(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094685
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】フィルタアセンブリ及び濾過システム
(51)【国際特許分類】
B01D 27/08 20060101AFI20240703BHJP
B01D 27/10 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B01D27/08
B01D27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211385
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】濱口 真伍
(72)【発明者】
【氏名】河原 敏行
(72)【発明者】
【氏名】太田 詩織
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA02
4D116AA07
4D116BB01
4D116BC27
4D116BC44
4D116BC75
4D116DD05
4D116EE02
4D116FF09B
4D116FF18B
4D116GG03
4D116GG08
4D116KK06
4D116QA13C
4D116QA13F
4D116QA60F
4D116QB03
4D116QB11
4D116QB12
4D116QB14
4D116QB17
4D116QB25
4D116QB26
4D116QB32
4D116QB36
4D116QB37
4D116QB43
4D116QB50
4D116QC05B
4D116QC20B
4D116VV07
4D116VV08
(57)【要約】
【課題】固定部材に対してフィルタカートリッジを動かすときの作業性を良好にするための技術を提供する。
【解決手段】固定部材58と、固定部材58に着脱方向での移動を伴い着脱可能であり固定部材58と協働して内室52を形成する可動部材60と有するハウジング50と、内室52に収納されるフィルタカートリッジ54と、固定部材58とフィルタカートリッジ54との間で着脱方向に押し潰されるシール部材56と、を備えるフィルタアセンブリである。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、前記固定部材に着脱方向での移動を伴い着脱可能であり前記固定部材と協働して内室を形成する可動部材と有するハウジングと、
前記内室に収納されるフィルタカートリッジと、
前記固定部材と前記フィルタカートリッジとの間で前記着脱方向に押し潰されるシール部材と、を備えるフィルタアセンブリ。
【請求項2】
前記可動部材に前記フィルタカートリッジを着脱可能とする着脱構造を備え、
前記着脱構造は、前記固定部材から前記可動部材を取り外すとき、前記可動部材に前記フィルタカートリッジを取り付けた状態を維持する請求項1に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項3】
前記着脱構造は、前記可動部材と前記フィルタカートリッジとの間で押し潰される弾性部材である請求項2に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項4】
前記フィルタカートリッジは、前記可動部材との間に液室を形成し、
前記弾性部材は、二つの小室に前記液室を分断し、
前記可動部材及び前記フィルタカートリッジの少なくとも一方は、前記二つの小室を連通する連通流路を備える請求項3に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項5】
前記連通流路は、前記可動部材及び前記フィルタカートリッジの少なくとも一方において前記弾性部材を押し潰す面に少なくとも設けられる溝部である請求項4に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項6】
前記固定部材及び前記フィルタカートリッジのうちの一方部材は、前記シール部材が装着される周面部と、前記シール部材を前記着脱方向に押圧する第1押圧面と、を備え、
前記固定部材及び前記フィルタカートリッジのうちの他方部材は、前記シール部材を前記着脱方向に押圧する第2押圧面を備え、
前記第2押圧面は、前記第1押圧面側に近づくにつれて前記周面部から離間するテーパー状をなす請求項1に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項7】
前記ハウジング及び前記フィルタカートリッジは、液体が通流する液体流路の一部となり、前記フィルタカートリッジに内蔵されるフィルタを経由する内部流路を形成し、
前記内部流路には、前記内部流路に溜められる液体によってエアが封入されるエア溜まりが設けられる請求項1に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項8】
前記フィルタアセンブリは、濾過システムに用いられ、
前記濾過システムは、
前記内部流路内の液体を前記液体流路において前記内部流路よりも下流側に引き込む送液部と、
前記液体流路において前記エア溜まりよりも下流側における液体の有無を検出する液体検出部と、を備える請求項7に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項9】
液体が通流する液体流路と、
前記液体流路に設けられる請求項7に記載のフィルタアセンブリと、
前記内部流路内の液体を前記液体流路において前記内部流路よりも下流側に引き込む送液部と、
前記液体流路において前記エア溜まりよりも下流側における液体の有無を検出する液体検出部と、を備える濾過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、濾過システムに用いられるフィルタアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体を濾過するフィルタカートリッジを用いたフィルタアセンブリを開示する。このフィルタアセンブリは、固定部材と固定部材に着脱可能な可動部材とを有するハウジングと、固定部材と可動部材が協働して形成する内室に収納されるフィルタカートリッジと、を備える。このフィルタアセンブリは、この他に、固定部材とフィルタカートリッジとの間で押し潰されるシール部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシール部材は、可動部材の着脱方向と直交するフィルタカートリッジの径方向に押し潰されている。このため、フィルタカートリッジの交換等のために固定部材に対してフィルタカートリッジを着脱方向に動かすとき、シール部材による大きな摺動抵抗がフィルタカートリッジに作用する。これは、固定部材に対してフィルタカートリッジを動かすときの作業性に影響を及ぼすため、その改善が望まれる。
【0005】
本開示の目的の1つは、固定部材に対してフィルタカートリッジを動かすときの作業性を良好にするための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のフィルタアセンブリは、固定部材と、前記固定部材に着脱方向での移動を伴い着脱可能であり前記固定部材と協働して内室を形成する可動部材と有するハウジングと、前記内室に収納されるフィルタカートリッジと、前記固定部材と前記フィルタカートリッジとの間で前記着脱方向に押し潰されるシール部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の濾過システムの模式的な全体構成図である。
【
図2】第1実施形態のフィルタユニットの斜視図である。
【
図3】第1実施形態のフィルタユニットの正面図である。
【
図4】第1実施形態のフィルタアセンブリの側面断面図である。
【
図5】
図4と同じ視点から見たフィルタアセンブリの分解図である。
【
図6】
図4の矢視Aからフィルタアセンブリを見た図である。
【
図9】
図4のフィルタアセンブリ内に液体が溜まった状態を示す図である。
【
図10A】第1実施形態の引き込み異常の第1の説明図である。
【
図10B】第1実施形態の引き込み異常の第2の説明図である。
【
図11】第2実施形態のフィルタアセンブリの側面断面図である。
【
図12A】第2実施形態のエア抜き方法の第1の説明図である。
【
図12B】第2実施形態のエア抜き方法の第2の説明図である。
【
図12C】第2実施形態のエア抜き方法の第3の説明図である。
【
図13】第3実施形態のフィルタアセンブリの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の濾過システムを実施するための実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0009】
(第1実施形態)
