(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094712
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】草刈刃及び草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/535 20060101AFI20240703BHJP
A01D 34/44 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A01D34/535
A01D34/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211435
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宝蔵 伸行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸明
(72)【発明者】
【氏名】藤元 隆史
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 美空
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083BA12
2B083BA16
2B083CA03
2B083CA30
2B083CB02
2B083EA07
2B083HA05
2B083KA03
2B083KA04
(57)【要約】
【課題】加工が容易で、高い強度を保ちつつ、小石などが当たった場合でも草刈刃への衝撃を緩和できる草刈刃及び草刈刃を装着した草刈機を提供することを課題とする。
【解決手段】
取付部と刃部を有する草刈刃であって、前記取付部は平板状であって、取付孔を有し、前記刃部が曲げられた形状であり、前記刃部の刃先の延在方向に直交する線上に取付孔が形成されていることを特徴とする草刈刃、及び、前記草刈刃が取り付けられた回転軸を有する草刈機であって、前記回転軸には複数のブラケットが設置されており、前記ブラケットには支持軸が前記回転軸の軸方向に平行に支持され、前記支持軸に支持されたシャックル又はリング状部材に前記草刈刃が取り付けられていることを特徴とする草刈機。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部と刃部を有する草刈刃であって、
前記取付部は平板状であって、取付孔を有し、
前記刃部が曲げられた形状であり、
前記刃部の刃先の延在方向に直交する線上に取付孔が形成されていることを特徴とする草刈刃。
【請求項2】
取付部と刃部を有する草刈刃であって、
前記取付部及び前記刃部は別体であり、
前記取付部は平板状であり、
前記刃部は曲げられた形状であり、
前記取付部と前記刃部を固着することにより取付孔が形成されていることを特徴とする草刈刃。
【請求項3】
前記取付部と前記刃部を、ボルトとナット、リベット又は溶接により固着することを特徴とする請求項2に記載された草刈刃。
【請求項4】
前記取付部から前記刃部の刃先に向かうにつれて幅が広くなる形状であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載された草刈刃。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載された草刈刃が取り付けられた回転軸を有する草刈機であって、
前記回転軸には複数のブラケットが設置されており、
前記ブラケットには支持軸が前記回転軸の軸方向に平行に支持され、
前記支持軸に支持されたシャックル又はリング状部材に前記草刈刃が取り付けられていることを特徴とする草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈刃及び草刈刃を装着した草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、進行方向に対して直交する水平軸にフレール刃を装着し、フレール刃とともに水平軸を回転させて、フレール刃により雑草等をたたき切る構造のフレールモアが知られている。(特許文献1参照)
従来のフレール刃は、形状が逆Y字形状であるため、刃先が草に均一な高さで当たらず、草刈性能が低い。そのため、刃先が草に均一の高さで当たる草刈刃が提案されている。このような草刈刃では、刃先は回転方向前方(水平軸下方に位置したときは、進行方向)を向いているのに対して、水平軸に平行に取付られた取付軸に取り付けるために、草刈刃の取付部は横を向いている必要があるため、刃先と取付部をつなぐ形状として、以下のようなものが知られている。
