(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094657
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】リーク検査装置、コントローラ、プログラム、及び、リーク検出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01M3/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211348
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】吉塚 充
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸紀
(72)【発明者】
【氏名】津村 佳宏
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA38
2G067BB02
2G067BB03
2G067BB12
2G067BB25
2G067BB36
2G067BB40
2G067CC13
2G067DD17
2G067EE09
2G067EE12
(57)【要約】
【課題】フード法によるリーク検査を自動で行う。
【解決手段】リーク検査装置は、検査対象6を収容するチャンバ110と、チャンバ110内の空間のうちの検査対象6の外側空間への検査ガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える第2制御弁123と、チャンバ110からの検査ガスの排気と非排気とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える排気弁131と、検査対象6の内部空間を真空引きし、前記内部空間にリークした検査ガスの量を測定するリークディテクタ142と、外部から供給されるリーク検査の開始指示が供給されたことを契機として、予め定められた検査シーケンスに従って、第2制御弁123、排気弁131、及び、リークディテクタ142を動作させ、フード法によりリーク検査を実行するコントローラ170と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を収容するチャンバと、
前記チャンバ内の空間のうちの前記検査対象の外側空間への検査ガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える検査ガス用の制御弁と、
前記チャンバからの前記検査ガスの排気と非排気とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える排気弁と、
前記検査対象の内部空間を真空引きし、前記内部空間にリークした検査ガスの量を測定するリークディテクタと、
外部から供給されるリーク検査の開始指示が供給されたことを契機として、予め定められた検査シーケンスに従って、前記制御弁、前記排気弁、及び、前記リークディテクタを動作させ、フード法によりリーク検査を実行するコントローラと、
を備えるリーク検査装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記制御弁及び前記排気弁を前記開状態として、前記チャンバ内の前記外側空間を前記検査ガスでパージする第1制御と、
前記第1制御のあとに前記排気弁を閉状態として、前記チャンバ内の前記外側空間に前記検査ガスを蓄積する第2制御と、
前記第2制御中又は前記第2制御の終了タイミングで、前記検査ガスの前記量をリークディテクタにより測定する第3制御と、
測定した前記検査ガスの前記量が所定基準を満たして大きいときに、前記検査対象にリーク異常が発生していると判別する判別処理と、を行う、
請求項1に記載のリーク検査装置。
【請求項3】
前記第1制御中での、前記チャンバ内の前記外側空間に供給される前記検査ガスの流量を監視する流量監視装置を備え、
前記流量監視装置は、前記第1制御中の1以上の所定タイミングにおいて前記流量が予め定められたイベント閾値を超えなかったときに前記検査ガスの供給異常を検出して出力する、
請求項2に記載のリーク検査装置。
【請求項4】
前記第2制御中での、前記チャンバ内の前記外側空間に供給される前記検査ガスの流量を監視する流量監視装置を備え、
前記流量監視装置は、前記第2制御中の1以上の所定タイミングにおいて前記流量が予め定められたイベント閾値を下回らなかったときに前記検査ガスの蓄積異常を検出して出力する、
請求項2に記載のリーク検査装置。
【請求項5】
前記第1制御中及び前記第2制御中での、前記チャンバ内の前記外側空間に供給される前記検査ガスの流量を監視する流量監視装置を備え、
前記流量監視装置は、前記流量が予め定められたアラーム閾値を超えたときに前記検査ガスの供給異常を検出して出力する、
請求項2に記載のリーク検査装置。
【請求項6】
前記チャンバ内の前記外側空間への前記検査ガスとは異なるパージガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替えるパージガス用の制御弁をさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1制御の前に、前記パージガス用の制御弁及び前記排気弁を開状態とし、前記検査ガス用の制御弁を閉状態として、前記チャンバ内の前記外側空間を前記パージガスでパージし、
前記パージガスでのパージ中又はパージの終了タイミングに、前記検査ガスの量をリークディテクタにより測定し、測定した前記量を基準値として記憶し、
前記判別処理において、前記第3制御で測定した前記検査ガスの前記量が前記基準値よりも所定値以上大きい場合に、前記検査対象にリーク異常が発生していると判別する、
請求項2に記載のリーク検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載のリーク検出装置に用いられる前記コントローラ。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1に記載のリーク検出装置が備える前記コントローラとして機能させるプログラム。
【請求項9】
検査対象を収容するチャンバと、
前記チャンバ内の空間のうちの前記検査対象の外側空間への検査ガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える検査ガス用の制御弁と、
