(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094790
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211570
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正行
(72)【発明者】
【氏名】江崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】志村 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敏宏
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181DD07
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】自車両に対してあおり運転を行う後方車両の存在及び対処法を運転者に認識させることができる運転支援システムを提供すること。
【解決手段】運転支援システム1は、自車両の後方を走行する後方車両を認識する車載外界認識装置と、自車両の後方の画像が映し出される電子ルームミラーと、音声又は画像によるメッセージを出力するメッセージ出力装置と、後方車両のうち警戒対象条件を満たす車両を警戒対象として認識し、この警戒対象の存在を自車両の運転者に報知する報知制御装置と、を備える。報知制御装置は、警戒対象を認識した場合、電子ルームミラーに映し出される警戒対象の画像に所定のハイライト画像を重畳表示し、警戒対象を所定の第1時間以上認識し続けた場合、メッセージ出力装置によってアドバイスメッセージを出力させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後方を走行する後方車両を認識する外界認識装置と、
前記自車両の後方の像が映し出される後方表示部と、
音声又は画像によるメッセージを出力するメッセージ出力装置と、
前記後方車両のうち所定条件を満たす車両を警戒対象として認識し、当該警戒対象の存在を前記自車両の運転者に報知する報知制御装置と、を備える運転支援システムであって、
前記報知制御装置は、前記警戒対象を認識した場合、前記後方表示部に映し出される警戒対象の像に所定のハイライト画像を重畳表示し、前記警戒対象を所定の第1時間以上認識し続けた場合、前記メッセージ出力装置によってアドバイスメッセージを出力させることを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
車外の機関と無線による通信を行う車載通信装置をさらに備え、
前記報知制御装置は、前記警戒対象を前記第1時間より長い第2時間以上認識し続けた場合、前記車載通信装置によって前記機関へ通報を行うことを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記運転者による操作入力を受け付ける操作入力受付装置をさらに備え、
前記報知制御装置は、前記警戒対象を前記第2時間以上認識し続けた場合、前記メッセージ出力装置によって通報要否メッセージを出力させた後、所定の第3時間が経過するまでの間に前記操作入力受付装置によって通報要求入力を受け付けた場合又は前記第3時間が経過するまでの間に前記操作入力受付装置によって通報キャンセル入力を受け付けなかった場合、前記車載通信装置によって前記機関へ通報を行うことを特徴とする請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記報知制御装置は、前記外界認識装置による認識結果に基づいて前記警戒対象の危険度合いを算出し、当該危険度合いに応じて前記ハイライト画像の形態を変化させることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記運転者の視線を検出する視線検出装置をさらに備え、
前記報知制御装置は、前記後方表示部に前記ハイライト画像を表示させた後、前記視線検出装置によって前記後方表示部へ向けられた前記視線を検出した場合、前記ハイライト画像を消去するか又は前記ハイライト画像の形態を変化させることを特徴とする請求項4に記載の運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システムに関する。より詳しくは、自車両の後方を走行する後方車両のうち所定条件を満たす車両を警戒対象として認識し、この警戒対象の存在を運転者に報知する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現へ向けて、運転者による周囲の状態の認知を支援する運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
