(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094661
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】測色装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/50 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01J3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211352
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】古田 健
(72)【発明者】
【氏名】朝川 一聡
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲露▼
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA13
2G020DA22
2G020DA23
2G020DA32
2G020DA36
2G020DA42
(57)【要約】
【課題】検体の色を複数回にわたって測定する際に同一箇所の色を適正に測定可能な測色装置を提供する。
【解決手段】測色装置は、本体部と、光源と、検出部と、を備える。本体部は、検体を装着可能に構成される。光源は、検体が本体部に装着された際に、検体に対して光を照射可能となる。検出部は、検体が本体部に装着された際に、検体からの反射光を受光可能となり、反射光を受光して検体の色を検出する。検体が本体部に装着された際に、本体部、光源及び検出部に対する検体の相対位置が、同一の相対位置に位置決めされるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の色を測定可能な測色装置であって、
前記検体を装着可能に構成される本体部と、
前記検体が前記本体部に装着された際に、前記検体に対して光を照射可能となる光源と、
前記検体が前記本体部に装着された際に、前記検体からの反射光を受光可能となり、前記反射光を受光して前記検体の色を検出する検出部と、
を備え、
前記検体が前記本体部に装着された際に、前記本体部、前記光源及び前記検出部に対する前記検体の相対位置が、同一の相対位置に位置決めされるように構成されている、
測色装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測色装置であって、
前記検出部は、複数のカラーセンサを備え、
前記複数のカラーセンサは、前記検体の表面にある複数の被測定箇所それぞれからの反射光を受光し、前記複数の被測定箇所それぞれの色を検出するように構成されている、
測色装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の測色装置であって、
前記本体部は、前記検体が前記本体部に装着された際に、前記測色装置の外部から到来する光から前記検体を遮蔽するように構成されている、
測色装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の測色装置であって、
前記光源は、1以上の発光素子と、前記1以上の発光素子が発する光を散乱させる散光板と、を備え、前記散光板が散乱させた光を前記検体に対して照射するように構成されている、
測色装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の測色装置であって、
前記検体を保持可能なホルダを備え、
前記本体部は、前記ホルダを挿し込み可能なスロットを有し、前記検体を保持する状態にある前記ホルダが前記スロットに挿し込まれた際に、前記検体及び前記ホルダが前記本体部に装着されるように構成されている、
測色装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタン操作で色を測定可能な測色器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。下記特許文献1に開示されている測色器は、下面に測色部を備え、上面にある測色ボタンをユーザーが押下すると、測色部によって検体の色が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の測色器は、検体と測色部との相対位置を正確に位置決めできるような仕組みを備えていない。そのため、検体の色を複数回にわたって測定するような場合に、各回の測定における検体上の測定対象箇所が厳密に同一箇所となるように位置決めすることは困難である。したがって、例えば、経時的に色が変化する検体の色を複数回にわたって測定するような場合に、色の変化が検出されたとしても、同一箇所における色の変化を検出したのか、異なる箇所を測定したことに起因する色の変化を検出したのかは不明となる。
