(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094786
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20240703BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211563
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 将吾
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC02
3C068CC07
3C068HH04
3C068HH16
(57)【要約】
【課題】作業機の利便性を向上させる。
【解決手段】打込機10は、電動モータと、止具を打撃可能なドライバブレード29と、前記電動モータの駆動力により回転するピンホイール50と、を備える。ピンホイール50は、複数の回転部側係合部を有し、ドライバブレード29は、複数の打撃部側係合部を有する。前記複数の打撃部側係合部は、前記複数の回転部側係合部と係合する複数の第1打撃部側係合部を含む。さらに、前記複数の第1打撃部側係合部の全てが前記回転部側係合部と係合する第1打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合せず、前記複数の第1打撃部側係合部の一部が前記回転部側係合部と係合しない第2打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合する第2打撃部側係合部を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
第1方向の一方側へ移動することで止具を打撃可能な打撃部と、
前記打撃部を前記第1方向の一方側へ付勢する付勢部と、
前記モータの駆動力により回転し、前記打撃部に対して係合可能かつ係合を解除可能な回転部と、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記回転部は、該回転部の回転方向に並んで設けられる複数の回転部側係合部を有し、
前記打撃部は、前記第1方向に並んで設けられ、前記複数の回転部側係合部と係合可能な複数の打撃部側係合部を有し、
前記打撃部は、
前記回転部と係合した状態で前記回転部が回転することで、待機位置から前記第1方向の他方側へ移動し、
前記回転部との係合が解除されると、前記付勢部の付勢力によって前記第1方向の一方側へ移動することで前記止具を打撃する、打込み動作を行い、
前記複数の打撃部側係合部は、
前記複数の回転部側係合部と同数設けられ、かつ前記打込み動作において前記複数の回転部側係合部と係合する複数の第1打撃部側係合部と、
前記複数の第1打撃部側係合部の全てが前記回転部側係合部と係合する第1打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合せず、前記複数の第1打撃部側係合部の一部が前記回転部側係合部と係合しない第2打込み動作においては前記複数の回転部側係合部のうちの少なくともいずれかと係合する、第2打撃部側係合部と、を含む、作業機。
【請求項2】
前記第2打撃部側係合部は、前記第1打撃部側係合部よりも前記打撃部における前記第1方向の一方側に設けられている、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第2打撃部側係合部と、該第2打撃部側係合部と隣り合う前記第1打撃部側係合部と、の距離は、前記複数の第1打撃部側係合部のうちの隣り合う第1打撃部側係合部間の距離よりも短い、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1方向における前記第2打撃部側係合部の長さは、前記第1方向における前記第1打撃部側係合部の長さより長い、請求項2に記載の作業機。
【請求項5】
前記第1方向と直交する第2方向における前記第2打撃部側係合部の長さは、前記第2方向における前記第1打撃部側係合部の長さより長い、請求項2に記載の作業機。
【請求項6】
前記打撃部として、前記止具を打撃するドライバブレードと、該ドライバブレードと係合し、かつ前記第1方向に移動するピストンと、を有し、
前記ピストンの移動を案内する部材として、筒状のシリンダを有し、
前記付勢部として、前記ピストンに付勢力を与える圧縮空気が貯蔵される蓄圧室を有し、
前記蓄圧室は、前記ピストンの前記第1方向の他方側に配置される第1蓄圧室と、前記第1蓄圧室と連通し、前記第1蓄圧室の前記第1方向の一方側に配置され、かつ前記シリンダの側面に隣接して設けられる第2蓄圧室と、を含み、
前記シリンダの前記第1方向の他方側の端部は、前記第1蓄圧室内に入り込んでいる、請求項2乃至5の何れか一項に記載の作業機。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータの電流値の変化に基づいて前記第2打込み動作を検知するとともに、前記第2打込み動作の検知を報知する、請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記制御部は、前記モータの電流値が予め設定された前記電流値の閾値を超えた際に前記第2打込み動作であることを検知する、請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記打撃部は、打撃後に前記回転部が回転することで前記回転部と再係合し、前記回転部がさらに回転することで前記第1方向の他方側へ前記待機位置まで移動する、請求項1に記載の作業機。
【請求項10】
モータと、
第1方向の一方側へ移動することで止具を打撃可能な打撃部と、
前記打撃部を前記第1方向の一方側へ付勢する付勢部と、
前記モータの駆動力により回転し、前記打撃部に対して係合可能かつ係合を解除可能な回転部と、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記回転部は、該回転部の回転方向に並んで設けられる複数の回転部側係合部を有し、
前記打撃部は、前記第1方向に並んで設けられ、前記複数の回転部側係合部と係合可能な複数の打撃部側係合部を有し、
前記打撃部は、
前記回転部と係合した状態で前記回転部が回転することで、待機位置から前記第1方向の他方側へ移動し、
前記回転部との係合が解除されると、前記付勢部の付勢力によって前記第1方向の一方側へ移動することで前記止具を打撃し、
