(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094716
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】接着性組成物、中間積層体、積層体および中間積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 123/36 20060101AFI20240703BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20240703BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20240703BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240703BHJP
【FI】
C09J123/36
C09J123/26
C09J123/00
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211448
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】内海 樹
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義人
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA07
4J004AB05
4J004CA01
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA08
4J040DA151
4J040DA161
4J040DA201
4J040DL071
4J040EF331
4J040GA07
4J040GA20
4J040HC23
4J040JA02
4J040JB02
4J040KA14
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4J040KA25
4J040KA26
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4J040KA42
4J040LA04
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB05
4J040NA08
4J040PA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の2つの基材を接着でき、かつ、保存安定性に優れる接着性組成物、その接着性組成物からなる接着剤層を備える中間積層体、その接着性組成物からなる接着剤層を備える積層体、および、その中間積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】接着性組成物は、変性ポリオレフィン樹脂および溶剤を含む。変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリオレフィン樹脂および溶剤を含み、
前記変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている、接着性組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂の、JIS K7122に従って測定される融解熱が0J/g以上60J/g以下である、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項3】
さらに、他のポリオレフィン樹脂を含む、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項4】
さらに、ブロックイソシアネート解離触媒を含む、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項5】
基材と、
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着性組成物の乾燥物である接着剤層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記接着剤層において、前記変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基を有する、中間積層体。
【請求項6】
第1基材と、
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着性組成物の乾燥物である接着剤層と、
前記第1基材と異なる種類の第2基材とを厚み方向一方側に向かって順に備える、積層体。
【請求項7】
基材を準備する第1工程と、
前記第1基材の厚み方向一方面に、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着性組成物を塗布し、200℃未満で乾燥させることにより、接着剤層を配置する第2工程とを備える、中間積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性組成物、中間積層体、積層体および中間積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料などの各種分野において、互いに相異なる種類の2つの基材を貼り合わせて用いることがある。
【0003】
一方、基材の種類が異なると、接着性が低くなる場合がある。
【0004】
そのため、接着性を向上させる観点から、2つの基材の間に、接着剤層を設けることが知られている。
【0005】
このような接着剤層を形成するための材料として、例えば、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体と、炭化水素系合成油とを含むコーティング剤が、提案されている(例えば、特許文献1の実施例1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2013/164976号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のコーティング剤では、2つの基材の種類によっては、接着性が低下するという不具合がある。
【0008】
また、目的および用途に応じて、接着剤層を形成してから、長期保存した後に、その接着剤層により、貼り合わせを実施する場合がある。そのため、接着剤層には、長期保存した後でも、接着性を有すること(保存安定性)が要求される。
【0009】
本発明は、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の2つの基材を接着でき、かつ、保存安定性に優れる接着性組成物、その接着性組成物からなる接着剤層を備える中間積層体、その接着性組成物からなる接着剤層を備える積層体、および、その中間積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、変性ポリオレフィン樹脂および溶剤を含み、前記変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている、接着性組成物である。
【0011】
本発明[2]は、前記ポリオレフィン樹脂の、JIS K7122に従って測定される融解熱が0J/g以上60J/g以下である、上記[1]に記載の接着性組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、さらに、他のポリオレフィン樹脂を含む、上記[1]に記載の接着性組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、さらに、ブロックイソシアネート解離触媒を含む、上記[1]に記載の接着性組成物を含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、基材と、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の接着性組成物の乾燥物である接着剤層とを厚み方向一方側に向かって順に備え、前記接着剤層において、前記変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基を有する、中間積層体を含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、第1基材と、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の接着性組成物の乾燥物である接着剤層と、前記第1基材と異なる種類の第2基材とを厚み方向一方側に向かって順に備える、積層体を含んでいる。
