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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094675
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211374
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠太
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
4M118HA02
4M118HA11
4M118HA24
4M118HA30
4M118HA31
(57)【要約】
【課題】光学的ノイズの発生を抑制しつつ、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れる光半導体装置を提供する。
【解決手段】光半導体装置10は、受光素子11が設けられた半導体基板12、枠状のリブ材13、及び透明基板14をこの順に有し、かつリブ材13と半導体基板12とを接着する接着剤層15を有する。リブ材13及び接着剤層15は、受光素子11を囲むように設けられている。接着剤層15は、リブ材13の外周面13bより外側に張り出している。リブ材13の内周面13aにおける接着剤層15の被覆率は、30%以下である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子が設けられた半導体基板、枠状のリブ材、及び透明基板をこの順に有し、かつ前記リブ材と前記半導体基板とを接着する接着剤層を有する光半導体装置であって、
前記リブ材及び前記接着剤層は、前記受光素子を囲むように設けられており、
前記リブ材及び前記接着剤層を前記透明基板側から見た場合に、前記接着剤層が前記リブ材の外周面より外側に張り出しており、
前記リブ材の内周面における前記接着剤層の被覆率が、30%以下である、光半導体装置。
【請求項2】
前記リブ材の前記半導体基板側の端面における前記接着剤層の被覆率が、100%未満である、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記リブ材の前記半導体基板側の端面における前記接着剤層の被覆率が、60%以上である、請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記リブ材の外周面における前記接着剤層の被覆率が、15%以上である、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記リブ材の内周面の算術平均粗さRaが、50nm以上3000nm以下である、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記リブ材は、感光性組成物の硬化物から構成されており、
前記感光性組成物は、重合性基を有する硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、かつアルカリ可溶性を有する、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記感光性組成物は、着色剤を更に含有する、請求項6に記載の光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSセンサやCCDセンサ等の光半導体装置は、デジタルカメラやスマートフォン等に使用されており、近年では、自動車や工場の監視カメラの普及に伴い使用量が増大するとともに、小型化・高精細化がますます要求されてきている。
【0003】
光半導体装置は、例えば、受光素子が設けられた半導体基板とガラス基板とが、枠状のリブ材を介して積層された中空構造を有する。特許文献1では、リブ材と半導体基板とが接着剤を介して接着された光半導体装置(固体撮像装置)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-129720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の光半導体装置の更なる小型化・高精細化の要求に伴って、従来の光半導体装置では撮像特性に影響を及ぼす場合があった。特に、強い光が入射した際に、撮像した画像に光学的ノイズ(詳しくは、フレア、ゴースト等)が発生し、本来の撮像特性を十分に発揮できない課題があることが判明した。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術だけでは、リブ材と半導体基板との間の接着信頼性(特に、冷熱衝撃試験で評価される信頼性)を高めることは難しい。
【0007】
上記に鑑みて、本発明は、光学的ノイズの発生を抑制しつつ、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れる光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の態様>
本発明には、以下の態様が含まれる。
【0009】
[1]受光素子が設けられた半導体基板、枠状のリブ材、及び透明基板をこの順に有し、かつ前記リブ材と前記半導体基板とを接着する接着剤層を有する光半導体装置であって、
前記リブ材及び前記接着剤層は、前記受光素子を囲むように設けられており、
前記リブ材及び前記接着剤層を前記透明基板側から見た場合に、前記接着剤層が前記リブ材の外周面より外側に張り出しており、
前記リブ材の内周面における前記接着剤層の被覆率が、30%以下である、光半導体装置。
【0010】
[2]前記リブ材の前記半導体基板側の端面における前記接着剤層の被覆率が、100%未満である、前記[1]に記載の光半導体装置。
【0011】
[3]前記リブ材の前記半導体基板側の端面における前記接着剤層の被覆率が、60%以上である、前記[2]に記載の光半導体装置。
【0012】
[4]前記リブ材の外周面における前記接着剤層の被覆率が、15%以上である、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の光半導体装置。
【0013】
[5]前記リブ材の内周面の算術平均粗さRaが、50nm以上3000nm以下である、前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の光半導体装置。
【0014】
[6]前記リブ材は、感光性組成物の硬化物から構成されており、
前記感光性組成物は、重合性基を有する硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、かつアルカリ可溶性を有する、前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の光半導体装置。
【0015】
[7]前記感光性組成物は、着色剤を更に含有する、前記[6]に記載の光半導体装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学的ノイズの発生を抑制しつつ、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れる光半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る光半導体装置の一例を示す平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】本発明に係る光半導体装置の一例を示す部分拡大断面図である。
図4】本発明に係る光半導体装置の他の例を示す部分拡大断面図である。
図5】本発明に係る光半導体装置の他の例を示す断面図である。
図6】A、B及びCは、本発明に係る光半導体装置の一例を製造する方法を示す工程別断面図である。
図7】A、B及びCは、本発明に係る光半導体装置の一例を製造する方法を示す工程別断面図である。
図8】フォトマスクの一例を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0019】
まず、本明細書中で使用される用語について説明する。層状物(より具体的には、透明基板、半導体基板、配線基板等)の「主面」とは、層状物の厚み方向に直交する面をさす。「算術平均粗さRa」は、JIS B0601:2013に記載された方法によって測定される。「スキューネスSsk」は、JIS B0681-2:2018に記載された方法によって測定される。
【0020】
光半導体装置を構成する各層の「厚み」の数値は、「平均厚み」である。光半導体装置を構成する各層の平均厚みは、各層を厚み方向に切断した断面を電子顕微鏡で観察し、断面画像から無作為に測定箇所を10箇所選択し、選択した10箇所の測定箇所の厚みを測定して得られた10個の測定値の算術平均値である。
【0021】
「重合性基」とは、重合反応を可能にする官能基をさす。「光重合開始剤」とは、活性エネルギー線を照射することによって活性種(詳しくは、ラジカル、カチオン、アニオン等)を発生する化合物をさす。「光カチオン重合開始剤」とは、活性エネルギー線を照射することによって、活性種としてカチオン(酸)を発生する化合物をさす。「光ラジカル重合開始剤」とは、活性エネルギー線を照射することによって、活性種としてラジカルを発生する化合物をさす。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、赤外線、電子線、X線、α線、β線、γ線等が挙げられる。
【0022】
「カチオン重合性基」とは、カチオンの存在下で連鎖的に重合反応を起こす官能基をさす。「脂環式エポキシ基」とは、脂環式構造を構成する炭素原子のうち、隣接する2個の炭素原子に酸素原子1個が結合して形成される官能基をさし、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。「ラジカル重合性基」とは、ラジカル重合可能な不飽和結合を有する官能基をさす。「半硬化状態」とは、その後の工程(例えば、加熱工程)によって硬化度を更に高めることが可能な状態をいう。
【0023】
「アルカリ可溶性基」とは、アルカリと相互作用、又はアルカリと反応することにより、アルカリ性溶液に対する溶解性を高める官能基をさす。「感光性組成物がアルカリ可溶性を有する」とは、感光性組成物がアルカリ可溶性基を有する化合物を含むことを意味する。
【0024】
「ポリシロキサン化合物」は、シロキサン単位(Si-O-Si)を構成要素とするポリシロキサン構造を有する化合物である。ポリシロキサン構造としては、鎖状ポリシロキサン構造(具体的には、直鎖状ポリシロキサン構造、分枝鎖状ポリシロキサン構造等)、及び環状ポリシロキサン構造が挙げられる。
【0025】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、重量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
【0026】
「固形分」とは組成物中の不揮発成分であり、「固形分全量」とは、組成物の構成成分から溶媒を除外した全量を意味する。
【0027】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。また、アクリロイル及びメタクリロイルを包括的に「(メタ)アクリロイル」と総称する場合がある。
【0028】
「エポキシ系接着剤」とは、エポキシ基を有する化合物(例えば、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物)を主成分として含む接着剤をさす。「アクリル系接着剤」とは、(メタ)アクリル酸若しくはその誘導体(より具体的には、(メタ)アクリル酸エステル等)、又は(メタ)アクリル酸若しくはその誘導体の重合体を主成分として含む接着剤をさす。
【0029】
本明細書に例示の成分や官能基等は、特記しない限り、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
