(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094759
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/169 20210101AFI20240703BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240703BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240703BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240703BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240703BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/55 101
H01M50/531
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211514
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 佑介
(72)【発明者】
【氏名】津久井 亮
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD13
5H011EE04
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA05
5H043HA08
5H043HA17
(57)【要約】
【課題】寸法精度の信頼性を有する、蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスの提供。
【解決手段】
ここに開示される蓄電デバイスの製造方法で用いるレーザ光Lは、封口板長辺部および封口板短辺部18aを照射する少なくとも1点以上のビームからなる第1レーザ光L1と、開口長辺部および開口短辺部15aを照射する少なくとも1点以上のビームからなる第2レーザ光L2と、を含む多点レーザ光であり、前記開口長辺部と前記封口板長辺部からなる領域を長辺領域、開口短辺部15aと封口板短辺部18aからなる領域を短辺領域11aとしたとき、前記長辺領域を照射するレーザ光Lのエネルギーに比して、短辺領域11aを照射する前記レーザ光Lのエネルギーが小さく、短辺領域11aを照射する第1レーザ光L1のエネルギーに比して、短辺領域11aを照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さい。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する電極体と、
矩形状の底部と、前記底部の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、前記底部の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、前記底部に対向する開口部と、該開口部の周縁のうち、前記長側壁の端部に対応する一対の開口長辺部と、前記短側壁の端部に対応する一対の開口短辺部と、を備え、前記電極体を収容する外装体と、
一対の封口板長辺部と、一対の封口板短辺部と、を有し前記外装体の開口部を封口する略矩形状の封口板と、
前記封口板に取り付けられ、前記電極体と電気的に接続される端子と、
を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記外装体に前記電極体を収容し、前記外装体の前記開口部に前記封口板を嵌合する封口板嵌合工程と、
前記封口板と、前記開口部と、に対し全周に亘ってレーザ光Lを走査して、前記封口板と前記外装体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、
を備え、
前記レーザ溶接工程において、
前記レーザ光Lは、
前記封口板長辺部および前記封口板短辺部を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第1レーザ光L1と、
前記開口長辺部および前記開口短辺部を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第2レーザ光L2と、を含む多点レーザ光であり、
前記開口長辺部と前記封口板長辺部からなる領域を長辺領域、前記開口短辺部と前記封口板短辺部からなる領域を短辺領域としたとき、
前記長辺領域を照射する前記レーザ光Lのエネルギーに比して、前記短辺領域を照射する前記レーザ光Lのエネルギーが小さく、
前記短辺領域を照射する前記第1レーザ光L1のエネルギーに比して、前記短辺領域を照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さい、
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
回折光学素子を用いて、透過回折することにより前記レーザ光Lを生成する、
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記短辺領域を照射する前記第1レーザ光L1のビーム点数と、前記長辺領域を照射する前記第1レーザ光L1のビーム点数と、は同じであって、
前記短辺領域を照射する前記第2レーザ光L2のビーム点数は、前記長辺領域を照射する前記第2レーザ光L2のビーム点数より少ない、
請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
電極を有する電極体と、
矩形状の底部と、前記底部の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、前記底部の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、前記底部に対向する開口部と、を備え、前記電極体を収容する外装体と、
前記外装体の開口部を封口する略矩形状の封口板と、
前記封口板に取り付けられ、前記電極体と電気的に接続される端子と、
前記外装体の前記開口部と前記封口板との嵌合部に形成された環状の溶融凝固部と、を備え、
前記溶融凝固部は、前記短側壁から外方にはみ出さず、
前記溶融凝固部のうち少なくとも一部は、前記端子と対向し、かつ、前記長側壁から外方へはみ出す、
