(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094733
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】紫外光照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20240703BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61L9/20
G01J1/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211469
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
【テーマコード(参考)】
2G065
4C180
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB05
2G065AB11
2G065AB27
2G065AB28
2G065BA09
2G065BA29
2G065BB21
2G065BC14
2G065BC21
2G065BD04
2G065BD05
2G065CA05
2G065DA05
2G065DA07
2G065DA10
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH17
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】紫外光源が点灯しているか否かをより確実に検知できる紫外光照射装置を提供する。
【解決手段】紫外光を発する少なくとも一つの紫外光源と、紫外光源から発せられる紫外光が入射されると、紫外光が入射した面とは異なる面から可視光域に属する光を出射する波長変換部材と、波長変換部材から出射される可視光を検知する受光素子と、紫外光源が収容される第一空間と、受光素子が収容される第二空間とが、前記波長変換部材によって仕切られている筐体と、紫外光源から発せられた紫外光を、第一空間から筐体の外側へと取り出すための光取出し部とを備える。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を発する少なくとも一つの紫外光源と、
前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、前記紫外光が入射した面とは異なる面から可視光域に属する光を出射する波長変換部材と、
前記波長変換部材から出射される可視光を検知する受光素子と、
前記紫外光源が収容される第一空間と、前記受光素子が収容される第二空間とが、前記波長変換部材によって仕切られている筐体と、
前記紫外光源から発せられた前記紫外光を、前記第一空間から前記筐体の外側へと取り出すための光取出し部とを備えることを特徴とする紫外光照射装置。
【請求項2】
前記受光素子は、Siフォトダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項3】
前記波長変換部材は、前記紫外光源から見て、前記光取出し部が設けられた前記筐体の壁面、及び前記光取出し部と対向する前記筐体の壁面とは異なる方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項4】
前記紫外光源は、内側に17族元素ガスと18族元素ガスとを含む発光ガスが封入された長尺状の発光管と、前記発光管の管軸方向に離間して配置された一対の電極とを備えるエキシマランプであることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項5】
前記発光管に封入されている前記発光ガスは、クリプトン(Kr)ガスと、塩素(Cl)ガスとを含むことを特徴とする請求項4に記載の紫外光照射装置。
【請求項6】
前記光取出し部は、波長が190nm以上240nm未満の範囲内に属する紫外光を透過するとともに、波長が240nm以上280nm未満の範囲内に属する紫外光の透過を抑制する、誘電体多層膜からなる光学フィルタを備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の紫外光照射装置。
【請求項7】
それぞれの前記発光管の管軸が略平行となるように前記第一空間内に配列された複数の前記紫外光源を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の紫外光照射装置。
【請求項8】
前記波長変換部材は、前記紫外光源から見て、前記発光管の前記管軸方向における一端部側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の紫外光照射装置。
【請求項9】
