(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094689
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/044 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
E03C1/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211389
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 理々花
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲利
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC02
2D060BC30
2D060BF03
(57)【要約】
【課題】吐水部の環状通水路の水切れ性を向上する吐水装置を提供する。
【解決手段】吐水装置は、吐水口と吐水口に連通する環状通水路60とを有する吐水部28と、吐水部28に給水する流路に設けられ、開閉により吐水部28への給水を制御する開閉弁と、環状通水路60の内周壁を環囲するように環状通水路60内に設けられる筒状の水膜発生体100と、を備える。開閉弁が開状態において、環状通水路60における水膜発生体100の内周側および外周側の一方に流れ込んだ水は水膜発生体100の側面部100dを通って内周側および外周側の他方に流れて吐水口から吐水される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口と前記吐水口に連通する環状通水路とを有する吐水部と、
前記吐水部に給水する流路に設けられ、開閉により前記吐水部への給水を制御する開閉弁と、
前記環状通水路の内周壁を環囲するように前記環状通水路内に設けられる筒状の水膜発生体と、
を備え、
前記開閉弁が開状態において、前記環状通水路における前記水膜発生体の内周側および外周側の一方に流れ込んだ水は前記水膜発生体の側面部を通って前記内周側および前記外周側の他方に流れて前記吐水口から吐水される吐水装置。
【請求項2】
前記水膜発生体は、網状体または多孔体である請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水部は、前記環状通水路の前記一方の周壁から張り出す環状張出部を有し、
前記環状張出部は、前記水膜発生体の下流端と前記周壁との開口を閉塞するとともに当該下流端を支持する請求項1に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記一方は内周側で、前記他方は外周側であり、
前記吐水部は、前記環状通水路の内周壁から突出する、前記環状通水路に沿って延びる複数のリブを備え、
前記水膜発生体は、前記複数のリブに外嵌する請求項1に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記複数のリブの張出量は下流側ほど小さい請求項4に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記吐水部は、前記吐水口とは別の吐水口と前記別の吐水口に連通する中央通水路とを有し、
前記環状通水路は、前記中央通水路を環囲するとともに前記中央通水路に沿って延在する請求項1に記載の吐水装置。
【請求項7】
前記環状通水路および前記中央通水路には、互いに異なる種類の水が給水される請求項6に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、吐水部の通水路内にメッシュが配置された吐水装置を開示する。止水時において、メッシュの複数の小孔には、表面張力により、水膜が形成される。これらの水膜は、メッシュを通って吐水口へ抜け出ようとする水に対して抵抗となる。したがって、メッシュを配置することによって、比較的早く水垂れが止まる。つまり、水切れ性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐水部が環状の通水路を有する場合がある。例えば吐水部が、延在方向に垂直な断面が円形状の中央通水路と、中央通水路を環囲するとともに中央通水路に沿って延在する、延在方向に垂直な断面が環状の環状通水路と、を備える場合がある。このような環状通水路の止水時における水切れ性を向上する方法として、ディスク状(すなわち中央に孔が設けられた円板状)のメッシュを環状通水路内に配置することが考えられる。しかしながら、この場合、高い水切れ性を実現するにはメッシュの面積を大きくする必要があり、そのためには環状通水路ひいては吐水部を太くする必要があるが、吐水部を太くするとデザイン性が低下するため好ましくない。したがって、環状通水路の水切れ性を向上することはそれほど単純ではない。