打撃後に前記回転部が回転することで前記回転部と再係合し、前記回転部がさらに回転することで前記第1方向の他方側へ前記待機位置まで移動する、打込み動作を行い、
前記複数の打撃部側係合部は、
複数の第1打撃部側係合部と、
前記複数の第1打撃部側係合部よりも前記第1方向の一方側に設けられ、前記複数の第1打撃部側係合部の全てが前記回転部側係合部と係合する第1打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合せず、前記複数の第1打撃部側係合部のうち前記第1方向の最も他方側の前記第1打撃部側係合部が前記回転部側係合部と係合しない第2打込み動作においては前記複数の回転部側係合部のうちの少なくともいずれかと係合する、第2打撃部側係合部と、を含む、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打込機等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、止具を打撃するドライバブレードと、前記ドライバブレードを上方に向けて押し上げるピンホイールと、前記ピンホイールを回転させるモータと、を有する打込機が知られている。
【0003】
上述のような打込機として、例えば、特許文献1には、ドライバブレードに設けられたラックと、ピンホイールに設けられたピンと、が係合し、打込み後、ドライバブレードがピンホイールの回転によって巻き上げられる機構を備えた打込機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載された打込機では、ピンとラックは、互いに対応するようにそれぞれ同数設けられており、ピンとラックとが係合された状態でピンホイールが回転することにより、ドライバブレードが上方に向けて押し上げられる。
【0006】
このような打込機において、射出口に釘(止具)が詰まった場合や被打込材が硬いことによるドライバブレードの被打込材からの跳ね返りが大きい場合には、ドライバブレードの停止位置が正常時と異なった位置となる。その結果、ピンホイールによってドライバブレードを押し上げる際のピンとラックとの係合において、掛違いが生じる虞がある。
【0007】
ピンとラックとの係合において掛違いが生じると、ピンホイールの回転方向の最終のピンが余った状態となり、打込み時にドライバブレードと上述の最終のピンとが衝突し、ドライバブレードやピン、モータの駆動力を減速してピンホイールに伝達する減速機構等が破損する虞がある。ドライバブレードやピン、減速機構等が破損すると、打込機において部品の交換などの作業が必要となり、打込機の利便性が損なわれる可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、利便性を向上させた作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の作業機は、モータと、第1方向の一方側へ移動することで止具を打撃可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向の一方側へ付勢する付勢部と、前記モータの駆動力により回転し、前記打撃部に対して係合可能かつ係合を解除可能な回転部と、前記モータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記回転部は、該回転部の回転方向に並んで設けられる複数の回転部側係合部を有し、前記打撃部は、前記第1方向に並んで設けられ、前記複数の回転部側係合部と係合可能な複数の打撃部側係合部を有し、前記打撃部は、前記回転部と係合した状態で前記回転部が回転することで、待機位置から前記第1方向の他方側へ移動し、前記回転部との係合が解除されると、前記付勢部の付勢力によって前記第1方向の一方側へ移動することで前記止具を打撃する、打込み動作を行い、前記複数の打撃部側係合部は、前記複数の回転部側係合部と同数設けられ、かつ前記打込み動作において前記複数の回転部側係合部と係合する複数の第1打撃部側係合部と、前記複数の第1打撃部側係合部の全てが前記回転部側係合部と係合する第1打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合せず、前記複数の第1打撃部側係合部の一部が前記回転部側係合部と係合しない第2打込み動作においては前記複数の回転部側係合部のうちの少なくともいずれかと係合する、第2打撃部側係合部と、を含む。
【0010】
また、本発明の他の作業機は、モータと、第1方向の一方側へ移動することで止具を打撃可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向の一方側へ付勢する付勢部と、前記モータの駆動力により回転し、前記打撃部に対して係合可能かつ係合を解除可能な回転部と、前記モータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記回転部は、該回転部の回転方向に並んで設けられる複数の回転部側係合部を有し、前記打撃部は、前記第1方向に並んで設けられ、前記複数の回転部側係合部と係合可能な複数の打撃部側係合部を有し、前記打撃部は、前記回転部と係合した状態で前記回転部が回転することで、待機位置から前記第1方向の他方側へ移動し、前記回転部との係合が解除されると、前記付勢部の付勢力によって前記第1方向の一方側へ移動することで前記止具を打撃し、打撃後に前記回転部が回転することで前記回転部と再係合し、前記回転部がさらに回転することで前記第1方向の他方側へ前記待機位置まで移動する、打込み動作を行い、前記複数の打撃部側係合部は、複数の第1打撃部側係合部と、前記複数の第1打撃部側係合部よりも前記第1方向の一方側に設けられ、前記複数の第1打撃部側係合部の全てが前記回転部側係合部と係合する第1打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合せず、前記複数の第1打撃部側係合部のうち前記第1方向の最も他方側の前記第1打撃部側係合部が前記回転部側係合部と係合しない第2打込み動作においては前記複数の回転部側係合部のうちの少なくともいずれかと係合する、第2打撃部側係合部と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業機の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態の作業機の内部構造を示す側面断面図である。