前記波長変換部材は、可視光に対して透過性を示す少なくとも一つの透過層と、前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、可視光域の属する蛍光を出射する蛍光体を含有する少なくとも一つの蛍光層とを備えることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項10】
前記透過層は、主たる成分がガラス、又は樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の紫外光照射装置。
【請求項11】
前記波長変換部材は、前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、可視光域の属する蛍光を出射する粒子状の蛍光体と、及び可視光に対して透過性を示し、前記蛍光体を固着させる固着材とを含む板状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項12】
前記固着材は、主たる成分がガラス、又は樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の紫外光照射装置。
【請求項13】
前記受光素子から出力される検知信号に基づいて、前記紫外光源に供給する電力を制御する点灯制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の紫外光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光(特に、「UV-C」とも称される波長帯域の紫外光)を利用した殺菌処理やウイルスの不活化処理(以下、まとめて「不活化処理」と称する場合がある。)、オゾンの生成による空間の清浄化処理が知られている。このような処理には、多くの場合、低圧水銀ランプ等から出射される、波長が254nm付近の紫外光が利用されている。紫外光による処理は、薬剤等を散布することなく、対象空間や対象物に紫外光を照射するだけで不活化処理が行うことができるため、特に、新型コロナウイルス(Covid-19)感染症の流行により、高い注目を浴びている。
【0003】
紫外光は、人が視認することができない光であるため、紫外光源が点灯しているか否かを目視で確認することが難しい。そこで、エキシマランプの外表面上にエキシマランプから発せられる紫外光を可視光に変換する蛍光体層を設け、当該蛍光体層から出射される可視光を光検出器によって検出する構成が提案されている(下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記特許文献1に記載の紫外光照射装置に関し、更なる改良や使用用途について鋭意検討していたところ、上述したような近年の状況等により、以下のような課題に直面した。
【0006】
菌、又はウイルスの不活化処理に紫外光を利用することが検討されており、人が頻繁に往来する空間内での使用についても積極的に検討されている。波長帯域にもよるが、紫外光は、人体に対して有害な波長帯が存在する。また、近年、人体に対して有害性が極めて小さいことが明らかにされている波長帯域も存在するが、人体に対する安全性を考慮し、当該波長域の紫外光であっても、積算照射量に関して上限値が設定されている場合がある。
【0007】
このような事情により、最近では、空間内へ紫外光を照射しつつ、当該空間内を往来する人への影響をできる限り小さくするため、従来に比べて弱い強度の紫外光を出射できる紫外光照射装置が求められている。また、使用状況や動作する時間帯に応じて紫外光源の調光制御を行うことのニーズが高まっており、誤検知の回避等を目的として、微弱な紫外光や、短パルスの紫外光を精度よく検知できることの重要性が高まっている。
【0008】
ここで、本発明者は、上記特許文献1に記載の紫外光照射装置を用いて、所定の空間に対して従来よりも弱い強度の紫外光を照射し、当該空間内の不活化処理を行うことについて鋭意検討を行っていた。ところが、上記特許文献1に記載の紫外光照射装置は、エキシマランプから発せられる紫外光の強度が弱くなると、蛍光体層から出射される可視光の強度も弱くなってしまう。
【0009】
このため、従来構成の紫外光照射装置は、可視光を検出する光検出器が、エキシマランプの外表面に設けられた蛍光体層から出射される可視光ではなく、窓部材を介して筐体内に入射した可視光を受光してしまい、エキシマランプが点灯していないにも関わらず、エキシマランプが点灯していると誤検知しやすくなってしまう。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、紫外光源が点灯しているか否かをより確実に検知できる紫外光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紫外光照射装置は、
