(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094795
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ろう付け装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B23K3/00 310F
B23K3/00 310B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211576
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木下 文人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ろう材の押圧によるワークの変形を防止する。
【解決手段】略平行に配された複数本の金属棒を束ねたワークを保持可能なチャックユニットと、前記ワークを接合するろう材を供給する供給手段およびこの供給手段を移動させる移動手段を有する供給ユニットと、前記ワークおよびろう材をバーナーにより加熱する加熱ユニットと、前記移動手段の駆動を制御可能な制御部を備えたろう付け装置において、前記制御部は、所定の加熱範囲内に前記ワークおよびろう材が到達後、前記バーナーを駆動させるとともに、ろう材およびワークを所定の時間加熱した後、溶解したろう材をワークに向けて移動させるよう前記供給ユニットの駆動を制御していることを特徴とするろう付け装置による。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平行に配された複数本の金属棒を束ねたワークを保持可能なチャックユニットと、
前記ワークを接合するろう材を供給する供給手段およびこの供給手段を移動させる移動手段を有する供給ユニットと、
前記ワークおよびろう材をバーナーにより加熱する加熱ユニットと、
前記移動手段の駆動を制御可能な制御部を備えたろう付け装置において、
前記制御部は、所定の加熱範囲内に前記ワークおよびろう材が到達後、前記バーナーを駆動させるとともに、ろう材およびワークを所定の時間加熱した後、溶解したろう材をワークに向けて移動させるよう前記供給ユニットの駆動を制御していることを特徴とするろう付け装置。
【請求項2】
前記供給手段は、ろう材が貫通する供給ノズルと、前記供給ノズルに対してろう材を進退させる出代調節手段と、前記ろう材が供給ノズルの先端から突出していることを判別可能な検出センサとを有し、
前記出代調節手段は、前記ろう材を前記検出センサが十分検知できるまで突き出す工程と、検出センサがろう材を検出しなくなるまで引き込む工程を経過後、ろう材を所定の寸法突き出すように制御されていることを特徴とする請求項1に記載のろう付け装置。
【請求項3】
前記チャックユニットは、前記ワークを保持するチャック爪と、このチャック爪を所定の角度揺動させる揺動手段を有し、
前記揺動手段は、加熱ユニットによるワークの加熱時、前記チャック爪を保持されたワークの上面が前記ろう材に向くよう傾斜させる一方、チャック爪にワークを設置する時、チャック爪を水平に保つことを特徴とする請求項1に記載のろう付け装置。
【請求項4】
前記チャックユニットには、加熱ユニットによるワークの加熱時、ワークを回転させる回転駆動源が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のろう付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略平行に配された複数本の金属棒を接合するろう付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数個の金属部品を接合する方法として、特許文献1に示されるろう付けが知られている。このろう付けは、複数個の金属部品を接触させた状態で固定した状態で当該接触部分にろう材を当接させており、その後、金属部分およびろう材を加熱するように構成されている。これにより、溶融したろう材が金属部品同士を覆うとともに前記ろう材が冷めて凝固することで金属部品が接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のろう付けは、前述のように個体状態のろう材をワークに押し当てた状態で加熱していた。