(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094648
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/12 20060101AFI20240703BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240703BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20240703BHJP
【FI】
B66C13/12
B60L15/20 J
B60L50/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211323
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】加島 新之助
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC01
5H125AC12
5H125BA00
5H125EE41
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】電源ケーブルが接続されているか否かにかかわらす、電源ケーブルがクレーン作業関連動作によって損傷させられるのを防止し得る移動式クレーンを提供する。
【解決手段】移動式クレーン1は、電源ケーブル17の位置に基づいて、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限する制御部を有している。ここで、クレーン作業関連動作とは、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、起伏ウインチによるブーム4の起伏動作、巻上ウインチによる吊荷5の吊下げ動作等のクレーン作業及びこれらクレーン作業に関連して行われる各種動作をいうものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ケーブルから電力供給を受ける移動式クレーンであって、
前記電源ケーブルの位置に基づいて、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限する制御部を有する移動式クレーン。
【請求項2】
前記電源ケーブルの前記位置を検知する検知部を有し、
前記制御部は、前記検知部によって検知した前記電源ケーブルの位置に基づいて、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限する請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項3】
前記制御部は、前記クレーンの吊荷の位置と前記電源ケーブルの位置との間隔が所定以下の場合、前記クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限する請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項4】
前記制御部は、前記クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限した状態において、クレーン本体または前記クレーンの吊荷が前記電源ケーブルから離れる方向に移動するのを許容する請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項5】
前記クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限した状態であっても、クレーン本体または前記吊荷と前記電源ケーブルとの距離が近づく方向の動作を許容する動作制限解除部を有し、
操作者によって前記動作制限解除部が操作されると、前記制限した状態を解除して、前記クレーン本体または前記吊荷と前記電源ケーブルとの距離が近づく方向の動作を許容する請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項6】
下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回する上部旋回体とを有し、
前記制御部は、前記吊荷を含む所定の前記上部旋回体の旋回角度範囲内で、かつ前記上部旋回体からの距離が所定範囲内に、前記電源ケーブルがある場合に、前記クレーン作業関連動作を制限する請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項7】
下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回する上部旋回体とを有し、