以下の説明において参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、説明の都合上、後に説明する図面において、先に説明した図面と同一構成部分については、同一符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0031】
<光半導体装置>
本実施形態に係る光半導体装置(例えば、固体撮像装置等)は、受光素子が設けられた半導体基板、枠状のリブ材、及び透明基板をこの順に有し、かつリブ材と半導体基板とを接着する接着剤層を有する。リブ材及び接着剤層は、受光素子を囲むように設けられている。本実施形態に係る光半導体装置では、リブ材及び接着剤層を透明基板側から見た場合に、接着剤層がリブ材の外周面より外側に張り出している。リブ材の内周面における接着剤層の被覆率は、30%以下である。
【0032】
本実施形態に係る光半導体装置は、光学的ノイズの発生を抑制しつつ、冷熱衝撃試験で評価される信頼性(以下、単に「信頼性」と記載することがある)に優れる。その理由は、以下のように推測される。
【0033】
本実施形態に係る光半導体装置では、接着剤層がリブ材の外周面より外側に張り出している。つまり、本実施形態に係る光半導体装置では、接着剤層の張り出した領域がリブ材の外周に沿って配置されているため、冷熱衝撃試験においてリブ材を安定して半導体基板に密着させることができる。このため、本実施形態に係る光半導体装置は、信頼性に優れる。
【0034】
また、一般に、光半導体装置に強い光が入射した場合、リブ材の内側の空間(内部空間)において迷光が発生する。そして、発生した迷光が、リブ材の内周面で反射し、受光素子に入射することで、光学的ノイズが発生する。本発明者らの検討により、リブ材の内周面が接着剤で被覆されていると、迷光が接着剤で被覆された内周面で反射しやすくなることが判明した。これに対し、本実施形態に係る光半導体装置は、リブ材の内周面における接着剤層の被覆率が30%以下であるため、リブ材の内周面における迷光の反射を抑制できる。よって、本実施形態に係る光半導体装置によれば、光学的ノイズの発生を抑制できる。
【0035】
[光半導体装置の構成]
以下、本実施形態に係る光半導体装置の構成例について、適宜図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る光半導体装置の一例を示す平面図である。また、図2は、図1のII-II線における断面図である。
【0036】
図1及び図2に示すように、光半導体装置10は、受光素子11が設けられた半導体基板12、枠状のリブ材13、及び透明基板14をこの順に有し、かつリブ材13と半導体基板12とを接着する接着剤層15を有する積層体である。リブ材13及び接着剤層15は、受光素子11を囲むように設けられている。リブ材13及び接着剤層15を透明基板14側から見た平面図である図1に示すように、接着剤層15は、リブ材13の外周面13bより外側に張り出している。なお、図1に示す光半導体装置10では、接着剤層15は、リブ材13の内周面13aより内側にも張り出している。
【0037】
(透明基板14)
透明基板14としては、例えば、ガラス基板、透明プラスチック基板(より具体的には、アクリル樹脂基板、ポリカーボネート基板等)等を用いることができ、信頼性の観点からガラス基板が好ましい。ガラスの種類は特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。透明基板14の厚みは、例えば50μm以上2000μm以下である。
【0038】
必要に応じて透明基板14の表面に、赤外線反射膜(又は赤外線カットフィルター)、反射防止膜(ARコート)、無反射膜、保護膜、強化膜、遮蔽膜、導電膜、帯電防止膜、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、バンドパスフィルター等の機能をもつ被覆膜が形成されていてもよい。特に、反射防止膜や赤外線反射膜(又は赤外線カットフィルター)は、撮影画像の光学的ノイズがより低減するため好ましい。
【0039】
特に、被覆膜として反射防止膜を使用する場合には、TiO、Nb、Ta、CaF、SiO、Al、MgS、ZrO、NiO及びMgFからなる群より選ばれる1種以上の無機材料を含む多層の反射防止膜を使用することが好ましい。
【0040】
これらの被覆膜は、透明基板14の一方の主面又は両主面に設ける事ができる。両主面に設ける場合は、被覆膜の種類は同じものであっても異なるものであってもよい。一方の主面に同じ機能を有する異種の被覆膜を積層させることも可能である。また、一方の主面に異なる機能を有する異種の被膜膜を積層させることも可能である。積層数についても特に限定されず、数層から数十層の多層にすることができる。
【0041】
(リブ材13)
リブ材13の材料は、特に限定されないが、例えば、感光性組成物の硬化物や熱硬化性樹脂の硬化物等が挙げられ、パターン化の容易性の観点から、感光性組成物の硬化物が好ましい。つまり、パターン化の容易性の観点から、リブ材13は、感光性組成物の硬化物から構成されていることが好ましい。感光性組成物の詳細については後述する。
【0042】
リブ材13の形状は、枠状である限り、特に限定されない。図1及び図2では、枠状の一例として、四角筒状の構造を有するリブ材13が示されているが、例えば、円筒状の構造を有するリブ材であってもよく、四角筒状以外の多角筒状の構造を有するリブ材であってもよい。
【0043】
リブ材13の一辺の長さは、例えば0.1mm以上5.0mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上2.0mm以下である。リブ材13の4角の形状は、図1に示すように、曲形状であることが好ましい。リブ材13の4角の形状が曲形状であると、はんだリフローや冷熱衝撃試験時において4角への応力集中が緩和され、リブ材13の剥離やクラックを低減できる。はんだリフローや冷熱衝撃試験時において、リブ材13の剥離やクラックをより低減するためには、リブ材13の4角の外周側及び内周側の曲率半径は、いずれも0.01mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0044】
信頼性により優れる光半導体装置を得るためには、リブ材13の厚みT(高さ)は、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが更により好ましく、140μm以下、130μm以下、120μm以下、110μm以下又は100μm以下であってもよい。また、光学的ノイズの発生をより抑制するためには、リブ材13の厚みT(高さ)は、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが更により好ましく、25μm以上であることが特に好ましい。
【0045】
透明基板14とリブ材13との密着性を高めつつ、光半導体装置の更なる小型化を図るためには、リブ材13の幅Wは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましい。
【0046】
(接着剤層15)
接着剤層15は、接着剤の硬化物から構成される。接着剤層15の材料となる接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。エポキシ系接着剤としては、例えば、エポキシ基を有する化合物を主成分として含み、かつ光カチオン重合開始剤を含む接着剤が挙げられる。アクリル系接着剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物を主成分として含み、かつ光ラジカル重合開始剤を含む接着剤が挙げられる。接着剤中の重合開始剤(光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤等)の含有量は、主成分(エポキシ基を有する化合物、ラジカル重合性化合物等)100重量部に対して、例えば1重量部以上5重量部以下である。
【0047】
半導体基板12とリブ材13との接着性により優れる光半導体装置を得るためには、接着剤層15の材料となる接着剤としては、エポキシ系接着剤が好ましい。接着剤層15の材料となる接着剤としてエポキシ系接着剤を使用する場合、半導体基板12とリブ材13との接着性に更に優れる光半導体装置を得るためには、エポキシ系接着剤の主成分としては、エポキシ基を2個以上有する芳香族エポキシ化合物が好ましく、ビスフェノール系エポキシ化合物(より具体的には、ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物等)がより好ましく、ビスフェノールA系エポキシ化合物が更に好ましい。
【0048】
接着剤には、レオロジー調整剤、ギャップスペーサー等の添加剤が含まれていてもよい。レオロジー調整剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、石綿粉、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉛、マグネシア、酸化スズ、炭酸カルシウム、カーボン、マイカ、スメクタイト、カーボンブラック等からなる無機粒子;ポリスチレンビーズ、ポリエチレン粒子、アクリル粒子、ポリシロキサン粒子、イソプレンゴム粒子、ポリアミド粒子等の有機粒子;アマイドワックス、変性ポリエステルポリオール、エチルセルロース、メチルセルロース、有機ベントナイト等の有機化合物等を挙げることができる。接着剤の粘度を、塗布に適した範囲に調整するためには、接着剤中のレオロジー調整剤の含有量は、主成分(エポキシ基を有する化合物、ラジカル重合性化合物等)100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、5重量部以上18重量部以下であることがより好ましい。
【0049】
接着剤にギャップスペーサーが配合されている場合、接着剤層15の厚みを、後述する好ましい範囲に容易に調整することができる。ギャップスペーサーとしては、粒度分布がシャープな粒子が好ましい。ギャップスペーサーの材料としては、シリカ、炭酸カルシウム、樹脂、ゴム等が挙げられる。ギャップスペーサーの粒径は、形成される接着剤層15の厚みに応じて調整することができる。接着剤層15の厚みを、後述する好ましい範囲に容易に調整するためには、接着剤中のギャップスペーサーの含有量は、主成分(エポキシ基を有する化合物、ラジカル重合性化合物等)100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上2重量部以下であることがより好ましい。
【0050】
接着剤の塗布精度を高めるためには、接着剤の粘度は、10Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以上600Pa・s以下であることがより好ましい。
【0051】
接着剤層15の幅Wは、リブ材13の幅Wに応じて適宜変更可能であるが、例えば、10μm以上500μm以下であり、好ましくは10μm以上400μm以下であり、より好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0052】
リブ材13と半導体基板12との接着性に優れつつ、信頼性により優れる光半導体装置を得るためには、リブ材13と半導体基板12との間隔は、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上80μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上50μm以下であることが更に好ましく、1μm以上30μm以下であることが更により好ましい。以下、リブ材と半導体基板との間隔を、「接着剤層の厚み」と記載することがある。
【0053】
(半導体基板12)
半導体基板12としては、例えばイメージセンサ基板等が挙げられる。半導体基板12の厚みは、例えば50μm以上800μm以下である。
【0054】
半導体基板12と透明基板14とリブ材13とで囲まれた内部空間Zは、密閉された空間であってもよい。この場合、リブ材13が、有効画素領域への湿気やダストの進入を防ぐ隔壁として機能する。リブ材13に通気孔を形成する場合は、迷路状にリブ材13を形成することで内部空間Zへの異物の侵入を防ぐことができる。