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスは、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。従来、矩形状の底部と、該底部に対向する開口部と、該底部の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、該底部の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、を有する外装体と、該開口部を封口する封口板とを有し、上記外装体と上記封口板との嵌合部に溶融凝固部を備えた蓄電デバイスが知られる。例えば、特許文献1には、電池ケース(外装体)と蓋部材(封口板)とをレーザー(レーザ)溶接する際、電池ケースと蓋部材の境界部にレーザー光を照射する第1レーザー照射工程と、該第1レーザー照射工程のレーザー光の照射位置に比して、レーザー溶接の進行方向における前側で、電池ケースと蓋部材にレーザー光を照射する第二レーザー照射工程を備えるレーザー溶接方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の蓄電デバイスにおいては、溶融凝固部の短側壁外方へのはみ出しによって、蓄電デバイスの寸法にぶれが生じる。蓄電デバイスはその普及に伴い、寸法精度の安定性が求められていると共に、溶接品質の安定性や、高エネルギー化等をはじめとした高い信頼性が要求されている。従って、本発明者は、蓄電デバイスの溶融凝固部の短側壁外方へのはみ出しを抑制することが望ましいと考えている。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融凝固部の短側壁外方へのはみ出しを抑制することにより、寸法精度の信頼性を有する、蓄電デバイスの製造方法および蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される技術は、電極を有する電極体と、矩形状の底部と、該底部の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、上記底部の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、上記底部に対向する開口部と、該開口部の周縁のうち、上記長側壁の端部に対応する一対の開口長辺部と、上記短側壁の端部に対応する一対の開口短辺部と、を備え、上記電極体を収容する外装体と、一対の封口板長辺部と、一対の封口板短辺部と、を有し上記外装体の開口部を封口する略矩形状の封口板と、該封口板に取り付けられ、上記電極体と電気的に接続される端子と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記外装体に上記電極体を収容し、上記外装体の上記開口部に上記封口板を嵌合する封口板嵌合工程と、上記封口板と、上記開口部と、に対し全周に亘ってレーザ光Lを走査して、上記封口板と上記外装体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を備える。ここで、上記レーザ溶接工程において、上記レーザ光Lは、上記封口板長辺部および上記封口板短辺部を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第1レーザ光L1と、上記開口長辺部および上記開口短辺部を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第2レーザ光L2と、を含む多点レーザ光であり、上記開口長辺部と上記封口板長辺部からなる領域を長辺領域、上記開口短辺部と上記封口板短辺部からなる領域を短辺領域としたとき、上記長辺領域を照射する上記レーザ光Lのエネルギーに比して、上記短辺領域を照射する上記レーザ光Lのエネルギーが小さく、上記短辺領域を照射する上記第1レーザ光L1のエネルギーに比して、上記短辺領域を照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さい。
【0007】
かかる構成によると、レーザ光Lによって溶融凝固部を形成する際、長辺領域の溶融部に比して、短辺領域の溶融部が小さくなり、また、短辺領域について、封口板短辺部の溶融部に比して開口短辺部の溶融部が小さくなる。これにより、短辺領域について、封口板短辺部に比して開口短辺部(短側壁)の溶融が抑えられ、溶融凝固部が外装体の短側壁より外部へ形成されるのを抑制することができる。従って、寸法精度の信頼性を有する蓄電デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、外装体と封口板を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、一実施例に係る長辺領域照射レーザ光を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、一実施例に係る短辺領域照射レーザ光を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、一実施例に係る長辺領域に対し、長辺領域照射レーザを照射する様子を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、一実施例に係る長辺領域に対し、長辺領域照射レーザを照射する様子を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、一実施例に係る短辺領域に対し、短辺領域照射レーザを照射する様子を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、一実施例に係る短辺領域に対し、短辺領域照射レーザを照射する様子を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、一実施例に係る長辺領域に対し、長辺領域照射レーザを照射する様子を模式的に示す縦断面図である。
【
図12】
図12は、一実施例に係る短辺領域に対し、短辺領域照射レーザを照射する様子を模式的に示す縦断面図である。
【
図13】
図13は、一実施例に係る短辺領域における溶融凝固部の形成を模式的に示す縦断面図である。
【
図14】
図14は、一実施形態に係るレーザ溶接工程に用いるレーザ溶接装置を示す模式図である。
【
図15】
図15は、一実施形態に係る回折光学部材を示す模式図である。
【
図16】
図16は、一実施形態に係る回折光学素子部の構成および回折領域の移動を示す模式図である。
【
図17】
図17は、変形例に係る短辺領域照射レーザ光のパターンを模式的に示す平面図である。
【
図18】
図18は、変形例に係る短辺領域照射レーザ光を照射する様子を模式的に示す縦断面図である。
【
図19】
図19は、従来例に係る溶融凝固部の近傍を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらここに開示される技術に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれるとともに、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0010】
本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電を行なうことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一般にリチウムイオン電池やリチウム二次電池などと称される電池の他、リチウムポリマー電池、リチウムイオンキャパシタなどが包含される。二次電池とは、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返しの充放電が可能な電池一般をいう。ここでは、蓄電デバイスの一形態として、リチウムイオン二次電池を例示する。