【0005】
本開示の目的の1つは、吐水部の環状通水路の水切れ性を向上する吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の吐水装置は、吐水口と吐水口に連通する環状通水路とを有する吐水部と、吐水部に給水する流路に設けられ、開閉により吐水部への給水を制御する開閉弁と、環状通水路の内周壁を環囲するように環状通水路内に設けられる筒状の水膜発生体と、を備える。開閉弁が開状態において、環状通水路における水膜発生体の内周側および外周側の一方に流れ込んだ水は水膜発生体の側面部を通って内周側および外周側の他方に流れて吐水口から吐水される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図2の水膜発生体とその周辺を示す斜視断面図である。
【
図4】
図2の水膜発生体の上流端側とその周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】
図2の水膜発生体の下流端側とその周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、
図2の第2筒部および水膜発生体を示す図である。
【
図7】変形例の吐水部の水膜発生体とその周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0009】
実施の形態を詳述する前に概要を説明する。本実施の形態は、吐水装置に関する。吐水装置は、吐水部に給水する流路に設けられ、開閉により吐水部への給水を制御する開閉弁と、環状通水路の内周壁を環囲するように環状通水路内に設けられる筒状の網状体などの水膜発生体と、を備える。吐水装置は、開閉弁が開状態すなわち吐水部に給水されている状態において、環状通水路における水膜発生体の内周側に流れ込んだ水が水膜発生体の側面部を通って外周側に流れて吐水口から吐水される。「水」は、常温水、冷水、温水のいずれであってもよい。また、「水」は、原水、改質水のいずれであってもよい。つまり、水の種類は特に問わない。この構成によれば、開閉弁が閉状態すなわち吐水部への給水が停止された場合に水膜発生体の側面部には水膜が発生する。筒状である水膜発生体を環状通水路に沿って長くすることで、水膜発生体の側面部に張られる水膜の総面積を大きくできる。水膜の総面積が大きければ、水切れ性が向上する。つまり、吐水部を太くすることなく、言い換えるとデザイン性を低下させることなく、水切れ性を向上できる。
【0010】
図1を参照する。吐水装置12は、吐水部28が設けられた吐水装置本体16と、吐水部28に給水する第1給水ライン18および第2給水ライン20と、制御装置22と、を備える。第1給水ライン18および第2給水ライン20は、特に限定されないが、互いに種類の異なる水を吐水装置12の吐水部28に給水する。本実施の形態では、第1給水ライン18は吐水部28に原水(湯水混合水)を給水し、第2給水ライン20は吐水部28に改質水を給水する。
【0011】
吐水装置本体16は、例えばキッチンに設置される。吐水装置本体16は、吐水管部26と、吐水部28と、第1吐水操作部30と、第2吐水操作部32と、を備える。吐水管部26は、特に限定されないが、いわゆるグースネック状をなしている。吐水部28は、本実施の形態では、吐水管部26の先端に設けられる。吐水部28は、第1,第2吐水操作部30,32に対する操作に応じて第1,第2給水ライン18,20から供給される水を吐水する。
【0012】
第1給水ライン18は、上水道等の給水源34から原水(常温水)が供給される水流路36と、給湯器等の湯源38から湯が供給される湯流路40と、水流路36から供給される常温水と湯流路40から供給される湯とを混合する止水機能付きの混合弁(開閉弁)42と、混合弁42により混合された湯水混合水を吐水部28に給水する混合水流路44と、を備える。
