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特開2024-94758蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094758
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/169 20210101AFI20240703BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240703BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/103
H01M50/15
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211513
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 佑介
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD13
(57)【要約】
【課題】溶融凝固部の外装体外方へのはみ出しを抑制することにより、寸法精度の信頼性を有する、蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】
本開示は、底部と、開口部と、側壁12aと、を有する外装体12と、開口部を封口する封口板18と、を有するケース1を備える蓄電デバイス100の製造方法であって、封口板18を外装体12の開口部に嵌合する封口板嵌合工程と、外装体12と封口板18との嵌合部11をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を有する。ここで、上記レーザ溶接工程は、ケース1を、封口板18が鉛直方向に対し、斜め上方、水平方向、斜め下方、又は下方のいずれかを向く姿勢とした状態でレーザ光Lを照射し、レーザ光Lにより溶融した溶融金属を、該溶融金属の自重によって封口板18方向または封口板18に対して鉛直方向に傾斜し、凝固することで溶融凝固部50を形成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を収容するケースと、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記ケースは、
底部と、前記底部に対向する開口部と、前記底部から前記開口部に延びる側壁と、を有する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、
を備え、
前記ケース内に前記電極体を収容し、前記封口板を前記外装体の前記開口部に嵌合する封口板嵌合工程と、
前記封口板嵌合工程の後、前記外装体と前記封口板との嵌合部をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を有し、
前記レーザ溶接工程は、
前記ケースを、前記封口板が鉛直方向に対し、斜め上方、水平方向、斜め下方、又は下方のいずれかを向く姿勢とした状態でレーザ光を照射し、
前記レーザ光により溶融した溶融金属を、前記溶融金属の自重によって前記封口板方向または前記封口板に対して鉛直方向に傾斜し、凝固することで溶融凝固部を形成する、
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記溶融凝固部は、前記外装体から外方にはみ出さない、
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記底部は略矩形状であり、
前記封口板は略矩形かつ板状であり、
前記側壁は、一対の第1側壁と、一対の第2側壁とを含み、
前記開口部は略矩形環状であり、
前記嵌合部は、前記第1側壁に対応し、互いに平行かつ直線に延びる第1辺部と第2辺部とを有し、
前記第1辺部が、水平かつ前記第2辺部よりも高い位置となる姿勢を第1姿勢とし、
前記第2辺部が、水平かつ前記第1辺部よりも高い位置となる姿勢を第2姿勢とし、
前記レーザ溶接工程は、
前記ケースが前記第1姿勢を保持した状態で、前記第1辺部をレーザ溶接する第1レーザ溶接工程と、
前記ケースが前記第2姿勢を保持した状態で、前記第2辺部をレーザ溶接する第2レーザ溶接工程と、
を含む、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2レーザ溶接工程の前に、
前記ケースを軸周りに回転させて、前記ケースが前記第2姿勢となるように調整する第2姿勢調整工程をさらに含む、
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1側壁は、前記第2側壁より面積が小さい短側壁である、
請求項4に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記嵌合部は、前記第2側壁に対応し、互いに平行かつ直線に延びる第3辺部と第4辺部を有し、
前記第3辺部が、水平かつ前記第4辺部よりも高い位置となる姿勢を第3姿勢とし、
前記第4辺部が、水平かつ前記第3辺部よりも高い位置となる姿勢を第4姿勢とし、

前記レーザ溶接工程は、
前記第3姿勢を保持した状態で、前記第3辺部をレーザ溶接する第3レーザ溶接工程と、
前記第4姿勢を保持した状態で、前記第4辺部をレーザ溶接する第4レーザ溶接工程と、
を更に含む、請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記レーザ溶接工程において、
スキャナヘッドによって前記レーザ光を照射し、
前記スキャナヘッドは、前記封口板と対向し、前記ケースと同じ向きに傾斜する、
請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記レーザ溶接工程において、
前記ケースを、前記封口板が鉛直方向に対し、斜め上方を向く姿勢とした状態でレーザ光を照射する、
請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項9】
電極を有する電極体と、
開口部を有し、前記電極体を収容する外装体と、
前記開口部を封口する封口板と、
前記外装体の前記開口部と前記封口板との嵌合部に形成された環状の溶融凝固部と、を備え、
前記溶融凝固部の少なくとも一部は、前記封口板方向または前記封口板に対して鉛直方向に傾斜される、
蓄電デバイス。
【請求項10】
前記溶融凝固部は、前記外装体から外方にはみ出さない、