【0016】
本発明[7]は、基材を準備する第1工程と、前記第1基材の厚み方向一方面に、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の接着性組成物を塗布し、200℃未満で乾燥させることにより、接着剤層を配置する第2工程とを備える、中間積層体の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着性組成物における変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている。そのため、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の2つの基材を接着でき、かつ、保存安定性に優れる。
【0018】
詳しくは、この接着性組成物を用いて、互いに相異なる種類の2つの基材を接着する場合には、まず、一の基材の厚み方向一方面に、接着性組成物の乾燥物である接着剤層を配置(形成)した後、この接着剤層を介して、一の基材と他の基材とを貼り合わせることにより、2つの基材を接着する。そして、接着剤層を配置(形成)した時には、接着性組成物における変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基を有する。そのため、接着剤層を形成した後、上記貼り合わせを実施することなく、長期保存した後であっても、接着剤層は接着性を有し、保存安定性に優れる。
【0019】
一方、上記貼り合わせでは、上記ブロックイソシアネート基は、脱ブロック化され、イソシアネート基となる。そして、このようなイソシアネート基と、互いに相異なる種類の2つの基材とが相互反応することにより、接着性が向上する。そのため、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の2つの基材を接着できる。
【0020】
本発明の中間積層体は、接着剤層において、変性ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基を有する。そのため、この中間積層体は、長期保存した後であっても、接着剤層は接着性を有し、保存安定性に優れる。
【0021】
本発明の積層体は、互いに相異なる種類の第1基材および第2基材の間に、本発明の接着性組成物からなる接着剤層を備える。そのため、第1基材と第2基材とを確実に接着することができる。
【0022】
本発明の中間積層体の製造方法は、第1基材の厚み方向一方面に、本発明の接着性組成物を塗布し、200℃未満で乾燥させることにより、接着剤層を配置する第2工程を備える。そのため、接着剤層において、変性ポリオレフィン樹脂のブロックイソシアネート基の脱ブロック化を抑制でき、保存安定性に優れる中間積層体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の中間積層体の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の中間積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
図2Aは、第1基材を準備する第1工程を示す。
図2Bは、第1基材の厚み方向一方面に、接着剤層を配置する第2工程を示す。
【
図3】
図3は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
図4Aは、中間積層体を準備する第3工程を示す。
図4Bは、中間積層体における接着剤層の厚み方向一方面に第2基材を配置し、第1基材および第2基材を接着する第4工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
接着性組成物は、変性ポリオレフィン樹脂および溶剤を含む。
【0025】
<変性ポリオレフィン樹脂>
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている。詳しくは、変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性することにより得られる。
【0026】
[ポリオレフィン樹脂]
ポリオレフィン樹脂は、オレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。
【0027】
オレフィンとしては、例えば、α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および、1-エイコセンが挙げられる。
【0028】
オレフィンとして、好ましくは、炭素数2以上6以下のα-オレフィン、より好ましくは、プロピレン、および、1-ブテンが挙げられる。
【0029】
オレフィンは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、プロピレンおよび1-ブテンの併用が挙げられる。つまり、ポリオレフィン樹脂は、好ましくは、プロピレン/1-ブテン共重合体である。
【0030】
ポリオレフィン樹脂が、プロピレン/1-ブテン共重合体である場合には、プロピレン由来の構成単位および1-ブテン由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、また、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。また、1-ブテン由来の構成単位の含有割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、また、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。
【0031】
ポリオレフィン樹脂は、オレフィンを公知の方法により重合させることにより得られる。また、重合において、必要により、メタロセン触媒を配合することができる。
【0032】
ポリオレフィン樹脂の、JIS K7122に従って測定される融解熱は、例えば、0J/g以上、好ましくは、3J/g以上、好ましくは、10J/g以上、また、例えば、110J/g以下、好ましくは、60J/g以下、より好ましくは、40J/g以下である。
【0033】
上記融解熱が、上記下限以上および上記上限以下であれば、変性ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解あるいは分散することができる。その結果、この接着性組成物を、コーティング剤として調製することができる。また、とりわけ、上記融解熱が、60J/g以下であれば、変性ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解することができ、溶液安定性をより一層向上させることができる。
【0034】
[ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物]
ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物は、1つ以上のブロックイソシアネート基、および、1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物は、好ましくは、1つのブロックイソシアネート基、および、1つの(メタ)アクリロイル基を有する。なお、(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基および/またはアクリロイル基である。
【0035】
