(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000947
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20231226BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20231226BHJP
G01N 21/77 20060101ALI20231226BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20231226BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01N33/44
G01N27/62 V
G01N27/62 C
G01N21/77 A
G01N30/88 P
G01N31/22 121A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165385
(22)【出願日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】202210702320.6
(32)【優先日】2022-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520360121
【氏名又は名称】グアンジョウ パワー サプライ ビューロー オブ グァンドン パワー グリッド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】黄 嘉盛
(72)【発明者】
【氏名】張 耿斌
(72)【発明者】
【氏名】石 銀霞
(72)【発明者】
【氏名】来 立永
(72)【発明者】
【氏名】汪 霧潔
(72)【発明者】
【氏名】張 飛
(72)【発明者】
【氏名】張 滔
(72)【発明者】
【氏名】冉 倩
【テーマコード(参考)】
2G041
2G042
2G054
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA06
2G041FA07
2G041LA07
2G041LA08
2G042AA01
2G042BA03
2G042BA04
2G042BA07
2G042BD08
2G042DA08
2G042FA11
2G054AA01
2G054CA30
2G054EA06
2G054GB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケーブル緩衝層の欠陥を直接検出することができ、既存の検出方法よりも経済的で簡単である、特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法に係るものであり、S1:高電圧ケーブル緩衝層ガス抽出装置を使用して緩衝層ガスを収集するステップと、S2:ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)によって、収集された緩衝層ガスの組成及び相対濃度を分析するステップと、S3:収集された緩衝層ガス中のアルデヒドガスをフェノール試薬の方法で検出するステップと、S4:ステップS2の分析及びステップS3の検出に基づいて、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断するステップとを含む。本発明は、ケーブル緩衝層の欠陥を直接検出することができ、既存の検出方法よりも経済的で簡単であり、ケーブル欠陥検出の技術分野に属する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法であって、
S1:高電圧ケーブル緩衝層ガス抽出装置を使用して緩衝層ガスを収集するステップと、
S2:ガスクロマトグラフ質量分析法によって、収集された緩衝層ガスの組成及び相対濃度を分析するステップと、
S3:収集された緩衝層ガス中のアルデヒドガスをフェノール試薬の方法で検出するステップと、
S4:ステップS2の分析及びステップS3の検出に基づいて、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断するステップと、を含むことを特徴とする特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項2】
ステップS1において、ガス抽出装置は、順に接続されたガスサンプリング器具、ガスポンプ、ガスバルブ、ガス収集パイプ、及び、ケーブルアルミニウムシースに取り付けられたガス収集モジュールを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項3】
ステップS1において、緩衝層ガスを収集する方法として、
まず、長さLのケーブル外被を除去してケーブルの波形アルミニウムシース部分を露出させ、
それから、ケーブルのアルミニウムシースに面積Sの切り欠きを切り取り、ガス収集モジュールで切り欠きをカバーし、同時にリードシーリング処理を行い、
ガス収集モジュールのガス収集通路の開閉は、バルブによって制御され、ガス収集モジュールの取付中に、バルブは、閉じた状態にあり、