特許文献1に示された運転支援技術では、自車両の後方を走行する後方車両が所定の警報条件が成立すると判定した場合、電子インナーミラーに枠状の画像を表示させる後方車両接近警報を行うことにより、運転者に対し所謂あおり運転を行っている可能性のある後方車両の存在を認識させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1に示された運転支援技術では、運転者は後方車両接近警報を介してあおり運転を行う後方車両の存在を認識することができるものの、運転者は具体的な対処方法まで知ることができない。
【0006】
本発明は、自車両に対してあおり運転を行う後方車両の存在及び対処法を運転者に認識させることができる運転支援システムを提供することを目的としたものであり、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る運転支援システム(例えば、後述の運転支援システム1)は、自車両(例えば、後述の車両V)の後方を走行する後方車両を認識する外界認識装置(例えば、後述の車載外界認識装置2)と、前記自車両の後方の像が映し出される後方表示部(例えば、後述の電子ルームミラー3Cや車外後写鏡3R,3L等)と、音声又は画像によるメッセージを出力するメッセージ出力装置(例えば、後述のメッセージ出力装置43)と、前記後方車両のうち所定条件(例えば、後述の警戒対象条件A~Fの何れか)を満たす車両を警戒対象として認識し、当該警戒対象の存在を前記自車両の運転者に報知する報知制御装置(例えば、後述の報知制御装置6)と、を備え、前記報知制御装置は、前記警戒対象を認識した場合、前記後方表示部に映し出される警戒対象の像(例えば、後述の画像9)に所定のハイライト画像(例えば、後述のハイライト画像91)を重畳表示し、前記警戒対象を所定の第1時間以上認識し続けた場合、前記メッセージ出力装置によってアドバイスメッセージを出力させることを特徴とする。
【0008】
(2)この場合、前記運転支援システムは、車外の機関と無線による通信を行う車載通信装置(例えば、後述の車載通信装置7)をさらに備え、前記報知制御装置は、前記警戒対象を前記第1時間より長い第2時間以上認識し続けた場合、前記車載通信装置によって前記機関へ通報を行うことが好ましい。
【0009】
(3)この場合、前記運転支援システムは、前記運転者による操作入力を受け付ける操作入力受付装置(例えば、後述の操作入力受付装置41)をさらに備え、前記報知制御装置は、前記警戒対象を前記第2時間以上認識し続けた場合、前記メッセージ出力装置によって通報要否メッセージを出力させた後、所定の第3時間が経過するまでの間に前記操作入力受付装置によって通報要求入力を受け付けた場合又は前記第3時間が経過するまでの間に前記操作入力受付装置によって通報キャンセル入力を受け付けなかった場合、前記車載通信装置によって前記機関へ通報を行うことが好ましい。
【0010】
(4)この場合、前記報知制御装置は、前記外界認識装置による認識結果に基づいて前記警戒対象の危険度合いを算出し、当該危険度合いに応じて前記ハイライト画像の形態を変化させることが好ましい。
【0011】
(5)この場合、前記運転支援システムは、前記運転者の視線を検出する視線検出装置(例えば、後述の視線検出装置46)をさらに備え、前記報知制御装置は、前記後方表示部に前記ハイライト画像を表示させた後、前記視線検出装置によって前記後方表示部へ向けられた前記視線を検出した場合、前記ハイライト画像を消去するか又は前記ハイライト画像の形態を変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明において報知制御装置は、自車両の後方を走行する後方車両のうち所定条件を満たす車両を警戒対象として認識した場合、後方表示部に映し出される警戒対象の像に所定のハイライト画像を重畳表示することにより、運転者に対しあおり運転を行う警戒対象の存在を認識させ、ひいては運転者に対し適切な対処を促すことができる。また報知制御装置は、ハイライト画像を表示した後、警戒対象を第1時間以上認識し続けた場合、メッセージ出力装置によってアドバイスメッセージを出力させる。よって本発明によれば、運転者は、警戒対象の存在を認識した後アドバイスメッセージを介して適切な対処法を知ることができるので、あおり運転による被害から回避することができ、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することもできる。
【0013】