【0013】
混合弁42における常温水と湯の混合比率および混合弁42から給水される湯水混合水の流量(流量がゼロの場合、すなわち給水を停止する場合を含む)は、吐水装置本体16の第1吐水操作部30を操作することにより調整可能である。第1吐水操作部30は、例えばシングルレバーである。
【0014】
第2給水ライン20は、水流路36から分岐して吐水部28に繋がる給水流路46と、給水流路46に設けられる改質カートリッジ48と、開閉弁54と、を備える。
【0015】
改質カートリッジ48は、供給された原水を改質する。以下、改質カートリッジ48により改質された水を改質水という。「原水」は、改質カートリッジ48による改質の対象となる水をいう。「改質」は、物理変化または化学変化を経て、特定の成分を原水から除去または原水に付与することをいう。例えば原水が水道水の場合、改質カートリッジ48は、水道水に含まれる塩素成分を除去するすなわち水道水を改質水としての浄水に改質する浄水カートリッジであってもよい。改質は、美容成分、匂い成分、炭酸成分、水素成分等を原水に付与することであってもよい。
【0016】
開閉弁54は、電磁弁、電動弁等の自動開閉弁である。開閉弁54は、制御装置22の指示にしたがって開閉する。
【0017】
開閉弁54は、本実施の形態では改質カートリッジ48よりも上流側に設けられる。開閉弁54は、改質カートリッジ48よりも下流側に設けられてもよい。
【0018】
第2吐水操作部32は、本実施の形態では、複数の回転位置に切り替え可能な回転ハンドルであり、回転位置に対応する指示を制御装置22に出力する。第2吐水操作部32により選択可能な指示は、吐水部28から改質水を吐水させる「改質水吐水指示」と、吐水部28からの吐水を停止させる「止水指示」である。つまり、第2吐水操作部32は、回転位置に対応する吐止水の指示を出力する。
【0019】
制御装置22は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やメモリをはじめとする素子や回路を利用できる。ソフトウェア資源として、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0020】
制御装置22は、改質水吐水指示を受けたとき、開閉弁54にする。これにより、常温の改質水が吐水部28に給水され、吐水部28から吐水される。制御装置22は、止水指示を受けたとき、開閉弁54を閉状態にする。これにより、吐水部28への給水ひいては吐水部28からの吐水が停止される。
【0021】
図2~
図6を参照する。
図6(a)は、第2筒部66および水膜発生体100の斜視図であり、
図6(b)は、第2筒部66および水膜発生体100の側面図である。
【0022】
吐水部28は、中央通水路56を形成する中央通水路形成部58と、環状通水路60を形成する環状通水路形成部62と、環状通水路60に配置される水膜発生体100と、を備える。中央通水路56は、その延在方向に垂直な断面が円形状の通水路である。環状通水路60は、中央通水路56を環囲するとともに中央通水路56に沿って延在する。環状通水路60は、その延在方向に垂直な断面が環状の通水路である。本実施の形態では、第1給水ライン18から環状通水路60に湯水混合水(非改質水)が給水され、第2給水ライン20から中央通水路56に改質水が給水される。つまり、環状通水路60および中央通水路56には、互いに異なる種類の水が給水される。
【0023】
中央通水路形成部58は、第2ホース継手64と、第2筒部66と、を含む。第2ホース継手64および第2筒部66はいずれも、両端が開口した筒状の部材である。
【0024】
第2筒部66の上流側は、第2ホース継手64を介して、第2ホース46aに接続される。詳しくは、第2筒部66の上流側に第2ホース継手64が例えば同軸に接続され、第2ホース継手64の第2筒部66とは反対側(上流側)に第2ホース46aが接続される。第2ホース46aは、第2給水ライン20の給水流路46の末端を構成する。第2ホース継手64および第2筒部66の内部空間は、中央通水路56を構成する。第2筒部66の下流端の開口は、第2吐水口56aを構成する。
【0025】
第2給水ライン20の第2ホース46aから、中央通水路56に改質水が給水され、第2吐水口56aから吐水される。
【0026】
