(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094649
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/624 20210101AFI20240703BHJP
H01J 49/06 20060101ALI20240703BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G01N27/624
H01J49/06 200
H01J49/06 800
H01J49/16 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211324
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友貴
(72)【発明者】
【氏名】小坂 知裕
(72)【発明者】
【氏名】寺西 知子
(72)【発明者】
【氏名】生田 慶
(72)【発明者】
【氏名】アベシンゲ レシヤン マドゥカ
(72)【発明者】
【氏名】松本 真己子
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA02
2G041DA10
2G041DA18
2G041EA05
2G041GA29
(57)【要約】
【課題】荷電粒子の発生量を十分に確保する。
【解決手段】検出器20は、第1主面23Aを有する第1基板23と、第2主面24Aを有する第2基板24と、第1主面23Aに設けられる第1電極21と、第2主面24Aに設けられて第1電極21と間隔を空けて対向し、第1電極21との間に荷電粒子の流路25を形成する第2電極22と、第1主面23Aまたは第2主面24Aに設けられて第1電極21または第2電極22に対して流路25の下流側に配され、荷電粒子を捕集する第3電極26と、第1主面23Aに設けられて第1電極21に対して流路25の上流側に配される第4電極11と、第2主面24Aに設けられて第2電極22に対して流路25の上流側に配され、第4電極11との間でコロナ放電を発生させる第5電極12と、を備え、第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに位置ずれして配される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1主面と間隔を空けて対向する第2主面を有する第2基板と、
前記第1基板の前記第1主面に設けられる第1電極と、
前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極と間隔を空けて対向し、前記第1電極との間に検出対象物である荷電粒子の流路を形成する第2電極と、
前記第1基板の前記第1主面または前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極または前記第2電極に対して前記流路の下流側に配され、前記荷電粒子を捕集する第3電極と、
前記第1基板の前記第1主面に設けられて前記第1電極に対して前記流路の上流側に配される第4電極と、
前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第2電極に対して前記流路の上流側に配され、前記第4電極との間でコロナ放電を発生させる第5電極と、を備え、
前記第4電極及び前記第5電極は、前記流路の上流側と下流側とに位置ずれして配される検出器。
【請求項2】
前記第4電極及び前記第5電極は、前記流路の上流側と下流側とに間隔を空けて配される請求項1記載の検出器。
【請求項3】
前記第4電極及び前記第5電極のうちの一方の電極は、前記流路に沿う第1方向について他方の電極に近づくほど幅が狭くなる針状部を有する請求項1または請求項2記載の検出器。
【請求項4】
前記針状部は、曲率半径が30μm~200μmの範囲とされ、
前記一方の電極と前記他方の電極との間の距離が1.5mm~10mmの範囲とされる請求項3記載の検出器。
【請求項5】
前記一方の電極は、複数の前記針状部を有しており、
複数の前記針状部は、前記第1主面または前記第2主面に沿い且つ前記第1方向と交差する第2方向について間隔を空けて並んで配される請求項3記載の検出器。
【請求項6】
前記一方の電極は、前記第2方向に沿って延在していて複数の前記針状部が連なる幹部を有しており、
前記他方の電極は、前記第2方向に沿って直線状に延在する請求項5記載の検出器。
【請求項7】
前記他方の電極は、円弧状をなしていて曲率中心が前記第1方向について前記針状部側に位置する請求項3記載の検出器。
【請求項8】
前記第4電極及び前記第5電極のうち、前記流路の上流側に配される電極が陽極電極とされ、前記流路の下流側に配される電極が陰極電極とされる請求項1または請求項2記載の検出器。
【請求項9】
前記第4電極及び前記第5電極からなる電極組は、前記流路に沿う第1方向について間隔を空けた位置に複数配される請求項8記載の検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン移動度によりイオン(荷電粒子)を分離検出する検出器の一例として下記特許文献1から特許文献3に記載されたものが知られている。特許文献1には、検出器としてイオン化装置が記載されている。特許文献1に記載のイオン化装置は、本体部、軟X線管、及び電極を備える。本体部は、所定の軸方向に延びており試料分子をイオン化するイオン化室と、イオン化室に試料分子を導入する導入口と、試料分子イオンを排出する排出口とを有する。軟X線管は、電子源と、電子源からの電子を受けて軟X線を発生するターゲット部とを有する。電極はイオン化室の一端側、他端側にそれぞれ設けられている。軟X線管の軟X線出射軸方向は、上記所定の軸方向と交差している。ターゲット部に設けられた電極と電極とは、互いに短絡されている。導入口の中心軸方向は、軟X線出射軸方向と交差している。
【0003】
特許文献2には、検出器として化学センサ・システムが記載されている。特許文献2に記載の化学センサ・システムは、試料をイオン化する試料調製セクションと、試料調製セクションにより生成されたイオンを濾過するフィルタ・セクションと、フィルタ・セクションを通過したイオンを検出する出力セクションと、を備える。このうち、液体試料調製セクションに備わるエレクトロスプレー・ヘッドと吸引電極との間に電圧差が生じることで、試料がイオン化される。
【0004】
特許文献3には、検出器としてイオン移動度分光計が記載されている。特許文献3に記載のイオン移動度分光計は、ガスまたは蒸気のサンプルをイオン化するコロナ放電ニードルを有する。ゲートを開閉して、コロナ放電によって生じたイオンのドリフトチャンバへの導入を許可または阻止する。コロナ放電ニードルおよびゲートの作動を制御し、少なくとも2度のコロナ放電中ゲートを開いて、直近の放電によって生じた移動速度の速いイオンを、それより以前の放電によって生じた移動速度の遅いイオンとともに通過させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1は、軟X線を用いて試料をイオン化する技術を開示する。上記した特許文献2は、エレクトロスプレー法によって試料をイオン化する技術を開示する。上記した特許文献3は、コロナ放電によって試料をイオン化する技術を開示する。このうち、特許文献3に記載のイオン移動度分光計では、金属製のコロナニードルを電気絶縁性のハウジングに沿って同軸状に突出させ、コロナニードルの鋭利な先端を真鍮製またはニッケル製のチューブ内に位置させている。そして、コロナニードルとチューブとの間に、コロナ放電を発生するのに十分である約5kVの高電圧を加えるようにしている。
【0009】
ところで、電界非対称イオン移動度分析法システム(FAIMS:field asymmetric ion mobility spectrometry)を用いた移動度分析装置においては、一対の平行平板型のフィルタ電極等を、互いに対向する一対の基板に設ける構成が採られる場合がある。コロナ放電によって試料をイオン化するイオン化源を移動度分析装置に内蔵させるには、コロナ放電を発生させるための電極を一対の基板に設ける場合がある。このような場合、一対の基板の間の間隔は大きくても数百μm程度と狭いため、コロナ放電を発生させるためのスペースを確保するのが難しいという事情がある。このため、イオンの発生量が十分に得られない、といった問題が生じるおそれがあった。