【0011】
<蓄電デバイス100>
図1は、蓄電デバイス100を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、外装体12と封口板18を模式的に示す平面図である。
図2および
図3では、外装体12と封口板18は溶接される前(溶融凝固部50が形成される前)である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは、蓄電デバイス100の短辺方向を示し、符号Yは、蓄電デバイス100の長辺方向を示し、符号Zは、鉛直方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電デバイス100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図1、
図2に示すように、蓄電デバイス100は、ケース1と、電極体20と、正極端子6と、負極端子8と、正極集電部材35と、負極集電部材45と、を備えている。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに電解液を備えている。蓄電デバイス100の構成は従来同様であってよい。蓄電デバイス100は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることが好ましい。
【0013】
ケース1は、電極体20を収容する筐体である。
図1および
図2に示すように、ケース1は、開口部15を有する外装体12と、開口部15を封口する封口板18と、を備えている。外装体12および封口板18は、電極体20の収容数(1つまたは複数。)や、サイズ等に応じた大きさを有している。ケース1は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウムを主体としたアルミニウム合金からなることがより好ましい。ここでは、ケース1はアルミニウム製である。ケース1は、
図1に示すように、ここでは扁平かつ有底の略直方体形状(角型)を有する。
【0014】
外装体12は、
図1、
図2に示すように、一側面(ここでは上面)に開口部15を有する有底かつ略直方体形状の容器である。外装体12は、
図1に示すように、一対の短辺と一対の長辺を有する略矩形状の底部12dと、底部12dの短辺から上方に延び相互に対向する一対の短側壁12a、12bと、底部12dの長辺から上方に延び相互に対向する一対の長側壁12e、12fと、を備えている。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0015】
外装体12の一側面には、一対の短側壁12a、12bと一対の長側壁12e、12fで囲まれた開口部15が形成されている。
図2に示すように、底部12dは開口部15と対向している。開口部15は、開口部15の周縁のうち、長側壁12e、12fの端部に対応する一対の開口長辺部15e、15fと、短側壁12a、12bの端部(
図2の上側)に対応する一対の開口短辺部15a、15bと、を備える。
【0016】
封口板18は、
図1および
図2に示すように、外装体12の開口部15を封口する部材である。ここでは、封口板18は、平面略矩形の板状部材である。
図3に示すように、封口板18は、一対の封口板短辺部18a、18bと、一対の封口板長辺部18e、18fを備える。
図2に示すように、封口板18には、注液孔71と、ガス排出弁73と、端子引出孔74,75と、が設けられている。封口板18は、外装体12の底部12dと対向している。
【0017】
図3に示すように、封口板18の外周面と外装体12の内面(開口部15)とが対向するように配置(嵌合)されることで、嵌合部11を形成する。詳述すれば、封口板短辺部18aは開口短辺部15aと、封口板短辺部18bは開口短辺部15bと、封口板長辺部18eは開口長辺部15eと、封口板長辺部18fは開口長辺部15fと、それぞれ対向する。ここでは、封口板18と外装体12の上端(
図2の上端部)は平面視において、面一である。
図3に示すように、嵌合部11は、短辺領域11a、11bおよび長辺領域11e、11fを備える。短辺領域11aは、開口短辺部15aと封口板短辺部18aからなる領域であり、短辺領域11bは、開口短辺部15bと封口板短辺部18bからなる領域である。長辺領域11eは、開口長辺部15eと封口板長辺部18eからなる領域であり、長辺領域11fは、開口長辺部15fと封口板長辺部18fからなる領域である。また、
図3に示すように、ここでは嵌合部11は、短辺領域11a、11bと長辺領域11e、11fとの間に設けられたR部11g、11h,11i、11jを有する。ただし、R部11g、11h,11i、11jは必須ではない。
【0018】
注液孔71は、外装体12に封口板18を組み付けた後、ケース1の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔71は、ここでは、電解液の注液後に封止部材72によって封止されている。ガス排出弁73は、ケース1内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース1内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0019】
電解液としては、従来公知において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒(有機溶媒)に支持塩(電解質塩)を溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0020】
正極端子6は、封口板18の長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)に取り付けられている。負極端子8は、封口板18の長辺方向Yの他方の端部(
図2の右端部)に取り付けられている。
図2に示すように、正極端子6および負極端子8は、端子引出孔74,75に挿通され、封口板18の外側の表面に露出している。
図2に示すように、正極端子6は、外装体12の内部で、正極集電部材35を介して電極体20の正極3と電気的に接続されている。負極端子8は、外装体12の内部で、負極集電部材45を介して電極体20の負極4と電気的に接続されている。正極端子6および負極端子8は、ガスケット76およびインシュレータ78によって封口板18と絶縁されている。また、正極端子6と正極集電部材35との間または負極端子8と負極集電部材45との間に、電流遮断機構(CID)を設置してもよい。
【0021】