前記制御部は、前記下部走行体の前後方向所定範囲内に前記電源ケーブルがある場合に、前記クレーン作業関連動作を制限する請求項1に記載の移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリーを動力源として作動する移動式建設機械が知られている。このような従来の移動式建設機械は、搭載されているバッテリーの電力が消費されると、外部電源から延ばされた電源ケーブルがバッテリーに接続されるようになっている。また、従来の移動式建設機械は、電源ケーブルがバッテリーに接続されている間に作動すると、下部走行体が電源ケーブルを踏みつけて断線させることが想定されるため、給電中における作動が禁止又は制限されるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の移動式建設機械は、電源ケーブルが外された後のことが検討されていなかった。この移動式建設機械は、電源ケーブルがバッテリーから外されると、下部走行体の移動等の作動制限が解除されてしまう。そのため、バッテリーから外された電源ケーブルが下部走行体の近傍に置かれてしまうと、電源ケーブルが下部走行体に踏みつけられるなど損傷させられる可能性があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、電源ケーブルが接続されているか否かにかかわらず、電源ケーブルがクレーン作業関連動作によって損傷させられるのを防止し得る移動式クレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動式クレーン1は、電源ケーブル17の位置情報を基にクレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限する制御部22を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の移動式クレーンは、電源ケーブルが接続されているか否かにかかわらす、電源ケーブルがクレーン作業関連動作によって損傷させられるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る移動式クレーンを簡略化して示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る移動式クレーンの側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る移動式クレーンの一部を取り除いて示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るクレーンの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る移動式クレーンの動作制限フローチャートである。
【
図6】電源ケーブルの位置の特定例を示す図である。
【
図7】クレーンの旋回時の動作制御を説明する図である。
【
図8】クレーンの走行時の動作制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(移動式クレーンの構成)
図1から
図3に基づき本実施形態に係る電動の移動式クレーン1(以下、単に、クレーン1と略称する)を説明する。なお、
図1は、本実施形態に係るクレーン1を簡略化して示す平面図である。また、
図2は、本実施形態に係るクレーン1の側面図である。また、
図3は、本発明の実施形態に係るクレーン1の一部を取り除いて示す平面図である。
図1から
図3に示すように、クレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。
なお、以下では、クレーン1の搭乗者から見た前後左右方向をクレーン1の前後左右方向として説明する。
【0011】
上部旋回体3の前側には、ブーム4が起伏可能に取り付けられている。上部旋回体3の後部には、ブーム4及び吊荷5の重量バランスをとるカウンタウエイト6が取付けられている。
上部旋回体3の右側前部には、キャビン7が配置されている。キャビン7にはオペレータが着座し、そのオペレータがクレーン1の操縦を行うようになっている。
【0012】
ブーム4の起伏動作は、起伏ウインチ9による起伏ロープ8の巻き取り又は巻き出しにより行われる(
図3参照)。
【0013】
巻上ロープ10の一端はフック11に接続されており、フック11はブーム4の先端のポイントシーブ12に巻き掛けられた巻上ロープ10によって吊下げられている。巻上ロープ10の他端は上部旋回体3上の巻上ウインチ13に巻回されており、巻上ウインチ13の駆動によって巻上ロープ10が巻き取られるか又は巻き出されて、フック11が昇降する。吊荷5は、紐状、鎖状等の吊下げ材14でフック11に吊り下げられている。
【0014】
図1から
図3に示すように、下部走行体2に内蔵されたバッテリー15は、図示しない油圧モータ等の各種アクチュエータに電力を供給し、油圧モータ等の各種アクチュエータを作動させるようになっている。このバッテリー15は、外部の電源装置16から延びる電源ケーブル17が下部走行体2の側面18に設置された接続部20に接続されることにより、電源装置16から電力が供給されるようになっている。なお、バッテリー15は下部走行体2に配置されることに限定されず、どこに配置されていてもよい。例えば、上部旋回体3に配置されていてもよい。
【0015】
また、
図1から
図3に示すように、クレーン1には、作業現場の地上に置かれた電源ケーブル17の位置を検知する検知部21(例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波レーダー等)が複数設置されている。すなわち、クレーンの下部走行体2には、少なくとも接続部20が位置する側面18側に設置されている。また、クレーン1の上部旋回体側には、カウンタウエイト6の下面側の幅方向中央、キャビン7の屋根の前側外面、上部旋回体3の旋回中心のそれぞれに検知部21が設置されている。これら各検知部21は、クレーン1の周囲に位置する電源ケーブル17を隈なく検知するためにクレーン1に設置されている。なお、クレーン1における検知部21の設置箇所は、
