスタとを備え、前記キャスタは、旋回部と、該旋回部に設けられた車輪とを有し、前記台座は、一対の前記クロスバーの、車両の車輪よりも内側を受けることを特徴とする車両移動用ドーリー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両移動用ドーリーであって、
少なくとも一方の前記キャスタの車輪の舵角を操作する操舵機構を備え、
前記操舵機構は、前記キャスタの旋回部に設けられる筒体と、前記筒体に接続される操作レバーとを有することを特徴とする車両移動用ドーリー。
【請求項3】
請求項2に記載の車両移動用ドーリーであって、
少なくとも一方の前記キャスタの車輪を直進舵角に保持する舵角保持機構を備え、
前記舵角保持機構は、前記台座の端板に固定される一方の羽板とU字形の溝が設けられた他方の羽板とを有する蝶番を備え、前記他方の羽板を回動させて前記溝に前記キャスタの旋回部に設けられた筒体を挿通させることにより、前記キャスタの旋回部の旋回動作を阻止するように構成されることを特徴とする車両移動用ドーリー。
【請求項4】
請求項2に記載の車両移動用ドーリーであって、
少なくとも一方の前記キャスタの車輪の回転を制止する制動機構を備え、
前記制動機構は、前記キャスタの旋回部に横向きに固定される外筒と該外筒に相対回転可能に挿通される内筒とを有する前記筒体と、前記内筒の、前記外筒の両端から突出された部分に設けられる一対の制動部材とを備え、前記内筒に接続された前記操作レバーを軸回転させることにより、一対の前記制動部材が前記キャスタの車輪に押し付けられるように構成されることを特徴とする車両移動用ドーリー。
【請求項5】
請求項1に記載の車両移動用ドーリーを用いた車両移動方法であって、
前後方向に間隔をあけて直列に配置された一対のキャスタが台座に設けられたドーリーを準備するステップと、
一対のクロスバーを持ち上げて車両の左右一対の車輪を担持するステップと、
一対の前記クロスバーと路面との間かつ車両の左右一対の車輪間に左右一対の前記ドーリーを差し込むステップと、
一対の前記クロスバーを下降させて左右一対の前記ドーリーによって受けるステップと、
を含むことを特徴とする車両移動方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両移動方法に用いる補助具であって、
ドーリーのキャスタの延長された車軸に連結される連結部と、前記連結部に設けられた操作レバーとを備え、
前記操作レバーを操作して前記キャスタの車輪を転向させながら、不動車両を牽引車によって牽引することを特徴とする補助具。
【請求項7】
請求項5に記載の車両移動方法に用いる補助具であって、
枠体と、回動軸を中心に回動可能な左右一対の回動脚部と、各回動脚部の下端に設けられる車輪と、前記枠体の前端に突設され、左右一対のドーリーに設けられた筒体に嵌合させる左右一対の嵌合軸と、一端が、前記枠体の前端部に接続されるとともに、他端が、前記回動脚部の、前記車輪と回動軸との間に接続される引張りコイルばねとを備え、左右一対の前記嵌合軸が、左右一対の前記ドーリーの前記筒体に嵌合された状態で、左右一対の前記車輪と、左右一対の前記ドーリーの一方のキャスタの車輪とが接地され、この状態で、左右一対の前記ドーリーが、車両の左右一対の車輪を担持する一対のクロスバーと路面との間に差し込まれることを特徴とする補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障等により自走不能となった不動車を移動させるためのドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、牽引車1の進行方向(前後方向)に間隔をあけて直列に配置された右側の車輪9a,10aと左側の車輪9b,10bとを備えた補助台車2(以下「従来の補助台車」と称する)が開示されている。