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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094736
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】リニューアルトンネルとその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240703BHJP
   E02D 29/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E21D11/08
E02D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211472
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】前川 英範
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康弘
【テーマコード(参考)】
2D147
2D155
【Fターム(参考)】
2D147AC10
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】既設トンネルの内部にコンクリートを打設してリニューアルトンネルを施工するに当たり、良好な施工性の下で施工でき、工期を可及的に短縮することのできるリニューアルトンネルとその施工方法を提供する。
【解決手段】既設トンネル10の内側に、隙間15を設けた状態でプレキャスト型枠20が配設され、隙間15に現場打ちコンクリート体30が形成されている、リニューアルトンネル100であり、プレキャスト型枠20は、既設トンネル10の軸方向に分割された複数のセグメントリング20Aが相互に接続されることにより形成され、既設トンネル10の床面13にはセグメントリング20Aを支持する支持体40が固定され、支持体40にプレキャスト型枠20が固定され、プレキャスト型枠20の全周に現場打ちコンクリート体30が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設トンネルの内側に、隙間を設けた状態でプレキャスト型枠が配設され、該隙間に現場打ちコンクリート体が形成されている、リニューアルトンネルであって、
前記プレキャスト型枠は、前記既設トンネルの軸方向に分割された複数のセグメントリングが相互に接続されることにより形成され、
前記既設トンネルの床面には、前記セグメントリングを支持する支持体が固定されており、
前記支持体に前記プレキャスト型枠が固定され、該プレキャスト型枠の全周に前記現場打ちコンクリート体が形成されていることを特徴とする、リニューアルトンネル。
【請求項2】
前記セグメントリングは、下方に開放している正面視アーチ形の上半セグメントと、上方に開放している正面視コの字形の下半セグメントとを備え、
前記上半セグメントと前記下半セグメントのそれぞれのリング継手面には、双方のセグメント継手面同士が接続された際に無端状シールを形成する、半割シールが取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のリニューアルトンネル。
【請求項3】
前記支持体は、
前記軸方向に延設する一対のレールと、
前記軸方向に間隔を置いて配設され、前記床面に対してアンカー筋を介して固定されて、各レールを支持する複数の台座とを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリニューアルトンネル。
【請求項4】
前記プレキャスト型枠の下方の外周の少なくとも一部には、金属片が露出しており、
金属製の前記レールに対して前記金属片が溶接接合されていることを特徴とする、請求項3に記載のリニューアルトンネル。
【請求項5】
前記下半セグメントにエア抜き孔と第1打設孔が設けられ、
前記上半セグメントの頂部もしくは頂部近傍に第2打設孔が設けられ、該上半セグメントの外周面における該第2打設孔に対応する位置に吹上管が取り付けられており、
前記第1打設孔、前記第2打設孔及び前記吹上管を介して、コンクリートが前記プレキャスト型枠の内部から前記隙間に打設されるようになっていることを特徴とする、請求項2に記載のリニューアルトンネル。
【請求項6】
前記プレキャスト型枠のうち、コンクリート打設の際の妻部となる該プレキャスト型枠を構成する前記セグメントリングの端面には、妻型枠が取り付けられており、
前記妻型枠は、
側方に張り出して該セグメントリングの周方向に延びる帯状の金属板と、
前記金属板に固定されて該周方向に延びる止水板と、
前記止水板と前記既設トンネルの壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルを該既設トンネルの壁面に固定する控え材とを有することを特徴とする、請求項2に記載のリニューアルトンネル。
【請求項7】
既設トンネルの内側に、隙間を設けた状態でプレキャスト型枠を配設し、該隙間に少なくともコンクリートを打設し、コンクリートが硬化することによってリニューアルトンネルを施工する、リニューアルトンネルの施工方法であって、
前記プレキャスト型枠は、前記既設トンネルの軸方向に分割された複数のセグメントリングにより形成され、
前記既設トンネルの床面に、前記プレキャスト型枠を支持する支持体を設置する、A工程と、
前記セグメントリングをフォークリフトにより搬送し、前記支持体の上に設置して固定し、これを繰り返すとともに、隣接するセグメントリング同士を接続することにより、前記既設トンネルとの間に前記隙間を備えた状態で前記プレキャスト型枠を形成する、B工程と、
