(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094780
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】薬局経営情報処理システム、薬局経営情報処理プログラム及び薬局経営情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240703BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20240703BHJP
【FI】
G06Q10/04
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211554
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】519404148
【氏名又は名称】健康サロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194836
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 優一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 一哉
(72)【発明者】
【氏名】南 公祐
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 悠
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】 より簡便な情報入力のみで薬局の経営に有益な情報を提供する。
【解決手段】 本発明は、情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報処理システムに関する。そして、本発明の薬局経営情報処理システムは、対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持するデータ保持手段と、予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、対象薬局の経営環境特徴量に基づき薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定する推定手段と、推定手段が推定した対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報処理システムにおいて、
前記対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持するデータ保持手段と、
予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、前記対象薬局の経営環境特徴量に基づき前記対象薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した前記対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力する出力手段と
を有することを特徴とする薬局経営情報処理システム。
【請求項2】
入力データと当該入力データに対応する出力経営情報とを含む教師データを複数保持し、保持した教師データに基づいて、入力データと出力経営情報との関係を学習する学習処理を行うことで前記学習モデルを獲得する学習手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薬局経営情報処理システム。
【請求項3】
情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報プログラムにおいて、
コンピュータを、
前記対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持するデータ保持手段と、
予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、前記対象薬局の経営環境特徴量に基づき前記対象薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した前記対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力する出力手段と
して機能させることを特徴とする薬局経営情報処理プログラム。
【請求項4】
情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報処理システムが行う薬局経営情報処理方法において、
前記薬局経営情報処理システムは、データ保持手段、推定手段及び出力手段を備え、
前記データ保持手段は、前記対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持し、
前記推定手段は、予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、前記対象薬局の経営環境特徴量に基づき前記対象薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定し、
前記出力手段は、前記推定手段が推定した前記対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力する
ことを特徴とする薬局経営情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬局経営情報処理システム、薬局経営情報処理プログラム及び薬局経営情報処理方法に関し、例えば、薬局(調剤薬局)の経営に関する情報を提供するシステムに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、薬局や医院等の薬局の経営を支援するシステムとしては、例えば、特許文献1のシステムが存在する。
【0003】
特許文献1に記載されたシステムでは、対象の医療機関における患者の診療記録(例えば、レセプトやカルテ等の記録)に基づいて、患者ごとの受診状況の時系列データを生成してデータベース化することで、薬局の経営に関する情報(例えば、来院する患者数の情報等)の集計を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたシステムでは、対象となる薬局に訪れる患者の個別の詳細情報を入力すること等が必要となるため、容易に導入することができなかった。
【0006】