例えば、板状の草刈刃の取付部を刃先に対して90°ひねったもの(特許文献2、特許文献3参照)、
図12に示されるような板状の草刈刃の取付部を刃先に直交する線で折りたたんで形成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-64536号公報
【特許文献2】特開平7-8069号公報
【特許文献3】特開2009-268444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板状の草刈刃の取付部を刃先に対して90°ひねったものや取付部を折りたたんだ形状のものは、加工にコストがかかり、また、ひねることや折りたたむことによりひずみが残り、耐久性が落ちてしまう。
【0005】
また、これら従来の草刈刃は、水平軸に平行に取付られた取付軸に取り付けられており、小石などが当たった場合、回転方向後方に揺動することにより回転方向には逃げることができるが、左右方向にはほとんど揺動することができないので、小石などが当たった場所によっては、十分に逃げることができない。これにより、小石などが当たった場合の草刈刃への衝撃を十分に緩和することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、加工が容易で、高い強度を保ちつつ、小石などが当たった場合でも草刈刃への衝撃を緩和できる草刈刃及び草刈刃を装着した草刈機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
取付部と刃部を有する草刈刃であって、
前記取付部は平板状であって、取付孔を有し、
前記刃部が曲げられた形状であり、
前記刃部の刃先の延在方向に直交する線上に取付孔が形成されていることを特徴とする草刈刃。
【0008】
また、本発明は、以下の構成を具備するものである。
上記草刈刃が取り付けられた回転軸を有する草刈機であって、
前記回転軸には複数のブラケットが設置されており、
前記ブラケットには支持軸が前記回転軸の軸方向に平行に支持され、
前記支持軸に支持されたシャックル又はリング状部材に前記草刈刃が取り付けられていることを特徴とする草刈機。
【発明の効果】
【0009】
取付部と刃部を有し、刃部が曲げられた形状であり、刃部の刃先の延在方向に直交する線上に取付孔が形成されている草刈刃とし、また、回転軸のブラケットに回転軸の軸方向に平行に支持された支持軸に支持されたシャックル又はリング状部材に草刈刃を取り付けることにより、加工が容易で、高い強度を保ちつつ、小石などが当たった場合、草刈刃への衝撃を緩和できる草刈刃及び草刈刃を装着した草刈機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の格納状態での図である。
【
図2】本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の最大オフセット状態での図であり、水平面作業時の状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の最大オフセット状態での図であり、(a)下向きの法面作業時の状態、(b)は上向きの法面作業時の状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態の草刈機1の作業部14を左方にオフセットできるようにした変形例の図である。
【
図5】本発明の実施形態の草刈刃3の図であり、(a)は加工前の図、(b)加工後の図である。
【
図6】
図5(b)に示した草刈刃3をシャックル4に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
【
図7】本発明の草刈刃3を支持する各種リング状部材5の図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例1の草刈刃3をリング状部材に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態の変形例2の草刈刃3をリング状部材に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態の変形例3の草刈刃3をリング状部材に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の、シャックル4に草刈刃3を装着した場合の図である。
【