【0055】
また、光半導体装置10では、リブ材13の内周面13aにおける接着剤層15の被覆率が、30%以下である。以下、リブ材の内周面における接着剤層の被覆率を、「内周被覆率」と記載することがある。内周被覆率の測定方法について、接着剤層15及びその周囲を拡大した部分断面図である図3を参照しながら説明する。なお、内周被覆率は、接着剤層15及びその周囲の断面の電子顕微鏡画像から測定する。また、以下の説明では、リブ材13の厚み方向と直交する方向をX方向とし、リブ材13の厚み方向に平行な方向をY方向とする。
【0056】
内周被覆率の測定では、まず、上記電子顕微鏡画像において、内周面13aのY方向の長さLと、内周面13aにおける接着剤層15で覆われた領域のY方向の長さLとを計測する。そして、内周被覆率(単位:%)を、式「内周被覆率=100×L/L」に従って算出する。
【0057】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、内周被覆率が、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが更により好ましく、5%以下であることが特に好ましく、0%であってもよい。
【0058】
図3に示すように、接着剤層15は、リブ材13の外周面13bの少なくとも一部を覆っていてもよい。信頼性により優れる光半導体装置を得るためには、リブ材13の外周面13bにおける接着剤層15の被覆率が、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましく、20%以上であることが更により好ましく、25%以上であることが特に好ましく、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上又は90%以上であってもよく、100%であってもよい。以下、リブ材の外周面における接着剤層の被覆率を、「外周被覆率」と記載することがある。
【0059】
外周被覆率の測定方法は、上述した内周被覆率と同様の方法で測定できる。詳しくは、まず、上記電子顕微鏡画像において、外周面13bのY方向の長さLと、外周面13bにおける接着剤層15で覆われた領域のY方向の長さLとを計測する。そして、外周被覆率(単位:%)を、式「外周被覆率=100×L/L」に従って算出する。
【0060】
光半導体装置の信頼性をより高めつつ、光半導体装置の更なる小型化を図るためには、接着剤層15の断面において、接着剤層15の外周部15aと半導体基板12との接点12aからリブ材13の外周面13bの延長線ELまでの最短距離D図3参照)が、10μm以上75μm以下であることが好ましい。以下、接着剤層の断面において、接着剤層の外周部と半導体基板との接点からリブ材の外周面の延長線までの最短距離を、「張り出し長さ」と記載することがある。光半導体装置の信頼性を更に高めつつ、光半導体装置の更なる小型化を図るためには、張り出し長さは、15μm以上75μm以下であることが好ましく、20μm以上75μm以下であることがより好ましく、25μm以上75μm以下であることが更に好ましく、30μm以上75μm以下であることが更により好ましく、35μm以上75μm以下、40μm以上75μm以下、又は45μm以上75μm以下であってもよい。
【0061】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、リブ材13の内周面13aの算術平均粗さRaが、50nm以上3000nm以下であることが好ましい。内周面13aの算術平均粗さRaが50nm以上3000nm以下である場合、発生した迷光が、内周面13aで反射する際に拡散反射する。拡散反射した迷光は、受光素子11に入射しても、光学的ノイズを発生させる程の強度を有していないため、内周面13aの算術平均粗さRaが50nm以上3000nm以下である場合、光学的ノイズの発生をより抑制できる。光学的ノイズの発生を更に抑制するためには、リブ材13の内周面13aの算術平均粗さRaは、100nm以上2000nm以下であることが好ましく、200nm以上900nm以下であることがより好ましく、350nm以上850nm以下であることが更に好ましい。なお、本明細書において、「リブ材の内周面の算術平均粗さRa」とは、リブ材の内周面の少なくとも一部の算術平均粗さRaを意味する。また、以下において、算術平均粗さRaが50nm以上3000nm以下の凹凸形状を、単に「凹凸形状」と記載することがある。
【0062】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、リブ材13の内周面13aにおいて凹凸形状に形成された面積の割合は、リブ材13の内周面13aの全面積を100%としたとき、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、100%であること(全面が、凹凸形状に形成されていること)が特に好ましい。
【0063】
内周面13aが凹凸形状に形成されている場合、光学的ノイズの発生を更に抑制するためには、内周面13aのスキューネスSskは、負の値であることが好ましく、-0.80以上-0.10以下であることがより好ましく、-0.70以上-0.10以下であることが更に好ましく、-0.70以上-0.20以下であることが更により好ましい。スキューネスSskは、凹凸表面の平均面を基準とした高さ分布の対称性を示す。スキューネスSskが0である場合は、高さ分布が正規分布(上下に対称)となる。一方、スキューネスSskが負の値である場合は、細かい谷が多い表面となり、スキューネスSskが正の値である場合は、細かい山が多い表面となる。
【0064】
凹凸形状は、算術平均粗さRaが50nm以上3000nm以下である限り、規則的な凹凸形状であってもよいし、不規則な凹凸形状であってもよい。光学的ノイズをより低減するためには、内周面13aが不規則な凹凸形状に形成されていることが好ましい。内周面13aの凹凸形状が不規則な凹凸形状である場合、内周面13aでの反射光をより拡散反射させることができる。
【0065】
リブ材13の内周面13aには、X方向にのみ凹凸形状が形成されていてもよく、Y方向にのみ凹凸形状が形成されていてもよく、X方向及びY方向の両方に凹凸形状が形成されていてもよい。ここで、「X方向(又はY方向)にのみ凹凸形状が形成されている」とは、X方向(又はY方向)にスキャンしたときにのみ凹凸形状が観測され、その方向と直交する方向にスキャンしたときには凹凸形状が観測されないことを意味する。光学的ノイズをより低減するためには、リブ材13の内周面13aには、X方向及びY方向の両方に凹凸形状が形成されていることが好ましい。
【0066】
リブ材13の内周面13aに凹凸形状を形成する方法は、特に限定されず、例えば、充填材を含む材料からリブ材13を形成する方法、金型を用いて凹凸を形成する方法、フォトリソグラフィーにより感光性組成物をパターン化する際に、凹凸が形成されたフォトマスクを用いる方法、直鎖状構造と直鎖状以外の構造とを有する感光性組成物からフォトリソグラフィーによりリブ材13を形成する方法等が挙げられる。
【0067】
中でも、直鎖状構造と直鎖状以外の構造とを有する感光性組成物からフォトリソグラフィーによりリブ材13を形成する方法が、微細な凹凸を形成でき、工程数も削減でき、容易に高精度のパターン形状を形成できるため好ましい。直鎖状構造と直鎖状以外の構造とを有する感光性組成物からフォトリソグラフィーによりリブ材13を形成すると、リブ材13の内周面13aを含む表面に凹凸形状を形成できる。その理由としては、直鎖状構造と直鎖状以外の構造とを有する感光性組成物を用いると、フォトリソグラフィーの現像工程に至るまでに、感光性組成物中に相分離構造が発現することにより、現像工程後のリブ材13の表面に、相分離構造由来の凹凸が形成されるためであると推測される。
【0068】
上記「直鎖状以外の構造」には、分枝鎖状構造、網目状構造、環状構造等が挙げられ、リブ材13の内周面13aの算術平均粗さRaを50nm以上3000nm以下の範囲に容易に調整するためには、直鎖状以外の構造としては、環状構造が好ましい。なお、「直鎖状構造と直鎖状以外の構造とを有する感光性組成物」は、直鎖状構造を有する化合物と直鎖状以外の構造を有する化合物とをそれぞれ含有していてもよく、直鎖状構造及び直鎖状以外の構造の両方の構造を有する化合物を含有していてもよい。直鎖状構造を有する化合物としては、直鎖状構造及び直鎖状以外の構造の両方の構造を有するポリシロキサン化合物、直鎖状ポリシロキサン化合物、直鎖状ポリアクリレート、直鎖状ポリエーテル、直鎖状ポリエステル、直鎖状ポリイミド、直鎖状ポリオレフィン等が挙げられ、耐熱性の観点から、直鎖状構造及び直鎖状以外の構造の両方の構造を有するポリシロキサン化合物、又は直鎖状ポリシロキサン化合物が好ましい。
【0069】
また、直鎖状構造と直鎖状以外の構造とを有する感光性組成物からフォトリソグラフィーによりリブ材13を形成すると、リブ材13の内周面13aを含む表面のスキューネスSskが、負の値となる傾向がある。一方、充填材を含む材料からリブ材13を形成すると、リブ材13の内周面13aを含む表面のスキューネスSskが、正の値となる傾向がある。上記感光性組成物の詳細については後述する。
【0070】
接着剤層15の断面形状は、図3に示す形状に限定されない。接着剤層15の断面形状は、例えば、図4に示すような形状であってもよい。図4では、リブ材13の半導体基板12側の端面13cの一部が接着剤層15で被覆されていない。光学的ノイズの発生をより抑制するためには、図4に示すように、リブ材13の半導体基板12側の端面13cにおける接着剤層15の被覆率が、100%未満であることが好ましい。以下、リブ材の半導体基板側の端面における接着剤層の被覆率を、「端面被覆率」と記載することがある。
【0071】
端面被覆率の測定方法は、上述した内周被覆率と同様の方法で測定できる。詳しくは、まず、上記電子顕微鏡画像において、端面13cにおけるリブ材13の幅方向の長さLと、端面13cにおける接着剤層15で覆われた領域の上記幅方向の長さLとを計測する。そして、端面被覆率(単位:%)を、式「端面被覆率=100×L/L」に従って算出する。
【0072】
光学的ノイズの発生を更に抑制するためには、端面被覆率は、99%以下であることが好ましく、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下又は93%以下であってもよい。信頼性により優れる光半導体装置を得るためには、端面被覆率は、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、75%以上であることが更により好ましく、77%以上であることが特に好ましい。
【0073】
なお、端面被覆率が100%未満の場合、通常、図4に示すように、リブ材13の内周面13aを被覆する接着剤は存在しない。よって、本明細書では、端面被覆率が100%未満の場合、内周被覆率は0%であるものとする。
【0074】
[他の実施形態の構成]
以上、本実施形態に係る光半導体装置の構成例について、図1図4を参照しながら説明したが、本発明は、上述した実施形態には限定されない。例えば、本発明に係る光半導体装置は、上述した構成に加え、図5に示すような配線基板を備えていてもよい。
【0075】
図5は、本発明の他の実施形態に係る光半導体装置の断面図である。図5に示す光半導体装置50は、図2に示す光半導体装置10の構成に加え、半導体基板12の透明基板14側とは反対側の主面にダイボンド材51を介して接着された配線基板52(インターポーザー)を備える。
【0076】
半導体基板12及び配線基板52には、それぞれ半導体基板用電極パッド53及び配線基板用電極パッド54が設けられている。半導体基板用電極パッド53と配線基板用電極パッド54とは、金属製のワイヤ55を介して電気的に接続されている。リブ材13は、半導体基板用電極パッド53と受光素子11との間に配置されており、リブ材13の周辺部(ワイヤ55を含む領域)は、封止樹脂57で封止されている。また、配線基板52のダイボンド材51側とは反対側の主面52aに、はんだボール56(外部接続端子)が形成されている。