このため、線材等、強固に固定することができないワークをろう付けする際、ろう材からの外力でワークがずれたり変形したりする等の問題が生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、接合前のワークがずれないように構成されたろう付け装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明は、略平行に配された複数本の金属棒を束ねたワークを保持可能なチャックユニットと、前記ワークを接合するろう材を供給する供給手段およびこの供給手段を移動させる移動手段を有する供給ユニットと、前記ワークおよびろう材をバーナーにより加熱する加熱ユニットと、前記移動手段の駆動を制御可能な制御部を備えたろう付け装置において、前記制御部は、所定の加熱範囲内に前記ワークおよびろう材が到達後、前記バーナーを駆動させるとともに、ろう材およびワークを所定の時間加熱した後、溶解したろう材をワークに向けて移動させるよう前記供給ユニットの駆動を制御していることを特徴とする。なお、前記供給手段は、ろう材が貫通する供給ノズルと、前記供給ノズルに対してろう材を進退させる出代調節手段と、前記ろう材が供給ノズルの先端から突出していることを判別可能な検出センサとを有し、前記出代調節手段は、前記ろう材を前記検出センサが十分検知できるまで突き出す工程と、検出センサがろう材を検出しなくなるまで引き込む工程を経過後、ろう材を所定の寸法突き出すように制御されていることが好ましい。また、前記チャックユニットは、前記ワークを保持するチャック爪と、このチャック爪を所定の角度揺動させる揺動手段を有し、前記揺動手段は、加熱ユニットによるワークの加熱時、前記チャック爪を保持されたワークの上面が前記ろう材に向くよう傾斜させる一方、チャック爪にワークを設置する時、チャック爪を水平に保つことが好ましい。さらに、前記チャックユニットには、加熱ユニットによるワークの加熱時、ワークを回転させる回転駆動源が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、上述のように溶解したろう材をワークに接触させるため、接触時ワークがろう材に押圧されることがない。このため、線材等強固固定することが困難なワークであっても位置ずれすることなく高精度にろう付け可能等の利点がある。また、同一のバーナーで加熱することにより、制御部の構成を単純かできるとともにガス等の無駄が少ない等の利点も有する。なお、供給手段がろう材を供給する前に毎度ろう材を供給ノズルから突き出す工程およびろう材を供給ノズルに引き込む工程を実施してろう材の出代を規定寸法に調整後、所定の寸法突き出すよう構成されているため、ろう材を毎回同じ量供給可能となる。このため、ろう材が少なく接合不良となることを防止可能等の利点も有する。また、前記チャックユニット揺動手段を有し、加熱時、前記ワークをその上面が前記ろう材に向くよう傾斜させているため、ろう材がワークの上面に当接可能となる。これにより、複数本の金属棒を束ねたワークの中央に形成される空隙部分にろう材が流入し易く、ワークを強固に溶接可能等の利点がある。一方、チャック爪にワークを設置する時、チャック爪が水平となるため、作業者がワークを設置し易い等利点も有る。さらに、前記チャックユニットにワークを回転させる回転駆動源が設けられているため、ワークを全周方向均一に加熱可能となる。このため、ワークの一部のみが極端に高温となり、変形するのを防止可能等の利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るろう付け装置を示す正面図である。
【
図2】本発明に係るろう付け装置を示す平面図である。
【
図3】本発明に係るろう付け装置のチャックユニットの動作を示す動作説明図であり、(a)は水平姿勢のチャックユニットの状態を示す要部拡大一部切欠き正面図であり、(b)は傾斜姿勢のチャックユニットの状態を示す要部拡大一部切欠き正面図であり、(c)は、水平姿勢のチャックユニットの状態を示す要部拡大一部切欠き平面図であり、(d)は、傾斜姿勢のチャックユニットの状態を示す要部拡大一部切欠き平面図である。
【