図12】本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の、リング状部材5に草刈刃3を装着した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、トラクタ等の走行車体の後方に連結して、走行車体から伝達された動力により、水平面、傾斜面(法面等)の雑草等を刈り取る草刈機であって、進行方向に直交し、左右に延びる回転軸を有する。また、本発明は、この回転軸に草刈刃を装着して、この回転軸を走行車体から伝達された動力により回転して草刈刃を回転させ、この回転する草刈刃により雑草等をたたき切る形式の草刈機及びこの草刈機に使用される草刈刃である。
【0012】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の草刈機1及び草刈刃3を説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
また、説明の便宜上、上方、下方、前方、後方、右方、左方といった方向を示す語句を用いるが、重力の働く方向が下方であり、その逆が上方である。また、走行車体2の進行する方向が前方であり、その逆が後方である。さらに、前方に向かって、右側が右方であり、左側が左方である。
【0013】
[全体構造]
図1は、本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の格納状態での図であり、(a)は上方から見た図、(b)は左方から見た図、(c)後方から見た図である。
図2は、本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の最大オフセット状態での図であり、水平面作業時の状態を示す図である。そして、(a)は上方から見た図、(b)は左方から見た図、(c)後方から見た図である。
図3は、本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の最大オフセット状態での後方から見た図であり、(a)下向きの法面作業時の状態、(b)は上向きの法面作業時の状態を示す図である。
【0014】
図1、2に示すように、本実施形態における草刈機1は、装着部11、オフセット機構部12、動力伝達部13、作業部14、回動機構部15及び回転部16を備えている。
草刈機1は、トラクタ等の走行車体2に対して装着部11により連結される。装着部11と作業部14とは、オフセット機構部12、動力伝達部13、回転部16及び回動機構部15を介して連結される。これにより、走行車体2の走行に従って草刈機1が前進し、作業部14による草刈作業が行われる。オフセット機構部12と作業部14とは、回転部16及び回動機構部15を介して接続され、作業部14は、オフセット機構部12に対して、回転部16を中心に回転可能である。
【0015】
作業部14は、後述するように、オフセット機構部12の動作により、
図1に示されるような走行車体2の後方に配置された状態(格納状態)から、
図2に示されるような走行車体2の右側方にオフセットされた状態(最大オフセット状態)に移動可能である。そのため、オフセット機構部12、動力伝達部13、回転部16及び回動機構部15は、後述する作業部14のロータカバー142の上方かつ左方に設けられている。なお、
図1に示されるような格納状態から
図2に示される最大オフセット状態の間のどの位置でも草刈作業を行うことができる。
また、
図1に示されるような格納状態から
図2に示される最大オフセット状態の間のどの位置でも草刈作業を行うことに限定されず、例えば、格納状態では草刈作業が行えない、格納状態と最大オフセット状態の間の特定の箇所のみで草刈作業が行える等、特定の範囲や特定の位置でのみ草刈作業を行うことができるようにしてもよい。
【0016】
[装着部]
装着部11は、走行車体2の2つの後方タイヤ21の間に設けられた三点リンク機構22(ただし、ここではロワーリンクのみ示す)に対して連結される。三点リンク機構22は、通常、トップリンク、リフトロッド及びロワーリンクで構成される。三点リンク機構22は、公知の機構であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
装着部11は、走行車体2の幅方向である左右方向に延びるヒッチフレーム111を備える。ヒッチフレーム111は、走行車体2の後部に設けられた三点リンク機構22に連結可能に構成されている。ヒッチフレーム111の中央下部にはギアボックス112が設けられ、このギアボックス112に走行車体2から動力を受ける入力軸113が設けられている。入力軸113には、走行車体2に設けられたPTO軸23からユニバーサルジョイント(図示せず)を介して動力が伝達される。
【0018】
[オフセット機構部]