前記チャンバからの前記検査ガスの排気と非排気とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える排気弁と、
前記検査対象の内部空間を真空引きし、前記内部空間にリークした検査ガスの量を測定するリークディテクタと、を備えるリーク検査装置をコントローラにより制御し、
前記コントローラが、外部から供給されるリーク検査の開始指示が供給されたことを契機として、予め定められた検査シーケンスに従って、前記制御弁、前記排気弁、及び、前記リークディテクタを動作させ、フード法によりリーク検査を実行する、
を備えるリーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器などの検査対象のリークの有無を検査するリーク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象のリークの有無を検査する方法の一つとしてフード法が知られている。このフード法は、検査対象の内部を真空にし、かつ、この検査対象を覆うフード内の空間のうちの検査対象の外側空間にHeガスなどの検査ガスを充満させ、検査対象の外側から内部への検査ガスのリーク量を測定する方法である。このフード法を実施するための装置が引用文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている装置は、作業者による操作が前提となっており、上記フード法を自動で実施するようには構成されていない。また、リーク検査装置には複数の切換弁が設けられているが各切換弁の開閉動作の動作タイミングを適切に実施する必要があり、作業者は熟練した者である必要がある。
【0005】
本発明は、フード法によるリーク検査を自動で行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明に係るリーク検査装置は、検査対象を収容するチャンバと、前記チャンバ内の空間のうちの前記検査対象の外側空間への検査ガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える検査ガス用の制御弁と、前記チャンバからの前記検査ガスの排気と非排気とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える排気弁と、前記検査対象の内部空間を真空引きし、前記内部空間にリークした検査ガスの量を測定するリークディテクタと、外部から供給されるリーク検査の開始指示が供給されたことを契機として、予め定められた検査シーケンスに従って、前記制御弁、前記排気弁、及び、前記リークディテクタを動作させ、フード法によりリーク検査を実行するコントローラと、を備える。
【0007】
一例として、前記コントローラは、前記制御弁及び前記排気弁を前記開状態として、前記チャンバ内の前記外側空間を前記検査ガスでパージする第1制御と、前記第1制御のあとに前記排気弁を閉状態として、前記チャンバ内の前記外側空間に前記検査ガスを蓄積する第2制御と、前記第2制御中又は前記第2制御の終了タイミングで、前記検査ガスの前記量をリークディテクタにより測定する第3制御と、測定した前記検査ガスの前記量が所定基準を満たして大きいときに、前記検査対象にリーク異常が発生していると判別する判別処理と、を行う。
【0008】
一例として、前記リーク検査装置は、前記第1制御中及び前記第2制御中での、前記チャンバ内の前記外側空間に供給される前記検査ガスの流量を監視する流量監視装置を備え、前記流量監視装置は、前記第1制御中の1以上の所定タイミングにおいて前記流量が予め定められたイベント閾値を超えなかったときに前記検査ガスの供給異常を検出して出力する。
【0009】
一例として、前記リーク検査装置は、前記第1制御中及び前記第2制御中での、前記チャンバ内の前記外側空間に供給される前記検査ガスの流量を監視する流量監視装置を備え、前記流量監視装置は、前記第2制御中の1以上の所定タイミングにおいて前記流量が予め定められたイベント閾値を下回らなかったときに前記検査ガスの蓄積異常を検出して出力する。
【0010】
一例として、前記リーク検査装置は、前記第1制御中及び前記第2制御中での、前記チャンバ内の前記外側空間に供給される前記検査ガスの流量を監視する流量監視装置を備え、前記流量監視装置は、前記流量が予め定められたアラーム閾値を上回ったときに前記検査ガスの供給異常を検出して出力する。
【0011】
一例として、前記リーク検査装置は、前記チャンバ内の前記外側空間への前記検査ガスとは異なるパージガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替えるパージガス用の制御弁をさらに備え、前記コントローラは、前記第1制御の前に、前記パージガス用の制御弁及び前記排気弁を開状態とし、前記検査ガス用の制御弁を閉状態として、前記チャンバ内の前記外側空間を前記パージガスでパージし、前記パージガスでのパージ中又はパージの終了タイミングに、前記検査ガスの量をリークディテクタにより測定し、測定した前記量を基準値として記憶し、前記判別処理において、前記第3制御で測定した前記検査ガスの前記量が前記基準値よりも所定値以上大きい場合に、前記検査対象にリーク異常が発生していると判別する。
【0012】
本発明に係るコントローラは、上記リーク検出装置に用いられる上記コントローラである。
【0013】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記リーク検出装置が備える前記コントローラとして機能させる。
【0014】
本発明に係るリーク検査方法は、検査対象を収容するチャンバと、前記チャンバ内の空間のうちの前記検査対象の外側空間への検査ガスの供給と非供給とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える検査ガス用の制御弁と、前記チャンバからの前記検査ガスの排気と非排気とを開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える排気弁と、前記検査対象の内部空間を真空引きし、前記内部空間にリークした検査ガスの量を測定するリークディテクタと、を備えるリーク検査装置をコントローラにより制御し、前記コントローラが、外部から供給されるリーク検査の開始指示が供給されたことを契機として、予め定められた検査シーケンスに従って、前記制御弁、前記排気弁、及び、前記リークディテクタを動作させ、フード法によりリーク検査を実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フード法による検査を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るリーク検査装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、フードおよびフード押圧部を省略して示すリーク検査装置の平面図である。
