(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094804
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】釣糸通し具
(51)【国際特許分類】
A01K 87/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A01K87/00 620Z
A01K87/00 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211601
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬介
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA02
2B019AA14
2B019AF10
(57)【要約】
【課題】操作性及び収納性の高い釣糸通し具を提供することを課題とする。
【解決手段】糸を導入する釣糸導入部5及び釣糸を導出する釣糸導出部6を有する中通し釣竿1の内部に、釣糸Tを挿通させる際に用いられる釣糸通し具10であって、細長状を呈し熱可塑性樹脂で形成されており、ガラス転移温度を境に軟化状態又は硬化状態に形態を変更することができ、釣糸Tに連結した後、ガラス転移温度以下の硬化状態において釣糸導入部5に挿入するとともに釣糸導出部6から取り出すことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を導入する釣糸導入部及び前記釣糸を導出する釣糸導出部を有する中通し釣竿の内部に、前記釣糸を挿通させる際に用いられる釣糸通し具であって、
細長状を呈し熱可塑性樹脂で形成されており、ガラス転移温度を境に軟化状態又は硬化状態に形態を変更することができ、
前記釣糸に連結した後、ガラス転移温度以下の硬化状態において前記釣糸導入部に挿入するとともに前記釣糸導出部から取り出すことを特徴とする釣糸通し具。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移点温度が27℃~47℃であることを特徴とする請求項1に記載の釣糸通し具。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン又はポリ酢酸ビニルで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸通し具。
【請求項4】
幅が1mm以上3mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の釣糸通し具。
【請求項5】
先端に設けられ、挿入方向に向けて縮径するカバー部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸通し具。
【請求項6】
前記カバー部材に磁性体が取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の釣糸通し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸通し具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中通し釣竿の竿杆内に釣糸を挿通させる際に用いられる釣糸通し具として、釣糸を保持し、柔軟性を有する糸係止部を備えた棒状の金属製釣糸通し具が知られている。この釣糸通し具は、釣糸を糸係止部に取り付けた状態で、釣糸導入部から竿杆内部へ挿入し、釣糸導出部から引きだすことで、竿杆内に釣糸を導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の釣糸通し具は収納性が悪いため、釣糸通し具を紛失したり、釣場に持ってくるのを忘れたりする場合が多いという問題がある。また、金属製であるため竿杆内を傷つけるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、操作性及び収納性の高い釣糸通し具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、釣糸を導入する釣糸導入部及び前記釣糸を導出する釣糸導出部を有する中通し釣竿の内部に、前記釣糸を挿通させる際に用いられる釣糸通し具であって、細長状を呈し熱可塑性樹脂で形成されており、ガラス転移温度を境に軟化状態又は硬化状態に形態を変更することができ、前記釣糸に連結した後、ガラス転移温度以下の硬化状態において前記釣糸導入部に挿入するとともに前記釣糸導出部から取り出すことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、温度によって軟化状態と硬化状態に形態を変えることができる。つまり、釣糸とともに中通し釣竿に挿通させる場合は硬化状態とし、保管する場合や釣糸に連結する場合は軟化状態とする。このように、状況に合わせて形態を変形させることで、操作性と収納性を高めることができる。収納する場合は軟化状態にさせて、例えば、釣竿に巻き付けたり、収納用具に巻き付けたりすることができる。
【0008】
また、前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移点温度が27℃~47℃であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、例えば、体温で軟化状態にさせ、水に濡らして硬化状態にさせることができる。
【0010】
また、前記熱可塑性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン又はポリ酢酸ビニルで構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、安価且つ容易に材料を調達することができる。
【0012】
幅が1mm以上3mm未満であることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、操作性をより高めることができる。
【0014】
また、先端に設けられ、挿入方向に向けて縮径するカバー部材を備えていることが好ましい。
【0015】
本願発明によれば、中通し釣竿により容易に挿通させることができる。
【0016】
また、前記カバー部材に磁性体が取り付けられていることが好ましい。
【0017】
本願発明によれば、外部から磁石等で磁性体を引っ張ることができるため、中通し釣竿により容易に挿通させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作性及び収納性の高い釣糸通し具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】中通し釣竿の構成の一例を示す側面図である。