前記プレキャスト型枠の内部から前記隙間へコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化してなる現場打ちコンクリート体と該プレキャスト型枠とを有するリニューアルトンネルを施工する、C工程とを有することを特徴とする、リニューアルトンネルの施工方法。
【請求項8】
前記セグメントリングは、下方に開放している正面視アーチ形の上半セグメントと、上方に開放している正面視コの字形の下半セグメントとを備え、
前記B工程では、
前記下半セグメントと前記上半セグメントのそれぞれに対して、フォークリフトの爪が挿入される挿入部を備えた搬送用治具を取り付け、
前記フォークリフトの爪を前記挿入部に挿入して前記下半セグメントを搬送して前記支持体の上に設置し、前記上半セグメントを搬送して該下半セグメントの上に設置し、該下半セグメントと該上半セグメントを接続することにより、前記既設トンネルの内側に前記隙間を備えた状態で前記セグメントリングを形成し、複数の該セグメントリングを相互に接続して前記プレキャスト型枠を形成することを特徴とする、請求項7に記載のリニューアルトンネルの施工方法。
【請求項9】
前記セグメントリングのうち、前記既設トンネルに対向する外周面を目粗し面としておき、
コンクリートの打設に際して、前記目粗し面を湿潤状態とすることを特徴とする、請求項7又は8に記載のリニューアルトンネルの施工方法。
【請求項10】
前記リニューアルトンネルの施工区間は、複数のコンクリートの打設区間を備えており、
前記B工程では、前記打設区間に亘って複数の前記セグメントリングを接続してプレキャスト型枠分割体を形成し、該プレキャスト型枠分割体のうち、コンクリート打設の際の妻部となる該セグメントリングの端面において、側方に張り出して該セグメントリングの周方向に延びる金属板を設置し、該金属板に対して前記プレキャスト型枠分割体の周方向に延びる止水板を設置し、該止水板と前記既設トンネルの壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタルを設置し、該エキスパンドメタルを該既設トンネルの壁面に対して控え材にて固定した後、前記C工程にて前記打設区間における前記隙間にコンクリートを打設し、
前記B工程と前記C工程をセット工程として、前記施工区間に亘って該セット工程を複数回繰り返すことを特徴とする、請求項7又は8に記載のリニューアルトンネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニューアルトンネルとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に施工済みの既設トンネルの老朽化に対する補強対策として、あるいは、既設トンネルを他の目的に供用するための対策として、既設トンネルの内部にコンクリートを打設してリニューアルトンネルを施工する場合がある。
一例としては、ダムの堤体の構築やリニューアルに際して、堤体の構築完成後に、ダムの上流側と下流側を繋ぐように施工される転流トンネル(仮排水トンネル)の内部に新規のコンクリートを打設して補強し、リニューアルトンネルとする例を挙げることができる。
尚、このような転流トンネルをリニューアルする施工では、リニューアル施工の安全性を担保するべく、そのトンネル最上流区間は閉塞され、他の区間には新規のコンクリートが打設されてリニューアルトンネルとされる場合もある。このような転流トンネルにおける閉塞区間と貯水池のカーテングラウチングとが一連の止水面を形成するように施工されることで、ダム自体の止水性が高められることから、このような一連の施工は閉塞工と称することができる。
【0003】
既設トンネルの内側にコンクリートを打設してリニューアルトンネルを施工する方法では、インバート用のコンクリートを打設し、所定の強度発現までの養生期間を経た後、インバートの上に既設トンネルの坑壁との間に隙間を有した状態で上半トンネル用の型枠を設置し、隙間にコンクリートを打設する方法が適用される。
このコンクリート打設に際しては、スライドセントルを利用することで工期の短縮が図られる場合もあるが、インバート用のコンクリートを打設した後の養生期間の確保や、インバートと上半トンネルのコンクリート打設を分けて行うこと、上半トンネル用の型枠の設置、さらには、上半トンネル用のコンクリートを打設し、養生期間を経た後の脱型等により、往々にして工期が長期化することになる。
そして、既設トンネルの断面寸法が小さな場合は、施工のためのスペースが狭くなることから、工期の長期化は一層顕著になるとともに、施工性が大きく低下し得る。
従って、既設トンネルの内部にコンクリートを打設してリニューアルトンネルを施工する施工方法において、施工性が良好であり、工期を可及的に短縮できる施工方法が望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、既設埋設配管の補修再生方法が提案されている。この補修再生方法は、地中にあって老朽化している埋設配管の内部に、円弧状のリングシームと複数のリングシーム同士を繋ぐサイドシームとを備えたカゴ型のフレームを挿入し、フレーム内に円弧状のセグメントを挿入し、セグメントの前後フランジ部をリングシームの溝部に嵌め込み、セグメントの両側のサイドフランジ部をサイドシームに嵌め込んだ後、サイドフランジ部間とサイドシームの溝部内にエポキシ樹脂を充填して硬化させ、セグメントにて形成される内管と埋設配管の間にモルタル等の充填材を注入する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-126223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の既設埋設配管の補修再生方法によれば、セグメントにて形成される内管を使用することで、上記するように型枠の設置や脱型を不要にはできるものの、埋設配管の内部にフレームを挿入した後に、フレームに対してセグメントを後から嵌め込むことから、施工が複雑であり、さらには、フレームとセグメントの接合箇所をエポキシ樹脂にて硬化させた後に、内管と埋設配管の間にモルタル等の充填材を注入することから、工期の短縮を図ることができるか否かは定かでない。