図1から
図3に記載した設置箇所に限定されるものではない。例えば、下部走行体2の側面18側の検知部21は、接続部20を挟んで前後方向に一対配置されているが、これに限られず、接続部20よりも前方側又は後方側の1箇所のみに設けるようにしてもよい。また、検知部21は、下部走行体2の両側面18、19にそれぞれ設置してもよい。
【0016】
図4は、クレーン1の機能構成を示すブロック図である。
この
図4に示すように、クレーン1は、上記構成のほか、制御部22、駆動部23、操作部24、表示部25、通信部26、検知部21、記憶部27、動作制限解除部33を備える。
【0017】
制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、クレーン1の各部の動作を制御する。制御部22は、ECU(Electronic Control Unit)の機能を含み、上部旋回体3に配置される。具体的に、制御部22は、オペレータの操作入力等に基づいて駆動部23を作動させ、後述する記憶部27に予め記憶されているクレーン動作制限プログラム28等と協働して各種処理を実行する。
【0018】
駆動部23は、クレーン1の各部を動作させる駆動源であり、上述した起伏ウインチ9、巻上ウインチ13、上部旋回体3の旋回装置30、その他の各種モータやアクチュエータ等を含む。
操作部24は、オペレータが各種操作を行う操作手段である。操作部24は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部22に出力する。
【0019】
表示部25は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部22から入力される表示信号に基づいて、作業現場の地面上に置かれた電源ケーブル17を表示する。なお、表示部25は、操作部24の一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。
通信部26は、例えば図示しない情報端末等との間で各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0020】
検知部21は、上述したように、作業現場の地面上に置かれた電源ケーブル17の画像データ(電源ケーブル位置データ)を制御部22に出力するようになっている。また、検知部21は、測距機能を有している場合、電源ケーブル17までの距離データを取得し、その距離データを制御部22に出力する。この検知部21によって検知された電源ケーブル17の位置データは、記憶部の第1記憶部分31に記憶される。なお、検知部21によって取得された電源ケーブル17の画像データや距離データと、後述する画像データに基づいて演算された間隔(L1~L7)は、適宜、電源ケーブル17の位置情報と言い換えて表現する。
【0021】
記憶部27は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部22の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部27は、後述のクレーン1の動作制限(
図5参照)を実行するためのクレーン動作制限プログラム28を予め記憶している。また、記憶部27は、検知部21によって検知された電源ケーブル17の位置データを記憶する第1記憶部分31と、オペレータによって入力された電源ケーブル17の位置データを記憶する第2記憶部分32と、を有している。なお、実際のオペレータが電源ケーブル17の位置データを入力する場合の入力の仕方は、例えば、
図1のようなクレーン1を上方から見た図がクレーン1の各種設定を行う画面に映し出され、電源ケーブル17の位置を画面上でタッチして指定する又は電源ケーブル17位置を画面上の一部の範囲を指定する形で選択するなどして行う。
【0022】
クレーン動作制限プログラム28は、第1記憶部分31に読み出し可能に記憶された電源ケーブル17の画像データ(検知部21で取得した電源ケーブル17に関する画像データ)に基づいて、下部走行体2と電源ケーブル17との間隔(例えば、L1~L3)を演算できるようになっている。制御部22は、クレーン動作制限プログラム28を使用し、下部走行体2と電源ケーブル17との間隔(例えば、L1~L3)を演算し、その演算結果である間隔(L1~L3)が予め入力された許容値(数値)に到達すると、下部走行体2の駆動部23に動作制限信号を出力する。ここで、動作制限とは、クレーン1の各部(下部走行体2、上部旋回体3、起伏ウインチ9、巻上ウインチ13等)の動作を停止させるか又は通常の作動速度よりも遅い微速動作にすること又は機械を停止させるように制御することである。