図1を参照する。濾過システム10は、フィルタアセンブリ12によって液体を濾過するために用いられる。濾過システム10は、液体が通流する液体流路14と、液体流路14に液体を供給する液源16と、液体流路14に設けられるフィルタアセンブリ12と、液体流路14においてフィルタアセンブリ12よりも下流側に設けられる送液部18と、濾過システム10の動作を制御する制御部20と、を備える。本実施形態の濾過システム10は、この他にも、液体流路14から供給される濾過された液体を希釈するための原水が通流する給水流路22と、給水流路22に設けられる改質カートリッジ24と、給水流路22に設けられる開閉弁26と、を備える。開閉弁26は、例えば、電磁弁、電動弁等の自動開閉弁である。
【0010】
液体流路14は、フィルタアセンブリ12によって濾過された液体を被給液部28に供給する。本実施形態において被給液部28は給水流路22である例を説明する。液体流路14は、フィルタアセンブリ12の内部に設けられる内部流路30と、内部流路30よりも上流側に設けられる一次側流路32と、内部流路30よりも下流側に設けられる二次側流路34とを備える。
【0011】
液源16は、例えば、送液部18による吸い込みによって減容変形可能な密封容器を用いている。この密封容器を用いた液源16は、送液部18による吸い込みによって液体の減少を伴い容積が減少するように変形(つまり、減容変形)可能である。この他にも、液源16は、例えば、各種容器及び各種タンク(開放型タンク等)でもよい。
【0012】
液源16は、不図示の液源ホルダーに着脱可能である。液体は、例えば、希釈用飲料液体、食品添加物濃縮液、調味液等の飲用に用いられる。この他にも、液体は、石けん水、化粧水、ボディオイル等の人体に触れる用途で用いられてもよい。この人体に触れる用途には、前述の飲用に用いられる希釈用飲料液体等が含まれる。この他にも液体は、水道水等の水であってもよい。
【0013】
送液部18は、液体流路14の送液部18よりも上流側において送液部18側に引き込む負圧を作用させる。送液部18は、このように液源16側から引き込んだ液体を被給液部28側に向けて吐き出すことで液体を送液する。本実施形態の送液部18は、制御部20から供給される駆動電力によって駆動されることで液体を送液する。本実施形態の送液部18は、ポンプの他に、ポンプを駆動するモータを備える。この他にも、送液部18は、例えば、ポンプの他に、ポンプを駆動するソレノイドを備えてもよい。本実施形態の送液部18のポンプはチューブポンプであるが、この他にも、ギヤポンプ、ベーンポンプ、定量ポンプ等の各種ポンプを採用してもよい。送液部18の具体例は特に限定されず、例えば、コンプレッサー等でもよい。本実施形態の送液部18は有電源で動作するが、無電源で動作してもよい。この場合、送液部18は、例えば、給水流路22を通流する水の流れを用いて駆動する水流駆動型ポンプ等でもよい。
【0014】
給水流路22には、上流側の水源(不図示)から原水が供給される。給水流路22は、液体流路14との合流部36において、原水によって液体流路14から供給された液体を希釈することで希釈水を生成し、その生成した希釈水を被給水部38に給水する。本実施形態の被給水部38は、希釈水を吐き出す吐水装置の吐水部である。ここでは、吐水装置の一例として吐水管を示す。この他にも、吐水装置は、例えば、シャワーヘッド等でもよい。ここでは被給水部38に飲料水としての希釈水を給水する例を説明する。ここでの「原水」とは、濾過システム10から供給される液体の添加対象となる溶媒をいう。「原水」は、改質カートリッジ24を経由することによる改質の有無は問わない。原水は、塩素成分を含有する水道水の他、天然水等でもよい。
【0015】
改質カートリッジ24は、自身の内部に給水流路22の一部が設けられ、その自分の内部を経由して通流する原水を改質可能である。ここでの「改質」とは、物理変化及び化学変化の何れかを経て、特定の成分を原水から除去すること及び原水に付与することの何れかをいう。本実施形態の改質カートリッジ24は、原水として流入する水道水に含まれる塩素成分を除去する浄水カートリッジであり、原水を浄化することで浄水を生成する。この他にも、原水の改質態様として、美容成分、匂い成分、炭酸成分、水素成分等を原水に付与してもよい。改質カートリッジ24は、不図示のカートリッジホルダーに着脱可能である。
【0016】
制御部20は、例えば、マイクロコンピュータ等であり、CPU、ROM、RAM等の組み合わせによって構成される。制御部20は、送液部18の送液動作を制御可能である。本実施形態の制御部20は、開閉弁26の開閉動作も制御可能である。制御部20は、送液部18の送液動作を開始することで被給液部28に液体を供給する給液動作を行う。これによって、送液部18によって液体流路14を液体が通流することで、フィルタアセンブリ12によって濾過された液体が被給液部28に供給される。本実施形態の給液動作は、送液部18の送液動作を開始するとともに、開閉弁26を開くことで給水流路22に原水を通流させることで行う。これによって、給水流路22を通流する原水に液体流路14から濾過された液体が供給されることで希釈水が生成され、給水流路22を経由して被給水部38に希釈水が給水される。
【0017】
図1、
図2、
図3を参照する。濾過システム10は、フィルタアセンブリ12を組み込んだフィルタユニット40を備える。フィルタユニット40は、フィルタアセンブリ12の他に、前述した液源16、内部流路30、送液部18、改質カートリッジ24と、これらを収納する筐体42と、を備える。筐体42は、キッチンキャビネット等のベース44に設置される。
【0018】
図4、
図5を参照する。フィルタアセンブリ12は、主に、ハウジング50と、ハウジング50に形成される内室52内に収納されるフィルタカートリッジ54と、を備える。フィルタアセンブリ12は、大別すると、後述する第1シール部材56に関する第1の工夫点と、エア溜まり(不図示)に関する第2の工夫点とに特徴がある。以下、フィルタアセンブリ12の前提となる構成を説明してから、各工夫点に関して個別に説明する。
【0019】
ハウジング50は、固定部材58と、固定部材58に対して着脱方向Daでの移動を伴い着脱可能な可動部材60と、を備える。ここでの着脱方向Daとは、固定部材58に対して可動部材60を着脱するときの可動部材60の二つの移動方向(取付方向Da1、取外方向Da2)の組み合わせをいう。着脱方向Daの一側は、固定部材58に可動部材60を取り付けるときに固定部材58に可動部材60が近づく取付方向Da1となる。着脱方向Daの他側は、固定部材58から可動部材60を取り外すときに固定部材58から可動部材60が遠ざかる取外方向Da2となる。固定部材58及び可動部材60は、樹脂、金属等を素材とする。ここでは、これらが射出成形等によって得られる樹脂成形品である例を示す。
【0020】
図6を参照する。
図4は、
図6のB-B断面図でもある。固定部材58は、ねじ部材等の第1固定具62によって外部の被固定部材64に固定される固定部66を備える。被固定部材64は、例えば、フィルタアセンブリ12を収納する筐体42である。
【0021】
図4、
図5を参照する。固定部材58は、有底筒状の内筒部58aと、内筒部58aを取り囲む有底筒状の外筒部58bと、を備える。内筒部58aは取付方向Da1に凹む中央凹部58cを形成し、その取外方向Da2にある先端部に第1開口部58dが設けられる。外筒部58bは内筒部58aとの間に取付方向Da1に凹む環状凹部58eを形成する。
【0022】
可動部材60は、全体として、取外方向Da2に凹む有底筒状をなす。可動部材60の取付方向Da1にある先端部には第2開口部60aが設けられる。可動部材60の先端側部分は固定部材58の環状凹部58eに挿入される。可動部材60は、固定部材58と協働して内室52を形成する。本実施形態の内室52は、固定部材58の中央凹部58c及び環状凹部58eと可動部材60とによって形成される。可動部材60と固定部材58との間には両者の間をシールするOリング等の第2シール部材68が配置される。第2シール部材68は、フィルタアセンブリ12の外部にある外部空間70と内室52との間での流体の通流を阻止する。第2シール部材68は、固定部材58の外筒部58bの内周部と可動部材60の外周部との間に配置される。
【0023】
可動部材60は、第1着脱構造72によって固定部材58に着脱可能である。本実施形態の第1着脱構造72はねじ構造であり、固定部材58に設けられる雌ネジ部72aと、可動部材60に設けられる雄ねじ部72bとを備える。雌ネジ部72aは、固定部材58の外筒部58bの内周部に設けられ、雄ねじ部72bは、可動部材60の外周部に設けられる。第1着脱構造72の具体例は特に限定されず、スナップフィット、凹凸嵌合、磁力等を用いて実現されてもよい。
【0024】
可動部材60は、可動部材60の先端側に設けられる大内径部60bと、大内径部60bよりも可動部材60の底側に設けられる小内径部60cと、大内径部60bと小内径部60cとの間に設けられるテーパー部60dとを備える。小内径部60cは大内径部60bよりも内径を小さくする。テーパー部60dは、大内径部60bから小内径部60cに向かうに連れて徐々に内径を小さくする。
【0025】
可動部材60は、可動部材60の底部に設けられフィルタカートリッジ54を受けるカートリッジ受け部60eを備える。本実施形態のカートリッジ受け部60eは、可動部材60の底部から先端側に突き出るとともにフィルタカートリッジ54の径方向内側に突き出るリブ状をなし、フィルタカートリッジ54の周方向に間隔を空けて設けられる。