請求項9に記載の蓄電デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスは、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。従来、底部と該底部に対向する開口部と、上記底部から上記開口部に延びる側壁と、を有する外装体と、上記開口部を封口する封口板とを有し、該外装体と該封口板との嵌合部に溶融凝固部を備えた蓄電デバイスが知られる。例えば、特許文献1には、電池ケース(外装体)と蓋(封口板)とをレーザ溶接する際、レーザ光の入射角を被溶接部の表面に対して垂直でない所定の角度とすることを特徴とする角型電池容器の溶接方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-181666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の蓄電デバイスにおいては、溶融凝固部の外装体外方へのはみ出しによって、蓄電デバイスの寸法にぶれが生じる。蓄電デバイスはその普及に伴い、寸法精度の安定性が求められていると共に、溶接品質の安定性や、高エネルギー化等をはじめとした高い信頼性が要求されている。従って、本発明者は、蓄電デバイスの溶融凝固部の外装体外方へのはみ出しを抑制することが望ましいと考えている。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融凝固部の外装体外方へのはみ出しを抑制することにより、寸法精度の信頼性を有する、蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される技術は、電極体と、該電極体を収容するケースと、を備える蓄電デバイスの製造方法に関する。上記ケースは、底部と、該底部に対向する開口部と、上記底部から上記開口部に延びる側壁と、を有する外装体と、上記開口部を封口する封口板と、を備える。ここに開示される製造方法では、上記ケース内に上記電極体を収容し、上記封口板を上記外装体の上記開口部に嵌合する封口板嵌合工程と、上記封口板嵌合工程の後、上記外装体と上記封口板との嵌合部をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を有する。ここで、上記レーザ溶接工程では、上記ケースを、上記封口板が鉛直方向に対し、斜め上方、水平方向、斜め下方、又は下方のいずれかを向く姿勢とした状態でレーザ光を照射し、該レーザ光により溶融した溶融金属を、該溶融金属の自重によって上記封口板方向または上記封口板に対して鉛直方向に傾斜し、凝固することで溶融凝固部を形成する。
【0007】
かかる構成によると、ケースを上記した姿勢とすることで、レーザ光によって生じた溶融金属を、該溶融金属の自重によって封口板方向あるいは封口板に対して鉛直方向に傾斜する。そして、上記溶融金属が凝固し、溶融凝固部が形成されることで、該溶融凝固部の外装体外方へのはみ出しを抑制することができる。従って、寸法精度の信頼性を有する蓄電デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図3は、外装体と封口板を模式的に示す上面図である。
図4図4は、一実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法を示すフロー図である。
図5図5は、一実施形態に係る、図3のA-A断面に沿う蓄電デバイスの縦断面図であり、(a)はレーザ光照射の様子を示し、(b)は溶融凝固部形成の様子を示す。
図6図6は、一実施形態に係る、図3のA-A断面に沿う蓄電デバイスの縦断面図であり、(a)はレーザ光照射の様子を示し、(b)は溶融凝固部形成の様子を示す。
図7図7は、一実施形態に係る、図3のA-A断面に沿う蓄電デバイスの縦断面図であり、(a)はレーザ光照射の様子を示し、(b)は溶融凝固部形成の様子を示す。
図8図8は、一実施形態に係る、図3のA-A断面に沿う蓄電デバイスの縦断面図であり、(a)はレーザ光照射の様子を示し、(b)は溶融凝固部形成の様子を示す。
図9図9は、一実施形態に係るレーザ溶接工程を示す模式図である。
図10図10は、一実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法を示すフロー図である。
図11図11は、一実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法を示すフロー図である。
図12図12は、変形例に係る蓄電デバイスの製造方法を示すフロー図である。
図13図13は、従来例に係る、図3のA-A断面に沿う蓄電デバイスの縦断面図であり、(a)はレーザ光照射の様子を示し、(b)は溶融凝固部形成の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらここに開示される技術に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれるとともに、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0010】
本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電を行なうことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一般にリチウムイオン電池やリチウム二次電池などと称される電池の他、リチウムポリマー電池、リチウムイオンキャパシタなどが包含される。二次電池とは、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返しの充放電が可能な電池一般をいう。ここでは、蓄電デバイスの一形態として、リチウムイオン二次電池を例示する。
【0011】
<蓄電デバイス100>