【0005】
本開示の一局面においては、検体の色を複数回にわたって測定する際に同一箇所の色を適正に測定可能な測色装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本開示の一態様について説明する。
(1)本開示の一態様は、検体の色を測定可能な測色装置であって、本体部と、光源と、検出部と、を備える。本体部は、検体を装着可能に構成される。光源は、検体が本体部に装着された際に、検体に対して光を照射可能となる。検出部は、検体が本体部に装着された際に、検体からの反射光を受光可能となり、反射光を受光して検体の色を検出する。検体が本体部に装着された際に、本体部、光源及び検出部に対する検体の相対位置が、同一の相対位置に位置決めされるように構成されている。
【0007】
このように構成された測色装置によれば、本体部に検体を装着することにより、本体部、光源及び検出部に対する検体の相対位置を、同一の相対位置に位置決めすることができる。そのため、検体の色を複数回にわたって測定するような場合に、各回の測定における検体上の測定対象箇所が厳密に同一箇所となるように位置決めすることができる。したがって、例えば、経時的に色が変化する検体の色を複数回にわたって測定するような場合に、同一箇所における色の変化を検出することができる。
【0008】
(2)本開示の一態様では、検出部は、複数のカラーセンサを備えてもよい。複数のカラーセンサは、検体の表面にある複数の被測定箇所それぞれからの反射光を受光し、複数の被測定箇所それぞれの色を検出するように構成されていてもよい。
【0009】
このように構成された測色装置によれば、複数の被測定箇所それぞれの色を検出することができる。したがって、例えば、検体の色が一端から他端へ向かって徐々に変化するような場合には、変色領域がどの程度まで進行したのかを検出することができる。
【0010】
(3)本開示の一態様では、本体部は、検体が本体部に装着された際に、測色装置の外部から到来する光から検体を遮蔽するように構成されていてもよい。
このように構成された測色装置によれば、検体の色を測定する際に、測色装置の外部から到来する光の影響を排除することができる。
【0011】
(4)本開示の一態様では、光源は、1以上の発光素子と、1以上の発光素子が発する光を散乱させる散光板と、を備え、散光板が散乱させた光を検体に対して照射するように構成されていてもよい。
【0012】
このように構成された測色装置によれば、1以上の発光素子が発する光を散光板で散乱させてから、その光を検体に対して照射する。したがって、散光板がない場合よりも、検体に対して均一に光を照射することができる。
【0013】
(5)本開示の一態様では、検体を保持可能なホルダを備えてもよい。本体部は、ホルダを挿し込み可能なスロットを有し、検体を保持する状態にあるホルダがスロットに挿し込まれた際に、検体及びホルダが本体部に装着されるように構成されていてもよい。
【0014】
このように構成された測色装置によれば、検体をホルダで保持して、そのホルダをスロットに挿し込めば、検体及びホルダが本体部に装着される。したがって、例えば、検体をホルダで保持したままにしてもよい場合は、本体部に対してホルダの取り付け及び取り外しを行えばよく、検体自体の取り付け及び取り外しが必要な場合に比べ、検体に余計な負荷がかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは測色装置の使用手順(その1)を示す斜視図である。
図1Bは測色装置の使用手順(その2)を示す斜視図である。
図1Cは測色装置の使用手順(その3)を示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは測色装置の内部の構造を示す断面図である。
図2Bは
図2A中に示すIIB部の拡大図である。
図2Cは基板、発光素子、カラーセンサ及び散光板を示す底面図である。
【
図3】
図3は測色装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5Aは検体全体が経時的に変色する場合の変色状況を説明するための説明図である。
