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特開2024-94799繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094799
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/03 20060101AFI20240703BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20240703BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20240703BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20240703BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20240703BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20240703BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20240703BHJP
   D06M 15/285 20060101ALI20240703BHJP
   D06M 15/61 20060101ALI20240703BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20240703BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20240703BHJP
   D06M 13/355 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
D06M15/03
C11D3/22
C11D3/37
C11D1/22
C11D1/29
C11D3/48
D06M15/267
D06M15/285
D06M15/61
D06M13/256
D06M13/262
D06M13/355
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211586
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】押野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】荒池 友哉
(72)【発明者】
【氏名】田和 弘輔
【テーマコード(参考)】
4H003
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB31
4H003AC08
4H003DA01
4H003DC02
4H003EB28
4H003EB42
4H003EB46
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA34
4L033AB04
4L033AC10
4L033AC11
4L033AC15
4L033BA28
4L033BA29
4L033BA57
4L033BA99
4L033CA02
4L033CA19
4L033CA23
4L033CA57
4L033CA70
(57)【要約】
【課題】繊維洗浄する際に繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの量を低減する新規な繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(a)成分及び下記(b)成分を含有する、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
(a)成分:(a1)カチオン化セルロース及びその誘導体、(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物、(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上、並びに(a4)ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマー
(b)成分:所定のアニオン界面活性剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び下記(b)成分を含有する、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
(a)成分:下記の(a1)成分~(a4)成分から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマー
(a1)成分:カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上
(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物
(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上
(a4)成分:ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤
(b1)成分:アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩
(b2)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩
【請求項2】
(a1)成分の重量平均分子量は、100万以上である、請求項1に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
【請求項3】
(a4)成分は、エチレンオキシドの平均付加モル数が8以上15以下であるポリエチレンイミンのエチレンオキシ化物から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
【請求項4】
(b)成分は、(b2)成分を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
【請求項5】
更に下記(c)成分を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
(c)成分:ジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物
【請求項6】
界面活性剤の合計含有量に対する(b)成分の含有量の割合((b)/界面活性剤の合計含有量)が、40質量%以上である、請求項1~5の何れか1項に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物。
【請求項7】
化学繊維に、下記(a)成分と、下記(b)成分と、を接触させる、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法。
(a)成分:下記の(a1)成分~(a4)成分から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマー
(a1)成分:カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上
(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物
(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上
(a4)成分:ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤
(b1)成分:アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩
(b2)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩
【請求項8】
(a)成分を化学繊維に接触させること、(b)成分を化学繊維に接触させること、を行う、請求項7に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法。
【請求項9】
化学繊維に(a)成分を接触させ、更に(a)成分を接触させた化学繊維に(b)成分を接触させる、請求項7又は8に記載の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物及び繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの海洋環境への影響について関心が高まっている。例えば、マイクロプラスチック・ビーズのような微小なプラスチック粒子が、海に流出して、ウミガメ、海鳥、そして魚(そして、ひいては人間)の体内に入り込むことが懸念されている。
マイクロプラスチック汚染には化学繊維製の衣類のマイクロファイバー(長さ5ミリ以下)も含まれる。これら化学繊維のマイクロファイバーは、繊維洗浄(洗濯・精錬等)する際に抜け落ち、海、海岸、川、湖などに放出され、その一部は土壌にも至ると考えられている。
【0003】
衣料の毛羽・毛玉を減少することができるケア化合物としてセルロース誘導体を使用することが知られている。
例えば、特許文献1には、(a)所定のノニオン界面活性剤、(b)多糖ポリマー及び(c)(a)成分以外の界面活性剤を含有する、衣料用ケア組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-100723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、繊維と繊維の接触部における摩擦を低減するだけでは、繊維洗浄する際に繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの発生を抑制することができなかった。
本発明は、繊維洗浄する際に繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの量を低減する新規な繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物及びマイクロプラスチックファイバー低減方法を提供する。
本発明におけるマイクロプラスチックファイバーとは、繊維状のマイクロプラスチックであり、その繊維長は、一般に0.1μm~5mm未満である。マイクロプラスチックファイバーは、合成繊維を含む繊維製品の洗濯排水に含まれることが知られており、当該繊維製品の合成繊維の一部が脱落したものであると考えられている。マイクロプラスチックファイバーは、繊維屑や洗濯屑を意味する。
本発明におけるマイクロプラスチックファイバー低減方法とは、繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの排出量を低減する方法を意味する。
本発明における繊維洗浄とは、処理液を介して、繊維製品に物理的作用及び/又は化学的作用を及ぼす行為を意味する。ここでいう洗浄は、実際に繊維製品の汚れや不純物等を除去する行為に限定されず、繊維製品の汚れや不純物等を除去することが可能に、繊維製品に物理的作用及び/又は化学的作用を及ぼす行為であればよい。具体的に、本発明における洗浄は、洗濯行為又は繊維精錬の少なくとも一方であることが好ましい。例えば、洗濯行為は、洗い工程、すすぎ工程、柔軟剤などの洗濯助剤を用いた処理工程、又は脱水工程の少なくとも一つの工程を含む。繊維精錬は、例えば、界面活性剤等を利用して、染色前の繊維製品に付着している不純物等を取り除く行為である。本発明における洗浄行為は、洗濯機等の機械で行われてもよいし、手洗いでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分及び下記(b)成分を含有する、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物に関する。
(a)成分:下記の(a1)成分~(a4)成分から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマー
(a1)成分:カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上
(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物
(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上
(a4)成分:ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤
(b1)成分:アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩
(b2)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩
【0007】
また、本発明は、化学繊維に、(a)成分と、(b)成分と、を接触させる、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維洗浄する際に繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの量を低減する新規な繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物及びマイクロプラスチックファイバー低減方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、下記(a)成分及び下記(b)成分を含有する。
(a)成分:下記の(a1)成分~(a4)成分から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマー
(a1)成分:カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上
(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物
(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上
(a4)成分:ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤
(b1)成分:アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩
(b2)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩
【0010】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、繊維製品用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物であってよい。また、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、化学繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物、更には化学繊維製品用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物であってよい。
また、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、繊維洗浄する際に繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの量を低減する、繊維用マイクロプラスチックファイバー発生量低減剤組成物であってよい。
なお、本発明において、マイクロプラスチックファイバーとは、5mm以下の繊維片であってよい。
【0011】
<(a)成分>
(a)成分は、下記(a1)成分~(a4)成分から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマーである。本発明において、カチオン性ポリマーとは、分子内にカチオン基を有するポリマーを意味する。カチオン基としては、第4級アンモニウム基及びアミノ基から選ばれる1種以上の基を意味する。アミノ基は、水中でpHによってはカチオン基となりうる点で、本発明においてカチオン基と称する。(a)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、(a1)成分から選ばれる1種以上が好ましい。
(a1)成分:カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上
(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物
(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上
(a4)成分:ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー
【0012】
(a)成分の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出する。測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α-M
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CHCOOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/min
【0013】
<(a1)成分>
(a1)成分は、カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上である。(a1)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース、アルキル化カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選ばれる1種以上が好ましく、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースがより好ましい。
【0014】
(a1)成分の前駆化合物であるセルロースポリマーとしては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、前記セルロースの水酸基の水素原子の一部又は全部が炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基で置換されたセルロースポリマー(以下、ヒドロキシアルキル置換体ともいう)が挙げられる。炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基が好ましい。炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられ、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる1種以上の基が好ましい。(a1)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、セルロース又はそれらのヒドロキシアルキル置換体から選ばれるセルロースポリマーにカチオン基が導入された化合物であってよい。
【0015】
(a1)成分である、カチオン基を有するセルロースポリマーのカチオン基の置換度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0016】
カチオン基を有するセルロースポリマーは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、(a1)成分の前駆化合物であるセルロース又はその誘導体、好ましくは前記ヒドロキシアルキル置換体が有する水酸基から水素原子を除いた基に、連結基である、水酸基を含んでいてもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基〔以下、連結基(1)という〕を介して、カチオン基が結合しているセルロースポリマーが挙げられる。
カチオン基は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、窒素カチオンを含む基であり、本発明の課題を解決できる観点で第4級アンモニウム基であることがより好ましい。
【0017】
連結基(1)は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、水酸基を含んでいてもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基である。炭素数1以上4以下のアルキレン基としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、水酸基を含んでいても良い直鎖の炭素数1以上4以下のアルキレン基及び水酸基を含んでいても良い分岐鎖の炭素数3以上4以下のアルキレン基から選ばれる1種以上のアルキレン基が挙げられる。
【0018】
カチオン基が第4級アンモニウム基である場合、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、該第4級アンモニウム基に結合した連結基(1)以外の3つの炭化水素基は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が挙げられる。炭素数1以上4以下の直鎖の炭化水素基としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基が挙げられる。炭素数3以上4以下の分岐鎖の炭化水素基としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基が挙げられる。炭素数1以上4以下の直鎖の炭化水素基としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、メチル基又はエチル基が好ましい。
第4級アンモニウム基の対イオンは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下の脂肪酸イオン及びハロゲン化物イオンから選ばれる1種以上の対イオンが挙げられる。これらの中でも、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン及びハロゲン化物イオンから選択される1種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられる。マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンから選択される1種以上、より好ましくは塩化物イオンである。なお、対イオンは1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0019】
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、(a1)成分中のカチオン基の含有量を選定することが好ましい。(a1)成分である、カチオン基を有するセルロースポリマー中のカチオン基の含有量は、カチオン基を窒素原子に置き換えた値で算出する。即ち(a1)成分中のカチオン基の含有量は(a1)成分中の窒素原子の含有割合で求めることが出来る。(a1)成分中の窒素原子の含有量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以下であり、より更に好ましくは3質量%以下であり、より更に好ましくは2質量%以下であり、より更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.6質量%以下であり、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
(a1)成分中の窒素原子の含有量は、具体的には、下記<(a1)成分の窒素含有量、アルキル置換度の測定方法>で詳細に説明する方法で求めることができる。
【0020】
(a1)成分であるカチオン基を有するセルロースポリマーは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、任意に、直接又は連結基〔以下、連結基(2)という〕を介して、炭素数1以上18以下の炭化水素基が更に結合した、カチオン基を有するセルロースポリマーであっても良い。
【0021】
前記の連結基(2)としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ヒドロキシ基を有していても良い炭素数1以上3以下のアルキレンオキシ基、アルキレン基が炭素数1以上3以下のアルキレン基であるポリオキシアルキレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。一つの連結基(2)は、前記の連結基の1種類であっても良く、複数種類組み合わされていても良い。また、多糖ポリマー中に含まれる連結基は1種類でも良く、複数種類でも良い。
本発明において、連結基(2)が有する酸素原子に前記炭化水素基が連結されている場合は、(a1)成分が有する炭化水素基の炭素数は、酸素原子に結合した前記炭化水素基の炭素数を表す。前記炭化水素基がカルボニル基を介して連結している場合には、アシル基が結合した構造となり、この場合は、(b1)成分が有する炭化水素基の炭素数は、アシル基の炭素数を表す。カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基を介して連結している場合も、同様に、それらの炭素数を含む。セルロースポリマーに炭化水素基を導入する場合に、1,2-エポキシアルカンを使用した場合には、エポキシ基から生じたエーテル基に結合する脂肪族炭化水素基の炭素数を表す。エポキシ基部分は連結基(2)となる。例えば1,2-エポキシテトラデカンを用いて、セルロースポリマーに炭化水素基を導入した場合の炭化水素基の炭素数は12とする。すなわち、セルロースポリマーの水酸基に連結基(1)であるオキシエチレン基が結合し、該連結基を介して炭素数12のアルキル基(ドデシル基)が結合する。アルキルグリシジルエーテルを用いる場合も同様である。
【0022】
(a1)成分の中で、カチオン基及び炭素数1以上18以下の炭化水素基を有するセルロースポリマーは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、更にカチオン基を有するセルロースポリマーの一部又は全ての水酸基から水素原子を除いた酸素原子に、直接又は連結基(2)を介して、好ましくは連結基(2)を介して、炭素数1以上18以下の炭化水素基が結合したセルロースポリマーが挙げられる。
【0023】
炭素数1以上18以下の炭化水素基は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点で、炭素数1以上18以下の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。炭化水素基は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点で、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0024】
(a1)成分である、カチオン基及び炭素数1以上18以下の炭化水素基を有するセルロースポリマーの、炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下である。
(a1)成分中の炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、具体的には、下記<(a1)成分の窒素含有量、アルキル置換度の測定方法>で詳細に説明する方法で求めることができる。
【0025】
本発明の(a1)成分の前駆化合物であるセルロース又はその誘導体の重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは50万以上、より更に好ましくは100万以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは500万以下、より好ましくは300万以下、更に好ましくは200万以下である。この前駆化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる。
【0026】
