(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094697
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アスファルト混合物及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/22 20060101AFI20240703BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20240703BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240703BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20240703BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240703BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240703BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E01C7/22
C08L95/00
C08K3/013
C08K5/06
C08K5/10
C08K5/09
C08K3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211406
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】菅原 紀明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健作
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AG04
2D051AG09
2D051AH02
2D051AH03
4J002AG001
4J002CH022
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE207
4J002ED037
4J002EF017
4J002EH017
4J002EV237
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD202
4J002FD207
4J002FD322
4J002FD327
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、アスファルト混合物を長距離で広域運搬しても施工が可能なアスファルト混合物及びその施工方法を提供する。
【解決手段】 本発明のアスファルト混合物は、フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を含む、アスファルト混合物であって、前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である。本発明のアスファルト混合物の施工方法は、フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を加熱及び混合してアスファルト混合物を得ること、前記アスファルト混合物が150℃以上の状態で運搬車両に積載すること、前記アスファルト混合物を前記運搬車両で2.2時間以上かけて施工場所に運搬すること、及び前記施工場所で、前記アスファルト混合物を施工すること、を含み、前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を含む、アスファルト混合物であって、前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、アスファルト混合物。
【請求項2】
前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物である、請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項3】
前記グリコールエーテル化合物が、以下の式(I)で表される化合物である、請求項2に記載のアスファルト混合物:
R1-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)。
【請求項4】
前記骨材が、再生骨材を含む、請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項5】
フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を加熱及び混合してアスファルト混合物を得ること、
前記アスファルト混合物が150℃以上の状態で運搬車両に積載すること、
前記アスファルト混合物を前記運搬車両で運搬時間2.2時間以上かけて施工場所に運搬すること、及び
前記施工場所で、前記アスファルト混合物を施工すること、
を含み、
前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、
アスファルト混合物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装の表層等に用いられるアスファルト混合物は、工場において骨材とアスファルトとを加熱及び混合して製造され、約160℃等の高温で出荷される。出荷されたアスファルト混合物は、ダンプトラック等に積載されて施工現場へ運搬される最中に、温度が低下する。所定の温度を下回ったアスファルト混合物は、粘性が低下することにより作業性が低下することから、舗装の十分な品質を確保することが困難となる。