外部ガスバルブとガス収集モジュールをそれぞれガス収集パイプで接続し、ガスバルブ、ガスポンプ及びガスサンプリング器具は、順にパイプによって接続され、
ガス抽出の開始時に、まずガスバルブを開にしてからガス収集モジュールのバルブを開にし、
ガス抽出の終了時に、まずガス収集モジュールのバルブを閉にしてからガスバルブを閉にする、
ことを特徴とする請求項2に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項4】
Lが15cmであり、Sが10cm*8cmである、
ことを特徴とする請求項3に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項5】
ステップS2において、緩衝層ガスの組分は、クロマトグラム及び質量スペクトル検出結果に基づいてスペクトルライブラリを検索してガス状物質の組成を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項6】
緩衝層ガスの相対濃度は、クロマトグラムのピーク面積を用いて計算され、
分析で得られる質量スペクトル結果は、nであり、
k番目のグループの物質の相対含有量η
kを計算する計算式は、
【数1】
(ここで、Aiは、i番目のグループの質量分析結果のクロマトグラフピーク面積を表す)である、
ことを特徴とする請求項5に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項7】
ステップS3において、使用されるフェノール試薬の化学名は、3-メチル-2-ベンゾチアジンケトンヒドラゾン塩酸塩水和物であり、フェノール試薬が緩衝層ガスのアルデヒドガス中のアルデヒド基R-CHOと反応して青緑色の化合物を生成し、色の濃さに基づいて比色定量を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項8】
ステップS4において、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断する具体的な方法として、収集されたガスにおける特性ガスの存在をGC-MS法で判断し、ガスをフェノール試薬でテストしてアルデヒドガスが存在し、
収集されたガスに特性ガスとアルデヒドガスが存在する場合、緩衝層が欠陥状態にあると判断し、逆の場合、緩衝層に欠陥がないと判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項9】
ガス収集モジュールは、アルミニウムシースに接続されてガス流路が設けられた基部と、ガス収集パイプに接続されたガス流路に取り付けられた通気弁とを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【請求項10】
ガス収集器具は、入口と出口にそれぞれバルブが設けられているガスサンプリングバッグ又はガスサンプリングタンクである、
ことを特徴とする請求項2に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル欠陥検出の技術分野に関し、具体的に特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧XLPEケーブル緩衝層の欠陥は、近年我が国で発生した新しいタイプのケーブル欠陥である。緩衝層の欠陥は、更に、外部絶縁体の半導電性シールドの破壊につながり、最終的には本体の故障を引き起こし、ケーブルの安全な動作を危険にさらす。現在、緩衝層欠陥の検出方法としては、主に部分放電検出法とX線撮像法がある。現在の検出方法には、次のような問題が存在する。
(1)緩衝層の欠陥状態を部分放電法で検出する方法について、実際に現場で、ケーブル内部で部分放電が発生しているか否かを診断する上で最も難しいのは、このタイプの放電パターンの不明確ではなく、現場で検出する際に周囲の電力機器からノイズ干渉を極めて受けやすいことである。同時に、ケーブル内部で発生する部分放電信号は、非常に弱く、持続時間が短い。そのため、検出中に放電信号を見逃す可能性があり、部分放電検出による緩衝層アブレーション欠陥の診断が非常に困難になる。
(2)X線撮影検出の方法について、X線露光パラメータ、撮影角度、X線画像処理などの多くの要因の影響を受け、実際のアプリケーションでは緩衝層の欠陥位置を効果的に判断することはできず、しかも、X線から人体へ放射線損害があり、電力システムを大規模に長期間適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術に存在する技術的問題に対して、本発明の目的は、ケーブル緩衝層の欠陥を直接検出することができ、既存の検出方法よりも経済的で簡単である、特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を採用する。
【0005】
特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法であって、
S1:高電圧ケーブル緩衝層ガス抽出装置を使用して緩衝層ガスを収集するステップと、
