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特開2024-94725製品性能の機械学習処理方式及び予測システム並びに原料の配合提示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094725
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】製品性能の機械学習処理方式及び予測システム並びに原料の配合提示システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240703BHJP
【FI】
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211459
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000200253
【氏名又は名称】JFEシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 彰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】立木 茜
(57)【要約】
【課題】原料の配合で構成される製品の性能を機械学習する際に、原料の変更があった場合でも、変更後の原料に対して新たな学習データの蓄積を待たずに、原料の変化に追従しながら機械学習を可能として、学習成果を得る。
【解決手段】原料を配合および加工して作られる製品に関して、その配合によって決定される製品の性能あるいは製品の性能を満たす配合を機械学習を用いて求める場合において、製品に使用される原料の変更が行われた際に、変更後の原料と変更前に学習に用いられた原料との対応表132に基づいて過去の学習データの配合を変換して再学習をすることにより、変更後の原料を用いた製品の性能評価と、それらデータの蓄積を必要とせずに、機械学習を可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を配合および加工して作られる製品に関して、その配合によって決定される製品の性能あるいは製品の性能を満たす配合を機械学習を用いて求める場合において、
製品に使用される原料の変更が行われた際に、変更後の原料と変更前に学習に用いられた原料との対応表に基づいて過去の学習データの配合を変換して再学習をすることにより、
変更後の原料を用いた製品の性能評価と、それらデータの蓄積を必要とせずに、機械学習を可能とすることを特徴とする製品性能の機械学習処理方式。
【請求項2】
請求項1において、前記変更前および変更後の原料は、いずれも複数原料を組み合わせあるいは配合したものであることを特徴とする製品性能の機械学習処理方式。
【請求項3】
請求項1において、製品を製造する際に用いる製法を製品の構成情報として配合と合わせて学習対象とすることを特徴とする製品性能の機械学習処理方式。
【請求項4】
請求項1において、過去の学習データにおける配合の変換は、対応表が有効となる一部の配合に限定して行うことを特徴とする製品性能の機械学習処理方式。
【請求項5】
請求項1において、適用する対応表に依存して製品の性能評価が変化する場合は、対応表に合わせて性能を変化させるパラメータ情報を保持して過去の学習データの性能評価を補正して再学習に用いることを特徴とする製品性能の機械学習処理方式。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の製品性能の機械学習処理方式により、使用する配合から製品性能を予測することを特徴とする製品性能の予測システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の製品性能の機械学習処理方式を用いて、製品性能を指定して原料の配合を提示することを特徴とする原料の配合提示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品性能の機械学習処理方式及び予測システム並びに原料の配合提示システムに係り、特に、原料が頻繁に変更される加工食品の製造に用いるのに好適な、原料の配合で構成される製品の性能を機械学習するための学習データの再利用を可能とする、製品性能の機械学習処理方式及び予測システム並びに原料の配合提示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の原料を配合して構成される製品の性能を機械学習する技術が、特許文献1や2に記載されている。
【0003】
前記機械学習に際しては、原料の配合と性能の対応付けがなされたデータが用いられる。又、機械学習によって有意な結果を得るには、各原料について、十分な数の配合と性能を対応付けたデータを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-80491号公報