以上のような問題に鑑みて、より簡便な情報入力のみで薬局の経営に有益な情報を提供することができる薬局経営情報処理システム、薬局経営情報処理プログラム及び薬局経営情報処理方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報処理システムにおいて、前記対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持するデータ保持手段と、予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、前記対象薬局の経営環境特徴量に基づき前記対象薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定する推定手段と、前記推定手段が推定した前記対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明は、情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報プログラムにおいて、コンピュータを、前記対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持するデータ保持手段と、予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、前記対象薬局の経営環境特徴量に基づき前記対象薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定する推定手段と、前記推定手段が推定した前記対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力する出力手段として機能させることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明は、情報提供対象となる対象薬局の経営に関する経営情報を提供する薬局経営情報処理システムが行う薬局経営情報処理方法において、前記薬局経営情報処理システムは、データ保持手段、推定手段及び出力手段を備え、前記データ保持手段は、前記対象薬局に関する任意の時点の経営環境の特徴を示す1又は複数の経営環境特徴量を含む入力データ保持し、前記推定手段は、予め学習処理により獲得した学習モデルを用いて、前記対象薬局の経営環境特徴量に基づき前記対象薬局の前記時点以後の経営状態に関する1又は複数の経営評価指標を推定し、前記出力手段は、前記推定手段が推定した前記対象薬局の経営評価指標を含む出力経営情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡便な情報入力のみで薬局の経営に有益な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る薬局経営処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る薬局経営情報処理システムで用いられるAI(学習モデル)の構成について示した図である。
【
図3】実施形態に係る経営環境特徴量を構成する店舗スタイルX6の属性値の例について示した説明図である。
【
図4】実施形態に係る経営環境特徴量(医師との関係性X7)の属性値の例について示した説明図である。
【
図5】実施形態に係る経営環境特徴量(施設基準・加算状況X8)の属性値の例について示した説明図である。
【
図6】実施形態に係る経営環境特徴量(主な取扱い診療科目X9)の属性値の例について示した説明図である。
【
図7】実施形態に係る診療科目ごとの収益指標について示した図である。
【
図8】実施形態に係る経営環境特徴量(システム加入状況X10)の属性値の例について示した説明図である。
【
図9】実施形態に係る薬局経営情報処理システムの変形例(その1:新規処方箋枚数獲得率Y1に特化した判定器)の構成例について示した図である。
【
図10】実施形態に係る薬局経営情報処理システムの変形例(その2:処方箋単価増額率Y2に特化した判定器)の構成例について示した図である。
【
図11】実施形態に係る薬局経営情報処理システムの変形例(その3:顧客単価増額率Y3に特化した判定器)の構成例について示した図である。
【
図12】実施形態に係る薬局経営情報処理システムの変形例(その4:売上増加率Y4に特化した判定器)の構成例について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による薬局経営情報処理システム、薬局経営情報処理プログラム及び薬局経営情報処理方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0013】
(A-1)実施形態の構成
図1は、この実施形態に関連する各装置の接続構成を示すブロック図である。
【0014】
薬局経営情報処理システム10は、薬局(調剤薬局)の経営に関する情報を提供(出力)するためのシステムである。以下では、薬局経営情報処理システム10による情報提供の対象となる薬局(店舗)を「対象薬局」と呼ぶ。また、以下では、薬局経営情報処理システム10が出力する対象薬局の経営に関する情報を「出力経営情報」と呼ぶものとする。出力経営情報には、主として、対象薬局の売上に関連する数値形式のパラメータが含まれる。出力経営情報に含まれるパラメータの詳細については後述する。
【0015】
なお、この実施形態では、薬局経営情報処理システム10は、生成した出力経営情報をユーザ端末20に送信するものとして説明するが、薬局経営情報処理システム10が出力経営情報を出力する先(供給先)や供給手段については限定されないものである。例えば、薬局経営情報処理システム10は、出力経営情報を外部に送信せずに内部的に記録したり、所定の方式により出力するようにしてもよい。具体的には、例えば、薬局経営情報処理システム10は、出力経営情報を単にデータとして記録(例えば、ストレージ等の記録手段に記録)するようにしてもよいし、電子メールやメッセージ送受信サービス等を介して送信するようにしてもよいし、プリンタから印刷出力するようにしてもよいし、ディスプレイに表示出力するようにしてもよい。
【0016】
薬局経営情報処理システム10は、ユーザ端末20から対象薬局の任意の時点における経営環境に関する特徴量(以下、「経営環境特徴量」と呼ぶ)を含むデータ(以下、「入力データ」と呼ぶ)取得し、取得した入力データに基づき出力経営情報を生成する。
【0017】