オフセット機構部12は、作業部14のオフセット移動を行うための機構である。具体的には、オフセット機構部12は、作業部14を、
図1に示されるような走行車体2の後方の格納状態から
図2に示されるような走行車体2の進行方向に対して側方(本実施形態においては右方)の最大オフセット状態に移動させることができる。オフセット機構部12は、オフセットフレーム121、リンクロッド122、支持フレーム123及び伸縮部材124を有する。本実施形態では、支持フレーム123は、回転部16を介して作業部14を支持しており、作業部14とともに右方にオフセットする構成である。
【0019】
オフセットフレーム121及びリンクロッド122の一端(前側)は、ヒッチフレーム111に回動可能に連結されており、オフセットフレーム121及びリンクロッド122の他端(後側)は、支持フレーム123に回動可能に連結されている。以上の構成により、ヒッチフレーム111、オフセットフレーム121、リンクロッド122及び支持フレーム123は、それぞれの回動中心を頂点とする平行四辺形のリンク機構を構成する。このリンク機構により、オフセット機構部12は、走行車体2の進行方向に対する作業部14の角度を保持したまま、作業部14をオフセット移動させることができる。
【0020】
伸縮部材124は、オフセット機構部12の動力源(アクチュエータ)であり、例えばガスシリンダ、油圧シリンダ等で構成される。伸縮部材124の一端は、ヒッチフレーム111に連結され、他端は、オフセットフレーム121後方に連結される。伸縮部材124の伸縮により、オフセット機構部12が駆動され、作業部14のオフセット量(オフセット方向への移動量)を制御することができる。
なお、
図1に示されるように、作業部14が走行車体2の後方に位置する状態を格納状態といい、
図2に示されるように、作業部14が走行車体2の外側に位置する状態を最大オフセット状態という。本実施形態では、作業部14は、走行車体2の右方にオフセットできる構造になっている。
【0021】
[動力伝達部]
動力伝達部13は、装着部11の入力軸113で受けた走行車体2からの動力を、作業部14側に伝達するための機構である。本実施形態の草刈機1は、動力伝達部13として、ユニバーサルジョイントではなく、チェーン駆動機構を採用している。具体的には、動力伝達部13は、少なくとも駆動スプロケット131、従動スプロケット132及びローラーチェーン133を有する。ローラーチェーン133は、駆動スプロケット131及び従動スプロケット132に巻き掛けられた構成である。作業部14は、従動スプロケット132からの動力が他の動力伝達手段を介して伝達され、草刈作業を行う。
なお、動力伝達部13は、チェーン駆動機構に限定されず、ユニバーサルジョイントでもよい。
また、動力伝達部13を備えず、草刈機1に電動モータや油圧モータ等の駆動源を備え、当該駆動源の動力を作業部14に直接伝達するようにしてもよいし、当該駆動源の動力を他の動力伝達手段を介して作業部14に伝達するようにしてもよい。
【0022】
[作業部]
作業部14は回転部16を介してオフセット機構部12に接続されている。
図1(c)に示すように、回転部16は、第1回転部161及び第2回転部162を有する。第1回転部161は、オフセット機構部12に固定されている。具体的には、第1回転部161は、オフセットフレーム121と支持フレーム123を揺動可能に連結している。そして、伸縮部材124の伸縮によって、第1回転部161はオフセット機構部12の動作と共に移動する。第2回転部162は、第1回転部161に同軸で回転自在に連結されており、回動機構部15を介して作業部14に連結されている。
【0023】
作業部14は、作業ロータ141、ロータカバー142、側板143、刈刃駆動部144及びゲージローラ145を有する。
作業ロータ141は、両端の側板143の間に配置された回転軸141a及び回転軸141aに放射状に複数設けられた草刈刃3を含む。回転軸141aは、走行車体2の進行方向に対して直交する水平方向に延在している。
回転軸141aの周面には、一対の支持部を有するブラケット141bが複数設けられている。ブラケット141bの一対の支持部には支持軸141cが取り付けられ、支持軸141cにはシャックル4が掛けられる。(
図11参照)
なお、ブラケット141bの一対の支持部の間隔は、シャックル4が縦向きに取り付けられる幅になっている。
また、回転軸141aの周面に、一対の支持部を有するブラケット141bを複数設けるのではなく、回転軸141aの周面に一対の突設部を複数設けるようにし、当該一対の突設部に、シャックル4が掛けられた支持軸141cを取り付けるようにしてもよい。