本実施形態のクレーン1は、微速動作になると、クレーン1の走行、旋回、起伏、巻上・巻下等の操作レバーを通常時と同じに操作しても、クレーン1の走行、旋回、起伏、巻上・巻下等の各動作の作動速度が通常時よりも遅くなる。よって、オペレータは、慎重に操作できる。また、本実施形態のクレーン1は、駆動部23の駆動源が油圧モータの場合、油圧モータの傾転を制御することにより、油圧モータの回転数を下げられ、クレーン1の各部の作動速度を遅くする(微速動作にする)ことが可能になる。また、本実施形態のクレーン1は、駆動部23の駆動源が油圧モータの場合、油圧モータの回転を減速装置で減速することにより、クレーン1の各部の作動速度を遅くする(微速動作にする)ことが可能になる。また、本実施形態のクレーン1は、制御部22から動作制御信号が出力されると、駆動部23の駆動速度の上限値を低く抑える(微速動作にする)ようにしてもよい。また、本実施形態のクレーン1は、下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5が電源ケーブル17に近づくにしたがって駆動部23のブレーキ力を強くし、下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5が電源ケーブル17に所定値(接近許容値)まで近づいた場合に、駆動部23を停止させるようにしてもよい。なお、この駆動部23のブレーキ操作は、制御部22で自動的に実施してもよく、またオペレータの手動で実施することを促したりしてもよい。また、ブレーキ操作を制御部22で自動的に実施した上で、さらに手動でブレーキ力を強くできるようにしてもよい。
【0023】
また、クレーン動作制限プログラム28は、検知部21で取得した電源ケーブル17に関する画像データに基づいて、上部旋回体3と電源ケーブル17との高さ方向(
図2の上下方向)の間隔(例えば、L4)を演算できるようになっている。制御部22は、クレーン動作制限プログラム28を使用して、上部旋回体3と電源ケーブル17との高さ方向(
図2の上下方向)の間隔(例えば、L4)を演算し、その間隔(L4)が予め入力された許容値(数値)に到達すると、上部旋回体3を旋回させる旋回装置30の駆動部23に動作制限信号を出力する。
【0024】
また、クレーン動作制限プログラム28は、検知部21で取得した電源ケーブル17に関する画像データに基づいて、吊荷5と電源ケーブル17との高さ方向(
図2の上下方向)の間隔(例えば、L5)を演算できるようになっている。制御部22は、クレーン動作制限プログラム28を使用して、吊荷5と電源ケーブル17との高さ方向(
図2の上下方向)の間隔(例えば、L5)を演算し、その間隔(L5)が予め入力された許容値(数値)に到達すると、上部旋回体3、起伏ウインチ9及び巻上ウインチ13の駆動部23に動作制限信号を出力する。
【0025】
また、クレーン動作制限プログラム28は、検知部21で取得した電源ケーブル17に関する画像データに基づいて、吊荷5と電源ケーブル17との高さ方向(
図2の上下方向)の間隔(L5)と、吊荷5と電源ケーブル17とのX-Y方向の間隔(例えば、L6、L7)とを演算できるようになっている。制御部22は、クレーン動作制限プログラム28を使用して、吊荷5と電源ケーブル17との高さ方向(
図2の上下方向)の間隔(L5)と、吊荷5と電源ケーブル17とのX-Y方向の間隔(例えば、L6、L7)とを演算し、その間隔(L5)が予め入力された許容値(数値)に到達し、かつ、その間隔(L6)が予め入力された許容値(数値)に到達するか、又はその間隔(L7)が予め入力された許容値(数値)に到達すると、上部旋回体3、起伏ウインチ9及び巻上ウインチ13の駆動部23に動作制限信号を出力する。
【0026】
なお、制御部22は、下部走行体2が作業中に移動しない場合、電源ケーブル17の位置データを第1記憶部分31から読み出して、下部走行体2と電源ケーブル17との間隔(L1~L3)をクレーン動作制限プログラム28で演算してもよい。このような本実施形態のクレーン1は、検知部21の検知結果に基づく制御部22の演算(間隔L4~L7の演算)が簡略化する。特に、下部走行体2の接続部20に電源ケーブル17が接続されている場合においては、旋回や起伏をしていても電源ケーブル17自体は動かない。よって、下部走行体2が作業中に移動しない場合、検知部21の検知結果に基づく制御部22の演算(間隔L4~L7の演算)が簡略化されていてもよい。
【0027】
動作制限解除部33は、例えば、キャビン7に設置された動作制限解除スイッチであり、オペレータによって動作制限解除スイッチ33がオン操作されると、クレーン作業関連動作の少なくとも一部が上述したクレーン動作制限プログラム28によって制限された状態であっても、クレーン本体(下部走行体2、上部旋回体3)または吊荷5と電源ケーブル17との距離が近づく方向の動作を許容するようになっている。オペレータは、自身の判断又は玉掛け者の判断に基づいて動作制限解除スイッチ33をオン操作する。この動作制限解除スイッチ33がオン操作された場合には、クレーン本体(下部走行体2、上部旋回体3)または吊荷5の移動速度が微速となるように制御され、オペレータはクレーン1を慎重に操作することが可能になる。なお、クレーン1は、制御部22からの動作制限信号が出力されると停止し、動作制限解除スイッチ33がオン操作されると微速で移動できるように構成してもよい。
このような動作制限解除スイッチ33は、クレーン1の作動を自動的に制限する場合に比較し、作業の自由度を高め、効率的なクレーン作業を可能にする。ここで、クレーン作業関連動作とは、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、起伏ウインチ9によるブーム4の起伏動作、巻上ウインチ13による吊荷5等の吊下げ動作・吊上げ動作等のクレーン作業及びこれらクレーン作業に関連して行われる各種動作をいうものとする。また、制限とは、クレーン1を構成する機械(下部走行体2、上部旋回体3、起伏ウインチ9、巻上ウインチ13等)の作動スピードを通常時(ステップS3~S5の機械作動時)よりも遅くする微速動作を行うか、又は機械を停止させるように制御することをいうものとする。