【0010】
本明細書に記載の技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、荷電粒子の発生量を十分に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本明細書に記載の技術に関わる検出器は、第1主面を有する第1基板と、前記第1基板の前記第1主面と間隔を空けて対向する第2主面を有する第2基板と、前記第1基板の前記第1主面に設けられる第1電極と、前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極と間隔を空けて対向し、前記第1電極との間に検出対象物である荷電粒子の流路を形成する第2電極と、前記第1基板の前記第1主面または前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極または前記第2電極に対して前記流路の下流側に配され、前記荷電粒子を捕集する第3電極と、前記第1基板の前記第1主面に設けられて前記第1電極に対して前記流路の上流側に配される第4電極と、前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第2電極に対して前記流路の上流側に配され、前記第4電極との間でコロナ放電を発生させる第5電極と、を備え、前記第4電極及び前記第5電極は、前記流路の上流側と下流側とに位置ずれして配される。
【0012】
(2)また、上記検出器は、上記(1)に加え、前記第4電極及び前記第5電極は、前記流路の上流側と下流側とに間隔を空けて配されてもよい。
【0013】
(3)また、上記検出器は、上記(1)または上記(2)に加え、前記第4電極及び前記第5電極のうちの一方の電極は、前記流路に沿う第1方向について他方の電極に近づくほど幅が狭くなる針状部を有してもよい。
【0014】
(4)また、上記検出器は、上記(3)に加え、前記針状部は、曲率半径が30μm~200μmの範囲とされ、前記一方の電極と前記他方の電極との間の距離が1.5mm~10mmの範囲とされてもよい。
【0015】
(5)また、上記検出器は、上記(3)または上記(4)に加え、前記一方の電極は、複数の前記針状部を有しており、複数の前記針状部は、前記第1主面または前記第2主面に沿い且つ前記第1方向と交差する第2方向について間隔を空けて並んで配されてもよい。
【0016】
(6)また、上記検出器は、上記(5)に加え、前記一方の電極は、前記第2方向に沿って延在していて複数の前記針状部が連なる幹部を有しており、前記他方の電極は、前記第2方向に沿って直線状に延在してもよい。
【0017】
(7)また、上記検出器は、上記(3)から上記(6)のいずれかに加え、前記他方の電極は、円弧状をなしていて曲率中心が前記第1方向について前記針状部側に位置してもよい。
【0018】
(8)また、上記検出器は、上記(1)から上記(7)のいずれかに加え、前記第4電極及び前記第5電極のうち、前記流路の上流側に配される電極が陽極電極とされ、前記流路の下流側に配される電極が陰極電極とされてもよい。
【0019】
(9)また、上記検出器は、上記(8)に加え、前記第4電極及び前記第5電極からなる電極組は、前記流路に沿う第1方向について間隔を空けた位置に複数配されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本明細書に記載の技術によれば、荷電粒子の発生量を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る検出セルを備える移動度分析装置の構成を示す概略図
【
図2】実施形態1に係る移動度分析装置に備わる制御部のブロック図
【
図3】実施形態1に係る移動度分析装置によって得られたFAIMSスペクトルを表すマップグラフ
【
図4】実施形態1に係る検出セルに備わる第1基板の平面図
【
図5】実施形態1に係る検出セルに備わる第2基板の平面図
【
図6】実施形態1に係る第1基板の平面構成に、第2基板の平面構成を重ねて示した平面図
【
図7】実施形態2に係る第1基板の平面構成に、第2基板の平面構成を重ねて示した平面図
【
図8】実施形態3に係る第1基板の平面構成に、第2基板の平面構成を重ねて示した平面図
【
図9】実施形態4に係る検出セルを備える移動度分析装置の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
実施形態1を
図1から
図6によって説明する。本実施形態では、電界非対称イオン移動度分析法システム(FAIMS:field asymmetric ion mobility spectrometry)を用いた移動度分析装置1(以下、単に「分析装置」という。)を示す。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。
【0023】
分析装置1は、
図1に示すように、検出セル(検出器)20と、ポンプ30(送気装置の一例)と、制御部40と、を含む(
図2を参照)。以下、各要素について説明する。
【0024】
検出セル20は、荷電粒子(イオン)CPを移動度の差に基づいて分離(フィルタリング)して所定の移動度の荷電粒子CPごと検出する要素である。検出セル20は、第1電極21、第2電極22、第1基板23(支持体の一例)、第2基板24(支持体の一例)、検出電極(第3電極)26、及び偏向電極27を含む。それに加え、本実施形態に係る検出セル20は、分析対象の化合物(試料)の原子及び分子をイオン化して荷電粒子CPを生成するためのイオン化源10を内蔵している。検出セル20のこれらの各要素は、チャンバ内に配置されていてもよい。なお、イオン化源10に関しては後に詳しく説明する。
【0025】
第1電極21及び第2電極22は、互いに対向して配置されることで、平行平板型の一対のフィルタ電極を構成する。第1電極21及び第2電極22は、対向する主面同士が平行をなしている。第1電極21と第2電極22との間には、所定の間隔が空けられている。そして、第1電極21と第2電極22との間には、荷電粒子CPの流路25が形成されている。以下では、流路25において荷電粒子CPが流れる方向を「第1方向」とする。第1方向は、荷電粒子CPの流れ方向であるとも言える。第1方向は、各図面のX軸方向と一致している。また、以下では、第1電極21及び第2電極22の主面に沿い、第1方向と直交(交差)する方向を「第2方向」とする。第2方向は、各図面のY軸方向と一致している。流路25は、イオン分離空間(ドラフト空間)を含む。本例の第1電極21及び第2電極22はそれぞれ、後述する第1基板23及び第2基板24の対向面上に備えられている。また、以下では、第1電極21から第2電極22へ向かう方向を「第3方向」とする。第3方向は、第1電極21及び第2電極22における対向面(主面)の法線方向である。第3方向は、各図面のZ軸方向と一致している。
【0026】
第1電極21及び第2電極22の形状や大きさ等は、特に制限されない。本例の第1電極21及び第2電極22はそれぞれ、X軸方向(第1方向)にやや長尺の矩形状をなしている。第1電極21及び第2電極22のX軸方向に沿う寸法は、これに限定されるものではないが、例えば、0.1cm以上(例えば、1cm以上)程度であり、50cm以下(例えば、10cm以下)程度とすることができる。第1電極21及び第2電極22の厚みは、特に制限されず、例えば、それぞれ独立して、50nm以上1μm以下程度の範囲で適宜設定することができる。第1電極21及び第2電極22の厚みは、典型的には600nm以下、例えば400nm以下であり、また、典型的には100nm以上、例えば200nm以上とすることができる。
【0027】
