(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094765
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】加熱調理済み気泡含有食品の製造方法、および加熱調理済み気泡含有食品
(51)【国際特許分類】
A23L 3/365 20060101AFI20240703BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240703BHJP
A23G 9/20 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
A23L3/365 A
A23L5/10 C
A23G9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211523
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】小田木 貴志
【テーマコード(参考)】
4B014
4B022
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GE12
4B014GP12
4B014GP14
4B022LA01
4B022LB02
4B022LF02
4B022LJ05
4B022LJ06
4B022LN02
4B022LQ07
4B022LS03
4B035LC03
4B035LC16
4B035LE20
4B035LG19
4B035LG44
4B035LG57
4B035LP16
4B035LP21
4B035LP37
4B035LP46
(57)【要約】
【課題】冷凍食品がマイクロ波加熱により加熱調理された、従来ないような食感や口当たりの加熱調理済み食品、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】オーバーランが40%超である冷凍食品が、容積充填率65%以下となるように容器に充填される充填工程と、この容器に充填された冷凍食品を動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理して、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品とする加熱調理工程と、を備える加熱調理済み気泡含有食品の製造方法により、前記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーランが40%超である冷凍食品が、容積充填率65%以下となるように容器に充填される充填工程と、
前記容器に充填された前記冷凍食品を動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理して、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品とする加熱調理工程と、を備える、
加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱調理工程において、前記冷凍食品を前記マイクロ波加熱により加熱調理して、加熱調理終了直後の前記容器の内部における食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも前記気泡が含まれ、さらに加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下となる前記加熱調理済み気泡含有食品とする、請求項1に記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱調理工程における前記マイクロ波加熱が、動作電力1400ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱である、請求項1または2に記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
【請求項4】
前記充填工程で充填される前記冷凍食品の前記オーバーランが45%以上100%以下である、請求項1または2に記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
【請求項5】
前記加熱調理工程において、前記品温が33℃以上50℃未満である前記加熱調理済み気泡含有食品とする、請求項1または2に記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
【請求項6】
オーバーランが40%超である冷凍食品が容器に充填されて、動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理された、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品であって、
加熱調理終了直後の前記容器の内部における前記加熱調理済み気泡含有食品の食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも前記気泡が含まれ、且つ加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下である、
加熱調理済み気泡含有食品。
【請求項7】
前記品温が33℃以上50℃未満である、請求項6に記載の加熱調理済み気泡含有食品。
【請求項8】
前記冷凍食品の前記オーバーランが45%以上100%以下である、請求項6または7に記載の加熱調理済み気泡含有食品。
【請求項9】
動作電力1400ワット以上1800ワット以下の前記マイクロ波加熱により加熱調理された、請求項6または7に記載の加熱調理済み気泡含有食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理済み気泡含有食品の製造方法、および加熱調理済み気泡含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品は、長期保存が可能であり、解凍などをしてすぐに喫食できるため利便性も高く、消費者ニーズが高い食品の1つである。そして、その多くは、電子レンジ(マイクロ波加熱)などを用いて加熱調理するだけで喫食可能な状態とすることができるもの、つまり簡便に加熱調理済み食品とすることができるものである。