【0007】
本発明は、既設トンネルの内部にコンクリートを打設してリニューアルトンネルを施工するに当たり、良好な施工性の下で施工でき、工期を可及的に短縮することのできるリニューアルトンネルとその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明によるリニューアルトンネルの一態様は、
既設トンネルの内側に、隙間を設けた状態でプレキャスト型枠が配設され、該隙間に現場打ちコンクリート体が形成されている、リニューアルトンネルであって、
前記プレキャスト型枠は、前記既設トンネルの軸方向に分割された複数のセグメントリングが相互に接続されることにより形成され、
前記既設トンネルの床面には、前記セグメントリングを支持する支持体が固定されており、
前記支持体に前記プレキャスト型枠が固定され、該プレキャスト型枠の全周に前記現場打ちコンクリート体が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、既設トンネルの内側に隙間を設けた状態でプレキャスト型枠が配設され、隙間に現場打ちコンクリート体が形成されていることにより、プレキャスト型枠は脱型不要でそのままリニューアルトンネルの構成要素となることと、プレキャスト型枠が複雑な構成を有していないことにより、良好な施工性の下でリニューアルトンネルを施工でき、工期を可及的に短縮することができる。
また、プレキャスト型枠が既設トンネルの軸方向に分割された複数のセグメントリングによって形成されていることから、各セグメントリングを順次既設トンネル内における設置位置まで搬送し、設置するのみでよいことから、既設トンネルの内部が狭い場合や、既設トンネルが曲線区間を有する線形であっても、スムーズに各セグメントリングを搬送して設置し、複数のセグメントリングのリング継手面同士を接続することができる。
さらに、既設トンネルの床面においてセグメントリングを支持する支持体が固定され、支持体にプレキャスト型枠が固定されて、プレキャスト型枠の全周に現場打ちコンクリート体が形成されていることにより、プレキャスト型枠の全周に対して一度に現場打ちコンクリート体を施工できることから、現場打ちコンクリート体の施工性が向上し、例えば、インバートと上半トンネルでコンクリート打設を分割する場合のように、止水性が課題となる打ち継ぎ面の発生を解消できる。
【0010】
ここで、「プレキャスト型枠の全周に現場打ちコンクリート体が形成される」とは、断面形状が円形や馬蹄形のプレキャスト型枠(セグメントリング)の文字通り全周に現場打ちコンクリート体が存在することを意味しており、セグメントリングが例えば既設トンネルの軸方向に延設する一条もしくは二条で一対の支持体に支持されることにより、支持体で支持されているセグメントリングの下方に現場打ちコンクリートが施工される際に、連続して、セグメントリングの上半の側方にも現場打ちコンクリートを施工することが可能になる。
【0011】
このように、セグメントリングの全周にコンクリートを打設することから、セグメントリングにはコンクリート打設時の浮き上がり力が生じ得るが、セグメントリングと支持体が相互に固定されていることから、セグメントリングの浮き上がりを防止することができる。さらに、コンクリート打設時にセグメントリングには側圧が生じるが、セグメントリングと支持体が固定されていることにより、作用する側圧によってセグメントリングが側方へずれることも防止できる。
【0012】
また、「セグメントリング」とは、断面が円形もしくは馬蹄形の連続した1つのリングの形態や、周方向に複数の分割リングがそれぞれのセグメント継手面同士で接続されることにより、1つのセグメントリングが形成されている形態が含まれる。
【0013】
また、本発明によるリニューアルトンネルの他の態様において、
前記セグメントリングは、下方に開放している正面視アーチ形の上半セグメントと、上方に開放している正面視コの字形の下半セグメントとを備え、
前記上半セグメントと前記下半セグメントのそれぞれのリング継手面には、双方のセグメント継手面同士が接続された際に無端状シールを形成する、半割シールが取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、セグメントリングが、上半セグメントと下半セグメントを備えていることにより、セグメントの搬送性がより一層良好になる。さらに、上半セグメントと下半セグメントのそれぞれのリング継手面において、双方のセグメント継手面同士が接続された際に無端状シールを形成する半割シールが取り付けられていることにより、既設トンネルの軸方向に複数のセグメントリングのリング継手面同士を接続した際に、当該リング継手面に無端状シールが介在することから、止水性の高いリニューアルトンネルを形成できる。
尚、本態様では、下方に開放している正面視アーチ形の上半セグメントと、上方に開放している正面視コの字形の下半セグメントによってセグメントリングが形成されることから、このセグメントリングの正面視形状は馬蹄形となる。
【0015】
また、本発明によるリニューアルトンネルの他の態様において、
前記支持体は、
前記軸方向に延設する一対のレールと、
前記軸方向に間隔を置いて配設され、前記床面に対してアンカー筋を介して固定されて、各レールを支持する複数の台座とを有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、セグメントリングを支持する支持体が、軸方向に延設する一対のレールと、軸方向に間隔を置いて配設され、床面に対してアンカー筋を介して固定されて各レールを支持する複数の台座とを有することにより、既設トンネルの軸方向に連続するプレキャスト型枠を一対のレールによって安定的に支持することができる。