図5Bは
図5Aに示す検体の色を測色装置で測定した場合の出力値を説明するための説明図である。
【
図6】
図6Aは検体が一端から他端に向かって経時的に変色する場合の変色状況を説明するための説明図である。
図6Bは
図6Aに示す検体の色を測色装置で測定した場合の出力値を説明するための説明図である。
【
図7】
図7Aは検体の一部が経時的に変色する場合の変色状況を説明するための説明図である。
図7Bは
図7Aに示す検体の色を測色装置で測定した場合の出力値を説明するための説明図である。
図7Cは
図7Aに示す検体No.2の測定結果を示すグラフである。
図7Dは
図7Aに示す検体No.3の測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は他の実施形態として例示する測色装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本開示の測色装置について、例示的な実施形態を挙げて説明する。なお、以下の説明においては、測色装置の六面図を基準にして、正面図に表れる箇所が向けられる方向を前、背面図に表れる箇所が向けられる方向を後、左側面図に表れる箇所が向けられる方向を左、右側面図に表れる箇所が向けられる方向を右、平面図に表れる箇所が向けられる方向を上、底面図に表れる箇所が向けられる方向を下、と規定する。また、図中では、これらの各方向を矢印で示す。
【0017】
[測色装置の構成]
図1A~
図1Cに示すように、測色装置1は、本体部2及びホルダ3を備える。ホルダ3は、検体Sを保持する部材である。ホルダ3の上面には、検体Sを収容可能な凹部5が形成されている。検体Sの形状は、ホルダ3の凹部5にぴったりと収まる形状とされている。そのため、検体Sをホルダ3で保持する際には、検体Sを凹部5に収容するだけで、検体Sとホルダ3との相対位置を同一の相対位置に位置決めすることができる。
【0018】
本体部2の前面には、ホルダ3を挿し込み可能なスロット6が設けられている。ホルダ3をスロット6に挿し込むと、検体S及びホルダ3が本体部2に装着される。ホルダ3をスロット6に挿し込む際には、スロット6の奥に突き当たるまでホルダ3を押し込むだけで、ホルダ3及び検体Sと本体部2との相対位置を同一の相対位置に位置決めすることができる。本体部2の上面には、液晶ディスプレイ7が設けられている。
【0019】
図2Aに示すように、本体部2には、バッテリ8及び制御基板10が内蔵されている。制御基板10の上面には、
図2A及び
図2Bに示すように、制御IC11A、及び電源制御IC11B等が実装されている。制御基板10の下面には、
図2B及び
図2Cに示すように、7つの発光素子12A~12G、及び5つのカラーセンサ13A~13E等が実装されている。発光素子12A~12Gの直下には、散光板14が配置されている。検体Sをホルダ3で保持して、そのホルダ3を本体部2に挿し込むと、ホルダ3によって保持された検体Sは、カラーセンサ13A~13E及び散光板14の直下となる位置に配置される。
【0020】
本実施形態の場合、発光素子12A~12Gとしては、白色LEDが用いられている。カラーセンサ13A~13Eは、被測定箇所からの反射光を受光して、被測定箇所の色をRGB値で出力するデバイスである。本実施形態の場合、5つのカラーセンサ13A~13Eは、検体Sの表面にある5つの被測定箇所それぞれに対向し、5つの被測定箇所それぞれからの反射光を受光し、5つの被測定箇所それぞれの色を検出する。5つのカラーセンサ13A~13Eは、2mm間隔で1列に並べられている。
【0021】
散光板14は、上面側から入射する発光素子12A~12Gからの光を内部で散乱させて、その散乱光を下面側から出射する。このような散光板14を設けると、7つの発光素子12A~12Gによって構成される7つの点光源を、散光板14によって構成される面光源に変換し、その面光源から検体S全体に対して、光源ムラのない均一な光を照射することができる。本体部2は、ホルダ3及び検体Sが本体部2に装着された際に、測色装置1の外部から到来する光から検体Sを遮蔽するように構成されている。したがって、検体Sの色を測定する際、検体Sには、散光板14からの光だけが照射されることになる。
【0022】