図4】本発明に係るろう付け装置のろう材供給ユニットの構造を示す要部拡大一部切欠き平面図である。
【
図5】本発明に係るろう付け装置の動作を示す一部切欠き平面図であり、(a)はろう材をの加熱状態を示す一部切欠き平面図であり、(b)はろう付け状態を示す一部切欠き平面図である。
【
図6】本発明に係るろう付け装置の動作を示す一部切欠き正面図であり、(a)は
図5のA-A線断面図であり、(b)は
図5のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1ないし
図4において10は、略平行に配された複数本の金属棒を束ねたワークWをろう付けにより接合するろう付け装置である。このろう付け装置10は、
図1に示すように回転テーブル20と、この回転テーブル20上に配置され、前記ワークWを保持するチャックユニット30と、このチャックユニット30に保持されたワークWに対してろう材Rを供給する供給ユニット40と、前記ワークWおよびろう材Rを加熱する加熱ユニット50と、各ユニットの駆動を制御する制御部とを備えている。なお、本実施形態において、ワークWは、同じ長さの金属棒を3本束ねたものである。
【0010】
前記回転テーブル20は、前記チャックユニット30を搬送する搬送手段の一例であり、前記ろう付け装置10の基台11上にその駆動軸が鉛直方向上向きになるよう配置された搬送モータ21の駆動により回転するように構成されている。この回転テーブル20の上面には、前記チャックユニット30が2対設けられている。これらチャックユニット30は、
図2に示すように自身の対となるチャックユニット30が回転テーブル20の回転軸Oを対象点とした点対称に位置し、回転テーブル20が180度回転することで、チャックユニット30と対となるチャックユニット30の位置が入れ替わるよう構成されている。以下、回転テーブル20の回転によるチャックユニット30の後方側(
図2において下側)の停止位置を待機位置、前方側(
図2において上側)の停止位置を作業位置という。
【0011】
前記回転テーブル20上に配置される2対4個のチャックユニット30は全て同様に構成されているため、以下では1個のチャックユニット30の構成のみを説明する。
チャックユニット30は、
図3の(a)ないし(d)に示すように前記回転テーブル20上に固定された前後方向に伸びる揺動軸31と、この揺動軸31を中心に揺動可能な台座32を備えており、台座32は、回転テーブル20の径方向外側に配置された端面付近が揺動軸31に支持されている。このため、台座32は、常時、回転テーブル20の径方向内側に向かうにつれて低くなり、その径方向内側の端部を回転テーブル20の上面に当接させた傾斜姿勢で保持されている。この台座32の上面には、回転駆動源の一例であるロータリーアクチュエータ33が載置されており、このロータリーアクチュエータ33の回転駆動部には、略円柱形状の開閉チャック34が装着されている。この開閉チャック34は、その上面に径方向に開閉するチャック爪35が三個備えられており、これらチャック爪35は、その対向面に前記ワークWを保持する略三角形状の保持溝36が分割形成されている。さらに、前記開閉チャック34には、作業者が操作可能な開閉スイッチ(図示せず)が接続されており、前記待機位置に待機する開閉チャック34は、開閉スイッチからの信号を受けて開閉するように構成されている。
【0012】
また、前記回転テーブル20には、チャックユニット30の台座32の直下に貫通穴22が形成されているとともに前記基台11には、前記待機位置に位置する回転テーブル20の貫通穴22と連続する連通穴12が形成されている。また、基台11には、シリンダロッド14が連通穴12および貫通穴22を貫通可能な突き上げシリンダ13が設けられている。この突き上げシリンダ13は、そのシリンダロッド14が前記回転テーブル20の貫通穴22を通過して、待機位置に位置するチャックユニット30の台座32を下方から突き上げ可能に配置されている。なお、この突き上げシリンダ13は、伸張時、
図3の(a)に示すようにシリンダロッド14が前記台座32を水平姿勢となるまで突き上げる一方、収縮時、