【
図3】
図3は、フードおよびフード押圧部を省略して示すリーク検査装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、検査対象の一部を破断して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ベース、検査対象の一部および検査対象固定部の一部を破断して示す断面図である。
【
図6】
図6は、検査ガスが流れる経路を示す斜視断面図である。
【
図8】
図8は、ベースの貫通孔部分を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、パージガスが流れる経路を示す斜視断面図である。
【
図14】
図14は、正常時のHeガス(検査ガス)の流量の時間変化を示すグラフである。
【
図15】
図15は、異常時のHeガス(検査ガス)の流量の時間変化を示すグラフである。
【
図16】
図16は、異常時のHeガス(検査ガス)の流量の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、検査対象として静電容量式の流量センサが用いられている(詳細は後述)。
【0018】
図1に示すように、リーク検査装置1は、
図1において最も下に描かれているベース2と、ベース2の上面となる載置面3の上に取り付けられたフード4およびフード押圧部5などを備えている。ベース2は、金属材料によって板状に形成されている。ベース2の平面形状は長方形である。
【0019】
ベース2の載置面3には、
図2および
図3(A)~(C)に示すように、リーク検査装置1によるリーク検査の検査対象6が載置される。この載置面3には、検査対象6を取り囲むように環状溝7が形成されている。以下においては、環状溝7に囲まれた内側を検査対象6が設置されるステージ部8という。環状溝7には、フード4との間をシールするためのOリングからなるシール部材9が装着されている。
【0020】
フード4は、ベース2側の一端面が開口するカップ状に形成され、載置面3に配置されて検査対象6を覆う(
図6、
図9も参照)。フード4のベース2に対する取付位置は、ベース2に突設された複数の第1の位置決めピン10(
図3(A))によって規定される。
【0021】
図1に示すフード押圧部5は、フード4をベース2に向かって押圧するもので、ベース2の載置面3であって、ステージ部8の外側に位置する端部に設けられている。この実施の形態によるフード押圧部5は、フード4の天井壁を押圧するアーム5aと、アーム5aを操作するための操作レバー5bとを備えたトグルクランプによって構成されている。このフード押圧部5は、ベース2に複数の支柱5cを介して取付けられている。支柱5cは、ベース2の貫通孔5d(
図2)に通された固定用ボルト(図示せず)によってベース2に固定されている。
【0022】
フード4がフード押圧部5によってベース2に向かって押圧されることにより、フード4のベース2側の一端面が、シール部材9を当該シール部材9が装着されている環状溝7の底に押し付ける(
図6及び
図9参照)。これにより、フード4がシール部材9と密着し、フード4の内部空間と外部空間とがフード4により遮断される。ベース2、フード4、及び、シール部材9は、検査対象6を収容するチャンバ110を構成している。
【0023】
検査対象6は、上述のように静電容量式の流量センサであり、
図4に示すように、外観が円柱状に形成され内部が空洞の本体部6aと、本体部6aの一端から突出するパイプ部6bとによって構成されている。
【0024】
本体部6aの中には、隔壁(ダイアフラム)6cで区画された真空室6dが形成されている。なお、図面で描かれている検査対象6としての流量センサは、簡略化されている。例えば、実際の本体部6aは、複数の部品を溶接して形成されている。また、隔壁6cの真空室6d側の面上には、静電容量式のセンサチップが設けられている。また、隔壁6Cには、パイプ部6bから流入するガスをセンサチップに導入する貫通孔なども設けられている。また、本体部6aの上端(
図4の右端)の円板の貫通孔を貫通する、センサチップから静電容量を取り出すための導電ピンも設けられている。導電ピンは、貫通孔内に設けられたハーメチックシールなどで支持される。
【0025】
本体部6aの外周部分には、真空室6dの内外を連通する連通孔11が形成されている。検査対象6は、真空室6dが真空とされる前の製造途中の流量センサである。本実施形態によるリーク検査後、連通孔11から真空室6dの空気を抜いて連通孔を封止することで、真空室6dが真空となる。連通孔11の周囲には平坦面12が形成されている。検査時、この平坦面12とベース2とが対向するように検査対象6がベース2に載置される。
【0026】
リーク検査装置1は、連通孔11から本体部6aの真空室6dの空気を排気して真空室6dを真空状態とし、検査ガスをフード4の内部(検査対象6の外部)に充満させた後、検査対象6の真空室6dへの検査ガスの透過量を測定することにより、検査対象6のシール性能を検査する。検査ガスは、ここでは、Heガスとするが、前記の透過量を検出可能な種類のガスであればどのようなガスであってもよい。化学的に安定な不活性ガスが採用されるとよい。
【0027】
図3(A)~(C)に示すように、ステージ部8には、検査対象6をステージ部8の所定の位置に固定する検査対象固定部13が設けられている。
図3(A)~(C)においては、フード押圧部5を省略して描いてある。検査対象固定部13は、
図3(A)に示すように、検査対象6の本体部6aをステージ部8に固定するクランプ部14と、検査対象6のパイプ部6bを保持するパイプ保持部15とによって構成されている。
図3(A)では、検査対象固定部13により検査対象6がベース2に固定されている。
【0028】
クランプ部14は、図示していない固定用ボルトによってベース2に固定された第1および第2の支持部材14a,14bと、第1の支持部材14aに揺動自在に支持されて検査対象6の本体部6aをベース2との間に挟むアーム部材14cと、第2の支持部材14bに揺動自在に支持されてアーム部材14cと係合するロック部材14dとを有している。
【0029】