【0026】
可動部材60は、固定部材58に対して可動部材60を着脱するときにユーザの指を掛けるための指掛け部60fを備える(
図3も参照)。指掛け部60fは、可動部材60の外周部から径方向外側に突き出る突部である。本実施形態の可動部材60は、第1着脱構造72(ねじ構造)によって、フィルタカートリッジ54の中心線C54周りに回転させることで固定部材58に着脱可能である。本実施形態の指掛け部60fは、このように可動部材60を回転させるときに指を掛けるために用いられる。本実施形態の指掛け部60fは、フィルタカートリッジ54の周方向に間隔を空けて複数(ここでは二つ)設けられる。
【0027】
フィルタカートリッジ54は、ハウジング50の内室52に収納される。フィルタカートリッジ54は、固定部材58から可動部材60を取り外すことによって、固定部材58及び可動部材60のいずれかの内室52となる箇所から出し入れ可能である。本実施形態のフィルタカートリッジ54は、固定部材58から可動部材60を取り外すときに、後述の弾性部材128によって可動部材60によって取り付けた状態を維持され、可動部材60の内室52となる箇所から第2開口部60aを通して取り出し可能である。フィルタカートリッジ54は、可動部材60の第2開口部60aよりも取付方向Da1側に突出する突出箇所54aを備える。フィルタカートリッジ54の突出箇所54aを把持することで、第2開口部60aを通るフィルタカートリッジ54の出し入れ作業が容易となる。
【0028】
フィルタカートリッジ54は、全体として、自身の中心線C54に沿って延びる柱状(本実施形態では円柱状)をなす。以下、フィルタカートリッジ54の中心線C54に沿った方向を軸方向といい、その中心線を中心とする円の半径方向、円周方向を径方向、周方向という。フィルタカートリッジ54の軸方向は、固定部材58に対する可動部材60の着脱方向Daと一致する。ここでのフィルタカートリッジ54の中心線C54とは、フィルタカートリッジ54の外周面の幾何中心をフィルタカートリッジ54の長手方向に向かって連ねた線をいう。
【0029】
フィルタカートリッジ54は、液体を濾過するためのフィルタ74を内蔵している。フィルタカートリッジ54は、フィルタ74の他に、フィルタ74を収納するフィルタ室76を有するフィルタケース78を備える。
【0030】
フィルタケース78は、有底筒状のケース本体80と、ケース本体80の入口側開口部を塞ぐキャップ82と、を備える。ケース本体80は、筒状壁部80aと、筒状壁部80aの軸方向端部に設けられる底壁部80bとを備える。フィルタ室76は、ケース本体80とキャップ82に囲まれた箇所に形成される。
【0031】
フィルタ74は、フィルタアセンブリ12の内部流路30を液体が通流する過程で自身を経由する液体に含まれる異物を捕捉することで液体を濾過する。本実施形態のフィルタ74は、異物としての微生物を捕捉することで液体を除菌する機能も持つ。
【0032】
本実施形態のフィルタ74は中空糸膜フィルタである。このフィルタ74は、ストロー状の複数の中空糸膜84を備える。複数の中空糸膜84は束ね部材86によって束ねられている。本実施形態の束ね部材86はフィルタケース78のキャップ82を兼ねている。本実施形態の複数の中空糸膜84はU字状に折り曲げられており、その両端部が束ね部材86によって束ねられている。フィルタ74の具体例は特に限定されず、活性炭フィルタ、セラミックフィルター等の各種フィルタを採用してもよい。
【0033】
ハウジング50及びフィルタカートリッジ54は、液体流路14の一部となりフィルタ74を経由する内部流路30を形成する。内部流路30は、上流側から下流側に向かって、入口流路90、上流側液室92、流入孔94、フィルタ室76、流出孔96、下流側液室98、出口流路100を順に備える。
【0034】
入口流路90は、ハウジング50の固定部材58に形成される。入口流路90は、固定部材58の外面部58fに開口する入口孔90aと、入口孔90aと上流側液室92を連通する第1連通孔90bとを備える。入口孔90aには、一次側流路部材102が挿入されるとともに第3シール部材104によって水密に取り付けられる。一次側流路部材102は、ねじ部材等の第2固定具106によって固定部材58に固定される。一次側流路部材102には、可撓性を持つ一次側チューブ108(
図6参照)が水密に接続される。一次側流路部材102及び一次側チューブ108内には一次側流路32の一部が設けられる。
【0035】
上流側液室92及び下流側液室98は、ハウジング50の内室52にフィルタカートリッジ54が収納されることで、フィルタカートリッジ54の外部において内室52内に形成される。本実施形態の上流側液室92は、可動部材60とフィルタカートリッジ54との間の他に、固定部材58の環状凹部58eと可動部材60との間に設けられる。本実施形態の下流側液室98は、固定部材58の中央凹部58cとフィルタカートリッジ54との間に形成される。
【0036】
フィルタカートリッジ54は、前述したフィルタ室76、流入孔94及び流出孔96を備える。フィルタ室76は、フィルタカートリッジ54の内部に形成される。流入孔94は、内部流路30においてフィルタ室76よりも上流側にある上流側液室92からフィルタ室76に液体を流入させる。本実施形態の流入孔94は、フィルタケース78を構成するケース本体80の底壁部80bに設けられる。流出孔96は、内部流路30においてフィルタ室76よりも下流側にある下流側液室98にフィルタ室76から液体を流出させる。流出孔96は、フィルタケース78を構成するキャップ82に設けられる。本実施形態の流出孔96は中空糸膜84の端部が兼ねており、複数の流出孔96がキャップ82に設けられる。
【0037】
出口流路100は、ハウジング50の固定部材58に形成される。出口流路100は、固定部材58の外面部58fに開口する出口孔100aと、出口孔100aと下流側液室98を連通する第2連通孔100bとを備える。出口孔100aには、二次側流路部材110が挿入されるとともに第4シール部材112によって水密に取り付けられる。二次側流路部材110は、ねじ部材等の第3固定具114(
図6参照)によって、固定部材58に固定される。二次側流路部材110は、可撓性を持つ二次側チューブ116に接続される。二次側流路部材110及び二次側チューブ116内には二次側流路34の一部が設けられる。入口孔90aと出口孔100aは、固定部材58の同じ方向(ここでは取付方向Da1)を向く外面部58fに開口している。
【0038】
入口流路90には、液体流路14の一次側流路32から液体が流入する。入口流路90に流入した液体は、上流側液室92、流入孔94を経由してフィルタ室76に流入する。フィルタ室76内に流入した液体は、フィルタ74、流出孔96を経由して下流側液室98に流出する。下流側液室98に流出した液体は、出口流路100から、液体流路14の二次側流路34に流出する。このように液体流路14を通流する液体は、液体に含まれる異物がフィルタ74によって捕捉されることで濾過される。
【0039】
図7を参照する。第1の工夫点に関して説明する。フィルタアセンブリ12は、固定部材58とフィルタカートリッジ54との間で着脱方向Da(軸方向)に押し潰されることで両者の間をシールする第1シール部材56を備える。第1シール部材56は、内室52内に形成される上流側液室92と下流側液室98との間での液体の流通を阻止する。第1シール部材56は、Oリング、Xリング等の環状の弾性部材である。
【0040】
本実施形態の第1シール部材56は、固定部材58及びフィルタカートリッジ54のうちの一方となる一方部材120に装着される。ここでの一方部材120はフィルタカートリッジ54である例を説明する。この一方部材120は、第1シール部材56が装着される周面部120aと、第1シール部材56を着脱方向Daに押圧する第1押圧面120bと、を備える。本実施形態の周面部120aはフィルタカートリッジ54の外周面部となる。第1シール部材56は、一方部材120の周面部120aに設けられる第1装着溝120cに装着される。本実施形態の第1装着溝120cは、一方部材120の周面部120aから径方向に突き出る一対の第1環状部120d、120e間に形成される。第1押圧面120bは、一対の第1環状部120d、120eのうちの一方の第1環状部120dに設けられる。この一方の第1環状部120dの突出長さL120dは、他方の第1環状部120eの突出長さL120eよりも大きくなり、それにより第1環状部120dに第1押圧面120bが設けられる。ここでの突出長さL120d、120eとは、一方部材120の周面部120aから先端部までの径方向での長さをいう。
【0041】
固定部材58及びフィルタカートリッジ54のうち他方となる他方部材122(ここでは固定部材58)は、第1シール部材56を着脱方向Daに押圧する第2押圧面122aを備える。第2押圧面122aは、第1押圧面120bと着脱方向Daに対向する位置に設けられる。本実施形態の第2押圧面122aは、固定部材58の内筒部58aの先端部に設けられる。第2押圧面122aは、第1押圧面120b側に近づくにつれて一方部材120の周面部120aから離間するようなテーパー状をなす。これによって、第1押圧面120bとの間で第1シール部材56を押圧するときに、一方部材120の周面部120aに向けて第1シール部材56を押し付けることで、その周面部120aに第1シール部材56を密着させることができる。ひいては、第1シール部材56によるシール性を高めることができる。