図1は、蓄電デバイス100を模式的に示す斜視図である。図2は、図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、外装体12と封口板18を模式的に示す上面図である。図2および図3では、外装体12と封口板18は溶接される前(溶融凝固部50が形成される前)である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下(重力方向)を表す。また、図面中の符号Xは、蓄電デバイス100の短辺方向(厚み方向ともいう。)を示し、符号Yは、蓄電デバイス100の長辺方向を示し、符号Zは、鉛直方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電デバイス100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図1図2に示すように、蓄電デバイス100は、ケース1と、電極体20と、正極端子6と、負極端子8と、正極集電部材35と、負極集電部材45と、を備えている。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに電解液を備えている。蓄電デバイス100の構成は従来同様であってよい。蓄電デバイス100は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることが好ましい。
【0013】
ケース1は、電極体20を収容する筐体である。図1および図2に示すように、ケース1は、開口部15を有する外装体12と、開口部15を封口する封口板18と、を備えている。外装体12および封口板18は、電極体20の収容数(1つまたは複数。)や、サイズ等に応じた大きさを有している。ケース1は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウムを主体としたアルミニウム合金からなることがより好ましい。ここでは、ケース1はアルミニウム製である。ケース1は、図1に示すように、ここでは扁平かつ有底の略直方体形状(角型)を有する。しかし、これに限定されず、ケース1の形状は、例えば円筒型等であってもよい。
【0014】
外装体12は、図1図2に示すように、一側面(ここでは上面)に開口部15を有する有底かつ略直方体形状の容器である。外装体12は、図1に示すように、一対の短辺と一対の長辺を有する略矩形状の底部12dと、底部12dの短辺から上方に延び相互に対向する一対の短側壁12a、12bと、底部12dの長辺から上方に延び相互に対向する一対の長側壁12e、12fと、を備えている。短側壁12a、12bは長側壁12e、12fより面積が小さい。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。なお、短側壁12a、12bおよび長側壁12e、12fは、ここに開示される「側壁」の一例である。また、短側壁12a、12bは、ここに開示される「第1側壁」の一例であり、長側壁12e、12fは、ここに開示される「第2側壁」の一例である。外装体12の一側面には、一対の短側壁12a、12bと一対の長側壁12e、12fで囲まれた略矩形環状の開口部15が形成されている。図2に示すように、底部12dは開口部15と対向している。
【0015】
封口板18は、図1および図2に示すように、外装体12の開口部15を封口する部材である。ここでは、封口板18は、平面略矩形の板状部材である。図2に示すように、封口板18には、注液孔71と、ガス排出弁73と、端子引出孔74,75と、が設けられている。封口板18は、外装体12の底部12dと対向している。
【0016】
図3に示すように、封口板18の外周面と外装体12(開口部15)の内面とが嵌合部11で対向するように配置(嵌合)される。ここでは、封口板18と外装体12の上端(図2の上端部)は平面視において、面一である。嵌合部11は、一対の短辺部11a、11bと一対の長辺部11e、11fを有する。短辺部11a、11bは、短側壁12a、12bに対応し、互いに並行かつ直線に延びる。一方で、長辺部11e、11fは、長側壁12e、12fに対応し、互いに並行且つ直線に延びる。なお、以下の説明において、一対の短辺部11a、11bのうち、一方の短辺部11a(図3の左側)を「第1辺部11a」と称し、他方の短辺部11b(図3の右側)を「第2辺部11b」と称する。また、一対の長辺部11e、11fのうち、一方の長辺部11e(図3の前側)を「第3辺部11e」と称し、他方の長辺部11f(図3の後側)を「第4辺部11f」と称する。第1辺部11a、第2辺部11b、第3辺部11eおよび第4辺部11fは、ここに開示される「第1辺部」、「第2辺部」、「第3辺部」および「第4辺部」の一例である。また、図3に示すように、ここでは嵌合部11は、短辺部11a、11bと長辺部11e、11fとの間に設けられたR部11g、11h,11i、11jを有する。ただし、嵌合部11のR部は必須ではない。詳しくは後述するが、嵌合部11を全周に亘ってレーザ溶接することで、環状の溶融凝固部50(図5参照)が形成されるとともに、封口板18と外装体12とが接合される。これによって、ケース1は気密に封止(密閉)されている。
【0017】
注液孔71は、外装体12に封口板18を組み付けた後、ケース1の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔71は、ここでは、電解液の注液後に封止部材72によって封止されている。ガス排出弁73は、ケース1内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース1内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0018】
電解液としては、従来公知において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒(有機溶媒)に支持塩(電解質塩)を溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0019】
正極端子6は、封口板18の長辺方向Yの一方の端部(図2の左端部)に取り付けられている。負極端子8は、封口板18の長辺方向Yの他方の端部(図2の右端部)に取り付けられている。図2に示すように、正極端子6および負極端子8は、端子引出孔74,75に挿通され、封口板18の外側の表面に露出している。図2に示すように、正極端子6は、外装体12の内部で、正極集電部材35を介して電極体20の正極3と電気的に接続されている。負極端子8は、外装体12の内部で、負極集電部材45を介して電極体20の負極4と電気的に接続されている。正極端子6および負極端子8は、ガスケット76およびインシュレータ78によって封口板18と絶縁されている。また、正極端子6と正極集電部材35との間または負極端子8と負極集電部材45との間に、電流遮断機構(CID)を設置してもよい。
【0020】