【0077】
ダイボンド材51は、特に限定されないが、温度260℃程度のリフローでの劣化が少ないエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0078】
配線基板52は、ガラスエポキシ樹脂基材等と金属配線とを有する多層配線基板であり、その表面及び内部には、配線や層間接続ビアが形成されている。配線基板52は、半導体基板12の変形を抑制する支持基板としての機能も持つ。
【0079】
封止樹脂57としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、樹脂の強靭性や耐熱性の観点からエポキシ樹脂が好ましい。フレア等の光学的ノイズの低減の観点から、封止樹脂57は、黒色に着色されていることが好ましい。また、ハンドリング性の観点から、封止樹脂57は、シリカ等の充填剤を含有し、硬化前においてチクソ性を有していることが好ましい。
【0080】
[感光性組成物]
次に、リブ材13の材料として使用可能な感光性組成物について説明する。リブ材13の材料として使用可能な感光性組成物としては、例えば、重合性基を有する硬化性化合物と光重合開始剤とを含有し、かつアルカリ可溶性を有する感光性組成物が挙げられる。重合性基としては、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、アルコキシシリル基等のカチオン重合性基や、ラジカル重合可能な不飽和結合を有するラジカル重合性基等が挙げられる。感光性組成物の保存安定性の観点から、カチオン重合性基としては、グリシジル基、脂環式エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される1種以上が好ましく、グリシジル基及び脂環式エポキシ基からなる群より選択される1種以上がより好ましい。ラジカル重合性基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。重合性基を有する硬化性化合物は、1分子中に、カチオン重合性基とラジカル重合性基の両方を有していてもよく、いずれか一方のみを有していてもよい。また、カチオン重合性基を有する化合物と、ラジカル重合性基を有する化合物とを併用してもよい。
【0081】
また、感光性組成物は、アルカリ可溶性基を有する化合物を含有する。アルカリ可溶性基としては、下記化学式(X1)で表される1価の有機基(以下、「X1基」と記載することがある)、下記化学式(X2)で表される2価の有機基(以下、「X2基」と記載することがある)、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1種以上が好ましい。なお、X1基は、N-モノ置換イソシアヌル酸由来の1価の有機基である。また、X2基は、N,N’-ジ置換イソシアヌル酸由来の2価の有機基である。
【0082】
【化1】
【0083】
耐熱性に優れるリブ材13を形成するためには、アルカリ可溶性基としては、X1基及びX2基からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0084】
感光性組成物は着色剤を含んでいてもよい。着色剤を含む感光性組成物を用いて得られるリブ材13は、例えば、フレアやゴーストを抑制するための遮光性の隔壁として用いることができる。よって、着色剤を含む感光性組成物を使用することにより、光学的ノイズの発生をより抑制できる。
【0085】
着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。耐熱性及び着色性の観点からは、着色剤として顔料を用いることが好ましい。遮光性を有する隔壁等の黒色の着色パターンを形成する場合は、着色剤として黒色顔料を用いることが好ましい。また、黒色パターン以外の着色パターンとして、赤色パターン、黄色パターン、青色パターン等が挙げられる。上述したリブ材13の内周面13aの算術平均粗さRaは、顔料の粒径を変更することによっても調整できる。
【0086】
顔料としては、可視光領域の波長を広く吸収するものが好ましい。可視光領域の波長を広く吸収する顔料のうち、黒色有機顔料としては、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料等が挙げられる。これらの中でも遮光性に優れることから、ペリレン系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料が好ましい。黒色無機顔料としては、カーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン等が挙げられる。その他の無機顔料の例としては、複合金属酸化物顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸鉛、黄色鉛、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、アンチモン白、硫化亜鉛、亜鉛、マンガン紫、コバルト紫、炭酸マグネシウム等が挙げられる。染料としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、ペリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、カルボニウム系化合物、インジゴイド系化合物等が挙げられる。
【0087】
黒色パターン以外の着色パターンを得るために用いられる顔料としては、赤、橙、黄、緑、青、紫、シアニン、マゼンダ等の有彩色の顔料が挙げられる。有彩色の顔料としては、ラクタム系顔料、ペリレン系顔料が好ましい。
【0088】
有彩色の顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1、10、83等;C.I.ピグメントオレンジ2、5、13等;C.I.ピグメントレッド1、2、3等;C.I.ピグメントグリーン7、10、36等;C.I.ピグメントブルー1、2、15等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることもでき、種々組み合わせて用いることもできる。
【0089】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、着色剤としては、黒色顔料(詳しくは、黒色有機顔料等)又は青色顔料(詳しくは、青色有機顔料等)が好ましく、黒色顔料がより好ましい。
【0090】
現像後の残渣の発生、及び光学的ノイズの発生をより抑制しつつ、光重合性に優れる感光性組成物を得るためには、着色剤の量は、硬化性化合物100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以上7重量部以下であることがより好ましく、0.3重量部以上5重量部以下であることが更に好ましい。
【0091】
耐熱性に優れるリブ材13を形成するためには、感光性組成物がポリシロキサン化合物を含有することが好ましい。以下、ポリシロキサン化合物を含有する感光性組成物について、好ましい例を説明する。
【0092】
リブ材13の材料として好ましい感光性組成物(以下、「特定感光性組成物」と記載することがある)は、カチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを1分子中に有するポリシロキサン化合物(以下、「成分(A)」と記載することがある)と、光重合開始剤(以下、「成分(B)」と記載することがある)とを含有する。なお、成分(A)は、重合性基を有する硬化性化合物の一例である。
【0093】
{成分(A)}
成分(A)としては、1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有するポリシロキサン化合物である限り、特に限定されない。成分(A)が1分子中にカチオン重合性基とアルカリ可溶性基とを有することにより、現像性及び硬化性の双方に優れる特定感光性組成物が得られる。成分(A)は、1分子中に複数個のカチオン重合性基を有することが好ましい。成分(A)が1分子中に複数個のカチオン重合性基を有する場合、架橋密度の高いリブ材13が得られ、その結果、リブ材13の耐熱性がより向上する傾向がある。複数個のカチオン重合性基は、同種でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。また、成分(A)は、1分子中に複数個のアルカリ可溶性基を有することが好ましい。成分(A)が1分子中に複数個のアルカリ可溶性基を有する場合、現像時に非露光部の除去性が高くなるため、現像性がより向上する傾向がある。複数個のアルカリ可溶性基は、同種でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。
【0094】
成分(A)は、鎖状ポリシロキサン構造を有していてもよく、環状ポリシロキサン構造を有していてもよい。耐熱性により優れるリブ材13を形成するためには、成分(A)が、環状ポリシロキサン構造を有することが好ましい。また、成分(A)が環状ポリシロキサン構造を有していると、特定感光性組成物の製膜性及び現像性が高くなる傾向がある。
【0095】
成分(A)は、主鎖にポリシロキサン構造を有していてもよく、側鎖にポリシロキサン構造を有していてもよい。耐熱性により優れるリブ材13を形成するためには、成分(A)が、主鎖にポリシロキサン構造を有することが好ましい。耐熱性に更に優れるリブ材13を形成するためには、成分(A)が、主鎖に環状ポリシロキサン構造を有することが好ましい。
【0096】
環状ポリシロキサン構造は、単環構造でもよく、多環構造でもよい。多環構造は多面体構造でもよい。
【0097】
成分(A)が主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーである場合、当該ポリマーの重量平均分子量は、10000以上50000以下であることが好ましい。重量平均分子量が10000以上である場合、得られるリブ材13の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、重量平均分子量が50000以下である場合、現像性がより向上する傾向がある。
【0098】
成分(A)が有するカチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、及びアルコキシシリル基が挙げられる。特定感光性組成物の保存安定性の観点から、カチオン重合性基としては、グリシジル基、脂環式エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される1種以上が好ましく、グリシジル基及び脂環式エポキシ基からなる群より選択される1種以上がより好ましい。中でも脂環式エポキシ基は、光カチオン重合性に優れるため、特に好ましい。
【0099】
成分(A)が有するアルカリ可溶性基としては、例えば、X1基、X2基、フェノール性水酸基、カルボキシ基等が挙げられる。耐熱性に優れるリブ材13を形成するためには、成分(A)が有するアルカリ可溶性基としては、X1基及びX2基からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0100】
カチオン重合性基をポリシロキサン化合物中へ導入する方法は特に限定されないが、化学的に安定なケイ素-炭素結合(Si-C結合)によってカチオン重合性基をポリシロキサン化合物中へ導入できることから、ヒドロシリル化反応を用いる方法が好ましい。換言すれば、成分(A)は、ヒドロシリル化反応により有機変性され、ケイ素-炭素結合を介してカチオン重合性基が導入されたポリシロキサン化合物であることが好ましい。アルカリ可溶性基も、ヒドロシリル化反応により、ケイ素-炭素結合を介してポリシロキサン化合物に導入されていることが好ましい。
【0101】
成分(A)は、例えば、下記の化合物(α)、化合物(β)及び化合物(γ)を出発物質とするヒドロシリル化反応により得られる。