従来の補助台車では、被牽引車50(以下「車両」と称する)の右側後輪52が前方支持部材12a及び後方支持部材13a(クロスバー)によってを支持され、車両の左側後輪52が前方支持部材12b及び後方支持部材13bによって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-182236号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ホイールスケート」(https://www.youtube.com/watch?v=yuarjYTx43M)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の補助台車は、車輪9a,10a及び車輪9b,10bが車両の外側に配置されているので、例えば、当該補助台車を用いて車両を車積載車に積載する場合、車両から張り出した補助台車の車輪が障害になる。また、従来の補助台車は、右側の載置部材11aと左側の載置部材11bとが連結部材8によって連結されて固定されているので、大型化且つ重量化して車積載車に積載するのが困難である。
【0006】
そこで、枠体の四隅に車輪が設けられたドーリーの使用が考えられるが、例えば、非特許文献1に記載されたドーリー(以下「従来のドーリー」と称する)は、車輪が旋回しないため、車両の進行方向を変えることが困難である。このため、不動車両を車積載車に積載する場合、車積載車を不動車両に対して縦列に停止させる必要があり、広いスペースを要する。また、従来のドーリーでは、路面が平坦でない場合、一輪(一隅に配置された車輪)が路面から浮き上がってしまうとドーリーが不安定となり、不動車両を円滑に移動させるのが困難となる。
【0007】
本発明は、広いスペースが確保できない場合であっても不動車を車積載車に容易に積載することを可能とする車両移動用ドーリー、該ドーリーを用いた車両移動方法、及び該車両移動方法に用いる補助具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両移動用ドーリーは、車両の左右一対の車輪を担持する一対のクロスバーの一側を受ける台座と、前記台座に設けられ、前後方向に間隔をあけて直列に配置される一対のキャスタとを備え、前記キャスタは、旋回部と、該旋回部に設けられた車輪とを有し、前記台座は、一対の前記クロスバーの、車両の車輪よりも内側を受けることを特徴とする。
本発明の車両移動方法は、請求項1に記載の車両移動用ドーリーを用いた車両移動方法であって、前後方向に間隔をあけて直列に配置された一対のキャスタが台座に設けられたドーリーを準備するステップと、一対のクロスバーを持ち上げて車両の左右一対の車輪を担持するステップと、一対の前記クロスバーと路面との間かつ車両の左右一対の車輪間に左右一対の前記ドーリーを差し込むステップと、一対の前記クロスバーを下降させて左右一対の前記ドーリーによって受けるステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の補助具は、請求項5に記載の車両移動方法に用いる補助具であって、ドーリーのキャスタの延長された車軸に連結される連結部と、前記連結部に設けられた操作レバーとを備え、前記操作レバーを操作して前記キャスタの車輪を転向させながら、不動車両を牽引車によって牽引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広いスペースが確保できない場合であっても不動車を車積載車に容易に積載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の説明図であって、不動車両の後輪がドーリーによって支持された状態を示す左側面図である。
図2】本実施形態の説明図であって、不動車両の後輪がドーリーによって支持された状態を示す正面図である。
図3】本実施形態に係るドーリーの左側面図である。
図4】本実施形態の説明図であって、制動機構の概念図である。
図5】本実施形態の説明図であって、4つのドーリーを用いて不動車両を移動可能に支持した状態を示す左側面図である。
図6】本実施形態の説明図であって、牽引補助具の概念図である。
図7】本実施形態の説明図であって、差込み補助具の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係るドーリー20,20を用いて左右の後輪3,3が支持された不動車両1(移動対象車両)を示す。なお、明細書中の「左右」、「前後」、「上下」等の「方向」に関する記載は、不動車両1を基準とするものである。