【0028】
(移動式クレーンの動作制限の流れ)
図5は、本実施形態に係るクレーン1における動作制限の流れを示すフローチャート図である。
【0029】
本実施形態において、クレーン1の動作制限は、例えばオペレータの操作に基づいて、制御部23が記憶部28からクレーン動作制限プログラム28を読み出して展開することで実行される。
【0030】
先ず、制御部22は、検知部21を作動させて、クレーン1の周辺に配置された電源ケーブル17の位置データを検知部21によって取得する(ステップS1)。そして、制御部22は、検知部21によって取得した電源ケーブル17の位置データを記憶部27の第1記憶部分31に記憶する。なお、検知部21は、作業現場の地面上に置かれた電源ケーブル17の画像データ(電源ケーブル位置データ)を制御部22に出力し、測距機能を有する場合に、電源ケーブル17までの距離データを併せて制御部22に出力する。
また、制御部22は、クレーン1の機械動作状態(下部走行体2、上部旋回体3、起伏ウインチ9、巻上ウインチ13等動作状態)のデータを取得する。なお、このクレーン1の機械動作状態のデータは、一定時間ごとに取得するか、またはオペレータの操作に基づいて取得し、メモリに書き換え可能な状態でデータ保存する。
【0031】
次に、制御部22は、クレーン動作制限プログラム28によって、下部旋回体2、上部旋回体3、吊荷5と電源ケーブル17との距離(間隔L1~L7)を演算する(ステップS2)。
【0032】
次に、制御部22は、クレーン動作制限プログラム28による演算結果が所定値に到達していない場合(所定値以下でない場合)、オペレータによる機械動作入力(下部走行体2の走行、上部旋回体3の旋回、ブーム4の起伏、巻上ロープ10による吊荷5の吊下げ等の作動信号の入力)を可能にする(ステップS3~S4)。
【0033】
次に、制御部22は、オペレータによる機械動作入力の信号に基づいて、機械動作を許可してクレーン1を稼働させ、クレーン1にクレーン作業関連動作を実施させる(ステップS5)。
【0034】
そして、制御部22は、ステップS1~S5までのクレーン1の動作制限の流れを、クレーン作業が完了するまで続ける(ステップS11)。ここで、制御部22は、クレーン1のクレーン作業が終了したと判断した場合、クレーン1の作動を停止させる(ステップS11)。
【0035】
一方、制御部22は、ステップS3において、クレーン動作制限プログラム28による演算結果が予め入力された所定値に到達した(所定値以下である)と判断した場合、動作制限状態の状態通知を表示部25で行い、オペレータにクレーン1が動作制限状態にあることを通知する(ステップS6)と共に、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限する。
【0036】
次に、制御部22は、機械動作が制限された状態において、オペレータによる機械動作入力(下部走行体2の走行、上部旋回体3の旋回、ブーム4の起伏、巻上ロープ10による吊荷5の吊下げ等の作動信号の入力)を可能にする(ステップS7)。
【0037】
次に、制御部22は、機械(下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5等)と電源ケーブル17との距離を離すような機械動作入力がされた場合(ステップS8)、動作制限のない状態での機械動作を許可する(ステップS5)。
【0038】
一方、制御部22は、機械(下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5等)と電源ケーブル17との距離を近づけるような機械動作入力がされた場合(ステップS8)、動作制限解除スイッチ33がオン操作されるか否かによって機械の作動状態を変える(ステップS9)。
【0039】
すなわち、制御部22は、機械(下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5等)と電源ケーブル17との距離を近づけるような機械動作入力がされた場合(ステップS8)、動作制限解除スイッチ33がオン操作されると(ステップS9)、動作制限のない状態での機械動作を許可する(ステップS5)。
【0040】
これに対し、制御部22は、機械(下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5等)と電源ケーブル17との距離を近づけるような機械動作入力がされた場合(ステップS8)、動作制限解除スイッチ33がオン操作されないと(ステップS9)、機械の動作を制限する(ステップS10)。
【0041】
次に、制御部22は、クレーン1の機械(下部走行体2、上部旋回体3、起伏ウインチ9、巻上ウインチ13等)が停止した状態(ステップS10)において、クレーン1の作業が完了していない場合(ステップS11)、ステップS1からステップS8を続ける。そして制御部22は、ステップS8で下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5と電源ケーブル17との距離を離すような操作がオペレータによってされると、動作制限のない状態での機械動作を許可する(ステップS5)。