作業部14は、回転軸141aを回転させて草刈刃3により雑草等を刈り取る。
実施形態では、回転軸141aに草刈刃3を刃先321が回転方向前方を向くように取り付けられるので、回転軸141aは左方から見て時計回りに回転する。これにより、草刈刃3は、後方から前方に向けて、雑草等をたたき切るように刈り取っていくことになる。刈り取られた雑草等の大部分はロータカバー142内を通って、最終的には後方に排出される。(
図11(a)の矢印を参照)
【0024】
ロータカバー142は、作業ロータ141の上方、前方及び後方を覆って配置されるカバー部材である。ロータカバー142は、草刈刃3によって刈り取られた雑草等、雑草等に付着する土、作業面(地表面)に落ちている小石などの飛散を防止すると共に、刈り取られた雑草等を再び草刈刃3に戻し、細かく破砕する効果を有する。
【0025】
側板143は、ボールベアリング等を介して回転軸141aを回転可能に支持すると共に、ロータカバー142を支持する。本実施形態では、左端の側板143に対して刈刃駆動部144が設けられている。
【0026】
刈刃駆動部144は、走行車体2から動力伝達部13等を介して伝達された回転動力を、作業ロータ141の回転軸141aに伝達する。
図2(b)に示すように、本実施形態の刈刃駆動部144は、駆動プーリー144a、従動プーリー144b 、ベルト144c及びテンショナー144dを含む。ベルト144cは、駆動プーリー144aと従動プーリー144bとの間に巻き掛けられている。テンショナー144dは、駆動プーリー144a及び従動プーリー144bに巻き掛けられたベルト144cの内側に配置され、ベルト144cの内側から外側に向かってベルト144cへ張力を与えている。
【0027】
上述した構造の刈刃駆動部144では、駆動プーリー144aが動力伝達部13等から伝達された回転動力により回転し、ベルト144cを介して従動プーリー144bへ回転動力を伝達する。従動プーリー144bは、駆動プーリー144aから与えられた回転動力を回転軸141aに伝達し、作業ロータ141を駆動する。
【0028】
ゲージローラ145は、2つの側板143のそれぞれに揺動するように支持されたアーム145aと、アーム145aに軸支されたローラ体145bを有する。そして、アーム145aの揺動位置を変えて固定することにより、ローラ体145bと回転軸141aの高さを変えて、草刈刃3での刈高さを調整できるよう構成されている。
【0029】
[回動機構部]
回動機構部15は、走行車体2の進行方向である前後方向に延びる軸を中心として作業部14を上下方向に回動させるための機構である。なお、回動機構部15は、公知の機構であるため、詳細な説明は省略する。
図3(a)に示されるように、草刈機1は、作業部14は、最大オフセット状態において、回動機構部15により、右側端部が下方になるように(後方から見て時計回りに)回動している。
図3(a)に示される状態は、作業部14が走行車体2の走行面よりも下方に位置する傾斜面(法面等)の草刈作業を行う状態である。
また、
図3(b)に示されるように、草刈機1は、作業部14が、最大オフセット状態において、回動機構部15により、右側端部が上方になるように(後方から見て反時計回りに)回動している。
図3(b)に示される状態は、作業部14が走行車体2の走行面よりも上方に位置する傾斜面(法面等)の草刈作業を行う状態である。
なお、回動機構部15の構造としては、最大オフセット状態に限らず、作業部14が格納状態から最大オフセット状態の間のどの位置でも、作業部14を上下方向に回動可能である。
【0030】
[オフセット機構部の変形例]
図4は、本発明の実施形態の草刈機1の作業部14を左方にオフセットできるようにした変形例の図である。
実施形態の草刈機1は、走行車体2の右方にオフセットする構造であったが、本変形例では、走行車体2の左方にオフセットする構造としたものであり、走行車体2の左側方で草刈作業を行うように構成されている。
そのため、オフセット機構部12,動力伝達部13、回転部16及び回動機構部15は、作業部14のロータカバー142の上方かつ右方に設けられており、作業部14を走行車体2の左方にオフセットできる構成になっている。その他の構成は、実施形態と同様になっている。そして、草刈機1は、作業部14が、オフセット状態において、回動機構部15により、左側端部が下方になるように(後方から見て反時計回りに)回動したり、左側端部が上方になるように(後方から見て時計回りに)回動したりすることができる。
【0031】
[草刈刃]
図5、
図6及び
図11を用いて、作業ロータ141の回転軸141aに取り付けられる草刈刃3について、説明する。