【0003】
例えば特許文献1には、生の食品を料理できる具材に加工する具材の加工工程と、この具材の加工工程で加工した具材に、味付けを行なうための調味料を作る調味料の作成工程と、この調味料の作成工程で作った調味料および前記具材の加工工程で加工した具材とをスチームパックに詰め、密封するスチームパック密封工程と、このスチームパック密封工程で密封されたスチームパックを冷凍する冷凍工程とを含むことを特徴とする、加熱調理することなくパック詰めして冷凍し、食する時の電子レンジで加熱調理ができる冷凍食品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では、消費者嗜好の多様化などを背景として、凍結状態からマイクロ波加熱により簡便に加熱調理できるだけでなく、この喫食可能な状態となったときに従来ないような食感や口当たりとなるものが求められる場合がある。
【0006】
そこで本発明は、冷凍食品がマイクロ波加熱により加熱調理された、従来ないような食感や口当たりの加熱調理済み食品、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、オーバーランが40%超である冷凍食品を容器に充填し、これを動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により、品温が30℃以上60℃以下となるように加熱調理したときに、流動性を有し、気泡が略全体に亘って分散して含まれ、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み応えがある加熱調理済み気泡含有食品となることを見出し、さらに検討を行って本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の<1>~<9>である。
<1>オーバーランが40%超である冷凍食品が、容積充填率65%以下となるように容器に充填される充填工程と、前記容器に充填された前記冷凍食品を動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理して、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品とする加熱調理工程と、を備える、加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
<2>前記加熱調理工程において、前記冷凍食品を前記マイクロ波加熱により加熱調理して、加熱調理終了直後の前記容器の内部における食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも前記気泡が含まれ、さらに加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下となる前記加熱調理済み気泡含有食品とする、<1>に記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
<3>前記加熱調理工程における前記マイクロ波加熱が、動作電力1400ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱である、<1>または<2>に記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
<4>前記充填工程で充填される前記冷凍食品の前記オーバーランが45%以上100%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
<5>前記加熱調理工程において、前記品温が33℃以上50℃未満である前記加熱調理済み気泡含有食品とする、<1>~<4>のいずれか1つに記載の加熱調理済み気泡含有食品の製造方法。
<6>オーバーランが40%超である冷凍食品が容器に充填されて、動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理された、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品であって、加熱調理終了直後の前記容器の内部における前記加熱調理済み気泡含有食品の食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも前記気泡が含まれ、且つ加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下である、加熱調理済み気泡含有食品。
<7>前記品温が33℃以上50℃未満である、<6>に記載の加熱調理済み気泡含有食品。
<8>前記冷凍食品の前記オーバーランが45%以上100%以下である、<6>または<7>に記載の加熱調理済み気泡含有食品。