環状通水路形成部62は、第1ホース継手70と、第1筒部72と、散水部継手74と、散水部76と、を含む。第1ホース継手70、第1筒部72および散水部継手74はいすれも、両端が開口した筒状の部材である。
【0027】
第1筒部72の上流側は、第1ホース継手70を介して、第1ホース44aに接続される。詳しくは、第1筒部72の上流側に第1ホース継手70が例えば同軸に接続され、第1ホース継手70の第1筒部72と反対側(上流側)に第1ホース44aが接続される。第1ホース44aは、第1給水ライン18の混合水流路44の末端を構成する。
【0028】
第1筒部72の下流側は、散水部継手74を介して、散水部76に接続される。詳しくは、第1筒部72の下流側に散水部継手74が例えば同軸に接続され、散水部継手74の第1筒部72とは反対側(下流側)に散水部76が接続される。
【0029】
第1筒部72は、中央通水路形成部58の第2ホース継手64および第2筒部66を環囲する。第2ホース46aは、第1ホース44aおよび第1ホース継手70の内部を通って第1筒部72の内部に差し込まれ、第1筒部72の内側において第2ホース継手64に接続される。散水部継手74および散水部76は、第1筒部72を環囲する。第1筒部72は、中央通水路形成部58の散水部76よりも下流側に突出している。
【0030】
第1ホース継手70、第1筒部72、散水部継手74および散水部76の内部空間であって、第2ホース46a、第2ホース継手64および第2筒部66を環囲する内部空間は、環状通水路60を構成する。散水部76の外筒82(後述)の下流端の開口は第1吐水口60aを構成する。
【0031】
第1給水ライン18の第1ホース44aから、環状通水路60に湯水混合水(非改質水)が給水され、は第1吐水口60aから吐水される。
【0032】
散水部76は、散水板80と、外筒82と、切替え操作部84と、を含む。散水板80は、有底カップ状をなしている。詳しくは、散水板80は、円板状の散水板本体部86と、散水板本体部86の外周縁から立設する環状壁部88と、を含む。第2筒部66が散水板本体部86の中央を貫通している。散水板本体部86には、シャワー吐水のための複数の散水孔86aが形成されている。
【0033】
外筒82は、両端が開口した筒状の部材である。外筒82は、散水板80の散水板本体部86の少なくとも一部と、環状壁部88を環囲する。外筒82の上端は、環状壁部88の上端より上方に位置し、散水部継手74の下流側を環囲する。外筒82は、その内周面82aと環状壁部88の外周面88aとの間に外周通水路92を形成する。
【0034】
切替え操作部84は、両端が開口した筒状の部材であり、散水部継手74の下流側部分(すなわち第1筒部72から突出する部分)と、外筒82とを環囲する。切替え操作部84は、環状通水路60からの吐水を、シャワー吐水と整流吐水とで切り替えるための操作部である。散水部76は、切替え操作部84を回転させると、その回転に伴って散水板80および外筒82が上下動するように構成されている。
【0035】
図示を省略するが、散水板80が下方に位置するときには、散水板80の内部空間と外周通水路92とが連通する。この場合、第1ホース44aから給水される水は、複数の散水孔86aおよび外周通水路92の両方から吐水される。外周通水路92から吐水される水が複数の散水孔86aから吐水されるシャワー吐水を周囲から包み込んでそれらが一体化するため、1本の整流吐水が形成される。
【0036】
図2~
図5のように散水部76が上方に位置するときには、環状壁部88の上端部が、散水部継手74の下端部に外嵌するパッキンに当接し、散水板80の内部空間と外周通水路92とを遮断する。散水板80の内部空間と外周通水路92とは連通しない。この場合、第1ホース44aから給水される水は、外周通水路92には流れ込まず、複数の散水孔のみから吐水される。つまり、シャワー吐水される。
【0037】
水膜発生体100は、両端が開口し、側面部100dを水が通過可能な筒状の部材である。ここでの「筒状」とは、全体としての概略形状が筒であることを意味する。例えば、水膜発生体100は、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。ここでの「円筒状」の「円」とは、真円に限らず、楕円であってもよいし、多少の歪みを含む円であってもよい。
【0038】