図5は、本発明の実施形態の草刈刃3の図であり、(a)は加工前の図、(b)加工後の図である。
図6は、
図5(b)に示した草刈刃3をシャックル4に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
図11は、本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の、シャックル4に草刈刃3を装着した場合の図であり、(a)は左方から見た断面図、(b)は後方から見た断面図である。
図11に示すように、草刈刃3は、回転軸141aの外周面に垂直に突設されたブラケット141bに取り付けられている。ブラケット141bの一対の支持部には、支持軸141cが固定されており、草刈刃3は、支持軸141cに取り付けられたシャックル4に取り付けられている。
より詳細には、ブラケット141bは、回転軸141aの軸方向(横方向)に離間し、対向するように配置された一対の支持部を有しており、シャックル4を介して草刈刃3を回転軸141aに取り付けるための取付部として機能する。
支持軸141cは、シャックル4をブラケット141bの一対の支持部に取り付けるための部材である。支持軸141cは、回転軸141aの軸方向に平行になるように、ブラケット141bの一対の支持部に架け渡され、固定される。
【0032】
図6、
図11に示すように、シャックル4は、シャックルピン41とシャックル本体42とを有する。本実施形態において、シャックル本体42は、バウ型(おたふく型)で構成されており、支持軸141cにより、ブラケット141bの一対の支持部に、縦向きで取り付けられる。すなわち、シャックル4は、シャックルピン41が、回転軸141aの軸方向に垂直となるように取り付けられる。なお、シャックル本体42は、支持軸141cを軸として、回転軸141aの回転方向の前後に揺動可能である。
【0033】
図5に示すように、草刈刃3は、取付部31と刃部32を有する。
取付部31は、草刈刃3をシャックル4に取り付けるためのシャックルピン41が挿通する取付孔311を有する。取付孔311は、刃部32の刃先321の延在方向に直交する線上に形成されている。刃先321は、雑草などの刈取対象に後方から衝突して、刈取対象をたたき切る箇所である。
草刈刃3は、シャックルピン41により、刃先321が回転軸141aの回転方向前方を向くように、シャックル本体42に取り付けられる。
このような構成により、草刈刃3は、上述したとおり、シャックル4の回転軸141aの回転方向の前後に揺動可能である、すなわち、回転軸141aの回転方向の前後に揺動可能であるとともに、シャックルピン41を軸にして、左右方向に揺動可能である。
【0034】
草刈刃3は、
図5(a)に示す形状に形成された平板状の材料において、刃部32を曲げ加工し、平板状の取付部31と曲面状の刃部32が形成され、
図5(b)に示されるような草刈刃3になる。曲げ加工された草刈刃3は、上述のように、取付孔311が、正面視で刃部32の刃先321の延在方向に直交する線上に位置することになる。
本実施形態の草刈刃3は、板状部材を曲げ加工するだけで簡単に製造することができることから、板状部材の板厚を適宜変えることが可能である。すなわち、草刈刃3に必要となる強度に合わせ、板状部材の板厚を変えることで、必要となる強度を確保することが可能である。
なお、本明細書において、曲げるとは、草刈刃3が回転軸141aの下側のブラケット141bに取り付けられたシャックル4に垂下された状態において、刃先321が下方(鉛直方向)ではなく、前方(切断対象(雑草等)の方向)を向くように刃先321の延在方向と平行な線に沿って曲げることを意味する。
そして、平板状の取付部31を刃先321に対して所定角度ひねること、言い換えると、草刈刃3を上方から見たときに、刃先321の延在方向と平板状の取付部31が平行ではなく、所定の角度となるようにねじることは含まれない。
【0035】
本実施形態の草刈刃3は、取付部31から刃部32の刃先321に向かうにつれて幅が広くなるイチョウ葉のような形状であるが、このような形状には限られず、取付部31から刃先321まで幅が等しい矩形状であってもよく、他にどのような形状でもよい。
また、草刈刃3を支持する部材は、シャックル本体42が略円形の(バウ型の)シャックル4に限らず、シャックル本体42が略U字状の(ストレート型の)シャックル4でもよい。
【0036】
[変形例1]
図7、
図8及び
図12を用いて、本発明の実施形態の変形例1の草刈刃3を説明する。
図7は、本発明の草刈刃3を支持する各種リング状部材5の図である。
図8は、本発明の実施形態の変形例1の草刈刃3を、