アーム部材14cは、検査対象6の本体部6aをベース2に押し付ける押圧用ボルト14eを備えている。ロック部材14dは、本体部6aをベース2に押し付けている状態にあるアーム部材14cの揺動端部に係合し、本体部6aがベース2に押し付けられた状態を保持する。
【0030】
この検査対象固定部13によれば、
図3(B)~(C)に示すように、アーム部材14cとロック部材14dとが開いている状態で検査対象6とパイプ保持部15とをベース2に対して着脱することができる。
図3(B)はアーム部材14cとロック部材14dとを開いた状態を示す。
図3(C)は検査対象6とパイプ保持部15とを外した状態を示す。
【0031】
パイプ保持部15は、ベース2に着脱自在に取付けられており、
図5に示すように、検査対象6のパイプ部6bが通される中空部16を有する支持ブロック17と、中空部16の断面V字状の壁面16aにパイプ部6bを押し付ける押圧用ボルト18とを備えている。
図5の破断位置は、
図2中にV-V線によって示す位置である。このパイプ保持部15は、断面V字状の壁面16aにパイプ部6bが押し付けられることにより、検査対象6の軸線がベース2の載置面3と平行になるように構成されている。パイプ保持部15のベース2に対する取付位置は、
図6に示すようにベース2に突設された第2の位置決めピン19によって規定される。
図6の破断位置は、
図2中にVI-VI線によって示す位置である。
図6は、フード押圧部5を省略して描いてある。
【0032】
図7に示すように、ステージ部8の中央部には貫通孔21が形成されているとともに、複数のねじ孔22や丸穴23~28などが開口している。貫通孔21は、検査対象6から空気を吸い出すために使用される。この貫通孔21の詳細は後述する。貫通孔21と隣接するように形成された四角形の二つの凹部29,30は、ステージ部8と検査対象6の本体部6aとの干渉を避けるために設けられている。
【0033】
貫通孔21の近傍に形成されている4つのねじ孔22には、検査対象固定部13の第1および第2の支持部材14a,14bをベース2に取付ける取付用ボルト(図示せず)がねじ込まれる。
【0034】
複数の丸穴23~28のうち、環状溝7に隣接する位置に形成された二つの丸穴23,24には、第1の位置決めピン10が取付けられる。これらの丸穴23,24とねじ孔22との間でベース2の短手方向に並ぶ残りの4つの丸穴25~28のうち、内側の二つの丸穴26,27には、第2の位置決めピン19が取り付けられる。外側の二つの丸穴25,28は、検査ガスをフード4内に対して出し入れするために設けられている。これら2つの丸穴25,28のうちの一方の丸穴25は、
図6に示すように、ベース2内に形成された検査ガス導入路31に連通し、他方の穴28は、ベース2内に形成された検査ガス排気路32に連通している。
【0035】
検査ガス導入路31は、ベース2の短手方向の一方の側面2a(
図5参照)に形成された第1導入口33と、上述した一方の丸穴25とを連通している。以下においては、上述した一方の丸穴25を「第2導入口25」という。第1導入口33には、検査ガス及び又はフード4内(より詳細には、そのうちの検査対象6の外側の空間)をパージするためのパージガス(フードパージガスともいう)を供給するガス供給機構120(詳細は後述)が接続されている。フードパージガスは、ここでは圧縮空気とするが、空気、不活性ガスなどであってもよい。
【0036】
検査ガス排気路32は、ベース2の短手方向の他方の側面2bに形成された第2導出口36と、上述した他方の丸穴28とを連通している。以下においては、上述した他方の丸穴28を「第1導出口28」という。第2導出口36には、フード4内の検査ガス及び又はフードパージガスをリーク検査装置1の外部に排気するガス排気機構130(詳細は後述)が接続されている。
【0037】
検査ガス及び又はフードパージガスは、ガス供給機構120→第1導入口33→検査ガス導入路31→第2導入口25→チャンバ110内つまりフード4内→第1導出口28→第2導出口36→ガス排気機構130の順で流れる。
【0038】
ベース2に形成された貫通孔21は、
図8に示すように、ステージ部8の表面とは直交する垂直方向(
図7においては上下方向)にベース2を貫通している。貫通孔21が形成される位置は、検査対象6の本体部6aがステージ部8で固定される位置である。
【0039】
この実施の形態による貫通孔21は、孔径が異なる複数の孔を接続して形成されている。複数の孔は、ステージ部8に開口する第1の孔41と、第1の孔41より孔径が小さく形成されて第1の環状の平坦面42を介して第1の孔41に接続された第2の孔43と、第2の孔43より孔径が大きく形成されてテーパー面44と第2の環状の平坦面45とを介して第2の孔43に接続された第3の孔46を含む。
【0040】
第1の孔41のベース2に開口する一端の孔径(開口径)は、第1の環状の平坦面42に接続される他端の孔径より小さい。このため、第1の孔41の孔壁面はテーパー面である。
【0041】
第3の孔46の内面にはパージガス流通路51が開口している。パージガス流通路51は、
図9に示すように、ベース2の載置面3とは別の面(長手方向の一方の側面2c)に形成された第3導入口52と貫通孔21の第3の孔46とを連通する第1の流路51aと、ベース2の載置面3とはさらに別の面(長手方向の他方の側面2d)に形成された第3導出口53と貫通孔21の第3の孔46とを連通する第2の流路51bとによって構成されている。
図9の破断位置は、
図2におけるIX-IX線によって示す位置である。また、
図9は、フード押圧部5を省略して描いてある。
【0042】
第3導入口52には、図示していない配管を介してパージガス供給装置151が接続されている。パージガス供給装置151は、パージガスを、特に、リーク検査時のチャンバ110内への検査ガスの充填時に第3導入口52に供給する。
【0043】
第3導出口53には、図示していない配管を介してパージガス排気弁152が接続されている。パージガス排気弁152は、第3導出口53から排気されたパージガスを外部に放出する。パージガス排気弁152に、パージガス回収装置が接続され、パージガスは当該装置により回収されてもよい。パージガスは、例えば空気を使用することができる。
【0044】
貫通孔21には、
図9に示すように、ノズル61がベース2の裏側から挿入されている。ノズル61は、
図10に示すように、
