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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094755
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】下向き分岐ダクト
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/44 20060101AFI20240703BHJP
   B01J 6/00 20060101ALI20240703BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240703BHJP
   F27D 3/18 20060101ALI20240703BHJP
   F27B 7/00 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C04B7/44 101
B01J6/00 101Z
F27D17/00 105G
F27D3/18
F27B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211509
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青松 慎之介
【テーマコード(参考)】
4G068
4G112
4K055
4K056
4K061
【Fターム(参考)】
4G068BA05
4G068BB02
4G068BC05
4G068BC06
4G068BD20
4G112KB02
4K055AA09
4K055BA03
4K055FA01
4K056AA12
4K056BA01
4K056BC00
4K056CA08
4K056DB13
4K056DC00
4K061AA08
4K061BA01
4K061HA03
(57)【要約】
【課題】 省スペース化が可能となる下向き分岐ダクトを提供する。
【解決手段】 粉末原料を仮焼する仮焼炉と複数個の分離サイクロンとを接続する下向き分岐ダクトであって、仮焼炉の出口に接続される仮焼炉出口ダクトと接続される入口部と、複数個の分離サイクロンの入口に接続される複数個の出口部と、上部開口部から下部開口部に延びる分岐通路と、を有し、複数の分岐通路は、平面視において、分岐通路の軸線である第2軸線と、仮焼炉の中心と入口部の中心とを結ぶ第1軸線と、のなす角度が0度より大きく180度より小さい角度である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末原料を仮焼する仮焼炉と複数個の分離サイクロンとを接続する下向き分岐ダクトであって、
前記仮焼炉の出口に接続される仮焼炉出口ダクトと接続される入口部と、複数個の前記分離サイクロンの入口に接続される複数個の出口部と、前記入口部から前記出口部に延びる分岐通路と、を有し、
複数の前記分岐通路は、平面視において、当該分岐通路の軸線である第2軸線と、前記仮焼炉の中心と前記入口部の中心とを結ぶ第1軸線と、のなす角度が0度より大きく180度より小さい角度である、下向き分岐ダクト。
【請求項2】
前記第2軸線と前記第1軸線との前記なす角度は、45度より大きく75度より小さい角度である、請求項1に記載の下向き分岐ダクト。
【請求項3】
前記入口部は、多角形状に形成されている、請求項1又は2に記載の下向き分岐ダクト。
【請求項4】
前記入口部は六角形状に形成され、前記出口部は前記分離サイクロンの前記入口に接続する多角形状に形成され、複数個の前記分岐通路の前記第2軸線と前記第1軸線とのなす角度はそれぞれ60度である、請求項3に記載の下向き分岐ダクト。
【請求項5】
前記入口部の六角形の一辺の長さを前記分離サイクロンの前記入口の幅寸法と同一とした、請求項4に記載の下向き分岐ダクト。
【請求項6】
前記分岐通路の分岐部分に三角形の水平基準面を設けて全体形状を平板の組み合わせとした、請求項4に記載の下向き分岐ダクト。
【請求項7】
複数の前記分岐通路の分岐部分に、頂部が上向きに突出する分岐板をさらに有している、請求項1又は2に記載の下向き分岐ダクト。
【請求項8】