第1電極21と第2電極22との間の間隔であるフィルタギャップGは、厳密には制限されない。フィルタギャップGは、狭くすることでイオン分離空間に形成する電界の強度(後述する分散電圧に相当)を効果的に高めることができるために好ましい。しかし、フィルタギャップGは、狭すぎると第1電極21と第2電極22との間で放電やエアフローの乱流が生じやすくなるという背反がある。したがって、フィルタギャップGは、例えば数十μm以上で、数百μm以下程度の範囲とされるのがよい。このようにすれば、検出セル20の流路25には、乱流が生じ難くなり、層流が生じ易くなる。
【0028】
第1電極21及び第2電極22を構成する材料は、特に制限されない。第1電極21及び第2電極22を構成する材料は、両電極21,22間に後述する電界を発生させることができる各種の導電性材料であればよく、金属材料、無機導電性材料、及び有機導電性材料のいずれであってもよい。検出対象である試料及びそのイオンが金属腐食性を示すことが考えられる場合は、第1電極21及び第2電極22の表面を構成する導電性材料として、無機導電性材料及び有機導電性材料のいずれかを採用するとよい。第1電極21及び第2電極22を構成する金属材料としては特に制限はなく、例えばArFエキシマレーザを用いたリソグラフィ技術によって第1電極21及び第2電極22を作製する場合、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、Cr(クロム)、モリブデン(Mo)、Ta(タンタル)、及びタングステン(W)等の高導電性金属の中から選択されるいずれか1種類の金属やその金属の合金、いずれか2種以上を含む合金等によって構成するとよい。これらの金属材料は、例えば上層側から順に、W/Ta,Ti/Al,Ti/Al/Ti,またはCu/Ti等の積層構造として、下地(典型的には、第1基板23や第2基板24)に対する密着性等の物性を高めるようにしてもよい。無機導電性材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium-Zinc-Oxide)、IGZO(Indium-Gallium-Zinc-Oxide)、ZnO等が挙げられる。有機導電性材料としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン類等が挙げられる。第1電極21及び第2電極22は、金属材料、無機導電性材料、及び有機導電性材料のいずれか2種以上を積層して構成してもよい。
【0029】
第1基板23及び第2基板24は、互いの主面が対向するよう配される。第1基板23は、第1電極21及び偏向電極27を支持する要素である。第1基板23の一対の主面のうち、第2基板24と対向する主面が、第1主面23Aとされる。第1基板23の第1主面23Aには、第1電極21及び偏向電極27が設けられる。第1基板23は、第1電極21と偏向電極27とをX軸方向に離間した位置に備える。第2基板24は、第2電極22及び検出電極26を支持する要素である。第2基板24の一対の主面のうち、第1基板23と対向する主面が、第2主面24Aとされる。第2基板24の第2主面24Aには、第2電極22及び検出電極26が設けられる。第2基板24は、第2電極22と検出電極26とをX軸方向に離間した位置に備える。第1基板23及び第2基板24は、互いに長尺の矩形をなす平板状である。流路25におけるポンプ30の送気方向(荷電粒子CPの移動方向)は、第1基板23及び第2基板24の長手方向(X軸方向)と一致しており、その上流側(
図1の左側)に第1電極21及び第2電極22が配され、下流側(
図1の右側)に、検出電極26及び偏向電極27が配されている。
【0030】
本実施形態の第1基板23及び第2基板24は、電気絶縁性を有する各種の絶縁性材料によって構成することができる。絶縁性材料としては、室温(例えば25℃)における体積抵抗率が107Ωcm以上(例えば、1010Ωcm以上、1012Ωcm以上、さらには1015Ωcm以上)の材料が挙げられ、例えば、上記体積抵抗率を有する有機材料または無機材料等であってよい。これに限定されるものではないが、本実施形態においては、上記電極をリソグラフィ技術によって好適に形成できるとの観点から、第1基板23及び第2基板24として、平板状のガラス基板を用いている。第1基板23及び第2基板24の厚みに制限はないが、例えば、0.1mm~1mm程度(一例として、0.5mm、0.7mm等)とすることが例示される。
【0031】
検出電極26は、検出セル20に導入された荷電粒子CPが接触することでその電荷を受け取る要素である。検出電極26は、第1電極21及び第2電極22に対して流路25の下流側に並んで配される第3電極である。検出電極26は、荷電粒子CPを受ける捕集面を有している。また、検出電極26は、制御部40と接続されている。このような構成によって、検出電極26は、捕集面において受け取った荷電粒子CPの量を制御部40にて把握することができるようになっている。検出電極26の詳しい構成については、後に改めて説明する。
【0032】
偏向電極27は、検出セル20に導入された荷電粒子CPを検出電極26に捕集させるように、荷電粒子CPを検出電極26に向けて偏向させるための要素である。偏向電極27は、第1電極21及び第2電極22に対して流路25の下流側に並んで配される電極である。偏向電極27は、検出電極26に対向するように配置される。偏向電極27は、後述する第2電位調整部42に接続されている。偏向電極27は、第2電位調整部42によって電圧が印加されることによって、検出電極26と偏向電極27との間に荷電粒子CPを検出電極26に偏向させる電界を形成することが可能とされる。検出電極26と偏向電極27との間は、イオン分離空間を通過した荷電粒子CPを検出するための検出空間である。
【0033】
検出電極26及び偏向電極27の形状は、特に制限されない。検出電極26及び偏向電極27の厚みは、それぞれ、例えば1μm以下程度であってよく、典型的には600nm以下、例えば500nm以下、400nm以下、200nm以下などであってよい。また、検出電極26及び偏向電極27の厚みは、それぞれ独立して、10nm以上程度であってよく、典型的には50nm以上、例えば100nm以上であってよい。検出電極26及び偏向電極27を構成する材料及びその構造については、上記の第1電極21及び第2電極22と同様であってよい。
【0034】
ポンプ30は、荷電粒子CPを含む雰囲気ガスを、検出セル20内を流れ方向に沿って移動させるための要素である。本実施形態のポンプ30は、流れ方向について検出セル20の下流側に設置されている。ポンプ30としては、イオン化源10によって生成された荷電粒子CPを、後述する検出セル20に所定の速度で送ることができる各種の送気装置を用いることができる。ポンプ30の送気機構は特に制限されず、ダイアフラム式、回転翼式、ピストン式、ロータリーベーン式、その他の送気装置等であってよい。検出セル20の大きさ等にもよるが、ポンプ30として、一例では、最大吐出圧力が約0.03MPa以下程度、送気量約1L/min以下程度のマイクロブロアを用いることができる。例えば、圧電セラミックスによる高周波振動(例えば超音波振動)によってダイアフラムを変動させるようにしたマイクロブロアによると、脈動を抑制して送気できる点において、本実施形態で用いるポンプ30として好ましい。
【0035】
制御部40は、分析装置1の駆動を制御する要素である。本実施形態の制御部40は、
図2に示すように、検出セル20と接続されている。より具体的には、制御部40は、第1電極21、第2電極22、検出電極26及び偏向電極27と接続されており、これらの動作を制御することができるように構成されている。また、本実施形態の制御部40は、イオン化源10、ポンプ30に接続されるとともに、分析装置1に電力を供給するための外部電源と接続できるようになっている。
【0036】