【0042】
また、制御部22は、ステップS8で下部走行体2、上部旋回体3、吊荷5と電源ケーブル17との距離を離すような操作がオペレータによってされない場合であっても、動作制限解除スイッチ33がオン操作されると(ステップS9)、動作制限のない状態での機械動作を許可し(ステップS5)、動作制限解除スイッチ33がオン操作されないと(ステップS9)、機械の動作制限状態を維持する(ステップS10)。
なお、制御部22は、ステップS9において、機械動作が禁止されている場合に動作制限解除スイッチ33がオン操作されると、機械動作の制限を全て解除するパターンを実施する他に、機械動作の制限の一部を解除するパターンを実施するか、又は機械動作の一部を解除しつつ微速動作に維持するパターンを実施することができるようになっている。
また、制御部22は、ステップS9において、機械動作が制限されている場合に動作制限解除スイッチ33がオン操作されると、機械動作の制限を全て解除するパターンを実施するか、又は機械動作の制限の一部を解除するパターンを実施できるようになっている。
【0043】
(電源ケーブル位置の特定)
図6は、電源ケーブル17の位置の特定例を示す図である。この
図6に示すように、電源ケーブル17の位置は、クレーン1の所定の基準点34(例えば、上部旋回体3の回転中心34a)から一定角度間隔で引いた検知角度線35と電源ケーブル17とが交差する場所をケーブル位置点36として特定し、また検知角度線35,35間で最もクレーン1に接近している場所をケーブル位置点36として特定する。ここで、検知角度線35は、クレーン1の基準点34を通りクレーン1の前後方向に延びる線を基準線37とすると、基準点34からクレーン1の前方に延びる基準線37上を検知角度0°として、基準点34から反時計回り方向に一定の検知角度間隔で設定される。なお、本実施形態の検知角度線35は、第1~第5検知角度線を例示している。
そして、クレーン1の作動制御は、検知部21によりケーブル位置点36が計測され、その検知部21の計測結果に基づいて制御部22によって判断される。制御部22は、クレーン1(下部走行体2、上部旋回体3)や吊荷5に対して一定範囲内にケーブル位置点36が位置している場合に機械の作動制限を行い、クレーン1(下部走行体2、上部旋回体3)や吊荷5に対して一定範囲内にケーブル位置点36が位置していない場合に機械の作動制限を行わない。
以下に、クレーン1の旋回時の動作制御と、クレーン1の走行時の動作制御とを順次例示する。
【0044】
(クレーンの旋回時の動作制御)
図7は、クレーン1の旋回時の動作制御を説明する図である。この
図7に示すように、検知部21は、上部旋回体3の旋回角度から一定角度範囲38内にあるケーブル位置点36を所定の間隔毎に検知する。次に、クレーン1の制御部は、検知部21で検知された全てのケーブル位置点36が吊荷5と一定距離以上離れていると検知部21の計測結果から判断される場合、機械の動作制限を行わない。一方で、クレーン1の制御部22は、検知部21で検知したケーブル位置点36が一つでも吊荷5から一定距離以下の位置にあると検知部21の計測結果から判断される場合、機械の動作制限を行う。なお、クレーン1は、機械の動作制限が行われた状態において、最も近距離のケーブル位置点36から離れる操作が行われた場合、クレーン作業関連動作を行うことが可能になる。
【0045】
(クレーンの走行時の動作制御)
図8は、クレーン1の走行時の動作制御を説明する図である。この
図8に示すように、検知部21は、クレーン1の前後方向所定範囲内にあるケーブル位置点36を所定の間隔毎に検知する。
図8では、一定の範囲内のクレーン前方の基準線37から一定角度範囲40内にあるケーブル位置点36を所定の間隔毎に検知してケーブル位置点36までの距離を計測する。クレーン1の制御部22は、検知部21で検知した全てのケーブル位置点36が下部走行体2の前方端から一定距離以上離れていると検知部21の計測結果から判断される場合、機械の動作制限を行わない。一方で、クレーン1の制御部22は、検知部21で検知したケーブル位置点36が一つでも下部走行体2の前方端から一定距離以下の位置にあると検知部21の計測結果から判断される場合、機械の動作制限を行う。なお、クレーン1は、機械の動作制限が行われた状態において、最も近距離のケーブル位置点36から離れる操作が行われた場合、クレーン作業関連動作を行うことが可能になる。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態のクレーン1は、電源ケーブル17の位置情報を基にクレーン作業関連動作の少なくとも一部を制御部22で制限するようになっているため、電源ケーブル17が接続されているか否かにかかわらす、電源ケーブル17をクレーン作業関連動作によって損傷させることがなく、かつクレーン作業関連動作の制限を少なくできる。
なお、電源ケーブルが接続された状態で作動するクレーンは、電源ケーブルが接続された状態で機械動作の制限判断を一律におこなうと、通常のクレーン作業関連動作が制限されることになり、操作性が悪くなる。
【0047】