正極端子6は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。負極端子8は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子8は、2つの導電部材が接合され一体化されて構成されていてもよい。例えば、負極集電部材45と接続される部分が銅または銅合金からなり、封口板18の外側の表面に露出する部分がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなっていてもよい。
【0021】
ガスケット76やインシュレータ78には、耐薬品性や耐候性に優れた材料が用いられるとよい。ガスケット76やインシュレータ78は、電気絶縁性を有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、脂肪族ポリアミド等で構成されていてもよい。
【0022】
ここでは、正極端子6は、ケース1の外側において、板状の正極外部導電部材36と電気的に接続されている。同様に、負極端子8は、ケース1の外側において、板状の負極外部導電部材46と電気的に接続されている。正極外部導電部材36および負極外部導電部材46は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の蓄電デバイスや外部機器と接続される。正極外部導電部材36および負極外部導電部材46は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の導電性に優れた金属から構成されていることが好ましい。ただし、正極外部導電部材36および負極外部導電部材46は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0023】
電極体20は従来と同様でよく、特に制限はない。図2に示すように、電極体20は、正極3および負極4を有する。ここでは、電極体20は、帯状の正極3と帯状の負極4とが帯状のセパレータ7を介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として捲回されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、電極体20は、方形状(典型的には矩形状)の正極3と方形状(典型的には矩形状)の負極4とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。また、1つの外装体12の内部に配置される電極体20の数は特に限定されず、2個以上(複数)であってもよい。なお、正極3および負極4は、ここに開示される技術における「電極」の一例である。
【0024】
図2に示すように、正極3は、正極集電体30と、正極集電体30上に固着された正極活物質層31と、を有する。正極集電体30は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極活物質層31は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含む層である。
【0025】
負極4は、負極集電体40と、負極集電体40上に固着された負極活物質層41と、を有する。負極集電体40は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極活物質層41は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含む層である。
【0026】
セパレータ7は、正極3の正極活物質層31と、負極4の負極活物質層41と、を絶縁する部材である。セパレータ7としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる多孔性の樹脂製シートが好適である。なお、セパレータ7の表面には、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)が設けられていてもよい。
【0027】
図2に示すように、電極体20の長辺方向Yの左端部には、正極活物質層31の形成されていない正極集電体30の一部分(正極集電体露出部)が積層部分からはみ出している。正極集電体露出部には、正極集電部材35が付設されている。正極集電部材35は、正極集電体30と同じ金属材料、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。また、電極体20の長辺方向Yの右端部には、負極活物質層41の形成されていない負極集電体40の一部分(負極集電体露出部)が積層部分からはみ出している。負極集電体露出部には、負極集電部材45が付設されている。負極集電部材45の材質(金属種)は正極集電部材35と異なっていてもよい。負極集電部材45は、負極集電体40と同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。
【0028】
<蓄電デバイス100の製造方法>
図4は、一実施形態に係る蓄電デバイス100の製造方法を示すフロー図である。ここに開示される蓄電デバイス100は、封口板嵌合工程S10と、レーザ溶接工程S20と、を順に含む製造方法によって製造することができ、レーザ溶接工程S20を行うことで特徴づけられる。また、ここに開示される蓄電デバイス100の製造方法では、上記の工程に加え、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよく、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってよい。図5~8は、レーザ溶接工程S20に係る蓄電デバイス100の縦断面図である。また、図13は、従来例に係る蓄電デバイス100の縦断面図であるなお、図5~8および図13において、(a)はレーザ光L照射の様子を示し、(b)は溶融凝固部50形成の様子を示す。また、図5~8および図13は、図3のA-A断面に対応し、重力方向について白抜き矢印で示し、溶融前の封口板18と外装体12の一部について仮想線で示す。
【0029】
(封口板嵌合工程S10)
封口板嵌合工程S10では、外装体12内に電極体20を収容し、封口板18を外装体12の開口部15に嵌合する。これにより、外装体12の上端部と封口板18とが、面一となる。また、封口板18の外周面と外装体12(開口部15)の内面とが対向し、嵌合部11が形成される。
【0030】
(レーザ溶接工程S20)