・化合物(α):1分子中に少なくとも2個のSiH基(ヒドロシリル基)を有するポリシロキサン化合物
・化合物(β):1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、カチオン重合性基とを有する化合物
・化合物(γ):1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性基とを有する化合物
【0102】
(化合物(α))
化合物(α)は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物であり、例えば、国際公開第96/15194号に記載の化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。化合物(α)の具体例としては、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を有する環状ポリシロキサン(以下、単に「環状ポリシロキサン」と記載することがある)等が挙げられる。環状ポリシロキサンは、多環構造を有していてもよく、多環構造は多面体構造であってもよい。耐熱性及び機械強度の高いリブ材13を形成するためには、化合物(α)として、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリシロキサンを用いることが好ましい。化合物(α)は、好ましくは1分子中に3個以上のSiH基を有する環状ポリシロキサンである。耐熱性及び耐光性の観点から、Si原子上に存在する基は、水素原子及びメチル基のいずれかであることが好ましい。
【0103】
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、並びにジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン等が例示される。
【0104】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンとしては、ジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン、並びにジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CHSiO1/2単位)と、SiO単位、SiO3/2単位及びSiO単位からなる群より選択される1種以上のシロキサン単位とからなるポリシロキサン等が例示される。
【0105】
環状ポリシロキサンとしては、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、及び1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン等が例示される。中でも、入手容易性及びSiH基の反応性の観点から、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0106】
化合物(α)は、公知の合成方法により得られる。例えば、環状ポリシロキサンは、国際公開第96/15194号等に記載の方法により合成できる。多面体骨格を有する環状ポリシロキサンは、例えば、特開2004-359933号公報、特開2004-143449号公報、特開2006-269402号公報等に記載の方法により合成できる。また、化合物(α)として、市販のポリシロキサン化合物を用いてもよい。
【0107】
(化合物(β))
化合物(β)は、1分子中に、SiH基(ヒドロシリル基)との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、カチオン重合性基とを有する化合物であり、ポリシロキサン化合物にカチオン重合性基を導入するための化合物である。化合物(β)におけるカチオン重合性基は、前述の成分(A)が有するカチオン重合性基と同じであり、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(β)は、カチオン重合性基として、グリシジル基、脂環式エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましく、グリシジル基及び脂環式エポキシ基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましく、脂環式エポキシ基を有することが更に好ましい。
【0108】
SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(以下、単に「アルケニル基」と記載することがある)としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、アリルオキシ基(-O-CH-CH=CH)等が挙げられる。SiH基との反応性の観点から、化合物(β)は、アルケニル基として、ビニル基、アリル基及びアリルオキシ基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましく、ビニル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましい。
【0109】
化合物(β)の具体例としては、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、アリルオキセタニルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。カチオン重合における反応性の観点から、化合物(β)としては、脂環式エポキシ基及びグリシジル基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する化合物が好ましく、脂環式エポキシ基を有する化合物がより好ましい。カチオン重合における反応性をより高めるためには、化合物(β)としては、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート及び1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の化合物が好ましく、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンがより好ましい。
【0110】
(化合物(γ))
化合物(γ)は、1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性基とを有する化合物であり、ポリシロキサン化合物にアルカリ可溶性基を導入するための化合物である。化合物(γ)におけるアルカリ可溶性基は、前述の成分(A)が有するアルカリ可溶性基と同じであり、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(γ)は、アルカリ可溶性基として、X1基及びX2基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
【0111】
化合物(γ)は、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(アルケニル基)を有する。化合物(γ)が有するアルケニル基の例としては、前述の化合物(β)が有するアルケニル基として例示したものと同じアルケニル基が挙げられ、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(γ)は、アルケニル基として、ビニル基、アリル基及びアリルオキシ基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましく、ビニル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましい。
【0112】
現像性により優れる特定感光性組成物を得るためには、化合物(γ)としては、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート及び2,2’-ジアリルビスフェノールAからなる群より選択される1種以上が好ましく、ジアリルイソシアヌレート及びモノアリルイソシアヌレートからなる群より選択される1種以上がより好ましい。化合物(γ)としてモノアリルイソシアヌレートを使用すると、アルカリ可溶性基としてX1基を有する成分(A)が得られる。また、化合物(γ)としてジアリルイソシアヌレートを使用すると、アルカリ可溶性基としてX2基を有する成分(A)が得られる。
【0113】
(他の出発物質)
ヒドロシリル化反応において、上記の化合物(α)、化合物(β)及び化合物(γ)に加えて、他の出発物質を用いてもよい。例えば、他の出発物質として、上記の化合物(β)及び化合物(γ)とは異なるアルケニル基含有化合物(以下、「他のアルケニル基含有化合物」と記載することがある)を用いてもよい。
【0114】
リブ材13の内周面13aにおいて相分離構造由来の凹凸を形成することにより、内周面13aのスキューネスSskを負の値に調整するためには、他のアルケニル基含有化合物として、両末端にアルケニル基を有する直鎖状ポリシロキサン化合物(以下、「化合物(δ)」と記載することがある)を用い、かつ化合物(α)として環状ポリシロキサンを用いることが好ましい。化合物(δ)を用いると、成分(A)として、直鎖状構造を有するポリシロキサン化合物が得られる。また、化合物(α)として環状ポリシロキサンを用い、かつ化合物(δ)を用いると、直鎖状構造と環状構造とを有する特定感光性組成物が得られる。つまり、化合物(α)として環状ポリシロキサンを用い、かつ化合物(δ)を用いると、成分(A)に、直鎖状構造部(化合物(δ)由来の直鎖状構造部)と、環状構造部(環状ポリシロキサン由来の環状構造部)とが導入される。化合物(δ)の具体例としては、下記一般式(Y)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化2】
【0116】
一般式(Y)では、r、s及びtの比(r:s:t)が、各構造単位の物質量比となる。例えば、r+s+t=100である。また、一般式(Y)では、構造単位の配列は、特に限定されない。
【0117】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、化合物(δ)の重量平均分子量は、1000以上30000以下であることが好ましく、2000以上29000以下であることがより好ましい。
【0118】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、成分(A)における化合物(δ)由来の構造単位の含有率は、成分(A)100重量%に対して、1.0重量%以上10.0重量%以下であることが好ましく、1.2重量%以上5.0重量%以下であることがより好ましい。
【0119】
リブ材13の内周面13aの算術平均粗さRa、及びリブ材13の内周面13aのスキューネスSskは、それぞれ、例えば、成分(A)における化合物(δ)由来の構造単位の含有率、及び化合物(δ)の重量平均分子量のうちの少なくとも1つを変更することにより調整できる。
【0120】
(ヒドロシリル化反応)
成分(A)を得るためのヒドロシリル化反応の順序及び方法は特に限定されない。例えば、上述した化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、及び必要に応じて任意成分である他の出発物質を用いて、国際公開第2009/075233号に記載の方法に準じたヒドロシリル化反応により、成分(A)が得られる。上述した化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、及び必要に応じて任意成分である他の出発物質を用いて得られる成分(A)は、例えば、1分子中に複数個のカチオン重合性基と複数個のアルカリ可溶性基とを有し、かつ主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーである。
【0121】
光学的ノイズの発生をより抑制するためには、特定感光性組成物における成分(A)の含有率は、特定感光性組成物の固形分全量に対して、20重量%以上97重量%以下であることが好ましい。