図3の(b)に示すようにシリンダロッド14が回転テーブル20の貫通穴22から完全に抜けるようにストロークが設定されている。このため、待機位置に位置するチャックユニット30を水平姿勢にして、当該チャックユニット30が保持するワークWを容易に交換することが可能に成る一方、回転テーブル20の駆動時、シリンダロッド14がその回転駆動を邪魔しないようになる。
【0013】
さらに、
図2に示すように前記基台11の上面には、前記回転テーブル20の左右それぞれに前後方向に伸びる搬送レール15,15が一対ずつ配置されている。これら搬送レール15,15は、
図2に示すように回転テーブル20の回転軸Oを前後方向に通過する対称軸を基準とした線対称に配置されており、これら搬送レール15,15上には、前記供給ユニット40,40および加熱ユニット50,50が一台ずつ配置されている。これら供給ユニット40,40および加熱ユニット50,50は、搬送レール15と同様の線対称に構成されているため、以下では、それぞれ一台ずつの構成のみ説明する。
【0014】
前記供給ユニット40は、前記搬送レール15に取付けられる第一移動手段41と、この第一移動手段41の駆動を受けて移動する供給手段42とから構成されている。第一移動手段41は、供給手段42を前後方向に駆動させる第一直進駆動源411および供給手段42を前記搬送レール15と直交する方向(以下、横方向という)に駆動させる第一直交駆動源412とから構成されている。一方、供給手段42は、
図4に示すように第一移動手段41の駆動を受けて横方向に摺動する摺動板43を有している。この摺動板43には、上下方向に延びる円筒形状のガイド筒44およびこのガイド筒44の下方に位置する円筒形状の供給ノズル45が固定されており、供給ノズル45の下端が前記傾斜姿勢のチャックユニット30に保持されたワークWの上端より若干上方に位置するよう配置されている。また、前記ガイド筒44および供給ノズル45には、前記ろう材Rの先端部が貫通している。このろう材Rは、長尺のワイヤ状に構成されており、その基端部は、ろう付け装置10の上方に配置されたリール(図示せず)に巻かれて保持されている。
【0015】
また、前記ガイド筒44および前記供給ノズル45の間には、一対の送り出しローラ46、46が設けられている。これら送り出しローラ46、46は、ガイド筒44から供給ノズル45に延びるろう材Rを挟持可能な隙間を空けて配置された略円板状部材であり、その片方が送り出しモータ47の駆動を受けて回転可能に構成されている。これにより、送り出しモータ47の駆動を受けて送り出しローラ46、46が回転すると、その間に挟まれたろう材Rが昇降して前記供給ノズル45の先端から突出するあるいは、前記供給ノズル45の先端に引き込まれることとなる。さらに、前記略円板状部材の片方には、外周に環状溝48が形成されており、前記ろう材Rは、当該環状溝48に嵌合している。これにより、ろう材Rが送り出しローラ46、46の間で揺れ動くことを防止でき、ろう材Rのねじれや湾曲等を防止される。なお、本実施形態において、前記ろう材Rには、既にフラックスが含有されており、別途フラックスを供給する必要がないものを使用する。
【0016】
さらに、前記供給ユニット40は、供給ノズル45の先端からろう材Rが突出しているか否かを検出する一対の検出センサ49を備えている。この検出センサ49は、一方から他方に向けて光を出力するよう構成されており、その検出域が前記供給ノズル45の下端と同じ高さになるよう設けられている。このため、検出センサ49の間に供給ノズル45が移動した際、ろう材Rが突出していれば前記検出センサ49の光が遮られる一方、ろう材Rが突出していなければ検出センサ49の光が他方まで到達可能となる。これにより、供給ノズル45の先端からろう材Rが突出しているか否かを検出可能となる。
【0017】
前記加熱ユニット50は、前記搬送レール15に取付けられる第二移動手段51と、この第二移動手段51の駆動を受けて移動する熱源の一例であるバーナー52とから構成されている。第二移動手段51は、バーナー52を前記搬送レール15に沿う前後方向に駆動させる第二直交駆動源511およびバーナー52を上下方向に駆動させる第二昇降駆動源512と、バーナー52を横方向に駆動させる第二直交駆動源513とから構成されている。前記バーナー52は、横方向に伸び、その先端部が回転テーブル20側に向くよう前記第二移動手段51に固定されている。一方、バーナー52の基端部には、可燃性ガスを貯留したガスボンベ(図示せず)に繋がるガス供給ホース53が連続しているとともに、その途中には、ガスの出力を調節可能な開閉バルブ(図示せず)が設けられている。これら構造により、バーナー52の先端部から所定の大きさの火を噴射可能であり、そのバーナー52を第二移動手段51によって移動させることでき、任意の箇所を加熱可能となる。