【0012】
図1又は図2に示されるように、不動車両1の左右の後輪3,3は、前後方向に間隔をあけて配置された一対のクロスバー7,8によって担持される。クロスバー7,8の前後方向の間隔は、不動車両1の後輪3,3の外径に応じて調節可能である。具体的には、クロスバー保持具10の後側のブラケット11をレール13の長手方向に移動させてピン14によって位置決めする。これにより、クロスバー保持具10のブラケット11とブラケット12との間隔、延いてはクロスバー7,8の前後方向の間隔が調節される。なお、クロスバー7,8は、角形鋼管が適用される。
【0013】
図2に示されるように、ドーリー20,20は、左右方向に間隔をあけて不動車両1の後輪3,3間に配置される。ここで、不動車両1の左側後輪3の近くに配置されるドーリー20と、右側後輪3の近くに配置されるドーリー20とは、左右対称に構成される。また、クロスバー7,8の一側(左側)を保持するクロスバー保持具10と、クロスバー7,8の他側(右側)を保持するクロスバー保持具10とは、左右対称に構成される。ここでは、明細書の記載を簡潔にすることを目的に、左側後輪3の近くに配置されるドーリー20(図3参照)のみを説明する。
【0014】
図2又は図3に示されるように、ドーリー20は、クロスバー7,8の左側(一側)かつ左側後輪3よりも内側の部分を受ける枠体21(台座)と、該枠体21に設けられ、前後方向に間隔をあけて直列に配置される一対のキャスタ31,37とを有する。枠体21は、左右方向に間隔をあけて対向するように配置された一対の側端板22,22(図3に左側の側端板22のみ表示)を有する。側端板22,22間には、後側のキャスタ31の旋回部3,3が固定される取付板23と、前側のキャスタ37の旋回部38が固定される取付板24とが架設される。即ち、キャスタ31,37は、車輪33,39が旋回可能な自在キャスタが適用される。
【0015】
枠体21の後端部上側には、後側のクロスバー7(図1参照)を受ける受部25が設けられる。受部25は、側端板22を切り欠くことで形成される。クロスバー7は、切欠き(受部25)と枠体21の後端板27との間で、枠体21に対する前後方向への移動が阻止される。なお、枠体21の側端板22,22の後部には、左右一対のドーリー20,20(図2参照)を連結させるためのシャフト16を挿通させる挿通孔28,28(図3に左側の側端板22に形成された挿通孔28のみ表示)が設けられる。
【0016】
枠体21の前部上側には、前側のクロスバー8(図1参照)を受ける受部26が設けられる。受部26は、後側のクロスバー7(図1参照)を受ける受部25に対して低い位置に設けられる。受部26は、後輪3(図1参照)の外径に応じて変化するクロスバー7,8の間隔を吸収するため前後方向へ延びる。なお、受部26は、クロスバー8の前後方向への移動を規制するものではない。
【0017】
本実施形態に係るドーリー20は、キャスタ31の車輪33の舵角を操作する操舵機構を備える。図3又は図4に示されるように、操舵機構は、キャスタ31の旋回部32の内側(図4における「右側」)の垂直片34に横向き(水平)に設けられる外筒41(筒体)と、該外筒41の内側に相対回転可能に挿通される内筒43(筒体)とを有する。外筒41及び内筒43は、円形鋼管が適用される。
【0018】
外筒41は、キャスタ31の垂直片34に溶接によって接合される。操舵機構は、外筒41の後端から突出された内筒43の後端部44の外周に操作レバー45(図5参照)を嵌合させて接続し、該操作レバー45を左右方向へ操作することでキャスタ31の車輪33の舵角を操作することができる。なお、操作レバー45は、円形鋼管が適用される。また、内筒43は、外筒41に対する軸方向(前後方向)への移動が、内筒43に設けられた前後一対のピン(図示省略)によって阻止される。
【0019】