(2)本発明において、報知制御装置は、警戒対象を第1時間より長く定められた第2時間以上認識し続けた場合、車載通信装置によって所定の機関へ通報を行う。これによりアドバイスメッセージを出力させた後もなお状況が改善しない場合、所定の機関へ自動で通報されるので、あおり運転による被害を軽減したり防いだりすることができる。
【0014】
(3)本発明において、報知制御装置は、警戒対象を第2時間以上認識し続けた場合、通報要否メッセージを出力し、運転者に対し所定の機関への通報の要否を問う。その後報知制御装置は、第3時間が経過するまでの間に運転者からの通報要求入力を受け付けた場合、所定の機関へ自動で通報する。また報知制御装置は、第3時間が経過するまでの間に運転者からの通報キャンセル入力を受け付けなかった場合、すなわち通報要否メッセージを出力してから第3時間が経過するまでの間に、運転者から通報の要否に対する明確な意思が示されなかった場合も、所定の機関へ自動で通報する。よって本発明によれば、運転者が警戒対象に対する対応を行うことによって、通報の要否に対する明確な意思を示す余裕が無い場合であっても、自動で所定の機関へ通報することができる。
【0015】
(4)本発明において、報知制御装置は、警戒対象の危険度合いを算出し、この危険度合いに応じてハイライト画像の形態を変化させる。これにより運転者は、後方表示部に表示されるハイライト画像を視ることによって、警戒対象の存在だけでなく危険度合いも認識できる。
【0016】
(5)本発明において、報知制御装置は、後方表示部にハイライト画像を表示させた後、この後方表示部へ向けられた運転者の視線を検出した場合、すなわち運転者が後方表示部を目視した場合、ハイライト画像を消去するかその形態を変化させる。よって本発明によれば、運転者が警戒対象の存在を認識した後もなおハイライト画像を表示し続けることにより、運転者が煩わしさを覚えることを防ぐことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援システム及びこの運転支援システムが搭載された車両の構成を模式的に示す図である。
【
図2】報知制御装置における報知通報処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【
図3】電子ルームミラーを運転者から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る運転支援システム1について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る運転支援システム1及びこの運転支援システム1が搭載された自車両V(以下、単に「車両V」とも言う)の構成を模式的に示す図である。なお以下では、車両Vは、運転者が着座する運転席が、進行方向に沿って視て車幅方向右側に設けられた所謂右ハンドルの四輪車両である場合について説明するが、本発明はこれに限らない。車両は、運転席が進行方向に沿って視て車幅方向左側に設けられた所謂左ハンドルの四輪車両であってもよい。また以下では、所謂左側通行(すなわち、車両は道路の中央から左側を通行しなければならない)が定められている場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
【0020】
運転支援システム1は、車両Vの後方を走行する後方車両のうち所定条件を満たす車両を警戒対象として認識し、この警戒対象の存在を車両Vの運転者に報知することによって運転者による安全な運転を支援するものである。なお以下では、運転支援システム1を
図1に示すような四輪自動車である車両Vに搭載した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。本発明に係る運転支援システムは、トラックや鞍乗型車両等の四輪自動車以外の車両に搭載してもよい。また本実施形態において交通参加者とは、車両や歩行者等、各々の意思に基づいて移動する者をいう。
【0021】
運転支援システム1は、車両Vの周囲(進行方向前方、進行方向後方、及び両側方を含む)に存在する交通参加者(以下、「周囲交通参加者」とも言う)及び車両Vの周囲の交通環境を認識する車載外界認識装置2と、運転者が視認可能な位置に設けられかつ車両Vの後方の画像が映し出される電子ルームミラー3Cと、運転者による操作入力を受け付けかつ運転者へ各種情報を提供するマンマシンインターフェース4(以下、「HMI(Human Machine Interface)」との略称で表記する場合もある)と、車載外界認識装置2による認識結果やHMI4によって受け付けた操作入力等に基づいて後述の警戒対象に関する情報を運転者に報知する報知制御装置6と、車外の所定機関と無線による通信を行う車載通信装置7と、を備える。