正極端子6は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。負極端子8は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子8は、2つの導電部材が接合され一体化されて構成されていてもよい。例えば、負極集電部材45と接続される部分が銅または銅合金からなり、封口板18の外側の表面に露出する部分がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなっていてもよい。
【0022】
ガスケット76やインシュレータ78には、耐薬品性や耐候性に優れた材料が用いられるとよい。ガスケット76やインシュレータ78は、電気絶縁性を有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、脂肪族ポリアミド等で構成されていてもよい。
【0023】
ここでは、正極端子6は、ケース1の外側において、板状の正極外部導電部材36と電気的に接続されている。同様に、負極端子8は、ケース1の外側において、板状の負極外部導電部材46と電気的に接続されている。正極外部導電部材36および負極外部導電部材46は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の蓄電デバイスや外部機器と接続される。正極外部導電部材36および負極外部導電部材46は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の導電性に優れた金属から構成されていることが好ましい。ただし、正極外部導電部材36および負極外部導電部材46は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0024】
電極体20は従来と同様でよく、特に制限はない。
図2に示すように、電極体20は、正極3および負極4を有する。ここでは、電極体20は、帯状の正極3と帯状の負極4とが帯状のセパレータ7を介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として捲回されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、電極体20は、方形状(典型的には矩形状)の正極3と方形状(典型的には矩形状)の負極4とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。また、1つの外装体12の内部に配置される電極体20の数は特に限定されず、2個以上(複数)であってもよい。なお、正極3および負極4は、ここに開示される技術における「電極」の一例である。
【0025】
図2に示すように、正極3は、正極集電体30と、正極集電体30上に固着された正極活物質層31と、を有する。正極集電体30は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極活物質層31は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含む層である。
【0026】
負極4は、負極集電体40と、負極集電体40上に固着された負極活物質層41と、を有する。負極集電体40は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極活物質層41は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含む層である。
【0027】
セパレータ7は、正極3の正極活物質層31と、負極4の負極活物質層41と、を絶縁する部材である。セパレータ7としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる多孔性の樹脂製シートが好適である。なお、セパレータ7の表面には、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)が設けられていてもよい。
【0028】
図2に示すように、電極体20の長辺方向Yの左端部には、正極活物質層31の形成されていない正極集電体30の一部分(正極集電体露出部)が積層部分からはみ出している。正極集電体露出部には、正極集電部材35が付設されている。正極集電部材35は、正極集電体30と同じ金属材料、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。また、電極体20の長辺方向Yの右端部には、負極活物質層41の形成されていない負極集電体40の一部分(負極集電体露出部)が積層部分からはみ出している。負極集電体露出部には、負極集電部材45が付設されている。負極集電部材45の材質(金属種)は正極集電部材35と異なっていてもよい。負極集電部材45は、負極集電体40と同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。
【0029】
<蓄電デバイス100の製造方法>
図4は、一実施形態に係る蓄電デバイス100の製造方法を示すフロー図である。ここに開示される蓄電デバイス100は、封口板嵌合工程S10と、レーザ溶接工程S20と、を含む製造方法によって製造することができ、レーザ溶接工程S20を行うことで特徴づけられる。また、ここに開示される蓄電デバイス100の製造方法では、上記の工程に加え、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよく、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってよい。
【0030】
(封口板嵌合工程S10)
封口板嵌合工程S10では、外装体12内に電極体20を収容し、封口板18を外装体12の開口部15に嵌合する。まず、
図2に示すように、正極端子6および負極端子8は、ガスケット76およびインシュレータ78を介して、端子引出孔74,75に挿通され、封口板18の外側の表面に一端が露出するようにして取り付けられる。正極端子6の他端は、正極集電部材35を介して電極体20の正極3と電気的に接続される。一方で、負極端子8の他端は、負極集電部材45を介して電極体20の負極4と電気的に接続される。そして、外装体12内に電極体20を収容し、封口板18を外装体12の開口部15に嵌合する。これにより、外装体12の上端部と封口板18とが、面一となる。また、封口板18の外周面と外装体12(開口部15)の内面とが対向する。
【0031】
(レーザ溶接工程S20)
レーザ溶接工程S20では、封口板嵌合工程S10の後、ケース1の封口板18と開口部15と、に対し全周に亘ってレーザ光Lを走査することにより、封口板18と外装体12とをレーザ溶接する。本実施形態では、
図3の矢印に示すように、嵌合部11に沿って短辺領域11a内にある開始点LSから、短辺領域11a、R部11g、長辺領域11e、R部11h、短辺領域11b、R部11i、長辺領域11f、R部11jの順に経由し、短辺領域11a内にある開始点LSを通過させ、短辺領域11a内にある終了点LEまでレーザ光Lを走査させる。これにより、溶融凝固部50(
図13参照)が形成されるとともに、封口板18と外装体12とが接合される。レーザ溶接工程S20によって、ケース1は気密に封止(密閉)される。