図10において最も上に位置する第1の円筒62と、第1の円筒62より外径が大きい第2の円筒63と、第2の円筒63から離れるにしたがって次第に外径が大きくなるテーパー面64と円筒面65とを有する方向変更部66と、方向変更部66から径方向の外側に延びるフランジ部67と、フランジ部67から方向変更部66とは反対側に延びる配管接続部68などを有している。
【0045】
第1の円筒62は、検査対象6の連通孔11に挿入可能に形成されている。第1の円筒62と第2の円筒63との境界部分には、第3の環状の平坦面69が形成されている。
【0046】
方向変更部66は、パージガス流通路51(第1の流路51a)から貫通孔21(第3の孔46)に流入したパージガスの流れる方向を変えるためのものである。パージガスは、方向変更部66のテーパー面64に沿って流れることにより流れる方向が変えられる。
【0047】
フランジ部67には、
図9に示すように、フランジ部67とベース2との間をシールするためにOリング70が装着されている。
【0048】
配管接続部68には、図示していない配管を介してリーク検出機構140が接続される。詳細は後述するが、リーク検出機構140は、ノズル61を介して、検査対象6の真空室6dに対して真空引きを行い、また、フード4内から真空室6dにリークした検査ガスの量を測定し、検査ガスの量が予め定めた限界量を越えたときにリーク有りと判定する。
【0049】
ノズル61は、
図11に示すように、第1の円筒62から方向変更部66までの部分がベース2の貫通孔21の中に挿通され、フランジ部67をベース2の裏面に重ねるようにして図示していない固定用ボルトによってベース2に固定されている。第1の円筒62は、貫通孔21の中心に位置しており、ノズル61がベース2に取付けられた状態でベース2のステージ部8から突出する。ノズル61がベース2に取り付けられた状態において、ノズル61の第2の円筒63と貫通孔21の第2の孔43との間には環状の空間Sが形成される。
【0050】
検査対象6は、
図11に示すように、ノズル61の第1の円筒62が本体部6aの連通孔11に挿入された状態でステージ部8に固定される。
【0051】
ノズル61の第1の円筒62と貫通孔21の第1の孔41との間には、
図11に示すように、二重シールリング73が設けられている。二重シールリング73は、ノズル61の第1の円筒62の外周(リーク検査ガス導出管の一端開口部の外周)に密着装着されて、外気が第1の円筒62の中に進入することを防止する。この実施の形態による二重シールリング73は、内径が第1の円筒62の外径と等しい第1のOリング74と、内径が第1のOリング74の外径と等しい第2のOリング75とによって構成されている。また、第1のOリング74と第2のOリング75とがノズル61の第1の円筒62の外周に装着された状態で、第1のOリング74の外周面と第2のOリング75の内周面とが密着している。
【0052】
第1のOリング74は、検査対象6の連通孔11の周囲に形成された平坦面12と、ノズル61の第3の環状の平坦面69との間に挟まれている。このため、ノズル61の第1の円筒62は、第1のOリング74を介して検査対象6に密着することになる。
【0053】
第2のOリング75は、検査対象6の上述した平坦面12と、貫通孔21の第1の環状の平坦面42との間に挟まれている。
【0054】
パージガス供給装置151の動作中、パージガスが
図8中に矢印で示すように第3導入口52からベース2の貫通孔21とノズル61との間の空間を通って第3導出口53に流れる。その途中、パージガスは、二重シールリング73およびノズル61の外周面(テーパー面64、第2の円筒63の外周面)に沿って流れる。
【0055】
フード4内に供給される検査ガスは、
図11中に白抜き矢印で示すように、検査対象6の周辺近傍から第2のOリング75を透過して内側に漏洩する。第2のOリング75の内側は、ベース2の第2の孔43とノズル61の第2の円筒63との間の環状の空間Sに露出している。この環状の空間Sには、パージガス流通路51を流れてノズル61のテーパー面64に当たって流れる方向が変えられたパージガスが吹き付けられる。このため、第2のOリング75を透過して環状の空間Sに漏れ出た検査ガスは、パージガスによって押し流されて環状の空間Sからパージガス流通路51の下流に送られる。このため、第2のOリング75を透過した検査ガスの、ノズル61の薄肉の第1の円筒62の中に吸い込まれる量が低減され(当該量が0となることを含む)、高い精度でリーク検査を実施することができる。また、第2のOリング75を透過した検査ガスの、第1のOリング74及び検査対象6の連通孔11を介して真空室6dに侵入する量も低減され、高い精度でリーク検査を実施することができる。
【0056】
上記で説明したリーク検査装置1の構成においては、検査対象6の直下から真空排気を行うことができるから、真空排気を行う相対的に太い配管が側方に張り出すようなことはない。
【0057】
図12に示すように、リーク検査装置1は、チャンバ110、ガス供給機構120、ガス排気機構130、リーク検出機構140、指示受付部160、出力部165、及び、コントローラ170を備える。なお、
図12では不図示だが、リーク検査装置1は、パージガス供給装置151、パージガス排気弁152も備える。また、以下の説明では、検査ガスをヘリウム(He)ガスとし、ガス供給機構120からのフードパージガス及びパージガス供給装置151からのパージガスを空気(圧縮空気を含む)とする。
【0058】
ガス供給機構120は、第1制御弁121と、第1流量制御装置122と、第2制御弁123と、第2流量制御装置124と、を備える。
【0059】
第1制御弁121及び第1流量制御装置122は、配管により形成された第1流路L1の途中に設けられている。第1流路L1は、ボンベ又はコンプレッサなどからの空気を合流流路L12に流す。第1制御弁121は、チャンバ110内の空間のうちの検査対象6の外側空間への空気の供給と非供給とを、第1流路L1を開閉する開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える空気用の制御弁である。第1流量制御装置122は、第1流路L1を流れる空気の流量を測定及び制御する。
【0060】
第2制御弁123及び第2流量制御装置124は、配管により形成された第2流路L2の途中に設けられている。第2流路L2は、ボンベなどからのHeガスを合流流路L12に流す。第2制御弁123は、チャンバ110内の空間のうちの検査対象6の外側空間への空気の供給と非供給とを、第2流路L2を開閉する開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替えるHeガス用の制御弁である。第2流量制御装置124は、第2流路L2を流れるHeガスの流量を測定及び制御する。