【
図2】
図1の作業機のヘッドカバーを上方から見た上面図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【
図4】実施の形態の作業機のドライバブレードの構造を示す図であり、(a)は外観図、(b)は(a)のB矢視図である。
【
図5】
図4のドライバブレードの構造を示す図であり、(a)は
図4(a)のC矢視図、(b)は
図4(a)のD矢視図、(c)は
図4(a)のE部の拡大図である。
【
図6】実施の形態の作業機の通常巻き上げにおけるラックとピンの係合状態を示す図であり、(a)は巻き上げ開始時、(b)はリリース時の図である。
【
図7】実施の形態の作業機の掛違いにおけるラックとピンの係合状態を示す図であり、(a)は巻き上げ開始時、(b)はリリース時の図である。
【
図8】実施の形態の作業機の通常巻き上げ時と掛違い時における時間とモータの電流値との関係を示すグラフである。
【
図9】実施の形態の変形例のドライバブレードの構造を示す図であり、(a)は外観図、(b)は(a)のB矢視図である。
【
図10】
図9のドライバブレードの構造を示す図であり、(a)は
図9(a)のC矢視図、(b)は
図9(a)のD矢視図である。
【
図11】比較例の作業機の掛違いにおけるラックとピンの係合状態を示す図であり、(a)は巻き上げ開始時、(b)はリリース時、(c)はリリース後のラックとピンの衝突状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態の作業機について図面を参照して説明する。本実施の形態では、作業機の一例として、打込機を取り上げて説明する。
【0014】
図1及び
図2に示される打込機(作業機)10は、空気圧縮式の作業機であり、ハウジング11、打撃部12、ノーズ部13、電源部14、電動モータ(モータ)15、減速機構16、巻き上げ機構17及び蓄圧容器18を有する。
【0015】
ハウジング11は、打込機10の外殻要素であり、シリンダケース19、ハンドル20、モータケース21及び装着部22を有する。シリンダケース19は筒形状であり、ハンドル20及びモータケース21は、シリンダケース19に接続されている。また、装着部22は、ハンドル20及びモータケース21に接続されている。
【0016】
電源部14は、装着部22に取り付け及び取り外しが可能である。電動モータ15は、モータケース21内に配置されている。蓄圧容器18は、キャップ23と、キャップ23が取り付けられるホルダ24と、を有する。シリンダケース19には、ヘッドカバー25が取り付けられており、蓄圧容器18は、シリンダケース19内及びヘッドカバー25内に亘って配置されている。
【0017】
さらに、シリンダケース19内には、筒状のシリンダ27が収容されている。シリンダ27は、金属製、例えば、アルミニウム製または鉄製である。シリンダ27は、シリンダケース19に対して中心線A1に沿った方向及び径方向に位置決めされている。中心線A1は、シリンダ27の中心を通る。径方向は、中心線A1を中心とする仮想円の径方向である。また、蓄圧容器18内及びシリンダ27内に亘って蓄圧室26が形成されている。蓄圧室26には、圧縮気体が充填されている。圧縮気体は、空気の他、不活性ガスを用いることができる。不活性ガスは、一例として、窒素ガス、希ガスを含む。本実施の形態1では、蓄圧室26に空気が充填されている例を説明する。なお、蓄圧室26は、打撃部12を上下方向(第1方向)M1の下方(一方)側へ付勢する付勢部でもある。
【0018】
打撃部12は、ハウジング11の内部から外部に亘って配置されている。打撃部12は、ピストン28及びドライバブレード29を含む。ピストン28は、シリンダ27内で中心線A1に沿った方向に作動可能である。すなわち、シリンダ27は、ピストン28の移動を案内する部材である。シリンダ27の上下方向M1の上方(他方)側の端部にはシリンダキャップ27aが装着されている。また、ピストン28の外周面に、環状のシール部材84が取り付けられている。シール部材84は、シリンダ27の内周面に接触してシール面を形成する。ドライバブレード29は、一例として金属製、非鉄金属製、鋼製である。ピストン28とドライバブレード29とが別部材で設けられ、ピストン28とドライバブレード29とが連結されている。
【0019】
したがって、打撃部12は、上下方向(第1方向)M1の下方(一方)側へ移動することで、釘(止具)78を打撃可能である。
【0020】
ノーズ部13は、シリンダケース19の内外に亘って配置されている。ノーズ部13は、バンパ支持部31、射出部32及び筒部33を有する。バンパ支持部31は、筒形状である。また、バンパ支持部31内には、バンパ35が配置されている。バンパ35は合成ゴム製、シリコンゴム製の何れでもよい。バンパ35はガイド孔36を有する。中心線A1はガイド孔36内を通る。ドライバブレード29は、バンパ支持部31のガイド孔内及びガイド孔36内に配置されている。打撃部12は、中心線A1に沿った打込方向D1及び復帰方向D2で作動できる。打込方向D1と復帰方向D2とは、互いに逆方向である。打込方向D1は、ピストン28がバンパ35に接近する方向である。復帰方向D2は、ピストン28がバンパ35から離間する方向である。打撃部12は、蓄圧室26の気体圧力で打込方向D1に常に付勢されている。打撃部12が打込方向D1で作動することを、下降と定義可能である。打撃部12が復帰方向D2で作動することを、上昇と定義可能である。打込方向D1は、上下方向(第1方向)M1の下方(一方)側と同一である。復帰方向D2は、上下方向(第1方向)M1の上方(他方)側と同一である。なお、本実施の形態では、打撃部12を蓄圧容器18に向けて押し上げる動作を巻き上げと呼ぶ。したがって、打撃部12の巻き上げ動作と言う場合、打撃部12を上下方向M1の上方側へ押し上げる動作のことである。
【0021】
打込機10の射出部32は、バンパ支持部31に接続され、かつ、バンパ支持部31から中心線A1に沿った方向に突出している。射出部32は射出路37を有し、射出路37は中心線A1に沿って設けられている。ドライバブレード29は、射出路37内で中心線A1に沿った方向に作動できる。
【0022】
また、モータケース21内には、電動モータ15が配置されている。電動モータ15は、ロータ39及びステータ40を有する。ステータ40は、モータケース21に取り付けられている。ロータ39は、ロータ軸41に取り付けられ、ロータ軸41の端部は、軸受42を介してモータケース21により回転可能に支持されている。電動モータ15は、ブラシレスモータであり、電動モータ15に電圧が印加されると、ロータ39は、中心線A2を中心として回転する。