また、本実施形態のクレーン1は、電源ケーブル17の位置を検知部21で検知するようになっているため、クレーン作業関連動作中に電源ケーブル17の位置が変化しても、電源ケーブル17の位置を正確に検知でき、また、電源ケーブル17が複雑に絡み合っていても、電源ケーブル17の位置を正確に検知できる。その結果、本実施形態のクレーン1は、電源ケーブル17がクレーン作業関連動作によって損傷するのをより一層確実に防止できる。
【0048】
本実施形態のクレーン1の制御部22は、クレーン1の吊荷5と電源ケーブル17との間隔が予め定めた数値に到達すると、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限するようになっている。そのため、本実施形態のクレーン1は、クレーン各部(例えば、下部走行体2、上部旋回体3)及び吊荷5と電源ケーブル17との間隔を数値で確実に制御でき、吊荷作業時に、クレーン作業関連動作の制限を少なくしつつ、電源ケーブル17がクレーン作業関連動作によって損傷するのをより一層確実に防止できる。
【0049】
本実施形態のクレーン1の制御部22は、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限した状態において、クレーン1の吊荷5が電源ケーブル17から離れる方向に移動するのを許容するようになっている。その結果、本実施形態のクレーン1は、電源ケーブル17を損傷させることがない動作を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態のクレーン1は、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限した状態であっても、クレーン本体(下部走行体2、上部走行体3)または吊荷5と電源ケーブル17との距離が近づく方向の動作を許容する動作制限解除スイッチ(動作制限解除部)33を有している。そのため、本実施形態のクレーン1は、クレーン作業関連動作が自動的に制限された場合でも、オペレータが動作制限解除スイッチ33を使用することで、その動作制限を解除できる。これにより、本実施形態のクレーン1は、自動的な制限により動作ができなくなる又は動作範囲が過剰に制限されて動作がしにくいということが無くなる。更に、動作制限解除スイッチ33を押すという行為によって、オペレータに対して電源ケーブル17があるという事実を報知できるので、オペレータは注意して作業することになる。よって、本実施形態のクレーン1は、オペレータによる慎重でより安全な操作を促進できる。
【0051】
本実施形態のクレーン1の制御部22は、吊荷5を含む所定の上部旋回体3の旋回角度範囲または下部走行体2の前後方向所定の範囲離れた位置にある電源ケーブル17の位置情報を特定し、その特定した位置情報に対して、近づく方向へのクレーン作業関連動作を制限するようになっている。その結果、本実施形態のクレーン1は、電源ケーブル17に干渉するのを抑えつつ、クレーン作業関連動作の制限を少なくすることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明に係るクレーン1は、検知部21の設置角度をサーボモータ等の可動機構部(図示せず)で可変に設定してもよい。このようなクレーン1は、電源ケーブル17が作業中に何らかの原因によって姿勢が変化しても、その電源ケーブル17の姿勢の変化を確実に捉えることができ、作業中における電源ケーブル17の損傷を確実に防止できる。
【0053】
また、本発明に係る移動式クレーンは、クローラクレーンに限定されず、ホイールクレーン、トラッククレーン等の移動式クレーンに広く適用できる。
【0054】
また、本発明に係る移動式クレーンは、電源ケーブル17が接続されて電力供給されるものの、下部走行体2が動かない状態でクレーン作業を行うクレーン1にも適用できる。
【0055】
また、本発明は、ショベルカーであって、ブーム及びアームがあって、アームにロープが吊り下げられていて、そのロープにフックが取り付けられているものも移動式クレーンに含める。
【0056】
また、本発明において、検知部21は、電源ケーブル17がクレーン1の所定範囲内に位置しているか否か(例えば、電源ケーブル17と吊荷5との間隔が所定値以下か否か)の検知ができれば良いため、測距機能のないカメラやセンサでも良い。
【0057】
また、本発明に係る移動式クレーンは、上記実施形態に係る移動式クレーンのように、電源ケーブル17の位置を画像データや距離データ等の位置情報で特定する場合に限られない。すなわち、本発明に係る移動式クレーンは、電源ケーブル17が所定範囲内(例えば、吊荷5から半径Xm以内の範囲)に存在(位置)するか否かを検知部21で検知し、その検知部21の検知結果に基づいて、制御部22がクレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限するように制御を行うようにしてもよい。この場合も、電源ケーブル17の位置に基づいて、クレーン作業関連動作の少なくとも一部を制限するものに含まれる。
【0058】
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 クレーン(移動式クレーン)
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 吊荷
17 電源ケーブル
21 検知部
22 制御部
33 動作制限解除スイッチ(動作制限解除部)