<9>動作電力1400ワット以上1800ワット以下の前記マイクロ波加熱により加熱調理された、<6>~<8>のいずれか1つに記載の加熱調理済み気泡含有食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍食品がマイクロ波加熱により加熱調理された、気泡が略全体に亘って分散して含まれ、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み応えがある加熱調理済み気泡含有食品、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】試験Iにおいて得られた比較例1(左列)または実施例1(右列)の冷凍食品を動作電力1800ワットでマイクロ波加熱調理した後の状態を示す写真である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、オーバーランが40%超である冷凍食品が、容積充填率65%以下となるように容器に充填される充填工程と、容器に充填されたこの冷凍食品を動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理して、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品とする加熱調理工程と、を備える加熱調理済み気泡含有食品の製造方法(以下においては、これを「本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法」ともいう)である。また、本発明は、オーバーランが40%超である冷凍食品が容器に充填されて、動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理された、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、加熱調理終了直後の容器の内部における食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも気泡が含まれ、さらに加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下である加熱調理済み気泡含有食品(以下においては、これを「本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品」ともいう)も包含する。
【0012】
<加熱調理済み気泡含有食品の製造方法>
まず、本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法について、詳細に説明する。本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法は、前述したような充填工程および加熱調理工程を備える。
【0013】
(充填工程)
この充填工程は、オーバーランが40%超である冷凍食品が、容積充填率が65%以下となるように容器に充填される工程である。
【0014】
この容器に充填される冷凍食品は、オーバーランが40%超となるようにして凍結された冷凍食品である。つまり、空気などの気体を一定量以上混入させた含気冷凍食品である。そして、後述する加熱調理工程により流動性を有するものとなる食品が凍結された冷凍食品である。本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法では、このような冷凍食品を所定の容積充填率となるように容器に充填し、後述する加熱調理工程で30℃以上60℃以下の品温(加熱調理終了直後の品温)となるようにマイクロ波加熱調理することにより、気泡が略全体に亘って分散して含まれ、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み応えがある加熱調理済み気泡含有食品とすることができる。つまり、この冷凍食品は、所定の加熱調理済み気泡含有食品を製造可能な、マイクロ波加熱調理用冷凍食品であるとも言える。そして、この冷凍食品のオーバーランが40%以下では、後述するマイクロ波加熱調理により上記のような加熱調理済み気泡含有食品とすることが難しい。
【0015】
なお、本発明の効果がより発揮され易くなることから、この充填工程で容器に充填される上記冷凍食品のオーバーランの下限は45%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのがさらに好ましく、55%以上であるのがさらに好ましく、60%以上であるのがさらに好ましく、65%以上であるのがさらに好ましい。上限は、限定されるものではないが、100%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがさらに好ましい。例えば、このオーバーランは45%以上100%以下であると好適である。また、混入している気体は、コストや香味への影響などの観点から、空気および/または窒素ガス(空気、窒素ガス、空気と窒素ガスとの混合物、またはこれらのいずれかと実質的に同じ組成の気体)であるのが好ましい。つまり、上記は空気および/または窒素ガスのオーバーランであるのが好ましい。
【0016】
ここで、この「オーバーラン」とは、冷凍食品における固体分(気体を除く部分)の体積を100%としたときの、この冷凍食品に含まれる気体の体積比率をパーセント表示で表したものである。例えば、容積が340mlである容器に気体を含ませた試料(凍結流動物など)を満中充填し、必要であればさらに凍結を行った後、この内容量(質量)を測定して、得られた密度A(g/340ml)から以下の数式(1)により密度B(ml/120g)を算出し、さらに、この密度Bと気体を含ませる前の脱気した試料の密度C(ml/120g)とから以下の数式(2)を用いてオーバーランを算出することができる。
(1)密度B(ml/120g)=(340ml/密度A(g/340ml))×120g
(2)オーバーラン(%)=[(密度B(ml/120g)-密度C(ml/120g))/密度C(ml/120g)]×100
また、円錐台等の形状である所定の容器に一定質量の試料(気体を含ませた凍結流動物など)を充填し、必要であればさらに凍結を行った後、載置面に載置した状態で、この容器底面円部の半径(mm)をr1、充填された試料の上面円部の半径(mm)をr2、充填された試料の高さ(上下方向の長さ、mm)をhとし、これらの長さを測定して、下記数式(3)に当てはめて体積V(ml)を算出し、この試料の体積Vから充填された試料の密度(ml/g)を算出し、この充填された試料の密度と気体を含ませる前の脱気した試料の密度とからオーバーランを算出することもできる。
(3)V=(1/3)×π×(r1×r1+r1×r2+r2×r2)×(h/1000)
【0017】