経営環境特徴量とは、対象薬局の経営環境に関する特徴を複数のパラメータの組み合わせで表現したものである。経営環境特徴量を構成する各パラメータは、インターネット上で公開されているデータベースから取得した情報(以下、「データベース情報」と呼ぶ)や、対象薬局の職員から聞き取りした情報(以下、「アンケート情報」とも呼ぶ)等が含まれる。経営環境特徴量は、主として対象薬局の収益(売上等)と相関性のある数値形式のパラメータで構成されている。経営環境特徴量を構成する各パラメータの詳細については後述する。
【0018】
次に、薬局経営情報処理システム10の内部構成について説明する。
【0019】
薬局経営情報処理システム10は、情報保持手段110、判定器120及び情報出力手段130を有している。
【0020】
薬局経営情報処理システム10は、例えば、コンピュータにプログラム(実施形態に係る薬局経営情報処理プログラムを含む)をインストールすることにより構成していてもよいが、その場合でも機能的には
図1のように示すことができる。
【0021】
情報保持手段110は、経営環境特徴量を含む入力データの入力を受け付ける機能を担っている。情報保持手段110が入力データを取得する手段やデータ形式については限定されないものである。例えば、情報保持手段110は、テキストデータの形式やCSV(Comma Separated Values)形式等の種々のデータ形式により、経営環境特徴量を含む入力データを保持するようにしてもよい。この実施形態では、情報保持手段110はユーザ端末20から入力データを保持するものとして説明するが、情報保持手段110による入力データの供給元については限定されないものである。例えば、情報保持手段110は、種々のデータ記録媒体(例えば、USBメモリ等の種々のデータ記録媒体)によりオフラインでデータ取得するようにしてもよい。
【0022】
判定器120は、AI(Artificial Intelligence;人口知能)により、経営環境特徴量の各パラメータに基づいて出力経営情報の各パラメータを予測して出力する機能を担っている。以下では、判定器120に供給されるパラメータ群を「入力ベクトル」とも呼ぶものとする。また、以下では、判定器120から出力される1又は複数のパラメータ(出力経営情報)を「出力ベクトル」若しくは「出力値」とも呼ぶものとする。
【0023】
判定器120は、教師データに基づいた学習処理を行い学習モデル122を獲得する学習器121を有している。学習モデル122は、いわゆるDNN(Deep Neural Network)等による人工知能を用いて構成することができる。つまり、学習器121は、あらかじめ入力された教師データをDNNに入力して学習処理(最適化処理)を実行させることで、学習モデル122を獲得することができる。なお、学習器121や学習モデル122には、種々のDNN(AI)のプラットフォームを適用することが可能であるため詳しい説明を省略する。
【0024】
ここでは、判定器120(学習器121)は、教師データに基づく学習処理(教師有り学習)を行って学習モデル122を取得する動作モード(以下、「学習モード」と呼ぶ)と、取得した学習モデル122を用いて入力ベクトルに応じた出力ベクトル(出力ベクトルの各値)を判定(推定)する動作モード(以下、「判定モード」と呼ぶ)のいずれかの動作モードで動作するものとする。なお、判定器120において、学習処理(学習モードの動作)が必要ない場合は、学習器121を除外した構成(判定器120が学習モデル122のみを保持した構成)としてもよい。
【0025】
情報出力手段130は、判定器120により判定された判定結果(出力経営情報)を含む出力経営情報出力する出力手段の機能を担っている。情報出力手段130が出力経営情報を出力する手段やデータ形式については限定されないものである。この実施形態では、情報出力手段130は、出力経営情報をユーザ端末20に出力するものとして説明するが、情報出力手段130によるデータ出力先は限定されないものである。
【0026】
次に、判定器120の構成詳細について
図2を用いて説明する。
【0027】
ここでは、
図2に示すように、判定器120には学習モデル122(DNN)で処理可能な入力ベクトル(複数の数値パラメータにより構成される行列式)が入力される。また、判定器120からは学習モデル122(DNN)を用いた処理結果(判定結果)として出力ベクトル(複数の数値パラメータにより構成される行列式)が出力される。なお、出力ベクトルは、1つのパラメータ(出力値)だけで構成される場合があり得るものとする。
【0028】
ここでは、
図2に示すように入力ベクトルには、経営環境特徴量を構成する11個のパラメータX1~X11で構成されているものとする。
図2に示すようにパラメータX1~X11は、それぞれ年間処方箋応需数、近隣医療機関数、薬剤師数、月間営業日数、一般医薬品取扱数、店舗スタイル、医師との関係性、施設基準加算状況、主な取扱い診療科目、システム加入状況、及び潜在患者数である。また、ここでは、
図2に示すように、出力ベクトルには、4個のパラメータY1~Y4が含まれるものとする。
図2に示すようにパラメータY1~Y4は、それぞれ新規処方箋枚数獲得率、処方箋単価増額率、顧客単価増額率、売上増加率である。
【0029】
判定器120(学習モデル122)において、パラメータY1~Y4は、-1~1(-100%~100%)又は0~1(0%~100%)の範囲の値とするようにしてもよい。判定器120(学習モデル122)において、パラメータY1~Y4に用いる活性化関数は統一してもよいしパラメータごとに変更するようにしてもよい。例えば、-1~1(-100%~100%)で変化させるパラメータについては活性化関数(出力層の形式)としてtanh(Hyperbolic tangent function)関数を用いるようにしてもよい。また、例えば、0~1(0%~100%)で変化させるパラメータについては、パラメータについては活性化関数としてReLU(Rectified Linear Unit)関数を用いるようにしてもよい。
【0030】
次に、入力ベクトル(経営環境特徴量)を構成する各パラメータの詳細について説明する。
【0031】
まず、年間処方箋応需数X1について説明する。
【0032】
年間処方箋応需数X1は、対象薬局において年間に受け付けた処方箋の数(枚数)を示している。
【0033】
年間処方箋応需数X1の情報は、例えば、日本国において薬局機能情報提供制度(薬事法)に基づいてインターネット上で公開されている種々のデータベース(すなわち日本国政府や日本国内の各地方自治体がインターネット上で公開しているデータベース)の情報を適用することができる。薬局機能情報提供制度に基づいて公開されるデータベースでは、行政区画ごとの薬局の一覧や、各薬局の「基本情報」や「実績、結果等に関する情報」が公開されている。上記の薬局機能情報提供制度に基づくデータベースにおいて、基本情報には、各薬局の名称、所在地(住所、位置情報)等の情報が含まれる。また、上記の薬局機能情報提供制度に基づくデータベースにおいて、「実績、結果等に関する情報」には、年間処方箋応需数X1に対応する患者の数(昨年度の年間の延べ人数)の情報が含まれる。