水膜発生体100は、第2筒部66の外周面(すなわち環状通水路60の内周壁)66aを環囲するように環状通水路60内に設けられる。水膜発生体100は、本実施の形態では、散水部継手74および散水板80に環囲される。詳しくは、水膜発生体100の上流端は、散水部継手74の上流端よりも下流側に位置し、水膜発生体100の下流端は、散水部継手74の下流端よりも下流側に位置している。つまり、水膜発生体100は、散水部継手74から下流側に突出し、その突出した部分(以下、「下流側突出部100e」という)は散水板80の環状壁部88に環囲される。
【0039】
水膜発生体100は、実質的に展開可能な筒状体であってもよい。つまり、水膜発生体100は、矩形状のシートを筒状に巻いただけの筒状体であって、筒状が維持されるように固着されていない筒状体であってもよい。この場合、第2筒部66に水膜発生体100を巻き付ければよいため、水膜発生体100の組み付けが容易である
【0040】
水膜発生体100は、実質的に展開不可能な筒状体であってもよい。つまり、水膜発生体100は、矩形状のシートを筒状に巻いた筒状体であって、筒状が維持されるように(すなわち展開されないように)溶接や接着で固着された筒状体であってもよい。この場合、第2筒部66の下流端側から水膜発生体100を嵌め込めばよい。ここで、巻いただけの水膜発生体100では巻きが緩くなって環状張出部66c(後述)から脱落するおそれがある。これに対し、水膜発生体100が展開不可能な筒状体であれば、環状張出部66cからの脱落が抑止される。
【0041】
第2筒部66の外周面66aには、外側(すなわち環状通水路60)に向けて突出する複数のリブ66bおよび環状張出部66cが形成されている。なお、リブ66bの数は1つであってもよい。複数のリブ66bは、第2筒部66内の環状通水路60の延在方向に沿って延びる長尺な突起部である。複数のリブ66bは、例えば周方向に等間隔に形成される。複数のリブ66bは散水部継手74に環囲される。環状張出部66cは、複数のリブ66bよりも下流側に形成される環状の張出部である。環状張出部66cは、本実施の形態では、散水部76の内部空間に張り出し、散水板80の環状壁部88に環囲されている。水膜発生体100は、環状張出部66cに支持されるとともに、複数のリブ66bに外嵌する。水膜発生体100の下流端の開口100aは、環状張出部66cによって閉塞される。複数のリブ66bは、下流側ほど張出量S(
図7)が小さくなるように形成されてもよい。別の言い方をすると、複数のリブ66bは、下流側ほど外接円の径が小さくなるように形成されてもよい。この場合、水膜発生体100が実質的に展開不可能な筒状体である場合において、水膜発生体100を比較的容易に複数のリブ66bに嵌め込むことができる。
【0042】
複数のリブ66bは、水膜発生体100の内周面100bの上流端と第2筒部66の外周面66aとの距離Duinnerが、水膜発生体100の外周面100cの上端と散水部継手74の内周面(すなわち環状通水路60の外周壁)74aとの距離Duouterよりも長くなるように形成される。つまり、水膜発生体100の上端では、水膜発生体100の内周側の隙間が、水膜発生体100の外周側の隙間よりも広くなっている。この場合、上流からの水は、基本的に、より流れ込みやすい水膜発生体100の内周側に流れ込む。
【0043】
水膜発生体100の下流側突出部100eの内周面と第2筒部66の外周面との距離Dlinnerは、下流側突出部の外周面と散水板80の環状壁部88の内周面との距離Dlouterよりも短くなっている。つまり、水膜発生体100の下端部すなわち下流側突出部では、水膜発生体100の外周側の隙間が、水膜発生体100の内周側の隙間よりも広くなっている。
【0044】
水膜発生体100の下流端の開口100aは、上述したように環状張出部66cによって閉塞されているため、水膜発生体100の内周面側に流れ込んだ水は、水膜発生体100の側面部100dを通って水膜発生体100の外周側に流れ出て、散水板80の内部空間に流れ込み、散水孔86aあるいは外周通水路92から吐水される。
【0045】
止水時すなわち第1給水ライン18からの給水が停止された場合において、水膜発生体100の側面部100dには水膜が発生する。水膜発生体100は典型的には網状体(例えば金網)や多孔体であり、この場合、給水の停止により水膜発生体100にかかる流動圧が低下すると、表面張力によって編目や孔に水膜が張る。水膜は、水膜発生体100の側面部100dを通って水膜発生体100の外周側ひいては散水部76に流れようとする水に対して抵抗となり、環状通水路60内の残水がいつまでも垂れ落ちる水垂れを抑止する。