(a1)成分の重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは50万以上、より更に好ましくは100万以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点及び組成物への配合適性から、好ましくは500万以下、より好ましくは300万以下、更に好ましくは200万以下である。この重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる。
【0027】
(a1)成分の前駆化合物及び(a1)成分の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出する。測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α-M
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CHCOOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/min
【0028】
<(a1)成分の窒素含有量、アルキル置換度の測定方法>
(a1)成分であるセルロース誘導体の窒素含有量及びアルキル基の置換度は、以下の方法で測定する。
・セルロース誘導体の前処理
セルロース誘導体1gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラポア、分画分子量1000)に入れ、2日間透析を行い、得られた水溶液を、凍結乾燥機(eyela,FDU1100)を用いて凍結乾燥することで、前処理済のセルロース誘導体を得る。
【0029】
・ケルダール法によるカチオン基質量の算出
前記の方法で前処理したセルロース誘導体の200mgを精秤し、濃硫酸10mLとケルダール錠(Merck)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社製、K-432)にて加熱分解を行う。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社製、K-370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン基の質量を算出する。
【0030】
・Zeisel法による炭化水素基(アルキル基)質量の算出
前記の方法で前処理したセルロース誘導体200mg、アジピン酸220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3)に精秤し、内標溶液(テトラデカン/o-キシレン=1/25(v/v))3mL及びヨウ化水素酸3mLを加えて密栓する。また、セルロース誘導体の代わりに1-ヨードドデカンを2.4mg又は9mg加えた検量線用の試料を調製する。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社製、Reacti-Therm III Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱する。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)(島津製作所社、QD2010plus)にて分析する。
・GC分析条件
カラム:Agilent HP-1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:HID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求める。
【0031】
(a1)成分は、下記一般式(I)で表され、置換型の無水グルコース単位を繰り返し単位とするものが挙げられる。
(a1)成分は、8個以上24個以下の炭素原子を有するアルキル基もしくはアリールアルキル基を含むノニオン性又はカチオン性疎水性置換基及び下記(II)式のカチオン性置換基により置換されている。(a1)成分は、無水グルコース単位1モル当たり、上記の置換基を平均0.0003モル以上0.08モル以下有する。
【0032】
【化1】
【0033】
(I)式中、R~Rはそれぞれ独立に、H、CH、炭素数8以上24以下のアルキル基、炭素数8以上24以下のアルキル基もしくは炭素数8以上24以下のアリールアルキル基を含むノニオン性の置換基、炭素数8以上24以下のアルキル基もしくは炭素数8以上24以下のアリールアルキル基を含むカチオン性の置換基、又は下記(II)式で表される基である。dは、繰り返し数を表す4,000以上10,000以下の数である。
~Rがアルキル基又はアルキルもしくはアリールアルキル基を含む置換基である場合、これらの置換基のアルキル基は、直鎖でもよく分岐鎖でもよい。
【0034】
【化2】
【0035】
(II)式中、pは0以上10以下であり、Rは、H、CH、炭素数8以上24以下のアルキル基、下記(III)式で表される基、又はこれら以外の炭素数8以上24以下のアルキル基を含む置換基である。
がアルキル基又はアルキル基を含む置換基である場合、これらの置換基のアルキル基は、直鎖でもよく分岐鎖でもよい。
【0036】
【化3】
【0037】
(III)式中、R及びRは、それぞれ独立にCH、C、Rは、H、CH、炭素数8以上24以下のアルキル基又は炭素数8以上24以下のアリールアルキル基、RはCHCHOHCH又はCHCHである。Zは水溶性の陰イオンである。
Zとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等が挙げられる。
【0038】
は、(II)式で表される基が好ましい。
が(II)式で表される基である場合、pは0以上3以下が好ましい。
また、Rとしては(III)式で表される基が好ましい。この場合、R~RはCHが好ましく、RはCHCHOHCHが好ましく、Zは塩化物イオン、臭化物イオンが好ましい。
【0039】
の平均置換度は、無水ヒドログルコース単位1モル当たり、0.0003モル以上が好ましく、0.0005モル以上がより好ましい。上限値としては、無水ヒドログルコース単位1モル当たり0.08モル以下が好ましく、0.07モル以下がより好ましく、0.05モル以下が更に好ましい。
【0040】
は、(II)式で表される基が好ましい。
が(II)式で表される基である場合、pは0以上3以下が好ましい。
また、Rとしては(III)式で表される基が好ましい。この場合、R及びRは、CHが好ましく、Rは、C(2q+1)で、qは8以上14以下が好ましく、10以上18以下がより好ましく、12が特に好ましい。RはCHCHOHCHが好ましい。Zは塩化物イオン、臭化物イオンが好ましい。
【0041】
は、Hが好ましい。
【0042】
のカチオン性置換基の平均置換度は、一般的に、無水グルコース単位1モル当たり、0.02モル以上0.9モル以下が好ましく、0.05モル以上0.8モル以下がより好ましく、0.1モル以上0.6モル以下が更に好ましく、0.15モル以上0.35モル以下がより更に好ましい。
【0043】
(a1)成分として用いることができる市販のカチオン化セルロース及びその誘導体としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば下記が挙げられる。
(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース)
ポリクオタニウム-10(塩化o-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース):UCARE POLYMER JR-30M、UCARE POLYMER JR-400(以上、ダウ・ケミカル社)、ポイズC-60H、ポイズC-150L(以上、花王(株))など
【0044】
他にも(a1)成分としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば、レオガードLP、GP、MGP、KGP、MLP(いずれも、商品名、ライオン(株)製);UCARE LR-30M、LK;カチナールHC-100(商品名、東邦化学工業(株)製)等、市販のものが挙げられる。
【0045】
<(a2)成分>
(a2)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
【0046】
ジアリル第4級アンモニウム塩重合物は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ジアリル第4級アンモニウム塩の単独重合物である。ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物は、ジアリル第4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物である。ジアリル第4級アンモニウム塩とアクリルアミドとは、ブロック重合していてもよく、ランダム重合していてもよく、グラフト重合していてもよい。(a2)成分としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、下記一般式(IV)又は(V)で表されるジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物が好ましい。
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
式(IV)及び(V)中、R33及びR34はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上18以下のアルキル基、フェニル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アミドアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基、又はカルボアルコキシアルキル基、R35、R36、R37及びR38はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又はフェニル基、Xは陰イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、硝酸イオン等)、gは繰り返し単位、hは繰り返し単位を示す。
【0050】
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、式(IV)及び(V)中、R33及びR34としては、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましい。
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、式(IV)及び(V)中、R35、R36、R37及びR38としては、水素原子が好ましい。
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、式(IV)及び(V)中、Xとしては、ハロゲン化物イオンが好ましい。
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物の重量平均分子量は、3万以上200万以下が好ましく、100万以上200万以下がより好ましい。
なお、本明細書における(a2)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた値を意味する。
式(IV)又は(V)で表されるジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物の市販品としては、例えば、商品名「マーコート100」、商品名「マーコート550」、「Noverite300」、「Noverite302」(いずれもルーブリゾール(Lubrizol)社製)等が挙げられる。
【0051】
ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物は、ジアリル第4級アンモニウム塩とアクリル酸との共重合物である。ジアリル第4級アンモニウム塩とアクリル酸とは、ブロック重合していてもよく、ランダム重合していてもよく、グラフト重合していてもよい。
【0052】
ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物の重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、60万以上300万以下が好ましく、100万以上200万以下がより好ましい。
【0053】
<(a3)成分>
(a3)成分は、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上である。(a3)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、次の一般式(IX)で表わされるものが好ましい。
【0054】
【化6】
【0055】
〔式(VI)中、J:グアーガム残基;R71:アルキレン基又はヒドロキシアルキレン基;R72、R73、R74:それぞれ独立して、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよい;X:陰イオン(塩素、臭素、ヨウ素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等);l:繰り返し単位〕
【0056】
(a3)成分の重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上、更に好ましくは50万以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは150万以下である。
【0057】
(a3)成分として用いることができる市販のカチオン性ポリマーとしては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば下記が挙げられる。
(カチオン化グアーガム)
JAGUAR Excel、JAGUAR C-17、JAGUAR C-14-S(以上、Solvay(Novecare)社)など
(カチオン化タラガム)
カチナール CTR-100(東邦化学工業(株))など
(カチオン化ローカストビーンガム)
カチナール CLB-100(東邦化学工業(株))など
【0058】
<(a4)成分>
(a4)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマーである。