【0023】
さらに、モータケース21内には、ギヤケース43が設けられている。ギヤケース43は筒形状である。ギヤケース43内には、減速機構16が設けられている。減速機構16は、複数組のプラネタリギヤ機構を備えている。減速機構16の入力要素は、動力伝達軸44を介してロータ軸41に連結されている。動力伝達軸44は、軸受45により回転可能に支持されている。
【0024】
また、筒部33内には、回転軸46が設けられている。回転軸46は軸受48,49により回転可能に支持されている。ロータ軸41、動力伝達軸44、減速機構16及び回転軸46は、中心線A2を中心として同心状に配置されている。減速機構16の出力要素47と回転軸46とが同心状に配置され、かつ、出力要素47と回転軸46とが一体回転する。減速機構16は、電動モータ15から回転軸46に至る動力伝達経路に配置されている。巻き上げ機構17は、回転軸46の回転力を、打撃部12を復帰方向D2で付勢する力に変換する。
【0025】
また、打込機10には、トリガ75及びトリガセンサ85が設けられている。トリガ75及びトリガセンサ85は、ハンドル20に設けられている。トリガセンサ85は、トリガ75に加わる操作力の有無を検出し、かつ、検出結果に応じた信号を出力する。
【0026】
電源部14は、収容ケース76と、収容ケース76内に収容されたバッテリとを有する。上記バッテリは、複数の電池セルを有する。これら電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等、公知の電池セルを任意に用いることができる。
【0027】
また、打込機10には、マガジン77が設けられている。マガジン77は、射出部32及び装着部22により支持されている。マガジン77内には、釘(止具)78が収容される。マガジン77はフィーダを有し、フィーダは、マガジン77内の釘78を射出路37へ送る。すなわち、フィーダは、マガジン77内の釘78を前後方向N1の前方側へ移動させる。なお、射出部32は、金属製または合成樹脂製である。射出部32には、プッシュレバー79が取り付けられている。プッシュレバー79は、射出部32に対して中心線A1に沿って方向の所定範囲内で作動できる。プッシュレバー79を中心線A1に沿った方向に付勢する弾性部材80が設けられている。弾性部材80は、一例として金属製のスプリングであり、弾性部材80は、プッシュレバー79をバンパ支持部31から離間する向きで付勢する。プッシュレバー79はストッパ81に接触して停止する。
【0028】
また、打込機10には、制御部82が設けられている。制御部82は、装着部22内に設けられており、主に、電動モータ15の駆動を制御する。制御部82は、マイクロプロセッサを有し、電動モータ15の回転及び停止、あるいは電動モータ15の回転数、電動モータ15の回転方向を制御する。なお、モータケース21内には、モータ基板83が設けられている。そして、モータ基板83には、図示しないインバータ回路が設けられており、このインバータ回路は、電動モータ15のステータ40と電源部14とを接続及び遮断する。制御部82は、前記インバータ回路を制御することにより、電動モータ15の動作を制御する。
【0029】
次に、打込機10が備える巻き上げ機構17について説明する。巻き上げ機構17は、
図3に示されるように、ドライバブレード29、ドライバブレード29に設けられた複数の打撃部側係合部、ピンホイール(回転部)50、及びピンホイール50に設けられた複数の回転部側係合部を含む。
【0030】
ピンホイール50は、回転軸46に取り付けられている。ピンホイール50は、電動モータ15の駆動力によって回転する回転部である。ピンホイール50は、一例として金属製、非鉄金属製、鋼製である。ピンホイール50は中心線A2を中心として回転する。中心線A2は、打撃部12の作動方向に対して交差する方向で、ドライバブレード29から左右方向R1に離間して配置されている。ピンホイール50は、ドライバブレード29に対して係合可能、かつ係合を解除可能な円盤状の部材である。
【0031】
ピンホイール50は、該ピンホイール50の後述する回転方向E1に並んで設けられる複数の回転部側係合部を有している。複数の回転部側係合部の一例として、8個のピン51,52,53,54,55,56,57,58が、ピンホイール50に設けられている。ピン51,52,53,54,55,56,57,58は、ピンホイール50とは別体で設けられており、ピンホイール50の円盤面から突出するように固定されている。さらに、ピン51,52,53,54,55,56,57,58は、中心線A2を中心とする同一円周上に配置されている。
【0032】
また、ピンホイール50には、該ピンホイール50の回転方向E1で所定角度の第2領域に切欠部50aが形成されている。切欠部50aは、一例として90°を成す領域に形成されている。中心線A2を中心とする切欠部50aの最小外径は、切欠部50aが形成されていない第1領域の最大外径よりも小さい。切欠部50aが形成されていない第1領域は、ピンホイール50の回転方向E1で略270°の領域である。
【0033】
一方、ドライバブレード29は、ピンホイール50と係合した状態でピンホイール50がE1方向に回転することで、ドライバブレード29の待機位置から上下方向(第1方向)M1の上方(他方)側へ移動する棒状の部材である。そして、ドライバブレード29は、ピンホイール50との係合が解除されると、蓄圧室26に貯蔵された圧縮空気の付勢力によって上下方向M1の下方(一方)側へ移動し、これにより、釘78を打撃する打込み動作を行う。さらに、ドライバブレード29は、打撃後にピンホイール50がE1方向に回転することでピンホイール50と再係合し、ピンホイール50がさらに回転することで、上下方向(第1方向)M1の上方側へ向かってドライバブレード29の待機位置まで移動する。
【0034】
なお、本実施の形態の打込機10におけるドライバブレード29には、複数の打撃部側係合部として、前記複数の回転部側係合部と同数設けられ、かつ前記打込み動作において前記複数の回転部側係合部と係合する複数の第1打撃部側係合部が設けられている。さらに、ドライバブレード29には、前記複数の第1打撃部側係合部の全てが前記回転部側係合部と係合する第1打込み動作においては前記複数の回転部側係合部と係合せず、前記複数の第1打撃部側係合部の一部が前記回転部側係合部と係合しない第2打込み動作においては前記複数の回転部側係合部のうちの少なくともいずれかと係合する、第2打撃部側係合部が設けられている。つまり、ドライバブレード29は、複数の打撃部側係合部として前記第1打撃部側係合部及び第2打撃部側係合部を含んでいる。