【0034】
薬局機能情報提供制度に基づいてインターネット上で公開されているデータベースとしては、例えば、以下の参考文献1のサイトが存在する。
【0035】
参考文献1:東京都福祉保健局社,「東京都医療機関・薬局案内サービス」,[Online],INTERNET,[2022年12月5日検索],URL:http://www.himawari.metro.tokyo.jp/qq13/qqport/tomintop/
【0036】
なお、年間処方箋応需数X1に代えて、月間の処方箋応需数等に置き換えるようにしてもよい。
【0037】
近隣医療機関数X2については、対象薬局住所に応じた近隣の範囲(対応する商圏における近隣の範囲)における医療機関をカウント(例えば、インターネット上の地図情報システムを用いて検索してカウント)した数を入力した数を入力してもよい。
【0038】
次に、近隣医療機関数X2について説明する。
【0039】
近隣医療機関数X2は、対象薬局の近隣に存在する医療機関の数(処方箋を発行する機関の数)を示している。近隣医療機関数X2における近隣の範囲は、対象薬局の存在する地域により変更するようにしてもよい。
【0040】
ここでは、日本全国の各地域(市区町村)に対して調剤薬局の商圏(マーケット)の種類(カテゴリ)を設定し、その商圏に応じて近隣の範囲を設定するものとする。
【0041】
この実施形態において、商圏には、首都型地域、大都市型地域、中核型地域、地方1型地域、地方2型地域及び地方3型地域の6段階あるものとして説明するが、商圏の分け方や段階数については限定されないものである。
【0042】
ここでは、首都型地域は人口密度が12000人/km2以上の地域(市区町村)であり、大都市型地域は人口密度が3000人/km2~11999人/km2の地域であり、中核型地域は人口密度が1000人/km2~2999人/km2の地域であり、地方1型地域は人口密度が300人/km2~999人/km2の地域であり、地方2型地域は人口密度が100人/km2~299人/km2の地域であり、地方3型地域は人口密度が99人/km2以下の地域であるものとする。
【0043】
例えば、首都型地域の商圏の場合は、自宅から病院/薬局への主な移動手段は徒歩/自転車となるが、地方(地方1~3)の商圏の場合は、自宅から病院/薬局への主な移動手段は自家用自動車となるため、近隣といえる距離が変わってくる。そのため、この実施形態の例では、首都型地域及び大都市型地域の商圏における近隣を半径1000m圏内、中核型地域の商圏における近隣を半径1500m圏内、地方1型地域の商圏における近隣を半径2000m圏内、地方2型地域の商圏における近隣を半径4000m圏内、地方3型地域の商圏における近隣を半径5000m圏内にそれぞれ設定するものとして説明する。なお、近隣医療機関数X2における近隣に設定する段階の数や各段階の半径については上記の例に限定されず種々の例を適用するようにしてもよい。
【0044】
次に、薬剤師数X3について説明する。
【0045】
薬剤師数X3は、対象薬局に所属する薬剤師の数である。薬剤師数X3については対象薬局における薬剤師数を確認(アンケート情報として確認)して入力するようにしてもよいし、インターネット上のデータベース情報を収集して保持するようにしてもよい。例えば、上記の薬局機能情報提供制度に基づくデータベースにおいて、「実績、結果等に関する情報」には、薬剤師数X3に対応する薬剤師数の情報が含まれる。
【0046】
次に、月間営業日数X4について説明する。
【0047】
月間営業日数X4は、対象薬局における月間の営業日数である。月間営業日数X4は、厳密な日数ではなく、祝日等を考慮しない概算の数値でも良い。例えば、対象薬局が1週間のうちに月曜日、火曜日、木曜日、金曜日の4日間のみ営業するという形態だった場合、1月を4週間と仮定し、月間の営業日数を4×4=16日とするようにしてもよい。
【0048】
月間営業日数X4については対象薬局における営業日数(週あたりの営業日数×4)を確認して入力するようにしてもよいし、インターネット上のデータベース情報を収集して保持するようにしてもよい。例えば、上記の薬局機能情報提供制度に基づくデータベースにおいて、「基本情報」には、「営業日及び開店時間」という項目があり、週あたりの営業日について記載されている。月間営業日数X4に、上記の「営業日及び開店時間」の項目のデータに基づいた営業日数を適用するようにしてもよい。
【0049】
次に、一般医薬品取扱数X5について説明する。
【0050】
一般医薬品取扱数X5は、対象薬局で取り扱う一般医薬品の取扱数(種類の数)のことである。
【0051】
調剤薬局では、処方箋を必要とする医療用医薬品に加えて、処方箋を要しない一般医薬品についても販売されている場合がある。一般医薬品取扱数X5は、対象薬局において、どの程度の種類の一般医薬品を取り扱っているかを示す指標である。
【0052】
一般医薬品取扱数X5については対象薬局における一般医薬品の取扱数を確認して入力するようにしてもよいし、インターネット上の情報を収集して保持するようにしてもよい。例えば、上記の薬局機能情報提供制度に基づくデータベースにおいて、「実績、結果等に関する情報」には、「一般医薬品について」という項目があり、一般用医薬品を取り扱っている場合の品目数についても記載されている。したがって、一般医薬品取扱数X5に、上記の「一般医薬品について」の項目のデータに基づいた数値を適用するようにしてもよい。
【0053】
次に、店舗スタイルX6について説明する。
【0054】
店舗スタイルX6は、対象店舗の調剤薬局としての立地条件を示す指標である。
【0055】
図3は、店舗スタイルX6に設定される属性値の例について示した図である。
【0056】
店舗スタイルX6の属性型は、複数のステータスの組み合わせにより定まる。この実施形態では、店舗スタイルX6の属性型は、対象薬局の近隣(近隣医療機関数X2における近隣と同じ意味での近隣)における医療機関(処方箋を発行する医療機関)の数が1つであるか複数であるかを示すステータス(以下、「近隣医療機関ステータス」と呼ぶ)と、対象薬局が設置されている場所を示すステータス(以下、「設置場所ステータス」と呼ぶ)の組み合わせにより定まるものとする。
【0057】
近隣医療機関ステータスは、対象薬局の近隣における医療機関が1つであることを示す「1対1」又は複数であることを示す「1対多」のいずれかが設定されるものとする。
【0058】