このような化合物として、例えば、下記式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と称する。)、および、下記式(2)(以下、化合物(2)と称する。)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
上記式(1)において、R1は、水素原子またはメチル基を示す。R2は、炭素数1~20のアルキレン基を示す。Xは、脱離基を示す。また、上記式(1)において、-NH-C(=O)-Xは、ブロックイソシアネート基である。
【化2】
上記式(2)において、R1は、上記式(1)のR1と同義である。R2は、上記式(1)のR2と同義である。R3は、R2と同一または互いに相異なる炭素数1~20のアルキレン基を示す。また、上記式(2)において、-NH-C(=O)-Xは、ブロックイソシアネート基である。
【0036】
炭素数1~20のアルキレン基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状アルキレン基、および、炭素数1~20の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
【0037】
炭素数1~20の直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレン、オクタデシレン、および、エイコシレンが挙げられる。炭素数1~20の直鎖状アルキレン基として、好ましくは、炭素数1~4の直鎖状アルキレン基が挙げられる。
【0038】
炭素数1~20の分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、イソプロピレン、イソブチレン、s-ブチレン、t-ブチレン、イソペンチレン、s-ペンチレン、2-メチルヘキシレン、2-エチルヘキシレン、および、イソデシレンが挙げられる。炭素数1~20の分岐鎖状アルキレン基として、好ましくは、炭素数2~4の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
【0039】
炭素数1~20のアルキレン基としては、好ましくは、炭素数1~20の直鎖状アルキレン基が挙げられる。炭素数1~20のアルキレン基として、より好ましくは、炭素数1~4の直鎖状アルキレン基が挙げられる。炭素数1~20のアルキレン基として、さらに好ましくは、エチレンが挙げられる。
【0040】
脱離基は、一般的には、下記式(3)に示すように、ブロックイソシアネート基の脱ブロック化により脱離する。また、上記脱離によって、イソシアネート基が再生する。また、下記式(3)において、H-Xは、ブロック剤である。
【0041】
【0042】
ブロック剤としては、特に限定されず、例えば、グアニジン系化合物、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物が挙げられる。ブロック剤として、好ましくは、ピラゾール系ブロック剤、および、オキシム系ブロック剤が挙げられる。
【0043】
ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、および、3-メチル-5-フェニルピラゾール挙げられる。ピラゾール系ブロック剤として、好ましくは、3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0044】
オキシム系ブロック剤としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、および、2-ヘプタノンオキシムが挙げられる。オキシム系ブロック剤として、好ましくは、メチルエチルケトンオキシムが挙げられる。
【0045】
ブロック剤として、好ましくは、ピラゾール系ブロック剤が挙げられる。
【0046】
ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物として、好ましくは、化合物(1)が挙げられる。
【0048】
そして、このような化合物(1)として、好ましくは、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(下記式(4)で示される化合物)、および、2-[0-(1´-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(下記式(5)で示される化合物)が挙げられる。
【化4】
【化5】
【0049】
化合物(1)として、より好ましくは、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレートが挙げられる。
【0050】
イソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
[変性ポリオレフィン樹脂の調製]
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性することにより得られる。
【0052】
具体的には、ポリオレフィン樹脂と、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物とを混合し、これらを反応させる。これにより、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物が、ポリオレフィン樹脂に、グラフトする。
【0053】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、また、10時間以下である。
【0054】
また、上記反応において、必要により、ラジカル重合開始剤を適宜の割合で配合する。
【0055】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物およびアゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物として、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、および、tert-ブチルペルジエチルアセテートが挙げられる。アゾ化合物として、例えば、アゾビス-イソブチルニトリル、および、ジメチルアゾイソブチルニトリルが挙げられる。
【0056】
ラジカル重合開始剤として、好ましくは、有機過酸化物が挙げられる。ラジカル重合開始剤として、より好ましくは、ジ-tert-ブチルパーオキシドが挙げられる。
【0057】
ラジカル重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
また、上記反応は、溶剤の存在下、または、無溶剤で実施する。上記反応は、溶剤の存在下における実施の方がブロック剤を維持しやすい観点から、好ましくは、溶剤の存在下で実施する。
【0059】
溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性なものが好ましい。溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルキルエステル類、グリコールエーテルエステル類、エーテル類および極性非プロトン類が挙げられる。脂肪族炭化水素類として、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、および、オクタンが挙げられる。脂環族炭化水素類として、例えば、シクロヘキサン、および、メチルシクロヘキサンが挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエンおよびキシレンが挙げられる。ケトン類として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンが挙げられる。アルキルエステル類として、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、および、酢酸イソブチルが挙げられる。グリコールエーテルエステル類として、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、および、エチル-3-エトキシプロピオネートが挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および、ジオキサンが挙げられる。極性非プロトン類として、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、および、ヘキサメチルホスホニルアミドが挙げられる。