図7(a)に示すリング状部材5に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
図12は、本発明の実施形態の草刈機1の作業部14の、リング状部材5に草刈刃3を装着した場合の図であり、(a)は左方から見た断面図、(b)は後方から見た断面図である。
リング状部材5の上側の穴に支持軸141cが挿通され、リング状部材5は、支持軸141cにより、ブラケット141bの一対の支持部に縦向きで取り付けられる。
本変形例1の草刈刃3は、別体に形成された取付部31と刃部32を有し、これらを連結部材7とともにボルト61とナット62で固着したものである。
取付部31は、平板状であって、切欠部31aが設けられており、全体として略U字状になっている(
図9の背面図参照)。取付部31と刃部32を固着する際には、取付部31をリング状部材5の下側の穴に挿通し、取付部31の切欠部31aの開口側を、刃部32と取付部31の略U字状の両端部を連結する連結部材7で挟み、ボルト61とナット62で固着される。
【0037】
刃部32は、取付部31との固着箇所は平板状であり、固着箇所から刃先321までの任意の箇所には、曲げ加工された曲面部が形成されている。また、固着箇所側の端部には凹部32aが形成されている。
取付部31と刃部32を固着すると、切欠部31aと凹部32aの組み合わせにより、取付孔311が形成されるようになっている。また、連結部材7にも、刃部32の凹部32aに合わせた凹部7aが形成されている。
なお、連結部材7は、上下逆でも取り付けられるように、上下両側に凹部7aが設けられているが、一方だけに凹部7aが設けられていてもよい。
また、必ずしも連結部材7は取り付けなくてもよい。
このように、取付部31、刃部32、連結部材7、リング状部材5の4つの部材をボルト61とナット62で固着する構造となっているため、4つの部材及びボルト61とナット62のいずれか1つが摩耗や破損した場合、その1つの部材のみを交換することができる。また、4つの部材及びボルト61とナット62のうちの複数の部材を同時に交換できること、4つの部材を同時にまとめて交換できること、4つの部材及びボルト61とナット62全部を同時にまとめて交換できることはいうまでもない。
【0038】
本変形例1では、
図7(a)に示されたリング状部材5を使用している。このリング状部材5は、上方に比べ下方が膨らんだような、すなわち、支持軸141cを挿通する側が小さく、取付部31を挿通する側が大きくなるようなオーバル形状となっている。そして、支持軸141cを挿通する側と取付部31を挿通する側の中央部よりやや支持軸141cを挿通する側に、補強のための連結部51が形成されている。この形状により、支持軸141cを挿通する側は小さいリング形状に、取付部31を挿通する側は大きいリング形状になっている。
支持軸141cを挿通する側の小さいリング形状は、支持軸141cを挿通し、リング状部材5が支持軸141c周りに揺動可能になるのに必要十分な大きさである。取付部31を挿通する側の大きいリング形状は、草刈刃3がリング状部材5に対して回転軸141aの回転方向の前後や左右に大きく揺動可能になるために十分な余裕を持った大きさである。なお、連結部51は、草刈刃3が前後に大きく揺動したときの、草刈刃3の上側に対する移動を制限する機能も有している。
【0039】
なお、取付孔311を形成する取付部31、刃部32及び連結部
図7とリング状部材5は、互いに摺接するので、特に摩耗が激しいため、焼き入れした材料により形成されている。
また、リング状部材5としては、
図7(a)に示す構成に限定されず、
図7(b)に示すような、
図7(a)に示すオーバル形状で連結部51のないもの、
図7(c)に示すような2つの同じ大きさの半円を直線部でつないだ形状(陸上競技のトラックのような形状)で連結部のないもの、
図7(d)に示すような楕円形上で連結部のないものなどでもよいし、
図7(c)(d)に示すような形状で連結部があるものでもよいし、さらに、
図7(a)~(d)に示す形状以外のオーバル形状や円形等のものでもよいし、連結部はあってもなくてもよい。
また、本変形例1では、リング状部材5を使用しているが、シャックル4を使用してもよい。
【0040】
上述のとおり、本変形例1では、取付部31、刃部32、連結部材7、リング状部材5の4つの部材をボルト61とナット62で固着する構造となっているため、各部材を強度などが異なる複数種類を用意しておき、使用状況を考慮して、それぞれの部材を複数種類から選択して自由に組み合わせることができる。例えば、切欠部31aの摩耗が激しい場合、取付部31として厚いものを選択して組み合わせる、刃部32の摩耗や損傷が激しい場合、刃部32として厚いものを選択して組み合わせる、連結部材7の摩耗や損傷が激しい場合、連結部材7として厚いものを選択して組み合わせる、リング状部材5の損傷が激しい場合、リング状部材5として太いものを選択して組み合わせることなどが可能である。