【0046】
本実施の形態によれば、水膜発生体100は筒状であり、環状通水路60に沿って水膜発生体100を長くすることで、水膜発生体100の側面部100dに張られる水膜の総面積を、水膜発生体100をディスク状に形成する場合よりも大きくできる。水膜の総面積が大きければ、水切れ性が向上する。つまり、吐水部28を太くすることなく、言い換えるとデザイン性を低下させることなく、水切れ性を向上できる。また、施工直後は配管のゴミが流れてくることがあるが、水膜発生体100が小さいと全体が詰まって吐水量が減少するおそれがあるが、本実施の形態によれば、環状通水路60に沿って水膜発生体100を高くして側面部100dを大きくできるため、そのような問題が生じるのを避けられる。
【0047】
本実施の形態によれば、水膜発生体100の下流端は、吐水部28において最も下流端側に位置する散水部76内に位置する。すなわち、水膜発生体100は、比較的下流端側に位置する。ここで、止水時において、水膜発生体100よりも下流側に位置する環状通水路60内の水は、環状通水路60内に留まらずに吐水部28から垂れ流れるすなわち排水される。これに対し、本実施の形態によれば、水膜発生体100は比較的下流端側に位置するため、そうではない場合と比べて、止水時において環状通水路60内に留まらずに吐水部28から垂れ流れる水を少なくできる。つまり、水切れ性をさらに向上できる。なお、水膜発生体100が筒状であることにより、吐水部28の下流端側を太くすることなく言い換えるとデザイン性を低下させることなく水膜発生体100を比較的下流端側に位置させることができる。
【0048】
本実施の形態によれば、水膜発生体100は、第2筒部66の外周面66aに形成されたリブ66bに外嵌する。これにより、環状通水路60の延在方向に垂直な方向について水膜発生体100を位置決めできる。本実施の形態によれば、リブ66bは、下流側ほど突出量が小さくなるように形成される。したがって、水膜発生体100が実質的に展開不可能な筒状体である場合において、水膜発生体100を比較的容易に複数のリブ66bに嵌め込むことができる。
【0049】
本実施の形態によれば、環状張出部66cは、水膜発生体100の下流端の開口を閉塞するとともに当該下流端を支持する。これにより、水膜発生体100の内周側に流れ込んだ水が側面部100dを通って外周側に導かれるとともに、流れ込む水の力で移動しないように水膜発生体100を保持できる。また、環状通水路60の延在方向について水膜発生体100を位置決めできる。
【0050】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について説明する。
【0051】
(変形例1)
図7を参照する。本変形例では、実施の形態における環状張出部66cに代えて、散水部継手74の内周面74aから内側に張り出す環状張出部74bが設けられてもよい。水膜発生体100は、この環状張出部74bに支持される。複数のリブ66bは、距離Du
outerが距離Du
innerよりも長くなるように、つまり水膜発生体100の上端では水膜発生体100の外周側の隙間が内周側の隙間よりも広くなるように形成されてもよい。この場合、上流からの水は、基本的に、水膜発生体100の外周側に流れ込み、水膜発生体100の側面部100dを通って水膜発生体100の内周側に流れ込み、散水部76(
図7では不図示)に流れ込んで吐水される。本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
(変形例2)水膜発生体100が配置される環状通水路60内の位置は特に限定されない。例えば、水膜発生体100は、第2ホース継手64を環囲するように配置されてもよい。
【0053】
(変形例3)実施の形態とは異なり、中央通水路56に第1給水ライン18から湯水混合水が給水され、環状通水路60に第2給水ライン20から改質水が供給されてもよい。
【0054】