さらに、レールの下方に、隙間を備えた状態で複数の台座が床面に固定された状態で配設されていることにより、セグメントリングの例えば内部の下方から打設されたコンクリートは、この隙間を介してセグメントリングの上半側へ流れることができ、セグメントリングの全周に対する打ち継ぎ面のない連続したコンクリート打設を実現できる。
【0017】
また、本発明によるリニューアルトンネルの他の態様において、
前記プレキャスト型枠の下方の外周の少なくとも一部には、金属片が露出しており、
金属製の前記レールに対して前記金属片が溶接接合されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、プレキャスト型枠の下方の外周の少なくとも一部に金属片が露出し、金属製のレールに対して金属片が溶接接合されていることにより、現場において支持体を構成するレールとプレキャスト型枠を強固に接続することができる。ここで、プレキャスト型枠を構成するセグメントリングは、コンクリート製セグメント、鋼製セグメント、コンクリートと鋼の合成セグメントのいずれであってもよいが、鋼製セグメントである場合は、その全部が金属製であることから、レールとの当接箇所が「金属片」となる。一方、コンクリート製セグメントの場合は、レールとの当接箇所に金属片が外部に露出した状態で埋設される。
【0019】
また、レールの幅が、既設トンネルの軸方向に直交する方向へのセグメントリングの移動調整代となり、レールの幅の範囲内でセグメントリングの位置を所望に調整することが可能になる。
【0020】
また、本発明によるリニューアルトンネルの他の態様は、
前記下半セグメントにエア抜き孔と第1打設孔が設けられ、
前記上半セグメントの頂部もしくは頂部近傍に第2打設孔が設けられ、該上半セグメントの外周面における該第2打設孔に対応する位置に吹上管が取り付けられており、
前記第1打設孔、前記第2打設孔及び前記吹上管を介して、コンクリートが前記プレキャスト型枠の内部から前記隙間に打設されるようになっていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、下半セグメントにエア抜き孔と第1打設孔が設けられていることにより、効果的にエア抜きを実行しながら下半セグメントの下方にコンクリートを打設することができる。また、エア抜き孔は、コンクリートのセグメントリング内へのコンクリートの吹き出しをもってコンクリートの密実な充填を確認する打設確認孔としても機能し、さらには、振動機(バイブレータ)を下半セグメントの下方に挿入してコンクリートの振動締固めを行う機能も有している。
【0022】
一方、上半セグメントの頂部等にある第2打設孔と、これに連通する吹上管とによって上半セグメントの背面にコンクリートが打設されることで、上半セグメントの背面に効率的にコンクリートを打設することができ、吹上管があることで特に現場打ちコンクリート体の厚みが大きな場合に天端におけるコンクリートの打設を行い易くできる。より具体的には、流動性の悪いコンクリート(硬めのコンクリート)が充填される場合でも、上半セグメントの頂部では吹上管の高さレベルまで安定的にコンクリートを打設することが可能になる。上半セグメントの頂部の上方の隙間で、既設トンネルの坑壁との間には僅かにコンクリートの未打設領域が生じ得るため、この未打設領域には、既設トンネルの坑壁に予め設置しているグラウト配管等を介してグラウトを注入する。この際、吹上管の高さレベルを可能な限り既設トンネルの坑壁に近接したレベルに設定しておくことで、高価なグラウトの充填量を低減することができて好ましい。
【0023】
また、本発明によるリニューアルトンネルの他の態様は、
前記プレキャスト型枠のうち、コンクリート打設の際の妻部となる該プレキャスト型枠を構成する前記セグメントリングの端面には、妻型枠が取り付けられており、
前記妻型枠は、
側方に張り出して該セグメントリングの周方向に延びる帯状の金属板と、
前記金属板に固定されて該周方向に延びる止水板と、
前記止水板と前記既設トンネルの壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルを該既設トンネルの壁面に固定する控え材とを有することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、プレキャスト型枠のうち、コンクリート打設の際の妻部となるセグメントリングの端面に妻型枠が取り付けられ、妻型枠が、側方に張り出して周方向に延びる帯状の金属板と、金属板に固定されて周方向に延びる止水板と、止水板と既設トンネルの壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタルと、エキスパンドメタルを既設トンネルの壁面に固定する控え材を有することにより、妻部における高い止水性を保証することができる。
【0025】
また、本発明によるリニューアルトンネルの施工方法の一態様は、
既設トンネルの内側に、隙間を設けた状態でプレキャスト型枠を配設し、該隙間に少なくともコンクリートを打設し、コンクリートが硬化することによってリニューアルトンネルを施工する、リニューアルトンネルの施工方法であって、
前記プレキャスト型枠は、前記既設トンネルの軸方向に分割された複数のセグメントリングにより形成され、
前記既設トンネルの床面に、前記プレキャスト型枠を支持する支持体を設置する、A工程と、
前記セグメントリングをフォークリフトにより搬送し、前記支持体の上に設置して固定し、これを繰り返すとともに、隣接するセグメントリング同士を接続することにより、前記既設トンネルとの間に前記隙間を備えた状態で前記プレキャスト型枠を形成する、B工程と、