平面視における前記仮焼炉と反対方向に前記分離サイクロンの点検口に通じる通路を有している、請求項4に記載の下向き分岐ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、セメント原料などの粉体を気流搬送するガスダクトを1つのダクトから複数のダクトに分岐させる下向き分岐ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント原料などの原料を製造するプラント設備などにおいて、粉体を気流搬送する1つのダクトから複数のダクトに分岐させる分岐ダクトが用いられている。この種の文献として、仮焼炉の出口と複数個の分離サイクロンの入口とを連結する連結ダクトを備えた仮焼装置がある(例えば、特許文献1参照)。この仮焼装置の連結ダクトは、仮焼炉の出口に接続される上部横向き部と、上部横向き部から下向きに180度で曲がって反転する曲り部と、曲り部から複数の分離サイクロンの入口にそれぞれ接続される下部分岐部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-101280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献に記載された連結ダクトは、仮焼炉から横向きに延びる曲り部から複数の分離サイクロンの入口にそれぞれ接続される下部分岐部が並行に設けられているため、仮焼炉から連結ダクトの曲り部端部までの寸法が大きい。このため、仮焼炉と連結ダクトを配置するために大きな平面スペースの建屋が必要となる。
【0005】
そこで、本出願は、各構成を配置する平面スペースを小さくできる下向き分岐ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の一態様に係る下向き分岐ダクトは、粉末原料を仮焼する仮焼炉と複数個の分離サイクロンとを接続する下向き分岐ダクトであって、前記仮焼炉の出口に接続される仮焼炉出口ダクトと接続される入口部と、複数個の前記分離サイクロンの入口に接続される複数個の出口部と、前記入口部から前記出口部に延びる分岐通路と、を有し、複数の前記分岐通路は、平面視において、当該分岐通路の軸線である第2軸線と、前記仮焼炉の中心と前記入口部の中心とを結ぶ第1軸線と、のなす角度が0度より大きく180度より小さい角度である。
【発明の効果】
【0007】
本出願によれば、各構成を配置する平面スペースを小さくできる下向き分岐ダクトを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本出願の分岐ダクトを用いる一例のセメント製造設備を示す構成図である。
図2図2は、図1に示すセメント製造設備における仮焼炉と本出願の第1実施形態に係る第1分岐ダクトとを含む第1分岐ダクト構造を示す展開図である。
図3図3は、図2に示す仮焼炉と第1分岐ダクト及び建屋の関係を示す平面図である。
図4図4は、図2に示す第1分岐ダクトを正面方向から見た斜視図である。
図5図5は、図2に示す第1分岐ダクトを斜め上方から見た斜視図である。
図6図6は、図3に示す第1分岐ダクトと建屋との間のスペースを示す拡大平面図である。
図7図7は、本出願の第2実施形態に係る第2分岐ダクトと仮焼炉及び建屋の関係を示す平面図である。
図8図8は、本出願の第3実施形態に係る第3分岐ダクトと仮焼炉及び建屋の関係を示す平面図である。
図9図9は、本出願の第4実施形態に係る第4分岐ダクトと仮焼炉及び建屋の関係を示す平面図である。
図10図10は、本出願の第5実施形態に係る第5分岐ダクトと仮焼炉及び建屋の関係を示す平面図である。
図11図11は、図2に示す第1分岐ダクト構造の異なる例を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本出願の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の分岐ダクト36,56,66,76,86は、セメント製造設備1における仮焼炉20から出るガス200と原料100を2個の分離サイクロンに分岐させる例である。分岐ダクト36,56,66,76,86は、セメント製造設備1以外で使用されている分岐ダクトにおいても適用できる。
【0010】
<セメント製造設備の構成>
図1は、分岐ダクトを用いる一例のセメント製造設備1を示す構成図である。図1は、セメント製造設備1におけるセメントの中間製品であるクリンカを製造する部分の概略構成を示している。セメント製造設備1は、サスペンションプレヒータ2の部分を図示している。図1に基づいて、セメント製造設備1における分岐ダクトを説明する。図中の実線は、原料100等の物の流れを示し、点線は、ガス200(後述する、排ガス200及び燃料燃焼ガス200の総称)の気体の流れを示す。