なお、この冷凍食品は、オーバーランが上記した範囲内であり且つ後述する加熱調理工程により(つまり30℃以上60℃以下の品温となるように加熱調理したときに)流動性を有する食品(例えば液状食品)となる限り、他は限定されない。例えば、飲料、スープ、デザートなどが例示され、アイスクリームなどの通常は凍結状態のままで喫食されるような冷凍食品であってもよく、含まれる成分や組成も上記を満たす限り特に限定されない。けれども、本発明の効果がより発揮され易くなることから、この冷凍食品は乳成分(乳タンパク、乳脂肪など)を含有するものであるのがより好適である。
【0018】
そして、この充填工程では、上記のような冷凍食品が容器に充填される。ここで、この「冷凍食品が容器に充填される」とは、凍結状態の冷凍食品が容器に充填される態様だけでなく、凍結前の食品が容器に充填されてからこの容器内で気体を含むようにして凍結される態様や、凍結されているがまだ流動性を有する食品(気体を含む凍結流動物)が容器に充填されてこの容器内でさらに凍結される態様なども包含される。また、この容器は、後述するマイクロ波加熱が可能な容器(耐熱性容器)であれば他は限定されないが、加熱調理終了時において気泡を含む食品を容器内に維持し易くするという観点から、載置面から開口部までの高さが100mm以上(例えば100mm以上200mm以下、さらには100mm以上150mm以下)の容器であるのがより好ましい。
【0019】
さらに、この冷凍食品は、加熱調理終了時において気泡を含む食品を容器内に維持するために、容積充填率が65%以下となるように容器に充填される必要がある。また、この容積充填率の下限は、40%以上であるのがより好ましく、45%以上であるのがさらに好ましい。
ここで、この「容積充填率」とは、容器の内容積(食品を充填可能な領域の容積)に占めるこの充填された冷凍食品の総体積の比率(占有率)をパーセント表示で表したものであり、例えば、容積が340mlである容器への容積充填率である場合、前述した密度B(ml/120g)から、以下の数式(4)を用いて容積充填率を算出することができる。
(4)容積充填率(%)=(密度B(ml/120g)/容器容積340ml)×100
また、円錐台等の形状である所定の容器に一定質量の試料(気体を含ませた凍結流動物など)を充填し、必要であればさらに凍結を行った後、載置面に載置した状態で、前述と同様に数式(3)を用いて試料の体積V(ml)を算出し、この試料の体積Vと容器容積とから容積充填率を算出することもできる。
【0020】
なお、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、この冷凍食品が容器に充填される際に、この冷凍食品以外の食品(例えば牛乳などの飲料、生クリーム、チョコレート、シロップなどの液状物等)が少量(例えば冷凍食品の体積に対して15%以下、さらには10%以下の体積量)共に充填されてもよい。しかしながら、その場合でも、上記した冷凍食品の容積充填率が65%以下であり、且つ上記した冷凍食品とこの冷凍食品以外の食品との合計の容積充填率(容器内の全食品の容積充填率)も65%以下とするのが好ましい。この容積充填率の下限についても、上限は上記条件を満たしつつ、上記した冷凍食品の容積充填率が40%以上、さらには45%以上であり、且つ上記した冷凍食品とこの冷凍食品以外の食品との合計の容積充填率も40%以上、さらには45%以上とするのが好ましい。
【0021】
(加熱調理工程)
この加熱調理工程は、容器に充填された上記の冷凍食品(凍結状態の冷凍食品)を動作電力600ワット(W)以上1800ワット(W)以下のマイクロ波加熱により加熱調理して、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれる加熱調理済み気泡含有食品とする工程である。なお、容器内に上記の冷凍食品に加えてこれ以外の食品も少量共に充填されている場合には、上記の冷凍食品と共にこれ以外の食品もあわせて加熱調理されることとなる。
【0022】
マイクロ波加熱は、所定の動作電力でマイクロ波を対象物に照射して分子振動させることによって加熱する方法であり、この加熱調理工程では、容器に充填された上記の冷凍食品を、マイクロ波加熱装置(電子レンジ等)を用いて、動作電力600ワット以上1800ワット以下で加熱調理終了直後の品温が30℃以上60℃以下となるようにマイクロ波加熱調理する(例えば電子レンジ等に備わる各種センサーにより加熱調理終了直後の品温がこの範囲内となるように調整して所定のレンジ出力等で加熱調理する)。このように、オーバーランが40%超の上記冷凍食品を、マイクロ波加熱の動作電力および加熱調理終了時(加熱調理されて喫食可能な状態となったとき)の品温を細かく調整して加熱調理することによって、流動性を有し且つ気泡が略全体に亘って分散して含まれ、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み応えがある加熱調理済み気泡含有食品とすることができる。そして、この気泡の多くは、一定時間継続して破壊せずに維持される。特に、前述したオーバーランとともに、この加熱調理終了直後の品温は極めて重要であり、この品温が30℃未満であると、凍結部分の溶解(加熱調理)が不十分となり易くなり、また加熱調理直後において液状部分と気泡が分離した状態となって上記した食感や口当たりとはならない。また、この品温が60℃超であると、形成された気泡が水蒸気の影響などによって破壊され易くなり、また加熱調理直後において液状部分と気泡が分離した状態となって上記した食感や口当たりとはならない。
【0023】
なお、このマイクロ波加熱の動作電力は、より短い時間で加熱調理することができ加熱調理時の破泡をより抑制し易くなることから、動作電力1200ワット以上1800ワット以下であるのがより好ましく、動作電力1400ワット以上1800ワット以下であるのがさらに好ましい。