ポリエチレンイミンとしては、構成単位であるエチレンイミン-CHCHNH-から構成されるポリマーを挙げることができる。このポリエチレンイミン主鎖は、窒素上の水素が、構成単位であるエチレンイミンのもう一つの鎖によって置換される場合、分岐することがある。すなわち、前記ポリエチレンイミンは、完全な線状構造を有するものではなく、1級、2級及び3級アミノ窒素を含む分岐鎖構造を有している。
前記ポリエチレンイミンとしては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、活性水素を1分子中に好ましくは10個以上、より好ましくは12個以上有しているものが好ましく、好ましくは200個以下、より好ましくは100個以下有しているものが好ましい。
【0059】
ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1,200以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは6,000以下、更に好ましくは3,000以下、より更に好ましくは2,000以下である。
【0060】
ポリエチレンイミンのアルコキシル化物は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ポリエチレンイミン(以下、「PEI」とも記す。)のエチレンオキシド付加体であり、エチレンオキシドの平均付加モル数は8モル以上15モル以下である。
本明細書において、ポリエチレンイミンのアルコキシル化物のエチレンオキシドの平均付加モル数は、PEIが有する活性水素1モルあたりのエチレンオキシドの平均付加モル数を意味する。
ポリエチレンイミンのアルコキシル化物は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
PEIは、エチレンイミンを重合することによって得られ、その構造中に、1級、2級及び3級アミン窒素原子を含む分岐鎖構造を有している。
PEIの重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、200以上2,000以下が好ましく、300以上1,500以下がより好ましく、400以上1,000以下が更に好ましく、500以上800以下が特に好ましい。
PEIは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、その1分子中に活性水素を8個以上15個以下有することが好ましく、9個以上15個以下有することがより好ましく、10個以上15個以下有することが更に好ましい。
【0062】
ポリエチレンイミンのアルコキシル化物は、PEIにエチレンオキシドを付加して得られる。この方法としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基性触媒の存在下、出発物質であるPEIに対して、100℃以上180℃以下でエチレンオキシドを付加させる方法等が挙げられる。
【0063】
ポリエチレンイミンのアルコキシル化物としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば、式(VII)で示される化合物が挙げられる。ポリエチレンイミンのアルコキシル化物としては、合成品が用いられてもよいし、市販品が用いられてもよい。
【0064】
【化7】
【0065】
〔式(VII)中、R22はエチレン基である。mは(R22O)の平均繰り返し数を表し、8以上15以下の数である。mはポリエチレンイミンのアルコキシル化物のエチレンオキシドの平均付加モル数に相当する。〕
【0066】
ポリエチレンイミンのアルコキシル化物の重量平均分子量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、1,000以上80,000以下が好ましく、2,000以上50,000以下がより好ましく、3,000以上30,000以下が更に好ましく、5,000以上20,000以下がより更に好ましい。
なお、本明細書における(a4)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とし、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めた値を意味する。
【0067】
(a4)成分として用いることができるカチオン性ポリマーとしては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば下記の製造例1で得られるポリエチレンイミンのエチレンオキシド付加体(ポリエチレンイミンの重量平均分子量:800、ポリエチレンイミンが1分子中に有する活性水素の数:10個、活性水素1モルあたりのエチレンオキシドの平均付加モル数:10)が挙げられる。
<製造例1>
ポリエチレンイミン(BASF社製、商品名「Lupasol FG」)及び水を入れたオートクレーブを真空脱気した後に窒素置換した。オートクレーブを加熱しながら窒素原子1モル当り10モルに相当するエチレンオキシドを添加してエトキシ化させ、ポリエチレンイミンのエチレンオキシド付加体を得る。
【0068】
(a)成分のより具体的な例として、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ジアリルジアルキル第4級アンモニウム塩(DMDAAC)/アクリルアミド(AM)共重合物として、マーコート550(重量平均分子量:160万)[以上、NALCO社、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウム塩の共重合体]、ポイズC-60H、カチセロM-80、ポイズC-150L[以上、花王社、カチオン化セルロース(塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)]、ジャガーC17、ジャガーC14[以上、ローディア社、カチオン化グアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリアンモニウムクロリド)]等が挙げられる。
【0069】
<(b)成分>
(b)成分は、(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤である。(b)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、(b2)成分から選ばれる1種以上が好ましい。
【0070】
<(b1)成分>
(b1)成分は、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩である。(b1)成分は、炭素数9以上21以下のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS)であってよい。(b1)成分は、下記一般式(b1)で表される化合物が挙げられる。
1b-B-SOM (b1)
〔式(b1)中、R1bは炭素数9以上21以下のアルキル基を示し、Bはベンゼン環を示し、Bの炭素原子と結合するR1bの炭素原子が第2級炭素原子であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。Bに結合するR1bに対して、スルホン酸基はオルト位、メタ位又はパラ位に結合している。〕
【0071】
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、一般式(b1)中、R1bは、炭素数9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基である。
一般式(b1)中、Mは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。有機アンモニウム塩は、pH調整剤で用いるアミンによる塩であってよい。Mは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0072】
<(b2)成分>
(b2)成分は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩(AES、APES等)である。(b2)成分は、下記一般式(b2)で表される化合物が挙げられる。
2b-O-[(PO)(EO)]-SOM (b2)
〔式(b2)中、R2bは炭素数8以上22以下のアルキル基を示し、酸素原子と結合する炭素原子が第1炭素原子であり、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、EOとPOはブロック型結合又はランダム型結合であり、POとEOの結合順序は問わず、m及びnは平均付加モル数であって、mは0以上5以下、かつnは0.1以上16以下であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。〕
【0073】
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、一般式(b2)中、R2bは、好ましくは炭素数9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基である。R2bは直鎖アルキル基が好ましい。
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、一般式(b2)中、mは、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、そして、0以上である。mは、0であってもよい。
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、一般式(b2)中、nは、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下である。
一般式(b2)中、Mは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アンモニウムである。有機アンモニウム塩は、pH調整剤で用いるアミンによる塩であってよい。Mは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、より好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムなどのアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくはナトリウムである。
【0074】
マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、(b2)成分としては、アルキル基の炭素数が12以上14以下であってプロピレンオキシ基の平均付加モル数が0以上4以下、エチレンオキシ基の平均付加モル数が1以上4以下であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩が好ましい。すなわち、(b2)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、一般式(b2)中、R2bが炭素数12以上14以下のアルキル基、mが0以上4以下、nが1以上4以下、Mがナトリウムである化合物が好ましい。
【0075】
<繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物の組成等>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、(a)成分を、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0076】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、(b)成分を、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0077】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.2以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制、組成物への配合適性及び消泡性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0078】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、使用時の(a)成分濃度が、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び液の流動性の観点から、好ましくは2,500ppm以下、より好ましくは2,000ppm以下、更に好ましくは1,000ppm以下、より更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは100ppm以下、より更に好ましくは50ppm以下となるように使用される。
【0079】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、使用時の(b)成分濃度が、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは10ppm以上、より好ましくは50ppm以上、更に好ましくは100ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは500ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは150ppm以下となるように使用される。
【0080】
<(c)成分>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、任意に(c)ジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物〔以下、(c)成分という〕を含有することができる。
【0081】
(c)成分について、抗菌性化合物とは、木綿金巾#2003に該当化合物1質量%を均一に付着させた布を用いJIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験法」の方法で抗菌性試験を行い発育阻止帯が見られる化合物であることをいう。
【0082】