実施の形態とは異なり、吐水装置12は第1給水ライン18のみを備え、中央通水路56および環状通水路60の両方に、第1給水ライン18から湯水混合水が給水されてもよい。あるいは、吐水装置12は第2給水ライン20のみを備え、中央通水路56および環状通水路60の両方に、第2給水ライン20から改質水が給水されてもよい。これらの場合、中央通水路56はストレート吐水のための通水路であり、環状通水路60はシャワー吐水および整流吐水の少なくとも一方のための通水路であってもよい。つまり、互いに異なる種類の水を吐水するために中央通水路56および環状通水路60の2つの通水路が設けられるのではなく、互いに異なる種類の吐水(シャワー吐水、整流吐水など)を実現するために中央通水路56および環状通水路60の2つの通水路が設けられてもよい。
【0055】
実施の形態とは異なり、吐水部28は、中央通水路56を備えず、環状通水路60のみを備えてもよい。
【0056】
つまり、本実施の技術思想は、環状通水路60に給水される水の種類、環状通水路60の吐水の種類(シャワー吐水、整流吐水など)、中央通水路56の有無によらず、吐水部が環状通水路を有する種々の吐水装置に適用できる。
【0057】
(変形例4)
第2給水ライン20は、改質カートリッジ52の下流側に冷水タンクまたは温水タンクを備え、温度を変更(すなわち冷却または加熱)した改質水を吐水部に供給してもよい。
【0058】
(変形例5)吐水装置12は、ポンプ等により添加液源から供給される添加液を給水流路46を通流する改質水に添加してもよい。この添加液は、例えば、希釈用飲料原液、食品添加物濃縮液、調味液等の飲用に用いられる。この他にも、添加液は、石けん水、化粧水、ボディオイル等の人体に触れる用途で用いられてもよい。この人体に触れる用途には、前述の飲用に用いられる希釈用飲料原液等が含まれる。
【0059】
以上の実施の形態および変形例は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施の形態および変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施の形態および変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施の形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が当然に許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0060】
(付記)本明細書には以下の技術が開示される。
【0061】
(項目1)
吐水口と前記吐水口に連通する環状通水路とを有する吐水部と、
前記吐水部に給水する流路に設けられ、開閉により前記吐水部への給水を制御する開閉弁と、
前記環状通水路の内周壁を環囲するように前記環状通水路内に設けられる筒状の水膜発生体と、
を備え、
前記開閉弁が開状態において、前記環状通水路における前記水膜発生体の内周側および外周側の一方に流れ込んだ水は前記水膜発生体の側面部を通って前記内周側および前記外周側の他方に流れて前記吐水口から吐水される吐水装置。
【0062】
(項目2)
前記水膜発生体は、網状体または多孔体である項目1に記載の吐水装置。
【0063】
(項目3)
前記吐水部は、前記環状通水路の前記一方の周壁から張り出す環状張出部を有し、
前記環状張出部は、前記水膜発生体の下流端と前記周壁との開口を閉塞するとともに当該下流端を支持する項目1または2に記載の吐水装置。
【0064】
(項目4)
前記一方は内周側で、前記他方は外周側であり、
前記吐水部は、前記環状通水路の内周壁から突出する、前記環状通水路に沿って延びる複数のリブを備え、
前記水膜発生体は、前記複数のリブに外嵌する項目1から3のいずれかに記載の吐水装置。
【0065】
(項目5)
前記複数のリブの張出量は下流側ほど小さい項目4に記載の吐水装置。
【0066】
(項目6)
前記吐水部は、前記吐水口とは別の吐水口と前記別の吐水口に連通する中央通水路とを有し、
前記環状通水路は、前記中央通水路を環囲するとともに前記中央通水路に沿って延在する項目1から5のいずれかに記載の吐水装置。
【0067】
(項目7)
前記環状通水路および前記中央通水路には、互いに異なる種類の水が給水される項目6に記載の吐水装置。
【符号の説明】
【0068】
12 吐水装置、 18 第1給水ライン、 28 吐水部、 44 混合水流路、 44a 第1ホース、 環状通水路60、 第1吐水口60a、 66 第2筒部、 66a 外周面、 66c 環状張出部、 74 散水部継手、 74a 内周面、 100 水膜発生体、 100a 開口、 100d 側面部。