【0003】
そこで、アスファルト混合物の温度の低下を防ぐために、ダンプトラックに積載したアスファルト混合物の上面を保温シートで被覆することが一般的である。
【0004】
しかしながら、それでもアスファルト混合物の温度は輸送中に低下することから、アスファルト混合物の輸送には制限時間があり、工場から出荷されて1時間半程度で施工現場まで輸送する必要がある。
【0005】
一方、アスファルト混合物の温度の低下を防ぐための検討が行われている。代表的な検討として、例えば、特許文献1では、ダンプトラックの排気ガスを荷台床面に設けた煙道に導入することで保温効果を高める発明を開示している。特許文献2では、電熱ヒータをダンプトラックの荷台に設置することで保温効果を高める発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-16631号公報
【特許文献2】特開2006-51887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、公共工事の減少からアスファルト混合物の需要が低下しており、全国に点在しているアスファルト混合物の工場の数が将来的に減少していくことが予想される。
【0008】
そこで、本発明は、アスファルト混合物を長時間で広域運搬しても施工が可能なアスファルト混合物及びその施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アスファルト混合物の組成について研究を行う中で、以下の態様を有するアスファルト混合物であれば、長距離で広域運搬をしても施工が可能であり、それだけではなく疲労耐久性にも優れたアルファルト舗装体を提供できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する:
《態様1》
フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を含む、アスファルト混合物であって、前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、アスファルト混合物。
《態様2》
前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物である、態様1に記載のアスファルト混合物。
《態様3》
前記グリコールエーテル化合物が、以下の式(I)で表される化合物である、態様2に記載のアスファルト混合物:
R1-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)。
《態様4》
前記骨材が、再生骨材を含む、態様1に記載のアスファルト混合物。
《態様5》
フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を加熱及び混合してアスファルト混合物を得ること、
前記アスファルト混合物が150℃以上の状態で運搬車両に積載すること、
前記アスファルト混合物を前記運搬車両で2.2時間以上かけて施工場所に運搬すること、及び
前記施工場所で、前記アスファルト混合物を施工すること、
を含み、
前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、
アスファルト混合物の施工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアスファルト混合物によれば、従来技術のアスファルト混合物と同様の輸送方法で輸送した場合に、比較的長距離で広域運搬が可能となり、また疲労耐久性にも優れたアスファルト舗装体を提供できる。また、本発明のアスファルト混合物の施工方法によれば、従来技術の施工方法と比較して、工場から遠い施工現場でも施工性が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】アスファルト混合物の製造装置の例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2(a)は、比較例2及び実施例2のアスファルト混合物の温度と締固め度との関係性を示しており、
図2(b)は、比較例2及び実施例2のアスファルト混合物を保温状態で維持した場合の、経過時間と温度との関係性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《アスファルト混合物》
本発明のアスファルト混合物は、フォームドアスファルト、骨材及び発泡補助剤を含み、前記発泡補助剤が、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である。
【0014】
図1は、アスファルト混合物の製造方法に好適な装置の一例を示す概略構成図である。この装置(以下、本装置ともいう。)は、加熱したアスファルトに、水、及び発泡補助剤を添加し、フォームドアスファルト(発泡したアスファルト)を得て、得られたフォームドアスファルトと、骨材とを混合してアスファルト混合物を製造するための製造装置である。
【0015】
本装置は、アスファルト計量槽10、水と発泡補助剤とを混合する混合部20、アスファルトを発泡させる発泡部30、フォームドアスファルトと骨材を混合するミキサー40を備える。
【0016】
アスファルト計量槽10には加熱したアスファルトが供給される。アスファルト用ポンプ13は、アスファルト計量槽10内のアスファルトを、アスファルト供給管11を介して発泡部30に連続的に供給する。流量計14はアスファルト供給管11を流れるアスファルトの流量を計測する。
【0017】
