(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009470
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】情報管理システム、情報取得方法、情報管理方法、および、2次元コードプレート
(51)【国際特許分類】
G06K 19/06 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G06K19/06 037
G06K19/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111016
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鋪田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓也
(57)【要約】
【課題】
施設からの情報のより適切な取得を可能とし、この情報に基づくデータ管理をより適切に行うことに寄与することを目的とする。
【解決手段】
前記の情報管理システムは、情報保持部と、サーバと、を備えているシステムである。ここで、前記の情報保持部には、施設の情報を格納する2次元コードが付与されている。前記の情報保持部は、前記の施設に埋設されている。また、前記のサーバは、前記の施設の情報を管理する。そして、前記の情報保持部は、前記の施設の外部から照射されるテラヘルツ波によって前記の2次元コードの画像データを取得することができるように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の情報を格納する2次元コードが付与され、前記施設に埋設されており、前記施設の外部から照射されるテラヘルツ波により前記2次元コードの画像データを取得可能に配置されている情報保持部と、
前記施設の情報を管理するサーバと、を備える、
ことを特徴とする情報管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報管理システムであって、
前記施設は、
前記情報保持部を格納するホルダを備えており、
前記情報保持部は、
前記ホルダ内の空間に収められた状態で配置される、
ことを特徴とする情報管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報管理システムであって、
前記ホルダは、
前記情報保持部を取り囲む緩衝部材を格納する、
ことを特徴とする情報管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報管理システムであって、
前記施設は、
前記情報保持部が埋設されている位置を示す配置表示部を備える、
ことを特徴とする情報管理システム。
【請求項5】
走査装置を用いて行う情報取得方法であって、
前記走査装置は、
施設の内部にテラヘルツ波を照射し、前記施設の情報を格納する2次元コードを走査することで、前記2次元コードの画像データを取得する、
ことを特徴とする情報取得方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報取得方法であって、
前記2次元コードは、施設を特定する識別情報を格納する、
ことを特徴とする情報取得方法。
【請求項7】
請求項6に記載の情報取得方法を用いた情報管理方法であって、
施設に関する複数の情報を格納しており、ユーザが情報端末を用いて更新可能である情報を含む施設情報を、前記識別情報ごとにサーバが管理する、
ことを特徴とする情報管理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の情報取得方法を用いた情報管理方法であって、
施設に関する複数の情報を格納しており、それぞれの情報にユーザが情報端末を用いて更新可能または更新不可の設定がされた施設情報を、前記識別情報ごとにサーバが管理する、
ことを特徴とする情報管理方法。
【請求項9】
請求項5に記載の情報取得方法を用いた情報管理方法であって、
前記2次元コードの情報に含まれる施設識別番号と、
前記施設の管理者と、
前記施設の施設名と、
前記施設の路線名と、
前記施設の建設年度と、
前記施設の点検実施年度と、
前記施設の損傷の内容と、
前記施設の緊急措置内容と、
前記施設の緊急措置後の恒久的な措置と、