レーザ溶接工程S20では、封口板嵌合工程S10で形成した、外装体12と封口板18との嵌合部11を、レーザ溶接する。この時、ケース1を、封口板18が鉛直方向に対し、斜め上方(図5(a)参照)、水平方向(図6(a)参照)、斜め下方(図7(a)参照)、又は下方(図8(a)参照)のいずれかを向く姿勢とする。
【0031】
ところで、かかる溶接を行う際、封口板18と外装体12の一部(仮想線で図示)が溶融し、該溶融部が凝固することで、溶融凝固部50が形成される。溶融凝固部50の形状は、例えば、溶融金属の流動や表面張力の影響等によって決まる。詳述すれば、溶融凝固部50は、溶融金属の表面張力によって盛り上がった形状で凝固することで形成される。従来では、封口板18が鉛直方向Zに対して真上を向く姿勢で行っている(図13(a)参照)。そのため、図13(b)に示すように、溶融凝固部50の一部が外装体12より外方にはみ出す(突出する)虞がある。かかる溶融凝固部50のはみ出しにより、長辺方向Yおよび短辺方向Xについて、蓄電デバイス100(ケース1)のサイズにばらつきが出る。従って、本発明者は、溶融凝固部50の外装体12より外部へのはみ出しを抑制したいと考えている。なお、本明細書における「外装体の外方に形成される(はみ出す)」とは、溶融凝固部50の少なくとも一部が、外装体12より長辺方向Yあるいは短辺方向Xに突出することを示す。溶融凝固部50の少なくとも一部が、鉛直方向Zへの突出することは、「外方にはみ出す」には包含されない。
【0032】
上記した従来例に対し、ここでは、ケース1を、封口板18が鉛直方向に対し、斜め上方(図5(a)参照)、水平方向(図6(a)参照)、斜め下方(図7(a)参照)、又は下方(図8(a)参照)のいずれかを向く姿勢とする。即ち、ここでは、ケース1は、封口板18が鉛直方向Zに対して真上を向く姿勢(図13(a)参照)ではない。そして、ケース1を上記した姿勢とした状態で、嵌合部11に対しレーザ光Lを照射することにより、封口板18と外装体12の一部が溶融し、溶融金属となる。かかる溶融金属は、自重によって(重力方向に従って)封口板18方向、あるいは、封口板18に対し鉛直方向に傾斜し、凝固する。これにより、外装体12より外方への飛び出しが抑制された状態で溶融凝固部50が形成される(図5~8(b)参照)。従って、ここに開示される技術によれば、寸法精度の信頼性を有する蓄電デバイスを製造することが可能となる。なお、好適な一態様として、溶融凝固部50は、外装体12から外方にはみ出さないことが好ましい。
【0033】
好適な一態様では、図5に示すように、ケース1を封口板18が鉛直方向に対し、斜め上方を向く姿勢とした状態とする。かかる姿勢とした場合、図5(b)に示すように、溶融凝固部50は、封口板18方向に傾斜し、形成される。封口板18が鉛直方向に対し、斜め上方を向いている姿勢とした場合、製造設備の単純化が可能となる。従って、より効率的に蓄電デバイス100の製造が可能となる。
【0034】
また、好適な他の一態様では、図6に示すように、ケース1を封口板18が鉛直方向に対し、水平方向を向く姿勢とした状態とする。かかる姿勢とした場合、図6(b)に示すように、溶融凝固部50は、封口板18方向に傾斜し、形成される。また、溶融凝固部50は、より外装体12の外方から遠ざかるように形成される。従って、封口板18が鉛直方向に対し、水平方向を向いている姿勢とした場合、溶融凝固部50の外装体12外方へのはみ出しをより好適に抑制することができる。
【0035】
好適な他の一態様として、図7に示すように、ケース1を封口板18が鉛直方向に対し、斜め下方を向く姿勢とした状態とする。かかる姿勢とした場合、図7(b)に示すように、溶融凝固部50は、封口板18方向に傾斜し、形成される。好適な他の一態様では、図8に示すように、ケース1を封口板18が鉛直方向に対し、下方を向く姿勢とした状態とする。かかる姿勢とした場合、図8(b)に示すように、溶融凝固部50は、封口板18に対し鉛直方向に傾斜し、形成される。封口板18が鉛直方向に対し、斜め下方、あるいは、下方を向いている姿勢とした場合、ケース1に対し、レーザ溶接の際に発生したスパッタの付着を好適に抑えることができる。
【0036】
水平方向に対する、ケース1(封口板18)の傾斜角度θ(図9参照)は、溶融金属の流動性などにもよるが、溶融凝固部50の形成効果を発現する観点で約5°以上が好ましく、約10°以上がより好ましい。
【0037】
レーザ溶接工程S20における、ケース1の固定方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、回転台やロボットアーム等が採用されうる。ここでは、一例として回転台を用いた方法について詳述する。図9は、一実施形態に係るレーザ溶接工程S20の様子を示す模式図である。なお。図9では、回転軸126の回転方向について矢印で示す。ここでは、ケース1は、回転台120に配置されている。回転台120は、拘束治具122と、ターンテーブル124と、回転軸126とを備える。図9に示すように、ここでは拘束治具122と、ターンテーブル124と、回転軸126は、水平方向に対し傾斜した状態である。図9に示すように、ここではスキャナヘッド140がケース1の封口板18と対向するように配置されている。
【0038】
拘束治具122は、ケース1を拘束する治具である。拘束治具122の形状は、ケース1を拘束できればよく、例えば、ケース1を収容する凹部を有する箱型でもよく、バンド状でもよい。図9に示すように、ここでは拘束治具122の凹部に、封口板嵌合工程S10を経たケース1が収容されている。図9に示すように、拘束治具122はターンテーブル124上に配置(固定)される。ターンテーブル124は回転軸126の上に固定されることにより、回転軸126の回転と連動する。図9に示すように、回転軸126の軸心は、ケース1の軸心Cと一致している。回転軸126の回転により、ターンテーブル124と、ターンテーブル124の拘束治具122および該拘束治具122に配置されたケース1が軸周り(図9の矢印方向)に回転する。ここでは、回転軸126は時計回りに回転する。回転軸126の回転方向は反時計回りでもよく、回転軸126が回転する都度回転方向を変更してもよい。
【0039】
レーザ溶接工程S20におけるスキャナヘッド140の位置は、ケース1の形状や、ケース1の姿勢、レーザ光Lの偏向角等に併せて適宜調整することができる。図9では、スキャナヘッド140はケース1の軸心Cとスキャナヘッド140の軸心CLとが略一致するように配置されている。また、これに限定されないが、例えばスキャナヘッド140の軸心CLがケース1の軸心Cより重力方向にみて嵌合部11の最上流側(鉛直方向Zにみて最も上側)の領域寄りにスキャナヘッド140を配置してもよい。かかる構成の場合、レーザ光Lの偏向角をより小さくすることができる。即ち、レーザ光Lの偏向角が小さいスキャナヘッドについても好適に、本実施形態に採用し得ることができる。