【0022】
車載外界認識装置2は、カメラユニット21a,21bと、複数(例えば、5つ)のライダユニット22a,22b,22c,22d,22eと、複数(例えば、5つ)のレーダユニット23a,23b,23c,23d,23eと、周囲認識装置24と、ナビゲーション装置25と、車外集音マイク26と、を備える。
【0023】
前方カメラユニット21a及び後方カメラユニット21bは、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラを備え、車両Vの進行方向前方及び進行方向後方を撮影する。これらカメラユニット21a,21bは、それぞれ進行方向前方側及び進行方向後方側へ向けた状態で、例えば車両Vのルーフの車室内に取り付けられている。これらカメラユニット21a,21bによって撮影された画像は、周囲認識装置24へ送信される。
【0024】
ライダユニット22a~22eは、それぞれパルス状に発光するレーザー照射に対する対象からの散乱光を測定することにより、車両Vの周囲の対象を検出するライダ(Light Detection and Ranging(LIDAR))である。第1ライダユニット22aは、車両Vの前部のうち進行方向に沿って視て右隅側に設けられ、車両Vの周囲の前方やや右側の対象を検出する。第2ライダユニット22bは、車両Vの前部のうち進行方向に沿って視て左隅側に設けられ、車両Vの周囲の前方やや左側の対象を検出する。第3ライダユニット22cは、車両Vの後部のうち車幅方向中央に設けられ、車両Vの周囲の後方の対象を検出する。第4ライダユニット22dは、車両Vの右側部のうち後部側に設けられ、車両Vの周囲の右側方やや後方側の対象を検出する。第5ライダユニット22eは、車両Vの左側部のうち後部側に設けられ、車両Vの周囲の左側方やや後方側の対象を検出する。これらライダユニット22a~22eの検出信号は、周囲認識装置24へ送信される。
【0025】
レーダユニット23a~23eは、それぞれミリ波照射に対する対象物からの反射波を測定することにより、車両Vの周囲の対象を検出するミリ波レーダである。第1レーダユニット23aは、車両Vの前部のうち進行方向に沿って視て右隅側に設けられ、車両Vの周囲の前方やや右側の対象を検出する。第2レーダユニット23bは、車両Vの前部のうち進行方向に沿って視て左隅側に設けられ、車両Vの周囲の前方やや左側の対象を検出する。第3レーダユニット23cは、車両Vの前部のうち車幅方向中央に設けられ、車両Vの周囲の前方の対象を検出する。第4レーダユニット23dは、車両Vの後部のうち進行方向に沿って視て右隅側に設けられ、車両Vの周囲の後方やや右側の対象を検出する。第5レーダユニット23eは、車両Vの後部のうち進行方向に沿って視て左隅側に設けられ、車両Vの周囲の後方やや左側の対象を検出する。これらレーダユニット23a~23eの検出信号は、周囲認識装置24へ送信される。
【0026】
車外集音マイク26は、車両Vの周囲で発生する音を電気信号に変換することによって車外音データを生成し、これを周囲認識装置24へ送信する。
【0027】
周囲認識装置24は、これらカメラユニット21a,21b、ライダユニット22a~22e、レーダユニット23a~23e、及び車外集音マイク26等による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより、周囲交通参加者や交通参加者以外の物標(すなわち、障害物、道路、車線、及び標識等)等を認識するとともに、各周囲交通参加者の種別及び移動状態(すなわち、位置、移動方向、移動速度、及び移動加速度等)に関する情報や物標の位置、種別、及び内容等に関する情報を含む周囲認識情報を取得する。周囲認識装置24は、取得した周囲認識情報を報知制御装置6へ送信する。
【0028】
ここで周囲認識装置24は、車外集音マイク26から送信される車外音データに対し周波数解析を行うことにより、警音器を作動させている周囲交通参加者を特定することができる。周囲認識装置24は、カメラユニット21a,21bで取得した画像に基づいて、周囲交通参加者によるパッシング(すなわち、周囲交通参加者の運転者が意図的にヘッドライトを短時間で点滅させる行為)の有無を判定することができる。周囲認識装置24は、車外音データに対し周波数解析を行うことにより、周囲交通参加者によるサイレン音の有無を判定し、ひいては周囲交通参加者が緊急車両であるか否かを判定することができる。また周囲認識装置24は、カメラユニット21a,21bで取得した画像に基づいて周囲交通参加者による警光灯の点灯の有無を判別することにより、この周囲交通参加者が緊急車両であるか否かを判定することもできる。