【0032】
図19は、従来例に係る溶融凝固部50の近傍を示す縦断面図である。ところで、従来、上記したようなレーザ溶接においては、レーザ光の照射により、封口板18と外装体12の一部(仮想線で図示)が溶融し、かかる溶融部が凝固することで、溶融凝固部50が形成される。溶融凝固部50の形状は、例えば、溶融金属の流動や表面張力の影響等によって決まる。詳述すれば、溶融凝固部50は、溶融金属の表面張力によって盛り上がった形状で凝固することで形成される。そのため、
図19に示すように、溶融凝固部50の一部が外装体12の短側壁12a、12bより外方にはみ出す(突出する)虞がある。かかる溶融凝固部50のはみ出しにより、長辺方向Yについて、蓄電デバイス100(ケース1)のサイズにばらつきが出る。従って、本発明者は、溶融凝固部50の外装体12の短側壁12a、12bより外部へのはみ出しを抑制したいと考えている。なお、本明細書における「外装体の外方に形成される(はみ出す)」とは、溶融凝固部50の少なくとも一部が、外装体12より長辺方向Yに突出することを示す。溶融凝固部50の少なくとも一部が、短辺方向Xおよび鉛直方向Zへの突出することは、「外方にはみ出す」には包含されない。
【0033】
ここに開示される技術は、上記した課題に鑑みて創出されたものである。ここに開示される技術は、レーザ溶接工程S20に用いるレーザ光Lに特徴を有する。レーザ光Lは、長辺領域11e、11fを照射する長辺領域照射レーザ光Laと、短辺領域11a、11bを照射する短辺領域照射レーザ光Lbとを含む(
図5、6参照)。レーザ光L(長辺領域照射レーザ光Laおよび短辺領域照射レーザ光Lb)は、封口板18(封口板長辺部18e,18fおよび封口板短辺部18a、18b)を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第1レーザ光L1と、開口部15(開口長辺部15e,15fおよび開口短辺部15a,15b)を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第2レーザ光L2と、を含む。そして、長辺領域11e、11fを照射するレーザ光L(長辺領域照射レーザ光La)のエネルギーに比して、短辺領域11a、11bを照射するレーザ光L(短辺領域照射レーザ光Lb)のエネルギーが小さくなるように、かつ、短辺領域11a、11b(封口板短辺部18b)を照射する第1レーザ光L1のエネルギーに比して、短辺領域11a、11b(開口短辺部15a、15b)を照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さくなるように構成されている。なお、長辺領域照射レーザ光Laは、ここに開示される技術における、「長辺領域を照射するレーザ光L」の一例であり、短辺領域照射レーザ光Lbは、ここに開示される技術における、「短辺領域を照射するレーザ光L」の一例である。
【0034】
以下、ここに開示される技術について実施例を挙げて説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
図5は、一実施例に係る長辺領域照射レーザ光Laを模式的に示す平面図である。
図6は、一実施例に係る短辺領域照射レーザ光Lbを模式的に示す平面図である。なお、
図5および6について、長辺領域照射レーザ光Laおよび短辺領域照射レーザ光Lbの進行方向について白抜き矢印で示す。
図5および6に示すように、ここでは、レーザ光L(長辺領域照射レーザ光Laおよび短辺領域照射レーザ光Lb)は、第1レーザ光L1と第2レーザ光L2と、更に、開口部15と封口板18との境界部を照射する中心ビーム90を有する。なお、中心ビーム90は、1点からなるビームでもよいし、互いに近接した複数の点からなる多点ビームでもよい。ここでは、中心ビーム90は、1点である。ここでは、第1レーザ光L1および第2レーザ光L2は、中心ビーム90の周囲に配置される。なお、ここでは、短辺領域照射レーザ光Lbと、長辺領域照射レーザ光Laにおいて、周囲ビーム91~98の1点あたりのエネルギーは、同じである。また、短辺領域照射レーザ光Lbと、長辺領域照射レーザ光Laにおいて、中心ビーム90の1点あたりのエネルギーも互いに同じである。
【0035】
図5に示すように、ここでは、長辺領域照射レーザ光Laは、中心ビーム90と、4点の周囲ビーム91~94から構成される第1レーザ光L1と、4点の周囲ビーム95~98から構成される第2レーザ光L2と、を有する。
図5に示すように、長辺領域照射レーザ光Laは、平面視にみて略X字状に配置される。一方、
図6に示すように、短辺領域照射レーザ光Lbは、長辺領域照射レーザ光Laと比して、第1レーザ光L1の周囲ビーム91~94の配置パターンは同様であるが、第2レーザ光L2の周囲ビーム95、98が欠けたパターンを有する。すなわち、長辺領域照射レーザ光Laのエネルギー(中心ビーム90および周囲ビーム91~98のエネルギーの総和)に比して、短辺領域照射レーザ光Lbのエネルギー(ここでは、中心ビーム90および周囲ビーム91~94、96および97のエネルギーの総和)は小さい。また、
図6に示すように、短辺領域照射レーザ光Lbにおいて、第1レーザ光L1のビーム点数(4点)に比して、第2レーザ光L2のビーム点数(2点)が少ない。すなわち、短辺領域照射レーザ光Lbのうち、短辺領域11a、11b(封口板短辺部18a、18b)を照射する第1レーザ光L1のエネルギーに比して短辺領域11a、11b(開口短辺部15a、15b)を照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さい。
【0036】
図7は、一実施例に係る長辺領域11eに対し長辺領域照射レーザ光Laを照射する様子を模式的に示す平面図である。
図8は、一実施例に係る長辺領域11fに対し長辺領域照射レーザ光Laを照射する様子を模式的に示す平面図である。
図9は、一実施例に係る短辺領域11aに対し、短辺領域照射レーザ光Lbを照射する様子を模式的に示す平面図である。
図10は、一実施例に係る短辺領域11bに対し、短辺領域照射レーザ光Lbを照射する様子を模式的に示す平面図である。なお、
図7~10について、長辺領域照射レーザ光Laおよび短辺領域照射レーザ光Lbの進行方向について白抜き矢印で示す。
図11は、一実施例に係る長辺領域11eに対し長辺領域照射レーザ光Laを照射する様子を模式的に示す縦断面図である。
図12は、一実施例に係る短辺領域11aに対し、短辺領域照射レーザ光Lbを照射する様子を模式的に示す縦断面図である。
図13は、一実施例に係る短辺領域11aにおける溶融凝固部50の形成を模式的に示す縦断面図である。
【0037】
図7に示すように、長辺領域11eに配置された長辺領域照射レーザ光Laのうち、中心ビーム90は、開口長辺部15eと封口板長辺部18eとの境界部に照射される。短辺方向Xにおける一端(
図7における前側)に配置された周囲ビーム91~94は第1レーザ光L1として、封口板長辺部18eに照射される。そして、短辺方向Xにおける他端(