【特許文献2】特開2018-191073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、原料及びその調達において、入手上の制約、コスト、季節変動に依存して、同一製品であっても性能を維持しつつ、構成する原料が変更されることがある。このため、該当する原料の配合が機械学習の入力である場合、変更後の原料による学習データを改めて蓄積する必要があり、新たに学習に十分なデータが揃うまで、その原料を用いた学習結果を利用することができなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、原料の変更があった場合でも、変更後の原料に対して新たなデータの蓄積を待たずに、原料の変化に追従しながら機械学習を可能として、学習成果を得ることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原料を配合および加工して作られる製品に関して、その配合によって決定される製品の性能あるいは製品の性能を満たす配合を機械学習を用いて求める場合において、製品に使用される原料の変更が行われた際に、変更後の原料と変更前に学習に用いられた原料との対応表に基づいて過去の学習データの配合を変換して再学習をすることにより、変更後の原料を用いた製品の性能評価と、それらデータの蓄積を必要とせずに、機械学習を可能とすることにより前記従来の問題点を解消するものである。
【0008】
ここで、前記変更前および変更後の原料は、いずれも複数原料を組み合わせあるいは配合したものとすることができる。
【0009】
又、製品を製造する際に用いる製法を製品の構成情報として配合と合わせて学習対象とすることができる。
【0010】
又、過去の学習データにおける配合の変換を、対応表が有効となる一部の配合に限定して行うことができる。
【0011】
又、適用する対応表に依存して製品の性能評価が変化する場合は、対応表に合わせて性能を変化させるパラメータ情報を保持して過去の学習データの性能評価を補正して再学習に用いることができる。
【0012】
本発明は、又、前記製品性能の機械学習処理方式により、使用する配合から製品性能を予測することを特徴とする製品性能の予測システムを提供するものである。
【0013】
本発明は、又、前記製品性能の機械学習処理方式を用いて、製品性能を指定して原料の配合を提示することを特徴とする原料の配合提示システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同一或いは同等の製品において、原料の変更が行われた場合に、変更前と変更後の原料との対応表を用いて、学習に用いたデータ集合内の配合情報を全て変換して再学習することによって、変更後の原料に対して新たにデータを蓄積することなく、原料の変化に追従しながら学習成果を得ることができる。又、複数の原料の組み合わせで変更が行われる場合でも、単一あるいは複数原料の組み合わせどうしの対応表を用意して変換することで同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の全体構成を示すブロック図
図2】前記実施形態で用いるコンピュータの構成例を示すブロック図
図3】前記実施形態の処理手順を示す流れ図
図4】変更後の原料が、複数原料の組合せである実施例1の対応表の例を示す図
図5】製品を製造する際に用いる製法を製品の構成情報として配合と合わせて学習対象とする実施例2の対応表の例を示す図
図6】過去の学習データにおける配合の変換を、対応表が有効となる一部の配合に限定して行う実施例3の対応表の例を示す図
図7】対応表に合わせて性能を変化させるパラメータ情報を保持して、過去の学習データの性能評価を補正して再学習に用いる実施例4の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0017】
本発明の実施形態は、図1に示す如く、原料変更前の学習データである旧配合表112が記憶された旧配合表記憶部110(例えばデータベース)、同じく原料変更前の旧性能表122が記憶された旧性能表記憶部120、変更前後の原料の対応表132が記憶された対応表記憶部130、該対応表132を用いて前記旧配合表112を新配合表152に置き換えて新配合表記憶部150に記憶すると共に、旧性能表122を補正して新性能表162を得て新性能表記憶部160に記憶する対応表変換部140を備えたデータ変換装置100と、該データ変換装置100の新配合表記憶部150及び新性能表記憶部160に記憶された新配合表152及び新性能表162を用いて機械学習を行う機械学習装置200と、該機械学習装置200の学習結果を保存する学習結果記憶部210と、該学習結果記憶部210の再学習結果と新規配合により製品の性能(例えば加工食品の場合は味や食感)を予測して性能予測表310を得る性能予測装置300と、同じく学習結果記憶部210に記憶された学習結果を利用して要求性能を満足する配合最適化表410を作成する配合最適化装置400とを備えている。
【0018】
前記対応表変換部140、機械学習装置200、性能予測装置300、配合最適化装置400は、例えば図2に示すようなコンピュータ500を用いて構成することができる。該コンピュータ500は、例えば各種演算処理を行う中央処理ユニット(CPU)510と、データを入力するための入力インタフェース(入力I/O)520と、データを処理するためのコンピュータプログラムなどが記憶されたRead Only Memory(ROM)530と、演算途中のデータを一時的に記憶するためのRandom Access Memory(RAM)540と、データを出力するための出力インターフェース(出力I/O)550と、前記各構成要素510~550を接続するシステムバス560とを備えて構成されている。