【0029】
ナビゲーション装置25は、例えば、GNSS衛星から受信した信号に基づいて現在の車両Vの位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。ナビゲーション装置25は、これらGNSS受信機や記憶装置等を利用して取得した車両Vの現在位置や周囲の道路の種別等に関する交通環境情報を報知制御装置6へ送信する。
【0030】
電子ルームミラー3Cは、その画像表示面に例えば後方カメラユニット21bによって撮影された車両Vの後方の画像を映し出すディスプレイであり、車両Vの車室内のうち運転者から視てやや上方に設けられる。左車外後写鏡3L及び右車外後写鏡3Rは、それぞれ車両Vの車外の運転者から視た左右両側に設けられ、その鏡面に車両Vの後側方の鏡像を映し出す。運転者は、これら電子ルームミラー3Cの画像表示面や車外後写鏡3R,3Lの鏡面を目視することによって車両Vの後方の状態を確認することができる。
【0031】
HMI4は、運転者による操作入力を受け付ける操作入力受付装置41と、運転者が視覚又は聴覚によって認知可能な態様で作動することによって運転者に対し各種情報を提供するメッセージ出力装置43と、運転者が触覚によって認知可能な態様で作動することによって運転者に対し各種情報を提供するシート振動装置45と、運転者の視線の向きを検出する視線検出装置46と、を備える。
【0032】
操作入力受付装置41は、後述のディスプレイ432と一体に設けられ運転者の指による操作入力を受け付けるタッチパネル411と、運転者が発する音声による操作入力を受け付ける音声入力装置412と、を備える。
【0033】
メッセージ出力装置43は、運転者が聴覚によって認識可能な音声によるメッセージを出力する音声出力装置431と、運転者が視覚によって認識可能な画像によるメッセージを出力するディスプレイ432と、を備える。
【0034】
シート振動装置45は、運転者が着座する運転席に設けられた複数の振動子(図示せず)と、これら振動子を振動させる駆動装置(図示せず)と、を備える。
【0035】
視線検出装置46は、運転者の顔の画像を撮像する車内カメラ(図示せず)と、車内カメラによって取得された画像に基づいて運転者の視線の向きを検出する画像処理装置(図示せず)と、を備える。
【0036】
車載通信装置7は、車外の所定の登録機関(例えば、警察、保険会社、及びロードサービス等)と無線による通信を行う。車載通信装置7は、後述の報知制御装置6からの指令に応じて登録機関へ通報したり各種データを送信したりする。
【0037】
報知制御装置6は、車載外界認識装置2によって認識される1又は複数の後方車両のうち所定の警戒対象条件を満たす車両を警戒対象として認識し、この警戒対象の存在を運転者に報知したり上記登録機関へ通報したりする。
【0038】
より具体的には、報知制御装置6は、以下の手順によって警戒対象を認識する。始めに報知制御装置6は、車載外界認識装置2から送信される周囲認識情報に基づいて、車両Vの周囲に存在する1又は複数の周囲交通参加者の中から、車両Vの後方を走行しかつ緊急車両でない車両を後方車両として抽出する。すなわち報知制御装置6は、車両Vの後方を走行する車両がパトロールカーや救急車等の緊急車両である場合、後述の警戒対象条件を満たす場合であっても警戒対象として認識しない。次に報知制御装置6は、周囲認識情報に基づいて、抽出した後方車両毎に以下で説明する複数の警戒対象条件A~Fを満たすか否かを判定する。
【0039】
以下で説明するように、これら警戒対象条件A~Fは、対象とする後方車両と車両Vとの接触リスクが高くなるほど小さくなるリスク指標値とこのリスク指標値に対する閾値との比較に基づいて定められる。また以下では、下記式(1)によって後方車両毎に定義される車間時間THW_backをリスク指標値とした場合について説明する。なお下記式(1)において、“D_back”は、後方車間距離、すなわち車両Vの後端部と後方車両の前端部との間の距離に相当する。下記式(1)において、“V_back”は、後方車両の車速に相当する。
THW_back=D_back/V_back (1)
【0040】
警戒対象条件Aは、上記式(1)によってリスク指標値として後方車両毎に定義される車間時間THW_backが予め定められた第1時間閾値THW_1以下である状態が所定時間以上継続すること、である。なお渋滞時は後方車両の車速V_backが低くなる。このため報知制御装置6は、渋滞時には警戒対象条件Aの成否の判定を省略してもよい。
【0041】