制御部40は、各種情報等を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種の情報を記憶する記憶部Mと、計時機能を有するタイマT等と、を有するマイクロコンピュータによって構成されている。これに限定されるものではないが、ROMには、例えば、後述する第1電位調整部41及び第2電位調整部42のそれぞれについて電圧を印加するために用いられるコンピュータプログラム、データベース、データテーブルや、検出された荷電粒子CPの量に基づく各種解析処理を行うためのコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納されていてもよい。また記憶部Mには、例えば、分析対象のID情報、検出された荷電粒子CPの量に関する情報、各種解析処理に用いられる情報、解析結果等に関する情報等を格納することができる。
【0037】
制御部40は、第1電位調整部41と、第2電位調整部42と、計測部43と、イオン化源制御部44と、流量調整部45と、を備える。これらの各部は独立して、ハードウェアによって構成されていてもよいし、CPUがプログラムを実行することにより機能的に実現されていてもよい。
【0038】
第1電位調整部41は、第1電極21と第2電極22との間に生じる電位差を調整する要素である。第1電位調整部41が第1電極21と第2電極22との間に電位差(フィルタ電圧)を発生させることにより、第1電極21と第2電極22との間に電界が形成される。ここで、イオンの移動度は、低電界中では電界強度によらず一定であるが、高電界中では電界強度に依存してその値が変化する。そこで第1電位調整部41は、典型的にはパルス電圧発生装置等の可変電圧発生器を備えており、例えば、矩形波状の分散電圧(Dispersion Voltage:DV)を印加できるようになっている。第1電極21と第2電極22との間に印加される分散電圧DVは、正と負の両方の極性を示す双極性パルス電圧である。正と負の両方の極性における電位は、典型的には、非対称に切り替えられるようになっている。電圧波形は、高電界を形成する高電圧レベルVHである期間THと、低電界を形成する低電圧レベルVLである期間TLと、を交互に含む非対称パルス波形となっている。この電圧波形において、電圧の時間平均はゼロとなるように設定されている。
【0039】
第1電極21と第2電極22との間のイオン分離空間には、後述する流量調整部45によるポンプ30の駆動によって、荷電粒子CPを含むキャリアガス(典型的には中性)の流れが一定の流速で形成されている。ここで、第1電位調整部41によって高電圧レベルVHの電圧が印加されることで、イオン分離空間に高電界が形成される。また、第1電位調整部41によって低電圧レベルVLの電圧が印加されることで、イオン分離空間に低電界が形成される。高電界と低電界とでは、極性が異なっている。このような非対称な電界が交互に発生する環境に荷電粒子CPが送られると、荷電粒子CPは、第1電極21及び第2電極22に交互に引き寄せられながらジグザグに進行する。このとき、第1電極21または第2電極22に大きく偏向された荷電粒子CPは、第1電極21または第2電極22に衝突し、流路25を通過できない。第1電極21と第2電極22との間でバランスした荷電粒子CPのみが、流路25を通過して、下流側の検出電極26に送られる。流路25を通過するイオン種は、次のようにして変化させることができる。すなわち、第1電位調整部41によって、第1電極21と第2電極22との間に、分散電圧DVに重畳させて、例えば、補償電圧(Compensation Voltage:CV)を、大きさを変えながら印加すればよい。補償電圧CVは、直流電圧であり、所定の分散電圧DVごとに一定の変化率及び周期TCVで変化させることで、移動度の異なるイオン種を順に検出空間に送ることができる。
【0040】
第2電位調整部42は、検出電極26と偏向電極27との間に所定の電位差を付与する要素である。本実施形態における第2電位調整部42は、偏向電極27に接続されており、偏向電極27に対して電位を付与するようになっている。第2電位調整部42は、検出セル20に導入された荷電粒子CPがプラスイオンであれば、検出電極26に対して偏向電極27が高電位となるように偏向電極27の電位を調整する。第2電位調整部42は、検出セル20に導入された荷電粒子CPがマイナスイオンであれば、検出電極26に対して偏向電極27が低電位となるように、偏向電極27の電位を調整する。これにより、イオン分離空間を通過した荷電粒子CPを検出電極26に向けて偏向させることができる。
【0041】
計測部43は、検出電極26に到達した荷電粒子CPの数を検出する要素である。計測部43は、検出電極26に接続されており、検出電極26に到達した荷電粒子CPの量に基づく電流値を、トランスインピーダンス回路により電圧値に変換してイオン量を取得する。計測部43は、荷電粒子CPの数量を計測するだけでなく、例えば第1電位調整部41と協働して、荷電粒子CPを定性及び定量することができるように構成されていてもよい。計測部43によって計測された荷電粒子CPの数量等に関する情報は、例えば、記憶部Mに記憶される。
【0042】
イオン化源制御部44は、イオン化源10に接続されており、イオン化源10の動作を制御できるように構成されている。イオン化源制御部44は、イオン化源10の動作を制御することで、発生させる荷電粒子CPの極性を、プラスイオンとマイナスイオンとに切り替えることができるようになっている。これに限定されるものではないが、イオン化源制御部44が、マイナスの荷電粒子CPを発生させたときは、第1電位調整部41及び第2電位調整部42は、マイナスの荷電粒子CPが流路25を通過できるように、第1電極21及び偏向電極27に印加する電圧をそれぞれ調整する。また、イオン化源制御部44が、プラスの荷電粒子CPを発生させたときは、第1電位調整部41及び第2電位調整部42は、プラスの荷電粒子CPが流路25を通過できるように、第1電極21及び偏向電極27に印加する電圧をそれぞれ調整する。
【0043】
流量調整部45は、ポンプ30に接続されており、ポンプ30の動作を制御できるように構成されている。流量調整部45は、例えば、ポンプ30の駆動と停止のタイミングや、ポンプ30に備えられたファンの回転速度を制御することで、検出セル20内の気体の流速等を調整できるようになっている。
【0044】
第1電位調整部41により第1電極21と第2電極22との間に印加される分散電圧DV及び補償電圧CVと、検出電極26からの電気信号と、の関係から、
図3に示すようなFAIMSスペクトルを得ることができる。
図3は、分析条件(補償電圧DV及び分散電圧CV)と、その分析条件によって検出される試料イオン量(イオン電流)と、の関係を例示したマップグラフである。
図3における縦軸が分散電圧DV(単位は「V」)であり、横軸が補償電圧CV(単位は「V」)である。
図3のグラフにおいては、検出された試料イオンの量が多い分析条件ほど、当該分析条件が濃い色で示されるようになっている。
図3に示すようなFAIMSスペクトルを得るには、例えば分散電圧DVを最小値に設定し、補償電圧CVを下限電圧V
CVLから上限電圧V
CVHに至るまで変化させるスキャンを行う。それから分散電圧DVを最小値よりも大きい値に変更し、再び補償電圧CVのスキャンを行う。この補償電圧CVのスキャンを、分散電圧DVが最大値になるまで繰り返し行えばよい。
【0045】
次に、イオン化源10について説明する。イオン化源10は、分析対象の化合物(試料)の原子及び分子をイオン化し、荷電粒子CPを生成する装置である。本実施形態では、イオン化源10のイオン化手法として、化学イオン化法の一種である大気圧化学イオン化(APCI:Atmospheric Pressure Chemical Ionization)法を採っている。具体的には、イオン化源10は、大気圧環境化でコロナ放電を発生させることで、試料の原子及び分子をイオン化する。このイオン化源10によって生成された荷電粒子CPは、ポンプ30によって送気されることで発生する気流に乗って、検出セル20の流路25を上流側から下流側へ向けて流動する。
【0046】
イオン化源10の具体的な構成について説明する。イオン化源10は、