【0061】
合流流路L12は、第1流路L1及び第2流路L2が合流した流路であり、第1流路L1及び又は第2流路L2を流れるガス(空気又はHeガス)をチャンバ110(ベース2)の第1導入口33に流す。
【0062】
ガス排気機構130は、第3流路L3の途中に設けられた排気弁131を備える。第3流路L3は、第2導出口36から排気されるチャンバ110内の前記ガスを、大気に放出又は所定のガス回収装置に排気する。排気弁131は、チャンバ110(より詳細には、チャンバ110内の空間のうちの検査対象6の外側空間)からのHeガスの排気と非排気とを、第3流路L3を開閉する開状態と閉状態とのそれぞれにより切り替える。
【0063】
リーク検出機構140は、遮断弁141と、リークディテクタ142と、を備える。リーク検出機構140は、ノズル61のベース2側とは反対側の端部に直接又は所定の配管を介して接続される。遮断弁141は、リークディテクタ142とチャンバ110との間の流路を開閉することで、リークディテクタ142とチャンバ110との接続/遮断を制御する。リークディテクタ142は、検査対象6の内部空間である真空室6dを真空引きする真空ポンプ142Aと、チャンバ110の前記外側空間から真空室6dにリークしたHeガスの量を測定する測定器142Bと、を備える。遮断弁141は、検査対象6が交換されるときなどに真空ポンプ142Aを保護するため、閉じられる。
【0064】
指示受付部160は、リーク検査の開始指示の操作入力などを受け付ける操作装置を含んで構成される。指示受付部160は、前記開始指示が無線又は有線により他の装置から入力される通信モジュールを含んでもよい。指示受付部160は、入力されたリーク検査の開始指示をコントローラ170に供給する。
【0065】
出力部165は、コントローラ170の制御のもとで各種情報を外部出力する。出力部165は、各種情報を表示する表示装置、前記他の装置に各種情報を送信する通信モジュールなどであればよい。出力部165は、前記指示の受付画面などを表示してもよい。
【0066】
コントローラ170は、PLC(Programmable Logic Controller)を含む各種のコンピュータのいずれか又は複数のコンピュータの組合せからなる。コントローラ170は、プログラムを実行して下記の処理の少なくとも一部を行うプロセッサ、及び又は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの、プログラムによらず下記の処理の少なくとも一部を行う論理回路を含んで構成されてもよい。プログラムは、例えば、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶される。コントローラ170は、リーク検査装置1全体、特に上記各要素の動作を制御し、予め定められた検査シーケンスに従って、検査対象6のフード法によるリーク検査を自動で行う。
【0067】
コントローラ170によるリーク検査を行う前、作業者は、前もって、検査対象6をベース2の上に載置し、検査対象固定部13を用いてベース2に固定する。このとき、本体部6aの連通孔11にノズル61の第1の円筒62を挿通させる。その後、作業者は、ベース2にフード4を被せ、フード4をフード押圧部5によってベース2に向けて押して固定する。その後、作業者は、指示受付部160にリーク検査の開始指示を入力する(例えば、起動スイッチのオン)。入力されたリーク検査の開始指示は、コントローラ170に供給され、コントローラ170は、この指示の供給に基づいて、
図13の検査シーケンスを実行する。なお、リーク検査開始前、弁121、123、131、141は閉じられているものとする。
【0068】
コントローラ170は、リーク検査の開始指示が供給されると、第1制御弁121、排気弁131、遮断弁141を開き、リークディテクタ142の真空ポンプ142Aを動作させる(タイミングT1)。これにより、チャンバ110内の空間つまり検査対象6の収容空間が空気によりパージされるとともに、検査対象6の真空室6dが真空引きされる。なお、第1流量制御装置122の開度などは任意の開度に設定される(以下、同じ)。パージ及び真空引きは、予め定められた固定時間t1だけ行われる。固定時間t1は、パージ及び真空引きが十分行われる期間として設定される。
【0069】
固定時間t1の経過後のタイミングT2において、コントローラ170は、第1制御弁121を閉じ、第2制御弁123を開く。第2流量制御装置124の開度などは任意の開度に設定される(以下、同じ)。これら制御により、チャンバ110内への空気でのパージが、Heガスでのパージに変更され、リーク検査が開始される。コントローラ170は、タイミングT2において、リークディテクタ142の測定器142BによりHeガスの量を測定する。コントローラ170は、測定したHeガスの量を基準値として記憶しておく。基準値としてのHeガスの量の測定を、空気によるパージ後に行うことで、チャンバ110内にHeガスが残留したことによる誤った基準値の記憶が防止される。Heガスでのパージは、予め定められた固定時間t2だけ行われる。固定時間t2は、チャンバ110内の空気が全て排気され、チャンバ110内がHeガスで満たされるのに必要な期間として設定される。基準値としてのHeガスの量の測定タイミングは、空気でのパージの終了タイミングであるT2の他、当該パージ中の任意のタイミングでもよい。ただし、タイミングT2での測定の方が精度の良い基準値が得られる。
【0070】
固定時間t2の経過後のタイミングT3において、コントローラ170は、排気弁131を閉じる。これにより、Heガスがチャンバ110内に蓄積される。Heガスが蓄積されるのに伴って、チャンバ110内のHeガスの圧力が増加する。従って、チャンバ110内に流入するHeガスの流量は徐々に減少する。Heガスの蓄積は、予め定められた固定時間t3だけ行われる。固定時間t3は、Heガスが十分な量、チャンバ110内に充填されるのに必要な期間として設定される。
【0071】
固定時間t3の経過後のタイミングT4において、コントローラ170は、測定器142BによりHeガスの量を測定する。コントローラ170は、測定したHeガスの量と、上記で記憶した基準値とを比較する。コントローラ170は、比較の結果、両者の差が所定の閾値未満であれば、検査対象6にリークがない、つまり、検査対象6が良品であると判別する。コントローラ170は、前記の差が所定の閾値以上であれば、検査対象6にリークがある、つまり、検査対象6がリークの異常(溶接不良など)のある不良品であると判別する。コントローラ170は、出力部165を介して判別結果をリーク検査の検査結果として外部出力する、例えば、表示装置に表示、又は他の装置に送信する。Heガスの量の測定タイミングは、Heガスの蓄積の終了タイミングであるT4の他、当該T4前の、Heガスの蓄積の期間中の任意のタイミングでもよい。ただし、タイミングT4での測定の方が精度の良い測定値が得られる。