【0060】
溶剤として、好ましくは、脂環族炭化水素類およびアルキルエステル類が挙げられる。溶剤として、より好ましくは、メチルシクロヘキサンおよび酢酸ブチルが挙げられる。
【0061】
溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
これにより、変性ポリオレフィン樹脂(変性ポリオレフィン樹脂の溶液)が調製される。このような変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物に由来するブロックイソシアネート基を有する。
【0063】
変性ポリオレフィン樹脂の溶液において、その固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0064】
変性ポリオレフィン樹脂に対するイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物の変性量(グラフト量)は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1.0質量%以上、より好ましくは、1.5質量%以上、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5.0質量%以下、より好ましくは、3.0質量%以下である。
【0065】
上記変性量が、上記下限以上および上記上限以下であれば、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の2つの基材(後述する第1基材および第2基材)を接着できる。
【0066】
なお、上記の変性量(グラフト量)は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を調製するときの、各成分の配合割合から求めることができる。また、上記の変性量(グラフト量)は、変性ポリオレフィン樹脂の1H-NMR測定などの公知の手段でも確認できる。
【0067】
変性ポリオレフィン樹脂のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば、50000以上、好ましくは、70000以上、また、例えば、200000以下、好ましくは、150000以下である。
【0068】
上記重量平均分子量が、上記範囲内であれば、変性ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解することができる。その結果、この接着性組成物を、コーティング剤として調製することができる。
【0069】
上記重量平均分子量の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0070】
また、変性ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、例えば、200g/10min以上、例えば、2000g/10min以下である。
【0071】
上記メルトマスフローレイト(MFR)が、上記下限以上であれば、変性ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解することができる。その結果、この接着性組成物を、コーティング剤として調製することができる。
【0072】
なお、メルトマスフローレイト(MFR)は、JIS K 7210に準拠して、プラストメータのシリンダ内温度が230℃、荷重2.16kgfの測定条件にて測定できる。
【0073】
変性ポリオレフィン樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
変性ポリオレフィン樹脂の含有割合は、接着性組成物に対して、例えば、1質量%以上、5質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0075】
<他のポリオレフィン樹脂>
接着性組成物は、接着性(とりわけ、後述するAL-PP接着性)の向上の観点から、他のポリオレフィン樹脂を含むこともできる。
【0076】
他のポリオレフィン樹脂は、上記変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂である。具体的には、他のポリオレフィン樹脂として、例えば、無変性ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、および、水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0077】
[無変性ポリオレフィン樹脂]
無変性ポリオレフィン樹脂として、上記変性ポリオレフィン樹脂において詳述したポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0078】
[酸変性ポリオレフィン樹脂]
酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、不飽和カルボン酸によって変性することにより得られる。
【0079】
ポリオレフィン樹脂としては、上記変性ポリオレフィン樹脂において詳述したポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂として、好ましくは、プロピレン/1-ブテン共重合体が挙げられる。ポリオレフィン樹脂として、好ましくは、上記変性ポリオレフィン樹脂におけるポリオレフィン樹脂と同じポリオレフィン樹脂を用いる。
【0080】
不飽和カルボン酸としては、例えば、炭素数3~8の不飽和カルボン酸が挙げられる。
炭素数3~8の不飽和カルボン酸としては、例えば、一塩基酸、および、二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)、クロトン酸、および、イソクロトン酸が挙げられる。二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルコハク酸、ナジック酸、メチルナジック酸、テトラヒドロフマル酸、および、メチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。
【0081】
また、不飽和カルボン酸には、上記した不飽和カルボン酸の酸無水物が挙げられる。
【0082】
不飽和カルボン酸として、好ましくは、不飽和カルボン酸の酸無水物が挙げられる。不飽和カルボン酸として、より好ましくは、二塩基酸の酸無水物が挙げられる。不飽和カルボン酸として、さらに好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0083】
不飽和カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0084】
そして、酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂と、不飽和カルボン酸とを反応させることにより得られる。このような反応において、不飽和カルボン酸が、ポリオレフィン樹脂に、グラフトする。
【0085】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、また、10時間以下である。
【0086】
また、上記反応において、必要により、ラジカル重合開始剤を適宜の割合で配合する。
【0087】
ラジカル重合開始剤としては、上記変性ポリオレフィン樹脂で詳述したラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0088】
ラジカル重合開始剤として、好ましくは、有機過酸化物が挙げられる。ラジカル重合開始剤として、より好ましくは、ジ-tert-ブチルパーオキシドが挙げられる。
【0089】
また、上記反応は、溶剤の存在下、または、無溶剤で実施する。上記反応は、好ましくは、溶剤の存在下で実施する。
【0090】