設置場所ステータスは、対象薬局が近隣に駅がない住宅街に設置されていることを示す「路面・住宅街」、対象薬局の近隣に駅があり商店街に設置されていることを示す「駅前・商店街」、対象薬局が医療機関の多数入居しているビルやモール(いわゆる「医療ビル」や「医療モール」)内に設置されていることを示す「医療ビル・モール」のいずれかで示されるものとする。例えば、近隣医療機関ステータスが「1対1」で設置場所ステータスが「路面・住宅街」である場合、対象薬局の店舗スタイルX6の属性型は、「1対1(路面・住宅街)型」となる。
【0059】
したがって、この実施形態において、店舗スタイルX6の属性型は、
図3に示すように、1対1(路面・住宅街)型、1対1(駅前・商店街)型、1対多(路面・住宅街)型、1対多(駅前・商店街)型、1対多(医療ビル・モール)型のいずれかとなる。なお、設置場所ステータスが「医療ビル・モール」の場合は、必ず近隣の医療機関が複数となるので、近隣医療機関ステータスが「1対1」となる場合はないため省略されている。そして、
図3では、1対1(路面・住宅街)型、1対1(駅前・商店街)型、1対多(路面・住宅街)型、1対多(駅前・商店街)型、1対多(医療ビル・モール)型にはそれぞれ1~6の属性値(店舗スタイルX6の属性値)が設定されていることが示されている。例えば、1対1(路面・住宅街)型の属性値は1で、1対多(医療ビル・モール)型の属性値は6となる。
【0060】
一般的に、近隣医療機関ステータスが「1対1」の薬局よりも「1対多」の薬局の方が多くの患者が見込まれるため収益性が高い傾向にある。また、一般的に、設置場所ステータスについては、(医療ビル・モール)、(駅前・商店街)、(路面・住宅街)の順に収益性が高い傾向にある。そこで、
図3では、店舗スタイルX6について収益性が高い属性型ほど高い属性値が付与されている。
【0061】
次に、医師との関係性X7について説明する。
【0062】
医師との関係性X7は、対象薬局から最も距離の近い医療機関の医師(以下、「近隣医師」と呼ぶ)と対象薬局の薬剤師との関係性(親密度)を示している。
【0063】
図4は、医師との関係性X7に設定される属性値の例について示した図である。
【0064】
図4に示すように、医師との関係性X7は、不良型、通常型、良好型の3つの属性で示されるものとする。医師との関係性X7において、不良型、通常型、良好型にはそれぞれ1~3の属性値が設定されているものとする。つまり、医師との関係性X7では、不良型、通常型、良好型の順に対象薬局の薬剤師と近隣医師との関係性が不良(親密度が低い)ことを示している。医師との関係性X7については、対象薬局からのアンケート情報に基づく値を適用するようにしてもよい。
【0065】
不良型、通常型、良好型の定義については限定されないものであるが、例えば以下のような定義としてもよい。例えば、対象薬局の薬剤師と近隣医師の面識がない場合を不良型とし、対象薬局の薬剤師と近隣医師とが面識がありコミュニケーションが良好(例えば、定期的に連絡や面会をしている場合等)には良好型とし、対象薬局の薬剤師と近隣医師とは面識はあるが良好とまでいえない場合(例えば、定期的に連絡や面会をしていない場合等)には通常型とするようにしてもよい。
【0066】
一般的に、医師との関係性が良好な薬局ほど、より多くの患者や保険点数の加算が見込めるため、収益性が高くなる傾向にある。そこで、
図4では、医師との関係性X7について収益性が高い(医師との関係性の良好度合が高い)属性型ほど高い属性値が付与されている。
【0067】
次に、施設基準加算状況X8について説明する。
【0068】
施設基準加算状況X8は、対象薬局の保険薬局として、厚生労働省(地方厚生局)へ届け出した施設基準に基づく保険点数の加算状況(保険点数の加算状況)について示している。薬局経営において、施設基準に基づく加算(保険点数の加算)は、処方箋あたりの単価の平均に大きく影響するパラメータとなる。例えば、同じ内容の処方箋に基づく調剤を行った場合でも、施設基準に基づく加算が多い薬局の方が、より多い調剤報酬を得られることになる。
【0069】
薬局の施設基準には、薬局のタイプ(立地や規模)に応じて定まる基礎的な加算点数を示す調剤基本料が存在する。これは、国の政策として、「かかりつけ」としての役割が期待される地域の薬局が高く評価され、特定の医療機関のみの処方箋を数多く受ける薬局への点数を低く抑えるための制度である。調剤基本料には、調剤基本料1、調剤基本料2、調剤基本料3、特別調剤基本料等の区分け(クラス)が存在する。例えば、一般的に、街中にある小さな個人経営の薬局は「調剤基本料1」に該当し、病院前にある大規模チェーンの薬局は「調剤基本料2」又は「調剤基本料3」に該当し、病院内の薬局は「特別調剤基本料」に該当する。そして、加算点数は、「調剤基本料1」が最も高く、「調剤基本料2」、「調剤基本料3」、「特別調剤基本料」の順に下がってゆく。
【0070】
また、薬局の施設基準には、上記の調剤基本料の他に、一定の人員要件や設備要件を満たす場合に届け出をすることで、通常よりも調剤報酬を加算できる以下の「地域支援体制加算」や「かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料」(以下、単に「かかりつけ加算」と呼ぶ)のような施設基準が存在する。
【0071】
「かかりつけ加算」は、いわゆる「かかりつけ薬剤師」として患者の服薬を指導することにより得られる調剤報酬の加算であり、薬局内に患者のプライバシーに配慮した設備(例えば、独立したカウンター等)を備えることや、所定の研修認定を取得している薬剤師が所属していること等の要件を満たすことにより届け出ることができる。
【0072】
「地域支援体制加算」は、所定の地域貢献(例えば、かかりつけ薬剤師による在宅患者の対応や休日の対応等)を行う体制と実績を満たすことにより届け出ることができる。
【0073】
以上のように調剤薬局における調剤報酬では、薬局のタイプに応じた基礎的な加算(調剤基本料1~3、特別調剤基本料等)に、その他の所定の要件を満たすことによる加算(以下、「その他の加算」と呼ぶ)が発生する。ここでは、施設基準加算状況X8に反映する「その他の加算」は、かかりつけ加算と地域支援体制加算のみとするが、その以外の加算を組み合わせるようにしてもよい。
【0074】
図5は、施設基準加算状況X8に設定される属性値の例について示した図である。
【0075】
図5に示すように、施設基準加算状況X8は、基本料1以外型、基本料1型、基本料1以外(かかりつけ)型、基本料1(かかりつけ)型、基本料1以外(地域支援)型、基本料1(地域支援)型の6つの属性のいずれかで示されるものとする。
【0076】