S2:ガスクロマトグラフ質量分析法によって、収集された緩衝層ガスの組成及び相対濃度を分析するステップと、
S3:収集された緩衝層ガス中のアルデヒドガスをフェノール試薬の方法で検出するステップと、
S4:ステップS2の分析及びステップS3の検出に基づいて、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断するステップと、を含む。
【0006】
好ましくは、ステップS1において、ガス抽出装置は、順に接続されたガスサンプリング器具、ガスポンプ、ガスバルブ、ガス収集パイプ、及び、ケーブルアルミニウムシースに取り付けられたガス収集モジュールを含む。
【0007】
好ましくは、ステップS1において、緩衝層ガスを収集する方法として、まず、長さLのケーブル外被を除去してケーブルの波形アルミニウムシース部分を露出させる。それから、ケーブルのアルミニウムシースに面積Sの切り欠きを切り取り、ガス収集モジュールで切り欠きをカバーし、同時にリードシーリング処理を行う。ガス収集モジュールのガス収集通路の開閉は、バルブによって制御され、ガス収集モジュールの取付中に、バルブは、閉じた状態にある。外部ガスバルブとガス収集モジュールをそれぞれガス収集パイプで接続し、ガスバルブ、ガスポンプ及びガスサンプリング器具は、順にパイプによって接続される。ガス抽出の開始時に、まずガスバルブを開にしてからガス収集モジュールのバルブを開にする。ガス抽出の終了時に、まずガス収集モジュールのバルブを閉にしてからガスバルブを閉にする。
【0008】
好ましくは、Lが15cmであり、Sが10cm*8cmである。
【0009】
好ましくは、ステップS2において、緩衝層ガスの組分は、クロマトグラム及び質量スペクトル検出結果に基づいてスペクトルライブラリを検索してガス状物質の組成を決定する。
【0010】
好ましくは、緩衝層ガスの相対濃度は、クロマトグラムのピーク面積を用いて計算され、分析で得られる質量スペクトル結果は、nであり、k番目のグループの物質の相対含有量η
kを計算する計算式は、
【数1】
(ここで、Aiは、i番目のグループの質量分析結果のクロマトグラフピーク面積を表す)である。
【0011】
好ましくは、ステップS3において、使用されるフェノール試薬の化学名は、3-メチル-2-ベンゾチアジンケトンヒドラゾン塩酸塩水和物であり、フェノール試薬が緩衝層ガスのアルデヒドガス中のアルデヒド基R-CHOと反応して青緑色の化合物を生成し、色の濃さに基づいて比色定量を行う。
【0012】
好ましくは、ステップS4において、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断する具体的な方法として、収集されたガスにおける特性ガスの存在をGC-MS法で判断し、ガスをフェノール試薬でテストしてアルデヒドガスが存在し、収集されたガスに特性ガスとアルデヒドガスが存在する場合、緩衝層が欠陥状態にあると判断し、逆の場合、緩衝層に欠陥がないと判断する。
【0013】
好ましくは、ガス収集モジュールは、アルミニウムシースに接続されてガス流路が設けられた基部と、ガス収集パイプに接続されたガス流路に取り付けられた通気弁とを含む。
【0014】
好ましくは、ガス収集器具は、入口と出口にそれぞれバルブが設けられているガスサンプリングバッグ又はガスサンプリングタンクである。
【発明の効果】
【0015】
全体的に、本発明は、以下の利点を有する。
1.本発明は、ケーブル緩衝層の欠陥を直接検出することができ、既存の検出方法よりも経済的で簡単である。緩衝層のガス組成の変化は、緩衝層の状態の直接的な反映である。特性ガスに基づく緩衝層欠陥状態検出方法は、局部放電検出が直面する干渉問題を軽減することができる。
2.本発明の特性ガスに基づく緩衝層欠陥状態検出手段は、部分放電検出及びX線検出と比較して、サンプリングに便利であり、ガスのテストコストが低く、より経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法のフローチャートである。
【
図2】ガス抽出装置がケーブルからガスを抽出する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態に関連して本発明を更に詳細に説明する。
【0018】
特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法は、S1:高電圧ケーブル緩衝層ガス抽出装置を使用して緩衝層ガスを収集するステップと、S2:ガスクロマトグラフ質量分析法によって、収集された緩衝層ガスの組成及び相対濃度を分析するステップと、S3:収集された緩衝層ガス中のアルデヒドガスをフェノール試薬の方法で検出するステップと、S4:ステップS2の分析及びステップS3の検出に基づいて、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断するステップとを含む。
【0019】