(c)成分としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物から選択される1種以上の抗菌性化合物が挙げられる。(c)成分は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば、ハロゲン原子を含みジフェニルエーテル骨格を有する抗菌性化合物が好ましい。具体的には、(c)成分としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)が挙げられ、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ダイクロサン、トリクロサンが好ましく、ダイクロサンがより好ましい。
【0083】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、(c)成分を、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、更に好ましくは0.15質量%以下含有する。
【0084】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、使用時の(c)成分濃度が、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.3ppm以上、更に好ましくは0.5ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは5ppm以下、より好ましくは2.5ppm以下、更に好ましくは1.5ppm以下となるように使用される。
【0085】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物において、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0086】
<(d)成分>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、任意に(d)界面活性剤〔ただし、(b)成分及び(c)成分を除く〕〔以下、(d)成分という〕を含有することができる。
【0087】
(d)成分は、(d1)アニオン界面活性剤〔ただし、(b)成分を除く〕〔以下、(d1)成分という〕、(d2)ノニオン界面活性剤〔以下、(d2)成分という〕、(d3)カチオン界面活性剤〔但し、(c)成分を除く〕〔以下、(d3)成分という〕及び(d4)両性界面活性剤〔以下、(d4)成分という〕から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0088】
(d1)成分のアニオン界面活性剤としては、例えば、内部オレフィンスルホン酸又はその塩、アルキルカルボン酸又はその塩、アルキルスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル又はその塩(AS)、アルキルリン酸エステル又はその塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル又はその塩(MES)、脂肪酸又はその塩、アルキルスルホコハク酸又はその塩などが挙げられる。
【0089】
(d1)成分の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0090】
(d2)成分のノニオン界面活性剤としては、脂肪族アルコールアルコキシレート及び脂肪族エステルアルコキシレートから選ばれる1種以上のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0091】
脂肪族アルコールアルコキシレートとしては、例えば、脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物及びその末端メチルエーテル付加物が挙げられる。
前記の脂肪族アルコールは、炭素数が、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪族アルコールが挙げられる。脂肪族アルコールは、第1級アルコールが好ましい。
前記の脂肪族炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
前記の脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖であり、直鎖が好ましい。
前記のアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる1種以上が好ましい。アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを含む場合、ブロック結合型でもランダム結合型であってもよい。
前記のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは70以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0092】
また、脂肪族エステルアルコキシレートとしては、例えば、脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物及びその末端メチル化物が挙げられる。
前記の脂肪酸は、炭素数が、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは14以上、より更に好ましくは16以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下の脂肪族炭化水素基を有する脂肪酸が挙げられる。
前記の脂肪族炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖であり、直鎖が好ましい。
前記のアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる1種以上が好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを含む場合、ブロック結合型でもランダム結合型であってもよい。
前記のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは50以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは20以下である。
脂肪族エステルアルコキシレートとしては、脂肪酸メチルエステルエトキシレートが好ましい。
【0093】
(d2)成分としては、下記の一般式(d2-1)で表されるノニオン界面活性剤が挙げられる。
1d-(CO)O-(AO)-R2d (d2-1)
〔式中、R1dは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2dは水素原子又はメチル基であり、COはカルボニル基であり、pは0又は1の数であり、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれる1種以上のアルキレンオキシ基である。AOが炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基を含む場合は、炭素数2のアルキレンオキシ基と炭素数3のアルキレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合であってもよい。qは平均付加モル数であって、1以上70以下の数である。〕
【0094】
式(d2-1)中、R1dの炭素数は、9以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
1dは、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、直鎖が好ましい。
2dは水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。
【0095】
式(d2-1)中、pは、0又は1の数である。
式(d2-1)中、qは、1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、70以下、好ましくは50以下、より好ましくは25以下である。
【0096】
式(d2-1)中、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれる1種以上のアルキレンオキシ基である。AOが炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基を含む場合は、炭素数2のアルキレンオキシ基と炭素数3のアルキレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合であってもよい。
【0097】
(d2)成分は、炭素数2のアルキレンオキシ基、すなわちエチレンオキシ基(以下EO基という場合がある)の平均重合度(あるいは平均付加モル数という場合もある)が、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは70以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下である。
【0098】
(d2)成分は、炭素数3のアルキレンオキシ基、すなわちプロピレンオキシ基(以下PO基という場合もある)の平均重合度(あるいは平均付加モル数という場合もある)が好ましくは0以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
【0099】
(d2)成分がEO基とPO基とを含む場合、EO基とPO基とはランダム又はブロック結合であってもよく、好ましくはブロック結合、より好ましくはアルキルエーテルに対してEOPOEOの順序であるかPOEOの順のブロック結合である。
【0100】
(d3)成分のカチオン界面活性剤としては、例えば、下記一般式(d3-1)で表される化合物が挙げられる。
【0101】
【化8】
【0102】
〔式(d3-1)中、R3dは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基であり、R4dは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R5d及びR6dは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、Xは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、又はハロゲン化物イオンである。〕
【0103】
一般式(d3-1)中、R3dの鎖式炭化水素基の炭素数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
【0104】
一般式(d3-1)中、R4dは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R4dの鎖式炭化水素基の炭素数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
4dの鎖式炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0105】
一般式(d3-1)中、R5d、R6dは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基などの炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基である。
【0106】
一般式(d3-1)中、R3d、R4dの鎖式炭化水素基の具体例は、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基であり、ノニル基、デシル基が好ましく、デシル基が好ましい。
【0107】
一般式(d3-1)中、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基の具体例は、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。XはCHSO 、CHCHSO 、又はハロゲン化物イオンである。
【0108】
一般式(d3-1)で表される化合物のより具体的な化合物は、N-エチル-N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、N,N-ジオクチル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジノニル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジオクチル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩、N,N-ジノニル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩、及びN,N-ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられ、モノ長鎖型アンモニウム塩とジ長鎖型アンモニウム塩を併用することもできる。これらの塩となる対イオンは、CHSO 、CHCHSO 、又は塩化物イオン等のハロゲン化物イオンである。
【0109】
陽イオン界面活性剤としては、ビスピリジニウム化合物も挙げられる。
ビスピリジニウム化合物としては、例えば、英国特許第1533952号明細書、特開昭52-105228号公報、国際公開第2014/100807号に記載されているものなどが挙げられる。ビスピリジニウム化合物としては、具体的には、下記一般式(d3-2)で表される化合物、下記一般式(d3-3)で表される化合物が好ましい。
【0110】
【化9】
【0111】
〔式中、Yは、4個以上18個以下の炭素原子を有するアルキレン又はアルケニレン基であり、R7dは、それぞれ、6個以上18個以下の炭素原子を有するアルキル基又は5個以上7個以下の炭素原子を有するシクロアルキル基、又はハロゲン置換の有無にかかわらずフェニル基を表し、Aは、陰イオンである。qは1又は2、rは1又は2であり、q×r=2である。〕
【0112】
Aは、一価又は二価の陰イオンであり、例えば、塩化物、臭化物、リン酸塩、オルトケイ酸塩、有機酸、例えば式R8d-COOを有する有機酸やアルキル(炭素数1以上40以下)スルホン酸、などの化合物からの陰イオンであり得る。ここで、R8dは、水素、ヒドロキシル、又は炭素数1以上40以下のアルキル基である。Aは、後述のpH調整剤である酸剤からの陰イオンであってよい。
【0113】