警戒対象条件Bは、上記式(1)によってリスク指標値として定義される車間時間THW_backが第1時間閾値THW_1より長く定められた第2時間閾値THW_2以下でありかつ後方車両が車両Vに対し車幅方向右側へ所定距離以上オフセットした状態が所定時間以上継続すること、である。なお右側通行が定められている場合、警戒対象条件Bは、車間時間THW_backが第2時間閾値THW_2以下でありかつ後方車両が車両Vに対し車幅方向左側へ所定距離以上オフセットした状態が所定時間以上継続すること、である。
【0042】
警戒対象条件Cは、上記式(1)によってリスク指標値として定義される車間時間THW_backが第1時間閾値THW_1より長く定められた第3時間閾値THW_3以下である状態が所定時間以上継続しかつ後方車両が断続的にパッシング又は方向指示器の点滅を行うこと、である。
【0043】
警戒対象条件Dは、上記式(1)によってリスク指標値として定義される車間時間THW_backが第1時間閾値THW_1より長く定められた第4時間閾値THW_4以下である状態が所定時間以上継続しかつ後方車両のナンバープレートに違法な加工(例えば、折り曲げ等)が施されていること、である。
【0044】
警戒対象条件Eは、上記式(1)によってリスク指標値として定義される車間時間THW_backが第1時間閾値THW_1より長く定められた第5時間閾値THW_5以下である状態が所定時間以上継続しかつ後方車両が車両Vの車線変更に追従するように車線変更を行うこと、である。
【0045】
警戒対象条件Fは、上記式(1)によってリスク指標値として定義される車間時間THW_backが第1時間閾値THW_1より長く定められた第6時間閾値THW_6以下である状態が所定時間以上継続しかつ後方車両が断続的に警音器を鳴らすこと、である。
【0046】
報知制御装置6は、以上のような複数の警戒対象条件A~Fのうち、少なくとも何れか1つを満たす後方車両を警戒対象として認識する。
【0047】
以上のように本実施形態では、上記式(1)によって定義される車間時間THW_backをリスク指標値として用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。より具体的には、後方車間距離D_backや、この後方車間距離D_backを車両Vと後方車両との相対速度で除算して得られる衝突余裕時間TTC等をリスク指標値として用いてもよい。
【0048】
図2は、警戒対象の存在を運転者に報知したり登録機関に通報したりする報知通報処理の手順を示すフローチャートである。
図2に示す処理は、報知制御装置6において所定の制御周期の下で繰り返し実行される。
【0049】
始めにステップST1では、報知制御装置6は、警戒対象を認識しているか否かを判定する。報知制御装置6は、ステップST1の判定結果がNOである場合、
図2に示す報知通報処理を終了し、ステップST1の判定結果がYESである場合、ステップST2に移る。
【0050】
図3は、電子ルームミラー3Cを運転者から視た図である。以下では、
図3に示すように、報知制御装置6によって警戒対象として認識される後方車両の画像9が電子ルームミラー3Cの画像表示面に映し出される場合について説明する。より具体的には、以下では、電子ルームミラー3Cの画像表示面に画像9として映し出される後方車両は上述の警戒対象条件Aを満たすことによって警戒対象として認識されている場合を説明する。
【0051】
ステップST2では、報知制御装置6は、認識した警戒対象の存在を運転者に認識させるべく、電子ルームミラー3Cの画像表示面に警戒対象の存在を強調するための所定のハイライト画像を重畳表示し、ステップST3に移る。
【0052】
図4は、ハイライト画像91の表示例を示す図である。報知制御装置6は、
図4に示すような円環状の形状を有するハイライト画像91を、電子ルームミラー3Cのうち警戒対象の画像9が映し出される部分に重畳表示させる。これにより運転者は、電子ルームミラー3Cを視るだけで警戒対象の存在を速やかかつ容易に認識することができる。
【0053】
なおこの際、報知制御装置6は、周囲認識情報に基づいて警戒対象の車両Vに対する危険度合いを算出し、危険度合いに応じてハイライト画像91の形態(色彩、形状、大きさ、及び点滅の有無等)を変化させてもよい。より具体的には、報知制御装置6は、警戒対象の車両Vに対する車間時間THW_backが短くなるほど危険度合いを高くする。また例えば報知制御装置6は、危険度合いが高くなるほど電子ルームミラー3Cに映し出されるハイライト画像91が目立つように、ハイライト画像91の形態を変化させる。
【0054】