に関する情報を関連付けて、サーバが管理する、
ことを特徴とする情報管理方法。
【請求項10】
テラヘルツ波を反射する2次元コードのコード部を構成する層が基部に形成されている、
ことを特徴とする2次元コードプレート。
【請求項11】
請求項10に記載の2次元コードプレートであって、
前記の2次元コードのコード部を構成する層の防錆処理が施されている、
ことを特徴とする2次元コードプレート。
【請求項12】
請求項10に記載の2次元コードプレートであって、
前記2次元コードが形成されている面と反対側に、テラヘルツ波を吸収するテラヘルツ波吸収層が形成されている、
ことを特徴とする2次元コードプレート。
【請求項13】
請求項10に記載の2次元コードプレートであって、
前記コード部が金属である、
ことを特徴とする2次元コードプレート。
【請求項14】
請求項10に記載の2次元コードプレートであって、
前記基部は、テラヘルツ波を透過するテラヘルツ波透過層として形成されており、セラミックスまたはガラスによって形成されている、
ことを特徴とする2次元コードプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報管理システム、情報取得方法、情報管理方法、および、2次元コードプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等のインフラ構造物のように、定期的な点検が必要とされる施設のデータ管理に関する技術が知られている。特許文献1には、この種の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施設の情報が該施設に付与され、表示された該情報を取得し、該情報を基に施設のデータを取り扱うことが考えられる。しかしながら、年月の経過等により、付与した施設の情報が読めなくなり、施設から情報を取得できなくなる場合があると考えられた。
【0005】
そこで、本発明は、施設からの情報のより適切な取得を可能とし、この情報に基づくデータ管理をより適切に行うことに寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、下記の情報管理システムが提供される。この情報管理システムは、情報保持部と、サーバと、を備える。情報保持部は、施設の情報を格納する2次元コードが付与され、施設に埋設されており、施設の外部から照射されるテラヘルツ波により2次元コードの画像データを取得可能に配置されている。サーバは、施設の情報を管理する。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、下記の情報取得方法が提供される。この情報取得方法は、走査装置を用いて行う方法である。走査装置は、施設の内部にテラヘルツ波を照射し、施設の情報を格納する2次元コードを走査することで、2次元コードの画像データを取得する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、テラヘルツ波を反射する2次元コードのコード部を構成する層が基部に形成されている2次元コードプレートが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記の情報取得方法を用いた情報管理方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、施設からの情報のより適切な取得を可能とし、この情報に基づくデータ管理をより適切に行うことに寄与することができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】情報端末のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図3】テラヘルツ波撮像装置の構成の一例を示す図。
【
図4】2次元コードプレートの構成の一例を示す図。
【
図5】2次元コードプレートの構成の一例を示す図。
【
図8】2次元コードプレートのインフラ構造内での保持方法の一例を示す図。
【
図9】2次元コードプレートのホルダ内での保持方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機等であってもよい。
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0013】