【0042】
フィルタアセンブリ12は、可動部材60にフィルタカートリッジ54を着脱可能とする第2着脱構造126を備える。本実施形態の第2着脱構造126は、可動部材60とフィルタカートリッジ54との間で、フィルタカートリッジ54の径方向に押し潰される弾性部材128である。本実施形態の弾性部材128は、Oリング、Xリング等の環状部材である。第2着脱構造126は、固定部材58から可動部材60を取り外すときに、可動部材60にフィルタカートリッジ54を取り付けた状態を維持する(
図5参照)。本実施形態の第2着脱構造126(弾性部材128)は、弾性部材128の押し潰しに起因する弾性復元力によって、可動部材60にフィルタカートリッジ54を取り付けた状態を維持する。
【0043】
弾性部材128は、フィルタカートリッジ54及び可動部材60のいずれか(ここではフィルタカートリッジ54)に設けられる第2装着溝130に装着される。本実施形態の第2装着溝130は、フィルタカートリッジ54から径方向に突き出る一対の第2環状部132間に形成される。
【0044】
弾性部材128は、可動部材60の小内径部60cとフィルタカートリッジ54との間に配置される。フィルタカートリッジ54に装着される弾性部材128は、可動部材60の第2開口部60aからフィルタカートリッジ54を出し入れするとき、可動部材60の大内径部60bを摺動せずに小内径部60cを摺動する。このとき、可動部材60のテーパー部60dに弾性部材128を摺動させることで、可動部材60の小内径部60c内にスムーズに弾性部材128を挿入することができる。
【0045】
本実施形態のフィルタカートリッジ54は、弾性部材128の弾性復元力に抗して可動部材60の第2開口部60a(
図5参照)から引き抜くことで、可動部材60から取り外される。フィルタカートリッジ54は、弾性部材128の弾性復元力に抗して可動部材60の第2開口部60aから奥側に押し込むことで、弾性部材128によって可動部材60に取り付けられる。このように、第2着脱構造126は、可動部材60に対してフィルタカートリッジ54を相対移動させることで可動部材60にフィルタカートリッジ54を着脱可能とする。
【0046】
以上のフィルタアセンブリ12を用いたフィルタカートリッジ54の交換方法を説明する。まず、固定部材58に対して可動部材60の取外方向Da2の移動を伴い固定部材58から可動部材60を取り外す。本実施形態では可動部材60を回転させることで、第1着脱構造72(ねじ構造)によって固定部材58から可動部材60を取り外す。
【0047】
この後、使用済みのフィルタカートリッジ54を新規のフィルタカートリッジ54と交換する。このとき、固定部材58及び可動部材60のいずれか(ここでは可動部材60)の内室52となる箇所から使用済みのフィルタカートリッジ54を取り出し、その後に、その内室52となる箇所に新規のフィルタカートリッジ54を挿入する。
【0048】
この後、固定部材58に対して可動部材60の取付方向Da1での移動を伴い固定部材58に可動部材60を取り付ける。本実施形態では可動部材60を回転させることで、第2着脱構造126(ねじ構造)によって固定部材58に可動部材60を取り付ける。この過程で、フィルタカートリッジ54と可動部材60のそれぞれに設けられる押圧面120b、122aの間で第1シール部材56が押圧されることで第1シール部材56が着脱方向Daに押し潰される。このとき、可動部材60のカートリッジ受け部60eによってフィルタカートリッジ54を取付方向Da1に押し付けることで、第1シール部材56が着脱方向Daに押し潰される。
【0049】
以上のフィルタアセンブリ12の効果を説明する。
【0050】
(A)仮に、固定部材58とフィルタカートリッジ54との間で、フィルタカートリッジ54の中心線C54と直交する径方向に第1シール部材56が押し潰される場合を考える。これは、例えば、固定部材58の内筒部58aの内周部とフィルタカートリッジ54の外周部との間で第1シール部材56が径方向に押し潰される場合をいう。この場合、フィルタアセンブリ12内において位置すべき定位置からフィルタカートリッジ54を取外方向Da2に遠ざけるとき、固定部材58とフィルタカートリッジ54のうちの前述の他方部材122(ここでは固定部材58)から第1シール部材56が離間するまで、その他方部材122の周面部と第1シール部材56が摺動してしまう。フィルタカートリッジ54を定位置に向けて取付方向Da1に近づけるときも同様に、フィルタカートリッジ54を定位置に配置するまで、他方部材122の周面部と第1シール部材56が摺動してしまう。
【0051】
この点、本実施形態の第1シール部材56は、固定部材58とフィルタカートリッジ54との間で着脱方向Daに押し潰される。よって、フィルタアセンブリ12内において位置すべき定位置からフィルタカートリッジ54を取外方向Da2に遠ざけるとき、固定部材58とフィルタカートリッジ54のうちの他方部材122と第1シール部材56をほとんど摺動させずに済む。フィルタカートリッジ54を定位置に向けて取付方向Da1に近づけるときも同様である。ひいては、固定部材58とフィルタカートリッジ54との間で径方向に第1シール部材56が押し潰される場合と比べ、固定部材58に対してフィルタカートリッジ54を着脱方向Daに動かすときに第1シール部材56によって作用する摺動抵抗を大きく軽減できる。これによって、そのときの作業性を良好にすることができる。この他にも、固定部材58から可動部材60を取り外すとき、弾性部材128によってフィルタアセンブリ12を可動部材60に取り付けた状態を維持し易くなる。ひいては、第1シール部材56の摺動抵抗の影響によって、固定部材58の内室52となる箇所にフィルタカートリッジ54が残る事態を避け易くすることができる。
【0052】
第2着脱構造126は、固定部材58から可動部材60を取り外すとき、可動部材60にフィルタカートリッジ54を取り付けた状態を維持する。よって、可動部材60を固定部材58から取り外すときに、第2着脱構造126によって可動部材60とフィルタカートリッジ54を一体に取り扱うことができる。これによって、固定部材58から取り外した可動部材60を持ったまま、手元にある可動部材60に対してフィルタカートリッジ54を出し入れできるようになる。ひいては、フィルタカートリッジ54の交換作業を容易化することができる。
【0053】
第2着脱構造126は、可動部材60とフィルタカートリッジ54との間で押し潰される弾性部材128である。よって、第2着脱構造126がねじ構造である場合と比べ、簡易な構成によって第2着脱構造126を実現することができる。特に、ねじ構造を設ける場合、可動部材60、フィルタカートリッジ54を樹脂成形するにあたり、金型の複雑化に伴い成形難度が上昇する。これを回避できる利点がある。
【0054】
次に、フィルタアセンブリ12の他の特徴を説明する。
【0055】
弾性部材128は、可動部材60とフィルタカートリッジ54との間に形成される上流側液室92を着脱方向Daに離間した二つの小室140A、140Bに分断する。ここでの小室140A、140Bは、弾性部材128よりも取付方向Da1側にある第1小室140Aと、弾性部材128よりも取外方向Da2側にある第2小室140Bとを含む。第1小室140Aは、主に、フィルタケース78の筒状壁部80aと可動部材60との間に形成される。第2小室140Bは、フィルタケース78の底壁部80bと可動部材60の底部との間に形成される。
【0056】
図7、
図8を参照する。可動部材60及びフィルタカートリッジ54の少なくとも一方は、二つの小室140A、140Bを連通する連通流路142を備える。二つの小室140A、140B及び連通流路142は内部流路30の一部として設けられる。本実施形態の連通流路142は、可動部材60において弾性部材128を押し潰す内周面に少なくとも設けられる溝部142a、142bである。本実施形態の溝部142a、142bは、フィルタカートリッジ54の周方向に間隔を空けた複数(ここでは二つ)の位置に設けられている。この溝部142a、142bは、可動部材60の小内径部60cの内周面に着脱方向Daに沿って設けられる軸方向溝部142aと、隣り合うカートリッジ受け部60e間において径方向に沿って設けられる径方向溝部142bとを含んでいる。
【0057】
これによって、可動部材60とフィルタカートリッジ54との間に形成される液室92が弾性部材128によって二つの小室140A、140Bに分断されても、連通流路142によって二つの小室140A、140B間で液体を通流させることができる。よって、弾性部材128によって可動部材60とフィルタカートリッジ54を一体に取り扱えるようにしつつ、弾性部材128によって分断される二つの小室140A、140B間で液体を通流させることができる。
【0058】
また、連通流路142を溝部とすることによって、閉断面構造の連通流路142を単数部材によって形成する場合と比べ、簡易な構成によって連通流路142を実現できる。ここでの閉断面構造とは、その流路軸線に直交する断面において閉断面をなす構造をいう。