溶剤としては、上記変性ポリオレフィン樹脂で詳述した溶剤が挙げられる。溶剤として、好ましくは、脂環族炭化水素類およびアルキルエステル類が挙げられる。溶剤として、より好ましくは、メチルシクロヘキサンおよび酢酸ブチルが挙げられる。また、溶剤として、好ましくは、上記変性ポリオレフィン樹脂で詳述した溶剤と同一の溶剤が選択される。
【0091】
これにより、酸変性ポリオレフィン樹脂(酸変性ポリオレフィン樹脂の溶液)が調製される。
【0092】
酸変性ポリオレフィン樹脂の溶液において、その固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0093】
酸変性ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸の変性量(グラフト量)は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、0.8質量%以上、また、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.0質量%以下である。
【0094】
なお、上記の変性量(グラフト量)は、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂を調製するときの、各成分の配合割合から求めることができる。また、上記の変性量(グラフト量)は、酸変性ポリオレフィン樹脂の1H-NMR測定などの公知の手段でも確認できる。
【0095】
[水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂]
水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、水酸基含有ビニルモノマーによって変性することにより得られる。
【0096】
ポリオレフィン樹脂としては、上記変性ポリオレフィン樹脂において詳述したポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0097】
水酸基含有ビニルモノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0098】
水酸基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0099】
そして、水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂と、水酸基含有ビニルモノマーとを反応させることにより得られる。このような反応において、水酸基含有ビニルモノマーが、ポリオレフィン樹脂に、グラフトする。
【0100】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、また、10時間以下である。
【0101】
また、上記反応において、必要により、ラジカル重合開始剤を適宜の割合で配合する。
【0102】
ラジカル重合開始剤としては、上記変性ポリオレフィン樹脂で詳述したラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0103】
ラジカル重合開始剤として、好ましくは、有機過酸化物が挙げられる。ラジカル重合開始剤として、より好ましくは、ジ-tert-ブチルパーオキシドが挙げられる。
【0104】
また、上記反応は、溶剤の存在下、または、無溶剤で実施する。上記反応は、好ましくは、溶剤の存在下で実施する。
【0105】
溶剤としては、上記変性ポリオレフィン樹脂で詳述した溶剤が挙げられる。溶剤として、好ましくは、脂環族炭化水素類およびアルキルエステル類が挙げられる。溶剤として、より好ましくは、メチルシクロヘキサンおよび酢酸ブチルが挙げられる。また、溶剤として、好ましくは、上記変性ポリオレフィン樹脂で詳述した溶剤と同一の溶剤が選択される。
【0106】
これにより、水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂(水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂の溶液)が調製される。
【0107】
水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂の溶液において、その固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0108】
水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂に対する水酸基含有ビニルモノマーの変性量(グラフト量)は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1.0質量%以上、また、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.0質量%以下である。
【0109】
なお、上記の変性量(グラフト量)は、例えば、水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂を調製するときの、各成分の配合割合から求めることができる。また、上記の変性量(グラフト量)は、水酸基含有ビニルモノマー変性ポリオレフィン樹脂の1H-NMR測定などの公知の手段で確認できる。
【0110】
他のポリオレフィン樹脂として、好ましくは、接着性(とりわけ、後述するAL-PP接着性)の向上の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0111】
他のポリオレフィン樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0112】
他のポリオレフィン樹脂の含有割合は、接着性組成物に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0113】
また、接着性組成物が、他のポリオレフィン樹脂を含む場合には、他のポリオレフィン樹脂の含有割合は、変性ポリオレフィン樹脂および他のポリオレフィン樹脂の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、40質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。また、変性ポリオレフィン樹脂の含有割合は、変性ポリオレフィン樹脂および他のポリオレフィン樹脂の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0114】
<溶剤>
溶剤としては、上記変性ポリオレフィン樹脂において詳述した溶剤が挙げられる。溶剤として、好ましくは、脂環族炭化水素類およびアルキルエステル類が挙げられる。溶剤として、より好ましくは、メチルシクロヘキサンおよび酢酸ブチルが挙げられる。
【0115】
なお、溶剤として、変性ポリオレフィン樹脂および/または他のポリオレフィン樹脂を、溶剤中で製造した場合には、その溶剤を、そのまま、利用することもできる。
【0116】
溶剤の含有割合は、変性ポリオレフィン樹脂と必要により配合される他のポリオレフィン樹脂と必要により配合されるブロックイソシアネート解離触媒(後述)と必要により配合される添加剤(後述)との残部であり、接着性組成物に対して、例えば、60質量%以上、好ましくは、75質量%以上、例えば、90質量%以下である。換言すれば、接着性組成物に対して、変性ポリオレフィン樹脂、および、必要により配合される他のポリオレフィン樹脂の総量(固形分濃度)は、例えば、10質量%以上、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0117】
<ブロックイソシアネート解離触媒>
接着性組成物は、接着性の向上を向上させる観点から、必要により、ブロックイソシアネート解離触媒を含む。
【0118】
ブロックイソシアネート解離触媒としては、例えば、第三級アミンおよび金属化合物が挙げられる。第三級アミンとしては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、および、1,6-ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン-5が挙げられる。金属化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸鉛、およびオクチル酸ビスマスが挙げられる。