先ず、
図1を参照しながら、情報管理システムの概要を説明する。情報管理システムは、施設5の情報を管理するシステムであり、サーバに構築されるインフラデータベース11と、2次元コードプレート12(情報保持部)と、を備える。このシステムにおいて、インフラデータベース11は、施設5の情報を蓄積して管理し、基地局7及びインターネット8を介して、情報端末21と通信可能とされている。2次元コードプレート12は、コード部を含む2次元コードが付与されたプレートであり、2次元コードには、インフラデータベース11で管理する情報の一部と共通する情報が格納される。なお、インフラデータベース11で管理する施設5の情報の例、2次元コードに格納される情報の例、および、2次元コードプレート12の具体的な構造例については後で詳しく説明する。施設5は、インフラストラクチャー(いわゆる、インフラ)であり、例えば、鉄鋼を用いて形成される内部構造5aと、コンクリートを用いて形成され、内部構造5aを覆う外部構造5bと、を有する。このようなインフラの例としては、橋梁、トンネル、シェッド、大型カルバート、横断歩道、橋門型標識等が挙げられる。
【0014】
2次元コードプレート12は、テラヘルツ波による走査を行うテラヘルツ波撮像装置31(走査装置)で施設5の外部から走査可能となるように、施設5に埋設される。例えば、施設5の点検作業時において、作業者U(ユーザ)がテラヘルツ波撮像装置31を用いて2次元コードの情報を取得する。そして、作業者Uは、取得した情報および情報端末21を利用して、インフラデータベース11上の施設5の情報を取得したり、インフラデータベース11上の施設5の情報を更新することができる。なお、テラヘルツ波は、物体の内部の情報の取得に用いられている。
【0015】
次に、
図2を参照しながら、情報端末のハードウェア構成の一例について説明する。
図2に示すように、情報端末21は、CPU22と、記憶部23と、操作入力部24と、表示部25と、インタフェース26と、通信部27と、を備え、バスを介してそれぞれ接続されている。
【0016】
CPU22(Central Processing Unit)は、所定の処理を行う主体となるプロセッサである。本実施形態では、CPU22がプロセッサとして用いられるが、所定の処理を実行することができればよく、他の種類の半導体デバイスであってもよい。
【0017】
記憶部23は、主記憶部と、補助記憶部と、を用いて構成することができる。主記憶部は、CPU22によるデータ処理時においてデータを一時的に記憶し、例えば、RAM(Random Access Memory)を用いて構成することができる。補助記憶部は、所定の処理を行うプログラム等のデータを格納し、例えば、ROM(Read Only Memory)を用いて構成することができる。
【0018】
操作入力部24は、情報端末21のユーザ(例えば、作業者U)が情報を入力する装置であり、ボタン、キーボード、マウス、タッチパネル等を適宜に用いて構成される。表示部25は、データの提示に用いられ、ディスプレイ等の適宜の出力装置を用いて構成される。
【0019】
インタフェース26は、テラヘルツ波撮像装置31とのデータの入出力に用いられる。本実施形態では、情報端末21は、インタフェース26を介して、テラヘルツ波撮像装置31に無線または有線で接続される。通信部27は、インフラデータベース11とのデータの入出力に用いられる。本実施形態では、情報端末21は、通信部27およびアンテナ28を介して、基地局7やその中継器と通信可能である。これによって、情報端末21は、インターネット8を経由してインフラデータベース11にアクセスできる。
【0020】
なお、情報端末21は、一例として、スマートフォンとすることができる。ただし、情報端末21は他の装置(例えば、パーソナルコンピュータ)とされてもよい。また、情報端末21がインフラデータベース11にアクセスできればよく、例えば、通信の態様に応じてアンテナ28を省略する等の適宜の変更が行われてもよい。
【0021】
本実施形態では、テラヘルツ波撮像装置31により取得された2次元コードの画像データが情報端末21に出力される。そして、情報端末21は、この画像データを用いてデータ処理を行い、2次元コードに格納された情報を取得する。なお、テラヘルツ波撮像装置31は、2次元コードの形状を認識可能な画像データを取得することができればよく、テラヘルツ波撮像装置31が取得する画像データの形式は、特に限定されない。テラヘルツ波撮像装置31は、例えば、距離値に基づく2次元コードの画像データを取得してもよいし、2次元コードにおけるコード部と背景部を2値で示す画像データを取得してもよい。