図3に示すように、測色装置1は、制御部21、表示部22、光源部23、検出部24、操作部25、及び電源制御部26を備える。制御部21は、上述の制御IC11A等によって構成される。表示部22は、上述の液晶ディスプレイ7等によって構成される。光源部23は、上述の発光素子12A~12G及び散光板14等によって構成される。検出部24は、上述のカラーセンサ13A~13E等によって構成される。操作部25は、ユーザーが操作可能な入力デバイス(例えば、操作ボタンやタッチパネル等。)によって構成される。電源制御部26は、上述の電源制御IC11B等によって構成される。
【0023】
[計測処理]
次に、測色装置1を使用する際に、測色装置1の制御部21によって実行される計測処理について、
図4に基づいて説明する。この計測処理は、測色装置1の電源スイッチがオンとされた際に実行される処理である。
【0024】
計測処理を開始すると、制御部21は、既に校正済みか否かを判断する(S10)。S10では、電源スイッチがオンとされた後に、後述するS20~S90を実行済みの場合には、校正済みであると判断し、S20~S90を未実行の場合には、校正済みではないと判断する。S10において、校正済みではないと判断した場合(S10:NO)、制御部21は、標準試料(黒)の測定を実行する(S20)。
【0025】
ここでいう標準試料(黒)とは、測色装置1で計測した際に、測色装置1での出力値(RGB値)が(0,0,0)となるべき試料である。ユーザーは、標準試料(黒)を測色装置1にセットして、操作部25で測色操作を行う。これにより、S20が実行され、標準試料(黒)の測定が実行される。
【0026】
続いて、制御部21は、S20での測定結果(R0,G0,B0)に対応する出力値(RGB値)を(0,0,0)に設定する(S30)。S20での測定結果(R0,G0,B0)は、同じ標準試料(黒)を測定した場合であっても、外部要因(例えば、環境温度等。)によって多少のばらつきが生じ得る。ただし、S20での測定結果(R0,G0,B0)は、標準試料(黒)の測定結果であることが保証されている。
【0027】
そこで、S30では、S20での測定結果(R0,G0,B0)と出力値(0,0,0)とを対応付ける。以降の処理で、同様の測定結果(R0,G0,B0)が得られた場合には、出力値(0,0,0)を出力すれば、外部要因による影響が排除された出力値を出力することができる。
【0028】
続いて、制御部21は、標準試料(白)の測定を実行する(S40)。ここでいう標準試料(白)とは、測色装置1で計測した際に、測色装置1での出力値が(255,255,255)となるべき試料である。ユーザーは、標準試料(白)を測色装置1にセットして、操作部25で測色操作を行う。これにより、S40が実行され、標準試料(白)の測定が実行される。
【0029】
続いて、制御部21は、S40での測定結果(R255,G255,B255)に対応する出力値を(255,255,255)に設定する(S50)。S40での測定結果(R255,G255,B255)は、同じ標準試料(白)を測定した場合であっても、外部要因(例えば、環境温度等。)によって多少のばらつきが生じ得る。ただし、S40での測定結果(R255,G255,B255)は、標準試料(白)の測定結果であることが保証されている。
【0030】
そこで、S50では、S40での測定結果(R255,G255,B255)と出力値(255,255,255)とを対応付ける。以降の処理で、同様の測定結果(R255,G255,B255)が得られた場合には、出力値(255,255,255)を出力すれば、外部要因による影響が排除された出力値を出力することができる。
【0031】
また、出力値(0,0,0)に対応する測定結果(R0,G0,B0)と出力値(255,255,255)に対応する測定結果(R255,G255,B255)との中間値となる測定結果(Rx,Gx,Bx)が得られた場合についても、R値、G値、B値のそれぞれについて、測定結果(R0,G0,B0)と測定結果(R255,G255,B255)との間を補完し、その補完値に基づいて、測定結果(Rx,Gy,Bz)に対応する出力値(x、y、z)を得ることができる。
【0032】
続いて、制御部21は、チェック試料の測定を実行する(S60)。ここでいうチェック試料とは、測色装置1で計測した際に、測色装置1での出力値が既知のRGB値となるべき試料である。本実施形態の場合は、測色装置1での出力値が(50,50,100)となるべき試料を、チェック試料として採用している。ユーザーは、チェック試料を測色装置1にセットして、操作部25で測色操作を行う。これにより、S60が実行され、チェック試料の測定が実行される。
【0033】