【0119】
ブロックイソシアネート解離触媒として、好ましくは、第三級アミンが挙げられる。ブロックイソシアネート解離触媒として、より好ましくは、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7が挙げられる。
【0120】
ブロックイソシアネート解離触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
ブロックイソシアネート解離触媒の含有割合は、接着性組成物に対して、例えば、0.01質量%以上、また、例えば、5質量%以下、好ましくは、1質量%以下である。
【0122】
また、ブロックイソシアネート解離触媒の含有割合は、変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.8質量部以下である。
【0123】
<添加剤>
接着性組成物は、必要により、添加剤を適宜の割合で含む。
【0124】
添加剤として、例えば、顔料、増粘剤、粘着付与剤、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、顔料分散剤、および、帯電防止剤が挙げられる。
【0125】
添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0126】
<接着性組成物の調製>
接着性組成物は、変性ポリオレフィン樹脂と、必要により配合される他のポリオレフィン樹脂と、溶剤と、必要により配合されるブロックイソシアネート解離触媒と、必要により配合される添加剤とを混合することにより調製される。
【0127】
このような接着性組成物において、変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている。そのため、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の2つの基材を接着でき、かつ、保存安定性に優れる。
【0128】
以下、この接着性組成物を用いて、互いに相異なる種類の2つの基材(第1基材および第2基材)を接着する方法について詳述する。詳しくは、第1に、互いに相異なる種類の2つの基材を接着する方法に供する中間積層体およびその中間積層体の製造方法について、詳述する。第2に、互いに相異なる種類の2つの基材を接着する方法(積層体の製造方法)について詳述する。
【0129】
<中間積層体>
本発明の中間積層体は、基材と、接着剤層とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0130】
上記したように、中間積層体は、互いに相異なる種類の2つの基材(第1基材および第2基材)を接着する方法に供するものであるが、以下の説明では、基材が第1基材である態様(換言すれば、後述する第2工程において、第1基材の厚み方向一方面に、接着剤層を配置する態様)において用いられる中間積層体について、詳述する。
【0131】
図1を参照して、本発明の中間積層体の一実施形態を説明する。
【0132】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0133】
中間積層体10は、
図1に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。中間積層体10は、厚み方向と直交する面方向に延びる。中間積層体10は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0134】
中間積層体10は、基材としての第1基材2と、接着剤層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、中間積層体10は、第1基材2と、第1基材2の上面(厚み方向一方面)に直接配置される接着剤層3とを備える。
【0135】
[第1基材]
第1基材2は、フィルム形状を有する。第1基材2は、接着剤層3の下面に接触するように、接着剤層3の下面全面に、配置されている。
【0136】
第1基材2の種類は、第2基材4(後述)の種類と互いに相異なる。種類が互いに相異なるとは、第1基材2を構成する材料および第2基材4(後述)を構成する材料が、互いに相異なる樹脂であるか、または、第1基材2を構成する材料および第2基材4(後述)を構成する材料が、互いに相異なる金属であるか、または、第1基材2を構成する材料および第2基材4(後述)を構成する材料の一方が、金属であり、他方が樹脂である態様を含む。
【0137】
第1基材2を構成する材料として、例えば、樹脂、および、金属が挙げられる。樹脂としては、高極性樹脂材料および低極性樹脂材料が挙げられる。高極性樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂、ポリエスエル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、および、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)が挙げられる。低極性樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)が挙げられる。金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、ステンレス、および、これらの合金が挙げられる。金属として、好ましくは、アルミニウムが挙げられる。
【0138】
[接着剤層]
接着剤層3は、フィルム形状を有する。
【0139】
接着剤層3は、上記接着性組成物の固形分(乾燥物)から形成される。
【0140】
接着剤層3は、詳しくは後述するが、第1基材2の厚み方向一方面に、接着性組成物を塗布し、溶剤を乾燥することにより得られる。
【0141】
また、詳しくは後述するが、上記乾燥において、乾燥温度は、接着剤層3において、変性ポリオレフィン樹脂のブロックイソシアネート基の脱ブロック化を抑制できる温度(上記ブロック剤の解離温度未満の温度)が選択される。そのため、接着剤層3において、変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基を有する。そうすると、この中間積層体10は、長期保存した後であっても、接着剤層3は接着性を有し、保存安定性に優れる。
【0142】
接着剤層3の厚みは、例えば、1μm以上、また、例えば、10μm以下である。
【0143】
<中間積層体の製造方法>
本発明の中間積層体の製造方法は、基材を準備する第1工程と、基材の厚み方向一方面に、接着剤層を配置する第2工程とを備える。
【0144】
図2Aおよび
図2Bを参照して、本発明の中間積層体の製造方法の一実施形態を説明する。
【0145】
中間積層体10の製造方法は、基材としての第1基材2を準備する第1工程と、第1基材2の厚み方向一方面に、接着剤層3を配置する第2工程とを備える。
【0146】
[第1工程]
第1工程では、
図2Aに示すように、第1基材2を準備する。
【0147】
[第2工程]
第2工程では、
図2Bに示すように、第1基材2の厚み方向一方面に接着剤層3を配置する。
【0148】
第1基材2の厚み方向一方面に、接着剤層3を配置するには、上記接着性組成物を第1基材2の厚み方向一方面に塗布し、乾燥させる。これにより、第1基材2の厚み方向一方面に接着剤層3を配置(形成)する。
【0149】
乾燥条件として、乾燥温度は、接着性組成物中に含まれる溶剤などの揮発分が揮発し、かつ、接着剤層3における変性ポリオレフィン樹脂のブロックイソシアネート基の脱ブロック化を抑制できる温度(上記ブロック剤の解離温度未満の温度)であって、例えば、200℃未満、好ましくは、150℃以下で、例えば、10℃以上である。また、乾燥時間は、例えば、3秒以上、好ましくは、30秒以上、また、例えば、1時間以下、好ましくは、30分以下、より好ましくは、5分以下である。
【0150】