Aの陰イオンに相当する有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、リン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、グリシルリジン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ホスホン酸、トリフルオロ酢酸、シアノ酢酸、4-シアノ安息香酸、2-クロロ安息香酸、2-ニトロ安息香酸、フェノキシ酢酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0114】
好ましいビスピリジニウム化合物は、一般式(d3-3)の化合物、更にオクテニジン二塩酸塩(一般式(d3-3)中、R7dがそれぞれn-オクチル基、Yがn-デセニル基、AがCl、qが1、rが2の化合物、CAS番号70775-75-6)である。
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物では、陽イオン界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0115】
(d4)成分の両性界面活性剤としては、ベタイン系両性界面活性剤及びアミンオキサイド型両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、スルホベタイン、カルボベタイン及びアミンオキサイドから選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。
【0116】
スルホベタインとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上18以下、のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが挙げられる。
【0117】
カルボベタインとしては、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインや下記一般式(d4-1)で表される化合物が挙げられる。
【0118】
【化10】
【0119】
〔式(d4-1)中、R9dは炭素数7以上21以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R10dはプロピレン基を示し、R11d及びR12dは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。〕
【0120】
アミンオキサイドとしては、下記一般式(d4-2)で表される化合物が好適である。
【0121】
【化11】
【0122】
〔式(d4-2)中、R13dは炭素数7以上22以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R14d及びR15dは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。p及びqは、p=0かつq=0又はp=1かつq=1を示す。〕
【0123】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、(d)成分を、組成物の配合適性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、組成物の配合適性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含有する。
【0124】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、使用時の(d)成分濃度が、組成物への配合適性の観点から、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制、組成物への配合適性及び消泡性の観点から、好ましくは200ppm以下、より好ましくは150ppm以下、更に好ましくは100ppm以下となるように使用される。
【0125】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、該組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量に対する(b)成分の含有量の割合((b)/界面活性剤の合計含有量)が、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、組成物への配合適性の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。前記割合((b)/界面活性剤の合計含有量)は、100質量%であってよい。また、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物に含まれる、界面活性剤の合計含有量は、(b)成分と(d)成分の合計含有量であってよい。
【0126】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、水を含有することができる。水は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び後述する任意成分以外の残部として用いられる。水は、不純物を含まず適度に精製されている水が好ましく使用される。井戸水、工業用水の使用も可能である。水は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、例えば、水道水、精製水、イオン交換水が好ましい。
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、水を、組成物の配合安定性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、組成物の配合安定性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下含有することができる。
【0127】
<その他成分>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、更なる任意成分として、本発明の効果に影響を与えない範囲で、洗剤や柔軟剤などに使用することが知られている成分、例えば、下記の(1)~(12)の成分を含有することができる。
【0128】
(1)pH調整剤
pH調整剤として酸剤又はアルカリ剤を含有することができる。
酸剤は、有機酸、及び無機酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
有機酸としては、繊維残留性の観点から、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フタル酸、安息香酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、及びアコニット酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、及び炭酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの無機アルカリ剤、窒素原子に結合する基のうち、1つ以上、3つ以下が炭素数2以上、4以下のアルカノール基であり、残りが炭素数1以上4以下のアルキル基又は水素原子であるアルカノールアミンを挙げることができる。このうちアルカノール基はヒドロキシアルキル基、更にヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子又はメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。アルカノールアミンとしては、2-アミノエタノール、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0129】
(2)キレート剤
キレート剤の具体例として、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸又はこれらの塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属又は低級アミン塩等が挙げられる。
【0130】
(3)再汚染防止剤及び/又はポリマー系分散剤
繊維残留性の観点から、再汚染防止剤及び/又はポリマー系分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0131】
(4)漂白剤
繊維残留性の観点から、漂白剤としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウム等が挙げられる。
【0132】
(5)漂白活性化剤
漂白活性化剤としては、テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号の一般式(I-2)~(I-7)で表される漂白活性化剤等が挙げられる。
【0133】
(6)酵素
繊維残留性の観点から、酵素としては、アミラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、プルラナーゼ、フラクトフラノシダーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
【0134】
(7)蛍光染料
蛍光染料としては、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料が挙げられる。
【0135】
(8)酸化防止剤
酸化防止剤としては、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパン酸、メチルエステル(Raschig USA(Arlington、Texas、United States)から商標名RALOX(登録商標)35で市販されている)、ブチルヒドロキシトルエン(慣用名:BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(慣用名;BHA)、ジスチレン化クレゾール、アスコルビン酸(慣用名:ビタミンC)、トコフェノール(慣用名:ビタミンE)、コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、緑茶抽出物(カテキン)等の公知の抗酸化化合物又は亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の公知の無機塩が挙げられる。
【0136】
(9)色素、抗菌防腐剤、紫外線防止剤、シリコーン等の消泡剤
【0137】
(10)水酸基を有する有機溶剤
水酸基を有する有機溶剤としては、以下の(10-1)成分~(10-6)成分から選ばれる1種以上の化合物が用いられる。
【0138】
(10-1)成分:炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する1価のアルコール
(10-1)成分として、例えばエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノールから選ばれる1価のアルコールが挙げられる。
【0139】
(10-2)成分:炭素数2以上6以下の2価以上6価以下のアルコール
(10-2)成分として、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びグリセリンから選ばれる2価又は3価のアルコールが挙げられる。2-メチル-2,4-ペンタンジオールは、ヘキシレングリコールとも称される。
【0140】
(10-3)成分:炭素数2以上4以下のアルキレングリコール単位を含有するポリアルキレングリコール
(10-3)成分として、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量400以上4,000以下のポリエチレングリコール及び重量平均分子量400以上4,000以下のポリプロピレングリコールから選ばれるポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0141】
(10-4)成分:炭素数2以上4以下のアルキレングリコール単位と、炭素数1以上4以下のアルキル基とを有する、(モノ又はポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテル
(10-4)成分として、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール及び1-エトキシ-2-プロパノールから選ばれる化合物が挙げられる。
【0142】
(10-5)成分:炭素数1以上8以下のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル
(10-5)成分として、例えば1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1,3-ジメチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、1,3-ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1-ペンチルグリセリルエーテル、2-ペンチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル及び2-エチルヘキシルグリセリルエーテルから選ばれるアルキルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0143】
(10-6)成分:炭素数2又は3のアルキレングリコール単位を有する(モノ又はポリ)アルキレングリコールの芳香族アルキルエーテル
(10-6)成分として、例えば2-フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2-ベンジルオキシエタノール及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルから選ばれる化合物が挙げられる。
【0144】
前記(10-4)成分、(10-6)成分において「(モノ又はポリ)アルキレングリコール」なる用語は、モノアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールを意味する。また、「ポリアルキレングリコール」とは、アルキレングリコール単位を2個以上9個以下の量で含有することを意味する。