図7における後側)に配置された周囲ビーム95~98は、第2レーザ光L2として開口長辺部15eに照射される。同様に、
図8に示すように、長辺領域11fに配置された長辺領域照射レーザ光Laのうち、中心ビーム90は、開口長辺部15fと封口板長辺部18fとの境界部に照射される。短辺方向Xにおける一端(
図8における後側)に配置された周囲ビーム91~94は第1レーザ光L1として、封口板長辺部18fに照射される。そして、短辺方向Xにおける他端(
図8における前側)に配置された周囲ビーム95~98は、第2レーザ光L2として開口長辺部15fに照射される。
【0038】
図9に示すように、短辺領域11aに配置された短辺領域照射レーザ光Lbのうち、中心ビーム90は、開口短辺部15aと封口板短辺部18aとの境界部に照射される。長辺方向Yにおける一端(
図9における右側)に配置された周囲ビーム91~94は、第1レーザ光L1として、封口板短辺部18aに照射される。一方で、長辺方向Yにおける他端(
図9における左側)に配置された周囲ビーム96,97は、第2レーザ光L2として開口短辺部15aに照射される。
図10に示すように、短辺領域11bに配置された短辺領域照射レーザ光Lbのうち、中心ビーム90は、開口短辺部15bと封口板短辺部18bとの境界部に照射される。長辺方向Yにおける一端(
図10における左側)に配置された周囲ビーム91~94は、第1レーザ光L1として、封口板短辺部18bに照射される。一方で、長辺方向Yにおける他端(
図10における右側)に配置された周囲ビーム96,97は、第2レーザ光L2として開口短辺部15bに照射される。
【0039】
このとき、
図11および
図12に示すように、短辺領域11aを照射する短辺領域照射レーザ光Lbのエネルギーは、長辺領域11eを照射する長辺領域照射レーザ光Laより小さい。更に、
図12に示すように、短辺領域照射レーザ光Lbのうち、封口板短辺部18aを照射する第1レーザ光L1のエネルギーに比して開口短辺部15aを照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さい。そのため、長辺領域11eの溶融部51に比して、短辺領域11aの溶融部51は小さい。また、短辺領域11aについて、封口板短辺部18aの溶融部51に比して開口短辺部15aの溶融部51は小さい。これにより、
図13に示すように短辺領域11aについて、封口板短辺部18aに比して開口短辺部15a(短側壁12a)の溶融が抑えられ、溶融凝固部50が外装体12の短側壁12aより外部へ形成されるのを抑制することができる。なお、ここでは、短辺領域11aおよび長辺領域11eを例に説明するが、短辺領域11bおよび長辺領域11fについても、短辺領域11aおよび長辺領域11eと同様の作用が得られる。従って、短辺領域11bについても同様に短辺領域照射レーザ光Lbの第1レーザ光L1を封口板短辺部18b、第2レーザ光L2を開口短辺部15bに照射することにより、開口短辺部15b(短側壁12b)の溶融が抑えられ、溶融凝固部50が外装体12の短側壁12bより外部へ形成されるのを抑制することができる。これにより、溶融凝固部50の外装体12の短側壁12a、12bより外部へのはみ出しを抑制することができる。従って、長辺方向Yについて、ケース1の寸法精度が向上した蓄電デバイス100の提供が実現される。
【0040】
また、いくつかの好適な実施形態において、
図5および
図6に示すように、短辺領域照射レーザ光Lbにおける第1レーザ光L1のビーム点数(4点)は、長辺領域照射レーザ光Laにおける第1レーザ光L1のビーム点数(4点)と同じであり、短辺領域照射レーザ光Lbにおける第2レーザ光L2のビーム点数(2点)は、長辺領域照射レーザ光Laにおける第2レーザ光L2のビーム点数(4点)より少ない。これにより、より好適に溶融凝固部50の外装体12の短側壁12a、12bより外部へのはみ出しを抑制することができる。
【0041】
短辺領域11a、11bにおいて、レーザ光L(短辺領域照射レーザ光Lb)のエネルギー(第1レーザ光L1と第2レーザ光のエネルギーの総計。更に、中心ビーム90を含む場合は、第1レーザ光L1と第2レーザ光と中心ビーム90のエネルギーの総計。)は、1000W以上が好ましく、1500W以上がより好ましい。一方、溶融凝固部50の短辺壁12a,12b外方へのはみ出し抑制の観点から、4000W以下が好ましく、3000W以下がより好ましい。また、短辺領域11a、11bにおいて、第1レーザ光L1のエネルギーと第2レーザ光L2のエネルギーの比は5:1~1.25:1が好ましく、5:1~2:1がより好ましい。上記範囲よりエネルギー比を小さくした場合、溶融凝固部のはみ出し抑制が好適に得られず、上記範囲よりエネルギー比を大きくした場合、開口部15の溶接エネルギー不足による溶接不良が起こり得るため好ましくない。
【0042】
図3に示すように、レーザ光Lの走査経路は、ここでは、開始点LSから終了点LEまで反時計回りであるが、これに限定されない。環状の溶融凝固部50を形成し、ケース1が密閉できればよく、レーザ光Lの走査経路の開始点LSおよび終了点LEを変更してもよい。また、レーザ光Lの走査経路は時計回りでもよく、反時計回りでもよい。
【0043】
レーザ溶接工程S20に使用するレーザ光Lの生成方法は、複数のレーザ装置から照射された複数のレーザ源からなる束であってもよいし、ダイナミックビームレーザによるパターン形成を用いてもよいし、回折光学素子(DOE)などを用いて1つのレーザ源を分岐してもよい。中でも、回折光学素子を用いた透過回折によれば、容易に本実施例に係るレーザ光Lを生成できる。このため、回折光学素子(DOE)を用いた透過回折によるレーザ光Lの生成が、より好適に採用し得る。また、レーザ照射方向と外装体12と封口板18(水平面)とのなす角は、典型的には90±10°程度であり、例えば90±5°程度である。
【0044】
以下、光学回折素子を用いたレーザ溶接を例に、レーザ溶接工程S20の実施形態について説明する。しかし、これに限定されない。
図14は、一実施形態に係るレーザ溶接工程S20に用いるレーザ溶接装置120を示す模式図である。
図14に示すように、ここではレーザ溶接装置120は、制御部122と、レーザ発振器124と、コメリータ(コメリートレンズ)130と、回折光学部材140と、Zレンズと160と、ガルバノスキャナ170と、集光レンズ180と、保護ガラス190を備える。
【0045】
制御部122は、レーザ溶接装置120の動作を制御する機構である。
図14に示すように、ここでは、制御部122は、レーザ発振器124、回折光学部材140(移動ユニット146)、ガルバノスキャナ170(第1反射鏡171、第2反射鏡172)と接続される。これにより、制御部122による、レーザ発振器124、回折光学部材140、ガルバノスキャナ170(第1反射鏡171、第2反射鏡172)の各動作の制御が実現する。
【0046】