【0019】
前記配合は、必要に応じて製法も含む。又、旧新配合の原料は1対1とは限らない。
【0020】
以下、図3を参照して実施形態の処理手順を説明する。
【0021】
まず、ステップ1000で、新旧配合と新旧性能の対応表132を作成して対応表記憶部130に記憶する。対応表132は、例えば試作又は実績に基づいて作成することができる。
【0022】
次いでステップ1100で、旧配合表記憶部110と旧性能表記憶部120に記憶された学習済みの旧配合表112と旧性能表122を呼び出す。
【0023】
次いでステップ1200に進み、旧配合表112を対応表132を用いて新配合と置き換えて新配合表152を作成し、新配合表記憶部150に記憶する。
【0024】
又、ステップ1300で、新配合で旧性能表122を補正して、新性能表162を作成し、新性能表記憶部160に記憶する。
【0025】
次いでステップ1400に進み、新配合表152と新性能表162を用いて再び機械学習を行い、ステップ1500で、再学習結果を学習結果記憶部210に記憶する。
【0026】
次いでステップ1600に進み、性能予測装置300で再学習結果と新規配合を用いて、性能予測表310を得る。このようにして得た性能予測表310を用いて性能を予測できる。
【0027】
又、ステップ1700で、配合最適化装置400で再学習結果と要求性能を用いて配合を最適化し、配合最適化表410を得る。このようにして得た配合最適化表410を用いて最適な配合を得ることができる。
【0028】
[実施例1]
変更後の原料が、複数原料の組合せ或いは配合したものの例である実施例1を図4に示す。
【0029】
旧配合表113が対応表133によって新配合表153に変換される。ここでは、旧配合表113の白だしが入手困難となったため、鰹節、昆布及び水の組合せに変更され、新配合表153が得られている。
【0030】
[実施例2]
製品を製造する際に用いる製法を製品の構成情報として配合と合わせて学習対象としたものの例である実施例2を図5に示す。
【0031】
旧配合表114に示すように、変更前はA社ちくわぶを生で用いていたのが、変更後は対応表134に示すように、B社ちくわぶを焼入れして用いるようにして、新配合表154を得ている。なお、関西風おでんはA社ちくわぶを用いていなかったので、配合はそのままである。
【0032】
[実施例3]
過去の学習データにおける配合の変化を、対応表が有効となる一部の配合に限定して行ったものの例である実施例3を図6に示す。
【0033】
旧配合表115では、関東風おでん、関西風おでん、九州おでんのいずれにおいても産地を指定しない大根を用いていたのが、対応表135に示すように、大根が練馬産大根に変更されたため、新配合表155に示すように、関東風おでんと関西風おでんの大根を練馬産大根に変更し、九州おでんでは産地を指定しない大根をそのまま用いている。
【0034】
[実施例4]
適用する対応表に依存して製品の性能評価が変化する場合に、対応表に合わせて性能を変化させるパラメータ情報を保持して過去の学習データの性能評価を補正して再学習に用いるものの例である実施例4を図7に示す。
【0035】
対応表136に鑑みて、旧配合表116の産地を指定しない大根が新配合表156では練馬産大根に入れ替わっており、旧性能表126の香り2.0、4.0は新性能表166の香り2.4、4.8に変化している。
【0036】
このようにして、原料の変更があった場合でも、新たな学習データの蓄積を待たずに機械学習を行う事ができ、その時点で使用可能な原料に基づいて、連続して性能の予測や配合の提示を行う事ができる。
【0037】
又、機械学習の制約となっていた、変化する原料を元にする配合での学習データの不足を解消することができる。
【0038】
更に、機械学習での精度を確保するために、原料が変更される都度、本発明を適用することで、各時点で使用可能な原料に対して十分な学習データを維持することができる。
【0039】
なお、前記実施形態においては本発明が加工食品に適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、他の製品一般にも同様に適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0040】
100…データ変換装置
110…旧配合表記憶部
112、113、114、115、116…旧配合表
120…旧性能表記憶部
122、126…旧性能表
130…対応表記憶部
132、133、134、135、136…対応表
140…対応表変換部
150…新配合表記憶部
152、153、154、155、156…新配合表
160…新性能表記憶部
162、166…新性能表
200…機械学習装置
210…学習結果記憶部
300…性能予測装置
310…性能予測表
400…配合最適化装置
410…配合最適化表
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7