【0040】
また、図9に示すようにスキャナヘッド140(レーザ照射面)と封口板18とが対向し、スキャナヘッド140とケース1とが同じ向きに傾斜していることが好ましい。これにより、加工点でのプロファイルの変化が抑えられ、溶接品質がより安定する。従って、より好適に溶融凝固部50の外装体12外方へのはみ出しを抑制することができる。
なお、本明細書における「同じ向きとは」、ケース1の水平面に対する傾斜角度θとスキャナヘッド140の水平面に対する傾斜角度θLの差が±5°以内であることを示す(図9参照)。
【0041】
上記した構成は、あくまで例示にすぎず、これに限定されるものではない。ケース1の固定方法について、ケース1の形状やスキャナヘッド140の位置等によって適宜変更することができる。例えば、外装体12と封口板18とのずれを防ぐために、外装体12と封口板18とを固定する治具(例えばクランプ等)を採用してもよい。
【0042】
レーザ溶接工程S20に使用するレーザ光の種類やレーザ溶接の条件については、従来と同様よく、特に限定されない。レーザ光の走査順路(走査方向)については、特に制限はなく、また、嵌合部11において、レーザ光の走査箇所が一部重複してもよい。また、レーザ照射方向と外装体12と封口板18(水平面)とのなす角は、典型的には90±10°程度であり、例えば90±5°程度である。
【0043】
レーザ溶接工程S20では、嵌合部11のうち、重力方向に対し、最下流(鉛直方向Zにみて最も下側)に位置する領域を除く領域についてレーザ溶接を行うことができる。レーザ溶接工程S20では、複数回に分けてレーザ溶接を行ってもよく、レーザ溶接する領域に併せて、適宜ケース1の姿勢を調整することができる。例えば、嵌合部11のうち、重力方向の最下流側の領域について溶接を行う場合、当該領域が重力方向の最下流側にならないように、ケース1の姿勢を調整したのち、レーザ溶接を行うことができる。かかる調整方法は、特に限定されないが、ケース1を軸周りに回転させて位置調整を行うことが好ましい。これにより、プロファイルの変化を抑えることができるため、溶融凝固部50の溶接品質がより安定する。
【0044】
<第1の実施形態>
以下、ここで開示される技術に関するいくつかの実施例を説明するが、ここで開示される技術をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。図10は、第1の実施形態に係るフロー図である。第1の実施形態では、封口板嵌合工程S10と、第1レーザ溶接工程S201と、第2姿勢調整工程S202aと、第2レーザ溶接工程S202と、をこの順で含んでいる。第1レーザ溶接工程S201および第2レーザ溶接工程S202は上記したレーザ溶接工程S20の一態様である。また、上記の工程に加え、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。なお、封口板嵌合工程S10は、上記と同様であってよいため、ここでは説明を省略する。
【0045】
(第1レーザ溶接工程S201)
第1レーザ溶接工程S201では、ケース1が第1姿勢を保持した状態で第1辺部11aをレーザ溶接する。なお、本明細書において「第1姿勢」とは、第1辺部11aが水平かつ第2辺部11bよりも高い位置となる姿勢を示す。詳述すれば、図9に示すように、第1辺部11a、第2辺部11bは、互いに水平であり、鉛直方向に対し、第1辺部11aは、第2辺部11bよりも高い位置(U側)に配置される。そして、上記第1姿勢を保持した状態で、ケース1の嵌合部のうち、第1辺部11aに対しレーザ光Lを照射する。これにより、封口板18と外装体12の一部が溶融金属として溶融する。そして、かかる溶融金属は、自重によって封口板18方向(換言すれば、第2辺部11b方向)に傾斜した状態で該溶融金属が凝固し、溶融凝固部50が形成される。
【0046】
第1レーザ溶接工程S201では、第1辺部11aに加え、第3辺部11eまたは/および第4辺部11fについてもレーザ溶接を行うことができる。但し、必ずしも第3辺部11eまたは/および第4辺部11fの全ての領域を第1レーザ溶接工程S201で溶接する必要はない。例えば、第1レーザ溶接工程S201で、第3辺部11eまたは/および第4辺部11fの一部をレーザ溶接し、次いで、第2レーザ溶接工程S202にて、第1レーザ溶接工程S201でレーザ溶接を行わなかった残りの領域に対してレーザ溶接を行ってもよい。また、嵌合部11がR部を有する場合、第1辺部11aに隣接するR部11h、11gについてもレーザ溶接を行うことができる。ただし、第1レーザ溶接工程S201においては、第2辺部11bに対しレーザ溶接を実施しない方が好ましい。
【0047】
(第2姿勢調整工程S202a)
いくつかの好適な実施態様において、第2レーザ溶接工程S202の前に第2姿勢調整工程S202aをさらに行うことができる。第2姿勢調整工程S202aでは、ケース1を軸周りに回転させて、ケース1が第2姿勢となるように調整する。なお、本明細書において「第2姿勢」とは、第2辺部11bが水平かつ第1辺部11aよりも高い位置となる姿勢を示す。詳述すれば、第1辺部11a、第2辺部11bは、互いに水平であり、鉛直方向に対し、第2辺部11bは、第1辺部11aよりも高い位置(U側)に配置される。かかる回転方法は、例えば、前述したレーザ溶接工程S20で例示した方法を採用し得る。ここでは、図9に示すように、回転台120の回転軸126を軸周り(矢印方向)に回転することで、拘束治具122に配置したケース1を軸周りに回転する。かかる構成でケース1を回転することにより、ケース1の傾斜角度を保つことができ、かつ、第1姿勢と第2姿勢との間で、ケース1とスキャナヘッド140との距離や角度等のぶれを抑えることができる。これによって、プロファイルの変化を抑えることができるため、この後の第2レーザ溶接工程S202においてもより安定した溶接を行うことができる。なお、ケース1の軸回転の方向は特に限定されず、時計回りでもよいし、反時計回りでもよい。ただし、第2姿勢調整工程S202aは、必須で行う必要はなく、第2姿勢調整工程S202aとは異なる手段でケース1を第2姿勢に調整することもできる。また、第2姿勢を保持した状態であれば、第2姿勢調整工程S202aと、第2レーザ溶接工程S202との間に任意で別工程を更に行うことができる。