【0022】
次に、
図3を参照しながら、テラヘルツ波撮像装置の構成の一例について説明する。テラヘルツ波撮像装置31は、発信したテラヘルツ波を物体に照射し、反射波に基づくデータ処理により、物体の内部の状態に関する情報を取得することができる装置である。本実施形態では、施設の外部構造5bを透過したテラヘルツ波が、2次元コードプレート12のコード部で反射する。そして、テラヘルツ波撮像装置31は、コード部で反射して戻る反射波に基づいて、2次元コードの画像データを取得する。
【0023】
図3に示すように、テラヘルツ波撮像装置31は、光が通過する開口部32が形成された筐体33の内部に、内部測定部34と、スキャンミラー39と、CPU51と、記憶部52、操作入力部53、表示部54、インタフェース55と、を備える。
【0024】
内部測定部34は、物体の内側(内部)を測定することに用いられ、テラヘルツ波発信部35と、テラヘルツ波受信部36と、集光レンズ(37a、37b)と、ハーフミラー38と、を備える。
【0025】
テラヘルツ波発信部35は、テラヘルツ波を発信する装置であり、本実施形態では、周波数が0.1~10THzのテラヘルツ波を用いた測定が行われる。
【0026】
テラヘルツ波受信部36は、物体から反射する反射波(テラヘルツ波)を検出する装置である。
【0027】
集光レンズ(37a、37b)は、テラヘルツ波を集光し、より密度の高い光に変換する。集光レンズ37aは、テラヘルツ波発信部35が発信するテラヘルツ波を集光する。集光レンズ37bは、テラヘルツ波受信部36に入射するテラヘルツ波を集光する。
【0028】
ハーフミラー38は、発信するテラヘルツ波と受信するテラヘルツ波を分ける構成である。本実施形態では、ハーフミラー38は、テラヘルツ波発信部35で発信したテラヘルツ波を透過し、テラヘルツ波受信部36で受信するテラヘルツ波を反射する構成である。より詳細には、ハーフミラー38は、テラヘルツ波発信部35から発信され経路Aを進行するテラヘルツ波については、後述するスキャンミラー39に向かう経路Bと、経路Bとは異なる経路Cに分離して進行させるものである。また、ハーフミラー38は、物体で反射されたテラヘルツ波であって、スキャンミラー39を介して受信され、経路Bを経たテラヘルツ波については、経路Aと経路Aとは異なる経路Dに分離して進行させるものであり、経路Dを進行するテラヘルツ波がテラヘルツ波受信部36で受信されることとなる。ここで、経路Cを進行するテラヘルツ波は測定に使用されないテラヘルツ波であるため、経路Cを進行するテラヘルツ波の進行方向側に反射防止加工を施した部材や電波吸収部材等を配置することで、経路Cを進行するテラヘルツ波の反射波の影響を抑える対策をすることが好ましい。
【0029】
スキャンミラー39は、物体を走査する際に、内部測定部34からの光を物体に照射するミラーである。スキャンミラー39は、走査時において、CPU51が制御するモータ(不図示)を駆動源として回転することができるように設けられる。なお、スキャンミラー39の枚数は特に限定されないが、本実施形態では、1枚とされている。
【0030】
CPU51は、所定のプログラムを実行して、内部測定部34、スキャンミラー39等の動作制御処理、および、データ処理を行う。本実施形態では、CPU51がプロセッサとして用いられているが、所定の処理を実行する主体であればよく、他の半導体デバイスが用いられてもよい。
【0031】
記憶部52は、主記憶部と、補助記憶部と、を用いて構成することができる。主記憶部は、例えば、RAMを用いて構成することができる。補助記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)を用いて構成することができ、画像データの生成に関するデータ処理やテラヘルツ波撮像装置31の動作制御に用いるプログラム、測定により取得したデータ等を記憶する。
【0032】
操作入力部53は、ユーザ(例えば、作業者U)による所定の操作内容(例えば、走査の開始等)の入力に用いられる。操作入力部53は、ボタンやタッチパネル等を用いて適宜に構成することができる。