紫外光を発する少なくとも一つの紫外光源と、
前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、前記紫外光が入射した面とは異なる面から可視光域に属する光を出射する波長変換部材と、
前記波長変換部材から出射される可視光を検知する受光素子と、
前記紫外光源が収容される第一空間と、前記受光素子が収容される第二空間とが、前記波長変換部材によって仕切られている筐体と、
前記紫外光源から発せられた前記紫外光を、前記第一空間から前記筐体の外側へと取り出すための光取出し部とを備えることを特徴とする。
【0012】
ここでの「波長変換部材によって仕切られている」とは、波長変換部材が筐体内の空間を第一空間と第二空間とに分断する隔壁を構成している場合や、第一空間と第二空間とを連絡するように設けられた穴や穿孔、開口部等を覆う、又は埋めるように設けられている場合が相当する。つまり、第一空間側から第二空間側を見たときに、第二空間は、波長変換部材によって隠された状態となる。
【0013】
上記構成とすることで、光取出し部から第一空間内に入射して第二空間に向かって進行しようとする可視光の多くは、隔壁又は波長変換部材によって遮られるため、受光素子にまではほとんど到達しない。
【0014】
したがって、受光素子は、筐体の外側から入射する可視光を検知しにくくなるため、紫外光源から発せられる紫外光の強度が弱く、波長変換部材から発せられる可視光の強度が非常に弱い場合であっても、紫外光源の点灯を検知することができる。
【0015】
上記紫外光照射装置において、
前記受光素子は、Siフォトダイオードであっても構わない。
【0016】
Siフォトダイオードは、受光した光の強度に応じた電流を発生させる特徴を有し、紫外光源の点灯/消灯のみならず、紫外光源の点灯状態をも検知することができる。また、Siフォトダイオードは、対象とする光の波長帯域それぞれに適した素子も存在しており、波長変換部材が発する蛍光の波長帯と、筐体の外側から第一空間内に入射しやすい波長帯の光との関係から、より適した素子を選択することができる。
【0017】
上記紫外光照射装置において、
前記波長変換部材は、前記紫外光源から見て、前記光取出し部が設けられた前記筐体の壁面、及び前記光取出し部と対向する前記筐体の壁面とは異なる方向に配置されていても構わない。
【0018】
光取出し部が設けられた壁面、及び光取出し部と対向する壁面は、その他の壁面に比べて、筐体の外側から入射する光が直接照射されやすい。また、光取出し部と対向する壁面は、多くの場合、放電ランプの電極や、固体光源が載置される基板が載置される。このため、当該壁面は、波長変換部材や受光素子が電極に印加される電圧の影響を受けてしまうおそれや、紫外光源から発せられた紫外光が遮光されるおそれがある。
【0019】
そこで、上記構成とすることで、筐体の外側から光取出し部を介して入射する可視光が第二空間に入射しにくくなるとともに、紫外光源から発せられる紫外光を、より多く波長変換部材に入射させることができる。さらに、上記構成によれば、受光素子や波長変換部材に対して、紫外光源に印加されるような高電圧が印加されにくくなり、信頼性が高められた紫外光照射装置が実現される。
【0020】
上記紫外光照射装置において、
前記紫外光源は、内側に17族元素ガスと18族元素ガスとを含む発光ガスが封入された長尺状の発光管と、前記発光管の管軸方向に離間して配置された一対の電極とを備えるエキシマランプであっても構わない。
【0021】
上記紫外光照射装置において、
前記発光管に封入されている前記発光ガスは、クリプトン(Kr)ガスと、塩素(Cl)ガスとを含んでいても構わない。
【0022】
さらに、上記紫外光照射装置において、
前記光取出し部は、波長が190nm以上240nm未満の範囲内に属する紫外光を透過するとともに、波長が240nm以上280nm未満の範囲内に属する紫外光の透過を抑制する、誘電体多層膜からなる光学フィルタを備えていても構わない。
【0023】
近年では、波長が190nm以上240nm未満の範囲内に属する紫外光に関し、人体への影響が極めて小さく、かつ、菌等の不活化処理に有効であることについて、多くの報告がなされている。そして、最近の新型コロナウイルス(Covid-19)感染症の流行により、当該波長範囲の紫外光による不活化処理は、特に注目を集めている。例えば、波長240nm以上の紫外光は、人の皮膚を透過しやすく、皮膚内部まで浸透しやすい。そのため、人の皮膚内部の細胞がダメージを受けやすい。これに対して、波長240nm未満の紫外光は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収されやすく、波長が短くなるほど皮膚内部にまで浸透し難いため、紫外光による人体への影響が小さい。これは、皮膚を構成するたんぱく質の紫外光吸収スペクトルにおいて、波長240nm未満で吸収率が高くなることからもいえることである。特に、より短い波長帯域において人体への安全性がより高められる。例えば、波長237nm以下の波長帯域に属する紫外光であることが望ましく、更には、波長235nm以下の波長帯域に属する紫外光であることが望ましい。また、短波長の光は空間中にオゾンを発生させやすいため、波長200nm以上の波長帯域に属する紫外光がより適している。この観点から、波長200nm以上235nm以下の波長帯域に属する紫外光を積極的に利用することが望ましい。