図1に示すように、第1基板23に設けられる第4電極(他方の電極)11と、第2基板24に設けられる第5電極(一方の電極)12と、を有する。第4電極11は、第1基板23の第1主面23Aに設けられている。第4電極11は、第1電極21に対して流路25の上流側に間隔を空けた位置に配されている。つまり、第1基板23の第1主面23Aには、流路25の上流側から第4電極11、第1電極21、偏向電極27の順でそれぞれ間隔を空けて並んで配されている。第5電極12は、第2基板24の第2主面24Aに設けられている。第5電極12は、第2電極22に対して流路25の上流側に間隔を空けた位置に配されている。つまり、第2基板24の第2主面24Aには、流路25の上流側から第5電極12、第2電極22、検出電極26の順でそれぞれ間隔を空けて並んで配されている。
【0047】
イオン化源10を構成する第4電極11及び第5電極12は、
図3に示すように、イオン化源制御部44に接続されている。イオン化源制御部44によって第4電極11及び第5電極12が通電されると、第4電極11と第5電極12との間にコロナ放電が発生する。このコロナ放電によって試料の原子及び分子がイオン化された荷電粒子CPが生成される。生成された荷電粒子CPは、
図1に示すように、第4電極11と第5電極12との間にある流路25に対してZ軸方向について万遍なく供給され、第1主面23A付近や第2主面24A付近に偏在し難くなっている。本実施形態では、検出セル20のフィルタギャップGが、流路25に層流が生じ易くなるよう調整されているので、上記のように流路25においてZ軸方向について万遍なく生成された荷電粒子CPが、層流に乗って下流側へ向けて効率的に流動し易くなっており、第1主面23A付近や第2主面24A付近にて滞留し難くなっている。
【0048】
そして、本実施形態に係るイオン化源10を構成する第4電極11及び第5電極12は、
図1に示すように、流路25の上流側と下流側とに位置ずれして配されている。ここで、一対の基板23,24の間の間隔であるフィルタギャップGは、大きくて数百μm程度であり、第4電極11と第5電極12との間にコロナ放電を安定的に発生させるには十分な大きさではない。その点、上記したように第4電極11及び第5電極12が、流路25の上流側と下流側とに位置ずれして配されることで、第4電極11と第5電極12との間の距離D1を、フィルタギャップGよりも大きくすることができる。これにより、第4電極11と第5電極12との間でコロナ放電を安定的に発生させることができるので、荷電粒子CPの発生量を十分に確保することができる。本実施形態では、第4電極11と第5電極12との間の距離D1は、例えば1.5mm以上で10mm以下の範囲とされる。距離D1が1.5mm以上とされることで、コロナ放電を安定的に発生させることができる。距離D1が10mm以下とされることで、コロナ放電を発生させるために第4電極11及び第5電極12に印加することが求められる電圧の値を低く抑えることができる。なお、上記した距離D1は、第4電極11から第5電極12までの直線距離である。
【0049】
第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに間隔D2を空けて配されている。この間隔D2は、第4電極11から第5電極12までのX軸方向に沿う直線距離であり、上記した距離D1よりも短い。具体的には、第5電極12は、第4電極11に対して流路25の上流側に間隔D2を空けた位置に配され、第4電極11は、第5電極12に対して流路25の下流側に間隔D2を空けた位置に配されている。第4電極11と第5電極12との間の間隔D2は、第4電極11と第5電極12との間の距離D1が1.5mm以上で10mm以下の範囲となるような数値範囲に設定されている。フィルタギャップGは、既述した通り、数十μm以上で、数百μm以下程度の範囲とされているので、第4電極11と第5電極12との間の間隔D2は、例えば数百μm以上で、数mm以下の範囲とされる。以上のように、第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに間隔D2を空けて配されているから、仮に第4電極及び第5電極の一部同士が重畳する位置関係とされる場合に比べると、第4電極11と第5電極12との間の距離D1を大きくすることができる。これにより、第4電極11と第5電極12との間でコロナ放電をより安定的に発生させることができ、荷電粒子CPの発生量をより多く確保することができる。
【0050】
続いて、イオン化源10を含めて検出セル20の具体的な構成について
図1,
図4から
図6を用いて説明する。なお、
図4及び
図5には、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間に介在して設けられる一対のスペーサ28が二点鎖線によって図示されている。一対のスペーサ28は、第1基板23と第2基板24との間の間隔、つまりフィルタギャップGを所定の大きさに保持するためのものである。一対のスペーサ28は、Y軸方向について流路25を挟んだ位置に配されていてX軸方向に沿って延在している。また、スペーサ28は、光及び熱の少なくとも一方の付与により硬化する硬化材と、硬化材に分散配合されるスペーサ粒子と、を含む。スペーサ粒子は、硬化材への分散性を考慮して、例えば、ガラスファイバやシリコン系樹脂等からなる。スペーサ粒子の粒径は、フィルタギャップGに係る目標値とほぼ等しく、例えば50μm~300μmの範囲程度とされる。
【0051】
検出セル20を構成する第1基板23は、
図4に示すように、平面に視て横長の方形状をなしている。第1電極21は、平面に視て横長の方形状をなしており、第1基板23の第1主面23Aにおいて偏向電極27に対して上流側に間隔を空けて位置し、第4電極11に対して下流側に間隔を空けて位置する。第1電極21は、Y軸方向についての両端部が一対のスペーサ28と重畳している。従って、第1電極21は、Y軸方向について流路25の全幅にわたって配されている。第1電極21には、第1基板23の第1主面23Aにおいてスペーサ28の外側に配される第1引き出し配線W1が接続されている。第1引き出し配線W1は、第1電位調整部41に接続されている(
図3を参照)。偏向電極27は、平面に視てやや縦長の方形状をなしており、第1基板23の第1主面23Aにおいて第1電極21に対して下流側に間隔を空けて位置する。偏向電極27は、Y軸方向についての両端部が一対のスペーサ28と重畳している。従って、偏向電極27は、Y軸方向について流路25の全幅にわたって配されている。偏向電極27には、第1基板23の第1主面23Aにおいてスペーサ28の外側に配される第2引き出し配線W2が接続されている。第2引き出し配線W2は、第2電位調整部42に接続されている(
図3を参照)。第4電極11は、平面に視てやや縦長の方形状をなしており、第1基板23の第1主面23Aにおいて第1電極21に対して上流側に間隔を空けて位置する。第4電極11は、上流側の端部と下流側の端部とが、いずれもY軸方向に沿って直線状に延在している。第4電極11は、Y軸方向についての両端部が一対のスペーサ28と重畳している。従って、第4電極11は、Y軸方向について流路25の全幅にわたって配されている。第4電極11には、第1基板23の第1主面23Aにおいてスペーサ28の外側に配される第3引き出し配線W3が接続されている。第3引き出し配線W3は、イオン化源制御部44に接続されている。各引き出し配線W1~W3は、接続対象の各電極11,21,27からY軸方向について同じ側(
図4の上側)に向けて引き出されている。
【0052】
検出セル20を構成する第2基板24には、