【0035】
具体的には、ドライバブレード29には、
図4及び
図5に示されるように、前記複数の第1打撃部側係合部として、ラック61,62,63,64,65,66,67,68が上下方向M1に並んで設けられている。これらのラック61,62,63,64,65,66,67,68は、ピンホイール50のピン51,52,53,54,55,56,57,58と係合可能である。また、ドライバブレード29には、前記第2打撃部側係合部として、補助ラック69が設けられている。補助ラック69は、前記第1打撃部側係合部よりもドライバブレード29における上下方向M1の下方側に設けられている。具体的には、ドライバブレード29のブレード本体部29bには、その上下方向M1において、上方側から順番にラック61,62,63,64,65,66,67,68,68が設けられている。そして、補助ラック69は、ラック68の下方側にラック68に隣接して設けられている。つまり、ラック61,62,63,64,65,66,67,68及び補助ラック69は、上下方向M1に並んで設けられており、中心線A1に沿った方向に、この順序で配置されている。本実施の形態の打込機10では、ラック61,62,63,64,65,66,67,68及び補助ラック69は、ドライバブレード29のブレード本体部29bの縁に設けられた突起である。
【0036】
また、ラック61,62,63,64,65,66,67,68及び補助ラック69は、ドライバブレード29のブレード本体部29bと一体で設けられている。さらに、ラック61,62,63,64,65,66,67,68及び補助ラック69は、ドライバブレード29の中心線A1に沿った方向の先端29aと、
図3に示されるピストン28との間に配置されている。なお、ドライバブレード29の断面形状は、
図5(b)に示されるように、中心線A1に対して垂直な平面内で、略四角形である。
【0037】
そして、打撃部12が
図1に示される復帰方向D2で作動すると、複数のラックのうちラック61は、復帰方向D2で先頭、つまり、第1番目に位置する。打撃部12が復帰方向D2で作動すると、打撃部12の移動方向で、ラック62,63,64,65,66,67,68及び補助ラック69は、ラック61よりも後方に位置する。
【0038】
なお、ピンホイール50のピン51,52,53,54,55,56,57,58と、ドライバブレード29のラック61,62,63,64,65,66,67,68とは、中心線A2に沿った方向で重なる位置に設けられ、通常巻き上げの動作において互いに係合する位置関係となっている。
【0039】
また、ピンホイール50は、電動モータ15の回転力で
図3において反時計回り(回転方向E1)に回転する。本実施の形態のピンホイール50では、一例として、ピン51は、ピンホイール50の回転方向E1における第2領域に配置されており、ピン52,53,54,55,56,57,58は、ピンホイール50の回転方向E1における第1領域内に配置されている。そして、ピン52,53,54,55,56,57,58は、ピンホイール50の回転方向E1に沿い、この順序で配置されている。ピン51は、ピンホイール50が1回転する間に回転方向E1で先頭、すなわち、第1番目に位置する。
【0040】
また、ピンホイール50の回転方向E1で、ピン52,53,54,55,56,57,58は、ピン51よりも後方に位置する。このため、打撃部12が停止している状態でピンホイール50が回転すると、複数のピンのうち、ピン51は、ピンホイール50の回転方向E1で最初にドライバブレード29の作動領域に接近する。
【0041】
次に、
図1に示される本実施の形態の打込機10の打込み動作の一例を説明する。ここでは、まず、
図6に示されるドライバブレード29の通常巻き上げの動作(第1打込み動作)の場合について説明する。
図1に示される制御部82は、トリガ75に操作力が加えられていないこと、またはプッシュレバー79が被打込材30に押し付けられていないこと、のうち、少なくとも一方を検出すると、電動モータ15に対する電力の供給を停止する。このため、電動モータ15は停止し、打撃部12は待機位置で停止している。
【0042】
制御部82は、トリガ75に操作力が付加されていること、及びプッシュレバー79が被打込材30に押し付けられていること、を検出すると、電源部14から電動モータ15に電圧を印加させ、電動モータ15を正回転させる。これにより、打撃部12による打込み動作を開始する。電動モータ15の回転力は、減速機構16を経由して回転軸46に伝達される。すると、回転軸46及びピンホイール50は、
図3で反時計回り(回転方向E1)に回転し、
図6(a)に示されるように、ピンホイール50の1番目のピン51とドライバブレード29の1番目のラック61とが係合し、ドライバブレード29の通常巻き上げが開始される。その後、ピンホイール50の回転とともに、ピンホイール50のピン52~58と、ドライバブレード29のラック62~68とが順次係合して打撃部12が上昇する。打撃部12が上昇すると、蓄圧室26の気体圧力が上昇する。減速機構16は、ピンホイール50の回転速度を、電動モータ15の回転速度よりも低速にする。
【0043】
図6(b)に示されるように、ピンホイール50の回転により、ピンホイール50の回転方向E1における最終のピン58とドライバブレード29の最終のラック68とが係合して打撃部12が上死点まで上昇した後、ピンホイール50のピン58がドライバブレード29のラック68から離間すると、打撃部12は、蓄圧室26の気体圧力で下降する。すなわち、ピン58がラック68から離間した時点における打撃部12の位置が上死点である。打撃部12が蓄圧室26の気体圧力で下降することで、ドライバブレード29が
図1に示される射出路37に位置する1本の釘78を打撃し、釘78は被打込材30に打ち込まれる。
【0044】
ピストン28は、釘78が被打込材30に打ち込まれた後、バンパ35に衝突する(下死点に到達)。バンパ35は中心線A1に沿った方向の荷重を受けて弾性変形し、打撃部12の運動エネルギの一部を吸収する。
【0045】
制御部82は、打撃部12が釘78を打ち込んで下死点に到達した後も、電動モータ15の回転を継続させる。このため、ピンホイール50が反時計回りに回転し、ピン51がラック61に接近する。