【0072】
タイミングT4において、コントローラ170は、第1制御弁121及び排気弁131を開き、第2制御弁123を閉じ、真空ポンプ142Aの動作を停止させる。これにより、リーク検査が終了し、空気でのパージが開始される。空気でのパージは、予め定められた固定時間t4だけ行われる。固定時間t4は、空気での十分なパージに必要な期間として設定される。
【0073】
固定時間t4経過後、タイミングT5において、コントローラ170は、開いている弁を閉じ、各装置の動作を終了させる。これにより、リーク検査装置1は初期状態に戻る。
【0074】
コントローラ170は、少なくともHeガスの蓄積期間(タイミングT3~T4)において、パージガス供給装置151を動作させ、パージガス排気弁152を開くとよい。コントローラ170は、検査開始指示を受けてからHeガスの測定タイミングまでの期間(タイミングT1~T4)において、パージガス供給装置151を動作させ、パージガス排気弁152を開いてもよい。
【0075】
コントローラ170は、Heガスでのパージ及びHeガスの蓄積の期間(タイミングT2~T4の期間)、第2流量制御装置124にHeガスの流量を測定させ、その測定結果を監視してもよい。この監視により、検査自体の異常が検出される。なお、当該監視は、第2流量制御装置124にて行われ、下記の監視結果をコントローラ170に出力してもよい。監視を行うコントローラ170又は第2流量制御装置124は、チャンバ110内に供給されるHeガスの流量を監視する流量監視装置として機能する。
【0076】
まず、正常時のHeガスの流量の時間変化について、
図14を参照して説明する。
図14に示すように、Heガスの流量は、Heガスでのパージの開始タイミングT2から急激に増加し、その後、Heガスの蓄積の期間の途中まで略一定となる。その後、Heガスの蓄積が進むと、チャンバ110内のHeガスの圧力が上昇し、Heガスの供給圧力に近づく。従って、Heガスの流量は、徐々に減少し、最終的に0となる。
【0077】
この実施の形態では、Heガスの流量が略一定となるときの値の上及び下にアラーム閾値及びイベント閾値がそれぞれ設けられている。
【0078】
第2流量制御装置124で測定したHeガスの流量がアラーム閾値を超えたとき、Heガスの供給異常、例えば過剰供給が起きていることになる。コントローラ170は、流量がアラーム閾値を超えるかを常時判別(監視)し、超えたと判別した場合には、検査シーケンスをただちに中止し、空気でのパージを行う制御(他の弁は閉め、装置などは停止させる。以下、当該制御に応じて同じ)を行うとともに、アラーム(異常が発生した旨及びその種類)を出力部165に出力する。
【0079】
図14に示すように、Heガスの流量の時間変化は、正常時でもイベント閾値を跨ぐので、イベント閾値と測定した流量との単純な比較では、正常時でも異常との判定が起こってしまう可能性がある。例えば、流量がイベント閾値未満のときに異常とすると、Heガスでのパージ開始直後、及び、Heガスの蓄積の期間における流量の低下により、当該流量がイベント閾値を下回り、異常の誤検出が生じてしまう。
【0080】
そこで、この実施の形態では、Heガスでのパージの期間(T2~T3)と、Heガスの蓄積の期間(T3~T4)とのそれぞれに互いに異なる種類のイベント監視期間を設ける。これにより、異常の誤検出を防止する。
【0081】
一例として、Heガスでのパージの開始タイミングT2から予め定められた時間t21だけ経過したタイミングT2-1を開始タイミングとした時間t22の期間(T2-1~T2-2)をイベント監視期間とする。このイベント監視期間中に、Heガスの流量がイベント閾値を超えれば、検査シーケンスは正常であるといえる。他方、このイベント監視期間中に、Heガスの流量がイベント閾値を超えない場合、流量が正常に上昇していないことになるので、Heガスの供給異常、例えば、第2流路L2の詰まり、Heガスのボンベの元栓が開いていないなどが原因の異常の発生が考えられる。
【0082】
例えば、コントローラ170は、タイミングT2からの時間を計時し、当該時間がt21と予め定められた時間D1(ただし、D1≦t22)との合計時間に達したタイミング又は当該タイミングの前かつ定期的に、第2流量制御装置124で測定されたHeガスの流量と、イベント閾値とを比較する。コントローラ170は、比較の結果、流量がイベント閾値を超えている場合、正常と判別する。コントローラ170は、
図15に示すように、流量がイベント閾値を超えていない場合、異常と判別する。この場合、コントローラ170は、実行中の検査シーケンスを中止し、空気でのパージの制御を行う。また、コントローラ170は、アラーム(異常が発生した旨及びその種類)を出力部165に出力し、作業者に報知する。
【0083】
ここで、前記流量がイベント閾値を超えていても、当該流量が突発的に高くなった流量である可能性もある。これに対応するため、コントローラ170は、前記合計時間に達したタイミングからイベント監視期間終了のタイミングT2-2までの期間中、定期的に、流量とイベント閾値との比較を行い、流量がイベント閾値を所定回数以上下回った場合に、異常との判別し、その逆の場合に、正常と判別してもよい。コントローラ170は、イベント監視期間中、定期的に、流量とイベント閾値との比較を行い、流量がイベント閾値を所定回数以上下回った場合に、異常との判別し、その逆の場合に、正常と判別してもよい。
【0084】
図14に戻り、例えば、Heガスの蓄積の期間(T3~T4)に設けられたイベント監視期間は、タイミングT3から予め定められた時間t31だけ経過したタイミングT3-1を開始タイミングとした時間t32の期間(T2-1~T2-2)をイベント監視期間とする。このイベント監視期間中に、Heガスの流量がイベント閾値を下回れば、検査シーケンスは正常であるといえる。他方、このイベント監視期間中に、Heガスの流量がイベント閾値未満とならない場合、流量が正常に下降していないことになるので、Heガスの蓄積異常、例えば、チャンバ110の漏れ、第2流路L2の漏れ、排気弁131の異常などが原因の異常の発生が考えられる。