ステップS1において、ガス抽出装置は、順に接続されたガスサンプリング器具、ガスポンプ、ガスバルブ、ガス収集パイプ、及び、ケーブルアルミニウムシースに取り付けられたガス収集モジュールを含む。ガス抽出の開始時に、まずガスバルブを開にしてからガス収集モジュールのバルブを開にする。ガス抽出の終了時に、まずガス収集モジュールのバルブを閉にしてからガスバルブを閉にする。
【0020】
ステップS1において、緩衝層ガスを収集する方法として、以下である。まず、長さLのケーブル外被を除去してケーブルの波形アルミニウムシース部分を露出させる。それから、ケーブルのアルミニウムシースに面積Sの切り欠きを切り取り、ガス収集モジュールで切り欠きをカバーし、同時にリードシーリング処理を行う。ガス収集モジュールのガス収集通路の開閉は、バルブによって制御され、ガス収集モジュールの取付中に、バルブは、閉じた状態にある。外部ガスバルブとガス収集モジュールをそれぞれガス収集パイプで接続し、ガスバルブ、ガスポンプ及びガスサンプリング器具は、順にパイプによって接続される。ガス抽出の開始時に、まずガスバルブを開にしてからガス収集モジュールのバルブを開にする。ガス抽出の終了時に、まずガス収集モジュールのバルブを閉にしてからガスバルブを閉にする。
【0021】
Lは、15cmであり、Sは、10cm*8cmである。
【0022】
ステップS2において、緩衝層ガスの組分は、クロマトグラム及び質量スペクトル検出結果に基づいてスペクトルライブラリを検索してガス状物質の組成を決定する。
【0023】
緩衝層ガスの相対濃度は、クロマトグラムのピーク面積を用いて計算され、分析で得られる質量スペクトル結果は、nであり、k番目のグループの物質の相対含有量η
kを計算する計算式は、
【数2】
(ここで、Aiは、i番目のグループの質量分析結果のクロマトグラフピーク面積を表す)である。
【0024】
緩衝層の材料は、主にポリエステル繊維(PET)成分であり、ポリエステル繊維の熱分解メカニズムにより、検出されたガス成分にフタル酸ジブチル、シンナムアルデヒド、4-エチル安息香酸及びホルムアルデヒドが含まれ、且つ相対含有量が5%以上である場合、この時点で緩衝層が欠陥状態にあると判断できる。
【0025】
ステップS3において、使用されるフェノール試薬の化学名は、3-メチル-2-ベンゾチアジンケトンヒドラゾン塩酸塩水和物であり、フェノール試薬が緩衝層ガスのアルデヒドガス中のアルデヒド基R-CHOと反応して青緑色の化合物を生成し、色の濃さに基づいて比色定量を行う。
【0026】
緩衝層:高電圧交流XLPEケーブルには、熱膨張を吸収し、機械的応力を吸収し、水遮断緩衝として機能する構造層がある。
XLPE:架橋ポリエチレン。
GC-MS:ガスクロマトグラフ質量分析法。
フェノール試薬:
【化1】
。
【0027】
ステップS4において、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断する具体的な方法として、収集されたガスにおける特性ガスの存在をGC-MS法(ガスクロマトグラフ質量分析法)で判断し、ガスをフェノール試薬でテストしてアルデヒドガスが存在し、収集されたガスに特性ガスとアルデヒドガスが存在する場合、緩衝層が欠陥状態にあると判断し、逆の場合、緩衝層に欠陥がないと判断する。GC-MSによって特性ガスが検出されると、欠陥の存在を示す。アルデヒドガスの検出によって、更に欠陥の程度を判断することができる。異なるガスに対するGC-MSの検出能力には限界があるため、アルデヒドと共に更に検証する必要がある。
【0028】
同じガスバッグ内のガスサンプルについて、GC-MSでジブチル酸などの特性ガス成分が検出された場合、アルデヒドガスが必ず存在する。これは、PET材料の熱分解メカニズムから推定できる。ただし、GC-MS(正確には、検出装置のクロマトグラフカラムがアルデヒドの検出をサポートしておらず、アルデヒドを直接検出できるGC-MS装置も見つけることができる)は、アルデヒドガスを直接検出することができない。
【0029】
ガス収集モジュールは、アルミニウムシースに接続されてガス流路が設けられた基部と、ガス収集パイプに接続されたガス流路に取り付けられた通気弁とを含む。本実施例の通気弁は、一方向止め弁構造を採用しており、弁は、抽出工程中のみ外向きに導通する。施工・取付の際は、まずケーブル外被を約15cm除去して波紋アルミニウムシース部分を露出させた後、ケーブルアルミニウムシースに約10cm*8cmの切り欠きを切り取る。ガス収集モジュールの基部が切り欠きに連結してリードシーリング処理を行う。ガス収集モジュールのガス収集通路の開閉は、バルブによって制御され、ガス収集モジュールの取付中に、バルブは、閉じた状態にある。
【0030】
ガス収集器具は、入口と出口にそれぞれバルブが設けられているガスサンプリングバッグ又はガスサンプリングタンクである。
【0031】
上記の実施例は、本発明の好ましい実施形態である。ただし、本発明の実施形態は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨や原理から逸脱することなく為したその他の変更、修正、置換、組み合わせ、単純化は、いずれも同等の置換方法であり、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0032】