施設基準加算状況X8の属性名において、「基本料1」が含まれる場合対象店舗の調剤基本料が調剤基本料1であることを示しており、「基本料1以外」が含まれる場合対象薬局の調剤基本料が調剤基本料1以外(調剤基本料2、3、又は特別調剤基本料のいずれか)に該当することを示しているものとする。また、施設基準加算状況X8の属性名において、「(かかりつけ)」が含まれる場合、対象薬局が「かかりつけ加算」に該当するが「地域支援体制加算」には該当しないことを示しているものとする(地域支援体制加算に対応するためには少なくともかかりつけ加算が可能な体制が必要であるため)。さらに、施設基準加算状況X8の属性名において、「(地域支援)」が含まれる場合、対象薬局が「かかりつけ加算」及び「地域支援体制加算」に該当することを示しているものとする。さらに、施設基準加算状況X8の属性名において、「(かかりつけ)」も「(地域支援)」も含まれない場合、対象薬局が「かかりつけ加算」及び「地域支援体制加算」のいずれにも該当しないことを示しているものとする。例えば、「基本料1型」の属性は、対象薬局が調剤基本料1に該当するが他の加算については該当しないことを示していることになる。また、例えば、「基本料1以外(地域支援)型」の属性は、対象薬局が調剤基本料1に該当し、さらに、かかりつけ加算及び地域支援体制加算の両方に該当することを示していることになる。
【0077】
また、ここでは、
図5に示すように、基本料1以外型、基本料1型、基本料1以外(かかりつけ)型、基本料1(かかりつけ)型、基本料1以外(地域支援)型、基本料1(地域支援)型の属性値がそれぞれ1~6となっている。
【0078】
上記のように、対象薬局における基礎的な加算については、基本料1以外型よりも基本料1型の方が、処方箋単価(平均)が高くなるので収益性が高くなる傾向になる。また、対象薬局におけるその他の加算については、処方箋単価が高い順に並べると「地域支援体制加算」(地域支援+かかりつけ加算)、「かかりつけ加算」(かかりつけ加算のみ)、「なし」の順になるため、収益性についても同じ順序となる。そこで、
図5では、施設基準加算状況X8について加算が大きいほど(収益性が高いほど)高い属性値が付与されている。
【0079】
この実施形態では、
図5に示すように6つの属性型に施設基準換算状況X8を分け、収益性の高い順に属性値を付与したが、施設基準は日本国の法令に基づいて日々改正される事項であるため、法令の改正に合わせてアップデートする必要がある。その場合、再度法改正された内容に合わせて属性型を分け、それぞれの属性型に対して収益性の高い順に属性値を付与して薬局経営情報処理システム10に反映させるようにしてもよい。
【0080】
施設基準換算状況X8については、対象薬局のアンケート情報に基づく値を適用するようにしてもよい。
【0081】
次に、主な取扱い診療科目X9について説明する。
【0082】
主な取扱い診療科目X9は、対象薬局において処方箋の数が最も多い診療科目(処方箋を発行した医療機関の診療科目)に応じた値である。
【0083】
図6は、主な取扱い診療科目X9に設定される属性値の例について示した図である。
【0084】
図6に示すように、主な取扱い診療科目X9は、内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、小児科、眼科、外科、産婦人科、歯科、その他の10の属性のいずれかで示されるものとする。そして、
図6では、内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、小児科、眼科、外科、産婦人科、歯科、その他にはそれぞれ10~1の属性値(主な取扱い診療科目X9の属性値)が設定されていることが示されている。例えば、内科の属性値は10で、その他の属性値は1となる。
【0085】
主な取扱い診療科目X9では、付与される属性値が大きいほど調剤薬局としての収益性が高い傾向にあることを示すものとする。
【0086】
例えば、調剤薬局では、主な取扱い診療科目により、近隣地域で発行される処方箋の枚数(患者の数)や処方箋1枚当たりの調剤報酬の平均単価(技術料)が変動する。
【0087】
図6は、令和3年度の日本国内の医療機関における診療科(主な取扱い診療科目X9)ごとの、発行処方箋枚数(単位は[万枚])と処方箋1枚当たりの平均技術料(以下、単に「平均技術料」と呼ぶ)を示した図である。
【0088】
図6では、診療科(主な取扱い診療科目X9)ごとの処方箋発行枚数Aと平均技術料Bを乗じた数値(A×B)を薬局の収益性を示す「収益指標C」として示している。一般論として、対象薬局において、診療科(主な取扱い診療科目X9)の処方箋発行枚数Aや平均技術料Bが高いほど営業における収益性は増加すると考えられる。したがって、処方箋発行枚数Aと平均技術料Bを乗じた収益指標Cは、対象薬局において診療科(主な取扱い診療科目X9)に応じた収益性(儲かりやすさ)を示していることになる。
【0089】
この実施形態では、それぞれの主な取扱い診療科目X9について、この収益指標Cが大きいほど、大きな属性値を付与するものとして説明する。
図6では、収益指標Cの多い順(降順)に診療科(主な取扱い診療科目X9)をソートしている。そのため、
図5では、それぞれの主な取扱い診療科目X9について、収益指標Cが多いほど大きな属性値を付与している。例えば、
図5では、収益指標Cの最も高い内科の属性値を10とし、以後、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、・・・、歯科、その他と収益指標Cの順序で属性値が1ずつ減算されている。なお、診療科ごとの収益指標Cは年ごとに変化する可能性がある。そのため、最新の収益指標Cに基づいて、収益指標Cの変動に応じて主な取扱い診療科目X9の各属性型(診療科目)に対して属性値を変動させるようにしてもよい。
【0090】
次に、システム加入状況X10について説明する。
【0091】
システム加入状況X10とは、対象薬局において、投薬後(調剤後)に患者に体調や副作用の有無等の聞き取り(以下、「投薬後フォロー」又は「服薬後フォロー」と呼ぶ)を効率的に行うシステム(以下、「投薬後フォローアップシステム」と呼ぶ)を含むITシステム(以下、「薬局業務システム」と呼ぶ)を導入しているか否かを示す属性値である。投薬後フォローアップシステムを含む薬局業務システムとしては、例えば、以下の参考文献2に示されるようなシステムが挙げられる。
【0092】
参考文献2:特開2020-149110号公報
【0093】