続いて、制御部21は、出力値が(50,50,100)か否かを判断する(S70)。出力値が(50,50,100)となる場合は(S70:YES)、校正完了となり(S90)、S10へと戻る。一方、出力値が(50,50,100)とならない場合は(S70:NO)、補正値を設定し(S80)、S40へと戻る。これにより、S40以降の処理ステップが再実行される。
【0034】
S90からS10へ戻った場合、S10では、校正済みであると判断し(S10:YES)、制御部21は、測色を開始する(S100)。S100で開始した測色を完了したら、制御部21は、検出したRGB値を出力する(S110)。S110では、RGB値を表示部22に表示する。ただし、RGB値の出力方法は、表示出力に限定されず、印刷出力、ファイル出力、通信先機器へのデータ転送等であってもよい。
【0035】
続いて、制御部21は、処理を終了するか否かを判断する(S120)。S120では、未出力の出力値がなければ終了すると判断し、未出力の出力値があれば終了しないと判断する。S120において、終了しないと判断した場合は(S120:NO)、S110へと戻り、未出力のRGB値を出力する(S110)。一方、S120において、終了すると判断した場合は(S120:YES)、
図4に示す計測処理を終了する。
【0036】
[測定例(その1)]
図5Aは、検体S全体が経時的に変色する例を示す図である。
図5Bは
図5Aに示す検体Sの色を測色装置1で測定した場合の出力値である。なお、図示の都合上、
図5A,
図6A,
図7Aでは、検体Sの色の変化を網点の大きさを変えることによって表現してあるが、実際の検体Sにおいては検体Sの色が変化しているのであって、実際の検体S上に網点は存在しない。
【0037】
図5Aに示す例では、経時的にNo.1からNo.7へと進む順序で、検体Sの変色が進行する。カラーセンサ13A~13Eは、
図5A中に併記した位置で、検体Sの色を測定する。この例では、検体Sの変色は、全体的に均一に進行する。そのため、試料No.1からNo.7それぞれに対するカラーセンサ13A~13Eそれぞれの出力値は、同一の出力値となっている。
【0038】
[測定例(その2)]
図6Aは、検体Sが一端から他端に向かって経時的に変色する例を示す図である。
図6Bは
図6Aに示す検体Sの色を測色装置1で測定した場合の出力値である。
【0039】
この例では、経時的にNo.1からNo.7へと進む順序で、検体Sの変色が進行する。カラーセンサ13A~13Eは、
図6A中に併記した位置で、検体Sの色を測定する。この例では、検体Sの変色は、一端から他端に向かって経時的に進行する。そのため、試料No.1からNo.7それぞれに対するカラーセンサ13A~13Eそれぞれの出力値は、カラーセンサ13A側に近づくほど、変色タイミングが遅く、カラーセンサ13E側に近づくほど、変色タイミングが早くなっている。
【0040】
[測定例(その3)]
図7Aは、検体Sの一部が変色し、その変色域が経時的に拡大する例を示す図である。
図7Bは
図7Aに示す検体Sの色を測色装置1で測定した場合の出力値である。
図7Cは
図7Aに示す検体No.2の測定結果を示すグラフである。
図7Dは
図7Aに示す検体No.3の測定結果を示すグラフである。なお、図示の都合上、
図7Aでは、検体Sの色を白黒2値で表現してあるが、実際の検体Sにおいては
図7BにRGB値を示すとおりの色味がある。
【0041】
この例では、経時的にNo.1からNo.3へと進む順序で、検体Sの変色が進行する。カラーセンサ13A~13Eは、
図7A中に併記した位置で、検体Sの色を測定する。この例では、検体Sの変色は、中央付近から両端に向かって経時的に進行する。
図7Bに示すような出力値を用いれば、検体Sの変色域の長さを算出することができる。具体的な一例を挙げれば、まず、
図7B中に示すRGB値を用いて、各RGB値をグレースケール値に変換する。グレースケール値への変換は、例えば、下記[数式1]を利用することができる。
【0042】
[数式1]
グレースケール値=R値×0.3+G値×0.59+B値×0.11
図7Cに示すグラフは、検体No.2の測定結果をグレースケール値に変換した場合のグラフである。
図7Dに示すグラフは、検体No.3の測定結果をグレースケール値に変換した場合のグラフである。
【0043】
図7Cに示すグラフの場合、2つのカラーセンサ13B,13Cで変色を検出している。この場合、変色を検出したカラーセンサ13B,13Cで、最も離れた位置にあるセンサ間距離は2mm、センサ間の最小距離は2mmとなるので、これらを加算した距離が検体Sの変色域の長さ4mmとなる。