【0046】
そして、ピン51が、ラック61に係合(再係合)すると、打撃部12は、ピンホイール50の回転力で下死点から待機位置に向けて作動する。また、ピン52は、ラック62に係合及び離間し、ピン53は、ラック63に係合及び離間する。このようにピンホイール50のピンとドライバブレード29のラックとが順次係合及び離間することで、ドライバブレード29が上方側に向けて巻き上げられる。制御部82は、打撃部12が待機位置に到達したことを検出すると、電動モータ15を停止させ、ピンホイール50の回転が止まる。
【0047】
このように打込機10では、ドライバブレード29の通常巻き上げの動作において、ピンホイール50の複数のピンの何れかと、ドライバブレード29の複数のラックの何れかと、が係合した係合状態でピンホイール50が回転することにより、ドライバブレード29が上下方向M1の上方(他方)側へ押し上げられる。すなわち、ドライバブレード29は、ピンとラックとが係合した係合状態でピンホイール50が回転することにより、復帰方向D2へ押し上げられる。
【0048】
さらに、ドライバブレード29は、ピンとラックとによる上記係合状態が解除されることで、上下方向M1の下方(一方)側へ移動する。すなわち、ドライバブレード29は打込方向D1へ作動し、これにより、釘78を打撃する。
【0049】
また、ドライバブレード29は、打撃後にピンホイール50が回転することにより、複数のピンの何れかと複数のラックの何れかとの上記係合状態となる再係合が行われることで上下方向M1の上方(他方)側へ押し上げられる。
【0050】
なお、上述のドライバブレード29の通常巻き上げの動作においては、ドライバブレード29の補助ラック69は、ピンホイール50の何れのピンとも係合することはない。言い換えると、補助ラック69がドライバブレード29の通常巻き上げの動作を阻害することはない。
【0051】
ここで、本発明者が比較検討を実施した
図11(a),(b),(c)の比較例におけるドライバブレード90とピンホイール50の掛違い時の巻き上げ動作について説明する。なお、本実施の形態では、ドライバブレード90を巻き上げる際のドライバブレード90とピンホイール50との係合において、ピンホイール50の第1番目のピン51がドライバブレード90の第1番目のラック91以外の何れかのラックに係合した場合に、そのドライバブレード90の巻き上げ動作を掛違いと呼ぶ。すなわち、ピンホイール50の第1番目のピン51がドライバブレード90のラック92~98の何れかと係合した場合を掛違いと呼ぶ。
【0052】
例えば、
図11(a)に示されるように、ピンホイール50の第1番目のピン51がドライバブレード90の第2番目のラック92に係合し、この状態でピンホイール50が回転することでピンホイール50の第1番目以降のピンとドライバブレード90の第2番目以降のラックとが順次係合してドライバブレード90を押し上げていく。この動作がピンホイール50とドライバブレード90の掛違いの動作の一例である。掛違いの動作では、
図11(b)に示されるように、ピンホイール50の第7番目のピン57とドライバブレード90の最終のラック98とが係合し、ピンホイール50側では最終のピン58が余った状態となっている。この状態でドライバブレード90が上死点に到達してピンホイール50の第7番目のピン57とドライバブレード90の最終のラック98との係合が終了すると、次の瞬間、ラック98は解放される。ラック98が解放されると、
図1に示される蓄圧室26からの圧縮空気によって、
図11(c)に示されるようにドライバブレード90を含む打撃部12は下降する。そして、
図11(c)のJ1部に示されるように、ドライバブレード90のラック98とピンホイール50のピン58とが衝突し、ピン58やラック98が破損に到る場合がある。
【0053】
そこで、本実施の形態の打込機10では、掛違い発生時においても、ピンやラックが破損に到ることを防止する対策が施されている。
【0054】
ここで、上記対策を、
図7に示される本実施の形態の打込機10におけるドライバブレード29とピンホイール50の掛違い時の巻き上げ動作(第2打込み動作)とともに説明する。例えば、
図7(a)に示されるように、ピンホイール50の第1番目のピン51がドライバブレード29の第2番目のラック62に係合し、この状態でピンホイール50が回転することでピンホイール50の第1番目以降のピンとドライバブレード29の第2番目以降のラックとが順次係合してドライバブレード90が押し上げられる。この動作が打込機10におけるピンホイール50とドライバブレード29の掛違いの動作の一例である。このとき本実施の形態の打込機10では、ドライバブレード29において、ラック68の隣に補助ラック69が設けられている。
【0055】
したがって、打込機10による掛違いの動作では、
図7(b)に示されるように、ピンホイール50の最終のピン58が余ることなく、このピン58とドライバブレード29の補助ラック69とが係合する。この状態でドライバブレード29が上死点に到達してピンホイール50の第8番目のピン58とドライバブレード29の補助ラック69との係合が終了すると、次の瞬間、補助ラック69は解放される。補助ラック69が解放されると、
図1に示される蓄圧室26からの圧縮空気によって、ドライバブレード29を含む打撃部12は下降する。このときドライバブレード29の下降を阻害するものはないため、ドライバブレード29は、
図1に示される釘78を打撃することができる。
【0056】
このように本実施の形態の打込機10では、ドライバブレード29に補助ラック69が設けられていることで、ピンホイール50とドライバブレード29との係合において掛違いが発生しても、最終のピンが余ることなくドライバブレード29が押し上げられる。これにより、ドライバブレード29がリリースされ下降する際にラックとピンとが衝突することはないため、ピンやラックが衝突によって損傷することを防止できる。その結果、打込機10において部品の交換などの作業の頻度を少なくすることができる。すなわち、打込機10の利便性が損なわれる可能性を少なくすることができる。したがって、打込機10の利便性を向上させることができる。
【0057】
また、ドライバブレード29の下降時に、ドライバブレード29のラックとピンホイール50のピンとが衝突することはないため、ピンホイール50やドライバブレード29のブレード本体部29bに掛かる負荷を低減することができ、ピンホイール50やドライバブレード29の寿命を向上させることができる。