さらに、加熱調理終了直後の品温も、気泡が略全体に亘って分散した状態を維持し易くなることなどから、31℃以上とするのがより好ましく、33℃以上とするのがさらに好ましく、35℃以上とするのがさらに好ましく、37℃以上とするのがさらに好ましく、40℃以上とするのがさらに好ましい。また、破泡を抑制し易く、気泡が略全体に亘って分散した状態を維持し易くなることなどから、この品温は55℃以下とするのがより好ましく、50℃未満とするのがさらに好ましい。例えば、この加熱調理工程において、品温が33℃以上50℃未満である加熱調理済み気泡含有食品とするとより好適である。
【0024】
限定されるものではないが、このマイクロ波加熱の条件は、上記を満たしつつ、このマイクロ波加熱での熱量が10.0~20.0(W・h/100g)、さらには12.0~18.5(W・h/100g)となる条件であると好ましい。
また、マイクロ波加熱での加熱調理時間は、冷凍食品の質量に概ね依存するため、この質量に応じて適宜調整すればよいが、例えば、120gの上記冷凍食品をこのような条件で上記品温となるようにマイクロ波加熱する場合、30秒間以上140秒間以下の加熱調理時間とすると好適であり、30秒間以上50秒間未満の加熱調理時間とするとさらに好適である。
【0025】
そして、このマイクロ波加熱による加熱調理によって、前述したように、流動性を有し且つ気泡が略全体に亘って分散して含まれる(略全体が泡立って気泡が含まれる)加熱調理済み気泡含有食品とするが、この気泡の分散状態としては、加熱調理終了直後の容器の内部における食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも気泡が含まれる状態が示される。さらに、加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下となっている状態が好ましい。つまり、この加熱調理工程において、上記冷凍食品を所定のマイクロ波加熱により加熱調理して、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、加熱調理終了直後の容器の内部における食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも気泡が含まれ、さらに加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下となるような加熱調理済み気泡含有食品とするとより好適である。この液相比率は、45%以下であるのがさらに好ましく、40%以下であるのがさらに好ましく、35%以下であるのがさらに好ましい。なお、従来の加熱状態で喫食される気泡含有食品(例えばカプチーノなど)ではこの液相比率が75~95%程度であり、これが50%以下となっているものはない。
【0026】
ここで、この「食品上層部」、「食品中層部」および「食品下層部」とは、上記容器に収容されている加熱調理済み気泡含有食品の体積を、この容器の載置面と平行な面で3等分したときの、上層側(載置面から最も遠い層)が食品上層部、中間層が食品中層部、下層側(載置面に最も近い層)が食品下層部である。
また、この加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率とは、加熱調理終了直後の加熱調理済み気泡含有食品を即時にメスシリンダーなどの体積が測定可能な容器に移し変え、5分間放置した後において測定される、加熱調理済み気泡含有食品の全体積中のうち分離した下層(液相)の体積の体積比率である。したがって、この5分間放置とは、実質的に5分間静置して放置する意味である。
【0027】
なお、上記した気泡の1つ当たりのサイズは、限定されるものではないが、ふわふわとした食感などを得やすいという観点から、最大径が3mm以下、さらには1mm以下であるものが好ましい。この最大径とは、その気泡における最も大きい径である。
【0028】
(その他の工程)
本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法は、前述した充填工程および加熱調理工程を備えるが、本発明の効果に大きな影響を与えない限りにおいて、さらに別の工程を任意に含むことができる。例えば、凍結前(容器充填前)の食品を一定時間エージングするエージング工程や、凍結前または凍結後の食品のオーバーランが所定の範囲内となるように調整する含気調整工程、加熱調理工程によって得られた加熱調理済み気泡含有食品を別の容器に移し替える移替工程などをさらに備えていてもよい。
【0029】
<加熱調理済み気泡含有食品>
次に、本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品について詳細に説明する。本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品は、前述したような本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法により製造できるものであって、以下のような構成を備える。
【0030】
具体的には、本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品は、オーバーランが40%超である冷凍食品が容器に充填されて、動作電力600ワット以上1800ワット以下のマイクロ波加熱により加熱調理された、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、且つ気泡が含まれるものである。そして、この本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品は、加熱調理終了時において、気泡が略全体に亘って分散して含まれ(略全体が泡立って気泡が含まれ)、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み応えがあるものとなっている。この全体構成について構造または特性により直接特定することは困難であるが、その特徴の一つとしては、加熱調理終了直後の容器の内部における食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも気泡が含まれ、且つ加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下となっていることが示される。つまり、品温が30℃以上60℃以下であり、流動性を有し、加熱調理終了直後の容器内の食品上層部、食品中層部および食品下層部にいずれも気泡が含まれ、且つ加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が50%以下となっている、上記食感、口当たり、および飲み応えを有する加熱調理済み気泡含有食品と言ってもよい。