【0011】
図示するセメント製造設備1は、サスペンションプレヒータ2を備えている。この実施形態のサスペンションプレヒータ2は、第1段サイクロン3、第2段サイクロン4、第3段サイクロン5、第4段サイクロン6、第5段サイクロン7の5段のサイクロンを有している。サスペンションプレヒータ2の段数は一例であり、3段以上であればよい。第5段サイクロン7は、以下、ボトムサイクロン7という。また、サスペンションプレヒータ2は、第4段サイクロン6とボトムサイクロン7との間に仮焼炉20を備えている。仮焼炉20は、仮焼バーナ21を備えており、原料中の石灰石を脱炭酸処理する。ボトムサイクロン7は、通常、水平方向に複数個が備えられており、仮焼炉20の出口とボトムサイクロン7の入口とは同一レベルに配置され、ダクトで水平方向に接続されている。ボトムサイクロン7の原料出口は、ロータリーキルン10に接続されている。ロータリーキルン10は、キルンバーナ11を備えており、原料100を1450℃まで加熱して焼成する。ロータリーキルン10の出口には、冷却機12が設けられており、冷却機12でロータリーキルン10から出た焼成物を冷却してセメントクリンカが作られる。
【0012】
一方、サスペンションプレヒータ2には、第1段サイクロン3に接続された連結ダクト13から原料100が投入される。
【0013】
サスペンションプレヒータ2は、ロータリーキルン10から仮焼炉20に投入されたガス200が、仮焼炉20、ボトムサイクロン7、第4段サイクロン6、第3段サイクロン5、第2段サイクロン4、第1段サイクロン3へと順に上方へ移動する。そして、サスペンションプレヒータ2は、連結ダクト13から投入された原料100が、第1段サイクロン3、第2段サイクロン4、第3段サイクロン5、第4段サイクロン6、仮焼炉20、ボトムサイクロン7へと順に下方へ移動する。これにより、サスペンションプレヒータ2に上方から投入された原料100は、ロータリーキルン10からの排ガス200及び仮焼炉20の燃料燃焼ガス200によって熱交換されて昇温・熱分解により脱炭酸される。
【0014】
仮焼炉20は、下流方向のロータリーキルン10の排ガス200及び燃料燃焼ガス200と原料100の熱交換により、原料100を昇温・ 熱分解により脱炭酸する工程における主機の一つであり、近年、サスペンションプレヒータ2の生産能力向上、省エネ化などから仮焼炉20の大型化が求められている。
【0015】
しかし、上記したように、サスペンションプレヒータ2は、仮焼炉20と仮焼炉20の上段に設置された4段から5段のサイクロン3乃至7、及び各段のサイクロン3乃至7を接続する連結ダクトから構成され、機器は全て鉄骨建屋内に配置される。生産能力向上や、燃料の燃焼性向上のためには、仮焼炉20の容積拡大が必要であるが、鉛直方向に設置する円筒形の仮焼炉20を容積拡大する場合は高さを延すことになる。この場合、従来通りにボトムサイクロン7の入口8を仮焼炉20の出口23の高さに合わせて水平方向に設置すると、全てのサイクロンが上方へ移動して建屋の高さを大幅に増加する必要があり、大幅な設備費用の増加が必要となる。このため、分岐ダクト構造は、ボトムサイクロン7の設置高さを従来相当に抑えることが望ましい。
【0016】
<仮焼炉と第1分岐ダクト>
図2は、図1に示すセメント製造設備1における仮焼炉20と第1実施形態に係る第1分岐ダクト36とを含む第1分岐ダクト構造30を示す展開図である。図3は、図2に示す仮焼炉20と第1分岐ダクト36及び建屋90の関係を示す平面図である。図2は、一方のボトムサイクロン7のみを記載している。
【0017】
図2に示すように、仮焼炉20は、下部に入口22が設けられ、上部に出口23が設けられている。また、仮焼炉20は、仮焼バーナ21によって内部を通過するガスが加熱される。仮焼炉20は、投入された原料がガスで加熱され、原料とガスが上方の出口23から上向きに出る。
【0018】
そして、第1分岐ダクト構造30は、仮焼炉20の高さを延したとしてもボトムサイクロン7の設置高さを従来相当に抑えるために、出口23に接続される仮焼炉出口ダクトたる屈曲ダクト31を有している。屈曲ダクト31は、仮焼炉20の出口23に接続される炉側開口部32から上向きに延びて屈曲して下向きに延びる屈曲部33と、屈曲部33の下端で開口するダクト側開口部34とを有している。ダクト側開口部34は、この実施形態では円筒形状の屈曲部33から形状変更部分35で六角形状に変更されている。