【0024】
そこで、上記構成とすることで、人体に対する影響が極めて小さい波長域の紫外光を出射し、人体への影響が懸念される波長域に紫外光の出射を抑制することができる。すなわち、上記構成の紫外光照射装置は、人に対する安全性がより高められる。
【0025】
また、波長が190nm以上240nm未満の紫外光を用いた場合の本発明の対象製品は、人や動物の皮膚や目に紅斑や角膜炎を起こすことはなく、紫外光本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の紫外光源とは異なり、有人環境で使用できるという特徴を生かし、屋内外の有人環境に設置することで、環境全体を照射することができ、空気と環境内設置部材表面のウイルス抑制・除菌を提供することができる。
【0026】
このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【0027】
上記紫外光照射装置は、
それぞれの前記発光管の管軸が略平行となるように前記第一空間内に配列された複数の前記紫外光源を備えていても構わない。
【0028】
さらに、上記紫外光照射装置において、
前記波長変換部材は、前記紫外光源から見て、前記発光管の前記管軸方向における一端部側に配置されていても構わない。
【0029】
上記構成によれば、波長変換部材から紫外光源を見たときに、全ての発光管の端部が見える。つまり、上記構成の紫外光照射装置は、全ての紫外光源から発せられる紫外光が波長変換部材に入射するため、複数の紫外光源のうちの一部の紫外光源について、点灯しているか否か検知することができる。
【0030】
上記紫外光照射装置において、
前記波長変換部材は、可視光に対して透過性を示す少なくとも一つの透過層と、前記透過層の主面上に、前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、可視光域に属する蛍光を出射する蛍光体を含有する少なくとも一つの蛍光層とを備えていても構わない。
【0031】
さらに、上記紫外光照射装置において、
前記透過層は、主たる成分がガラス、又は樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の紫外光照射装置。
【0032】
上記紫外光照射装置において、
前記波長変換部材は、前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、可視光域の属する蛍光を出射する粒子状の蛍光体と、可視光に対して透過性を示し、前記蛍光体を固着させる固着材とを含む板状の部材であっても構わない。
【0033】
さらに、上記紫外光照射部材において、
前記固着材は、主たる成分がガラス、又は樹脂であっても構わない。
【0034】
本明細書において、「略平行」とは、製造バラつきによって生じ得る程度の傾きをも含む意図で用いられ、対比対象となる軸や方向に関し、傾斜角度が5°未満であることが想定されている。
【0035】
「可視光域」とは、一般的に人が視覚によって確認できる光の波長域である。「可視光域」の波長範囲の定義はさまざまであるが、本明細書においては、波長が400nm以上800nm未満の帯域を指すものとして用いられる。
【0036】
蛍光体は、例えば、Y3Al5O12:Ce3+、La3Si6N11:Ce3+、(La,Y)3Si6N11:Ce3+等からなる、粒子状の材料である。蛍光層は、例えば、これらの粒子と、シリカ等のバインド材とを混合したものを押し固め、焼結することで作製される。
【0037】
上述した波長変換部材は、筐体の外側から第一空間内に入射した可視光が、第二空間内へと入射しにくくなるように、一方の主面に入射した可視光に対し、他方の主面から出射される可視光の割合(以下、波長変換部材に関する「透光率」は、当該定義で用いられる。)が、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。なお、波長変換部材の透光率は、例えば、透過層と蛍光層による構成の場合、それぞれの膜厚、又は全体の層数により調整され、蛍光体を含有する板材による構成の場合、板材の厚み、又は蛍光体の含有量により調整される。