【0122】
{成分(B)}
成分(B)としては、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤からなる群より選択される1種以上が好ましい。特定感光性組成物は、カチオン重合性基を有する成分(A)を含有するため、特定感光性組成物が成分(B)として光カチオン重合開始剤を含有すると、成分(A)を光カチオン重合により架橋させることができる。また、後述する成分(C)を使用する場合は、特定感光性組成物が成分(B)として光ラジカル重合開始剤を含有すると、成分(C)を光ラジカル重合により架橋させることができる。特定感光性組成物は、成分(B)として、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤の両方を含有していてもよい。
【0123】
(光カチオン重合開始剤)
光カチオン重合開始剤としては、例えば、公知の光カチオン重合開始剤を使用することができる。例えば、光カチオン重合開始剤として、特開2000-1648号公報、特表2001-515533号公報、国際公開第2002/83764号等において好適とされている各種の化合物が挙げられるが、特に限定されない。光カチオン重合開始剤としては、スルホネートエステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物又はオニウム塩系化合物が好ましく、オニウム塩系化合物がより好ましく、スルホニウム塩系化合物が更に好ましい。
【0124】
特定感光性組成物における光カチオン重合開始剤の含有率は、特に制限はない。硬化速度及び硬化物の物性バランスの観点から、光カチオン重合開始剤の含有率は、特定感光性組成物の固形分全量に対して、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上5重量%以下であることがより好ましい。
【0125】
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、多核キノン系化合物、トリアジン系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3-ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、フルオロアミン系化合物等が挙げられる。パターニングの容易性の観点から、光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及びオキシムエステル系化合物からなる群より選択される1種以上が好ましく、ベンゾフェノン系化合物がより好ましい。
【0126】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0127】
特定感光性組成物における光ラジカル重合開始剤の含有率は、特に制限はない。硬化速度及び硬化物の物性バランスの観点から、光ラジカル重合開始剤の含有率は、特定感光性組成物の固形分全量に対して、0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上1重量%以下であることがより好ましい。
【0128】
{溶媒}
特定感光性組成物は、溶媒を含有してもよい。例えば、上述の成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて使用する後述の他の成分を、溶媒中に溶解又は分散させることにより、特定感光性組成物が得られる。
【0129】
溶媒の具体例としては、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート等のグリコール系溶媒;イソ酪酸イソブチル等のエステル系溶媒;クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。特定感光性組成物の塗布性(製膜安定性)の観点から、溶媒としては、グリコール系溶媒が好ましく、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートがより好ましい。
【0130】
特定感光性組成物の塗布性(製膜安定性)の観点から、溶媒の量は、100重量部の成分(A)に対して、0.5重量部以上100重量部以下であることが好ましく、1重量部以上70重量部以下であることがより好ましい。
【0131】
{他の成分}
特定感光性組成物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、固形分(溶媒以外の成分)として、上述の成分(A)及び成分(B)以外の成分(他の成分)を含有してもよい。ただし、光学的ノイズの発生をより抑制できる上、耐熱性に優れるリブ材13を形成するためには、成分(A)及び成分(B)の合計含有率が、特定感光性組成物の固形分全量に対して、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上100重量%以下であることが更に好ましい。
【0132】
他の成分としては、ラジカル重合性基を有する化合物(ラジカル重合性化合物)、着色剤(具体例は、前述の着色剤の例として挙げた化合物と同じ)、反応性希釈剤、増感剤、高分子分散剤、熱可塑性樹脂、充填材、架橋剤、塩基性化合物、接着性改良剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤(アンチモン-ビスマス等)、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0133】
(ラジカル重合性基を有する化合物)
特定感光性組成物は、他の成分として、ラジカル重合性基を有する化合物(以下、「成分(C)」と記載することがある)を含有していてもよい。成分(C)は、他の成分(成分(A)及び成分(B)以外の成分)であるため、ラジカル重合性基を有し、かつシロキサン単位を有しない化合物である。成分(C)を含有する特定感光性組成物は、パターニングする際の深部硬化性(深部まで光架橋させることができる特性)に優れる傾向がある。
【0134】
成分(C)としては、ラジカル重合可能な不飽和結合(エチレン性不飽和結合等)を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0135】
成分(C)の具体例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0136】
光学的ノイズの発生をより抑制しつつ、信頼性に優れる光半導体装置を得るためには、特定感光性組成物における成分(C)の含有率は、特定感光性組成物の固形分全量に対して、1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上40重量%以下であることがより好ましく、10量%以上30重量%以下であることが更に好ましい。
【0137】
なお、リブ材13の材料である感光性組成物としては、上述した特定感光性組成物以外にも、成分(A)以外のカチオン重合性化合物を含む感光性組成物を使用することもできる。また、成分(A)と、成分(A)以外のカチオン重合性化合物とを含む特定感光性組成物を使用することもできる。成分(A)以外のカチオン重合性化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製「セロキサイド(登録商標)2021P」)、及びε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製「セロキサイド(登録商標)2081」)等が挙げられる。
【0138】
成分(A)と、成分(A)以外のカチオン重合性化合物(硬化性化合物)とを併用する場合、特定感光性組成物の保存安定性を高めつつ、耐熱性に優れるリブ材13を形成するためには、成分(A)以外のカチオン重合性化合物の量は、成分(A)100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、3重量部以上8重量部以下であることがより好ましい。
【0139】
[光半導体装置の好ましい態様]
光学的ノイズの発生を更に抑制しつつ、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に更に優れる光半導体装置を得るためには、本発明に係る光半導体装置は、下記条件1を満たすことが好ましく、下記条件2を満たすことがより好ましく、下記条件3を満たすことが更に好ましく、下記条件4を満たすことが更により好ましい。
条件1:端面被覆率が、60%以上99%以下である。
条件2:上記条件1を満たし、かつリブ材の内周面の算術平均粗さRaが50nm以上3000nm以下である。
条件3:上記条件2を満たし、かつリブ材の内周面のスキューネスSskが負の値である。
条件4:上記条件3を満たし、かつリブ材の内周面のスキューネスSskが-0.80以上-0.10以下である。
【0140】
[光半導体装置の製造方法]
次に、上述した光半導体装置10の好適な製造方法について、図6A~C及び図7A~Cを参照しながら説明する。
【0141】
まず、感光性組成物を大判の透明基板14上に塗布し、感光性組成物から構成される塗膜100(図6A)を形成する。この際の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、スリットコート法等の一般的な塗布方法を使用できる。次いで、塗膜100を加熱して、塗膜100中の溶媒を除去する。塗膜100の加熱温度は適宜設定され得るが、好ましくは60℃以上200℃以下である。
【0142】
次いで、所定の位置に透光領域101aが形成されたフォトマスク101を、塗膜100上に配置し、塗膜100に活性エネルギー線Eを照射する(図6B)。これにより、透光領域101aの下部に位置する塗膜100(露光部100a)のみが露光され、光硬化反応が進行する。露光の際の積算露光量は特に制限されないが、好ましくは1mJ/cm以上20000mJ/cm以下であり、より好ましくは10mJ/cm以上10000mJ/cm以下である。塗膜100に活性エネルギー線Eを照射する時間は、好ましくは1秒以上600秒以下であり、より好ましくは1秒以上150秒以下である。
【0143】
次いで、露光後の塗膜100を現像する。塗膜100の現像方法は特に限定されない。例えば、浸漬法又はスプレー法により塗膜100にアルカリ現像液を接触させ、非露光部100bを溶解及び除去することにより、透明基板14上にパターン化された半硬化状態のリブ材13が形成される(図6C)。アルカリ現像液は、一般に使用されるものを特に限定なく使用できる。アルカリ現像液の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、コリン水溶液等の有機アルカリ水溶液;水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液等の無機アルカリ水溶液等が挙げられる。露光部100aと非露光部100bとのコントラストを高める観点から、アルカリ濃度は、25重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下が更に好ましい。溶解速度の調整等を目的として、アルカリ現像液にアルコールや界面活性剤が配合されていてもよい。また、塗膜100にアルカリ現像液を接触させた後に、塗膜100を水洗してもよい。塗膜100を水洗する場合、水洗後に、塗膜100の表面の水分を圧縮空気で除去することが好ましい。
【0144】
次いで、透明基板14上に半硬化状態で形成されたリブ材13を加熱して、半硬化状態の感光性組成物を更に硬化させる。この際の加熱温度は、好ましくは80℃以上350℃以下であり、より好ましくは150℃以上250℃以下である。次いで、図6Cの分割線102に沿ってダイシングして、複数個のリブ材13が形成された透明基板14を、リブ材13ごとに個片化する。以下、複数個のリブ材が形成された透明基板を個片化して得られた積層体(詳しくは、1個のリブ材が形成された透明基板)を、「リブ付き基板」と記載することがある。