【0019】
また、第1分岐ダクト構造30は、屈曲ダクト31とボトムサイクロン7との間に、屈曲ダクト31のダクト側開口部34に接続される入口部37と、2個のボトムサイクロン7の入口8に接続される2個の出口部38とを有する第1分岐ダクト36を備えている。第1分岐ダクト36は、入口部37から出口部38に延びる分岐通路39を有する。第1分岐ダクト36は、1個の仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7とを接続するため、1つの屈曲ダクト31のダクト側開口部34と2個のボトムサイクロン7の入口8とに接続される。
【0020】
よって、仮焼炉20を、ガス200が通過する断面積を保ちながら容量を増やすために高さを延したとしても、屈曲ダクト31によってボトムサイクロン7の入口8の高さを従来相当に抑えられる。このように、第1分岐ダクト構造30は、仮焼炉20の出口23から上向きに延びた後屈曲して下向きに延びる屈曲ダクト31を備えさせることで、ボトムサイクロン7の設置高さを従来相当に抑える配置が可能となる。
【0021】
また、図3に示すように、第1分岐ダクト36は、入口部37を六角形状とし、平面視において、2個のボトムサイクロン7の入口8に接続される2個の出口部38に延びる分岐通路39が、角度θ1で広がっている。すなわち、第1分岐ダクト36は、屈曲ダクト31の仮焼炉20の中心C1と入口部37の中心C2とを結ぶ第1軸線X1に対して分岐通路39の第2軸線X2が角度θ1で設けられている。第1分岐ダクト36は、第1軸線X1と分岐通路39の第2軸線X2とのなす角度θ1がそれぞれ60度となっており、出口部38が2個のボトムサイクロン7の入口と120度で接続されている。第1分岐ダクト36は、ダクト形状を円形に近い多角形である六角形状の入口部37とすることで、ダクト内のガス・原料の偏流や圧力損失などを抑えつつ、平板の組み合わせによって形成できる。しかも、六角形状とすることで、辺の数が増えて平板の枚数が増えることによる製作上の手間が増加することを抑えている。このように、第1分岐ダクト36は、性能面と製作面とがバランスする構造としている。この第1分岐ダクト36は、第1軸線X1の方向の仮焼炉20とボトムサイクロン7の中心間距離を小さくできる。よって、第1分岐ダクト36を用いることにより、ボトムサイクロン7を仮焼炉20に近付けて配置でき、仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7を配置する平面スペースを小さくできる。しかも、形状の対称性により、分岐通路を対称にできる。
【0022】
これは、建屋90の平面サイズは多くの場合サスペンションプレヒータ2の中で最大機器である仮焼炉20とボトムサイクロン7の平面スペースによって決定されるため、これらの平面スペースを小さくすることで、建屋90の平面サイズを小さくできる。例えば、第1分岐ダクト36によれば、建屋90の平面視における仮焼炉20とボトムサイクロン7とが並ぶ平面方向W1の寸法を約5%低減できる。
【0023】
また、この実施形態では、仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7は、第1軸線X1に対してそれぞれ角度θ1の第2軸線X2となった分岐通路39を有する第1分岐ダクト36で接続されているので、平面視において、建屋90の柱91を連結する梁92を、第1分岐ダクト36とボトムサイクロン7との間に配置できる。よって、仮焼炉20、第1分岐ダクト36、ボトムサイクロン7の荷重を、梁92で適切に支持して柱91に伝えるような配置にできる。
【0024】
<第1分岐ダクト>
図4は、図2に示す第1分岐ダクト36を正面方向から見た斜視図である。図5は、図2に示す第1分岐ダクト36を斜め上方から見た斜視図である。分岐ダクト36は、上記した屈曲ダクト31の出口であるダクト側開口部34の六角形状と接続できるように入口部37が六角形状に形成されている。そして、第1分岐ダクト36の2つの出口部38は、ボトムサイクロン7の入口8が五角形状であるため、この入口8に接続できる五角形状となっている。また、第1分岐ダクト36は、入口部37の六角形状の一辺長さL1をボトムサイクロン7の入口8の幅寸法M1と同じにしている。また、第1分岐ダクト36は、入口部37、出口部38及びこれらの間の分岐通路39などの部分を、平面状の部材を接続した構造としている。これにより、第1分岐ダクト36は、部材の曲げ加工を必要とせず、平板のみで製作可能なシンプルな構造となっている。