【0038】
上記紫外光照射装置において、
前記受光素子から出力される検知信号に基づいて、前記紫外光源に供給する電力を制御する点灯制御部を備えていても構わない。
【0039】
上記構成とすることで、紫外光源から発せられる紫外光の強度が、意図せず変動した場合等においても、紫外光源に供給する電力の制御を行い、所望の強度での紫外光照射を維持することができる。つまり、より安全性と信頼性が高められた紫外光照射装置が実現される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、紫外光源が点灯しているか否かをより確実に検知できる紫外光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】紫外光照射装置の一実施形態の外観を模式的に示す図面である。
【
図2】紫外光照射装置の一実施形態の外観を模式的に示す図面である。
【
図3】
図1に示す紫外光照射装置をY方向に見たときの断面図である。
【
図4A】
図1に示す紫外光照射装置からカバー部材を取り除いた状態の全体斜視図である。
【
図4B】
図1に示す紫外光照射装置からカバー部材を取り除いた状態の全体斜視図である。
【
図4C】
図1に示す紫外光照射装置からカバー部材を取り除いた状態の全体斜視図である。
【
図5】
図4Aの筐体の本体を+X側から見たときの図面である。
【
図6】紫外光照射装置の別実施形態を、カバー部材を取り除いた状態で+X側から見たときの模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の紫外光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、紫外光照射装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0043】
図1は、紫外光照射装置1の一実施形態の外観を模式的に示す図面であり、
図2は、紫外光照射装置1の一実施形態の、
図1とは異なる方向から見た場合の外観を模式的に示す図面である。また、
図3は、
図1に示す紫外光照射装置1をY方向に見たときの断面図である。
図2に示すように、本実施形態の紫外光照射装置1は、筐体2と、筐体2の内側に収容された光源部3と、光取出し部4とを備える。
【0044】
図4Aは、
図1に示す紫外光照射装置1からカバー部材2aを取り除いた状態の全体斜視図であり、
図5は、
図4Aの筐体2の本体2bを+X側から見たときの図面である。以下の説明においては、
図3に示すように、光源部3と光取出し部4とが対向している方向をX方向、当該発光管30の管軸方向をY方向とし、X方向とY方向とに直交する方向をZ方向として説明する。
【0045】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。
図1及び
図2に示す紫外光照射装置1においては、紫外光L1が取り出される方向が「+X方向」に対応する。
【0046】
本実施形態の紫外光照射装置1は、
図1及び
図2に示すように、一対の給電線(8a,8b)を備える。
【0047】
図2に示すように、筐体2は、カバー部材2aと本体2bとを備える。カバー部材2aは、内側に収容される光源部3で発生する紫外光を、外側に取り出すための光取出し部4が設けられている。本体2bは、一対の給電端子(9a,9b)が設けられており、それぞれ対応する給電線(8a,8b)を介して外部電源(不図示)に接続される。
【0048】
筐体2は、カバー部材2aと本体2bとが組み合わせられて、光源部3を内側に収容するように構成されているが、例えば、カバー部材2aと本体2bとが回動部材によって連結されて、一体的に構成されていても構わない。
【0049】
本体2bは、第一空間A1と第二空間A2とが内側に構成されている。
図4A及び
図5に示すように、第一空間A1は、内側に光源部3が配置されており、第二空間A2は、内側に受光素子7が配置されている。
【0050】
また、第一空間A1と第二空間A2とは、筐体2の隔壁A2aに設けられた穴2b1を介して連絡されており、当該穴2b1は、波長変換部材6によって覆われている。すなわち、第一空間A1及び第二空間A2は、本体2bにカバー部材2aが被せられることで、波長変換部材6によって仕切られた二つの閉空間となる。なお、第二空間A2は第一空間A1よりも狭くなるよう設計されており、点灯を検知する機構が小型に取り付けることができる。
【0051】
また、本発明において、第一空間A1と第二空間A2は、波長変換部材6によって仕切られた状態であればよい。さらに、波長変換部材6と受光素子7とが密着している、又は十分近くに配置されており、受光素子7に対して可視光が進行しにくい構成のような場合においては、第一空間A1を閉空間としつつも、第二空間A2を閉空間とはしない構成が採用されても構わない。