前記プレキャスト型枠の内部から前記隙間へコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化してなる現場打ちコンクリート体と該プレキャスト型枠とを有するリニューアルトンネルを施工する、C工程とを有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、既設トンネルの床面にプレキャスト型枠を支持する支持体を設置し、セグメントリングをフォークリフトにより搬送して支持体の上に設置し、これを繰り返しながら隣接するセグメントリング同士を接続してプレキャスト型枠を形成し、プレキャスト型枠の内部から背面の隙間へコンクリートを打設して現場打ちコンクリート体を施工することにより、プレキャスト型枠は脱型不要でそのままリニューアルトンネルの構成要素となることと、プレキャスト型枠が複雑な構成を有していないことから、良好な施工性の下でリニューアルトンネルを施工でき、工期を可及的に短縮することができる。
さらに、セグメントリングをフォークリフトによって搬送することから、既設トンネルの内部が狭い場合や、既設トンネルが曲線区間を有する線形であっても、スムーズに各セグメントリングを設置位置まで搬送することができる。尚、このような曲線区間を有する線形の既設トンネルを施工対象とする場合に、推進工法を適用してセグメントリングを順次送り出す施工方向では、既設トンネルの軸方向の線形に対応したスムーズな送り出しは極めて難しい。
【0027】
また、本発明によるリニューアルトンネルの施工方法の他の態様において、
前記セグメントリングは、下方に開放している正面視アーチ形の上半セグメントと、上方に開放している正面視コの字形の下半セグメントとを備え、
前記B工程では、
前記下半セグメントと前記上半セグメントのそれぞれに対して、フォークリフトの爪が挿入される挿入部を備えた搬送用治具を取り付け、
前記フォークリフトの爪を前記挿入部に挿入して前記下半セグメントを搬送して前記支持体の上に設置し、前記上半セグメントを搬送して該下半セグメントの上に設置し、該下半セグメントと該上半セグメントを接続することにより、前記既設トンネルの内側に前記隙間を備えた状態で前記セグメントリングを形成し、複数の該セグメントリングを相互に接続して前記プレキャスト型枠を形成することを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、セグメントリングが、上半セグメントと下半セグメントを備え、各セグメントにおいてフォークリフトの爪が挿入される挿入部を備えた搬送用治具が取り付けられていて、フォークリフトの爪を挿入部に挿入した状態で各セグメントを搬送することにより、セグメントの搬送性がより一層良好になる。
【0029】
また、本発明によるリニューアルトンネルの施工方法の他の態様は、
前記セグメントリングのうち、前記既設トンネルに対向する外周面を目粗し面としておき、
コンクリートの打設に際して、前記目粗し面を湿潤状態とすることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、セグメントリングのうち、既設トンネルに対向する外周面が予め目粗しされた目粗し面とされ、コンクリートの打設に際して目粗し面を散水等によって湿潤状態とすることにより、打設されたコンクリートとの密着性が良好になり、セグメントリングと現場打ちコンクリート体との接合界面における接合強度を高めることができる。
【0031】
また、本発明によるリニューアルトンネルの施工方法の他の態様は、
前記リニューアルトンネルの施工区間は、複数のコンクリートの打設区間を備えており、
前記B工程では、前記打設区間に亘って複数の前記セグメントリングを接続してプレキャスト型枠分割体を形成し、該プレキャスト型枠分割体のうち、コンクリート打設の際の妻型枠となる該セグメントリングの端面において、側方に張り出して該セグメントリングの周方向に延びる金属板を設置し、該金属板に対して前記プレキャスト型枠分割体の周方向に延びる止水板を設置し、該止水板と前記既設トンネルの壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタルを設置し、該エキスパンドメタルを該既設トンネルの壁面に対して控え材にて固定した後、前記C工程にて前記打設区間における前記隙間にコンクリートを打設し、
前記B工程と前記C工程をセット工程として、前記施工区間に亘って該セット工程を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、コンクリートの打設区間を構成するプレキャスト型枠分割体のうち、コンクリート打設の際の妻型枠となるセグメントリングの端面において、側方に張り出して周方向に延びる帯状の金属板と、金属板に固定されて周方向に延びる止水板と、止水板と既設トンネルの壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタルと、エキスパンドメタルを既設トンネルの壁面に固定する控え材が設けられていることにより、妻部における高い止水性を保証することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のリニューアルトンネルとその施工方法によれば、既設トンネルの内部にコンクリートを打設してリニューアルトンネルを施工するに当たり、良好な施工性の下で施工でき、工期を可及的に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態に係るリニューアルトンネルの一例の縦断面図であって、かつ、実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図である。