【0025】
また、第1分岐ダクト36は、内部をガス200と原料100が流れるため、原料100の堆積を避けるため、水平部を排除した構造としている。この実施形態では、分岐通路39が分かれる分岐部分に水平基準面42を設けている。そして、水平基準面42上部に、頂部41が上向きに突出する三角形状の分岐板40を設けている。しかも、分岐板40は、頂部41から六角形状の入口部37の出口部38が設けられている辺の方向に向けて原料の安息角以上の角度で下向きに傾くように形成されている。この分岐板40により、分岐通路39の分岐部分に水平部分が無い構造としている。また、水平基準面42を設けることで、製作時に水平基準面42を基準にして寸法精度が出しやすく、入口部37、出口部38の寸法精度、傾斜角度の精度が出しやすくなり、製作及び据付の難易度を下げることができる。
【0026】
第1分岐ダクト構造30によれば、仮焼炉20を容積拡大して出口23が上方へ移動したとしても、屈曲ダクト31と第1分岐ダクト36とによりボトムサイクロン7の設置高さを従来相当に抑えて配置できる。また、第1分岐ダクト36により、仮焼炉20とボトムサイクロン7とを適切な平面配置とすることで、建屋の平面スペースを小さくできる。このような第1分岐ダクト構造30により、仮焼炉20の出口23から出た原料100とガス200は、屈曲ダクト31と第1分岐ダクト36を通って2個のボトムサイクロン7へ適切に送られる。
【0027】
しかも、第1分岐ダクト36は、分岐通路39の分岐部分に分岐板40が設けられているため、入口部37から入った原料100が堆積しないようにボトムサイクロン7へ送れる。また、この実施形態の分岐ダクト36は、入口部37から出口部38まで平板の組み合わせで製造することができ、構成部材に複雑な曲げ加工を要することなく製造することが可能である。
【0028】
<点検スペース>
図6は、図3に示す第1分岐ダクト36と建屋90との間のスペース93を示す拡大平面図である。第1分岐ダクト構造30は、第1分岐ダクト36の出口部38がボトムサイクロン7の入口8と所定の角度60度で接続されているため、平面視において第1分岐ダクト36と建屋90との間に広いスペース93を確保できる。このため、第1分岐ダクト構造30は、このスペース93にボトムサイクロン7の入口8の部分に設けられた点検口9へアクセスする点検床95や階段96などを設けることができる。
【0029】
図6は、スペース93に、2個のボトムサイクロン7のそれぞれの点検口9に出入りするための点検床95と、この点検床95に通じる通路となる階段96とを設けた例を示している。この例では、階段96を共通のものとして中央に1箇所設置している。図6に示すように構成することで、左右の点検口9にアクセスするための点検床95を共通化でき、左右の往来が容易に可能となり、作業の動線を改善することができる。しかも、点検床95及び階段96を設けても柱91と十分離れているため、点検口9の前部に広い作業スペースを確保することができる。このように、第1分岐ダクト構造30は、ボトムサイクロン7の内部に点検口9から入って、内面に施工されている耐火物や内部機器などを点検する場合のアクセス性及び作業性を向上できる。
【0030】
<第2分岐ダクト>
図7は、第2実施形態に係る第2分岐ダクト56と仮焼炉20及び建屋90の関係を示す平面図である。なお、第2分岐ダクト構造50は平面図のみで説明し、第1分岐ダクト構造30と同一の構成には、第1分岐ダクト構造30における符号に「20」を加えた符号を付して説明は省略する。建屋90、ボトムサイクロン7、仮焼炉20に関する構成は第1分岐ダクト構造30と同一であるため、同一の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0031】