【0059】
本実施形態の溝部の軸方向溝部142aは、可動部材60の指掛け部60fとフィルタカートリッジ54の径方向に重なる位置に設けられる。これによって、可動部材60の指掛け部60fと径方向に重ならない場合と比べ、溝部のある箇所での偏肉に起因する樹脂成形品(可動部材60)の外観品位の低下を防止できる。
【0060】
図9を参照する。第2の工夫点に関して説明する。本実施形態のフィルタアセンブリ12は、フィルタカートリッジ54の中心線C54が横向きとなる横向き態様で設置される。これを実現するうえで、フィルタカートリッジ54の中心線C54が横向きとなるように、フィルタアセンブリ12を含むフィルタユニット40の筐体42がベース44に設置される(
図3、
図4も参照)。ここでの横向きとは、フィルタカートリッジ54の中心線C54を水平面と平行に配置する場合の他、水平面と略平行に配置する場合も含まれる。以下、特に説明がない限り、本実施形態において、フィルタカートリッジ54が横向きとなる場合の各構成要素の位置関係を説明する。
【0061】
本実施形態において、内部流路30の入口流路90はフィルタカートリッジ54の中心線C54よりも上方に設けられ、内部流路30の出口流路100はフィルタカートリッジ54の中心線C54よりも下方に設けられる。出口流路100は、フィルタカートリッジ54の流入孔94よりも下方に設けられる。出口流路100の出口孔100aに取り付けられる二次側流路部材110には二次側流路34の上流端部となる入口部110aが設けられる。固定部材58の中央凹部58cの底面部には、その底面部の下部において底面部の上部よりも取付方向Da1に凹む底面凹部58gが設けられる。
【0062】
内部流路30には、内部流路30に溜められる液体150の液面150a下に没することで内部流路30の流れ方向でのエアの流れを遮断する液没箇所152が設けられる。本実施形態の液没箇所152は内部流路30の出口流路100に設けられる。これによって、内部流路30には、内部流路30において液没箇所152よりも上流側に、内部流路30に溜められる液体150によってエアが封入されるエア溜まり154が設けられる。エア溜まり154は、内部流路30に溜められる液体150の液面150aよりも上方に設けられる。本実施形態のエア溜まり154は、内部流路30の液没箇所152となる出口流路100よりも上流側にある上流側液室92、フィルタ室76及び下流側液室98のそれぞれの一部に設けられる。エア溜まり154は、内部流路30においてフィルタ室76よりも上流側に少なくとも設けられるともいえる。
【0063】
このようなエア溜まり154をフィルタアセンブリ12に設けることで、内部流路30内の液体を下流側に引き込む場合に、引き込み異常が発生したときに、その発生を把握できるようになる。この引き込み異常は、例えば、液体流路14に液体を供給する液源16内に液体150が無くなった場合に発生する。この他にも、引き込み異常は、エア溜まり154よりも液体流路14の上流側において異物詰まりが生じた場合に発生する。引き込み異常は、一次側流路32から内部流路30への液体150の流入が途絶えた状態のまま二次側流路34側に内部流路30の液体を引き込もうとした場合に発生するともいえる。この引き込み異常の発生前後でフィルタアセンブリ12の動作を説明する。
【0064】
送液部18(
図1参照)は、内部流路30内の流体を液体流路14において内部流路30よりも下流側に引き込む負圧を作用させる。送液部18によって液体流路14に送液部18側に引き込む負圧を作用させると、その負圧によって液源16内の液体が液体流路14に供給される。この液体150は、液体流路14の一次側流路32からフィルタアセンブリ12の内部流路30に流入する。この液体は、内部流路30から二次側流路34側に引き込まれる。ここでは内部流路30内での液体150の流れ方向Dbを図示する。
【0065】
引き込み異常が発生していない通常状態にある場合を考える。この場合、内部流路30の液没箇所152が内部流路30内に溜められる液体150の液面150a下に没した状態のまま、フィルタアセンブリ12の内部流路30を液体150が通流し続ける。言い換えると、内部流路30内のエア溜まり154にエアを残した状態のまま、フィルタアセンブリ12の内部流路30を液体150が通流し続ける。この通常状態にある場合、内部流路30の部位によって液体150の液面150aの位置が異なっていてもよい。例えば、フィルタ室76内の液面150aよりも下流側液室98内の液面150aが低位にあってもよい。これは、例えば、フィルタ74に対する液体150の通過速度が、内部流路30から二次側流路34側への液体150の引込速度よりも遅くなることで生じる。
【0066】
図10A、
図10Bを参照する。ここでは、引き込み異常の進行に伴い、
図10A→
図10Bの順で状態が遷移する例を示す。引き込み異常が発生した場合、内部流路30内の液体が二次側流路部材110を通して二次側流路34側に引き込まれ、エア溜まり154にエアを封入する液体150の液面150aの液位が方向Dcに徐々に低下する。これに伴い、内部流路30の液没箇所152内の液体も二次側流路部材110を通して二次側流路34側に引き込まれる。
【0067】
内部流路30内の液体150は、
図10Bに示すように、通常状態にある場合にエア溜まり154となる箇所と二次側流路部材110の入口部110aとが、液没箇所152となる箇所を通してエアによって連通された連通状態となるまで引き込まれる。この連通状態になると、エア溜まり154に溜まっていたエアが二次側流路34側に方向Ddに引き込まれ始める。この結果、送液部18よりも上流側において、液体流路14の二次側流路34にエアが通流し始める。
【0068】
以上の第2工夫点に関するフィルタアセンブリ12の効果を説明する。
【0069】
(B)このように、フィルタアセンブリ12は前述のエア溜まり154を備える。よって、液体流路14の内部流路30内の液体を下流側に引き込むにあたって引き込み異常が発生したとき、液体150に替えてエア溜まり154内のエアを、液体流路14の二次側流路34に通流させることができる。ひいては、後述のように液体流路14の二次側流路34における液体の有無を検出することで、引き込み異常の発生を把握できるようになる。
【0070】
図9を参照する。フィルタカートリッジ54の流入孔94は、ケース本体80の底壁部80bに設けられる。よって、ケース本体80の筒状壁部80aに流入孔94を設ける場合と比べ、ハウジング50に対するフィルタカートリッジ54の周方向位置の変動によらず、フィルタカートリッジ54の中心線C54に近い位置に流入孔94を配置することができる。例えば、ケース本体80の筒状壁部80aに流入孔94を設けた場合、フィルタカートリッジ54の周方向位置によっては、その筒状壁部80aの上端部分に流入孔94が位置する。この場合、フィルタカートリッジ54の上端部分より上方にしかエア溜まり154を設けることができず、エア溜まり154に溜められるエア量が小さくなる。
【0071】
この点、本実施形態によれば、フィルタカートリッジ54の周方向位置の変動によらず、フィルタカートリッジ54の中心線C54に近い位置に流入孔94を配置できる。よって、フィルタカートリッジ54の周方向位置の変動によらず、エア溜まり154に安定した量のエアを溜めることができるようになる。特に、本実施形態のフィルタカートリッジ54は円柱状をなし、ハウジング50に対するフィルタカートリッジ54の周方向位置を調整自在となる。このような場合でも、ここに記載の効果を得られる利点がある。
【0072】
また、出口流路100がフィルタカートリッジ54の流入孔94よりも下方に設けられる場合、通常状態にあるとき、フィルタカートリッジ54のフィルタ室76及び下流側液室98内に溜められる液体150の液面150aは、フィルタカートリッジ54の流入孔94から上方となる。このため、ケース本体80の筒状壁部80aに流入孔94を設けた場合、ハウジング50に対するフィルタカートリッジ54の周方向位置によっては、筒状壁部80aの下端部分に流入孔94が位置する。この場合、フィルタ室76及び下流側液室98内に溜めることのできる液体150の液位が非常に低くなる。これに伴い、液体150の液面変化等に起因して液体流路14を液体150が通流している状態にあるときに、フィルタ室76等のエア溜まり154内にあるエアが二次側流路34に流出することで、二次側流路34内でエア噛みが生じ易くなる。
【0073】
この点、本実施形態によれば、フィルタカートリッジ54の周方向位置の変動によらず、フィルタカートリッジ54の中心線C54に近い位置に流入孔94を配置できる。よって、フィルタカートリッジ54の周方向位置の変動によらず、フィルタ室76及び下流側液室98内に溜めることのできる液体150の液位を確保し易くなる。これに伴い、フィルタ室76等のエア溜まり154内にあるエアが二次側流路34に流出し難くなり、二次側流路34内でのエア噛みのリスクを低減できる。
【0074】
ここで説明した安定したエア量の確保、エア噛みリスクの低減との関係から、フィルタカートリッジ54の流入孔94は、好ましくは、フィルタカートリッジ54の中心線C54上に設けられるとよい。
【0075】