【0033】
表示部54は、データの表示に用いられ、適宜のディスプレイを用いて構成される。表示部54には、一例として、画像データ等の取得するデータが表示されてもよい。
【0034】
インタフェース55は、情報端末21との通信に用いる構成である。本実施形態では、テラヘルツ波撮像装置31は、有線通信または無線通信により、情報端末21と通信可能に構成され、インタフェース55を介して、取得した結果(画像データ)の出力等のデータの入出力を行う。
【0035】
次に、
図4を参照しながら、2次元コードプレートの具体的な構成の一例について説明する。
図4に示すように、2次元コードプレート12は、テラヘルツ波透過部材層61を基板(基部)とし、テラヘルツ波透過部材層61に、コード部を構成するテラヘルツ波反射部材層62が積層され構成される。
【0036】
ここで、テラヘルツ波透過部材層61は例えば、ガラスまたはセラミックなどにより構成すればよい。
【0037】
テラヘルツ波反射部材層62は、例えば、金属により構成すればよい。金、アルミニウム、銅などを用いることが可能である。テラヘルツ波反射部材層62は金属膜をテラヘルツ波透過部材層61の表面に成膜してもよい。また、テラヘルツ波反射部材層62がめっき処理により形成されてもよい。また、テラヘルツ波反射部材層62は、テラヘルツ波透過部材層61の表面にコード部に対応した金属片を貼り付けて立体的に構成してもよい。
【0038】
なお、テラヘルツ波反射部材層62での金属の錆防止のため、2次元コードプレート12におけるテラヘルツ波反射部材層62を積層している面または、2次元コードプレート12全体を錆防止の表面処理やコーティング加工を施してもよい。錆防止の表面処理やコーティング加工、すなわち防錆処理は、表面に樹脂膜を形成するなどの技術で実現可能である。
【0039】
テラヘルツ波撮像装置31から発信されるテラヘルツ波は、コード部を構成するテラヘルツ波反射部材層62により反射され、テラヘルツ波透過部材層61を透過する。したがって、テラヘルツ波撮像装置31は、当該テラヘルツ波の反射状態の検出結果に基づいて2次元コードに対応する反射画像を含む撮像画像を生成することができ、当該撮像画像に基づいて2次元コードを認識することできる。
【0040】
なお、当該撮像画像の生成は、上記したように、テラヘルツ波撮像装置31においてCPU51が記憶部52に記憶された画像生成プログラムを実行することにより行われる。そして、撮像画像から2次元コードを認識する処理は、テラヘルツ波撮像装置31においてCPU51が記憶部52に記憶された画像認識プログラムを実行することにより行われてもよい。その一方で、テラヘルツ波撮像装置31に有線または無線で接続された情報端末21に対して、テラヘルツ波撮像装置31から撮像画像を送信し、当該撮像画像を受信した情報端末21において当該撮像画像から2次元コードを認識する処理を行ってもよい。
【0041】
2次元コードプレート12はインフラ内部に格納され、テラヘルツ波撮像装置31により、コンクリートなどのインフラの外部構造5bを透過して撮像される。そのため、外気環境による2次元コードプレート12への直接の埃や汚れの付着などは生じにくい。また、外気環境によるインフラの外部構造5bへ埃や汚れの付着があったとしても、テラヘルツ波撮像装置31の撮像への影響は軽微である。よって、可視光や赤外線等で、インフラ外部構造の表面に設置された2次元コードを撮像する方式に比べ、外気環境による埃や汚れの付着の影響を受けにくい点で利点がある。その結果、インフラから情報を適切に取得することができる。
【0042】
インフラ検査は数年の間隔が設定されていることが多いため、インフラ外部構造5bの表面に2次元コードを設置する場合、当該数年の間、当該2次元コードの表面に埃や汚れの付着がなされないように維持することは容易ではなく、撮像時に2次元コード表面の清掃が必要となる。本実施形態の方式のように、2次元コードプレート12をインフラ内部に格納し、テラヘルツ波撮像装置31により、コンクリートなどのインフラの外部構造5bを透過して撮像する方式は、撮像時にインフラの外部構造5bの表面の清掃は必要なく、より低コストにインフラ検査等を実行することができる。
【0043】
次に、
図5を参照しながら、2次元コードプレートの他の構成例について説明する。
図5に示す2次元コードプレート12は、