【0145】
(11)ハイドロトロープ剤
ハイドロトロープ剤は、陰イオン性基を有する有機化合物であり、更にはメチル基、エチル基又はプロピル基から選ばれるアルキル基を1つ又は2つ含み、スルホン酸基又はカルボン酸基を1つ有するアルキルベンゼンカルボン酸又はアルキルベンゼンスルホン酸又はそれらの塩、並びに安息香酸又はその塩を挙げることができる。より具体的にはパラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸であり、塩はアルカリ金属塩が好ましい。
【0146】
(12)香料
香料は、マスキング効果を有し、場合によっては、それ自体が消臭性能を有する基材であることもある。
香料としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料及び特表平10-507793号公報記載の香料を使用することができる。また、特開2014-213072号公報に記載の賦香剤の技術を用いることができ、ケイ酸エステル香料やマイクロカプセル香料も使用することができる。
【0147】
本発明のマイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、下記の方法で測定された25℃におけるpHが、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
〔pHの測定方法〕
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプル(本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物)を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0148】
<繊維>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物で処理する化学繊維は、合成繊維を含む繊維(合成繊維以外の繊維を含んでいてもよい)であり、本発明における繊維には、糸などの繊維も含まれる。繊維は、所定のサイズを有する試験片として提供されてもよい。また、繊維は、一つの繊維に限定されず、複数の繊維を含んでいてもよい。
【0149】
合成繊維とは、例えば、ポリアミド系繊維(ナイロン等)、ポリエステル系繊維(ポリエステル等)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリル等)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロン等)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデン等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタン等)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラール等)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエート等)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレン等)等が挙げられる。また、天然由来成分を化学処理で取り出し、溶解して紡糸した、半合成繊維である、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックス等)、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート等)等も挙げられる。
【0150】
<繊維製品>
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、繊維製品を処理することもできる。
本発明において繊維製品とは、前記の合成繊維のような化学繊維や木綿等の天然繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品を意味する。マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、繊維製品は化学繊維を含む繊維製品である。繊維製品中の化学繊維の含有量は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、そして、100質量%以下である。繊維製品中の化学繊維の含有量は100質量%であっても良い。
【0151】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、洗浄剤組成物、柔軟剤組成物、処理剤組成物又はスプレー処理剤組成物のマイクロプラスチックファイバー低減剤として用いることができる。本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物は、マイクロプラスチックファイバーの量を低減する有効成分として、(a)成分、(b)成分、任意に(c)成分及び任意に(d)成分等の上記任意成分を含む繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤であってよい。
【0152】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物の25℃における粘度は、スプレーヤーを備えた容器での噴霧適性の観点から、好ましくは15mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下、更に好ましくは5mPa・s以下であり、そして、好ましくは1.0mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2.0mPa・s以上である。
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物の粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、No.1のローターを取り付け、該繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を200mL容量のガラス製トールビーカーに充填し、ウォーターバスにて25±0.3℃に調製し、ローターの回転数を60r/minに設定し、測定を始めてから60秒後の指示値である。
【0153】
<繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法>
本発明は、化学繊維に、下記(a)成分と、下記(b)成分と、を接触させる、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法を提供する。
(a)成分:下記の(a1)成分~(a4)成分から選ばれる1種以上のカチオン性ポリマー
(a1)成分:カチオン化セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上
(a2)成分:ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、及びジアリル第4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物
(a3)成分:カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム及びそれらの誘導体から選ばれる1種以上
(a4)成分:ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー
(b)成分:下記の(b1)成分及び(b2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤
(b1)成分:アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩
(b2)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩
【0154】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法において、(a)成分、(b)成分、任意の(c)成分、任意の(d)成分及びその他任意成分は、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物で記載した好ましい態様を適用することができる。そして、各成分の含有量の比率は、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物で記載した好ましい態様と同じである。
また、化学繊維は、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物で記載した化学繊維及び繊維製品に含まれる化学繊維が挙げられる。
【0155】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法では、化学繊維に直接本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を接触させてもよく、また、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を水で薄めて化学繊維に接触させてもよい。
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法は、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物と水を含む処理液を、化学繊維に接触させる、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法であってよい。
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法において、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液と、化学繊維とを接触させる方法は、噴霧、塗布、浸漬などが挙げられる。
【0156】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法は、化学繊維を繊維洗浄する際に化学繊維から発生するマイクロプラスチックファイバーの量を低減する、繊維用マイクロプラスチックファイバー発生量低減方法であってよい。
【0157】
前記処理液を繊維に噴霧する方法は、スプレーヤー付き容器に本発明の前記処理液を充填し、繊維に噴霧することにより、繊維と接触させる方法が好ましい。また、前記処理液を繊維に塗布する場合は、繊維に直接塗布してもよいし、布、ブラシ等の塗布具に担持させて繊維に塗布することにより、繊維と接触させてもよい。
【0158】
前記処理液は、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を水で希釈して調製することが好ましい。具体的な本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物の希釈倍率としては、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物の配合安定性の観点から、好ましくは500倍以上、より好ましくは800倍以上、そして、好ましくは5,000倍以下、より好ましくは、3,000倍以下であってよい。
【0159】
前記処理液の25℃におけるpHは、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
処理液の25℃におけるpHは、上記本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物のpHの測定方法と同様の方法で測定することができる。この際、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を含む処理液と読み替えて、該処理液のpHを測定する。
【0160】
前記処理液は、硬度を有する水が好ましい。水の硬度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは1°dH以上、より好ましくは2°dH以上、更に好ましくは3.5°dH以上、より更に好ましくは5°dH以上、より更に好ましくは7°dH以上、そして、好ましくは20°dH以下、より好ましくは18°dH以下、更に好ましくは15°dH以下である。
【0161】
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
【0162】
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/L EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/L水溶液(滴定用溶液、0.01M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mLに溶解し、イオン交換水で全量を1000mLとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mLをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2mL添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5mL添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/L EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。
(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/L EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/L EDTA・2Na溶液のファクター
【0163】
化学繊維に接触させる繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液中の(a)成分の濃度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.5ppm以上、更に好ましくは1ppm以上、より更に好ましくは5ppm以上、より更に好ましくは25ppm以上、そして、組成物の流動性の観点から、好ましく1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0164】