【0041】
[変形例2]
図7、
図9を用いて、本発明の実施形態の変形例2の草刈刃3を説明する。
図9は、本発明の実施形態の変形例2の草刈刃3を、
図7(a)に示すリング状部材5に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
本変形例2の草刈刃3は、変形例1の草刈刃3と、連結部材7を用いない点、ホルト61とナット62の代わりに、リベット8を用いて固着する点で相違するだけなので、詳細な説明は省略する。
なお、本変形例2では、変形例1と同様、連結部材7を用いてもよい。
【0042】
[変形例3]
図7、
図10を用いて、本発明の実施形態の変形例3の草刈刃3を説明する。
図10は、本発明の実施形態の変形例3の草刈刃3を、
図7(a)に示すリング状部材5に取り付けた状態の、六面図及び4方向からの斜視図である。
本変形例3の草刈刃3は、変形例1の草刈刃3と、連結部材7を用いない点、ホルト61とナット62の代わりに、溶接(溶接部9)で固着する点で相違するだけなので、詳細な説明は省略する。
なお、本変形例3では、変形例1と同様、連結部材7を用いてもよい。
【0043】
なお、上述したように、変形例1ではボルト61とナット62を用いて、変形例2ではリベット8を用いて、変形例3では溶接で、取付部31と刃部32を固着したが、接着剤やテープ等を用いて、取付部31と刃部32を固着してもよい。
【0044】
上述のとおり、実施形態及び変形例1~3の草刈刃3は、取付孔311にシャックル4のシャックルピン41又はリング状部材5が取り付けられる。そして、草刈刃3が取り付けられたシャックル4又はリング状部材5が、回転軸141aの軸方向に平行に配置される支持軸141cによりブラケット141bに取り付けられる。
この構成により、実施形態の草刈刃3は、支持軸141cを軸として、シャックル4が大きく回転方向に揺動可能であることから、回転方向に大きく揺動可能になっている。また、変形例1~3の草刈刃3は、支持軸141cを軸として、リング状部材5が大きく回転方向に揺動可能であるとともに、草刈刃3自体がリング状部材に対して回転方向に揺動可能であることから、回転方向に大きく揺動可能である。また、実施形態及び変形例1~3の草刈刃3は、シャックルピン41又はリング状部材5を軸として、大きく左右方向に揺動可能になっている。(
図6及び
図10の正面図と右側面図に付した矢印を参照)
これにより、実施形態及び変形例1~3の草刈刃3は、いずれも回転方向と左右方向の直交する2つの方向に大きく逃げることができるから、石などの衝突による損傷を大きく低減することができる。
【0045】
上述のとおり、実施形態及び変形例1~3の草刈刃3は、刃部32を曲げ加工するだけであるので、容易に板厚を所望の厚さとすることができ、使用による摩耗や損傷などを考慮した板厚とすることで、摩耗や損傷などの影響を低減することができる。
【0046】
以上のとおり、本発明に係る実施形態及びその変形例の、草刈機1及び草刈刃3を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の実施形態及びその変形例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 草刈機
11 装着部
111 ヒッチフレーム
112 ギアボックス
113 入力軸
12 オフセット機構部
121 オフセットフレーム
122 リンクロッド
123 支持フレーム
124 伸縮部材
13 動力伝達部
131 駆動スプロケット
132 従動スプロケット
133 ローラーチェーン
14 作業部
141 作業ロータ
141a 回転軸
141b ブラケット
141c 支持軸
142 ロータカバー
143 側板
144 刈刃駆動部
144a 駆動プーリー
144b 従動プーリー
144c ベルト
144d テンショナー
145 ゲージローラ
145a アーム
145b ローラ体
15 回動機構部
16 回転部
161 第1回転部
162 第2回転部
2 走行車体
21 後方タイヤ
22 三点リンク機構
23 PTO軸
3 草刈刃
31 取付部
311 取付孔
31a 切欠部
32 刃部
321 刃先
32a 凹部
4 シャックル
41 シャックルピン
42 シャックル本体
5 リング状部材
51 連結部
61 ボルト
62 ナット
7 連結部材
8 リベット
9 溶接部