【0058】
なお、打込機10では、
図7に示されるように、掛違いが発生した際のドライバブレード29の巻き上げにおいて、通常の巻き上げ時(
図6の掛違いが発生していない巻き上げ時)に比較して、ドライバブレード29を含む打撃部12の上死点の位置が高くなる。具体的には、打込機10では、ドライバブレード29においてラック68のさらに下方側の隣に補助ラック69が設けられており、
図7(b)に示されるように、この補助ラック69がピンホイール50の最終のピン58と係合してドライバブレード29が上死点まで押し上げられる。したがって、上死点における打撃部12の位置が、
図6(b)の掛違いが発生していない通常の巻き上げ時に比べて
図7(b)の掛違いの巻き上げ時の方が高い。その結果、打撃部12に付与される蓄圧室26からの圧縮空気の圧力も掛違いの巻き上げ時の方が通常の巻き上げ時に比べて大きくなる。そして、ピンホイール50の最終のピン58とドライバブレード29の補助ラック69との係合では、ピン58と補助ラック69とが擦り合いながらドライバブレード29がリリースされるため、ピン58と補助ラック69とに掛かる負荷は、他のピンとラックとの係合時に比べて大きい。この課題に対して本実施の形態の打込機10では、種々の対策が施されている。
【0059】
まず、
図3に示されるように、シリンダ27の長さが長くなっている。具体的には、打込機10において蓄圧室26は、中央部分が上下方向(第1方向)M1の他方(上方)側に向かって凸となるお椀状のキャップ23と、中央部分が上下方向(第1方向)M1の一方(下方)側に向かって凸となるお椀状のホルダ24と、が組み合わされて形成されている。また、蓄圧室26は、ホルダ24の上端よりもピストン28の上下方向(第1方向)M1の他方(上方)側に位置するようにキャップ23の内側に配置される第1蓄圧室(付勢部)26aと、第1蓄圧室26aと連通し、第1蓄圧室26aの上下方向M1の一方(下方)側に配置され、かつシリンダ27の側面に隣接するように前記ホルダ24の内側に設けられる第2蓄圧室(付勢部)26bと、を含んでいる。そして、シリンダ27の上下方向M1の上方側の端部は、第1蓄圧室26a内に入り込んでいる。すなわち、シリンダ27の長さが長くなった分を蓄圧室26のうちの上方側の第1蓄圧室26a内に入り込ませている。
【0060】
これにより、
図1に示されるシリンダケース19の長さを変える必要はない。その結果、打込機10の上下方向M1の長さ(高さ)は変えずに長くなったシリンダ27をシリンダケース19内に収めることができる。
【0061】
また、ピンホイール50の最終のピン58とドライバブレード29の補助ラック69とに掛かる負荷が大きいことへの対策として、
図3に示されるように、ピンホイール50の最終のピン58の太さは、他のピンよりも太くなっている。すなわち、最終のピン58の直径は、他のピンの直径よりも大きくなっており、最終のピン58の強度が他のピンの強度より高い。これにより、最終のピン58に掛かる負荷が大きくなってもピン58の破損を低減することができる。
【0062】
また、ドライバブレード29のラックの対策として、
図5(c)に示されるように、補助ラック(第2打撃部側係合部)69と、該補助ラック69と隣り合うラック(第1打撃部側係合部)68と、の距離(ピッチP2)は、複数の第1打撃部側係合部のうちの隣り合う第1打撃部側係合部間の距離(ピッチP1)よりも短くなっている。例えば、補助ラック69と、該補助ラック69と隣り合うラック68と、の距離(ピッチP2)は、ラック68とラック67との間の距離(ピッチP1)よりも短い(P2<P1)。これにより、最終のピン58と補助ラック69との係合によるドライバブレード29の巻き上げ時のドライバブレード29の上昇の距離の割合を少なくして、最終のピン58と補助ラック69とに掛かる負荷を低減することができる。
【0063】
また、上下方向M1における補助ラック69の長さ(幅S2)は、上下方向M1におけるラック68の長さ(幅S1)より長い(S2>S1)。すなわち、補助ラック69の幅S2は、ラック68の幅S1より大きい。これにより、補助ラック69は、他のラック61~68に比べて幅が大きいため、強度が高い。したがって、補助ラック69に掛かる負荷が大きくなっても補助ラック69の破損を低減することができる。
【0064】
さらに、上下方向M1と直交する左右方向(第2方向)R1における補助ラック69の長さ(高さH2)は、左右方向R1におけるラック68の長さ(高さH1)より長い(H2>H1)。すなわち、補助ラック69のブレード本体部29bの基端部29cから頂部69aまでの高さH2は、ラック68のブレード本体部29bの基端部29cから頂部68aまでの高さH1より高い。これにより、補助ラック69は、他のラック61~68に比べて高さが高いため、強度が高い。したがって、補助ラック69に掛かる負荷が大きくなっても補助ラック69の破損を低減することができる。
【0065】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
図8は、打込機10の通常巻き上げ時と掛違い時における時間とモータの電流値との関係を示すグラフである。
図8において、時間T0は、電動モータ15の始動時、時間T1~T2は、電動モータ15の起動状態、時間T3,T4,T7は、電流値の傾きの変化点、時間T5は、ピンホイール50とドライバブレード29との係合が外れた時点、時間T6は、ピンホイール50とドライバブレード29とが再係合した時点をそれぞれ示している。
【0066】
ピンホイール50とドライバブレード29との係合において掛違いが発生すると、例えば、時間T3~T5の区間および時間T7以降の区間で電動モータ15の電流値が高くなる。これは、ドライバブレード29が掛違いの巻き上げによって上昇していき上死点に到達する際にドライバブレード29に掛かる負荷が通常巻き上げの場合より高くなるためである。したがって、電動モータ15の始動からの時間の設定として、例えば、時間T3~T5の区間および時間T7以降の区間において、予め電動モータ15の閾値を設定しておき、電動モータ15の電流値に基づいて掛違いが発生したことを検知する。具体的には、打込機10の制御部82は、電動モータ15の電流値の変化に基づいて掛違いの巻き上げ動作(第2打込み動作)を検知する。その際、制御部82は、例えば、電動モータ15の電流値が予め設定された電流値の閾値TH1,TH2を超えた際に掛違いの巻き上げ動作(第2打込み動作)であることを検知する。