図5に示すように、平面に視て横長の方形状をなしている。第2電極22は、平面に視て横長の方形状をなしており、第2基板24の第2主面24Aにおいて検出電極26に対して上流側に間隔を空けて位置し、第5電極12に対して下流側に間隔を空けて位置する。第2電極22は、Y軸方向についての両端部が一対のスペーサ28と重畳している。従って、第2電極22は、Y軸方向について流路25の全幅にわたって配されている。第2電極22には、第2基板24の第2主面24Aにおいてスペーサ28の外側に配される第4引き出し配線W4が接続されている。第4引き出し配線W4は、グランド接続されている。検出電極26は、平面に視てやや縦長の方形状をなしており、第2基板24の第2主面24Aにおいて第2電極22に対して下流側に間隔を空けて位置する。検出電極26は、Y軸方向についての両端部が一対のスペーサ28と重畳している。従って、検出電極26は、Y軸方向について流路25の全幅にわたって配されている。検出電極26には、第2基板24の第2主面24Aにおいてスペーサ28の外側に配される第5引き出し配線W5が接続されている。第5引き出し配線W5は、計測部43に接続されている。第5電極12は、第2基板24の第2主面24Aにおいて第2電極22に対して上流側に間隔を空けて位置する。第5電極12には、第2基板24の第2主面24Aにおいてスペーサ28の外側に配される第6引き出し配線W6が接続されている。第6引き出し配線W6は、イオン化源制御部44に接続されている。各引き出し配線W4~W6は、接続対象の各電極12,22,26からY軸方向について同じ側(
図5の上側)に向けて引き出されている。
【0053】
第5電極12は、幹部12Aと、幹部12Aに連なる針状部12Bと、を有する。幹部12Aは、Y軸方向に沿って直線状に延在し、一方の端部が第6引き出し配線W6に接続されている。幹部12Aの他方の端部は、第2基板24におけるY軸方向についての中央付近に位置している。針状部12Bは、幹部12Aの他方の端部に連なっている。針状部12Bは、幹部12AからX軸方向に沿って第2電極22側(流路25の下流側、第4電極11側)に向けて突出している。針状部12Bは、先細り状とされており、X軸方向について第2電極22に近づくほど幅が狭くなる。このような構成の第5電極12を通電すると、電界が針状部12B付近に集中して発生し、主に針状部12Bの周囲にて電離が生じることで、荷電粒子CPを効率的に発生させることができる。
【0054】
第5電極12は、針状部12Bの突出先端の先鋭度である曲率半径が30μm~200μmの範囲とされる。それに加え、第5電極12は、針状部12Bと第4電極11との間の距離D1が1.5mm~10mmの範囲となる位置に配されている。仮に、針状部12Bの曲率半径が30μmに満たない大きさであると、コロナ放電に起因して針状部12Bに劣化が生じ易く、耐久性の面で問題が生じるおそれがある。その点、針状部12Bの曲率半径が30μm以上とされることで、コロナ放電に伴う針状部12Bの劣化が抑制される。これにより、第5電極12の耐久性が十分に確保される。ここで、仮に、針状部12Bの突出先端の曲率半径に対する上記した距離D1の比率が50に満たない場合には、コロナ放電が安定的に発生せず、荷電粒子CPが十分に生成されなくなることが懸念される。その点、第5電極12と第4電極11との間の距離D1が1.5mm以上とされているので、針状部12Bの曲率半径を下限値の30μmとした場合でも、曲率半径に対する上記した距離D1の比率を50以上になる。これにより、コロナ放電を安定的に発生させることができる。また、仮に、第5電極12と第4電極11との間の距離D1が10mmを超えると、コロナ放電を発生させるために第4電極11及び第5電極12に印加する電圧の値が高くなり過ぎてしまい、対応が難しくなるおそれがある。その点、第5電極12と第4電極11との間の距離D1が10mm以下とされることで、コロナ放電を発生させるために第4電極11及び第5電極12に印加する電圧の値を低く抑えることができる。また、針状部12Bの曲率半径が200μm以下とされているので、第5電極12と第4電極11との間の距離D1を上限値の10mmとした場合でも、曲率半径に対する上記した距離D1の比率を50以上になる。これにより、コロナ放電を安定的に発生させることができる。
【0055】
本実施形態では、各基板23,24に各電極11,12,21,22,26,27を設ける際に、既知のフォトリソグラフィ法を用いている。例えば、第2基板24に第5電極12、第2電極22及び検出電極26等を設ける際には、第2基板24の第2主面24A上に所定の導電材料からなる導電膜とフォトレジスト膜とを続けて成膜し、露光・現像したフォトレジスト膜をマスクとして用いて導電膜をエッチングすることで、導電膜のパターニングを行う。これにより、第2基板24の第2主面24A上に第5電極12、第2電極22及び検出電極26等を設けることができる。このように、第5電極12は、フォトリソグラフィ法を用いて設けられるから、針状部12Bの形状を微細に加工することが可能となっている。これにより、針状部12Bの突出先端における曲率半径を容易に調整することができ、高い再現性でもって曲率半径を上記した数値範囲内とすることができる。第1基板21に第4電極11、第1電極21及び偏向電極27等を設ける際にも、上記した第2基板22の場合と同様の手法(フォトリソグラフィ法)を用いればよい。なお、導電膜は、金属材料からなる金属膜であってもよく、その場合の金属材料としては、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)等を用いることができる。導電膜は、透明電極材料(酸化物導電材料)からなる透明電極膜であってもよく、その場合の透明電極材料としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide:IZO)等を用いることができる。
【0056】
本実施形態では、
図1及び
図6に示すように、第4電極11及び第5電極12のうち、流路25の上流側に配される第5電極12が陽極電極とされ、流路25の下流側に配される第4電極11が陰極電極とされる。なお、
図6には、第1基板23に備わる構成が二点鎖線にて図示されている。イオン化源制御部44によって第5電極12及び第4電極11が通電されると、陽極電極である第5電極12の針状部12B付近に電界が集中して発生し、主に針状部12Bの周囲にて電離が生じることで、荷電粒子CPが効率的に生成される。このとき、陽極電極である第5電極12から陰極電極である第4電極11へ向かうイオン風が生じる。陽極電極である第5電極12が流路25の上流側に、陰極電極である第4電極11が流路25の下流側に、それぞれ配されているので、コロナ放電によって発生するイオン風は、流路25の上流側から下流側へ向かって流れることになる。これにより、流路25での荷電粒子CPの流動性が良好になる。
【0057】
以上説明したように本実施形態の検出セル(検出器)20は、第1主面23Aを有する第1基板23と、第1基板23の第1主面23Aと間隔を空けて対向する第2主面24Aを有する第2基板24と、第1基板23の第1主面23Aに設けられる第1電極21と、第2基板24の第2主面24Aに設けられて第1電極21と間隔を空けて対向し、第1電極21との間に検出対象物である荷電粒子(イオン)CPの流路25を形成する第2電極22と、第1基板23の第1主面23Aまたは第2基板24の第2主面24Aに設けられて第1電極21または第2電極22に対して流路25の下流側に配され、荷電粒子CPを捕集する検出電極(第3電極)26と、第1基板23の第1主面23Aに設けられて第1電極21に対して流路25の上流側に配される第4電極11と、第2基板24の第2主面24Aに設けられて第2電極22に対して流路25の上流側に配され、第4電極11との間でコロナ放電を発生させる第5電極12と、を備え、第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに位置ずれして配される。
【0058】
第4電極11及び第5電極12が通電されるのに伴って生じるコロナ放電によって流路25に荷電粒子CPが供給される。第4電極11及び第5電極12に対して流路25の下流側に配される第1電極21と第2電極22との間に生じる電界によって流路25における荷電粒子CPの通過の可否が制御される。流路25を通過した荷電粒子CPは、第1電極21または第2電極22に対して流路25の下流側に配される検出電極26により捕集され、検出される。第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに位置ずれして配されているから、第4電極11と第5電極12との間の距離D1を、一対の基板23,24の間の間隔よりも大きくすることができる。これにより、第4電極11と第5電極12との間でコロナ放電を安定的に発生させることができるので、荷電粒子CPの発生量を十分に確保することができる。