【0018】
前記制御部には、前記回転テーブル20、前記チャックユニット30、前記供給ユニット40、前記加熱ユニット50が接続されており、制御部は、これら駆動を制御可能に構成されている。
【0019】
次に上述のように構成されたろう付け装置10の作用を説明する。
まず、駆動信号が入力されると、制御部は、前記突き上げシリンダ13を駆動させてシリンダロッド14を上昇させる。これにより、待機位置に待機するチャックユニット30が
図3の(b)に示す傾斜姿勢から
図3の(a)に示す水平姿勢にまで起きる。チャックユニット30が水平姿勢になると、制御部は、前記開閉チャック34を駆動させ、前記待機位置に待機するチャックユニット30のチャック爪35を開ける。これにより、作業者は、水平姿勢で開いた状態のチャック爪35の真ん中にワークWを挿入することが可能となり、作業性が向上する。その後、前記開閉スイッチを操作してチャック爪35を閉じる。このように、チャック爪35にワークWが保持された後、制御部は、前記突き上げシリンダ13を再駆動させてシリンダロッド14を収縮させる。シリンダロッド14の支えがなくなると、チャックユニット30は、自重によって傾斜する。その後、制御部は、前記搬送モータ21が駆動させてワークWを保持したチャックユニット30を待機位置から作業位置に移動させる。この時、対となるチャックユニット30が作業位置から待機位置に移動するため、作業者は、前述のように対となるチャックユニット30が保持するワークWを回収するとともに次段のワークWを保持させる。
【0020】
上述のように駆動信号が入力された際、制御部は、前記供給ユニット40の第一移動手段41を駆動させて前記供給ノズル45を前記検出センサ49の間に移動させる。供給ノズル45が検出センサ49の間に達すると、前記送り出しモータ47を駆動させる。これにより、ろう材Rが供給ノズル45の先端から突出すると、前記検出センサ49の光がろう材Rに遮断され、その受光量が減少する。これのように検出センサ49が受光量の減少を関知すると、制御部は、前記送り出しモータ47を逆駆動させ、ろう材Rを供給ノズル45の内部に収容する。ろう材Rが供給ノズル45内部に収容され、減少していた受光量が復帰すると、制御部は、送り出しモータ47の逆駆動から規定された角度分の正駆動に切替える。このように一回、ろう材Rを供給ノズル45に対して突き出し、引き込み動作を行い、供給ノズル45に対するろう材Rの出代を0に直した後、規定量のろう材Rを突出させる構成により、毎回同じ量のろう材Rでろう付け可能となる。
【0021】
上述の様にワークWを保持したチャックユニット30が作業位置に到達し、なおかつ供給ノズル45の先端から規定量のろう材Rが突出すると、制御部は、前記第一移動手段41および第二移動手段51を駆動させ、
図5の(a)および
図6の(a)に示すように供給ノズル45およびバーナー52が作業位置に位置するチャックユニット30と横方向に並ぶになるよう移動させる。これにより、前記バーナー52の先端から噴射される火炎がろう材RとワークWの両方に当たり、両方同時に加熱可能となる。この時、ロータリーアクチュエータ33は、
図2に示すようにワークWの線材と線材との間の部分にバーナー52の火が当たる様に構成されていることにより、ワークWの全体に火が当たり効率良く加熱可能となる。このようにバーナー52、ろう材R、ワークWが横並びになると、制御部は、前記ロータリーアクチュエータ33を駆動させて、ワークWを120°の間欠回転を複数回実施する。これにより、ワークWの全周が均一に加熱され、一部が極端に高温となったワークWが変形したり、ワークWの低温の部位に接触したろう材Rが即座に凝固すること等が防止される。このようにろう材RおよびワークWを所定の加熱時間が経過後、制御部は、前記第一移動手段41を駆動させて、
図5の(b)および