図2】実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図であって、支持体の一例を示す図である。
図3図2に続いて、実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図であって、下半セグメントの一例を示す図である。
図4図3に続いて、実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図であって、下半セグメントと支持体の固定部を示す図である。
図5図4に続いて、実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図であって、上半セグメントの一例を示す図である。
図6図5に続いて、実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図である。
図7】プレキャスト型枠のうち、コンクリート打設の際の妻部の正面図である。
図8図7のVIII部の拡大図である。
図9図7のIX-IX矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施形態に係るリニューアルトンネルとその施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0036】
[実施形態に係るリニューアルトンネルとその施工方法]
図1乃至図9を参照して、実施形態に係るのリニューアルトンネルとその施工方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係るリニューアルトンネルの一例の縦断面図である。また、図2乃至図6,及び図1は順に、実施形態に係るリニューアルトンネルの施工方法の一例の工程図である。さらに、図7は、プレキャスト型枠のうち、コンクリート打設の際の妻部の正面図であり、図8図9はそれぞれ、図7のVIII部の拡大図とIX-IX矢視図である。
【0037】
図1に示すリニューアルトンネル100は、地山Gにおいて既に施工済みの既設トンネル10の内部に、新規のコンクリート体が施工されることにより形成される。既設トンネル10は、例えば、ダムの上流側と下流側を繋ぐように施工される転流トンネルである。
【0038】
図示例の既設トンネル10は、縦断面形状が馬蹄形であるが、図示例以外にも縦断面形状が円形や矩形等、様々な縦断面形状のトンネルがリニューアル対象となり得る。この既設トンネル10の内側には、隙間15を設けた状態でプレキャスト型枠20が配設され、隙間15に現場打ちコンクリート体30が施工されることにより、リニューアルトンネル100が形成される。
【0039】
プレキャスト型枠20は、既設トンネル10の軸方向に分割された複数のセグメントリング20Aが相互に接続されることにより形成されている。セグメントリング20Aは、下方に開放している正面視アーチ形の上半セグメント21Aと、上方に開放している正面視コの字形の下半セグメント21Bとを備えており、上半セグメント21Aと下半セグメント21Bのそれぞれのセグメント継手面22a、22bが当接され、継手ボルト23により接続されている。
【0040】
上半セグメント21Aと下半セグメント21Bはいずれも、鉄筋コンクリート製のセグメントである。ここで、各セグメントは、鋼製セグメントであってもよいし、合成セグメントであってもよい。
【0041】
上半セグメント21Aの外周面22aと下半セグメント21Bの外周面22bは、いずれも目粗し面となっており、各目粗し面22a,22bの凹部に現場打ちコンクリート体30の一部が嵌まり込むことにより、セグメントリング20Aと現場打ちコンクリート体30の双方の界面における接合強度が高められている。
【0042】
既設トンネル10の床面13には、複数のセグメントリング20Aにより形成されるプレキャスト型枠20を支持する支持体40が固定されている。支持体40は、既設トンネル10の軸方向に延設するレール45と、軸方向に間隔を置いて配設され、床面13に対してアンカー筋43を介して固定されてレール45を支持する複数の台座41とを有する。
【0043】
図1に示すように、既設トンネル10の床面13の左右位置には一対の支持体40が固定されており、一対の支持体40を形成する一対のレール45が、プレキャスト型枠20の下端を支持している。下半セグメント21Bの左右の下端隅角部には、山形鋼29(金属片の一例)が外部に露出するように埋設されており、レール45に載置されている。
【0044】
レール45は溝形鋼により形成され、レール45の上方のフランジに対して対応する金属片29が載置され、双方が溶接接合されることにより一対のレール45に対してセグメントリング20Aが固定される。
【0045】
次に、図1乃至図9を参照して、リニューアルトンネルの施工方法について説明する。
【0046】
はじめに、図2に示すように、既設トンネル10の床面13に対して、プレキャスト型枠20を支持する支持体40を設置する。より具体的には、既設トンネル10の床面13の左右において、既設トンネル10の軸方向に間隔を置いて複数のアンカー筋43を打設し、各アンカー筋43に対して鋼材により形成される台座41を溶接部47(図4参照)を介して固定する(以上、A工程)。
【0047】
次に、図3に示すように、下半セグメント21Bを不図示のフォークリフトによって搬送し、例えば既設トンネル10の奥側から順に一対のレール45の上に設置していく。ここで、図3に示すように、下半セグメント21Bのリング継手面21bには、半割シール25bが取り付けられている。この半割シール25bは、下半セグメント21Bと上半セグメント21Aの双方のセグメント継手面22b、22a同士が接続された際に無端状シールを形成する、線状の定型シールである。
【0048】