エア溜まり154は、内部流路30においてフィルタ室76よりも上流側に少なくとも設けられる。この利点を説明する。エア溜まり154内にエアを封入する液体150の液面変化等に起因して、エア溜まり154から漏れたエアがフィルタ室76内まで流れ込む場合がある。この場合に、フィルタ室76よりも上流側にエア溜まり154を設けることで、エア溜まり154から漏れたエアをフィルタ室76内のフィルタ74によってフィルタカートリッジ54内にとどめ易くなる。よって、エア溜まり154を内部流路30においてフィルタ室76よりも下流側のみに設ける場合と比べ、エア溜まり154から漏れたエアの液体流路14の二次側流路34への流出を抑制し易くなる。ひいては、引き込み異常が発生していない場合に、フィルタ室76から上流側においてできるだけ多くのエアを確保した状態を維持し易くなる。
【0076】
フィルタアセンブリ12の他の特徴を説明する。
図10A、
図10Bを参照する。フィルタアセンブリ12は、フィルタカートリッジ54を横向きにしたとき、下流側液室98の下部に残る残液156をフィルタアセンブリ12の外部に排出するための液抜き通路158を備える。ここでの残液156とは、このような引き込み異常が発生したときに、フィルタアセンブリ12の内部流路30内に残る液体をいう。本実施形態の内部流路30の出口流路100は、液抜き通路158を兼ねている。これによって、出口流路100とは別に液抜き通路158を設けるよりも構成を簡素化できる。
【0077】
出口流路100が兼ねる液抜き通路158は、下流側液室98内の残液156を二次側流路部材110の入口部110aまで誘導しつつ、その入口部110aから外部に排出可能である。液抜き通路158によって入口部110aまで誘導された残液156は二次側流路34において下流側に引き込まれることでフィルタアセンブリ12の外部に排出される。フィルタアセンブリ12は、横向き態様で設置されるとき、下流側液室98の下部に残る残液を液抜き通路158を通して外部(ここでは二次側流路34)に排出可能に構成されるともいえる。
【0078】
本実施形態の液抜き通路158は、下流側液室98内の下部に残る残液156の液位がフィルタカートリッジ54のフィルタ室76の全体よりも下がるまで、その残液156を排出可能である。これを実現するうえで、液抜き通路158は、その流れ方向の全域で、フィルタ室76の全体よりも下方に位置している。また、本実施形態の液抜き通路158は、フィルタカートリッジ54の中心線C54に沿った切断面において下流側液室98の上端位置98a以下となるまで下流側液室98内の下部に残る残液156を排出可能である。これを実現するうえで、液抜き通路158は、その流れ方向の全域で、下流側液室98の上端位置98aよりも下方に位置している。
【0079】
液抜き通路158の入口部158aは、下流側液室98の下部、詳しくは、下流側液室98の下端部を含む箇所において開口している。ここでは、この下流側液室98の下端部を含む箇所として、下流側液室98の下端部における中央凹部58cの底面(底面凹部58gの底面)に液抜き通路158の入口部158aが開口している。この他にも、下流側液室98の下端部を含む箇所として、下流側液室98の下端部の下面に液抜き通路158の入口部158aが開口していてもよい。
【0080】
このように、フィルタアセンブリ12は、下流側液室98の下部に残る残液156を外部に排出するための液抜き通路158を備える。よって、引き込み異常の発生後、液抜き通路158によって、下流側液室98内に残る残液156を外部に排出することで、残液量をできるだけ減らすことができるようになる。ひいては、その後にフィルタカートリッジ54の取り外しのために固定部材58に対してフィルタカートリッジ54を動かしたときに、固定部材58の下流側液室98となる箇所から外部にこぼれる残液量を減らすことができる。
【0081】
次に、濾過システム10に関する特徴を説明する。
図1を参照する。濾過システム10は、液体流路14のエア溜まり154より下流側における被検出箇所での液体の有無を検出する液体検出部160を備える。ここでの被検出箇所とは、液体流路14の二次側流路34におけるエア溜まり154から送液部18の間をいう。
【0082】
液体検出部160は、液体流路14内の被検出箇所の通流物によって変化する物理量を検出するセンサ162と、センサ162の検出結果に基づいて液体の有無を判定する判定部164と、を備える。本実施形態のセンサ162は、液体流路14内の被検出箇所の通流物によって変化する物理量として、通流物の静電容量を検出する静電容量センサである。本実施形態のセンサ162は、液体流路14を形成する流路部材の外部に配置されるが、その内部に配置されてもよい。
【0083】
判定部164は、センサ162の検出値と予め設定される判定値とを比較することで、液体の有無を判定する。本実施形態のようにセンサ162の検出対象が静電容量となる場合、センサ162の検出値(静電容量)は、液体流路14内を高誘電率の液体150が通流するときに大きくなり、液体流路14内を低誘電率のエアが通流するときに小さくなる。そこで、本実施形態の判定部164は、センサ162の検出値(静電容量)が判定値超である場合、液体流路14内の被検出箇所を液体150が通流しており、液体有りと判定する。これに対して、判定部164は、センサ162の検出値(静電容量)が判定値以下である場合、液体流路14内の被検出箇所をエアが通流しており、液体無しと判定する。判定値は、液体流路14内の被検出箇所の通流物が液体になるときの検出値と、その通流物がエアになるときの検出値とを区別できるように設定される。
【0084】
判定部164は、液体有りと判定した場合に、液体有りと検出する。判定部164は、液体無しと判定した場合に、液体無しと検出する。この他にも、判定部164は、液体無しの判定が規定回数連続した場合に、液体無しと検出してもよい。判定部164は、液体の有無に関する検出結果を制御部20に出力する。
【0085】
このように、本実施形態の液体検出部160は、液体流路14内の被検出箇所での通流物によって変化する物理量をセンサ162によって検出することで、その被検出箇所での液体の有無を検出する。これによって、フィルタアセンブリ12において引き込み異常が発生した場合に、液体検出部160の検出結果を用いて、その引き込み異常を発見できる。例えば、液体検出部160によって液体有りと検出された場合は引き込み異常が発生していないことを把握できる。これに対して、液体検出部160によって液体無しと検出された場合は引き込み異常が発生していることを把握できる。制御部20は、このように引き込み異常が発生している場合に、そのことをユーザに知覚可能な態様で報知部(不図示)によって報知させてもよい。報知部は、例えば、ランプ、スピーカ、ディスプレイ等である。
【0086】
(第2実施形態)
図11を参照する。第2実施形態のフィルタアセンブリ12を説明する。以下、第1実施形態で説明した構成要素のうち、以下において説明していない構成要素は、特段の矛盾がない限り、以降の実施形態において第1実施形態と同じ内容が適用される。第2実施形態のフィルタアセンブリ12は、第2工夫点に関連する特徴において第1実施形態のフィルタアセンブリ12と相違する。
【0087】
本実施形態において、内部流路30の入口流路90はフィルタカートリッジ54の中心線C54よりも下方に設けられ、内部流路30の出口流路100はフィルタカートリッジ54の中心線C54よりも上方に設けられる。出口流路100は、フィルタカートリッジ54の流入孔94よりも上方に設けられる。
【0088】
本実施形態の内部流路30内でのエアの流れを遮断する液没箇所152は少なくとも内部流路30の流入孔94に設けられる。これによって、内部流路30の上流側液室92には、上流側液室92に溜められる液体150によってエアが封入されるエア溜まり154が設けられる。上流側液室92のエア溜まり154は、液没箇所152となる流入孔94が液面150a下に没するまで内部流路30に液体150が溜められることで設けられる。ここでは流入孔94が単数のみである例を説明している。流入孔94が複数ある場合、全ての流入孔94が液体150の液面150a下に没することでエア溜まり154が設けられる。
【0089】
内部流路30において液没箇所152よりも下流側(フィルタ室76、下流側液室98)では、上流側液室92内に溜められる液体150の液面150aよりも上方にまで液体150が溜められる。ここでは、引き込み異常が発生していない通常状態にあるときに、内部流路30内に液体を通流させるときの液体150の流れ方向Dbを示す。本実施形態では、内部流路30において液没箇所152よりも下流側(フィルタ室76、下流側液室98等)において、上流側液室92内に溜められる液体150の液面150aよりも上方を経由するように液体150が通流する。
【0090】
本実施形態のフィルタアセンブリ12内にエア溜まり154を設けるためのフィルタアセンブリ12のエア抜き方法を説明する。
図12A~
図12Cを参照する。ここでは、エア抜きの進行に伴い、
図12A→
図12B→