【0031】
ここで、この「オーバーラン」、「食品上層部」、「食品中層部」および「食品下層部」はいずれも前述と同じ意味である。また、他についても(液相比率など)、前述と同様の意味である。
【0032】
なお、本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品は、前述と同様の理由から、この加熱調理終了直後の品温が31℃以上であるのがより好ましく、33℃以上であるのがさらに好ましく、35℃以上であるのがさらに好ましく、37℃以上であるのがさらに好ましく、40℃以上であるのがさらに好ましく、また、55℃以下であるのがより好ましく、50℃未満であるのがさらに好ましい。例えば、この品温が33℃以上50℃未満であると好適である。
【0033】
また、これも前述と同様の理由から、上記した液相比率は45%以下であるのがより好ましく、40%以下であるのがさらに好ましく、35%以下であるのがさらに好ましい。さらに、気泡の最大径も前述と同様であるのが好ましい。
【0034】
そして、これも前述と同様の理由から、加熱調理する前の冷凍食品について、オーバーランの下限が45%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのがさらに好ましく、55%以上であるのがさらに好ましく、60%以上であるのがさらに好ましく、65%以上であるのがさらに好ましい。上限は、限定されるものではないが、100%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがさらに好ましい。例えば、このオーバーランは45%以上100%以下であると好適である。また、混入している気体も、前述と同様に、空気および/または窒素ガスであるのが好ましい。
【0035】
容器への充填についても同様に、容積充填率が65%以下となるように上記した冷凍食品が容器に充填されて加熱調理されたものであるのが好ましい。そして、この容積充填率の下限は40%以上であるのがより好ましく、45%以上であるのがさらに好ましい。さらに、この冷凍食品以外の食品が共に充填されている場合でも、上記した冷凍食品の容積充填率が65%以下であり、且つ上記した冷凍食品とこの冷凍食品以外の食品との合計の容積充填率(容器内の全食品の容積充填率)も65%以下とするのが好ましい。また、下限についても、上限は上記条件を満たしつつ、上記した冷凍食品の容積充填率が40%以上、さらには45%以上であり、且つ上記した冷凍食品とこの冷凍食品以外の食品との合計の容積充填率も40%以上、さらには45%以上とするのが好ましい。
【0036】
さらには、マイクロ波加熱の動作電力についても、前述と同様の理由から、動作電力1200ワット以上1800ワット以下であるのがより好ましく、動作電力1400ワット以上1800ワット以下であるのがさらに好ましい。
マイクロ波加熱での熱量や加熱調理時間も同様であり、冷凍食品の質量等により適宜調整すればよい。
【0037】
以上のような構成を備える本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品(飲料、スープ、デザート等)は、加熱調理終了時(加熱調理されて喫食可能な状態)において、30℃以上60℃以下の品温であり且つ気泡が略全体に亘って分散して含まれ、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み応えがあるものとなっている。言い換えれば、加熱状態で喫食される、適度に温かく且つエアリーな食感を有する加熱調理済み気泡含有食品となっている。そして、この気泡の多くは、一定時間継続して破泡せずに維持されるため、喫食時において上記した食感や口当たりを継続して感じることができる。また、比較的味が濃い食品であっても、上記構成によって、ふわふわとした食感を有し、口当たりがよく、さらに飲み易く且つ飲み応えがあるものとすることができる。
そして、このような本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品は、前述したように、本発明に係る加熱調理済み気泡含有食品の製造方法により製造することができる。
【0038】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0039】
(試験I)
乳成分を含む市販アイスクリーム(完全解凍したときに固形状のままであるものを実質的に含まないアイスクリーム)を常温にて完全に解凍し、液状物を作製した。そして、この液状物を、真空ニーダーを用いて真空環境下とし、含まれる気体を除去した。これを5℃まで冷却後にエージングし、その後、フリーザー(富繁産業社製)を用いて空気を混合させながらフリージングし、オーバーラン46%の流動性を有する凍結流動物を作製した。そして、耐熱性のある340ml紙カップ容器にこの凍結流動物を120g計量して充填し、-20℃のブラストフリーザーによってさらに凍結を行い、この容器に充填された冷凍食品を得た(実施例1)。なお、比較として、含まれる気体を完全に除去した液状物120gをそのまま同様の容器に充填して-20℃のブラストフリーザーにより凍結を行い、この容器に充填された冷凍食品を得た(比較例1)。
【0040】
そして、これらの冷凍食品を、電子レンジを用いて、動作電力1800ワットでマイクロ波加熱調理を行い、加熱調理後の気泡(泡立ち)を含めた見た目の確認、品温測定、官能評価、および放置試験を行った。なお、加熱調理終了は、紙カップ容器より吹きこぼれが起こる直前の状態までとした。