混合部20には、水と発泡補助剤が所定の割合で供給される。添加用ポンプ23は、水と発泡補助剤を含む添加液を、添加用供給管21を介して発泡部30に連続的に供給する。流量計24は添加用供給管21を流れる添加液の流量を計測する。
【0018】
発泡部30では、水と発泡補助剤を含む添加液が、加熱したアスファルトと混合され、水の気化膨張により発泡し、発泡補助剤を含むフォームドアスファルトが生成される。
生成したフォームドアスファルトは、噴霧ノズル35を介して、ミキサー40内に充填された骨材に噴霧される。ミキサー40内でフォームドアスファルトと骨材が混合され、アスファルト混合物が得られる。ミキサー40での混合温度は110~185℃が好ましい。
【0019】
〈フォームドアスファルト〉
フォームドアスファルトは、上記のように、加熱したアスファルトに水を混合し、水を気化膨張させることで製造される。フォームドアスファルトによるアスファルト混合物は、一般的に、比較的低温でも施工が可能であるが、本発明のアスファルト混合物は、特定の発泡補助剤を含むことで、さらなる低温施工が可能となり、それにより広域運搬が可能となった。
【0020】
アスファルトとしては、例えばストレートアスファルト、ポリマー改質アスファルト、明色(脱色)アスファルトが挙げられる。
【0021】
加熱したアスファルトに添加する水の添加量は、アスファルトの100質量部に対して、発泡補助剤と水の合計量が1.0~10.0質量部であることが好ましく、2.0~4,0質量部であることがより好ましい。
【0022】
〈骨材〉
本発明において用いられる骨材としては、特に限定されず、本分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0023】
骨材として、粗骨材及び/又は細骨材を用いることができる。骨材中の粒径2.36mm以上の粗骨材及び粒径2.36mm未満の細骨材が、粗骨材同士のかみ合わせ、及び流動性の観点から、粒径、配合率等を選択して用いられることができる。
【0024】
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の7号砕石、粒径範囲4.75mm以上13.2mm未満の6号砕石、粒径範囲13.2mm以上19mm未満の5号砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の4号砕石が挙げられる。この中でも特に、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の粗骨材を用いることが好ましい。
【0025】
細骨材としては、例えば、2.36mm未満の細骨材を挙げることができ、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂等が挙げられる。
【0026】
上記の粗骨材及び細骨材の粒径は、JIS A5001-2008に規定される値をいう。
【0027】
これらの骨材の種類、配合率等を選択して、得られるアスファルト混合物が、粗粒度アスファルト混合物、密粒度アスファルト混合物、密粒度ギャップアスファルト混合物)、細粒度アスファルト混合物、細粒度ギャップアスファルト混合物、開粒度アスファルト混合物等となるようにすることができる。
【0028】
例えば、骨材として、再生骨材又はアスファルトコンクリート再生骨材を用いてもよい。再生骨材は、アスファルト舗装の表層と基層に施工されたアスファルト混合物の廃材を破砕して得られる。
【0029】
これらの再生骨材は、骨材とフィラーの合計質量の5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってもよい。これらの再生骨材は、実質的に使用しなくてもよく、例えばアスファルト混合物中で20質量%未満、10質量%以下、5質量%以下、又は全く使用しなくてもよい。
【0030】
一般的に、フォームドアスファルトを含むアスファルト混合物において、再生骨材の配合率が高いと締固め度が低下しやすいが、本発明を適用することで、かかる締固め度の低下を抑制することができる。
【0031】
再生骨材に含まれるアスファルト(以下、旧アスファルトという。)の含有量は、再生骨材の全質量に対して2.5質量%以上であることが好ましい。旧アスファルトの針入度(単位:1/10mm)は1以上100未満であることが好ましい。旧アスファルトの軟化点は10~100℃であることが好ましい。
【0032】
ここで、旧アスファルトの含有量は、舗装調査・試験法便覧G028「アスファルト 抽出試験方法」で測定される含有量であり、旧アスファルトの針入度は、舗装調査・試験法便覧 A041「針入度試験方法」で測定される針入度である。また、旧アスファルトの軟化点はA042「軟化点試験」で測定される軟化温度である。
【0033】
本発明のアスファルト混合物中の骨材の含有量は、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0034】
〈発泡補助剤〉
発泡補助剤は、グリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である。
【0035】
グリコールエーテル化合物としては、下記式(I)で表されるグリコールエーテル化合物(以下、化合物(I)ともいう。)を挙げることができる:
R1-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)。
【0036】
式(I)において、R1は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数2~6のアルキル基である。