【0052】
なお、本実施形態では、筐体2を構成する一つの本体2bで、第一空間A1と第二空間A2とを構成しているが、本体2bは、第一空間A1を構成する部材から、第二空間A2を構成する部材を取り外せるように構成されていても構わない。
【0053】
図4Bは、
図1に示す紫外光照射装置1からカバー部材2aを取り除いた状態の、
図4Aとは別構成の全体斜視図である。また、
図4Bに示すように、第一空間A1と第二空間A2とは、穴2b1に埋設された波長変換部材6によって仕切られていても構わない。
図4Cは、
図1に示す紫外光照射装置1からカバー部材2aを取り除いた状態の、
図4A及び
図4Bとは別構成の全体斜視図である。
図4Cに示すように、波長変換部材6は、第一空間A1側において、穴2b1を覆うように配置されていても構わない。なお、
図4Cでは、穴2b1が波長変換部材6によって隠されている。
【0054】
なお、波長変換部材6の設置方法については、穴2b1を覆うように固定、接着させてもよく、当該穴2b1の開口部を埋めるように設置することでもよい。また、筐体が第一空間を構成する第一筐体と、第二空間を構成する第二筐体とを備え、第一筐体の開口部と第二筐体の開口部とを仕切るように、第一筐体と第二筐体とで波長変換部材を挟むことによって実現されていても構わない。
【0055】
穴2b1を設ける位置、すなわち、波長変換部材6を設ける位置は、任意であるが、電極(31a,31b)と近接することで高電圧が印加されないこと、外側から光取出し部4から光が到達しにくく、かつ、光源部3から出射される紫外光L2が到達しやすいことを考慮すると、光源部3から見て、光取出し部4が設けられた筐体2の壁面(+X側の壁面)、及び光取出し部4と対向する筐体2の壁面(-X側の壁面)とは異なる位置に設けられることが好ましい。
【0056】
波長変換部材6は、光源部3から発せられる紫外光L2が第一空間側の面に入射されると、他方の主面から可視光域に属する蛍光を出射する部材である。そして、本実施形態における波長変換部材6は、可視光に対して透過性を示す少なくとも一つの透過層と、前記紫外光源から発せられる前記紫外光が入射されると、可視光域の属する蛍光を出射する蛍光体を含有する蛍光層とが積層された多層膜により構成されている。
【0057】
蛍光体は、上述したように、例えば、Y3Al5O12:Ce3+、La3Si6N11:Ce3+、(La,Y)3Si6N11:Ce3+等からなる、粒子状の材料である。蛍光層は、例えば、これらの粒子と、シリカ等のバインド材とを混合したものを押し固め、焼結することで作製される。透過層は、例えば、樹脂層やガラス層等である。
【0058】
また、本実施形態における波長変換部材6は、+Y側の面から入射し、-Y側の面から出射される場合の可視光域の光に対する透過率が50%以下となるように、蛍光体の材質や厚みが調整されている。第二空間A2に配置された受光素子7が、筐体2の外側から光取出し部4を通過して第一空間A1内に入射した可視光を受光して、光源部3が点灯していると誤検知してしまうことを抑制する観点から、波長変換部材6は、+Y側の面から入射し、-Y側の面から出射される場合の可視光域の光に対する透過率が25%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが特に好ましい。可視光域の光に対する透過率が低いほど、筐体外からの外乱光を遮光しやすい。
【0059】
なお、波長変換部材6は、上記構成には限られず、例えば、粒子状の蛍光体と、可視光に対して透過性を示す固着材、より具体的には、樹脂、又はガラスといった可視光に対して透過性を示す固着材とともに練り混ぜて、板状に成形して硬化させた部材であっても構わない。
【0060】
受光素子7は、波長変換部材6から第二空間A2側に向かって出射される可視光L3を検知する素子である。本実施形態における受光素子7は、可視光域の光を受光すると、検知信号として受光した光の強度に応じた大きさの電流を発生させるSiフォトダイオードである。なお、受光素子7としては、Siフォトダイオードの他に、例えば、CdSセル(光可変抵抗)やフォトカプラ等を採用し得る。
【0061】
また、受光素子7は、波長変換部材6に対して近い距離に配置することが望ましい。具体的には、受光素子7の受光面の最大幅(W)に対して、受光素子7と波長変換部材6の離間距離(D)は、W>Dの関係を満たすように構成されることが好ましい。例えば、受光素子7の受光面の最大幅(W)が5mmであるとき、受光素子7と波長変換部材6の離間距離(D)は5mmより小さくなるように構成されることが好ましい。
【0062】