レーザ発振器124は、制御部122の制御により、レーザ光を発生するレーザ光源である。ここでは、レーザ発振器124としてファイバーレーザを用いる。レーザ発振器124は、ここでは光ファイバからなる出射口123と接続されている。レーザ発振器124から発生したレーザは、出射口123から出射レーザ光197として出射され、コメリータ130に入射する。
【0047】
コメリータ130は、出射レーザ光197を平行に変換(調整)するレンズである。コメリータ130は、出射口123の下流側(出力側)に配置される。
図14に示すように、コメリータ130は、出射口123より入射された出射レーザ光197を、平行レーザ光198に変換し、出射する。
【0048】
回折光学部材140は、コメリータ130から入射した平行レーザ光198を回折マルチレーザ光199に変換して出射する部材である。回折光学部材140は、コメリータ130の下流側(出力側)に配置される。
図15は、一実施形態に係る回折光学部材140を示す模式図である。
図16は、一実施形態に係る回折光学素子部142の構成および回折領域143の移動を示す模式図である。
図15では、説明の便宜上、移動ユニット146による回折光学部材140の移動について仮想線で示す。
図15に示すように、ここでは回折光学部材140は、回折光学素子部142、回折光学素子部142を保持する保持部144、および回折光学素子部142を移動させる移動ユニット146を備える。
【0049】
回折光学素子部142は、回折マルチレーザ光199の照射パターンPTを規定する部材である。
図15に示すように、回折光学素子部142は、ここでは円形平板状である。ここでは、
図15および16に示すように、回折光学素子部142は、第1パターン領域151、第2パターン領域152、第3パターン領域153、第4パターン領域154の4つの領域を有している。第1パターン領域151には、第1照射パターンPT1を生成する回折光学パターンが形成される。第2パターン領域152には、第2照射パターンPT2を生成する回折光学パターンが形成される。第3パターン領域153には、第3照射パターンPT3を生成する回折光学パターンが形成される。第4パターン領域154には、第4照射パターンPT4を生成する回折光学パターンが形成される。
図9に示すように、第1照射パターンPT1は、短辺領域11aを照射する短辺領域照射レーザ光Lbに対応する。
図7に示すように、第2照射パターンPT2は、長辺領域11eを照射する長辺領域照射レーザ光Laに対応する。
図10に示すように第3照射パターンPT3は、短辺領域11bを照射する短辺領域照射レーザ光Lbに対応する。
図8に示すように、第4照射パターンPT4は、長辺領域11fを照射する長辺領域照射レーザ光Laに対応する。
【0050】
移動ユニット146は、回折光学素子部142を
図15において、X方向及び、Y方向に移動する機構である。移動ユニット146は、制御部122と接続され、保持部144と結合している。制御部122の制御により、コメリータ130から入射した平行レーザ光198に対し、回折光学部材140(回折光学素子部142)を相対的に移動(
図15の仮想線)させることができる。詳細は後述するが、制御部122によって移動ユニット146を用いて、回折領域143を移動させることにより(
図16参照)、平行レーザ光198が入射し、回折マルチレーザ光199を出射する回折領域143を移動させることができる。したがって、回折マルチレーザ光199の照射パターンPT(第1~4照射パターンPT1~4)を変化させることができる。なお、ここでは、回折光学部材140の移動により回折領域143が移動するのであって、平行レーザ光198自体は移動しない。
【0051】
Zレンズ160は、回折マルチレーザ光199の焦点位置SPを調整するレンズである。制御部122の制御によって、Zレンズ160を光軸方向(
図14では、上下Z方向)に移動させることにより、回折マルチレーザ光199の焦点位置SPを光軸方向に移動(調整)することができる。
【0052】
ガルバノスキャナ170は、レーザ光Lの照射位置を制御する装置である。
図14に示すように、ガルバノスキャナ170は、第1反射鏡171と、第2反射鏡172を備えており、第1反射鏡171と、第2反射鏡172はそれぞれ制御部122によって制御される。第1反射鏡171は、制御部122の制御により偏向角を変化することで、Zレンズ160を透過して入射した回折マルチレーザ光199を、Y方向に偏向することができる。第2反射鏡172は、制御部122の制御により偏向角を変化することで、第1反射鏡171により、偏向および反射された回折マルチレーザ光199を、X方向に偏向することができる。
【0053】
集光レンズ180および保護ガラス190は、ガルバノスキャナ170の下流側(出力側)に配置される。第2反射鏡172により、反射・偏向された回折マルチレーザ光199は、集光レンズ180および保護ガラス190を介し、Zレンズ160によって調整された焦点位置SPで焦点を結び、レーザ光Lとしてケース1上に走査(照射)される。
【0054】
ここでは、制御部122の制御により、ガルバノスキャナ170の偏向に連動して(即ち、レーザ光Lの移動に連動して)、移動ユニット146を駆動し、回折光学部材140(回折光学素子部142)を移動することにより、回折領域143が移動経路148を辿るようにする。
図16に示すように、詳述すれば、回折領域143を移動経路148のうち、第1パターン領域151内にある開始点148Sから、第2パターン領域152、第3パターン領域153、第4パターン領域154の順に経由し(白抜き矢印で図示)、第1パターン領域151内にある開始点148Sを通過したのち、第1パターン領域151内にある終了点148Eまで移動させる。これにより、第1~第4パターン領域151~154に応じた、照射パターンPT(第1~4照射パターンPT1~4)を有するビーム光Lが得られる。
【0055】
以上、本実施形態に係る蓄電デバイス100の製造方法について説明したが、ここで開示される蓄電デバイス100の製造方法は、上述の実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態において、短辺領域照射レーザ光Lbのパターン(
図6)は長辺領域照射レーザ光Laに比して、第2レーザ光L2の周囲ビーム95、98が欠けた線対称のパターンを有していた。しかしこれに限定されない。
図17は、変形例に係る短辺領域照射レーザ光Lbのパターンを模式的に示す平面図である。
図18は、変形例に係る短辺領域照射レーザ光Lbを照射する様子を模式的に示す縦断面図である。例えば、
図17に示すように、ここでは、短辺領域照射レーザ光Lbは、第1レーザ光L1のパターンは同様であるが、第2レーザ光L2の周囲ビーム95、96が欠けたパターンを有する。ここでは、短辺領域照射レーザ光Lbは、非線対称である。