第2分岐ダクト構造50は、屈曲ダクト51と第2分岐ダクト56とを有している。屈曲ダクト51は、仮焼炉20の出口23に接続された円形断面の炉側開口部52から屈曲部53で屈曲し、形状変更部55で円形断面が長方形状に変更されてダクト側開口部54となっている。第2分岐ダクト56は、ダクト側開口部54に接続される長方形状の入口部57から2つの分岐通路59に分岐し、それぞれの出口部58がボトムサイクロン7の入口8と接続されている。第2分岐ダクト56は、分岐通路59の第2軸線X2が第1軸線X1に対してそれぞれ90度の角度θ2で設けられており、出口部58が2個のボトムサイクロン7の入口8と180度で接続されている。この第2分岐ダクト56により、第1軸線X1の方向の仮焼炉20とボトムサイクロン7の中心間距離を小さくできる。よって、第2分岐ダクト56により、仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7を配置する平面スペースを小さくできる。
【0032】
<第3分岐ダクト>
図8は、第3実施形態に係る第3分岐ダクト66と仮焼炉20及び建屋90の関係を示す平面図である。なお、第3分岐ダクト構造60は平面図のみで説明し、第1分岐ダクト構造30と同一の構成には、第1分岐ダクト構造30における符号に「30」を加えた符号を付して説明は省略する。建屋90、ボトムサイクロン7、仮焼炉20に関する構成は第1分岐ダクト構造30と同一であるため、同一の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0033】
第3分岐ダクト構造60は、屈曲ダクト61と第3分岐ダクト66とを有している。屈曲ダクト61は、仮焼炉20の出口23に接続された円形断面の炉側開口部62から屈曲部63で屈曲し、形状変更部65で円形断面が正方形状に変更されてダクト側開口部64となっている。第3分岐ダクト66は、ダクト側開口部64に接続される正方形状の入口部67から2つの分岐通路69に分岐し、それぞれの出口部68がボトムサイクロン7の入口8と接続されている。第3分岐ダクト66は、分岐通路69の第2軸線X2が第1軸線X1に対してそれぞれ90度の角度θ2で設けられており、出口部68が2個のボトムサイクロン7の入口8と180度で接続されている。この第3分岐ダクト66により、第1軸線X1の方向の仮焼炉20とボトムサイクロン7の中心間距離を小さくできる。よって、第3分岐ダクト66により、仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7を配置する平面スペースを小さくできる。
【0034】
<第4分岐ダクト>
図9は、第4実施形態に係る第4分岐ダクト76と仮焼炉20及び建屋90の関係を示す平面図である。なお、第4分岐ダクト構造70は平面図のみで説明し、第1分岐ダクト構造30と同一の構成には、第1分岐ダクト構造30における符号に「40」を加えた符号を付して説明は省略する。建屋90、ボトムサイクロン7、仮焼炉20に関する構成は第1分岐ダクト構造30と同一であるため、同一の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0035】
第4分岐ダクト構造70は、屈曲ダクト71と第4分岐ダクト76とを有している。屈曲ダクト71は、仮焼炉20の出口23に接続された円形断面の炉側開口部72から屈曲部73で屈曲し、円形断面のままの形状のダクト側開口部74となっている。第4分岐ダクト76は、ダクト側開口部74に接続される円形断面の入口部77からボトムサイクロン7の入口8と接続する出口部78との間で形状変更しながら2つの分岐通路79に分岐し、それぞれの出口部78がボトムサイクロン7の入口8と接続されている。第4分岐ダクト76は、分岐通路79の第2軸線X2が第1軸線X1に対してそれぞれ90度の角度θ2で設けられており、出口部78が2個のボトムサイクロン7の入口8と180度で接続されている。この第4分岐ダクト76により、第1軸線X1の方向の仮焼炉20とボトムサイクロン7の中心間距離を小さくできる。よって、第4分岐ダクト76により、仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7を配置する平面スペースを小さくできる。
【0036】
<第5分岐ダクト>
図10は、第5実施形態に係る第5分岐ダクト86と仮焼炉20及び建屋90の関係を示す平面図である。なお、第5分岐ダクト構造80は平面図のみで説明し、第1分岐ダクト構造30と同一の構成には、第1分岐ダクト構造30における符号に「50」を加えた符号を付して説明は省略する。建屋90、ボトムサイクロン7、仮焼炉20に関する構成は第1分岐ダクト構造30と同一であるため、同一の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0037】