また報知制御装置6は、電子ルームミラー3Cにハイライト画像91を表示する場合、同時にシート振動装置45や音声出力装置431を作動させることによって警戒対象の存在を運転者に報知してもよい。より具体的には、報知制御装置6は、ハイライト画像91の明滅と同期してシート振動装置45を作動させることにより、運転者に対し警戒対象の存在を報知してもよい。また報知制御装置6は、音声出力装置431を作動させることによって、運転者の後方から警戒対象の存在を強調する効果音を出力させることにより、運転者に対し警戒対象の存在を報知してもよい。
【0055】
また報知制御装置6は、ステップST2において初めてハイライト画像91を電子ルームミラー3Cに表示させた後、視線検出装置46によって電子ルームミラー3Cへ向けられた運転者の視線を検出した場合、ハイライト画像91を消去したり、ハイライト画像91が目立たなくなるようにその形態を変化させたりしてもよい。なお上述のようにシート振動装置45を作動させる場合、報知制御装置6は、ハイライト画像91を消去した後もなおシート振動装置45は振動の強度を弱めて作動させ続けてもよい。
【0056】
ステップST3では、報知制御装置6は、ハイライト画像91を初めて表示してから又は警戒対象を初めて認識してから所定の第1時間以上、警戒対象を認識し続けたか否かを判定する。報知制御装置6は、ステップST3の判定結果がNOである場合、
図2に示す報知通報処理を終了し、ステップT3の判定結果がYESである場合、ステップST4に移る。
【0057】
ステップST4では、報知制御装置6は、警戒対象を第1時間以上認識し続けたことに応じて、メッセージ出力装置43(すなわち、音声出力装置431やディスプレイ432等)によって警戒対象からのあおり運転による被害から回避するためのアドバイスメッセージを出力させた後、ステップST5に移る。この際、報知制御装置6は、周囲認識情報や交通環境情報に応じた具体的なアドバイスメッセージを生成し、メッセージ出力装置43に出力させることが好ましい。すなわち、報知制御装置6は、周囲認識情報や交通環境情報に基づいて、車両Vの前方における安全な退避先(隣接車線、沿線の店舗、及び脇道等)を具体的に特定した上で、この安全な退避先へ自車両を退避し、警戒対象を自車両の先へ行かせる旨のアドバイスメッセージを出力させることが好ましい。
【0058】
ステップST5では、報知制御装置6は、ハイライト画像91を初めて表示してから又は警戒対象を初めて認識してから上述の第1時間よりも長く設定された第2時間以上、警戒対象を認識し続けたか否かを判定する。報知制御装置6は、ステップST5の判定結果がNOである場合、
図2に示す報知通報処理を終了し、ステップST5の判定結果がYESである場合、ステップST6に移る。
【0059】
ステップST6では、報知制御装置6は、警戒対象を第2時間以上認識し続けたことに応じて、車載通信装置7を作動させることによって予め定められた登録機関へ、警戒対象が車両Vに対し継続してあおり運転を行っている旨を通報し、
図2に示す報知通報処理を終了する。なおこの際、報知制御装置6は、登録機関へ通報を行う場合、車両Vの現在位置に関する情報や、カメラユニット21bによって取得した車両Vの後方の画像等を併せて登録機関へ送信することが好ましい。また報知制御装置6は、登録機関へ通報を行っている間に警戒対象が認識されなくなった場合、すなわち後方車両によるあおり運転が解消された場合、その旨を登録機関へ通知することが好ましい。
【0060】
また本実施形態では、報知制御装置6は、警戒対象を第2時間以上認識し続けた場合、自動で登録機関へ通報する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。すなわち報知制御装置6は、警戒対象を第2時間以上認識し続けた場合、運転者による通報の意思を確認してから登録機関へ通報してもよい。この場合、報知制御装置6は、警戒対象を第2時間以上認識し続けた場合、メッセージ出力装置43によって運転者に通報の要否を問う通報要否メッセージを出力させた後、所定の第3時間が経過するまでの間に操作入力受付装置41によって運転者による通報要求入力を受け付けた場合(すなわち、運転者が通報要求意思を明確に示した場合に相当)、車載通信装置7を作動させることによって上記登録機関へ、警戒対象が車両Vに対し継続してあおり運転を行っている旨を通報する。また報知制御装置6は、メッセージ出力装置43によって上記通報要否メッセージを出力させた後、上記第3時間が経過するまでの間に操作入力受付装置41によって操作入力受付装置41によって運転者による通報キャンセル入力を受け付けなかった場合(すなわち、第3時間が経過するまでの間に運転者が通報拒否意思を明確に示さなかった場合に相当)、車載通信装置7を作動させることによって上記登録機関へ、警戒対象が車両Vに対し継続してあおり運転を行っている旨を通報する。