乾燥温度が、200℃未満であれば、接着剤層3において、ブロックイソシアネート基の脱ブロック化が抑制される。そのため、変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基を有する。そうすると、この中間積層体10は、長期保存した後であっても、接着剤層3は接着性を有し、保存安定性に優れる。
【0151】
以上により、中間積層体10を製造する。
【0152】
そして、このような中間積層体10は、互いに相異なる種類の2つの基材(第1基材2および第2基材4(後述))を接着する方法に供するもの、換言すれば、中間積層体10は、後述する積層体1の部品である。
【0153】
続いて、この中間積層体10を用いて製造される積層体およびその積層体の製造方法について詳述する。
<積層体>
図3を参照して、本発明の積層体の一実施形態を説明する。
【0154】
積層体1は、
図3に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。積層体1は、厚み方向と直交する面方向に延びる。積層体1は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0155】
積層体1は、中間積層体10(第1基材2と、接着剤層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える中間積層体10)と、第2基材4とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、積層体1は、中間積層体10と、中間積層体10の上面(厚み方向一方面)に直接配置される第2基材4とを備える。また、詳しくは、積層体1は、第1基材2と、接着剤層3と、第2基材4とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0156】
[第2基材]
第2基材4は、フィルム形状を有する。第2基材4は、中間積層体10(接着剤層3)の上面に接触するように、中間積層体10(接着剤層3)の上面全面に、配置されている。
【0157】
第2基材4は、第1基材2と異なる種類の基材である。
【0158】
第2基材4を構成する材料として、上記した第1基材2を構成する材料と同様の材料が挙げられる。第2基材4を構成する材料は、第1基材2を構成する材料とは異なる種類の材料が選択される。第1基材2を構成する材料および第2基材4を構成する材料の組み合わせとして、具体的には、金属と高極性樹脂材料との組み合わせ、金属と低極性樹脂材料との高極性樹脂材料、および、高極性樹脂材料と低極性樹脂材料との組み合わせが挙げられる。
【0159】
<積層体の製造方法>
図4Aおよび
図4Bを参照して、本発明の積層体の製造方法の一実施形態を説明する。
【0160】
積層体1の製造方法は、中間積層体10を準備する第3工程と、中間積層体10における接着剤層3の厚み方向一方面に第2基材4を配置し、第1基材2および第2基材4を接着する第4工程とを備える。
【0161】
[第3工程]
第3工程では、
図4Aに示すように、中間積層体10を準備する。中間積層体10を準備する方法は、上記した中間積層体の製造方法に準じる。
【0162】
[第4工程]
第4工程では、
図4Bに示すように、中間積層体10における接着剤層3の厚み方向一方面に第2基材4を配置し、第1基材2および第2基材4を接着する。
【0163】
具体的には、まず、中間積層体10における接着剤層3の厚み方向一方面に第2基材4を配置し、第1基材2および第2基材4を熱圧着する。
【0164】
熱圧着において、熱圧着の温度は、接着剤層3における変性ポリオレフィン樹脂のブロックイソシアネート基が脱ブロック化する温度(上記ブロック剤の解離温度以上)であって、例えば、120℃以上、好ましくは、200℃以上、また、例えば、300℃以下である。
【0165】
熱圧着の温度が、上記下限以上であれば、上記接着剤層3における変性ポリオレフィン樹脂のブロックイソシアネート基が脱ブロック化し、活性なイソシアネート基が再生する。そして、このようなイソシアネート基によれば、互いに相異なる種類の第1基材2および第2基材4を確実に接着できる。
【0166】
また、熱圧着の圧力は、例えば、0.1MPa以上、また、例えば、1.0MPa以下である。また、熱圧着の時間は、例えば、1秒以上、また、例えば、120秒以下である。
【0167】
その後、必要により、エージングする。エージング温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、80℃以下である。また、エージング時間は、例えば、1日以上、また、例えば、7日以下である。
【0168】
これにより、接着剤層3を介して、第1基材2および第2基材4が接着し、積層体1が得られる。
【0169】
<作用効果>
接着性組成物における変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている。そのため、そのため、第1基材2および第2基材4の種類に関わらず、互いに相異なる種類の第1基材2および第2基材4を接着でき、かつ、保存安定性に優れる。
【0170】
詳しくは、この接着性組成物を用いて、互いに相異なる種類の第1基材2および第2基材4を接着する場合には、まず、第1基材2の厚み方向一方面に、接着性組成物の乾燥物である接着剤層3を配置(形成)した後(具体的には、上記第2工程の後)、この接着剤層3を介して、第1基材2と第2基材4とを貼り合わせる(具体的には、上記第4工程)ことにより、第1基材2および第2基材4を接着する。そして、接着剤層3を配置(形成)した時には、接着性組成物における変性ポリオレフィン樹脂は、ブロックイソシアネート基を有する。そのため、接着剤層3を形成した後、上記貼り合わせを実施することなく、長期保存した後であっても、接着剤層3は接着性を有し、保存安定性に優れる。
【0171】
一方、上記貼り合わせでは、上記ブロックイソシアネート基は、脱ブロック化され、イソシアネート基となる。そして、このようなイソシアネート基と、互いに相異なる種類の第1基材2および/または第2基材4とが相互反応することにより、接着性が向上する。そのため、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の第1基材2および第2基材4を接着できる。
【0172】
また、接着性組成物は、溶剤を含む。つまり、接着性組成物は、ワニスとして調製されている。接着性組成物がワニスとして、調製されていれば、とりわけ、固体の接着性組成物を溶融して基材に積層する場合に比べて、作業性が向上する。
【0173】
中間積層体10は、接着剤層3において、変性ポリオレフィン樹脂が、ブロックイソシアネート基を有する。そのため、この中間積層体10は、長期保存した後であっても、接着性を有し、保存安定性に優れる。
【0174】
積層体1は、互いに相異なる種類の第1基材2および第2基材4の間に、上記接着性組成物からなる接着剤層3を備える。そのため、第1基材2と第2基材4とを確実に接着することができる。
【0175】
中間積層体10の製造方法は、第1基材2の厚み方向一方面に、上記接着性組成物を塗布し、200℃未満で乾燥させることにより、接着剤層3を配置する第2工程を備える。そのため、接着剤層3において、変性ポリオレフィン樹脂のブロックイソシアネート基の脱ブロック化を抑制でき、保存安定性に優れる中間積層体10を製造できる。
【0176】
そして、積層体1は、包装材料などの各種分野において、好適に用いられる。
【0177】
また、上記した説明では、基材が第1基材2である態様(換言すれば、上記第2工程において、第1基材2の厚み方向一方面に、接着剤層3を配置する態様)について、詳述したが、基材が第2基材4であっても(換言すれば、上記第2工程において、第2基材4の厚み方向一方面に、接着剤層3を配置する場合であって)、上記と同様の手順で、中間積層体および積層体を製造できる。
【実施例0178】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0179】
<成分の詳細>
製造例、実施例および比較例に用いる有効成分の詳細を下記に示す。
PBR:プロピレン/1-ブテン共重合体(プロピレン単位75モル%および1-ブテン単位25モル%、融点75℃)、融解熱:30J/g