このように、受光素子と波長変換部材が近い距離に配置されることで、受光素子が受ける可視光の大部分が、波長変換部材6からの可視光L3となるよう(可視光L3をより主体的に受光するよう)に調整でき、仮に、筐体の外からの外乱光が入り込む場合にも誤検知を防止する効果が得られる。また、紫外光源から発せられる紫外光の強度が弱く、波長変換部材6から発せられる可視光の強度が非常に弱い場合であっても、光源部3の点灯が検知されやすくなる。
【0063】
図4A及び
図5においては図示されてはいないが、受光素子7は、供給される電流の大きさに応じた変化を示す、LEDやブザー等、又は、発生した電流に応じて所定の信号を発する演算装置や送受信装置等に接続される。当該構成により、紫外光照射装置1の周辺にいる人、又は、紫外光照射装置1のメンテナンスを行う作業者が、例えば、一部のランプや発光素子が不点灯状態となっていることを、視覚や聴覚によって、又は専用の装置や端末を用いて簡単に確認することができる。
【0064】
本実施形態における光取出し部4は、石英ガラス板5aと、石英ガラス板5aの主面上に設けられた光学フィルタ5により構成されている。光源部3から発せられた紫外光L2は、光取出し部4に形成された光学フィルタ5を通過し、紫外光L1として筐体2の外側に出射される。
【0065】
光学フィルタ5は、屈折率の異なる層が積層されてなる誘電体多層膜を用いることができる。例えば、屈折率が異なるシリカ(SiO
2)とハフニア(HfO
2)とが積層された誘電体多層膜である。本実施形態における誘電体多層膜は、各層の膜厚及び積層数を調整することによって、波長が190nm以上240nm未満の範囲内に属する紫外光を透過し、波長が240nm以上300nm未満の範囲内に属する紫外光を実質的に透過しないように構成されている。この点は、
図7を参照して後述する。なお、光学フィルタ5を構成する材料としては、シリカやハフニア以外に、アルミナ(Al
2O
3)やジルコニア(ZrO
2)等を採用しても構わない。
【0066】
また、光源部3は、強度スペクトル幅が狭小で、240nm以上300nm未満の範囲内に含まれる波長成分の紫外光をほとんど発しないような光源である場合は、紫外光照射装置1は、光学フィルタ5が搭載されていなくても構わない。
【0067】
本実施形態における光源部3は、
図3に示すように、一対の電極(31a,31b)と、管軸が略平行となるように配置された複数の長尺状の発光管30とを備え、それぞれの発光管30が紫外光源に相当するエキシマランプである。本実施形態の紫外光照射装置1に搭載されているエキシマランプは、発光管30内にクリプトン(Kr)ガスと塩素(Cl)ガスとを含む発光ガスが封入されており、電極(31a,31b)間に電圧を印加することで、それぞれの発光管30内で主たる発光波長が222nmである紫外光L2が発生する。
【0068】
ここで、「主たる発光波長」とは、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。
【0069】
そして、本実施形態においては、
図5に示すように、全ての発光管30から発せられる紫外光L2が波長変換部材6に入射しやすいように、波長変換部材6が、各発光管30のY方向における一端部側(-Y側)に配置されている。
【0070】
なお、光源部3は、主たる発光波長が190nm以上240nm未満の範囲内に属する紫外光を発する光源であれば、上述した構成以外のエキシマランプであってもよく、例えば、発光管30内にクリプトン(Kr)ガスと臭素(Br)ガスとを含む発光ガスが封入されて、主たる発光波長が207nmである紫外光を発するエキシマランプを採用し得る。
【0071】
また、光源部3を構成するエキシマランプの形状は、本実施形態の構成に限られず、電極が円筒形状を呈する発光管に対して径方向に離間して配置された、一重管形状、又は二重管形状とも称される構成のエキシマランプであってもよく、管軸に直交する平面で切断したときの断面の形状が矩形状を呈する扁平管形状とも称される構成のエキシマランプであっても構わない。
【0072】
さらに、光源部3は、エキシマランプに限られず、LED等を採用しても構わない。例えば、240nm未満に主たる発光波長を有するAlGaN系LEDやMgZnO系LEDが採用できる。
【0073】
さらに、光源部3として、コヒーレント光源を用いる場合は、ガスレーザや固体レーザ素子からコヒーレントな紫外光を放射するものであってもよく、又は、ガスレーザや固体レーザ素子から放射される光を利用して波長の異なるコヒーレント光を新たに発生させる波長変換素子を用いるものであってもよい。波長変換素子としては、例えば、レーザ素子から放射される光の周波数を逓倍化させて、第二次高調波発生(SHG)や第三次高周波発生(THG)等の高次高周波を発生させる非線形光学結晶を用いることができる。
【0074】
さらに、光源部3は、上述したいずれの光源を採用する場合においても、一つのランプや、発光素子だけで構成されていても構わない。