図6の(b)に示すように供給手段42をチャックユニット30に向けて移動させる。この移動により、供給ノズル45の先端のろう材RがワークWの上端部分に接触する。この時、既にろう材Rがバーナー52に加熱されて溶解しているため、ワークWを構成する金属棒がずれたり、変形したりすることがない。また、ワークWの上端部より供給ノズル45の下端が若干高くなるように設定されていることおよび供給ノズル45が横方向への移動でワークWに接近することにより、供給ノズル45とワークWとが接触することがない。さらに、
図4に示すようにろう付け時、チャックユニット30が傾斜しているため、溶解して球体形状となったろう材RがワークWの上端に当接し易くなる。これらにより、完成品に不良が発生し難く、品質が安定する等の利点がある。
【0022】
上述のようにろう材RおよびワークWを加熱する際、制御部は、前記第二移動手段51を駆動させて、バーナー52を低速で昇降させる。これにより、バーナー52の火が比較的小さくてもワークWを全体的に加熱することが可能となる。このようにワークWは、全体的に加熱されているため、接触したろう材Rが凝固することなく重力に従い下方に流れる。この時、ワークWが複数本の金属棒を束ねたものであり、その中央に空隙が形成されているため、溶解したろう材Rは、毛細管現象によって当該空隙を充填するよう下方に流れワークWを接合する。この時、前述のようにバーナー52の火がワークWの線材と線材との間の部分に当たり、前記空隙周辺も加熱されているため、ろう材Rが固着することなく所定量下方に流れる。また、供給ユニット40によって、ろう材Rの出代が毎度同じ量になるよう調整されているため、ろう材Rが足りなかったり、ろう材RがワークWから垂れたりすることが防止される。
【0023】
所定の時間加熱後、制御部は、前記第一移動手段41を駆動させて前記供給ノズル45を前記検出センサ49の間へ移動させるとともに、第二移動手段51を駆動させて、加熱範囲Bがチャックユニット30から外れるようにバーナー52を移動させる。このように加熱時以外は、バーナー52の加熱範囲Bから供給ノズル45およびチャックユニット30が外れるように位置することで過度な加熱が防止され、装置の劣化が防止される。その後、前述のように作業者が対となるチャックユニット30へ次段のワークWを設置完了すれば、制御部は、再度回転テーブル20を駆動させて、チャックユニット30を作業位置から待機位置に移動させる。
【0024】
なお、本発明に係るろう付け装置10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記チャックユニット30は、ワークWの形状や金属棒の本数等に合わせて、チャック爪35の個数や保持溝36の形状が適宜変更されることが好ましい。この時、前記ロータリーアクチュエータ33もワークWの線材の本数に合わせて間欠回転の角度が変更されたり、連続回転に変更されてもよい。また、前記供給手段42の送り出しローラ46および送り出しモータ47は、供給ノズル45から突出するろう材Rの出代を調節する出代調節手段の一例であり、その他構成であっても何ら問題ない。さらに、揺動軸31およびシリンダ23は、チャック爪35を揺動させる揺動手段の一例であり、揺動軸31と同心となるよう配置されたモータ等その他の構成であっても何ら問題ない。しかも、本実施形態ではフラックスが包含されたろう材Rを使用しているがこれに限定されることなく、別途粉末のフラックスを供給する構成であったり、不活性ガスを充満させたカバーの内部でフラックスを用いずにろう付けを行う構成であったり等、従来既知のその他方法を適用しても良い。
【符号の説明】
【0025】
10 … ろう付け装置
11 … 基台
12 … 搬送レール
20 … 回転テーブル
21 … 搬送モータ
22 … 貫通穴
23 … シリンダ
24 … シリンダロッド
30 … チャックユニット
31 … 揺動軸
32 … 台座
33 … ロータリーアクチュエータ
34 … 開閉チャック
35 … チャック爪
36 … 保持溝
40 … 供給ユニット
41 … 第一移動手段
42 … 供給手段
43 … ガイド筒
44 … 供給ノズル
45 … 押し出しローラ
46 … 押し出しモータ
47 … 環状溝
48 … 検出センサ
50 … 加熱ユニット
51 … 第二移動手段
52 … バーナー
R … ろう材
W … ワーク