図12Cの順で状態が遷移する例を示す。各図では液体の流れ方向Dbも図示する。フィルタアセンブリ12内に新規のフィルタカートリッジ54を配置した直後の状態を想定する。この状態のもと、送液部18によって液体流路14に送液部18側に引き込む負圧を作用させると、液源16から供給された液体が一次側流路32を経由してフィルタアセンブリ12の内部流路30に流入する。内部流路30への液体の流入量が増大するにつれて、内部流路30内のエアが二次側流路34に引き込まれつつ、内部流路30の液没箇所152となる箇所(第2実施形態では流入孔94)を含む部位での液体150の液位が方向Deに徐々に高くなる(
図12A、
図12B参照)。内部流路30の液没箇所152が液体150で満たされると、そこより内部流路30の上流側においてエア溜まり154が設けられる(
図12C参照)。ここまでは第1実施形態でも同様となる。
【0091】
ここで、本実施形態においては、内部流路30への液体150の流入量が増大するにつれて、まずは上流側液室92内に溜められる液体150の液位が徐々に高くなる(
図12A参照)。流入孔94まで上流側液室92内の液体150の液位が高くなると、流入孔94からフィルタ室76内に液体150が流入し、フィルタ室76から流出孔96を通して下流側液室98内に液体が流出する(
図12B参照)。この状態のもと内部流路30への液体150の流入量が増大するにつれて、フィルタ室76及び下流側液室98内の液体150の液位が徐々に高くなる。フィルタ室76内に溜められる液体150の液位が、上流側液室92内に溜められる液体150の液位と一致すると、そこから流入孔94が没するまで両者に溜められる液体150の液位が徐々に高くなる。上流側液室92に溜められる液体150の液位が流入孔94が没するまで高くなると、そこより上流側である上流側液室92内にエア溜まり154が設けられる(
図12C参照)。これ以降は、内部流路30への液体150の流入量が増大するにつれて、フィルタ室76、下流側液室98内に溜められる液体150の液位が徐々に高くなる。
【0092】
このようにフィルタ室76内に溜められる液体150の液位を高くすることで、フィルタカートリッジ54の流出孔96を通してフィルタ室76内のエアを二次側流路34に排出するフィルタ室76のエア抜きが行われる。このフィルタ室76のエア抜きは、このようにフィルタ室76内がエアで満たされた新規のフィルタカートリッジ54をハウジング50の内室52内に配置した後に、フィルタ室76内のエアを排出することをいう。
【0093】
図12B、
図12Cを参照する。本実施形態のフィルタアセンブリ12は、フィルタカートリッジ54を横向きにした場合に、フィルタ室76のエア抜き時にフィルタ室76内の上部に残るエアをフィルタアセンブリ12の外部に排出するためのエア抜き通路170を備える。本実施形態の内部流路30の出口流路100はエア抜き通路170を兼ねている。これによって、出口流路100とは別にエア抜き通路170を設けるよりも構成を簡素化できる。
【0094】
フィルタ室76のエア抜き時、フィルタ室76内のエアは、フィルタ室76から流出孔96を通して下流側液室98に流出し、その下流側液室98及びエア抜き通路170を通して外部に排出される。ここでは、エア抜き時のエアの流れ方向Dfを示す。エア抜き通路170を出口流路100が兼ねる場合、フィルタ室76内のエアは、出口流路100の出口孔100aに取り付けられる二次側流路部材110の入口部110aを通して外部に排出される。このとき、フィルタ室76内のエアは、二次側流路部材110の入口部110aから二次側流路34において下流側に引き込まれることで外部に排出される。フィルタアセンブリ12は、横向き態様で設置される場合、フィルタ室76のエア抜き時にフィルタ室76内の上部に残るエアをエア抜き通路170を通して外部(ここでは二次側流路34)に排出可能に構成されるともいえる。
【0095】
図12Cを参照する。エア抜き通路170は、フィルタ室76内に溜められる液体150の液面150aが少なくともフィルタカートリッジ54の最も上側の流出孔96よりも上方となるまでフィルタ室76内の上部に残るエアを外部に排出することが可能である。ここでの「最も上側の流出孔96」とは、フィルタカートリッジ54が単数の流出孔96のみを備える場合は、その流出孔96をいい、複数の流出孔96を備える場合は、複数の流出孔96のうちの最も上側の流出孔96をいう。この条件を満たすうえで、エア抜き通路170は、その流れ方向の全域で、フィルタカートリッジ54の最も上側の流出孔96よりも上方に配置される。これによって、フィルタ室76内の液体150の液位を上昇させる過程で、フィルタカートリッジ54の最も上側の流出孔96が液体150に没するまで、フィルタ室76内の上部に残るエアをエア抜き通路170を通して外部に排出することができる。フィルタ室76内において最も上側の流出孔96よりも上方に残るエアはフィルタ室76内に溜められる液体の液面変動に伴いエア抜き通路170を通して外部に排出される場合もある。
図11では、これによりフィルタ室76内のエアが完全に排出される例を示す。
【0096】
このように、フィルタアセンブリ12は、フィルタカートリッジ54が横向きとなる場合に、フィルタ室76内の液体の液位を上昇させるときに、フィルタ室76内の上部に残る残留エアを外部に逃がすためのエア抜き通路170を備える。よって、フィルタカートリッジ54が横向きとなる場合でも、エア抜き通路170を通して残留エアを外部に排出することで、フィルタ室76内に溜めることのできる液体量を増やすことができる。ひいては、フィルタ室76内のフィルタ74のできるだけ広い範囲に液体を通過させることができ、フィルタ74を効率よく使用できるようになる。
【0097】
(第3実施形態)
図13を参照する。第3実施形態のフィルタアセンブリ12を説明する。第3実施形態のフィルタアセンブリ12は、第2実施形態のフィルタアセンブリ12の構成と設置態様において異なる。詳しくは、本実施形態のフィルタアセンブリ12は、フィルタカートリッジ54の中心線C54が縦向きとなる縦向き態様で設置される。これを実現するうえで、フィルタカートリッジ54の中心線C54が縦向きとなるように、フィルタアセンブリ12を含むフィルタユニット40の筐体42がベース44に設置される(図示せず)。ここでの縦向きとは、フィルタカートリッジ54の中心線C54を鉛直線と平行に配置する場合の他、その中心線C54を鉛直線と略平行に配置する場合も含まれる。
【0098】
フィルタアセンブリ12は、フィルタ室76のエア抜き時に出口流路100を通してフィルタ室76内の上部に残るエアを外部に排出可能に構成される。これを実現するうえで、フィルタカートリッジ54を縦向きにしたとき、出口流路100は、その流れ方向の全域で、フィルタカートリッジ54の流出孔96よりも上方に配置される。この条件を満たすうえで、フィルタカートリッジ54が複数の流出孔96を備える場合、出口流路100は各流出孔96よりも上方に配置される。これによって、フィルタ室76内の液体の液位を上昇させる過程で、フィルタカートリッジ54の流出孔96が液体150に没するまでフィルタ室76内の上部に残るエアを出口流路100を通して外部(ここでは二次側流路34)に排出することができる。
【0099】
これによって、フィルタカートリッジ54を縦向きにした場合でも、フィルタ室76内の液体の液位を上昇させるときに、出口流路100を通してフィルタ室76内の残留エアを外部に排出できるようになる。ひいては、フィルタカートリッジ54を縦向き及び横向きのいずれにした場合でも、フィルタ室76内の残留エアをできるだけ外部に逃がすことができるようになる。
【0100】
なお、ここでは第2実施形態のフィルタアセンブリ12を横向き態様に替えて縦向き態様で設置する場合を例に説明した。この他にも、第1実施形態のフィルタアセンブリ12を横向き態様に替えて縦向き態様で設置する場合も、フィルタ室76のエア抜き時に、出口流路100を通してフィルタ室76内の上部に残るエアを外部に排出可能に構成してもよい。
【0101】
また、ここでは、内部流路30内の液没箇所152が少なくとも流入孔94に設けられる例を示す。
図13では、引き込み異常が発生していない通常状態にあるときに、内部流路30内に液体を通流させるときの液体150の流れ方向Dbを示す。本実施形態でも、第2実施形態と同様、内部流路30において液没箇所512よりも下流側(フィルタ室76、下流側液室98等)において、上流側液室92内に溜められる液体150の液面150aよりも上方を経由するように液体150が通流する。
【0102】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0103】
濾過システム10によって濾過された液体が供給される被給液部28は、原水の通流する給水流路22に限られず、吐水装置、タンク等であってもよい。濾過システム10は、給水流路22、改質カートリッジ24、開閉弁26を備えずともよい。
【0104】
(A)の効果との関係では、フィルタアセンブリ12の内部流路30にエア溜まり154が設けられていなくともよい。
【0105】
フィルタアセンブリ12は第2着脱構造126を備えずともよい。この場合、固定部材58から可動部材60を取り外すときに、固定部材58の内室52となる箇所にフィルタアセンブリ12が残ってもよい。第2着脱構造126は、弾性部材128の他にも、ねじ構造、凹凸嵌合構造、磁石、ねじ部材等を用いて構成されてもよい。第2着脱構造126となる弾性部材128がない場合、弾性部材128によって分断される液室(実施形態では上流側液室92)を広くすることができる。これに伴い、その液室にエア溜まり154を設けた場合に溜めることのできるエア量を多くできる。