AOはオキシエチレン基であることが好ましい。
nは2~20であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
一般式(I)で表されるグリコールエーテル化合物としては、(ポリ)エチレングリコールメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールエチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールプロピルエーテル、(ポリ)エチレングリコールブチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールヘキシルエーテル、(ポリ)エチレングリコールオクチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
発泡補助剤として、グリコールエーテル化合物を用いる場合、アスファルト100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、又は1.5質量部以上であってもよく、10質量部以下、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、又は1.0質量部以下であってもよい。グリコールエーテル化合物は、アスファルト100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、0.3質量部以上7.0質量部以下、又は0.5質量部以上5.0質量部以下であってもよい。
【0038】
脂肪酸化合物としては、下記式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)ともいう。)が好ましい:
R11-COO-(AO)m-R12・・・・(II)
(式中、R11は置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、R12は水素原子又はメチル基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、mはオキシアルキレン基の付加モル数を表し0又は1~30の数である。)。
【0039】
式(II)において、R11の炭素数は6~24が好ましく、8~20がより好ましく、10~18がさらに好ましく、12~16が特に好ましい。
式(II)において、mは0又は1~25が好ましく、0又は1~20がより好ましく、0又は1~15がさらに好ましい。
式(II)において、AOはオキシエチレン基が好ましい。
【0040】
化合物(II)としては、脂肪酸:R11COOH、脂肪酸メチルエステル:R11COOCH3、脂肪酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル:R11COO(CH2CH2O)mCH3、(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステル:R11COO(CH2CH2OmH等が例示できる。
【0041】
具体的な例としては、パルミチン酸、パルミチン酸メチルエステル、パルミチン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンパルミチン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、ステアリン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンステアリン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、オレイン酸、オレイン酸メチルエステル、オレイン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンオレイン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノール酸、リノール酸メチルエステル、リノール酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノール酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノレン酸、リノレン酸メチルエステル、リノレン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノレン酸エステル(平均付加モル数:1~15)等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤化合物としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活剤が例示できる。非イオン性界面活剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルまたはポリオキシアルキレンアルキレートが好ましい。
【0043】
無機化合物としては、炭酸水素ナトリウム、フルオロスルホン酸、硫化ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸、ヨウ化アンモニウム、水酸化マグネシウム、フッ化カリウム、シアン酸カリウム、硫酸亜鉛、酸化カルシウム、過マンガン酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、臭化水素酸、臭化アルミニウム、炭化ケイ素が例示できる。
【0044】