調剤薬局においては、投薬後フォローを行うことで、調剤報酬に加算点数が発生する場合があることや、患者と親密となること(リピーターを増やすこと;いわゆる口コミにより対象薬局が他の患者に紹介されやすくなること)ができること等のメリットがある。一方で、繁忙な薬局において、多数の患者に投薬後フォロー等を電話等で行うことは難しいという事情がある。しかしながら、薬局において、上記のような薬局業務システムを導入することで、効率的な患者の対応を行うことができる(例えば、薬剤師を増やさなくても対応できる)ため、収益性が向上することになる(詳細については参考文献2参照)。
【0094】
図7は、システム加入状況X10に設定される各属性/属性値について示した図である。
【0095】
ここでは、
図7に示すように、システム加入状況X10は、投薬後フォローアップシステムを導入していることを示す「加入している」又は、投薬後フォローアップシステムを導入していないことを示す「加入していない」のいずれかでしめされるものとする。そして、
図7では、「加入している」の属性値を1、「加入していない」の属性値を0としている。上記の通り、対象薬局においてシステム加入状況X10は「加入している」である方が収益性が高いため、「加入している」の方が高い属性値が付与されている。
【0096】
次に、潜在患者数X11について説明する。
【0097】
潜在患者数X11は、潜在的に対象薬局において来店する可能性のある患者数の上限を示す値である。例えば、対象薬局が存在する地域の人口統計(例えば、人口密度、年齢ごとの分布、医療的な統計情報等)から、対象薬局の近隣の患者であって対象薬局に来店する可能性のある患者数を推定することができる。そして、対象薬局において発生する処方箋の枚数はおおよそ潜在患者数X11に比例する。つまり、潜在患者数X11は、年間処方箋応需数X1の上限値と相関のあるパラメータであると言える。例えば、潜在患者数X11分の全ての処方箋が対象薬局に集まるような状況である場合、対象薬局において営業努力をしても年間処方箋応需数X1が伸びる可能性はない。また、例えば、潜在患者数X11を大きく下回る文の処方箋しか対象薬局に集まっていないような状況である場合、対象薬局において営業努力により年間処方箋応需数X1の伸び率は大きくなる可能性が高いことになる。
【0098】
潜在患者数X11には、任意の値(例えば、対象薬局の近隣におけるマーケットデータ)を設定するようにしてもよいし、対象薬局が存在する地域の商圏の種類(近隣医療機関数X2における商圏の種類)に応じた値を設定するようにしてもよい。例えば、情報保持手段110では、対象薬局の存在する地域における商圏の種類(首都型地域、大都市型地域、中核型地域、地方1型地域、地方2型地域、地方3型地域)のそれぞれについて、対応する潜在患者数X11のデータ(商圏の種類ごとの潜在患者数X11のリスト)を保持しておくようにしてもよい。そして、情報保持手段110では、予め保持しているリストに基づいて、対象薬局の存在する地域における商圏の種類に対応する潜在患者数X11を保持するようにしてもよい。上記の通り、潜在患者数X11の値は対象薬局における近隣の人口統計(例えば、人口密度、年齢ごとの分布、医療的な統計情報等)によりおおよそ定まる。商圏の種類ごとに設定する潜在患者数X11を算出する方法については限定されないものであるが、例えば、同種類の商圏の地域における人口統計(例えば、人口密度、年齢ごとの分布、医療的な統計情報等)を考慮して定めるようにしてもよい。具体的には例えば、情報保持手段110において、首都型地域、大都市型地域、中核型地域、地方1型地域、地方2型地域、地方3型地域のそれぞれに対して、潜在患者数X11として、15000人、5000人、5000人、4000人、4000人、4000人を設定するようにしてもよい。上記の通り、人口密度のより少ない地域を対象とする商圏では、近隣の範囲も広がるため、商圏の種類(人口密度)に応じて極端に潜在患者数X11が下がるわけではない。また、地方の地域の方が高齢者の比率が高い傾向にあるため、人口密度が少なくても患者の発生する割合(潜在患者数X11の対象となる割合)は多くなる傾向にある。
【0099】
次に、出力ベクトルを構成する各パラメータの詳細について説明する。
【0100】
まず、新規処方箋枚数獲得率Y1について説明する。
【0101】
新規処方箋枚数獲得率Y1は、所定の期間(例えば、月間又は年間)において対象薬局において取り扱う処方箋のうち、新規の患者から受けた処方箋の割合について示している。例えば、対象薬局において、ある月に取り扱った処方箋の枚数が1000枚で、新規の患者(当月に初めて来局した患者)から受けた処方箋の枚数が100枚であった場合、新規処方箋枚数獲得率Y1は0.1(10%)となる。
【0102】
次に、処方箋単価増額率Y2について説明する。
【0103】
処方箋単価増額率Y2は、所定の期間(例えば、月間又は年間)に対象薬局で取り扱った処方箋の処方箋単価(処方箋1枚あたりの調剤報酬)の平均値の増加率を示している。例えば、対象薬局において、ある月の処方箋単価の平均値が4400円で、前月(当月の前の月)の処方箋単価の平均値が4000円である場合、処方箋単価増額率Y2は0.1(10%)となる。
【0104】
次に、顧客単価増額率Y3について説明する。
【0105】
顧客単価増額率Y3は、所定の期間(例えば、月間又は年間)に対象薬局に来局した顧客の顧客単価(顧客一人あたりの売上)の平均値の増加率を示している。調剤薬局では、処方箋に対する調剤以外に一般医薬品の販売も行っているため、顧客単価は処方箋単価よりも高くなる場合がある。例えば、対象薬局において、ある月の顧客単価の平均値が5500円で、前月(当月の前の月)の顧客単価の平均値が5000円である場合、顧客単価増額率Y3は0.1(10%)となる。
【0106】
次に、売上増加率Y4について説明する。
【0107】
売上増加率Y4は、所定の期間(例えば、月間又は年間)における対象薬局の売上の増加率を示している。調剤薬局では、処方箋に対する調剤以外に一般医薬品の販売も行っているため、これらの合計値が売上となる。例えば、対象薬局において、ある月の売上が110万円で、前月(当月の前の月)の売上が100万円である場合、売上増加率Y4は0.1(10%)となる。
【0108】
(A-2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態の薬局経営情報処理システム10の動作(実施形態に係る薬局経営情報処理方法)の例を説明する。
【0109】
次に、薬局経営情報処理システム10(判定器120)が学習モードで動作する場合の動作について説明する。
【0110】
判定モードで動作する場合、情報保持手段110は、外部装置から教師データ(入力ベクトルと出力ベクトルが組となった教師データの集合体)群が供給されると、当該教師データ群を、判定器120(学習器121)に供給する。