AOI-BP:2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(上記式(4)で示される化合物)
AOI-VM:2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート(AOI-BPの脱ブロック体)
MAH:無水マレイン酸
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7
AL:アルミニウム基材
PP:ポリプロピレン基材
PET:ポリエチレンテレフタレート基材
PC:ポリカーボネート基材
ABS:アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂基材
PVC:ポリ塩化ビニル基材
【0180】
<変性ポリオレフィン樹脂の製造>
製造例1
撹拌機を備えた内容積1.0Lのオートクレーブに、PBR100質量部および酢酸ブチル283質量部を入れ、撹拌下、145℃に昇温し、PBRを完全に溶解させた。次いで、この溶液を145℃に保ったまま、撹拌下、AOI-BPおよびジ-tert-ブチルパーオキシドを6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、145℃で3時間撹拌して、後反応させた。得られた溶液を80℃まで降温した後、メチルシクロヘキサン283質量部で固形分濃度15%になるように希釈し、変性ポリオレフィン樹脂の溶液を得た。変性ポリオレフィン樹脂に対するAOI-BPの変性量は、1.9質量%であった。また、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、90000であった。変性ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、300g/10minであった。
【0181】
<他のポリオレフィン樹脂の製造>
製造例2
製造例1と同様の手順に基づいて、変性ポリオレフィン樹脂の溶液を得た。但し、AOI-BPに代えて、MAHを用いた。また、変性ポリオレフィン樹脂に対するMAHの変性量は、1.0質量%であった。
【0182】
<その他の変性ポリオレフィン樹脂>
製造例3
製造例1と同様の手順に基づいて、変性ポリオレフィン樹脂の溶液を得た。但し、AOI-BPに代えて、AOI-VMを用いた。また、変性ポリオレフィン樹脂に対するAOI-VMの変性量は、2.1質量%であった。
【0183】
<接着性組成物の製造>
実施例1~実施例4、比較例1および参考例1
表1に記載の配合処方に従って、各成分(変性ポリオレフィン樹脂、他のポリオレフィン樹脂、その他の変性ポリオレフィン樹脂、ブロックイソシアネート解離触媒および溶剤)を混合して、接着性組成物を製造した。得られた接着性組成物の固形分濃度は、12質量%であった。
【0184】
<中間積層体の製造>
[第1工程]
第1基材として、AL(厚み30μm)を準備した。
【0185】
[第2工程および第3工程]
各実施例および各比較例の接着性組成物を、ALの厚み方向一方面に、塗布し、100℃で1分間乾燥して、接着剤層(厚み3μm)を形成した。これにより、中間積層体を製造(準備)した。
【0186】
[第4工程]
接着剤層を形成した後すぐに、接着剤層の厚み方向一方面に、PP(25mm×50mm×2mm)を配置した。次いで、200℃、0.3MPa、3秒の熱圧着条件で熱圧着し、その後、60℃で3日エージングした。その後、一晩室温で静置した。これにより、積層体を製造した。
【0187】
また、第4工程において、接着剤層を形成してから、1か月後および3ヶ月後の中間積層体を準備し、同様の手順に基づいて、積層体を製造した。
【0188】
また、第1基材がALであり、第2基材がPETである場合、第1基材がPPフィルム(厚み100μm)であり第2基材がPETである場合、第1基材がPPフィルムであり、第2基材がPCである場合、第1基材がPPフィルムであり、第2基材がABSである場合、および、第1基材がPPフィルムであり、第2基材がPVCである場合についても、上記と同様の手順で積層体を製造した。
【0189】
また、PET、PC、ABS、および、PVCのサイズは、25mm×50mm×2mmである。
【0190】
<評価>
[融解熱の測定]
ポリオレフィン樹脂(PBR)について、示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融解熱を求めた。10℃/分で30℃から180℃まで昇温後、10℃/分で0℃まで降温し、再度10℃/分で150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に准じて、融解熱を求めた。
【0191】
[重量平均分子量の測定]
製造例1の変性ポリオレフィン樹脂について、重量平均分子量を測定した。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製;LC-10series)を用いて、以下の条件で重量平均分子量(Mw)を測定した。
・検出器:島津製作所社製;C-R4A
・カラム:TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(東ソー社製)
・移動相:テトラヒドロフラン
・温度:40℃
・流量:0.8ml/min
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0192】
[メルトマスフローレイト(MFR)]
製造例1の変性ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)を、JIS K 7210に準拠して、プラストメータのシリンダ内温度が230℃、荷重2.16kgfの測定条件にて測定した。
【0193】
[接着性]
各実施例および各比較例の積層体に対して、幅15mmの短冊状にカッターで切り目を入れた。そして、万能引張測定装置を用いてクロスヘッド速度50mm/分にて180°剥離試験を実施した。具体的には、ALとPPとの間の剥離強度(AL-PP接着性)と、ALとPETとの間の剥離強度(AL-PET接着性)、PPとPETとの間の剥離強度(PP-PET接着性)、PPとPCとの間の剥離強度(PP-PC接着性)、
PPとABSとの間の剥離強度(PP-ABS接着性)、PPとPVCとの間の剥離強度(PP-PVC接着性)を測定した。接着性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
◎:剥離強度が、15N/15mm以上であった。
〇:剥離強度が、8N/15mm以上、15N/15mm未満であった。
△:剥離強度が、4N/15mm以上、8N/15mm未満であった。
×:剥離強度が、4N/15mm未満であった。
【0194】
<考察>
接着性組成物が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている変性ポリオレフィン樹脂を含む実施例1~実施例4は、基材の種類に関わらず、互いに相異なる種類の第1基材および第2基材を接着できるとわかる。
【0195】
一方、接着性組成物が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている変性ポリオレフィン樹脂を含まない比較例1は、基材の種類(例えば、PPおよびPC)によっては、接着できなかった。
【0196】
また、接着性組成物が、ブロックイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている変性ポリオレフィン樹脂を含む実施例1~実施例4は、接着剤層を形成してから、1か月後および3ヶ月後の中間積層体を用いた場合であっても、互いに相異なる種類の第1基材および第2基材を接着できるとわかる。
【0197】
一方、接着性組成物が、イソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物によって変性されている変性ポリオレフィン樹脂を含む参考例1は、接着剤層を形成してから、1か月後および3ヶ月後の中間積層体を用いた場合には、接着性が低下するとわかる。
【0198】