発泡補助剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡補助剤の添加量は、アスファルトの100質量部に対して、0.1~10.0質量部が好ましく、0.5~1.0質量部がより好ましい。発泡補助剤の添加量は、アスファルト100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、又は1.5質量部以上であってもよく、10質量部以下、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、又は1.0質量部以下であってもよい。
【0045】
〈その他〉
アスファルト混合物は、本分野で通常用いられる上記の以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、アスファルト混合物は、フィラーを含んでいてもよく、フォームドアスファルトを用いる場合には、発泡補助剤を用いてもよい。
【0046】
例えば、フィラーとしては、石粉、消石灰、セメント、回収ダスト、フライアッシュなどが挙げられる。
【0047】
骨材とフィラーの合計100質量部に対して、フィラーの配合量は、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、又は2.0質量部以上であってもよく、10.0質量部、7.0質量部以下、5.0質量部以下、又は3.0質量部以下であることができる。このフィラーの配合量は、例えば0.1質量部以上10.0質量部以下、又は1.0質量部以上7.0質量部以下とすることができる。
【0048】
骨材が再生骨材を含む場合、再生用添加剤を用いることができる。再生用添加剤は、旧アスファルトの柔軟性等の性状を回復させる効果を有する添加剤である。例えば、石油潤滑油系の再生用添加剤が挙げられる。再生用添加剤の市販品の例としては、RDEX(ENEOS社製品名)、RJ-1(三徳アスリード社製品名)、RJ-T(竹中産業社製品名)等が挙げられる。
【0049】
再生用添加剤の添加量は、アスファルト混合物の全質量に対して、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上であってもよく、3質量%以下、1質量%以下、0.50質量%以下、0.30質量%以下、0.20質量%以下、0.15質量%以下、又は0.10質量%以下であってもよい。例えば、この含有量は、0.001質量%以上3質量%以下、又は0.01質量%以上1.0質量%以下である。
【0050】
《アスファルト混合物の製造方法》
アスファルト混合物の製造方法は、上記のようなアスファルト、骨材及び脂肪酸化合物を加熱して混合することを含み、好ましくは骨材を乾燥させること、及び骨材とアスファルトと脂肪酸化合物とを加熱して混合することを含む。ここで、製造されるアスファルト混合物は、上記のようなアスファルト混合物であることができ、本製造方法の各構成については、アスファルト混合物に関する上記の各構成を参照することができる。
【0051】
骨材を乾燥させる工程は、本分野で通常用いられる方法を用いることができ、混合工程の前に、骨材をドライヤで乾燥する工程を含むことができる。
【0052】
このようにして得られたアスファルト混合物は、脂肪酸化合物を含むこと以外は同じアスファルト混合物と比較して、加熱後の温度低下が小さく、貫入抵抗値も低くなるため、施工現場において施工性が非常に良好になる。
【0053】
《アスファルト混合物の施工方法》
本発明のアスファルト混合物の施工方法は、アスファルト、骨材及び脂肪酸化合物を加熱及び混合してアスファルト混合物を得ること、前記アスファルト混合物が150℃以上の状態で運搬車両に積載すること、前記アスファルト混合物を前記運搬車両で2.2時間以上かけて施工場所に運搬すること、及び前記施工場所で、前記アスファルト混合物を施工することを含む。
【0054】
アスファルト混合物を得る工程は、上記のアスファルト混合物の製造方法を参照することができる。アスファルト混合物を得た後には、アスファルト混合物を施工現場まで、高温の状態を維持したままで輸送する。具体的には、アスファルト混合物が150℃以上の状態で運搬車両に積載する。この場合には、保温シート等の周知の保温手段によってアスファルト混合物を保温することが好ましい。
【0055】
この施工方法においては、アスファルト混合物を運搬車両に積載する際の温度は、140℃以上、150℃以上、160℃以上、165℃以上、又は170以上であってもよく、180℃以下、175℃以下、170℃以下、165℃以下、又は160℃以下で行うことができ、例えば、140℃以上180℃以下、又は150℃以上170℃以下とすることができる。
【0056】
この施工方法においては、アスファルト混合物の輸送は、1時間以上、1.5時間以上、2時間以上、2.2時間以上、2.5時間以上、又は3時間以上で行うことができ、4時間以内、3.5時間以内、3時間以内、又は2.5時間以内で行うことができ、例えば、2.5時間以上4時間以内に施工現場に運搬して、施工することができる。運搬及び施工についても、本分野で通常用いられる方法を用いることができる。
【実施例0057】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」である。
【0058】
《製造》
室温下で、160℃のアスファルト(ストレートアスファルト80/100)100質量部に対して、1.5質量部の水及び0.5質量部のグリコールエーテル化合物(ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、日本乳化剤工業株式会社製「ワークファインW」)添加して、実施例1のためのフォームドアスファルトを得た。また、実施例2のためのフォームドアスファルトを、ポリマー改質アスファルトII型(ニチレキ株式会社製、ポリファルト)を用いて、同様に製造した。