下記表1にこれらの冷凍食品の密度、オーバーラン、容積充填率、および加熱調理終了直後の品温を示した。冷凍食品の密度、オーバーラン、および容積充填率は前述した数式(1)、(2)、(4)を用いた方法により算出した。また、放置試験の結果として、加熱調理終了(加熱調理直後)から5分後(5分放置後)、10分後(10分放置後)、および15分後(15分放置後)の状態および品温を
図1(左列:比較例1、右列:実施例1)に示した。
【0041】
【0042】
この結果、比較例1は加熱開始から65秒で加熱調理終了となり、そのときの品温は88.2℃であった。また、加熱調理終了時の気泡(泡立ち)はかなり少なく、加熱調理10分後以降では、加熱調理時に乳化が壊れた影響で表面に油膜が形成されていた。一方で、実施例1は加熱開始から35秒で加熱調理終了となり、そのときの品温は46.6℃であった。また、加熱調理終了時において流動性を有し、且つ細かな気泡が極めて多く略全体に亘って含まれたものとなっており、ふわふわとした食感で口当たりがよく、飲み応えもあるものであった。さらに、加熱調理15分後まで継続して細かな気泡が一定程度含まれていた(
図1)。つまり、マイクロ波加熱調理する冷凍食品のオーバーランおよびマイクロ波加熱調理終了時の品温が、その泡立ちや食感、口当たりなどに大きく寄与していることが明らかとなった。加えて、比較例1では加熱調理後にすぐ破泡して気泡が維持できないのに対して、実施例1は加熱調理後に一定時間気泡を維持できるものであることが明らかとなった。なお、この実施例1は、加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率が35%以下であった。
【0043】
(試験II)
乳成分を含む市販アイスクリーム(完全解凍したときに固形状のままであるものを実質的に含まないアイスクリーム)を常温にて完全に解凍し、液状物を作製した。そして、この液状物を、真空ニーダーを用いて真空環境下とし、含まれる気体を除去した。これを5℃まで冷却後にエージングし、その後、フリーザー(富繁産業社製)を用いて空気を混合させながらフリージングし、オーバーラン91%の流動性を有する凍結流動物を作製した。そして、耐熱性のある340ml紙カップ容器にこの凍結流動物を120g計量して充填し、-20℃のブラストフリーザーによってさらに凍結を行い、この容器に充填された冷凍食品を得た(実施例2)。
【0044】
そして、この冷凍食品を、電子レンジを用いて、動作電力1800ワット、動作電力1400ワット、または動作電力600ワットでマイクロ波加熱調理を行い、加熱調理後の気泡(泡立ち)を含めた見た目の確認、品温測定、官能評価、および放置試験を行った。なお、加熱調理終了は、いずれも紙カップ容器より吹きこぼれが起こる直前の状態までとした。
下記表2にこの冷凍食品の密度、オーバーラン、容積充填率、および加熱調理終了直後の品温を示した。冷凍食品の密度、オーバーラン、および容積充填率は前述した数式(1)、(2)、(4)を用いた方法により算出した。
【0045】
【0046】
この結果、実施例2は動作電力1800ワットが加熱開始から32秒、動作電力1400ワットが加熱開始から38秒、動作電力600ワットが加熱開始から132秒で加熱調理終了となり、そのときの品温はそれぞれ38.7℃、33.7℃、48.5℃であった。そして、動作電力1800ワットまたは動作電力1400ワットでマイクロ波加熱調理したものは、加熱調理後において流動性を有し、且つ細かな気泡が極めて多く略全体に亘って含まれており、ふわふわとした食感で口当たりがよく、飲み応えもあるものであった。さらに、加熱調理15分後まで継続して細かな気泡が一定程度含まれていた。また、動作電力600ワットでマイクロ波加熱調理したものについても、加熱調理後において流動性を有し、且つ細かな気泡が多く略全体に亘って含まれており、ふわふわとした食感で口当たりがよく、飲み応えもあるものであったが、上記の2つと比較して気泡の量はやや少なかった。これは、加熱調理時間が長い(ゆっくりと加熱調理される)ことによって破泡してしまう気泡がやや多くなったためと推察される。この実施例2も、加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率は35%以下であった。
【0047】
なお、参考として、上記したオーバーラン91%の流動性を有する凍結流動物をガラス容器に容積充填率が30%未満となるように充填してさらに凍結した冷凍食品も作製し、これを、同様に電子レンジを用いて動作電力1800ワットでマイクロ波加熱調理を行った。この結果、加熱開始から49秒で加熱調理終了となり、そのときの品温は82.7℃であり、加熱調理終了直後において気泡は含まれるものの液部とほぼ分離しており、ふわふわとした食感で口当たりがよいものではなかった。
【0048】
(試験III)
牛乳、脱脂粉乳、無塩バター、糖類、スープ顆粒等を調合し、加熱、ホモジナイザーによる均質化(15MPa)、5℃まで冷却後のエージング(一晩)を行い、液状物(スープ)を作製した。そして、この液状物を、真空ニーダーを用いて真空環境下とし、含まれる気体を除去した。さらに、フリーザー(富繁産業社製)を用いて空気を混合させながらフリージングし、オーバーラン69%の流動性を有する凍結流動物とした。そして、耐熱性のある340ml紙カップ容器にこの凍結液状物を120g計量して充填し、-20℃のブラストフリーザーによってさらに凍結を行い、この容器に充填された冷凍食品を得た(実施例3)。
【0049】
そして、この冷凍食品を、電子レンジを用いて、動作電力1800ワットでマイクロ波加熱調理を行い、加熱調理後の気泡(泡立ち)を含めた見た目の確認、品温測定、官能評価、および放置試験を行った。なお、加熱調理終了は、紙カップ容器より吹きこぼれが起こる直前の状態までとした。