図18に示すように、かかる変形例においても、短辺領域11aについて、封口板短辺部18aに比して開口短辺部15a(短側壁12a)の溶融が抑えられることにより、溶融凝固部50が外装体12の短側壁12aより外部へ形成されるのを抑制することができる。従って、好適に溶融凝固部50の短側壁12a、12bのはみ出しを抑制することができる。また、上記したパターン構成に限られず、更に異なる照射パターンを有するレーザ光Lを生成してもよいし、レーザ光Lの周囲ビーム91~98の強度をそれぞれ異ならせることもできる。なお、レーザ光Lの有する周囲ビーム91~98の配置や有無、また、周囲ビーム91~98ごとの強弱については、例えば回折光学素子部142の構成を変更することで調整することができる。また、レーザ光Lのパターンの形状はこれに限られず、例えば、5点のビーム(サイコロの5の目状)でもよいし、リングビームであってもよい。
【0056】
また、ここに開示される技術の他の側面として、蓄電デバイス100が提供される。ここに開示される蓄電デバイス100は電極体20と、外装体12(短側壁12a,12bおよび長側壁12e、12f)と、封口板18と、正極端子6と、負極端子8と、環状の溶融凝固部50と、を備える。蓄電デバイス100は、溶融凝固部50に特徴を持つものであって、その他の構成は従来と同様であってよい。溶融凝固部50は、短側壁12aおよび短側壁12bから外方にはみださず、溶融凝固部50のすくなくとも一部は、正極端子6あるいは負極端子8と対向し、かつ、長側壁12eまたは長側壁12fより外方へはみ出す。これにより、長辺方向Yにおいて、寸法精度の信頼性の向上した蓄電デバイス100が提供される。
【0057】
蓄電デバイス100は各種用途に利用可能であるが、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0058】
以上、ここに開示される技術におけるいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。ここに開示される技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0059】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:電極を有する電極体と、矩形状の底部と、上記底部の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、上記底部の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、上記底部に対向する開口部と、該開口部の周縁のうち、上記長側壁の端部に対応する一対の開口長辺部と、上記短側壁の端部に対応する一対の開口短辺部と、を備え、上記電極体を収容する外装体と、一対の封口板長辺部と、一対の封口板短辺部と、を有し上記外装体の開口部を封口する略矩形状の封口板と、上記封口板に取り付けられ、上記電極体と電気的に接続される端子と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記外装体に上記電極体を収容し、上記外装体の上記開口部に上記封口板を嵌合する封口板嵌合工程と、上記封口板と、上記開口部と、に対し全周に亘ってレーザ光Lを走査して、上記封口板と上記外装体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を備え、上記レーザ溶接工程において、上記レーザ光Lは、上記封口板長辺部および上記封口板短辺部を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第1レーザ光L1と、上記開口長辺部および上記開口短辺部を照射する少なくとも1点以上のビームからなる第2レーザ光L2と、を含む多点レーザ光であり、上記開口長辺部と上記封口板長辺部からなる領域を長辺領域、上記開口短辺部と上記封口板短辺部からなる領域を短辺領域としたとき、上記長辺領域を照射する上記レーザ光Lのエネルギーに比して、上記短辺領域を照射する上記レーザ光Lのエネルギーが小さく、上記短辺領域を照射する上記第1レーザ光L1のエネルギーに比して、上記短辺領域を照射する第2レーザ光L2のエネルギーが小さい、蓄電デバイスの製造方法。
項2:回折光学素子を用いて、透過回折することにより上記レーザ光Lを生成する、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項3:上記短辺領域を照射する上記第1レーザ光L1のビーム点数と、上記長辺領域を照射する上記第1レーザ光L1のビーム点数と、は同じであって、上記短辺領域を照射する上記第2レーザ光L2のビーム点数は、上記長辺領域を照射する上記第2レーザ光L2のビーム点数より少ない、項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項4:電極を有する電極体と、矩形状の底部と、上記底部の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、上記底部の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、上記底部に対向する開口部と、を備え、上記電極体を収容する外装体と、上記外装体の開口部を封口する略矩形状の封口板と、上記封口板に取り付けられ、上記電極体と電気的に接続される端子と、上記外装体の上記開口部と上記封口板との嵌合部に形成された環状の溶融凝固部と、を備え、上記溶融凝固部は、上記短側壁から外方にはみ出さず、上記溶融凝固部のうち少なくとも一部は、上記端子と対向し、かつ、上記長側壁から外方へはみ出す、蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0060】
1 ケース
3 正極
4 負極
6 正極端子
7 セパレータ
8 負極端子
11 嵌合部
11a、11b 短辺領域
11e、11f 長辺領域
11g、11h,11i、11j R部
12 外装体
12d 底部
12a、12b 短側壁
12e、12f 長側壁
15 開口部
15a、15b 開口短辺部
15e、15f 開口長辺部
18 封口板
18a、18b 封口板短辺部
18e、18f 封口板長辺部
20 電極体
30 正極集電体
31 正極活物質層
35 正極集電部材
36 正極外部導電部材
40 負極集電体
41 負極活物質層
45 負極集電部材
46 負極外部導電部材
50 溶融凝固部
71 注液孔
74、75 端子引出孔
76 ガスケット
78 インシュレータ
90 中心ビーム
91~98 周囲ビーム
100 蓄電デバイス
120 レーザ溶接装置
122 制御部
124 レーザ発振器
130 コメリータ
140 回折光学部材
142 回折光学素子部
143 回折領域
144 保持部
146 移動ユニット
151 第1パターン領域
152 第2パターン領域
153 第3パターン領域
154 第4パターン領域
160 Zレンズ
170 ガルバノスキャナ
180 集光レンズ
190 保護ガラス
197 出射レーザ光
198 平行レーザ光
199 回折マルチレーザ光
L レーザ光
La 長辺領域照射レーザ光
Lb 短辺領域照射レーザ光
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
S10 封口板嵌合工程
S20 レーザ溶接工程