下半セグメント21Bのリング継手面21bにはさらに、継手金具24が取り付けられており、軸方向に隣接する他方のセグメントリングの下半セグメント21Bのリング継手面との間でボルト接合等されるようになっている。
【0049】
フォークリフトによる下半セグメント21Bの搬送に際して、下半セグメント21Bの備える左右2つのセグメント継手面22bを上方に向けた状態で、双方のセグメント継手面22bに跨がる搬送用治具70Aを取り付ける。
【0050】
ここで、搬送用治具70Aは、左右のセグメント継手面22bに跨がる鋼製の横架材71と、横架材71の上面と下面に取り付けられている複数の挿入部73、72とを有する。
【0051】
横架材71の左右端が、左右のセグメント継手面22bに対して固定ボルト74を介して仮固定される。例えば横架材71の下面に取り付けられている2つの挿入部72にフォークリフトの爪Fが挿入され、フォークリフトにて持ち上げられた状態で既設トンネル10の内部を搬送される。
【0052】
このように、下半セグメント21Bをフォークリフトによって搬送することから、既設トンネル10の内部が狭い場合や、既設トンネル10が曲線区間を有する線形であっても、スムーズに各下半セグメント21Bを設置位置まで搬送することができる。ここで、下半セグメント21Bや上半セグメント21Aを搬送する重機は、フォークリフトの他にも、トラッククレーン等の揚重設備を備えている様々な重機が適用できる。
【0053】
一対のレール45の所定位置に対して下半セグメント21Bを載置した後、図4に示すように、レール45の上方のフランジ45aの幅t1の範囲内で、既設トンネル10の軸方向に直交する方向であるX1方向に下半セグメント21Bの設置位置を調整することができる。
【0054】
一対のレール45に対する下半セグメント21Bの設置位置が設定された後、下半セグメント21Bの隅角部において外部に露出している金属片29と、レール45を隅肉溶接等による溶接部48を介して固定する。ここで、金属片29とレール45は、ボルト等によって固定されてもよい。
【0055】
図示例のリニューアルトンネルの施工方法では、以下で説明するように、セグメントリング20Aの全周に連続してコンクリートを打設することから、セグメントリング20Aにはコンクリート打設時の浮き上がり力や側圧が生じ得る。しかしながら、セグメントリング20Aを構成する下半セグメント21Bと支持体40が相互に固定されていることにより、作用する浮き上がり力や側圧に起因するセグメントリング20Aの浮き上がりと側方へずれの双方を防止することができる。
【0056】
次に、図5に示すように、上半セグメント21Aを不図示のフォークリフトによって搬送し、支持体40に固定されている下半セグメント21Bの上に設置していく。ここで、図5に示すように、上半セグメント21Aのリング継手面21aには、半割シール25aが取り付けられている。この半割シール25aは、上半セグメント21Aと下半セグメント21Bの双方のセグメント継手面22a、22b同士が接続された際に無端状シールを形成する、線状の定型シールである。
【0057】
上半セグメント21Aのリング継手面21aにはさらに、継手金具24が取り付けられており、軸方向に隣接する他方のセグメントリングの上半セグメント21Aのリング継手面との間でボルト接合等されるようになっている。
【0058】
フォークリフトによる上半セグメント21Aの搬送に際して、上半セグメント21Aの内側に搬送用治具70Bを取り付ける。
【0059】
ここで、搬送用治具70Bは、鋼製の横架材75と、横架材75の上面に取り付けられている複数の縦材76と、横架材75の下面に取り付けられている複数の挿入部72とを有する。横架材75と縦材76の上半セグメント21Aに当接する端面には、緩衝材77が取り付けられており、横架材75と縦材76の端面が上半セグメント21Aに直接接触する際に生じ得る上半セグメント21Aの破損を抑制できる。
【0060】
上半セグメント21Aの内部に搬送用治具70Bを配設した後、2つの挿入部72にフォークリフトの爪Fを挿入し、フォークリフトにて上半セグメント21Aを持ち上げた状態で既設トンネル10の内部を搬送する。
【0061】
図6に示すように、下半セグメント21Bのセグメント継手面22bの上に上半セグメント21Aのセグメント継手面22aを載置し、双方を継手ボルト22cを介して接続することによって1つのセグメントリング20Aが形成される。
【0062】
リニューアルトンネル100の施工区間は、複数のコンクリートの打設区間を備えており(複数の打設区間に分割されており)、従って、打設区間ごとに、複数のセグメントリング20Aをそれぞれのリング継手面同士を接続することによって、プレキャスト型枠分割体(全施工区間に形成されるプレキャスト型枠20が打設区間ごとに分割された分割体)を施工する。
【0063】
図6に示すように、既設トンネル10の坑壁とセグメントリング20Aとの間には、環状の隙間15が設けられている。
【0064】
図6に示すように、下半セグメント21Bには、複数のエア抜き孔26と、第1打設孔27が設けられている。一方、上半セグメント21Aの頂部には、第2打設孔28が設けられ、外周面23aにおける第2打設孔28に対応する位置には吹上管50が取り付けられている。ここで、第1打設孔27と第2打設孔28はφ200mm程度の孔に設定でき、エア抜き孔26はφ50mm程度の孔に設定できる。また、既設トンネル10の坑壁のうち、頂部近傍には、複数のグラウトパイプ18が取り付けられている(以上、B工程)。
【0065】
打設区間に亘るプレキャスト型枠分割体の内部から、セグメントリング20Aの下半セグメント21Bの備える第1打設孔27を介して下方の隙間15にコンクリートをY1方向に打設する。コンクリート打設の際には、下方の隙間15に存在していたエアを各エア抜き孔26からプレキャスト型枠20Aの内部に抜きながら、コンクリート打設を継続する。さらに、コンクリートが各エア抜き孔26からY2方向に吹き上がった際に、下半セグメント21Bの下方の隙間15にコンクリートが十分に打設されたことを確認することができる。