図4に示す2次元コードプレートの変形構成例である。
図4の2次元コードプレート12の構成に対し、テラヘルツ波透過部材層61に対して、テラヘルツ波反射部材層62の反対側の面に、新たに電磁波吸収部材層63を設けた点で相違する。その他の構成等は、
図4と同様であるため、繰り返しの説明は省略する。
【0044】
インフラの内部構造5aによっては、作業者から見て2次元コードプレート12の背面に、鉄筋などの金属部材が配置されている場合がある。
【0045】
本実施形態のテラヘルツ波撮像装置31は奥行毎に2次元の撮像画像を生成可能であるため、テラヘルツ波透過部材層61の透過面の背面に金属部材が配置されていても、2次元コードの認識は可能である。ただし、テラヘルツ波透過部材層61の透過面の背面に配置される金属部材等によるテラヘルツ波の反射光が2次元コードの認識精度へ影響を及ぼす可能性もある。
【0046】
そこで、
図5の例では、作業者から見てテラヘルツ波透過部材層61の奥側に、テラヘルツ波の吸収が可能な電磁波吸収部材層63を設けることにより、2次元コードプレート12の背面に鉄筋などの金属部材が配置されていても、テラヘルツ波撮像装置31から発信されるテラヘルツ波が当該金属部材等に到達しないように構成する。これにより、当該金属部材等によるテラヘルツ波の反射光が生じることを防ぐことができ、2次元コードの認識精度の低減を防止することができる。
【0047】
なお、電磁波吸収部材層63の具体的な構成は、既存の技術を用いればよい。例えば、特開2019-75571号公報に記載の技術や、国際公開番号WO2019/017471号公報に記載の技術などを用いればよい。これらの技術では、ミリ波以上の周波数の波を好適に吸収することができる。
【0048】
テラヘルツ波透過部材層61を基板として、電磁波吸収部材層63を貼り付けまたは塗布にて、2次元コードプレート12が形成されてもよい。また、例えば電磁波吸収部材層63の支持等のために、電磁波吸収部材層63とは別の基板をインフラ内部に設けてもよい。この場合、当該別の基板は、電磁波吸収部材層63よりもテラヘルツ波透過部材層61から離れた側(作業者から見て奥側)に配置するのが望ましい。
【0049】
次に、
図6を参照しながら、インフラデータベースにおいて管理される情報を取得する処理の一例について説明する。
図6は、施設カルテ情報取得処理の例であり、より具体的には、情報端末21からインフラデータベース11への施設カルテ情報取得リクエストの送信と、インフラデータベース11から情報端末21への施設カルテ情報の送信の例である。
【0050】
ここで、施設カルテ情報(施設情報)は、例えば、施設識別番号、施設の管理者、施設名、路線名、建設年度、点検実施年度、損傷の具体的内容、緊急措置内容、緊急措置後の恒久的な措置、等の情報を格納し、施設に関する情報をまとめた情報である。インフラデータベース11は、施設識別番号(すなわち、施設5に固有の情報)に関連付けて、施設識別番号により特定される施設5の様々なデータを管理する。なお、施設カルテ情報は、建設から維持管理段階までの図面や資料等、施設に関する他の情報を格納してもよい。
【0051】
そして、施設カルテ情報取得リクエストに含まれる、インフラDBアドレス(インフラデータベース11のIPアドレス)の情報と、施設識別番号(識別情報)は、本実施形態で説明された2次元コードに格納されており、当該2次元コードから取得可能である。すなわち、特定施設のインフラ内に格納された2次元コードをテラヘルツ波撮像装置31により撮像し、2次元コードの認識を行うことで、施設を一意に特定する施設識別番号と、当該施設の施設カルテ情報を管理するインフラデータベース11のアクセス先であるアドレス情報を取得することが可能である。情報端末21は、これらの情報を用いて、施設カルテ情報取得リクエストを送信し、インフラデータベース11から所望の施設の施設カルテ情報を容易に検索して取得することが可能である。なお、施設カルテ情報取得リクエストには、各種の認証情報が含まれてもよく、適宜の認証処理が行われてもよい。そして、インフラデータベース11は、認証処理の結果に基づいて、施設カルテ情報を送信してもよい。
【0052】
次に、
図7を参照しながら、施設カルテ情報の更新処理の一例について説明する。