【0075】
一対の電極(31a,31b)は、本体2bに固定されて、それぞれ対応する接続端子(9a,9b)と電気的に接続されている。当該構成により、各接続端子(9a,9b)が給電線(8a,8b)を介して外部電源(不図示)と電気的に接続される。
【0076】
電極(31a,31b)は、
図4Aに示すように、それぞれがY方向に離間して配置された、発光管30が載置されるように凹部が形成された導電性の材料からなるブロック状の部材である。また、電極(31a,31b)には、発光管30で発生した紫外光を、効率よく光取出し部4へと導くためのテーパ31dが形成されている。
【0077】
電極(31a,31b)の具体的な材料としては、例えば、Al、Al合金、ステンレス等を採用し得る。なお、本実施形態における電極(31a,31b)の材料は、Alであって、+X側の面全体が、発光管30内で発生し、光取出し部4とは反対側(-X側)に向かって進行する光を、光取出し部4側(+X側)に向かうように反射する第一反射面31cを構成している。本実施形態では、
図3及び
図4Aに示すように、テーパ31dが、第一反射面31cとしても機能する。
【0078】
また、本実施形態においては、
図4Aに示すように、電極(31a,31b)間に、-X側に向かって進行する光を、+X側に向かうように反射する第二反射面32aを構成するための反射部材32が設けられている。
【0079】
上記構成によれば、光取出し部4を介して筐体2内へと進行した可視光の少なくとも一部は、反射部材によって反射されるため、当該可視光が受光素子7にまでより到達しにくくなる。
【0080】
以上より、本実施形態の紫外光照射装置1は、光取出し部4から第一空間A1内に入射して第二空間A2に向かって進行しようとする光の多くが、隔壁A2a又は波長変換部材6によって遮られるため、受光素子7にまではほとんど到達しない。
【0081】
したがって、受光素子7は、筐体2の外側から入射する可視光を検知しにくくなるため、仮に、紫外光源から発せられる紫外光の強度が弱く、波長変換部材6から発せられる可視光の強度が非常に弱い場合であっても、光源部3の点灯を検知することができる。
【0082】
また、本実施形態の紫外光照射装置1は、電極(31a,31b)によって構成される第一反射面31c、及び反射部材32によって構成される第二反射面32aを備えることで、光源部3から発せられた紫外光L2を、光取出し部4からより多く筐体2の外側へと出射させることができる。
【0083】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0084】
〈1〉
図6は、紫外光照射装置1の別実施形態を、カバー部材2aを取り除いた状態で+X側から見たときの模式的な図面である。
図6に示すように、紫外光照射装置1は、受光素子7から出力される信号s1に応じて、電極(31a,31b)間に印加する電圧の大きさを制御する点灯制御部60を備えていても構わない。
【0085】
点灯制御部60は、電気回路、CPU、マイコン、PCやタブレット等の外部機器等である。そして、点灯制御部60が受け取る信号s1は、採用する構成にもよるが、電流や電圧等のアナログ信号であってもよく、所定のシーケンスで送信されるデジタル信号であってもよい。
【0086】
また、信号s1の入出力する構成は、紫外光照射装置1が、信号s1を送信するための送信部を備え、点灯制御部60が、信号s1を受信するための受信部を備え、無線通信で送受信するような構成であっても構わない。
【0087】
上記構成とすることで、例えば、発光管30のいずれかが何らかの理由により意図せず不点灯となった場合においても、当該状態を点灯制御部60が検知し、点灯状態の発光管30が発する光強度を高める制御を実行することができるため、光取出し部4(
図1参照)から出射される紫外光L1が、所望の光強度で維持される。つまり、光源部3を構成する一部の光源が消灯してしまった場合においても、紫外光照射装置1は、期待される効果を発揮し続けることができる。
【0088】
〈2〉 上述した紫外光照射装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0089】
1 : 紫外光照射装置
2 : 筐体
2a : カバー部材
2b : 本体
2b1 : 穴
3 : 光源部
4 : 光取出し部
5 : 光学フィルタ
5a : 石英ガラス板
6 : 波長変換部材
7 : 受光素子
8a,8b : 給電線
9a,9b : 給電端子
30 : 発光管
31a,31b : 電極
31c : 第一反射面
31d : テーパ
32 : 反射部材
32a : 第二反射面
60 : 点灯制御部
A1 : 第一空間
A2 : 第二空間
A2a : 隔壁
L1,L2 : 紫外光
L3 : 可視光