【0111】
判定器120(学習器121)は、学習モードで動作する場合、入力ベクトルと出力ベクトルが組となった教師データが複数供給されると、それらの教師データに基づいて学習処理(DNNを用いた学習処理)を行い、学習モデル122を取得する処理を行う。
【0112】
次に、薬局経営情報処理システム10(判定器120)が判定モードで動作する場合の動作について説明する。
【0113】
判定モードで動作する場合、情報保持手段110は、ユーザ端末20から、入力データ(入力ベクトルの属性値X1~X11)の入力を受けると、入力データ(入力ベクトル)を判定器120に供給する。
【0114】
判定器120(学習器121)は、判定モードで動作する場合、取得した学習モデル122を用いて入力ベクトルに応じた出力ベクトル(出力ベクトルの各値)を判定(推定)して出力する処理を行う。
【0115】
(A-3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0116】
この実施形態の薬局経営情報処理システム10では、対象薬局について、ある時点の入力データ(入力ベクトル)に対応するパラメータ(X1~X11)の入力を受けるだけで、当該時点以後の出力ベクトル(Y1~Y4;経営評価指標)を含む出力経営情報を取得することができる。
【0117】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0118】
(B-1)上記の実施形態の情報保持手段110では、対象薬局に関する入力データ(入力ベクトル)を構成するパラメータX1~X11の全ての入力を受ける構成として説明したが、一部のパラメータについて情報保持手段110がインターネット上のデータベース(例えば、上記の薬局機能情報提供制度(薬事法)に基づいてインターネット上で公開されている種々のデータベース;以下、「薬局機能情報提供サイト」と呼ぶ)から取得するようにしてもよい。例えば、情報保持手段110では、対象薬局を特定する情報(例えば、名称や住所等の情報)に基づいて、薬局機能情報提供サイト上の対象薬局のページにアクセスし、取得可能な情報(例えば、パラメータX1、X3、X4、X5の情報)を取得するようにしてもよい。すなわちユーザ端末20(ユーザ)から、対象薬局を特定する情報(薬局機能情報提供サイトや地図情報システムで対象薬局に関するページにアクセスするための情報)のみの入力することで、入力データ(入力ベクトル)のうち、一部のパラメータについて情報入力を省略することができる。
【0119】
例えば、情報保持手段110は、パラメータX1、X3、X4、X5に代えて、対象薬局を特定する情報(例えば、対象薬局の住所、名称、電話番号等の情報)を取得し、インターネット上のデータベース(例えば、薬局機能情報提供サイトや地図情報システム)から、パラメータX1、X3、X4、X5を特定する情報を取得し、取得した情報に基づいて対象薬局のパラメータX1、X3、X4、X5を取得するようにしてもよい。
【0120】
(B-2)上記の実施形態では、パラメータX4について月間営業日数としたが、月間の日数ではなく月間の営業時間とするようにしてもよい。薬局機能情報提供サイトでは薬局の曜日ごとの営業時間帯(例えば、9時~17時等の情報)が表記されているため、日数だけでなく営業時間についても把握することができる。
【0121】
(B-3)上記の実施形態では、出力ベクトルの全ての出力パラメータY1~Y4について共通の教師データに基づく学習モデル(DNN)を適用しているが、出力パラメータごとに、教師データに適用する入力パラメータの組合せを変更するようにしてもよい。上記の通り、出力パラメータY1~Y4はそれぞれ性質が異なるため、各入力パラメータとの相関性も異なる。例えば、ある出力パラメータに対応する教師データにおいて、相関性の低い又は全く相関性のない入力パラメータを排除することで、より相関性の高い入力パラメータだけで構成された教師データに基づく学習モデルを構成することができる。つまり、判定器120において、出力パラメータごとに最適な組み合わせの入力パラメータで構成された入力ベクトルを設定して学習モデルを構成することで、より精度の高い判定結果を取得することができる。
【0122】
図9は、新規処方箋枚数獲得率Y1について入力データ(入力ベクトル)に適用する入力パラメータを最適化した例について示した図である。
図9の例では、入力パラメータX1、X2、X3、X4、X6、X9、X10、X11のみで、入力データ(入力ベクトル)を構成している。
【0123】
図10は、処方箋単価増額率Y2について入力データ(入力ベクトル)に適用する入力パラメータを最適化した例について示した図である。
図10の例では、入力パラメータX2、X4、X6、X7、X8、X9、X10のみで、入力データ(入力ベクトル)を構成している。
【0124】
図11は、顧客単価増額率Y3について入力データ(入力ベクトル)に適用する入力パラメータを最適化した例について示した図である。
図11の例では、入力パラメータX5、X6、X7、X9、X10のみで、入力データ(入力ベクトル)を構成している。
【0125】
図12は、売上増加率Y4について入力データ(入力ベクトル)に適用する入力パラメータを最適化した例について示した図である。
図11の例では、入力パラメータX1、X2、X6、X9、X10、X11のみで、入力データ(入力ベクトル)を構成している。
【0126】
(B-4)上記の実施形態では、出力ベクトル(出力経営情報)の構成についてはY1~Y4を示したが、その他のパラメータを追加するようにしてもよい。
【0127】
例えば、上記の実施形態において、出力ベクトル(出力経営情報)を構成するパラメータとして、対象薬局の営業権を譲渡するとした場合の価格(以下、「薬局評価価格」と呼ぶ)を追加するようにしてもよい。対象薬局の営業権を他人に譲渡する際の価格は、対象薬局の収益性と密接に関わる。仮に、薬局評価価格のパラメータをY5とすれば、
図2の出力ベクトルと教師データに薬局評価価格を追加するようにしてもよい。教師データにおける薬局評価価格Y5については、例えば、実際に譲渡される薬局が存在した場合における売買価格を入力ベクトルと共に入力するようにしてもよいし、対象薬局の年間の売上や処方箋単価等に基づいた計算値(例えば、シミュレーションにより取得した値)を入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
10…薬局経営情報処理システム、20…ユーザ端末、23…東京、110…情報保持手段、120…判定器、121…学習器、122…学習モデル、130…情報出力手段