図7に示すように、施設カルテ情報が格納する情報には、「更新不可」の情報、「情報端末からは更新不可」の情報、「情報端末から更新可」の情報が予め設定されている。従って、インフラデータベース11から取得した施設5の施設カルテ情報には、「更新不可」の情報、「情報端末からは更新不可」の情報、「情報端末から更新可」の情報などの分類がある。
【0053】
情報端末21は、操作入力部24を介した作業者U等の操作により、インフラデータベース11から取得した施設5の施設カルテ情報のうち、「情報端末から更新可」の情報について、新たに更新した情報を生成する。当該更新した情報は施設カルテ更新情報に含められ、当該施設カルテ更新情報をインフラデータベース11へ送信することにより、インフラデータベース11で管理する施設カルテ情報の更新が可能である。施設5の作業者Uは、例えば施設5の作業終了のタイミングで適宜の情報を更新し、インフラデータベース11の施設カルテ情報を更新することができる。
【0054】
なお、「情報端末からは更新不可」の情報については、システムの管理者権限などを有する上位端末からの更新は可能とするが、作業者U等が使用する情報端末21からの更新は不可とした情報である。すなわち、上位端末を用いたユーザによる更新は可能であるが、情報端末21を用いたユーザ(例えば、作業者U)による更新は不可である。
【0055】
また、施設カルテ情報のうち、施設識別番号は「更新不可」の情報である。この番号は、ハードウェアである2次元コードプレート12の2次元コードと対応付けられた番号であり、作業者U等が使用する情報端末21からの更新も、その他の情報端末21からの更新も不可とする。本実施形態の2次元コードプレート12の2次元コードは容易に書き換えることはできないうえ、インフラ構造内に格納されているため容易に配置替えをすることができない。よって、恒久的に対応関係が示される更新不可の識別番号を少なくとも1つ存在させることにより、施設5のインフラ構造内に格納されている2次元コードを一意に特定することができる。すなわち、これは当該施設5を一意に特定することができる施設識別番号となりえる。
【0056】
次に、
図8を参照しながら、2次元コードプレートのインフラ構造内での保持方法の一例について説明する。
【0057】
橋梁等のインフラは、車両の通行や地震などにより振動が伝達される。従って、2次元コードプレート12がこのような振動では損傷しないように、工夫が必要である。
【0058】
そこで、本実施形態では、
図8に示すように、コンクリート等の外部構造5bに2次元コードプレート12を収める2次元コードプレートホルダ72を格納する保持空間71を形成し、その保持空間71に2次元コードプレート12を収めた2次元コードプレートホルダ72を組み込むように構成している。
【0059】
2次元コードプレートホルダ72は、例えば直方体の箱の形状を有するように構成すればよい。その材質は、橋梁等のインフラのコンクリートなどの外部構造5bにおける振動や変形に起因する歪で破損しない程度の弾性があり、テラヘルツ波が透過する材質であればよい。2次元コードプレートホルダ72は、樹脂やエラストマーなどで構成すればよい。弾性率の小さいエラストマーで2次元コードプレートホルダ72全体を構成してもよい。このように弾性率の小さい材質の材料で2次元コードプレートホルダ72を構成することにより、橋梁等インフラのコンクリートなどの外部構造5bにおける振動や変形に起因する歪による破損を低減することが可能となる。
【0060】
また、2次元コードプレートホルダ72の平面部分は、弾性率の大きい樹脂を用い、これらの平面部分をジョイントする部分だけ弾性率の小さいエラストマーなどを用いるように、2次元コードプレートホルダ72が構成されてもよい。この場合、平面部分の強度を保ちつつ、橋梁等インフラのコンクリートなどの外部構造5bにおける振動や変形に起因する歪による破損を低減することが可能となる。
【0061】
例えば、橋梁等のインフラのコンクリートなどの外部構造5bにボルトやネジなどにより直接2次元コードプレート12を固定すると、車両の通行や地震などの振動で生じた変形に起因する応力で、2次元コードプレート12が破損する可能性があるが、
図8に示すような、2次元コードプレートホルダ72を介した2重構造にすることにより、2次元コードプレート12の破損の可能性を低減することができる。
【0062】
次に、
図9を参照しながら、2次元コードプレートホルダ内で2次元コードプレートを保持する方法の一例について説明する。