【0048】
(第2レーザ溶接工程S202)
第2レーザ溶接工程S202では、ケース1が第2姿勢を保持した状態で、ケース1の嵌合部11のうち、第2辺部11bに対しレーザ光Lを照射する。これにより、封口板18と外装体12の一部が溶融金属として溶融する。そして、かかる溶融金属は、自重によって封口板18方向(換言すれば、第1辺部11a方向)に傾斜した状態で該溶融金属が凝固し、溶融凝固部50が形成される。なお、第2レーザ溶接工程S202の上記した事項以外は、は第1レーザ溶接工程S201と同様であってよい。ただし、第2レーザ溶接工程S202においては、第1辺部11aに対しレーザ溶接を実施しないことが好ましい。また、第1レーザ溶接工程S201と、第2レーザ溶接工程S202と、の間でレーザ光Lの照射部分(走査経路)が一部重複してもよい。
【0049】
かかる実施例によると、第1レーザ溶接工程S201、第2レーザ溶接工程S202を行うことにより、短側壁12a、12bについて、溶融凝固部50の外装体12外方(詳述すれば、長辺方向)へのはみ出しをより好適に抑制することができる。従って、好適にケース1の寸法精度の信頼性を高めた蓄電デバイス100の提供が可能となる。また、第2レーザ溶接工程の前に第2姿勢調整工程S202aを行うことにより、第2レーザ溶接工程S202においてもより安定した溶接を行うことができる。
【0050】
なお、上記した第1の実施形態では、短辺部である第1辺部11a、第2辺部11bに対して第1レーザ溶接工程S201および第2レーザ溶接工程S202を行った。しかしこれに限定されない。蓄電デバイスの100長辺部(第3辺部11eおよびに第4辺部11f)についても第1の実施形態に倣って、本開示における蓄電デバイス100の製造方法を行うことができる。この場合、第1の実施形態において、例えば、「第1辺部11a」を「第3辺部11e」、「第2辺部11b」を「第4辺部11f」と適宜読み替えることができる。これにより、長側壁12e、12fについて、溶融凝固部50の外装体12外方(詳述すれば、短辺方向)へのはみ出しをより好適に抑制することができる。なお、寸法精度の信頼性の観点から、長辺方向について、溶融凝固部50の外装体12外方へのはみ出しを抑制することがより好ましい。したがって、第1辺部11a、第2辺部11b(短側壁12a、12b)に対して第1レーザ溶接工程S201および第2レーザ溶接工程S202を行うことがより好ましい。
【0051】
<第2の実施形態>
図11は、第2の実施形態に係るフロー図である。図11に示すように、第2の実施形態に係る蓄電デバイス100の製造方法では、封口板嵌合工程S10と、第1レーザ溶接工程S201と、第2レーザ溶接工程S202と、第3レーザ溶接工程S203と、第4レーザ溶接工程S204と、含んでいる。封口板嵌合工程S10の後の工程については、順序を変更してもよく、適宜別の工程を含んでもよい。第3レーザ溶接工程S203および第4レーザ溶接工程S204は上記したレーザ溶接工程S20の一態様である。なお、第2の実施形態において、封口板嵌合工程S10、第1レーザ溶接工程S201および第2レーザ溶接工程S202は第1の実施形態と同様であってよいため、ここでは説明を省略する。
【0052】
(第3レーザ溶接工程S203)
第3レーザ溶接工程S203では、ケース1が第3姿勢を保持した状態で第3辺部11eをレーザ溶接する。なお、本明細書において「第3姿勢」とは、第3辺部11eが水平かつ第4辺部11fよりも高い位置となる姿勢を示す。詳述すれば、第3辺部11e、第4辺部11fは、互いに水平であり、鉛直方向に対し、第3辺部11eは、第4辺部11fよりも高い位置(U側)に配置される。そして、上記第3姿勢を保持した状態で、ケース1の嵌合部のうち、第3辺部11eに対しレーザ光Lを照射する。これにより、封口板18と外装体12の一部が溶融金属として溶融する。そして、かかる溶融金属は、自重によって封口板18方向(換言すれば、第4辺部11f方向)に傾斜した状態で該溶融金属が凝固し、溶融凝固部50が形成される。
【0053】
(第4レーザ溶接工程S204)
第4レーザ溶接工程S204では、ケース1が第4姿勢を保持した状態で第4辺部11fをレーザ溶接する。なお、本明細書において「第4姿勢」とは、第4辺部11fが水平かつ第3辺部11eよりも高い位置となる姿勢を示す。詳述すれば、第3辺部11e、第4辺部11fは、互いに水平であり、鉛直方向に対し、第4辺部11fは、第3辺部11eよりも高い位置(U側)に配置される。そして、上記第4姿勢を保持した状態で、ケース1の嵌合部のうち、第4辺部11fに対しレーザ光Lを照射する。これにより、封口板18と外装体12の一部が溶融金属として溶融する。そして、かかる溶融金属は、自重によって封口板18方向(換言すれば、第3辺部11e方向)に傾斜した状態で該溶融金属が凝固し、溶融凝固部50が形成される。
【0054】
かかる実施例によると、第1レーザ溶接工程S201、第2レーザ溶接工程S202に加え、上記した第3レーザ溶接工程S203および第4レーザ溶接工程S204を行うことにより、長側壁12e、12fについても、溶融凝固部50の外装体12外方(詳述すれば、短辺方向)へのはみ出しをより好適に抑制することができる。従って、より好適にケース1の寸法精度の信頼性を高めた蓄電デバイス100の提供が可能となる。第3レーザ溶接工程S203および第4レーザ溶接工程S204の溶接方法については、上記した第1レーザ溶接工程S201および、第2レーザ溶接工程S202と同様であってよい。また、第1の実施形態と同様に、嵌合部11がR部を有する場合、それぞれの溶接工程において、隣接するR部を溶接してもよい。
【0055】
なお、第2の実施形態において、第1~4レーザ溶接工程S201~S204を実施する順番は、図11に限定されるものではない。図12は、第2の実施形態に係る変形例を示すフロー図である。ここでは、第1レーザ溶接工程S201、第3レーザ溶接工程S203、第2レーザ溶接工程S202、第4レーザ溶接工程S204の順に行う。これによれば、ケース1の姿勢を効率的に調整(ケース1を回転)することができる。但し、上記
【0056】