【0145】
次いで、受光素子11が設けられた半導体基板12上において、受光素子11を囲むように接着剤を塗布し、接着剤からなる枠状の塗布膜150を形成する(図7A)。接着剤の塗布方法は、特に限定されず、例えば、ディスペンサーで塗布する方法、シリンジで塗布する方法、スクリーン印刷法、スタンプ法等の塗布方法を採用できる。塗布精度を高めるためには、ディスペンサーで塗布する方法が好ましい。また、塗布精度を更に高めるために、塗布ロボットとディスペンサーとを組み合わせて接着剤を塗布してもよい。
【0146】
ディスペンサーで接着剤を塗布する場合、ディスペンサーとしては、エアパルス方式のディスペンサーやモーノ方式のディスペンサーを使用することができる。また、ディスペンサーで接着剤を塗布する場合、ノズルの外径、ノズルと半導体基板12との間隔等を変更することにより、接着剤の塗布量及び塗布膜150の幅を調整できる。エアパルス方式のディスペンサーを使用する場合は、エア圧を変更することにより、接着剤の塗布量を調整することもできる。また、モーノ方式のディスペンサーを使用する場合は、ローターの回転数を変更することにより、接着剤の塗布量を調整することもできる。
【0147】
接着剤を塗布する際、後述する内周面-中心線間隔が目標値となるように、塗布膜150の塗布径D(塗布膜150の内周径)を調整することが好ましい。
【0148】
次いで、例えばフリップチップボンダーを用いて、塗布膜150が形成された半導体基板12の上方に、上記手順で得られたリブ付き基板151を移動させる(図7B)。この際、リブ材13の内周面13aの延長線ELと、塗布膜150を幅方向に二等分する中心線CLとの間隔D図7B参照)が、目標値となるようにリブ付き基板151と半導体基板12とを位置合わせする。以下、リブ材の内周面の延長線と、塗布膜を幅方向に二等分する中心線との間隔を、「内周面-中心線間隔」と記載することがある。
【0149】
次いで、リブ材13を塗布膜150に接触させて、リブ付き基板151と半導体基板12とを塗布膜150を介して貼り合わせた後、塗布膜150を硬化させる。これにより、リブ材13と半導体基板12とを接着する接着剤層15(図7C参照)を形成する。塗布膜150を硬化させる方法は、塗布膜150を構成する接着剤の種類により適宜選択すればよい。塗布膜150を硬化させる方法の具体例としては、加熱による硬化方法、紫外線照射による硬化方法、加熱と紫外線照射を併用する方法等が挙げられる。以上の手順を経て、図7Cに示す光半導体装置10が得られる。
【0150】
張り出し長さ、内周被覆率、外周被覆率及び端面被覆率は、それぞれ、例えば、接着剤の粘度、接着剤に配合されるギャップスペーサーの粒径、接着剤に配合されるギャップスペーサーの含有量、内周面-中心線間隔、ノズルの外径、ノズルと半導体基板との間隔、エア圧、及びローターの回転数のうちの少なくとも1つを変更することにより調整できる。
【実施例0151】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0152】
<硬化性化合物(ポリシロキサン化合物)の合成>
以下、硬化性化合物P1及びP2の合成方法について説明する。なお、硬化性化合物P1及びP2の重量平均分子量は、東ソー社製「HLC-8420GPC」(カラム:Shodex GPC KD-806M(2本)、TSKgel SuperAWM-H(2本))を用い、N,N-ジメチルホルムアミドを溶媒として、流速1.0mL/分で測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレン換算により算出した。
【0153】
[硬化性化合物P1の合成]
ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3重量%含有する溶液)143μLを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン88gをトルエン176gに溶解させて溶液S2を得た。
【0154】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S3を得た。なお、得られた溶液S3に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。
【0155】
また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62gをトルエン62gに溶解させて溶液S4を得た。
【0156】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に溶液S4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S5を得た。なお、得られた溶液S5に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。
【0157】
次いで、溶液S5を冷却した後、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレン及び1,4-ジオキサン)を減圧留去し、固形分を得た。次いで、得られた固形分にプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(以下、「PGMEA」と記載する)を加えて、硬化性化合物P1を含む溶液SP1(硬化性化合物P1の濃度:70重量%)を得た。硬化性化合物P1は、1分子中に複数個のカチオン重合性基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物(重量平均分子量30000のポリマー)であった。
【0158】
[硬化性化合物P2の合成]
ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと直鎖状ポリシロキサン化合物3.4gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3重量%含有する溶液)143μLを加えて溶液S1を得たこと以外は、上記[硬化性化合物P1の合成]と同じ合成方法で硬化性化合物P2を含む溶液SP2(硬化性化合物P2の濃度:70重量%)を得た。上記直鎖状ポリシロキサン化合物は、上述した一般式(Y)で表される化合物であった。また、上記直鎖状ポリシロキサン化合物は、各構造単位の物質量比(r、s及びtの比)が、r:s:t=30:0:70であり、かつ重量平均分子量が26000であった。
【0159】
硬化性化合物P2は、1分子中に複数個のカチオン重合性基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)と直鎖状構造部(上記直鎖状ポリシロキサン化合物由来の直鎖状構造部)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物(重量平均分子量30000のポリマー)であった。
【0160】
<他の材料の準備>
感光性組成物の材料として、上記溶液SP1及びSP2並びにPGMEA以外に、以下の材料を準備した。
・3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製「セロキサイド(登録商標)2021P」、以下、「2021P」と記載する)
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業社製「AD-TMP」、1分子中に4個のアクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、以下、「AD-TMP」と記載する)
・スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(サンアプロ社製「CPI-210S」、以下、「CPI-210S」と記載する)
・光ラジカル重合開始剤としてのベンゾフェノン系化合物(IGM Resins社製「Omnirad(登録商標)651」、以下、「651」と記載する)
・黒色有機顔料(日本ピグメント社製「NPFT-80565」)
・青色有機顔料(大日精化工業社製「ピグメントブルー15」)
・黄色有機顔料(大日精化工業社製「ピグメントイエロー83」)
【0161】
<感光性組成物の調製>
表1に記載の材料を、表1に記載の配合量で配合し、実施例及び比較例で使用する感光性組成物PS1~PS5をそれぞれ得た。なお、硬化性化合物P1及びP2を配合する際は、それぞれ溶液SP1及び溶液SP2として配合した。また、表1において、感光性組成物PS1~PS5のPGMEAの配合量には、溶液SP1又は溶液SP2中のPGMEAの量も含まれる。また、表1において、「-」は、当該材料を配合しなかったことを意味する。
【0162】
【表1】
【0163】
<接着剤の調製>
[材料の準備]
接着剤の材料として、以下の材料を準備した。
・ビスフェノールA系エポキシ化合物(三菱ケミカル社製「jER828」、以下、「828」と記載する)
・CPI-210S
・トリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル社製「TPGDA」、1分子中に2個のアクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、以下、「TPGDA」と記載する)
・651
・レオロジー調整剤(日本アエロジル社製「AEROSIL(登録商標)R972」、ジメチルジクロロシランで表面処理したヒュームドシリカ粒子、粒径:16nm、以下、「R972」と記載する)
・体積中位径10μmのギャップスペーサー(宇部エクシモ社製「ハイプレシカ(登録商標)N3N」、高純度単分散球状シリカ粒子、以下、「N3N-10」と記載する)
・体積中位径20μmのギャップスペーサー(宇部エクシモ社製「ハイプレシカ(登録商標)N3N」、高純度単分散球状シリカ粒子、以下、「N3N-20」と記載する)
【0164】
[材料の混合]
表2に記載の材料を表2に記載の配合量で配合した後、得られた混合物を3本ロールミルで混練(3回混練)し、実施例及び比較例で使用する接着剤AD1~AD7をそれぞれ得た。なお、表2において、「-」は、当該材料を配合しなかったことを意味する。また、表2の「粘度」は、ブルックフィールド型回転粘度計(ブルックフィールド社製「HBDV-I」)を用いて、スピンドル:No.3、測定温度:25℃、回転数:50rpmの条件で測定を開始し、測定(回転)開始から3分後にブルックフィールド型回転粘度計が示した粘度である。
【0165】
【表2】
【0166】
<光半導体装置の作製>
以下、実施例1~16、比較例1及び比較例2の光半導体装置の作製方法について説明する。
【0167】
[実施例1]
(リブ付き基板の作製工程)
透明基板としてのガラス基板上に、スピンコーターにより感光性組成物PS1を塗布し、ガラス基板上に感光性組成物PS1から構成される塗膜が形成された第1の積層体を得た。次いで、温度120℃に加熱したホットプレート上で、第1の積層体を10分間加熱した。次いで、手動露光機(大日本科研社製「MA-1300」、ランプ:高圧水銀ランプ)を用いて、図6Bに示すフォトマスク101(150μm幅の透光領域101aを有するフォトマスク101)を通して、積算露光量3000mJ/cmの条件で、加熱後の第1の積層体の塗膜に光を照射することにより、塗膜を露光(詳しくは、ソフトコンタクト露光)した。
【0168】
そして、露光後の第1の積層体を、温度25℃の雰囲気下で1分間放置した後、アルカリ現像液としてのTMAH水溶液(TMAHの濃度:2.38重量%)に60秒間浸漬した。次いで、アルカリ現像液に浸漬した第1の積層体を、30秒間水洗した後、表面の水分を圧縮空気で除去した。これにより、ガラス基板上にパターン化された塗膜(詳しくは、半硬化状態で枠状にパターン化された塗膜)を備える第2の積層体を得た。次いで、温度230℃に加熱したホットプレート上で、第2の積層体を30分間加熱し、パターン化された塗膜を更に硬化させて、ガラス基板上に枠状(四角筒状)のリブ材(厚み:100μm、幅:150μm、一辺の長さ:0.9mm)を複数個備えた第3の積層体を得た。