【0063】
図9に示すように、2次元コードプレートホルダ72内で2次元コードプレート12は緩衝部材73に取り囲まれて保持される。これにより、2次元コードプレートホルダ72内でも2次元コードプレート12はボルトやネジなどを介した固定を行うことなく保持されることが可能となり、橋梁等のインフラのコンクリートなどの外部構造5bにおける振動や変形に起因する歪による破損を低減することが可能となる。
【0064】
緩衝部材73は、弾性率の小さいエラストマーで構成してもよい。また、袋に細かな弾性体部材を大量に格納して構成した緩衝部材73を用いてもよい。この場合、橋梁等のインフラのコンクリートなどの外部構造5bにおける振動や歪を緩衝部材内の弾性体部材が移動することで吸収することが可能となる。
【0065】
図9の保持方法では、2次元コードプレート12は、橋梁等のインフラのコンクリートなどの外部構造5bに対して位置決めされた状態にはならない。しかしながら、2次元コードプレート12はその機能を発揮するにあたり、外部構造5bに対して位置決めされた状態である必要はない。2次元コードの種類によっては、撮像方向の認識可能角度が十分に広い。このような場合、仮に長年の振動の積み重ねにより経時的に2次元コードプレート12の姿勢が変化してしまっても、2次元コードの認識処理は好適に行うことが可能である。そもそも、本実施形態にかかるテラヘルツ波撮像装置31による2次元コードプレート12の撮像は必ずしも2次元コードプレート12に正対する位置から撮像が行われるとは限らないため、橋梁等のインフラのコンクリートなどの外部構造5bに対して2次元コードプレートの姿勢を所定の角度に正確に固定しておく必要はない。
【0066】
なお、2次元コードプレート12が埋設されている位置を示す配置表示部(不図示)がインフラに設けられてもよい。この場合、作業者U等は、配置表示部を手掛かりとして2次元コードプレート12が埋設されている位置を把握し、テラヘルツ波撮像装置31で走査を行うことができる。配置表示部は、2次元コードプレート12の位置を示すことができれば特に限定されない。配置表示部は、例えば、外部構造5bに形成された凹部や凸部、マーク等であってもよい。また、凹部や凸部、マーク等は、例えば、2次元コードプレートに正対するように外部構造5bに形成されてもよい。
【0067】
以上説明した、本実施形態の2次元コードプレート12、インフラデータベース11を備えるシステムによれば、2次元コードを格納する施設構造に対して、テラヘルツ波撮像装置31および情報端末21それぞれを用いることで、外気環境による埃や汚れの付着の影響を受けにくい施設識別処理が実現可能である。また、これらによれば、外気環境による埃や汚れの付着の影響を受けにくい施設カルテ情報取得処理および施設カルテ情報更新処理が実現可能である。すなわち、本発明の実施形態によれば、より好適な施設カルテ情報管理を実現することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0069】
2次元コードが付与される2次元コードプレート12(情報保持部)について説明されたが、プレートに代えて立方体や直方体の基部に2次元コードが付与された情報保持部が用いられてもよい。また、この変更に伴って、施設5の内部で情報保持部を保持するホルダの形状が適宜に変更されてもよい。
【0070】
実施形態では、テラヘルツ波撮像装置31と情報端末21が有線または無線で接続されてデータ入出力が行われる例について説明されたが、テラヘルツ波撮像装置31と情報端末21との間のデータの入出力が、USBフラッシュドライブ(USBメモリ)等の記憶媒体を介した手法など、他の手法により実現されてもよい。データの入出力の態様に応じて、インタフェース(26,55)等の構造を適宜に変更してもよい。
【0071】
本実施形態に係る技術では、橋梁などのインフラをより好適に点検することが可能となり、質が高く、信頼できる、持続可能かつ強靱なインフラをより好適に維持、管理することを可能にする。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9産業と技術革新の基盤をつくろう」および「11住み続けられるまちづくりを」に貢献する。
【符号の説明】
【0072】
11 インフラデータベース
12 2次元コードプレート
21 情報端末
31 テラヘルツ波撮像装置