【0059】
また、第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに間隔D2を空けて配される。第4電極11及び第5電極12は、流路25の上流側と下流側とに間隔D2を空けて配されているから、仮に第4電極及び第5電極の一部同士が重畳する位置関係とされる場合に比べると、第4電極11と第5電極12との間の距離D1を大きくすることができる。これにより、第4電極11と第5電極12との間でコロナ放電をより安定的に発生させることができ、荷電粒子CPの発生量をより多く確保することができる。
【0060】
また、第4電極11及び第5電極12のうちの一方の電極である第5電極12は、流路25に沿う第1方向について他方の電極である第4電極11に近づくほど幅が狭くなる針状部12Bを有する。一方の電極である第5電極12及び他方の電極である第4電極11を通電すると、電界が針状部12B付近に集中して発生し、針状部12Bの周囲にて電離が生じることで、荷電粒子CPを効率的に発生させることができる。
【0061】
また、針状部12Bは、曲率半径が30μm~200μmの範囲とされ、一方の電極である第5電極12と他方の電極である第4電極11との間の距離D1が1.5mm~10mmの範囲とされる。針状部12Bの曲率半径が30μm以上とされているので、コロナ放電に伴う針状部12Bの劣化が抑制される。これにより、一方の電極である第5電極12の耐久性が十分に確保される。一方の電極である第5電極12と他方の電極である第4電極11との間の距離D1が1.5mm以上とされているので、針状部12Bの曲率半径を下限値の30μmとした場合でも、曲率半径に対する上記した距離D1の比率を50以上になる。これにより、コロナ放電を安定的に発生させることができる。一方の電極である第5電極12と他方の電極である第4電極11との間の距離D1が10mm以下とされているので、コロナ放電を発生させるために一方の電極である第5電極12及び他方の電極である第4電極11に印加する電圧の値を低く抑えることができる。針状部12Bの曲率半径が200μm以下とされているので、一方の電極である第5電極12と他方の電極である第4電極11との間の距離D1を上限値の10mmとした場合でも、曲率半径に対する上記した距離D1の比率を50以上になる。これにより、コロナ放電を安定的に発生させることができる。
【0062】
また、第4電極11及び第5電極12のうち、流路25の上流側に配される電極が陽極電極とされ、流路25の下流側に配される電極が陰極電極とされる。陽極電極である第5電極12と陰極電極である第4電極11とが通電されるのに伴ってコロナ放電が発生すると、陽極電極である第5電極12から陰極電極である第4電極11へ向かうイオン風が生じる。陽極電極である第5電極12が流路25の上流側に、陰極電極である第4電極11が流路25の下流側に、それぞれ配されているので、コロナ放電によって発生するイオン風は、流路25の上流側から下流側へ向かって流れることになる。これにより、流路25での荷電粒子CPの流動性が良好になる。
【0063】
<実施形態2>
実施形態2を
図7によって説明する。この実施形態2では、第5電極112の構成を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0064】
本実施形態に係る第5電極112は、
図7に示すように、複数の針状部112Bを有する。複数の針状部112Bは、Y軸方向について間隔を空けて並んで配されており、全てが幹部112Aに連ねられている。従って、イオン化源制御部44に接続された幹部112Aによって、複数の針状部112Bには、一括して電圧が印加されるようになっている。具体的には、針状部112Bの並び数は、例えば5とされる。針状部112Bには、
図7の上から順に、第1針状部112B1、第2針状部112B2、第3針状部112B3、第4針状部112B4及び第5針状部112B5が含まれる。なお、複数の針状部112Bを区別する場合には、名称をそれぞれ「第1針状部~第5針状部」として符号に添え字1~5を付し、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。
【0065】
5つの針状部112Bは、第2基板124の第2主面124AにおいてY軸方向についてほぼ一定の配列間隔となるよう配されている。第3針状部112B3は、第2基板124の第2主面124Aにおいて、Y軸方向についての略中央位置に配される。第2針状部112B2及び第4針状部112B4は、第3針状部112B3をY軸方向について挟み込んでいて、第3針状部112B3に対してほぼ同じ間隔を空けた配置とされる。第1針状部112B1は、第2針状部112B2に対してY軸方向について第3針状部112B3とは反対側に間隔を空けた配置とされる。第5針状部112B5は、第4針状部112B4に対してY軸方向について第3針状部112B3とは反対側に間隔を空けた配置とされる。第1針状部112B1及び第5針状部112B5は、流路125のうちのY軸方向についての両端位置付近に配されている。以上の構成によれば、イオン化源制御部44からの電圧が幹部112Aを介して5つの針状部112Bに一括して印加されると、5つの針状部112B付近のそれぞれに電界が生じて荷電粒子CPが生成される。流路125のうち、Y軸方向に間隔を空けた5箇所のそれぞれにて荷電粒子CPが生成されるので、荷電粒子CPが流路125においてY軸方向について全体的に広がり易くなる。これにより、検出電極126により捕集され、検出される荷電粒子CPの量が多くなるので、検出感度が良好になる。また、5つの針状部112Bのうちのいずれかが劣化した場合でも、残りの針状部112Bによってコロナ放電を維持することができる。
【0066】
これに対し、第4電極111は、Y軸方向に沿って直線状に延在する縦長の方形状をなしている。第4電極111は、Y軸方向について流路125の全幅にわたって配されており、全ての針状部112Bを横切っている。従って、第4電極111における下流側の端部と、Y軸方向について間隔を空けて並ぶ5つの針状部112Bと、の間の間隔が一定になる。これにより、幹部112Aによって互いに同電位とされる複数の針状部112Bのそれぞれにて発生する電界を同等にすることができるので、コロナ放電を安定的に発生させることができる。
【0067】
以上説明したように本実施形態によれば、一方の電極である第5電極112は、複数の針状部112Bを有しており、複数の針状部112Bは、第1主面23Aまたは第2主面124Aに沿い且つ第1方向と交差する第2方向について間隔を空けて並んで配される。第2方向について間隔を空けて並ぶ複数の針状部112B付近のそれぞれに電界が生じて荷電粒子CPが生成されるので、荷電粒子CPが流路125において第2方向について全体的に広がり易くなる。これにより、検出電極126により捕集され、検出される荷電粒子CPの量が多くなるので、検出感度が良好になる。また、複数の針状部112Bのうちのいずれかが劣化した場合でも、残りの針状部112Bによってコロナ放電を維持することができる。
【0068】
また、一方の電極である第5電極112は、第2方向に沿って延在していて複数の針状部112Bが連なる幹部112Aを有しており、他方の電極である第4電極111は、第2方向に沿って直線状に延在する。幹部112Aをイオン化源制御部(電源)44に接続することで、複数の針状部112Bに一括して電圧を印加することができる。第2方向について間隔を空けて並ぶ複数の針状部112Bと、第2方向に沿って直線的に延在する他方の電極である第4電極111と、の間の間隔が一定になる。これにより、幹部112Aによって互いに同電位とされる複数の針状部112Bのそれぞれにて発生する電界を同等にすることができるので、コロナ放電を安定的に発生させることができる。
【0069】
<実施形態3>
実施形態3を
図8によって説明する。この実施形態3では、上記した実施形態1から第4電極211の構成を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0070】