【0106】
内室52には、軸方向において固定部材58側から可動部材60側に向かって、下流側液室98、フィルタ室76、上流側液室92が順に形成される例を説明した。この他にも、軸方向において固定部材58側から可動部材60側に軸方向に向かって、上流側液室92、フィルタ室76、下流側液室98が順に形成されてもよい。この場合、フィルタカートリッジ54と可動部材60との間には、上流側液室92に替えて、下流側液室98が形成される。この場合、弾性部材128は、この下流側液室98を二つの小室140A、140Bに分断してもよい。
【0107】
可動部材60及びフィルタカートリッジ54のいずれも二つの小室140A、140Bを連通する連通流路142を備えなくともよい。この場合、一つの小室140A、140Bのみを内部流路30の一部として利用してもよい。また、フィルタカートリッジ54のみが連通流路142を備えてもよいし、可動部材60及びフィルタカートリッジ54の両方が連通流路142を備えてもよい。
【0108】
連通流路142は、可動部材60及びフィルタカートリッジ54のいずれかによって閉断面構造に形成されていてもよい。溝部は、フィルタカートリッジ54において弾性部材128を押し潰す外周面に設けられていてもよい。溝部は、可動部材60及びフィルタカートリッジ54の少なくとも一方において弾性部材128を押し潰す面に設けられていればよいともいえる。
【0109】
第1シール部材56が装着される一方部材120はフィルタカートリッジ54であり、他方部材122は固定部材58である例を説明した。これに替えて、第1シール部材56が装着される一方部材120は固定部材58であり、他方部材122はフィルタカートリッジ54であってもよい。他方部材122の第2押圧面122aは着脱方向Daに直交する平坦面であってもよい。
【0110】
(B)の効果との関係では、第1シール部材56は、固定部材58とフィルタカートリッジ54との間でフィルタカートリッジ54の径方向に押し潰されていてもよい。
【0111】
エア溜まり154は内部流路30の何れの部位(上流側液室92、フィルタ室76、下流側液室98等)に設けられていてもよい。
【0112】
液抜き通路158は、内部流路30の出口流路100とは別に設けられていてもよい。液抜き通路158は、フィルタカートリッジ54を横向きにした場合に、下流側液室98の上部に残る残液のみを外部に排出してもよい。
【0113】
液抜き通路158は、二次側流路34に引き込む負圧によって下流側液室98内の残液を外部に排出する例を説明した。この他にも、液抜き通路158は、自重によって下流側液室98内の残液を外部に排出してもよい。
【0114】
エア抜き通路170は、内部流路30の出口流路100とは別に設けられていてもよい。エア抜き通路170は、フィルタカートリッジ54を横向きにした場合に、フィルタ室76内の液体の液位を上昇させるとき、フィルタ室76内の下部に残るエアのみを外部に逃がしてもよい。
【0115】
エア抜き通路170は、二次側流路34に引き込む負圧によって内部流路30内の液体の液位を上昇させ、それによってフィルタ室76内のエアを排出する例を説明した。この他にも、エア抜き通路170は、一次側流路32から内部流路30に押し込む正圧によって内部流路30内の液体の液位を上昇させ、それによってフィルタ室76内のエアを排出してもよい。
【0116】
フィルタカートリッジ54の流入孔94はフィルタカートリッジ54の筒状壁部80aにあってもよい。フィルタカートリッジ54の流入孔94の個数は特に限定されず、複数あってもよい。
【0117】
液体検出部160は、液体流路14内の被検出箇所での液体の有無を検出できればよく、その具体例は特に限定されない。センサ162を液体検出部160に用いる場合、センサ162の検出対象となる物理量は静電容量に限定されず、温度、光量等でもよい。このセンサ162の検出対象となる物理量として温度を利用する場合、液体検出部160は、前述したセンサ162及び判定部164の他に、液体流路14を加熱する加熱器を備えていてもよい。この場合、センサ162は、温度を検出するサーミスタ等としてもよい。このセンサ162は、加熱器による液体流路14の加熱開始から第1設定時間の経過後の第1温度と、その加熱開始から第2設定時間の経過後の第2温度とを検出する。この第1温度と第2温度の温度差は、液体流路14を高熱伝達率の液体が通流する場合に小さくなり、液体流路14を低熱伝達率のエアが通流する場合に大きくなる。そこで、判定部164は、センサ162によって検出される第1温度と第2温度の温度差が予め定められる判定値未満である場合、液体流路14内を液体が通流しており、液体有りと判定する。これに対して、判定部164は、温度差が判定値未満である場合、液体流路14内をエアが通流しており、液体無しと判定する。
【0118】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が当然に許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。本開示の構成要素及び表現のいずれかを、方法、装置、システム等の間で相互に置換したものも、本開示の態様として有効である。
【0119】
以上の実施形態、変形形態により具体化される技術的思想を一般化すると、以下の項目に記載の技術的思想が含まれているともいえる。
【0120】
第1項目は、固定部材と、前記固定部材に着脱方向での移動を伴い着脱可能であり前記固定部材と協働して内室を形成する可動部材と有するハウジングと、前記内室に収納されるフィルタカートリッジと、前記固定部材と前記フィルタカートリッジとの間で前記着脱方向に押し潰されるシール部材と、を備えるフィルタアセンブリである。
【0121】
第2項目は、前記可動部材に前記フィルタカートリッジを着脱可能とする着脱構造を備え、前記着脱構造は、前記固定部材から前記可動部材を取り外すとき、前記可動部材に前記フィルタカートリッジを取り付けた状態を維持する第1項目に記載のフィルタアセンブリである。
【0122】
第3項目は、前記着脱構造は、前記可動部材と前記フィルタカートリッジとの間で押し潰される弾性部材である第2項目に記載のフィルタアセンブリである。
【0123】
第4項目は、前記フィルタカートリッジは、前記可動部材との間に液室を形成し、前記弾性部材は、二つの小室に前記液室を分断し、前記可動部材及び前記フィルタカートリッジの少なくとも一方は、前記二つの小室を連通する連通流路を備える第3項目に記載のフィルタアセンブリである。
【0124】
第5項目は、前記連通流路は、前記可動部材及び前記フィルタカートリッジの少なくとも一方において前記弾性部材を押し潰す面に少なくとも設けられる溝部である第4項目に記載のフィルタアセンブリである。
【0125】
第6項目は、前記固定部材及び前記フィルタカートリッジのうちの一方部材は、前記シール部材が装着される周面部と、前記シール部材を前記着脱方向に押圧する第1押圧面と、を備え、前記固定部材及び前記フィルタカートリッジのうちの他方部材は、前記シール部材を前記着脱方向に押圧する第2押圧面を備え、前記第2押圧面は、前記第1押圧面側に近づくにつれて前記周面部から離間するテーパー状をなす第1項目~第5項目のいずれかに記載のフィルタアセンブリである。
【0126】
第7項目は、前記ハウジング及び前記フィルタカートリッジは、液体が通流する液体流路の一部となり、前記フィルタカートリッジに内蔵されるフィルタを経由する内部流路を形成し、前記内部流路には、前記内部流路に溜められる液体によってエアが封入されるエア溜まりが設けられる第1項目~第6項目のいずれかに記載のフィルタアセンブリである。
【0127】
第8項目は、前記フィルタアセンブリは、濾過システムに用いられ、前記濾過システムは、前記内部流路内の液体を前記液体流路において前記内部流路よりも下流側に引き込む送液部と、前記液体流路において前記エア溜まりよりも下流側における液体の有無を検出する液体検出部と、を備える第7項目に記載のフィルタアセンブリである。
【0128】
第9項目は、液体が通流する液体流路と、前記液体流路に設けられる第7項目に記載のフィルタアセンブリと、前記内部流路内の液体を前記液体流路において前記内部流路よりも下流側に引き込む送液部と、前記液体流路において前記エア溜まりよりも下流側における液体の有無を検出する液体検出部と、を備える濾過システムである。
【符号の説明】
【0129】
10…濾過システム、12…フィルタアセンブリ、14…液体流路、18…送液部、30…内部流路、50…ハウジング、52…内室、54…フィルタカートリッジ、56…第1シール部材、58…固定部材、60…可動部材、64…送液部、66…固定部、74…フィルタ、76…フィルタ室、80…ケース本体、80b…底壁部、92…上流側液室、94…流入孔、98…下流側液室、100…出口流路、120…一方部材、120a…周面部、120b…第1押圧面、122…他方部材、122a…第2押圧面、126…第2着脱構造、128…弾性部材、140A、140B…小室、142…連通流路、150…液体、156…残液、158…液抜き通路、160…液体検出部、170…エア抜き通路。