【0085】
例えば、コントローラ170は、タイミングT3からの時間を計時し、当該時間がt31と予め定められた時間D2(ただし、D2≦t32)との合計時間に達したタイミング又は当該タイミングの前かつ定期的に、第2流量制御装置124で測定されたHeガスの流量と、イベント閾値とを比較する。コントローラ170は、比較の結果、流量がイベント閾値を下回っている場合、正常と判別する。コントローラ170は、
図16に示すように、流量がイベント閾値を超えている場合、異常と判別する。この場合、コントローラ170は、実行中の検査シーケンスをイベント監視期間経過後に中止し、空気でのパージの制御を行う(
図15の例でもそのようにしてもよい)。なお、中止は、イベント監視期間経過前に行われてもよい。また、コントローラ170は、アラーム(異常が発生した旨及びその種類)を出力部165に出力し、作業者に報知する。
【0086】
ここで、前記合計時間に達したタイミングに前記流量がイベント閾値を下回っても、当該流量が突発的に低くなった流量である可能性もある。これに対応するため、コントローラ170は、前記合計時間に達したタイミングからイベント監視期間終了のタイミングT3-2までの期間中、定期的に、流量とイベント閾値との比較を行い、流量がイベント閾値を所定回数以上下回った場合に、異常と判別し、その逆の場合に正常と判別してもよい。コントローラ170は、イベント監視期間中、定期的に、流量とイベント閾値との比較を行い、流量がイベント閾値を所定回数以上下回った場合に、異常と判別し、その逆の場合に正常と判別してもよい。
【0087】
本実施の形態では、上述のように、コントローラ170が、外部から供給されるリーク検査の開始指示が供給されたことを契機として、予め定められた検査シーケンスに従って、第2制御弁123、排気弁131、及び、リークディテクタ142を動作させ、フード法によりリーク検査を実行する。これにより、フード法によるリーク検査を自動で行うことができ、例えば、大量生産する検査対象6の検査を行う作業者の拘束時間を短くすることができる。なお、これら構成の具体例は上記実施形態に限定されず任意である(下記の各構成についても同様)。
【0088】
上述のように、コントローラ170は、第2制御弁123及び排気弁131を開状態として、チャンバ110内の空間のうちの検査対象6の外側空間を検査ガスでパージする第1制御と、この第1制御のあとに排気弁131を閉状態として、前記外側空間に検査ガスを蓄積する第2制御と、第2制御中又は第2制御の終了タイミングで、検査対象6の真空室6d内の検査ガスの量をリークディテクタ142により測定する第3制御と、測定した検査ガスの量が所定基準を満たして大きいときに、検査対象6にリーク異常が発生していると判別する判別処理と、を行う。これにより、フード法によるリーク検査を自動で行うことができる。
【0089】
上述のように、リーク検査装置1は、第1制御中及び第2制御中での、チャンバ110内の前記外側空間に供給される検査ガスの流量を監視する流量監視装置(コントローラ170又は第2流量制御装置124)を備え、前記流量監視装置は、前記第1制御中の1以上の所定タイミングにおいて前記流量が予め定められたイベント閾値を超えなかったときに前記検査ガスの供給異常を検出して出力する。これにより、検査時の異常を作業者に報知できる。
【0090】
上述のように、前記流量監視装置は、前記第2制御中の1以上の所定タイミングにおいて前記流量が予め定められたイベント閾値を下回らなかったときに前記検査ガスの蓄積異常を検出して出力する。これにより、検査時の異常を作業者に報知できる。
【0091】
上述のように、流量監視装置は、前記流量が予め定められたアラーム閾値を上回ったときに前記検査ガスの供給異常を検出して出力する。
【0092】
上述のように、コントローラ170は、第1制御の前に、第1制御弁121及び排気弁131を開状態とし、第2制御弁123を閉状態として、チャンバ110内の前記外側空間をパージガス(フ―ドパージガス)でパージし、パージガスでのパージ中又はパージの終了タイミングに、検査ガスの量をリークディテクタ142により測定し、測定した前記量を基準値として記憶し、前記判別処理において、前記第3制御で測定した前記検査ガスの前記量が前記基準値よりも所定値以上大きい場合に、前記検査対象にリーク異常が発生していると判別する。これにより、フード法によるリーク検査を自動で行うことができる。
【0093】
本発明は、上記で説明した実施の形態に限定されない。上記実施の形態に対して種々の変形を施したものも本発明の範囲内に含まれ得る。変形例として、リーク検査装置1の各部品の形状は任意である。また、検査対象は、流量センサに限定されず、種々の部品が対象とされる。
【符号の説明】
【0094】
1…リーク検査装置、2…ベース、2a…側面、2b…側面、2c…側面、2d…側面、3…載置面、4…フード、5…フード押圧部、5a…アーム、5b…操作レバー、5c…支柱、5d…貫通孔、6…検査対象、6a…本体部、6b…パイプ部、6c…隔壁、6d…真空室、7…環状溝、8…ステージ部、9…シール部材、10…ピン、11…連通孔、12…平坦面、13…検査対象固定部、14…クランプ部、14a…第1の支持部材、14b…第2の支持部材、14c…アーム部材、14d…ロック部材、14e…押圧用ボルト、15…パイプ保持部、16…中空部、16a…壁面、17…支持ブロック、18…押圧用ボルト、25…第2導入口、28…第1導出口、29…凹部、30…凹部、31…検査ガス導入路、32…検査ガス排気路、33…第1導入口、34…第1制御弁、36…第2導出口、37…第2制御弁、41…第1の孔、42…平坦面、43…第2の孔、44…テーパー面、45…平坦面、46…第3の孔、51…パージガス流通路、51a…第1の流路、51b…第2の流路、52…第3導入口、53…第3導出口、61…ノズル、62…第1の円筒、63…第2の円筒、64…テーパー面、65…円筒面、66…方向変更部、67…フランジ部、68…配管接続部、68…配管接続部、69…平坦面、70…Oリング、73…二重シールリング、74…第1のOリング、75…第2のOリング、110…チャンバ、120…ガス供給機構、121…第1制御弁、122…第1流量制御装置、123…第2制御弁、124…第2流量制御装置、130…ガス排気機構、131…排気弁、140…リーク検出機構、141…遮断弁、142…リークディテクタ、142A…真空ポンプ、142B…測定器、151…パージガス供給装置、152…パージガス排気弁、160…指示受付部、165…出力部、170…コントローラ。