本実施形態に係るドーリー20は、キャスタ31の車輪33を直進舵角に保持する舵角保持機構を備える。図2又は図3に示されるように、舵角保持機構は、枠体21の後端板27に外側の羽板48(一方の羽板)が固定されるフラッシュ型の蝶番47を有する。蝶番47の内側の羽板49(他方の羽板)には、当該蝶番47が閉じられた状態(折り畳まれた状態)で上方向に向かって開口するU字形の溝50が設けられる。舵角保持機構は、蝶番47の内側の羽板49を下方向(図3における「時計回り方向」)へ回動させて、羽板49の溝50の内側に内筒43の後端部44を挿通させることでキャスタ31の旋回部32の旋回動作が阻止され、これにより車輪33が直進舵角に保持される。
【0020】
本実施形態に係るドーリー20は、キャスタ31の車輪33の回転を制止する制動機構を備える。図3又は図4に示されるように、制動機構は、内筒43の、外筒41の後端から突出された部分に設けられた制動ピン51(制動部材)と、内筒43の、外筒41の前端から突出された部分に設けられた制動ピン52(制動部材)とを有する。一対の制動ピン51,52は、内筒43の中心線に対して垂直に内筒43の半径方向外側へ延びるとともに相互に平行をなすように配置される。制動機構は、内筒43の後端部44に操作レバー45(図5参照)を嵌合させて接続し、該操作レバー45を図4における反時計回り方向へ軸回転させて一対の制動ピン51,52を車輪31に押し付ける(当接させる)ことにより、キャスタ31の車輪33の回転を制止、延いてはドーリー20を停止状態に保持する。
【0021】
次に、本実施形態に係るドーリー20を用いて不動車両1(図2図5参照)を車積載車(図示省略)に積載する手順の概略を説明する。まず、不動車両1の左右の後輪3,3を挟み込むようにして一対のクロスバー7,8を配置し、該クロスバー7,8の左右両側にクロスバー保持具10,10をセットする。次に、不動車両1の左側後輪3の外側に配置したクロスバー保持具10をハイリフトジャッキを用いて持ち上げるとともに、右側後輪3の外側に配置したクロスバー保持具10をハイリフトジャッキを用いて持ち上げ、不動車両1の後輪3,3を一対のクロスバー7,8によって担持する。このようにして、クロスバー7,8と路面9との間にドーリー20,20を差し込むための隙間を形成する。
【0022】
次に、シャフト16によって連結された一対のドーリー20,20を、クロスバー7,8の下かつ不動車両1の左右の後輪3,3間に差し込む。次に、左右のハイリフトジャッキを操作して左右のクロスバー保持具10,10を下降、延いては不動車両1の後輪3,3を担持するクロスバー7,8を下降させ、後側のクロスバー7を左右のドーリー20,20の受部25,25によって受けるとともに、前側のクロスバー8を左右のドーリー20,20の受部26,26によって受ける。
【0023】
同様の手順で、不動車両1の左右の前輪5,5(図5に左側前輪5のみ表示)を挟み込むようにして一対のクロスバー7,8を配置し、該クロスバー7,8の左右両側にクロスバー保持具10,10をセットする。次に、不動車両1の左側前輪5の外側に配置したクロスバー保持具10をハイリフトジャッキを用いて持ち上げるとともに、右側前輪5の外側に配置したクロスバー保持具10をハイリフトジャッキを用いて持ち上げ、不動車両1の前輪5,5を一対のクロスバー7,8によって担持する。
【0024】
次に、シャフト16によって連結させた一対のドーリー20,20を、クロスバー7,8の下かつ不動車両1の左右の前輪5,5間に差し込む。次に、左右のハイリフトジャッキを操作して左右のクロスバー保持具10,10を下降、延いては不動車両1の前輪5,5を担持するクロスバー7,8を下降させ、前側のクロスバー7を左右のドーリー20,20の受部25,25によって受けるとともに、後側のクロスバー8を左右のドーリー20,20の受部26,26によって受ける。
【0025】
これにより、図5に示されるように、不動車両1の後輪3,3を担持する前後一対のクロスバー7,8が左右一対のドーリー20,20によって支持されるとともに、不動車両1の前輪5,5を担持する前後一対のクロスバー7,8が左右一対のドーリー20,20によって支持される。なお、不動車両1の右側前輪5の内側に配置されるドーリー20は、左側後輪3の内側に配置されるドーリー20と同型で、かつ左側前輪5の内側に配置されるドーリー20と左右対称に構成される。
【0026】