下記表3にこの冷凍食品の密度、オーバーラン、容積充填率、および加熱調理終了直後の品温のデータを示した。冷凍食品の密度、オーバーラン、および容積充填率は前述した数式(1)、(2)、(4)を用いた方法により算出した。
【0050】
【0051】
この結果、実施例3は加熱開始から45秒で加熱調理終了となり、そのときの品温は46.6℃であった。また、これは加熱調理後において流動性を有し、且つ細かな気泡が極めて多く略全体に亘って含まれており、ふわふわとした食感で口当たりがよく、飲み応えもあるものであった。さらに、加熱調理15分後まで継続して細かな気泡が一定程度含まれていた。
【0052】
(試験IV)
乳成分を含む市販アイスクリーム(完全解凍したときに固形状のままであるものを実質的に含まないアイスクリーム)を常温にて完全に解凍し、液状物を作製した。そして、この液状物を、真空ニーダーを用いて真空環境下とし、含まれる気体を除去した。これを5℃まで冷却後にエージングし、その後、フリーザー(富繁産業社製)を用いて空気を混合させながらフリージングし、オーバーラン14%、33%、または88%の流動性を有する凍結流動物を作製した。そして、耐熱性のある340ml紙カップ容器にこの各凍結流動物を120g計量して充填し、-20℃のブラストフリーザーによってさらに凍結を行い、この容器に充填された冷凍食品を得た(比較例2、比較例3、実施例4)。
【0053】
そして、これらの冷凍食品を、電子レンジを用いて、動作電力1800ワット、動作電力1400ワット、動作電力1000ワット、または動作電力600ワットでマイクロ波加熱調理を行い、加熱調理後の気泡(泡立ち)を含めた見た目の確認、品温測定、官能評価、および放置試験を行った。なお、加熱調理終了は、いずれも紙カップ容器より吹きこぼれが起こる直前の状態までとした。
下記表4にこれらの冷凍食品の密度、オーバーラン、容積充填率、および加熱調理終了直後の品温を示した。冷凍食品の密度、オーバーラン、および容積充填率は前述した数式(1)、(2)、(4)を用いた方法により算出した。
【0054】
【0055】
この結果、比較例2は動作電力1800ワットでは加熱開始から46秒で加熱調理終了となり、そのときの品温は61.7℃であった。また、加熱調理後の気泡(泡立ち)はほとんどなかった。また、比較例3は動作電力1800ワットでは加熱開始から48秒、動作電力1400ワットでは加熱開始から56秒、動作電力600ワットでは加熱開始から150秒で加熱調理終了となり、そのときの品温はそれぞれ76.1℃、67.4℃、61.0℃であった。また、加熱調理後の気泡(泡立ち)はいずれも少なく、さらに液部と気泡とがほぼ分離していた。
【0056】
一方で、実施例4は動作電力1800ワットでは加熱開始から34秒、1400ワットでは加熱開始から39秒、動作電力1000ワットでは加熱開始から63秒、動作電力600ワットでは加熱開始から130秒で加熱調理終了となり、そのときの品温はそれぞれ44.7℃、48.1℃、53.3℃、59.7℃であった。そして、動作電力1800ワットまたは動作電力1400ワットで加熱調理したものは、加熱調理後において流動性を有し、且つ細かな気泡が極めて多く略全体に亘って含まれており、ふわふわとした食感で口当たりがよく、飲み応えもあるものであった。さらに、加熱調理15分後まで継続して細かな気泡が一定程度含まれていた。なお、動作電力1000ワットまたは動作電力600ワットでマイクロ波加熱調理したものについては、加熱調理後において流動性を有し、且つ細かな気泡が多く略全体に亘って含まれており、ふわふわとした食感で口当たりがよく、飲み応えもあるものであったが、上記の2つと比較して気泡の量がやや少なかった。これも同様に、加熱調理時間が長い(ゆっくりと加熱調理される)ことによって破泡してしまう気泡がやや多くなったためと推察される。この実施例4も、加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率は35%以下であった。
【0057】
(試験V)
乳成分を含む市販アイスクリーム(完全解凍したときに固形状のままであるものを実質的に含まないアイスクリーム)を常温にて完全に解凍し、液状物を作製した。そして、この液状物を、真空ニーダーを用いて真空環境下とし、含まれる気体を除去した。これを5℃まで冷却後にエージングし、その後、フリーザー(富繁産業社製)を用いて空気を混合させながらフリージングし、オーバーランが65~80%の流動性を有する凍結流動物を作製した。そして、耐熱性のある340ml紙カップ容器にこの各凍結流動物を120g計量して充填し、-20℃のブラストフリーザーによってさらに凍結を行い、この容器に充填された冷凍食品を得た(実施例5~6、比較例4~5)。
【0058】
そして、これらの冷凍食品を体積の測定が可能な耐熱性ガラス容器に移し替え、電子レンジを用いて、動作電力1800ワットでマイクロ波加熱調理を行い、加熱調理後の品温測定、および放置試験を行った。なお、加熱調理は、実施例5が35秒間、実施例6が30秒間、比較例4および比較例5が50秒間とした。さらに、加熱調理後の各サンプルについて、5分間放置した後における液相比率も確認した。
【0059】
下記表5にこれらの冷凍食品の密度、オーバーラン、容積充填率、および加熱調理終了直後の品温を示した。なお、冷凍食品の密度、具体的なオーバーランの数値、および容積充填率は、前述した数式(3)を用いた方法により算出した。
【0060】
【0061】
この結果、実施例5は、加熱調理後において気泡が略全体に亘って分散して含まれる(略全体が泡立って気泡が含まれる)食品となっており、加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率は25%以下であった。実施例6についてもほぼ同様であった。
一方で、比較例4および比較例5は、加熱調理終了直後の品温が高いため気泡の多くが破壊され、気泡が略全体に亘って分散して含まれる食品となっておらず、従来ないような食感や口当たりの加熱調理済み食品とはなっていなかった。そして、これらの加熱調理終了から5分間放置した後における液相比率は、いずれも75%以上であった。