【0061】
本実施形態に係る運転支援システム1によれば、以下の効果を奏する。
(1)報知制御装置6は、自車両の後方を走行する後方車両のうち所定の警戒対象条件A~Fの何れかを満たす車両を警戒対象として認識した場合、電子ルームミラー3Cに映し出される警戒対象の画像9に所定のハイライト画像91を重畳表示することにより、運転者に対しあおり運転を行う警戒対象の存在を認識させ、ひいては運転者に対し適切な対処を促すことができる。また報知制御装置6は、ハイライト画像91を表示した後、警戒対象を第1時間以上認識し続けた場合、メッセージ出力装置43によってアドバイスメッセージを出力させる。よって運転支援システム1によれば、運転者は、警戒対象の存在を認識した後アドバイスメッセージを介して適切な対処法を知ることができるので、あおり運転による被害から回避することができ、ひいては持続可能な輸送システムの発展に寄与することもできる。
【0062】
(2)報知制御装置6は、警戒対象を第1時間より長く定められた第2時間以上認識し続けた場合、車載通信装置7によって所定の登録機関へ通報を行う。これによりアドバイスメッセージを出力させた後もなお状況が改善しない場合、登録機関へ自動で通報されるので、あおり運転による被害を軽減したり防いだりすることができる。
【0063】
(3)報知制御装置6は、警戒対象を第2時間以上認識し続けた場合、通報要否メッセージを出力し、運転者に対し登録機関への通報の要否を問う。その後報知制御装置6は、第3時間が経過するまでの間に運転者からの通報要求入力を受け付けた場合、登録機関へ自動で通報する。また報知制御装置6は、第3時間が経過するまでの間に運転者からの通報キャンセル入力を受け付けなかった場合、すなわち通報要否メッセージを出力してから第3時間が経過するまでの間に、運転者から通報の要否に対する明確な意思が示されなかった場合も、登録機関へ自動で通報する。よって運転支援システム1によれば、運転者が警戒対象に対する対応を行うことによって、通報の要否に対する明確な意思を示す余裕が無い場合であっても、自動で登録機関へ通報することができる。
【0064】
(4)本発明において、報知制御装置は、警戒対象の危険度合いを算出し、この危険度合いに応じてハイライト画像の形態を変化させる。これにより運転者は、後方表示部に表示されるハイライト画像を視ることによって、警戒対象の存在だけでなく危険度合いも認識できる。
【0065】
(5)報知制御装置6は、電子ルームミラー3Cにハイライト画像91を表示させた後、この電子ルームミラー3Cへ向けられた運転者の視線を検出した場合、すなわち運転者が電子ルームミラー3Cを目視した場合、ハイライト画像91を消去するかその形態を変化させる。よって運転支援システム1によれば、運転者が警戒対象の存在を認識した後もなおハイライト画像91を表示し続けることにより、運転者が煩わしさを覚えることを防ぐことを防止することができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【0067】
例えば上記実施形態では、報知制御装置6は、電子ルームミラー3Cを後方表示部として、この電子ルームミラー3Cにハイライト画像91を表示する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。報知制御装置6は、車外後写鏡3R,3Cや電子ルームミラー3Cの代替として設けられる車内後写鏡等を後方表示部として、これら車外後写鏡3R,3Cや車内後写鏡等に映し出される警戒対象の鏡像にハイライト画像91を重畳表示してもよい。また報知制御装置6は、ディスプレイ432に車両Vの後方の画像を表示させる場合、このディスプレイ432を後方表示部として、このディスプレイ432に映し出される警戒対象の画像にハイライト画像91を重畳表示してもよい。
【0068】
また例えば上記実施形態では、車載外界認識装置2は、カメラユニット21a~21bやライダユニット22a~22e等、車両Vと共に移動する車載センサを利用して取得した情報に基づいて車両Vの周囲交通参加者や交通環境を認識したが、本発明はこれに限らない。車載外界認識装置2は、車両Vと周囲交通参加者との間の車車間通信や、車両Vと交通管理サーバとの間の無線による通信等を介して取得した情報に基づいて車両Vの周囲交通参加者や交通環境を認識してもよい。
【符号の説明】
【0069】
V…車両
1…運転支援システム
2…車載外界認識装置(外界認識装置)
3C…電子ルームミラー(後方表示部)
3R、3L…車外後写鏡(後方表示部)
4…HMI
41…操作入力受付装置
43…メッセージ出力装置
45…シート振動装置
46…視線検出装置
6…報知制御装置
7…車載通信装置