図8のグラフでは、時間T3~T5の区間および時間T7以降の区間において、掛違い時の電流値が予め設定された閾値TH1,TH2よりそれぞれ大きくなっている。一方、時間T3~T5の区間および時間T7以降の区間において、通常巻き上げ時の電流値は、予め設定された閾値TH1,TH2よりそれぞれ小さい。したがって、時間T3~T5の区間および時間T7以降の区間で掛違いの巻き上げ動作が発生したことを検知できる。なお、掛違いの巻き上げ動作(第2打込み動作)が発生したことを検知した際には、作業者に報知することが好ましい。例えば、掛違いの巻き上げ動作が発生していることを検知した場合、
図1に示される打込機10において、装着部22に設けられたパネル22aを制御部82が点滅させることで、掛違いの巻き上げ動作が発生していることを報知することができる。あるいは、掛違いの巻き上げ動作が発生していることを検知した場合、制御部82が電動モータ15の回転を停止させてもよい。
【0067】
なお、掛違いの巻き上げ動作の検知については、電動モータ15の電流値の傾きの変化を用いてもよい。例えば、電流値の傾きがマイナスからプラスに転じた時点をT3(T4)、プラスからマイナスに転じた時点をT5、傾きが小さくなる時点をT7としてこれらT3(T4)~T5の区間、およびT7以降の区間で電動モータ15の電流値の傾きの変化に基づいて、掛違いの巻き上げ動作を検知してもよい。
【0068】
次に、ドライバブレード29の構造の変形例について、
図9および
図10を用いて説明する。
図9および
図10に示されるように、ドライバブレード29には第2打撃部側係合部として、2つの補助ラック69,70が設けられている。具体的には、通常のラック68の下方側に補助ラック69と補助ラック70が設けられている。通常のラック67とラック68との設置ピッチがP1であるのに対してラック68と補助ラック69との設置ピッチはP1より小さなP2となっている(P2<P1)。
【0069】
これにより、ピンホイール50とドライバブレード29との係合において、ピンホイール50の第1番目のピン51がドライバブレード29の第3番目のラック63に係合する掛違いが発生しても、ドライバブレード29を上死点に向けて押し上げることができる。さらに、ドライバブレード29がリリースされた後のピンホイール50のピンとドライバブレード29のラックとの衝突を防ぐことができる。なお、予備ラックの設置数は、1~2個が好ましいが、例えば、3個以上設けられていてもよい。
【0070】
また、本実施の形態の打込機10では、通常のラック68の下方側に少なくとも1つの補助ラック69が設けられているため、掛違いの巻き上げ動作によってドライバブレード29が上死点まで巻き上げられた際のドライバブレード29の高さは、通常の巻き上げ動作時に比べて高くなる。その結果、蓄圧室26から打撃部12に付与される圧縮空気の圧力が高くなり、ドライバブレード29の打込み力も通常の巻き上げ動作時に比べて大きくなる。
【0071】
この場合には、例えば、電動モータ15の電流値の変化に基づいて掛違いが発生していることを制御部82が検知した際に、射出部32に設けられた打込み深さを調整する深さ調整機構を制御部82によって駆動させ、これにより、打込み深さを自動的に浅く調整してもよい。
【0072】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、掛違いの巻き上げ動作として複数の第1打撃部側係合部(通常のラック)の一部が回転部側係合部(ピン)と係合しない第2打込み動作の場合を取り上げたが、複数の第1打撃部側係合部(通常のラック)のうち上下方向M1の最も上方側の第1打撃部側係合部が回転部側係合部(ピン)と係合しない第2打込み動作を掛違いの巻き上げ動作としてもよい。具体的には、ドライバブレード29の第1番目のラック61がピンホイール50のピンと係合しなかった場合の巻き上げ動作を、掛違いの巻き上げ動作としてもよい。
【0073】
また、ピンホイール50において、複数のピンのそれぞれは、ピンホイール50の径方向に沿って突出していてもよい。例えば、ピンホイール50として、ホイールの径方向に沿って複数の歯部が突出した歯車タイプのホイールを採用してもよい。
【0074】
また、ドライバブレード29としては、該ドライバブレード29のラックのうち、最終ラックとして回転可能なローラが設けられたラックを有するドライバブレード29を採用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…打込機(作業機)、11…ハウジング、12…打撃部、13…ノーズ部、14…電源部、15…電動モータ(モータ)、16…減速機構、17…巻き上げ機構、18…蓄圧容器、19…シリンダケース、20…ハンドル、21…モータケース、22…装着部、22a…パネル、23…キャップ、24…ホルダ、25…ヘッドカバー、26…蓄圧室(付勢部)、26a…第1蓄圧室(付勢部)、26b…第2蓄圧室(付勢部)、27…シリンダ、27a…シリンダキャップ、28…ピストン、29…ドライバブレード、29a…先端、29b…ブレード本体部、29c…基端部、30…被打込材、31…バンパ支持部、32…射出部、33…筒部、35…バンパ、36…ガイド孔、37…射出路、39…ロータ、40…ステータ、41…ロータ軸、42…軸受、43…ギヤケース、44…動力伝達軸、45…軸受、46…回転軸、47…出力要素、48,49…軸受、50…ピンホイール(回転部)、50a…切欠部、51,52,53,54,55,56,57,58…ピン(回転部側係合部)、61,62,63,64,65,66,67,68…ラック(打撃部側係合部、第1打撃部側係合部)、61a,62a…頂部、69,70…補助ラック(打撃部側係合部、第2打撃部側係合部)、75…トリガ、76…収容ケース、77…マガジン、78…釘(止具)、79…プッシュレバー、80…弾性部材、81…ストッパ、82…制御部、83…モータ基板、84…シール部材、85…トリガセンサ、90…ドライバブレード、91,92,93,94,95,96,97,98…ラック、A1,A2…中心線、D1…打込方向、D2…復帰方向、E1…回転方向、J1…衝突状態、M1…上下方向(第1方向)、N1…前後方向、P1,P2…ピッチ、R1…左右方向(第2方向)、T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7…時間、S1,S2…幅、H1,H2…高さ、TH1,TH2…閾値