【0059】
以下表1の条件で、再生密粒度アスファルト(As)混合物(13)及び改質密粒度アスファルト混合物(20)に関して、上記のフォームドアスファルトを使った実施例1及び2のアスファルト混合物と、通常のアスファルトを用いた比較例1及び2のアスファルト混合物を製造した。
【0060】
【0061】
《評価》
上記のように製造した比較例1及び実施例1のアスファルト混合物については、160℃から保温しながら4時間経過させたところ、1時間毎に、148℃、141℃、133℃、125℃と温度が低下し、その間、以下の試験を行った。
【0062】
また、比較例2及び実施例2のアスファルト混合物については、175℃から保温しながら4時間経過させたところ、1時間毎に、165℃、158℃、150℃、142℃と温度が低下し、その間、以下の試験を行った。
【0063】
〈マーシャル密度試験〉
各温度における密度をマーシャル密度試験によって求めて、それにより基準密度に対する、各例の密度を百分率で表した締固め度(単位:%)を求めた。
【0064】
マーシャル密度試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB001(マーシャル安定度試験方法)に記載の方法によって供試体を製造した後、B008-1(「密粒度アスファルト混合物等の密度試験方法」)に記載の方法によって測定した。マーシャル密度試験は、製品袋から開封直後からの経時変化について観察した。
【0065】
具体的には、まずモールドの高さ(A)を測る。次に、空のモールド(B)とろ紙2枚(C)の質量を測り、所定の質量900グラムの合材をモールド内に入れて、片面30回付き固める。モールド、ろ紙、及び資料(D)の重量を測り、モールドの縁から合材面までの下がり(E)を測る。ここでは4箇測定して、平均下がりを求めた。次に、突固め後の試料の厚さ(t)を測る。ここで、厚さ(t)=(A)-(E)-0.5とする。そして、厚さ(t)に、マーシャルモールドの底面積(81・03mm2)を乗じて体積(V)を求める。その後、試料の質量(m)を、(m)=(D)-(B)-(C)によって求める。最後に、密度(ρ)を、(ρ)=(m)/(V)によって計算する。
【0066】
〈ホイールトラッキング試験〉
ホイールトラッキング試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB003(ホイールトラッキング試験方法)に記載の方法によって測定をした。
【0067】
〈疲労抵抗性試験(繰り返し曲げ試験)〉
疲労抵抗性試験(繰り返し曲げ試験)を、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB018T(アスファルト混合物の曲げ疲労試験)に記載の方法によって行った。具体的な条件としては、試験温度5℃、載荷周波数5Hz、ひずみ量500μm、スパン長300mmであった。
【0068】
〈疲労抵抗性試験(繰り返し間接引張り試験)〉
疲労抵抗性試験(繰り返し間接引張り試験)を、ノッティンガムアスファルトテスターを使用して行った。具体的な条件としては、試験温度20℃、荷重条件300kPa、400kPa、及び500kPa、サンプル寸法直径100mmであった。
【0069】
《結果》
〈マーシャル密度試験〉
マーシャル密度試験及び締固め度の結果を、以下の表2及び表3に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
マーシャル密度試験の結果から、改質密粒度アスファルト混合物が何時間程度の長距離運搬に耐えられるかを推定した。具体的には、
図2(a)に示す突固め温度と締固め度の関係から、締固め度が100%となる突固め温度を求めて、
図2(b)のように、その温度までアルファルと混合物の温度が低下するまでの時間を推定した。
【0073】
これにより、実施例2の改質密粒度アスファルト混合物においては、従来技術では2時間以内であった運搬時間を、2.7時間程度まで伸ばすことができることがわかった。
【0074】
実施例1の再生密粒度アスファルト混合物においては、125℃まで温度が低下しても締固め度が100%を超えており、運搬時間を4.0時間以上長くできることが示唆された。
【0075】
〈ホイールトラッキング試験〉
ホイールトラッキング試験の結果を、以下の表4に示す。
【0076】
【0077】
再生密粒度アスファルト混合物(13)の安定度は、従来技術の比較例1及び実施例1で概ね、同程度であった。改質密粒度アスファルト混合物(20)についても、従来技術の比較例2及び実施例2で概ね、同程度であり、動的安定度について実施例のアスファルト混合物が悪影響しないことがわかった。
【0078】
〈疲労抵抗性試験(繰り返し曲げ試験)〉
疲労抵抗性試験(繰り返し曲げ試験)の結果を、以下の表5に示す。
【0079】
【0080】
疲労抵抗性試験(繰り返し曲げ試験)については、再生密粒度アスファルト混合物(13)及び改質密粒度アスファルト混合物(20)において、いずれも実施例が比較例よりも、有意に良好な結果となった。
【0081】
〈疲労抵抗性試験(繰り返し間接引張り試験)〉
疲労抵抗性試験(繰り返し間接引張り試験)の結果を、以下の表6に示す。
【0082】
【0083】
疲労抵抗性試験(繰り返し間接引張り試験)についても、再生密粒度アスファルト混合物(13)及び改質密粒度アスファルト混合物(20)において、いずれも実施例が比較例よりも、有意に良好な結果となった。