この状態(図5参照)で、車積載車(図示省略)に搭載されたウィンチのワイヤと不動車両1とを連結し、ウィンチによってワイヤを巻き取ることにより、当該不動車両1を車積載車上まで移動させる。
【0027】
本実施形態は以下の効果を奏する。便宜上、不動車両1の車輪(後輪3及び前輪5)の符号を省略する。
本実施形態では、ドーリー20は不動車両1の内側に配置されるので、従来の補助台車のように補助台車の車輪が車両の側方へはみ出す(車積載車の支柱と干渉する)ことがなく、不動車両1を車積載車上まで容易に移動させることができる。
また、ドーリー20は、キャスタ31の上端を不動車両1の車輪の下端よりも上方に突出させたので、不動車両1の最低地上高を抑えつつより大径の車輪33(例えば「外径200mm」)を備えたキャスタ31を用いることが可能となる。これにより、泥濘等の路面9(地面)が荒れた現場であっても、不動車両1を容易に移動させることができる。
また、ドーリー20は、車輪33,39が転向可能なキャスタ31,37(自在キャスタ)を適用したので、キャスタ31,37の車輪33,39を転向させることで不動車両1の向き(進行方向)を容易に変えることが可能であり、車積載車に積載する場合であっても広いスペースを必要としない。さらに、ドーリー20は、操舵機構を備えるので、内筒43の後端部44に操作レバー45を接続し、該操作レバー45を左右方向へ操作することにより、キャスタ31の車輪33の舵角を操作することができる。これにより、立体駐車場や狭い駐車場から4輪全てがロックした不動車両1を移動させることができる。
また、ドーリー20は、舵角保持機構を備えるので、蝶番47の内側の羽板49を回動させて羽板49に形成されたU字形の溝50の内側に内筒43の後端部44を挿通させることにより、キャスタ31の旋回部32の転向が阻止されて車輪33を直進舵角に保持することが可能となり、直進性を確保することができる。
また、ドーリー20は、キャスタ31の車輪33を制止する制動機構を備えるので、内筒43の後端部44に操作レバー45接続し、該操作レバー45を軸回転させて一対の制動ピン51,52を車輪31に押し付ける(当接させる)ことにより、キャスタ31の車輪33の回転を制止する、延いてはドーリー20を停止状態に保持することができる。なお、操作レバー45は、操舵機構と制動機構とで併用することができる。
また、従来のドーリーでは、路面が平坦でない場合、一輪が路面から浮き上がると走行が不安定となり、不動車両を円滑に移動させるのが困難となっていた。これに対し、本実施形態では、枠体21(台座)の前後にキャスタ31,37を直列に配置した直列二輪型のドーリー20を適用したので、左右一対のドーリー20,20が前後一対のクロスバー7,8を支持することで、ドーリー20,20の4つの車輪(符号省略)をそれぞれ独立して上下動させることができる。これにより、荒れた路面9であっても左右一対のドーリー20,20の4つの車輪を常時接地させることが可能となり、不動車両1を円滑に(安定した状態で)移動させることができる。
また、クロスバー保持具10は、市販車に装着されるタイヤに幅広く対応するので、当該ドーリー20を幅広い車種の移動に用いることができる。
また、本実施形態では、クロスバー7,8の左側(一側)を支持するドーリー20と、右側(他側)を支持するドーリー20とが別個に構成されているので、個々のドーリー20をコンパクトかつ軽量に構成することが可能であり、持ち運び及び車積載車への積み込みが容易である。
【0028】
なお、実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
前述した実施形態では、不動車両1の後輪3,3を担持するクロスバー7,8を左右一対のドーリー20,20によって支持するとともに、不動車両1の前輪5,5を担持するクロスバー7,8を左右一対のドーリー20,20によって支持する態様(図5参照)を説明したが、例えば、不動車両1の前輪5,5がロックされていない場合、不動車両1の後輪3,3を担持するクロスバー7,8のみを左右一対のドーリー20,20によって支持するようにしてもよい。
【0029】