【0044】
図7Dに示すグラフの場合、3つのカラーセンサ13B,13C,13Dで変色を検出している。この場合、変色を検出したカラーセンサ13B~13Dで、最も離れた位置にあるセンサ間距離は4mm、センサ間の最小距離は2mmとなるので、これらを加算した距離が検体Sの変色域の長さ6mmとなる。
【0045】
[効果]
以上説明した測色装置1によれば、本体部2に検体Sを装着することにより、本体部2、光源部23及び検出部24に対する検体Sの相対位置を、同一の相対位置に位置決めすることができる。そのため、
図5A~
図7Aに例示したように、検体Sの色を複数回にわたって測定するような場合に、各回の測定における検体S上の測定対象箇所が厳密に同一箇所となるように位置決めすることができる。したがって、例えば、経時的に色が変化する検体Sの色を複数回にわたって測定するような場合に、同一箇所における色の変化を検出することができる。
【0046】
また、上記測色装置1によれば、2mm間隔で配置された複数のカラーセンサ13A~13Eを備えている。したがって、例えば、
図6A~
図7Aに例示したように、検体Sの変色領域が徐々に変化するような場合には、検体Sの色を複数回にわたって測定することにより、変色領域がどの程度まで進行したのかを検出することができる。
【0047】
また、上記測色装置1によれば、検体Sが本体部2に装着された際、本体部2は測色装置1の外部から到来する光から検体Sを遮蔽する。したがって、検体Sの色を測定する際に、測色装置1の外部から到来する光の影響を排除することができる。
【0048】
また、上記測色装置1によれば、1以上の発光素子12A~12Gが発する光を散光板14で散乱させてから、その光を検体Sに対して照射する。したがって、散光板14がない場合よりも、検体Sに対して均一に光を照射することができる。
【0049】
また、上記測色装置1によれば、検体Sをホルダ3で保持して、そのホルダ3をスロット6に挿し込めば、検体S及びホルダ3が本体部2に装着される。したがって、例えば、検体Sをホルダ3で保持したままにしてもよい場合は、本体部2に対してホルダ3の取り付け及び取り外しを行えばよく、検体S自体の取り付け及び取り外しが必要な場合に比べ、検体Sに余計な負荷がかかるのを抑制することができる。
【0050】
さらに、上記測色装置1によれば、検体Sの色を測定し、その測定結果をRGB値で出力することができる。また、検体S表面の同一箇所における色の変化を取得できる。さらに、変色領域の範囲を検出することができ、その変色領域の長さを推定可能な出力値を得ることもできる。したがって、このような測色装置1であれば、例えば、樹脂成型品の色ムラ確認、熱伝導シートの異物調査、塗装の膜厚異常検知、PH試験紙の変色分析、金属メッキの色異常確認、金属の表面処理有無判断、金属腐食による変色検知など、変色を伴う様々な現象を検知する用途で利用できるものと期待できる。
【0051】
[他の実施形態]
以上、測色装置1について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、一体型の測色装置1を例示したが、一部の構成が残りの構成とは別体になっていてもよい。具体例を挙げれば、例えば、
図8に示すように、測色装置31と処理端末32とが別体になっていてもよい。
図8に示す例の場合、測色装置31には、制御部21A、光源部23、検出部24、電源・通信部35が設けられている。処理端末32には、制御部21B、表示部22、操作部25、電源・通信部36が設けられている。
【0053】
処理端末32は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の汎用装置である。光源部23、検出部24、表示部22、操作部25は、それぞれ上述の実施例と同様な構成である。制御部21A,21Bは、それぞれの制御対象を制御する点では、上述の実施例と同様な構成である。電源・通信部35,36は、例えばUSBインターフェース装置等、給電機能と通信機能とを兼ね備えた機器であればよい。
【0054】
測色装置31を操作する際には、操作部25での操作を行うと、その操作に対応するコマンドが電源・通信部35,36経由で、処理端末32から測色装置31へ伝達される。検出部24で測定された色の測定結果は、電源・通信部35,36経由で、測色装置1から処理端末32へ伝送される。
【0055】