化学繊維に接触させる繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液中の(b)成分の濃度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは1,500ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。
【0165】
化学繊維に接触させる繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液中の(c)成分の濃度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、更に好ましくは1ppm以下である。
【0166】
化学繊維に接触させる繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液中の(d)成分の濃度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制及び組成物への配合適性の観点から、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、更に好ましくは600ppm以下である。
【0167】
また、化学繊維に接触させる繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液の温度は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上、より更に好ましくは20℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0168】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法において、繊維(繊維製品)の質量(kg)と洗浄液の量(L)の比で表される浴比の値、すなわち洗浄液の量(L)/繊維の質量(kg)(以下、この比を浴比とする場合もある)の値は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
【0169】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法において、繊維及び繊維製品を処理する時間は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは3分以上、そして、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは1時間以下、より更に好ましくは30分以下である。
【0170】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法は、回転式処理方法にも適している。回転式処理方法とは、回転機器に固定されていない繊維又は繊維製品が洗浄液と共に、回転軸の周りに回転する処理方法を意味する。回転式処理方法は回転式洗濯機により実施できる。回転式の洗濯機としては、具体的には、縦型洗濯機、二層式洗濯機、ドラム式洗濯機、パルセータ式洗濯機又はアジテータ式洗濯機、小型洗濯機、自動投入機能洗濯機が挙げられる。これらの回転式洗濯機は、それぞれ、家庭用又は工業用として市販されているものを使用することができる。
【0171】
本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法では、(a)成分と(b)成分とを含む繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物又は該組成物を含む処理液と、化学繊維とを接触させることが好ましい。
また、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法は、(a)成分を化学繊維に接触させること、(b)成分を化学繊維に接触させること、を行う、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法であってよい。
更には、本発明の繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法は、マイクロプラスチックファイバー排出抑制の観点から、化学繊維に(a)成分を接触させ、更に(a)成分を接触させた化学繊維に(b)成分を接触させる、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減方法が好ましい。
【実施例0172】
<実施例1、2>
表1、2に記載の配合組成で、下記(a)成分、(b)成分、任意の(c)成分、及び任意の(d)成分を含有する繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物(MPF低減剤組成物)を調製した。
この繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を水で500倍に希釈して、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物を含む処理液を調製し、繊維用マイクロプラスチックファイバー低減剤組成物のマイクロプラスチックファイバーの排出量の低減効果の評価を行った。なお、実施例の説明及び表1、2では、マイクロプラスチックファイバーをMPFと省略する場合がある。
【0173】
1.配合成分
<(a)成分>
・(a1)成分
(a1-1)C-HEC(150万):カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル)、重量平均分子量150万、製品名 ポイズC-150L、花王株式会社製
(a1-2)C-HEC(60万):カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル)、重量平均分子量60万、製品名 ポイズC-60H、花王株式会社製
(a1-3)AC-HEC(100万):アルキル化カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、重量平均分子量100万
【0174】
<(a1-3)の製造例>
(a1-3)のAC-HECは、下記の方法で製造した。
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(Natrosol 250HR(重量平均分子量:100万、1質量%水溶液における粘度:2,000mPa・s、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5)、ASHLAND社製)90gを温度計及びポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽根(羽根径:8cm)付き硼珪酸ガラス棒を取り付けた撹拌機を備えた1Lセパラブルフラスコに入れ、窒素フローを行った。イソプロピルアルコール(以下IPAという)389.7g、及びイオン交換水70.4gを加え、200rpmで5分間撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液10.2gを加え、更に15分間撹拌した。次に、ラウリルグリシジルエーテル(以下、「LA-EP」ともいう、エポゴーセーLA(D)、四日市合成株式会社製)3.6gを加え、80℃で13時間アルキル化反応を行った。更にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、「GMAC」ともいう、SY-GTA80、阪本薬品工業株式会社製)17.2gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。その後、90%酢酸水溶液10.2gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(CR21G III、日立工機株式会社製)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。
再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を、真空乾燥機(VR-420、株式会社東洋製作所製)を用いて80℃で12時間減圧乾燥し、エクストリームミル(MX-1200XTM、WARING社製)により解砕することで、(a1-3)の粉末状のアルキル化カチオン化ヒドロキシエチルセルロースを得た。
【0175】
・(a2)成分
(a2)MQ550(160万):塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液、製品名 Merquat550、オンデオ・ナルコ社製、重量平均分子量160万
・(a3)成分
(a3)jugar excel:カチオン化グアーガム、JAGUAR EXCEL、三晶株式会社製
・(a4)成分
(a4)PEI:ポリエチレンイミン、製品名 SokalanHP20、BASF社製
<(a’)成分>
(a’)HEC:ヒドロキシエチルセルロース、2質量%水溶液の粘度4,500~6,500mPa・s、製品名 Natrosol 250MR、ASHLAND社製
【0176】
<(b)成分>
・(b1)成分
(b1)LAS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名「ネオぺレックスG-25」、花王株式会社製
・(b2)成分
(b2)ES:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(オキシエチレンの平均付加モル数2)、商品名「エマール227」、花王株式会社製
<(c)成分>
(c)ダイクロサン:4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル、商品名「TinosanHP100」、BASF社製
<(d)成分>
(d)E110L:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレンの平均付加モル数10、商品名「エマルゲン110」、花王株式会社製
<水>
・水道水:和歌山市水
【0177】
2.MPF排出抑制能の評価
(2-1)実施例1-1~1-11、2-1~2-7、比較例1-1~1-4
表1、2のMPF低減剤組成物0.1mLと水道水(温度成り行き)49.9mLを入れた規格瓶(アズワン株式会社製PS-NO.11)に、6cm×6cmのポリエステル布(グンゼ株式会社製BODYDRY VネックTシャツブラック(型番:CL2815H)を裁断し作成)6枚を入れた。なお、浴比の異なる実施例2-5~2-7では、それぞれ、規格瓶にポリエステル布を8枚、10枚、15枚入れた。
その後、規格瓶に蓋をし、小型恒温振とう培養器(TAITEC株式会社製、型番:BR-23FP)にて25℃、150rpmの条件で10min振とうし、これを洗い工程とした。続けて布だけを取り出して和歌山市水50mLを入れた規格瓶に移し、同様の振とう操作を3min行ってすすぎ工程とした。各工程後、規格瓶から布のみを除去し、残った洗濯溶液を回収して次のMPFカウント法によりMPF排出量の定量を行った。
【0178】
(2-2)実施例1-12
200mLビーカー(IWAKI製)に、表1の濃度となるように(a)成分とイオン交換水100mLを入れ、(a)成分を含む水分散液を調製した。この水分散液に前記のポリエステル布6枚が完全に浸るように加えて浸漬させ、1時間静置した。その後、当該ポリエステル布を水分散液から取り出して金網上に広げ、一晩風乾させた。
これらの処理工程を経たポリエステル布6枚を、水道水(温度成り行き)50mLを入れた規格瓶(アズワン株式会社製PS-NO.11)に入れ、更に(b)成分を表1の濃度となるように規格瓶に調製して加えた。
(2-1)と同じ条件で、規格瓶に蓋をし、小型振とう培養器で振とうし、洗い工程を行った後、続けてすすぎ工程を行った。各工程後、規格瓶から布のみを除去し、残った洗濯溶液を回収して次のMPFカウント法によりMPF排出量の定量を行った。
【0179】
3.MPFカウント法によるMPF排出量の定量(詳細は、特願2022-153246号参照)
(3-1)測定サンプルの準備
前記洗い工程及びすすぎ工程にて取得した洗濯水を、蓋を取ったシャーレ(アズワン株式会社 アズノールシャーレ 径90mm、高さ15mm)に全量注ぎ、さらに規格瓶壁面を少量の水道水ですすいだ後、そのすすぎ水もシャーレに加えた。この際、目視可能な明らかにMPFに該当しない粗大な繊維、及び夾雑物についてはピンセットを用いて手動で除去した。その後、MPF同士が重ならないよう、スポイト等で全体を軽く撹拌して均一化したのち、MPFがシャーレ底面に沈むまで1分程度静置し、測定サンプルとした。
(3-2)スキャン
前記測定サンプルを、家庭用スキャナー(セイコーエプソン株式会社 GT-X820)にてスキャンした。
スキャン条件:「プロフェッショナルモード」、イメージタイプ:48Bitカラー、解像度:600dpi、アンシャープマスク効果「中」
(3-3)画像処理によるカウント
(3-2)で作成した画像ファイルをImage Jで読み込み、以下の画像処理工程を経てMPFの本数をカウントした。
比較例1-1で算出されたMPF排出量を100%としたときの、各MPF低減剤組成物におけるMPF排出量の割合(%)を算出し、MPF排出量(%)とした。MPF排出量の値が小さいほど、MPFの排出量低減効果が高いマイクロプラスチックファイバー低減剤組成物といえる。
なお、以下の画像処理工程は、予め記憶された設定に基づき、コンピュータにより自動で行われた。
1.Image>Type>8Bit
2.Process>Subtract Background...>Rooling ball radius:50 pixels(Light backgroundにチェック)
3.シャーレの内側の解析したい領域を円形に選択し、Image>Adjust>Thresholdで閾値を自動で設定
4.Analyze>Analyze Particlesでsizeを「3-Infenity」に設定し、summarizeを出力
5.出力されたSummaryのcountの数値を取得
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】