また、図6に示されるように、キャスタ31の車輪33の車軸35の両端部を延長し、延長された車軸35の両端部に牽引補助具55を連結させるように構成してもよい。当該牽引補助具55は、U字形に形成された連結部57と、該連結部57に接合(溶接)された操作レバー56とを有する。連結部57は、対向する一対の連結片58,59を有する。各連結片58,59には、車軸35を挿通させる挿通孔(図示省略)が設けられる。また、連結片58,59のうち、不動車両1の外側に配置される連結片59は、縦(図6において紙面に垂直な方向)に延びる軸60を中心に開閉可能である。
【0030】
そして、不動車両1を牽引車(図示省略)によって牽引する場合、キャスタ31の車輪33の車軸35に牽引補助具55の連結部57を連結し、操作レバー56を左右方向へ操作してキャスタ31の車輪33を転向させることにより、不動車両1を牽引車の移動経路により近い経路で移動させることができる。これにより、一人の作業者であっても安全に不動車両1を移動させることができる。
【0031】
また、前述した実施形態では、シャフト16によって連結された左右一対のドーリー20,20をクロスバー7,8と路面9との間に差し込むようにしたが、図7に示される差込み補助具61を用いて、左右一対のドーリー20,20(図7に左側のドーリー20のみ表示)をクロスバー7,8と路面9との間に差し込むようにしてもよい。
【0032】
差込み補助具61は、枠体62と、回動軸63を中心に回動可能な左右一対の回動脚部64,64(図7に左側の回動脚部64のみ表示)と、回動脚部64,64の下端に設けられる車輪65,65(図7に左側の車輪65のみ表示)とを有する。枠体62の前端には、ドーリー20,20のキャスタ31,31に設けられた内筒43,43の後端部44,44の内側に嵌合させる嵌合軸67,67(図7に左側の嵌合軸67のみ表示)が突設される。なお、左右の回動脚部64,64は、図示しない架設された部材によって連結されている。
【0033】
回動脚部64,64の、車輪65,65と回動軸63,63との間には、引張りコイルばね66,66(図7に左側の引張りコイルばね66のみ表示)の一端が接続される。他方、引張りコイルばね66,66の他端は、枠体62の前端部に接続される。これにより、回動脚部64,64は、引張りコイルばね66,66のばね力によって、回動軸63,63を中心に図7における時計回り方向へ付勢される。
【0034】
回動脚部64,64の回動軸63,63を中心とする回動動作は、枠体62に設けられた規制ピン68,68(図7に左側の規制ピン68のみ表示)によって規制される。これにより、差込み補助具61の嵌合軸67,67が、ドーリー20,20のキャスタ31,31の内筒43,43の後端部44,44に嵌合された状態、即ちドーリー20,20が差込み補助具61に装着された状態では、差込み補助具61の左右の車輪65,65と、ドーリー20,20のキャスタ37,37の車輪39,39との4つの車輪が接地し、ドーリー20,20のキャスタ31,31の車輪33,33が浮き上がる。
【0035】
この状態で、差込み補助具61に装着されたドーリー20,20をクロスバー7,8と路面9との間に差し込み、ハイリフトジャッキを操作してクロスバー7,8を下降させてクロスバー7,8を左右一対のドーリー20,20によって受ける。このとき、クロスバー7,8が下降する過程で、差込み補助具61の回動脚部64,64が回動軸63,63を中心に反時計回り方向へ回動し、ドーリー20,20のキャスタ31,31の車輪33,33が路面9に接地する。
【0036】
左右一対のドーリー20,20によってクロスバー7,8を受けた後、枠体62の後部を押し下げながら差込み補助具61を手前側(図7における「右側」)へ引っ張ることにより、差込み補助具61の嵌合軸67,67をドーリー20,20の内筒43,43から引き抜くことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 不動車両(車両)、7,8 クロスバー、20 ドーリー、21 枠体(台座)、31,37 キャスタ、32,38 旋回部、33,39 車輪
図1
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図7