本実施形態に係る第4電極211は、
図8に示すように、平面に視て円弧状をなす。円弧状をなす第4電極211は、その曲率中心がX軸方向について流路225の下流側、つまり針状部212B側に位置する。第4電極211は、曲率中心が、針状部212Bの突出先端付近となるよう配されている。このような構成によれば、円弧状をなす第4電極211における下流側(針状部212B側)の端部と、針状部212Bと、の間の間隔が一定になる。これにより、第4電極211のうちの下流側の端部にて発生する電界を均一化することができるので、コロナ放電を安定的に発生させることができ、発生する荷電粒子CPの量を十分に確保することができる。
【0071】
以上説明したように本実施形態によれば、他方の電極である第4電極211は、円弧状をなしていて曲率中心が第1方向について針状部212B側に位置する。このようにすれば、針状部212Bと、円弧状をなす他方の電極である第4電極211のうちの針状部212B側の端部と、の間の間隔が一定になる。これにより、他方の電極である第4電極211のうちの針状部212B側の端部にて発生する電界を均一化することができるので、コロナ放電を安定的に発生させることができる。
【0072】
<実施形態4>
実施形態4を
図9によって説明する。この実施形態4では、上記した実施形態1から第4電極311及び第5電極312の設置数を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0073】
本実施形態に係る第4電極311及び第5電極312は、
図9に示すように、複数ずつ設けられている。流路325の上流側と下流側とに位置ずれして配されていてコロナ放電を発生させる第4電極311及び第5電極312は、1つの電極組13を構成する。本実施形態では、この電極組13がX軸方向について間隔を空けた位置に複数配されている。具体的には、電極組13の並び数は、例えば3とされる。電極組13には、流路325の下流側から順に、第1電極組13A、第2電極組13B及び第3電極組13Cが含まれる。なお、複数の電極組13を区別する場合には、名称をそれぞれ「第1電極組~第3電極組」として符号に添え字A~Cを付し、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。
【0074】
X軸方向について隣り合う電極組13の間には、異なる電極組13を構成する電極311,312の間でコロナ放電が発生することがないよう、十分な間隔が空けられている。具体的には、第1電極組13Aを構成する第4電極311と、第2電極組13Bを構成する第5電極312と、の間に空けられる間隔は、第1電極組13Aを構成する第4電極311と第5電極312との間の距離D1や第2電極組13Bを構成する第4電極311と第5電極312との間の距離D1よりも大きい。第2電極組13Bを構成する第4電極311と、第3電極組13Cを構成する第5電極312と、の間に空けられる間隔は、第2電極組13Bを構成する第4電極311と第5電極312との間の距離D1や第3電極組13Cを構成する第4電極311と第5電極312との間の距離D1よりも大きい。このような構成によれば、流路325においてX軸方向について間隔を空けた複数の位置のそれぞれにおいてイオン風が発生することになる。これにより、流路325での荷電粒子CPの流動性がより良好になるので、実施形態1に記載したポンプ30(
図1を参照)を省略することが可能となる。
【0075】
以上説明したように本実施形態によれば、第4電極311及び第5電極312からなる電極組13は、流路325に沿う第1方向について間隔を空けた位置に複数配される。流路325において第1方向について間隔を空けた複数の位置のそれぞれにおいてイオン風が発生することになる。これにより、流路325での荷電粒子CPの流動性がより良好になるので、流路325において荷電粒子CPを強制的に流動させるためのポンプ30等の機器を省略することが可能となる。
【0076】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0077】
(1)第4電極11,111,211,311と第5電極12,112,312との一部同士が重畳する配置であってもよい。
【0078】
(2)第4電極11,111,211,311を陰極電極とし、第5電極12,112,312を陽極電極としてもよい。
【0079】
(3)流路25,125,225,325において第4電極11,111,211,311よりも下流側に第5電極12,112,312を配置し、第5電極12,112,312よりも上流側に第4電極11,111,211,311を配置してもよい。
【0080】
(4)第4電極11,111,211,311に針状部12B,112B,212Bを設けてもよい。この場合、第5電極12,112,312は、実施形態1,2,4に示される第4電極11,111,311のような帯状の電極でもよいし、実施形態3に示される第4電極211のような円弧状の電極でもよい。
【0081】
(5)第4電極11,111,211,311が第2基板24,124に設けられ、第5電極12,112,312が第1基板23に設けられてもよい。
【0082】
(6)第2電極22及び偏向電極27等が第1基板23に設けられ、第1電極21及び検出電極26,126等が第2基板24,124に設けられてもよい。この構成を上記した(5)に適用してもよい。
【0083】
(7)各電極11,111,211,311,12,112,312,21,22,26,126,27を導電性ペーストやメッキ等により構成してもよい。
【0084】
(8)スペーサ28に代えて両面テープ等を用いることも可能である。
【0085】
(9)実施形態2において、針状部112Bの数は、5以外にも2,3,4または6以上であってもよい。
【0086】
(10)実施形態2において、複数の第4電極111をY軸方向に間隔を空けて並べて設けることも可能である。その場合、第4電極111の数を針状部112Bの数と一致させ、針状部112Bと第4電極111とをX軸方向に沿う同一直線状に配置することが可能であるが、必ずしもその限りではない。
【0087】
(11)実施形態2において、第5電極112が複数の幹部112Aを有してもよい。幹部112Aの数を針状部112Bの数と一致させ、各針状部112Bが各幹部112Aに対して個別に連なる構成であってもよいが、必ずしもその限りではない。
【0088】
(12)実施形態3において、針状部212Bと、第4電極211の下流側の端部と、の間の間隔は、一定でなくてもよい。その場合でも、実施形態1との比較において、針状部212Bと、第4電極211の下流側の端部と、の間の間隔が、第4電極211の下流側の端部に沿う方向についての位置に応じて変化する変化量が小さくなるので、コロナ放電を安定的に発生させることができる。
【0089】
(13)実施形態4において、電極組13の設置数は、2つでも4つ以上でもよい。
【0090】
(14)検出電極26,126及び偏向電極27を複数ずつとし、それぞれY軸方向に間隔を空けて並べて設けることも可能である。
【0091】
(15)第2電極22に分散電圧DV及び補償電圧CVを共に印加してもよい。その場合、第1電極21は、接地等すればよい。
【0092】
(16)第1電極21に補償電圧CVを印加し、第2電極22に分散電圧DVを印加することも可能である。
【0093】
(17)FAIMS以外の分析法システムを用いた分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
11,111,211,311…第4電極(他方の電極、陰極電極)、12,112,312…第5電極(一方の電極、陽極電極)、12A,112A…幹部、12B,112B,212B…針状部、13…電極組、20…検出セル(検出器)、21…第1電極、22…第2電極、23…第1基板、23A…第1主面、24,124…第2基板、24A,124A…第2主面、25,125,225,325…流路、26,126…検出電極(第3電極)、CP…荷電粒子、D1…距離、D2…間隔