第5分岐ダクト構造80は、屈曲ダクト81と第5分岐ダクト86とを有している。屈曲ダクト81は、仮焼炉20の出口23に接続された円形断面の炉側開口部82から屈曲部83で屈曲し、形状変更部85で円形断面が正方形状に変更されてダクト側開口部84となっている。第5分岐ダクト86は、ダクト側開口部84に接続される正方形状の入口部87から2つの分岐通路89に分岐し、それぞれの出口部88がボトムサイクロン7の入口8と接続されている。第5分岐ダクト86は、分岐通路89の第2軸線X2が第1軸線X1に対してそれぞれ135度の角度θ3で設けられており、出口部88が2個のボトムサイクロン7の入口8と270度で接続されている。この第5分岐ダクト86により、第1軸線X1の方向の仮焼炉20とボトムサイクロン7の中心間距離を小さくできる。よって、第5分岐ダクト86により、仮焼炉20と2個のボトムサイクロン7を配置する平面スペースを小さくできる。
【0038】
<第1分岐ダクト構造の変形例>
図11は、図2に示す第1分岐ダクト構造30の異なる例を示す展開図である。図2と同一の構成には同一符号を付し、その構成の説明は省略する。図11は、一方のボトムサイクロン7のみを記載している。この例は、仮焼炉25が高くなった例である。仮焼炉25は、大型化によって高くなる場合があるが、その場合は仮焼炉25の上部側面に仮焼炉出口ダクトたる屈曲ダクト31を設けることができる。この例の屈曲ダクト31は、90度で下向きに曲がったベンドであり、この屈曲ダクト31に第1分岐ダクト36の入口部37が接続されている。この例によっても、上記した図3と同様に、第1分岐ダクト36により、ボトムサイクロン7を仮焼炉25に近付けて配置でき、仮焼炉25と2個のボトムサイクロン7を配置する平面スペースを小さくできる。
【0039】
<その他の実施形態>
上記した実施形態では、セメント製造設備1において1つのダクトを2つに分岐させる分岐ダクト36,56,66,76,86例に説明したが、分岐ダクト36,56,66,76,86を用いる設備、分岐数は上記した実施形態に限定されない。仮焼炉20も一例であり、異なる形状の仮焼炉20であっても適用可能であり、仮焼炉20も限定されない。
【0040】
また、上記した実施形態は一例を示しており、本出願は上記した実施形態に限定されない。第1分岐ダクト36は入口部37を六角形状としているが、入口部37は八角形状等の他の多角形状としてもよい。第1軸線X1と第2軸線X2とのなす角度は、0度より大きく180度より小さい角度であればよいが、好ましくは、45度より大きく75度より小さい角度とすれば、仮焼炉20と複数のボトムサイクロン7とが並ぶ平面方向のスペースをより小さくできる。上記した実施形態の構成は、本出願の要旨を損なわない範囲で種々の変更をしてもよく、本出願は上記した実施形態に限定されない。
【0041】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[項目1]
粉末原料を仮焼する仮焼炉と複数個の分離サイクロンとを接続する下向き分岐ダクトであって、
前記仮焼炉の出口に接続される仮焼炉出口ダクトと接続される入口部と、複数個の前記分離サイクロンの入口に接続される複数個の出口部と、前記入口部から前記出口部に延びる分岐通路と、を有し、
複数の前記分岐通路は、平面視において、当該分岐通路の軸線である第2軸線と、前記仮焼炉の中心と前記入口部の中心とを結ぶ第1軸線と、のなす角度が0度より大きく180度より小さい角度である、下向き分岐ダクト。
【0042】
この構成により、炉側開口部の中心とダクト側開口部の中心とを結ぶ第1軸線と複数の分岐通路の第2軸線とのなす角度が0度より大きく180度より小さい角度となっているので、仮焼炉と複数の分離サイクロンとが並ぶ平面方向のスペースを小さくできる。よって、建屋の平面スペースを小さくできる。
【0043】
[項目2]
前記第1軸線と前記第2軸線との前記なす角度は、45度より大きく75度より小さい角度である、項目1に記載の下向き分岐ダクト。
【0044】
このように構成すれば、分岐通路の第2軸線と第1軸線とのなす角度が45度より大きく75度より小さい角度であるので、仮焼炉の方向に分岐ダクトを近づけて配置できる。よって、建屋と分岐ダクトとの間に平面スペースを確保できる。
【0045】
[項目3]
前記入口部は、多角形状に形成されている、項目1又は2に記載の下向き分岐ダクト。