また、上記実施形態では、検出部24が5つのカラーセンサ13A~13Eで構成される例を示したが、カラーセンサの数は限定されない。具体的には、カラーセンサは1つ以上あればよい。ただし、変色領域の長さの変化を検出したい場合には、2つ以上のカラーセンサを設ける方がよく、検出範囲の分解能を高めたい場合には、カラーセンサの数は多いほどよい。例えば、上記測色装置1において、カラーセンサ13B,13Dを省略して、3つのカラーセンサ13A,13C,13Eを備える構成としてもよい。あるいは、上記測色装置1において、カラーセンサ13A,13B,13D,13Eを省略して、1つのカラーセンサ13Cを備える構成としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、光源部23が7つの発光素子12A~12Gと散光板14で構成される例を示したが、散光板14を設けるか否かは任意である。また、発光素子12A~12Gとして、LEDを採用するか否かも任意である。
【0057】
また、上記実施形態では、本体部2が検体Sを外光から遮蔽するように構成されていたが、外光の影響が過大ではない環境で測色装置1が用いられるのであれば、本体部2に外光の遮蔽構造を持たせるかどうかも任意である。
【0058】
なお、上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される複数の機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される1つの機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される複数の機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した構成の一部を省略してもよい。上記実施形態のうち、1つの実施形態で例示した構成の少なくとも一部を、当該1つの実施形態以外の上記実施形態で例示した構成に対して付加又は置換してもよい。
【0059】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
検体の色を測定可能な測色装置であって、
前記検体を装着可能に構成される本体部と、
前記検体が前記本体部に装着された際に、前記検体に対して光を照射可能となる光源と、
前記検体が前記本体部に装着された際に、前記検体からの反射光を受光可能となり、前記反射光を受光して前記検体の色を検出する検出部と、
を備え、
前記検体が前記本体部に装着された際に、前記本体部、前記光源及び前記検出部に対する前記検体の相対位置が、同一の相対位置に位置決めされるように構成されている、
測色装置。
【0060】
[項目2]
項目1に記載の測色装置であって、
前記検出部は、複数のカラーセンサを備え、
前記複数のカラーセンサは、前記検体の表面にある複数の被測定箇所それぞれからの反射光を受光し、前記複数の被測定箇所それぞれの色を検出するように構成されている、
測色装置。
【0061】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の測色装置であって、
前記本体部は、前記検体が前記本体部に装着された際に、前記測色装置の外部から到来する光から前記検体を遮蔽するように構成されている、
測色装置。
【0062】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の測色装置であって、
前記光源は、1以上の発光素子と、前記1以上の発光素子が発する光を散乱させる散光板と、を備え、前記散光板が散乱させた光を前記検体に対して照射するように構成されている、
測色装置。
【0063】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか1項に記載の測色装置であって、
前記検体を保持可能なホルダを備え、
前記本体部は、前記ホルダを挿し込み可能なスロットを有し、前記検体を保持する状態にある前記ホルダが前記スロットに挿し込まれた際に、前記検体及び前記ホルダが前記本体部に装着されるように構成されている、
測色装置。
【符号の説明】
【0064】
1,31…測色装置、2…本体部、3…ホルダ、5…凹部、6…スロット、7…液晶ディスプレイ、8…バッテリ、10…制御基板、11A…制御IC、11B…電源制御IC、12A~12G…発光素子、13A~13E…カラーセンサ、14…散光板、21,21A,21B…制御部、22…表示部、23…光源部、24…検出部、25…操作部、26…電源制御部、32…処理端末、35,36…電源・通信部、S…検体。