以上、本実施形態に係る蓄電デバイス100の製造方法について説明した。ここに開示される技術の他の側面として、蓄電デバイス100が提供される。ここに開示される蓄電デバイス100は電極体20と、外装体12と、封口板18と、環状の溶融凝固部50と、を備える。蓄電デバイス100は、溶融凝固部50に特徴を持つものであって、その他の構成は従来と同様であってよい。蓄電デバイス100では、溶融凝固部50の少なくとも一部は、封口板18方向または封口板18に対して鉛直方向に傾斜される。これにより、溶融凝固部50の外装体12外方へのはみ出しを抑制し、寸法精度の信頼性を有する蓄電デバイス100が提供される。好適な態様としては、かかる溶融凝固部50が外装体12から外方にはみ出していない、寸法精度の信頼性が向上した蓄電デバイス100が提供される。
【0057】
蓄電デバイス100は各種用途に利用可能であるが、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0058】
以上、ここに開示される技術におけるいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。ここに開示される技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0059】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:電極体と、上記電極体を収容するケースと、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記ケースは、底部と、上記底部に対向する開口部と、上記底部から上記開口部に延びる側壁と、を有する外装体と、上記開口部を封口する封口板と、を備え、上記ケース内に上記電極体を収容し、上記封口板を上記外装体の上記開口部に嵌合する封口板嵌合工程と、上記封口板嵌合工程の後、上記外装体と上記封口板との嵌合部をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を有し、上記レーザ溶接工程は、上記ケースを、上記封口板が鉛直方向に対し、斜め上方、水平方向、斜め下方、又は下方のいずれかを向く姿勢とした状態でレーザ光を照射し、上記レーザ光により溶融した溶融金属を、上記溶融金属の自重によって上記封口板方向または上記封口板に対して鉛直方向に傾斜し、凝固することで溶融凝固部を形成する、蓄電デバイスの製造方法。
項2:上記溶融凝固部は、上記外装体から外方にはみ出さない、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項3:上記底部は略矩形状であり、上記封口板は略矩形かつ板状であり、上記側壁は、一対の第1側壁と、一対の第2側壁とを含み、上記開口部は略矩形環状であり、上記嵌合部は、上記第1側壁に対応し、互いに平行かつ直線に延びる第1辺部と第2辺部とを有し、上記第1辺部が、水平かつ上記第2辺部よりも高い位置となる姿勢を第1姿勢とし、上記第2辺部が、水平かつ上記第1辺部よりも高い位置となる姿勢を第2姿勢とし、上記レーザ溶接工程は、上記ケースが上記第1姿勢を保持した状態で、上記第1辺部をレーザ溶接する第1レーザ溶接工程と、上記ケースが上記第2姿勢を保持した状態で、上記第2辺部をレーザ溶接する第2レーザ溶接工程と、を含む、項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項4:上記第2レーザ溶接工程の前に、上記ケースを軸周りに回転させて、上記ケースが上記第2姿勢となるように調整する第2姿勢調整工程をさらに含む、項3に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項5:上記第1側壁は、上記第2側壁より面積が小さい短側壁である、項3または4に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項6:上記嵌合部は、上記第2側壁に対応し、互いに平行かつ直線に延びる第3辺部と第4辺部を有し、上記第3辺部が、水平かつ上記第4辺部よりも高い位置となる姿勢を第3姿勢とし、上記第4辺部が、水平かつ上記第3辺部よりも高い位置となる姿勢を第4姿勢とし、上記レーザ溶接工程は、上記第3姿勢を保持した状態で、上記第3辺部をレーザ溶接する第3レーザ溶接工程と、上記第4姿勢を保持した状態で、上記第4辺部をレーザ溶接する第4レーザ溶接工程と、を更に含む、項3~5のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項7:上記レーザ溶接工程において、スキャナヘッドによって上記レーザ光を照射し、上記スキャナヘッドは、上記封口板と対向し、上記ケースと同じ向きに傾斜する、項1~6のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項8:上記レーザ溶接工程において、上記ケースを、上記封口板が鉛直方向に対し、斜め上方を向く姿勢とした状態でレーザ光を照射する、項1~7のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項9:電極を有する電極体と、開口部を有し、上記電極体を収容する外装体と、上記開口部を封口する封口板と、上記外装体の上記開口部と上記封口板との嵌合部に形成された環状の溶融凝固部と、を備え、上記溶融凝固部の少なくとも一部は、上記封口板方向または上記封口板に対して鉛直方向に傾斜される、蓄電デバイス。
項10:上記溶融凝固部は、上記外装体から外方にはみ出さない、項9に記載の蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0060】
1 ケース
3 正極
4 負極
6 正極端子
7 セパレータ
8 負極端子
11 嵌合部
11a 第1辺部(短辺部)
11b 第2辺部(短辺部)
11e 第3辺部(長辺部)
11f 第4辺部(長辺部)
11g、11h,11i、11j R部
12 外装体
12d 底部
12a、12b 短側壁
12e、12f 長側壁
15 開口部
18 封口板
20 電極体
30 正極集電体
31 正極活物質層
35 正極集電部材
36 正極外部導電部材
40 負極集電体
41 負極活物質層
45 負極集電部材
46 負極外部導電部材
50 溶融凝固部
71 注液孔
74,75 端子引出孔
76 ガスケット
78 インシュレータ
100 蓄電デバイス
120 回転台
122 拘束治具
124 ターンテーブル
126 回転軸
L レーザ光
S10 封口板嵌合工程
S20 レーザ溶接工程
S201 第1レーザ溶接工程
S202 第2レーザ溶接工程
S203 第3レーザ溶接工程
S204 第4レーザ溶接工程
S202a 第2姿勢調整工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13