(付記)
(付記1)
特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法であって、
S1:高電圧ケーブル緩衝層ガス抽出装置を使用して緩衝層ガスを収集するステップと、
S2:ガスクロマトグラフ質量分析法によって、収集された緩衝層ガスの組成及び相対濃度を分析するステップと、
S3:収集された緩衝層ガス中のアルデヒドガスをフェノール試薬の方法で検出するステップと、
S4:ステップS2の分析及びステップS3の検出に基づいて、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断するステップと、を含むことを特徴とする特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0033】
(付記2)
ステップS1において、ガス抽出装置は、順に接続されたガスサンプリング器具、ガスポンプ、ガスバルブ、ガス収集パイプ、及び、ケーブルアルミニウムシースに取り付けられたガス収集モジュールを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0034】
(付記3)
ステップS1において、緩衝層ガスを収集する方法として、
まず、長さLのケーブル外被を除去してケーブルの波形アルミニウムシース部分を露出させ、
それから、ケーブルのアルミニウムシースに面積Sの切り欠きを切り取り、ガス収集モジュールで切り欠きをカバーし、同時にリードシーリング処理を行い、
ガス収集モジュールのガス収集通路の開閉は、バルブによって制御され、ガス収集モジュールの取付中に、バルブは、閉じた状態にあり、
外部ガスバルブとガス収集モジュールをそれぞれガス収集パイプで接続し、ガスバルブ、ガスポンプ及びガスサンプリング器具は、順にパイプによって接続され、
ガス抽出の開始時に、まずガスバルブを開にしてからガス収集モジュールのバルブを開にし、
ガス抽出の終了時に、まずガス収集モジュールのバルブを閉にしてからガスバルブを閉にする、
ことを特徴とする付記2に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0035】
(付記4)
Lが15cmであり、Sが10cm*8cmである、
ことを特徴とする付記3に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0036】
(付記5)
ステップS2において、緩衝層ガスの組分は、クロマトグラム及び質量スペクトル検出結果に基づいてスペクトルライブラリを検索してガス状物質の組成を決定する、
ことを特徴とする付記1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0037】
(付記6)
緩衝層ガスの相対濃度は、クロマトグラムのピーク面積を用いて計算され、
分析で得られる質量スペクトル結果は、nであり、
k番目のグループの物質の相対含有量η
kを計算する計算式は、
【数3】
(ここで、Aiは、i番目のグループの質量分析結果のクロマトグラフピーク面積を表す)である、
ことを特徴とする付記5に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0038】
(付記7)
ステップS3において、使用されるフェノール試薬の化学名は、3-メチル-2-ベンゾチアジンケトンヒドラゾン塩酸塩水和物であり、フェノール試薬が緩衝層ガスのアルデヒドガス中のアルデヒド基R-CHOと反応して青緑色の化合物を生成し、色の濃さに基づいて比色定量を行う、
ことを特徴とする付記1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0039】
(付記8)
ステップS4において、緩衝層に欠陥が存在するか否かを判断する具体的な方法として、収集されたガスにおける特性ガスの存在をGC-MS法で判断し、ガスをフェノール試薬でテストしてアルデヒドガスが存在し、
収集されたガスに特性ガスとアルデヒドガスが存在する場合、緩衝層が欠陥状態にあると判断し、逆の場合、緩衝層に欠陥がないと判断する、
ことを特徴とする付記1に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0040】
(付記9)
ガス収集モジュールは、アルミニウムシースに接続されてガス流路が設けられた基部と、ガス収集パイプに接続されたガス流路に取り付けられた通気弁とを含む、
ことを特徴とする付記3に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【0041】
(付記10)
ガス収集器具は、入口と出口にそれぞれバルブが設けられているガスサンプリングバッグ又はガスサンプリングタンクである、
ことを特徴とする付記2に記載の特性ガスに基づく高電圧XLPEケーブル緩衝層欠陥検出方法。
【符号の説明】
【0042】
1:ガス収集パイプ、2:ガスバルブ、3:ガスポンプ、4:ガスサンプリングバッグ、5:ガス収集モジュール、6:ケーブルアルミニウムシース。
【外国語明細書】