【0046】
このように構成すれば、仮焼炉出口ダクトと分岐ダクトの入口部との接続を多角形状の接続にできるので、分岐ダクトは平面を組み合わせた面で形成することができ、分岐ダクトを平板のみで製作可能にできる。
【0047】
[項目4]
前記入口部は六角形状に形成され、前記出口部は前記分離サイクロンの前記入口に接続する多角形状に形成され、複数個の前記分岐通路の前記第2軸線と前記第1軸線とのなす角度はそれぞれ60度である、項目3に記載の下向き分岐ダクト。
【0048】
このように構成すれば、分岐ダクトの入口部が六角形状であるため、第1軸線に対してそれぞれ60度となる第2軸線の辺に出口部を設けられる。これにより、ダクト形状を円形に近い多角形としてダクト内のガス・原料の偏流や圧力損失などを抑えつつ、分岐ダクトを平板の組み合わせによって形成することができ、分岐ダクトを性能面と製作面とがバランスするシンプルな構造にできる。しかも、形状の対称性により、分岐通路を対称にできる。
【0049】
[項目5]
前記入口部の六角形の一辺の長さを前記分離サイクロンの前記入口の幅寸法と同一とした、項目4に記載の分岐ダクト。
【0050】
このように構成すれば、分岐ダクトを構成する平板の枚数を減らすことができるので、製作性の良い分岐ダクトとなる。
【0051】
[項目6]
前記分岐通路の分岐部分に三角形の水平基準面を設けて全体形状を平板の組み合わせとした、項目4に記載の下向き分岐ダクト。
【0052】
このように構成すれば、製作時に水平基準面を基準にして寸法精度が出しやすく、入口部、出口部の寸法精度、傾斜角度の精度が出しやすくなり、製作及び据付の難易度を下げることができる。
【0053】
[項目7]
前記分岐ダクトは、複数の前記分岐通路の分岐部分に、頂部が上向きに突出する分岐板をさらに有している、項目1乃至6のいずれかの項目に記載の下向き分岐ダクト。
【0054】
このように構成すれば、分岐通路の分岐部分に水平部が無い構造にできる。分岐板の傾斜角度を原料の安息角以上とすれば、分岐ダクトの内部に原料が堆積することを防止できる。
【0055】
[項目8]
前記分岐ダクトは、平面視における前記仮焼炉と反対方向に前記分離サイクロンの点検口に通じる通路を有している、項目1乃至7のいずれかの項目に記載の下向き分岐ダクト。
【0056】
このように構成すれば、分岐ダクトと建屋との間のスペースに、分離サイクロンの点検口に通じる通路を設けられる。よって、分離サイクロンの入口部におけるマンホール、内部に施工されている耐火物や内部機器の点検時のアクセス性、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0057】
1 セメント製造設備
2 サスペンションプレヒータ
7 第5段サイクロン(ボトムサイクロン)
8 入口
9 点検口
20 仮焼炉
22 入口
23 出口
25 仮焼炉
30 第1分岐ダクト構造
31 屈曲ダクト(仮焼炉出口ダクト)
32 炉側開口部
33 屈曲部
34 ダクト側開口部
35 形状変更部分
36 第1分岐ダクト
37 入口部
38 出口部
39 分岐通路
40 分岐板
41 頂部
50 第2分岐ダクト構造
51 屈曲ダクト(仮焼炉出口ダクト)
52 炉側開口部
53 屈曲部
54 ダクト側開口部
55 形状変更部
56 第2分岐ダクト
57 入口部
58 出口部
59 分岐通路
60 第3分岐ダクト構造
61 屈曲ダクト(仮焼炉出口ダクト)
62 炉側開口部
63 屈曲部
64 ダクト側開口部
65 形状変更部
66 第3分岐ダクト
67 入口部
68 出口部
69 分岐通路
70 第4分岐ダクト構造
71 屈曲ダクト(仮焼炉出口ダクト)
72 炉側開口部
73 屈曲部
74 ダクト側開口部
76 第4分岐ダクト
77 入口部
78 出口部
79 分岐通路
80 第5分岐ダクト構造
81 屈曲ダクト(仮焼炉出口ダクト)
82 炉側開口部
83 屈曲部
84 ダクト側開口部
85 形状変更部
86 第5分岐ダクト
87 入口部
88 出口部
89 分岐通路
90 建屋
93 スペース
95 点検床(通路)
96 階段(通路)
θ1、θ2、θ3 角度
L1 一辺長さ
M1 幅寸法
C1、C2 中心
X1 第1軸線
X2 第2軸線
W1 平面方向
100 原料
200 ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11