【0169】
次いで、第3の積層体を、ダイシングブレードでリブ材ごとに切断し、リブ付き基板(個片化された第3の積層体)を得た。
【0170】
(接着剤の塗布工程)
まず、受光素子が設けられた半導体基板と配線基板とがダイボンド材を介して接着され、かつ半導体基板上の電極パッドと配線基板上の電極パッドとが金属製ワイヤを介して電気的に接続された半導体基板積層物を準備した。次いで、半導体基板積層物の受光素子を囲むように接着剤AD1を塗布した。詳しくは、エアパルス方式のディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製「ML-808GX」)と卓上塗布ロボット(武蔵エンジニアリング社製「IMAGE MASTER 350PC SMART」)とを組み合わせて、後述する接着工程における内周面-中心線間隔が90μmとなるように塗布径(塗布膜の内周径)を調整し、受光素子の周囲に接着剤AD1を塗布した。接着剤AD1を塗布する際には、内径100μmかつ外径150μmのノズル(武蔵エンジニアリング社製「DSHN-M2-0.10F」)を使用した。また、接着剤AD1を塗布する際、ディスペンサーのエア圧を300kPaに設定し、ノズルと半導体基板との間隔(以下、「ノズル間隔」と記載することがある)を40μmに設定し、塗布速度を8mm/sに設定した。
【0171】
(接着工程)
次に、フリップチップボンダー(アスリートFA社製「CB-505」)を用いて、上述の手順で得られたリブ付き基板と、接着剤AD1が塗布された半導体基板積層物とを積層した。詳しくは、フリップチップボンダーのステージに、接着剤AD1が塗布された半導体基板積層物をセットし、リブ付き基板のリブ材が形成されていない方の面をコレットで吸着・固定した後、フリップチップボンダーに付属するカメラを用いて確認しながら、半導体基板積層物上に塗布された接着剤AD1の上方の位置までコレットを移動させた。この際、内周面-中心線間隔が90μmとなるように調整した。その後、徐々にコレットの位置を半導体基板積層物に近づけ、コレット側に付属している荷重検知センサが1Nを示した段階で、コレットによるリブ付き基板の吸着を解除し、リブ付き基板と半導体基板積層物とが接着剤AD1を介して積層された第4の積層体を得た。
【0172】
次いで、第4の積層体を積算露光量3000mJ/cmの条件で露光した後、温度200℃のオーブン中で2時間加熱した。これにより、リブ材と半導体基板積層物とを接着させた。次いで、加熱後の第4の積層体のリブ材周辺部(ワイヤを含む領域)を封止樹脂で封止し、配線基板の半導体基板側とは反対側の面にはんだボールを形成して、実施例1の光半導体装置を得た。実施例1の光半導体装置は、図5に示す構造を有していた。
【0173】
[実施例2~6、実施例9~11、実施例13、実施例16、比較例1及び比較例2]
感光性組成物の種類、接着剤の種類、内周面-中心線間隔及びエア圧を、後述する表3及び表4に記載のとおりとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2~6、実施例9~11、実施例13、実施例16、比較例1及び比較例2の光半導体装置をそれぞれ得た。
【0174】
[実施例7及び8]
モーノ方式のディスペンサー(兵神装備社製「3HD006G30」)と卓上塗布ロボット(ジャノメ社製「JR3300」)とを組み合わせて接着剤を塗布したこと、武蔵エンジニアリング社製のノズルの代わりに兵神装備社製のノズル(型式「FST100」、内径:100μm、外径:200μm)を用いたこと、並びに接着剤の種類、内周面-中心線間隔及びノズル間隔を後述する表3に記載のとおりとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で、実施例7及び8の光半導体装置をそれぞれ得た。なお、モーノ方式のディスペンサーを使用する際のローターの回転数は、後述する表3に記載のとおりとした。
【0175】
[実施例12]
図6Bに示すフォトマスク101の代わりに図8に示すフォトマスク202を用いたこと、及び内周面-中心線間隔を120μmに変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で、実施例12の光半導体装置を得た。なお、使用したフォトマスク202は、150μm幅の透光領域202aを格子状に複数有していた。また、透光領域202aの内側の面202bには、波形状の凹凸(凹部の深さ:50μm、凸部のピッチ:58μm)が形成されており、当該波形状の凹凸は、フォトマスク202の厚み方向と直交する方向にのみ形成されていた。なお、フォトマスク101には、凹凸は形成されていなかった。
【0176】
[実施例14及び15]
感光性組成物の種類、及び加熱後の第1の積層体の塗膜に光を照射する際の積算露光量を5000mJ/cmに変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で、実施例14及び15の光半導体装置をそれぞれ得た。
【0177】
<物性の測定方法及び評価方法>
次に、各種物性の測定方法及び評価方法について説明する。
【0178】
[リブ材の表面形状]
3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス社製「LEXT(登録商標)OLS5100」)を用いて、リブ付き基板のリブ材の内周面の算術平均粗さRaと、リブ付き基板のリブ材の内周面のスキューネスSskとを測定した。算術平均粗さRaの測定については、リブ材の内周面において測定箇所(評価長さ:20μm)を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所において、リブ材の厚み方向と直交する方向の算術平均粗さRaを測定し、得られた10個の測定値の算術平均値を、評価値(後述する表3及び表4に示す算術平均粗さRa)とした。また、スキューネスSskの測定については、リブ材の内周面において測定箇所(20μm×20μmの正方形領域)を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所のスキューネスSskを測定し、得られた10個の測定値の算術平均値を、評価値(後述する表3及び表4に示すスキューネスSsk)とした。
【0179】
[接着剤層の断面観察]
光半導体装置の接着剤層及びその周囲において測定箇所を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所の断面のそれぞれにおいて、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製「Miniscope TM3030Plus」、観察倍率:800倍)を用いて以下の1)~6)の数値を求めた。そして、以下の1)~6)のそれぞれについて、得られた10個の数値の算術平均値を、後述する表3及び表4に示す評価値とした。
1)接着剤層の厚み
2)接着剤層の幅
3)張り出し長さ
4)内周被覆率
5)外周被覆率
6)端面被覆率
【0180】
[冷熱衝撃試験による信頼性]
各実施例及び各比較例について5つの光半導体装置を準備し、それぞれヒートショック試験装置(日立グローバルライフソリューションズ社製「ES-57L」)を用いて冷熱衝撃試験を実施した。冷熱衝撃試験は、光半導体装置を、-50℃の雰囲気下で30分保持した後、125℃の雰囲気下で30分保持する操作を1サイクルとして、100サイクル行った。次いで、光学顕微鏡により光半導体装置をガラス基板側から観察し、以下の基準で判定した。そして、判定結果がA又はBの場合、「冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れている」と評価した。一方、判定結果がCの場合、「冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れていない」と評価した。
A:5つの光半導体装置のいずれにもリブ材の剥離が確認されなかった。
B:5つの光半導体装置のうちの1つにリブ材の剥離(詳しくは、部分的な剥離)が確認されたが、剥離した箇所の個数(5つの光半導体装置の剥離箇所の合計)が1個であった。
C:5つの光半導体装置のうちの少なくとも1つにリブ材の剥離(詳しくは、部分的な剥離)が確認され、剥離した箇所の個数(5つの光半導体装置の剥離箇所の合計)が2個以上であった。
【0181】
[ゴースト指数]
まず、評価対象の光半導体装置について、ゴーストフレア評価システム(壺坂電機社製「GCS-2T」)を用いて、所定の閾値(光源の明るさに対して1億分の1)を超えた画素数(以下、「異常画素数」と記載する)を求めた後、異常画素数を全画素数で除した値(異常画素数/全画素数)を算出した。以下、異常画素数を全画素数で除した値(異常画素数/全画素数)を、異常画素数比率と記載することがある。
【0182】
そして、比較例1の異常画素数比率を100として、実施例1~16及び比較例2の異常画素数比率を規格化し、規格化した値(以下、「ゴースト指数」と記載する)を、ゴースト発生を抑制できる性能の指標とした。ゴースト指数が80以下の場合、ゴーストの発生を抑制できていると評価した。一方、ゴースト指数が80を超える場合、ゴーストの発生を抑制できていないと評価した。
【0183】
<結果>
実施例1~16、比較例1及び比較例2について、使用した感光性組成物の種類、使用した接着剤の種類、使用したフォトマスクの種類、内周面-中心線間隔、ノズルの外径、ノズル間隔、エア圧(実施例1~6、実施例9~16、比較例1及び比較例2)、ローターの回転数(実施例7及び8)、リブ材の内周面の算術平均粗さRa、リブ材の内周面のスキューネスSsk、接着剤層の厚み、接着剤層の幅、張り出し長さ、内周被覆率、外周被覆率、端面被覆率、冷熱衝撃試験による信頼性の判定結果、及びゴースト指数を、表3及び表4にそれぞれ示す。なお、表3及び表4の「フォトマスクの種類」の欄の「101」は、フォトマスク101(図6B参照)を意味する。また、表4の「フォトマスクの種類」の欄の「202」は、フォトマスク202(図8参照)を意味する。
【0184】
【表3】
【0185】
【表4】
【0186】
実施例1~16の光半導体装置では、張り出し長さが0μm超であった。つまり、実施例1~16の光半導体装置では、リブ材及び接着剤層をガラス基板側から見た場合に、接着剤層がリブ材の外周面より外側に張り出していた。実施例1~16の光半導体装置では、内周被覆率が30%以下であった。
【0187】
実施例1~16の光半導体装置では、冷熱衝撃試験による信頼性の判定結果がA又はBであった。よって、実施例1~16の光半導体装置は、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れていた。実施例1~16の光半導体装置では、ゴースト指数が80以下であった。よって、実施例1~16の光半導体装置は、ゴーストの発生を抑制できていた。
【0188】
比較例1の光半導体装置では、内周被覆率が30%を超えていた。比較例2の光半導体装置では、張り出し長さが0μmであった。つまり、比較例2の光半導体装置では、リブ材及び接着剤層をガラス基板側から見た場合に、接着剤層がリブ材の外周面より外側に張り出していなかった。
【0189】
比較例1の光半導体装置では、ゴースト指数が100であった。よって、比較例1の光半導体装置は、ゴーストの発生を抑制できていなかった。比較例2の光半導体装置では、冷熱衝撃試験による信頼性の判定結果がCであった。よって、比較例2の光半導体装置は、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れていなかった。
【0190】
以上の結果から、本発明によれば、光学的ノイズの発生を抑制しつつ、冷熱衝撃試験で評価される信頼性に優れる光半導体装置を提供できることが示された。
【符号の説明】
【0191】
10、50 光半導体装置
11 受光素子
12 半導体基板
13 リブ材
14 透明基板
15 接着剤層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8