【0066】
ここで、エア抜き孔26を介して、不図示の振動機を下半セグメント21Bの下方に打設されたコンクリート内に挿入し、コンクリートの振動締固めを行うこともできる。
【0067】
次に、第1打設孔27をゴム栓等で閉塞した後、プレキャスト型枠20Aの外周面に対して散水等することによって外周面を湿潤状態にする。次いで、上半セグメント21Aの第2打設孔28とさらに吹上管50を介して、コンクリートをY3方向に打設することにより、プレキャスト型枠20Aの側方や上方の隙間15にコンクリートを打設していく。ここで、コンクリート打設には、不図示のスライドセントルを利用してもよい。
【0068】
上半セグメント21Aの頂部にある第2打設孔28に連通する吹上管50を介してコンクリートが打設されることで、上半セグメント21Aの背面の隙間15に効率的にコンクリートを打設することができ、さらには、隙間15の軸方向に直交する方向の幅(現場打ちコンクリート体30の厚み)が大きな場合に、天端におけるコンクリートの打設を行い易くできる。
【0069】
そのため、流動性の悪いコンクリート(硬めのコンクリート)が充填される場合でも、上半セグメント21Aの頂部では吹上管50の高さレベルまで安定的にコンクリートを打設することができる。上半セグメント21Aの頂部の上方の隙間15には、既設トンネル10の坑壁との間において僅かにコンクリートの未打設領域が生じ得る。この未打設領域には、グラウトパイプ18を介してグラウトを注入して未打設領域を閉塞する。この際、吹上管50の高さレベルを可能な限り既設トンネル10の坑壁に近接したレベルに設定しておくことで、高価なグラウトの充填量を低減することができる(以上、C工程)。
【0070】
コンクリートの打設区間ごとに上記するB工程とC工程を行い、これをセット工程として、全施工区間に亘ってこのセット工程を複数回(打設区間の数だけ)繰り返すことにより、図1に示すリニューアルトンネル100が施工される。
【0071】
次に、図7乃至図9を参照して、各打設区間における妻部の妻型枠について説明する。B工程において、プレキャスト型枠20Aのうち、コンクリートの打設区間の妻部の端面には、妻型枠60が取り付けられる。ここで、妻型枠60は、側方に張り出してセグメントリング20Aの周方向に延びる帯状の金属板61と、金属板61に固定されて周方向に延びる止水板62と、止水板62と既設トンネル10の壁面とを繋ぐ帯状のエキスパンドメタル63と、エキスパンドメタル63を既設トンネル10の壁面に固定する控え材68とを有する。ここで、金属板61は例えばステンレス鋼等により形成される。
【0072】
周方向に延びる止水板62は、金属板61に対して複数の止水板留め材64を介して固定される。ここで、打設対象の打設区間におけるコンクリート打設が終了した後、複数の止水板留め材64は妻部から取り外され、次にコンクリートが打設される打設区間の妻部において転用される。
【0073】
エキスパンドメタル63は、鉄筋等により形成される周方向セパレータ66と、同様に鉄筋等により形成される径方向セパレータ67とによってコンクリートからの側圧に抗し得るように支持されており、周方向セパレータ66と径方向セパレータ67の交差部は不図示の溶接用金物を介して相互に固定される。
【0074】
このように、帯状のエキスパンドメタル63が控え材68を介して既設トンネル10の壁面に固定され、セグメントリング20Aの妻面に固定されている金属板61に対して周方向に延びる止水板62が接続されていることにより、止水性が保証された打ち継ぎ部を介して、各打設区間が相互に接続されているリニューアルトンネル100の施工が可能になる。
【0075】
図示するリニューアルトンネル100の施工方法によれば、既設トンネル10の床面13にプレキャスト型枠20を支持する支持体40を設置し、セグメントリング20Aをフォークリフトにより搬送して支持体40の上に設置し、これを繰り返しながら隣接するセグメントリング20A同士を接続してプレキャスト型枠20を形成し、プレキャスト型枠20の内部から背面の隙間15へコンクリートを打設して現場打ちコンクリート体30を施工することにより、プレキャスト型枠20は脱型不要でそのままリニューアルトンネル100の構成要素となることと、プレキャスト型枠20が複雑な構成を有していないことから、良好な施工性の下でリニューアルトンネル100を施工でき、工期を可及的に短縮することができる。
【0076】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0077】
10:既設トンネル
13:床面
15:隙間
18:グラウトパイプ
20:プレキャスト型枠
20A:セグメントリング
21A:上半セグメント
21B:下半セグメント
21a、21b:リング継手面
22a:22b:セグメント継手面
22c:継手ボルト
23a、23b:外周面(目粗し面)
24:継手金具
25a,25b:半割シール
26:エア抜き孔
27:第1打設孔
28:第2打設孔
29:金属片(山形鋼)
30:場所打ちコンクリート体
40:支持体
41:台座
43:アンカー筋
45:レール
45a:フランジ
47,48:溶接部
50:吹上管
60:妻型枠
61:金属板
62:止水板
63:エキスパンドメタル
64:止水板留め材
66:周方向セパレータ
67:径方向セパレータ
68:控え材
70A,70B:搬送用治具
71:横架材
72,73:挿入部
74:固定ボルト
75:横架材
76:縦材
77:緩衝材
100:リニューアルトンネル
G:地山
F:フォークリフトの爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9