【
図3】第一実施形態に係る釣糸通し具の軟化状態及び硬化状態を示す側面図である。
【
図4】釣糸通し具に釣糸を取り付ける一例を示す図である。
【
図5】釣糸通し具を釣竿に巻き付けた状態を示す図である。
【
図6】第二実施形態に係る釣糸通し具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第一実施形態>
以下添付した図面を参照し、本発明の釣糸通し具に係る第一実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は、適宜省略する。
【0021】
中通し釣竿1は、
図1に示すように、竿杆2と、リールシート3と、エンドキャップ4と、釣糸導入部5と、釣糸導出部6と、を備えている。中通し釣竿1は、先端側から、釣糸導出部6、釣糸導入部5、リールシート3、エンドキャップ4の順番で竿杆2に設けられている。
【0022】
竿杆2は、元竿管2Aと、中竿管2Bと、穂先竿管2Cと、を備える振出式の竿杆である。元竿管2A、中竿管2B、穂先竿管2C、いずれも筒状を呈し、例えば、繊維強化樹脂で形成されている。なお、竿杆2は継ぎ竿であってもよく、竿杆2を構成する管の本数についても1本以上であれば何本であってもよい。
【0023】
リールシート3は、釣糸Tが巻回された釣用のリールRが着脱自在に固定される筒状の部材である。リールシート3の材料は特に制限されないが、本実施形態では軽量化を考慮して樹脂で形成されている。リールシート3の内部の中空部に竿杆2が挿通され、接着により固定されている。
【0024】
エンドキャップ4は、元竿管2Aの竿元側の端部を封止する有底円筒状の部材である。釣糸導入部5は、リールRから繰り出される釣糸Tを竿杆2の内部に導入する部材である。
図2に示すように、釣糸導入部5は、元竿管2Aの側面から膨出する釣糸導入ガイド5Aと、元竿管2Aの側面に形成される糸導入孔5Bとを備えている。
【0025】
釣糸導入ガイド5Aには、糸導入ガイドリング5Cが設けられており、前記糸導入孔5Bには、ガイドリング5Dが設けられている。これらの糸導入ガイドリング5C及びガイドリング5Dは、釣糸Tを円滑に摺動させるためのものであり、例えば、セラミックや金属によって形成され、所定の位置に取着される。
【0026】
中竿管2Bには、その後端部に尻栓8が取着されており、その尻栓8には、釣糸導入部5から導入された釣糸Tを案内するガイドリング8Aが取着されている。このガイドリング8Aは、例えば、セラミックやアルミ、SUS等の金属によって形成される。
【0027】
図1に示すように、穂先竿管2Cには、その先端部に釣糸導出部6が取着されている。釣糸導出部6は、例えば、樹脂や金属によって円筒状に一体形成されており、穂先竿管2Cの先端部に嵌入することで取着されている。
【0028】
次に、上記したように構成される中通し釣竿1に対して、釣糸を挿通させる際に用いられる釣糸通し具の実施形態について
図1~
図4を参照して説明する。
【0029】
図3に示すように、釣糸通し具10は、細長状を呈している。釣糸通し具10の幅は、釣糸Tとともに竿杆2内を挿通可能な範囲で適宜設定すればよいが、例えば、1mm以上3mm未満の範囲で適宜設定することができる。釣糸通し具10の断面形状は矩形状となっているが、円形状、楕円形状又は三角形状等他の形状であってもよい。また、釣糸通し具10は細長い帯状であってもよい。
【0030】
釣糸通し具10は、熱可塑性樹脂で構成され、ガラス転移温度を境に軟化状態又は硬化状態に形態を変更することができる。釣糸通し具10は、ガラス転移点温度が体温付近である熱可塑性樹脂によって構成されている。具体的には、ガラス転移点温度が27℃以上37℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。使用する熱可塑性樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル等を使用することができる。また、熱可塑性樹脂としては、2種類以上のポリマーやコポリマーを混合したポリマーアロイを使用することができる。組み合わせとしては、例えば、PA/PP(ポリアミド/ポリプロピレン)、PA/PPE(ポリアミド/ポリフェニレンエーテル)、PA/ABS(ポリアミド/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、PBT/ABS(ポリブチレンテレフタラート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、PP/PC(ポリプロピレン/ポリカーボネート)等が挙げられる。
【0031】
軟化状態の釣糸通し具10は、軟化状態において柔軟性を有しており、所望の形に変更することができる。例えば、
図5に示すように、元竿管2Aの外周面に巻き付けて保管することができる。また、具体的な図示は省略するが、収納用具に巻き付けて保管することもできる。また、軟化状態において、
図4に示すように釣糸Tに結んで連結することができる。
【0032】
釣糸通し具10は、
図3に示すように、水等で濡らしてガラス転移温度未満にすることで、硬化状態にすることができる。例えば、釣糸通し具10真っすぐに張った状態で水につけることで、硬化した直線状の釣糸通し具10を形成することができる。なお、釣糸通し具10を冷やす手段は水のみに限定されない。例えば、外気温が20度を下回る場合には、真っすぐに張った状態で置いておくだけでも硬化状態にすることができる。
【0033】
例えば、軟化状態にして釣糸Tと釣糸通し具10とを連結させた後、釣糸通し具10に水を接触させて直線状の硬化状態とする。その後、釣糸Tを取り付けた状態の釣糸通し具10を釣糸導入部5から挿入し、竿杆2の内部を移動させ、先端の釣糸導出部6から取り出すことで、釣糸Tを竿杆2の内部へ挿通させることができる。
【0034】
以上説明した本実施形態に係る釣糸通し具10によれば、細長状を呈し、熱可塑性樹脂で形成されており、ガラス転移温度を境に軟化状態又は硬化状態に形態を変更することができる。これにより、利用者が温度によって軟化状態と硬化状態に形態を変えることができる。つまり、保管する場合や釣糸Tに連結する場合は、釣糸通し具10の温度を高めて、ガラス転移温度以上にすることで、釣糸通し具10を軟化状態にする。
【0035】
一方、釣糸Tとともに中通し釣竿1に挿通させる場合は、釣糸通し具10の温度を下げて、ガラス転移温度未満にすることで、釣糸通し具10を硬化状態にする。硬化状態となった釣糸通し具10を釣糸導入部5に挿入するとともに釣糸導出部6から取り出すことで竿杆2内に釣糸Tを導くことができる。このように、状況に合わせて形態を変形させることで、操作性と収納性を高めることができる。また、釣糸通し具10は、樹脂製であるため中通し釣竿1の内部を傷つけるのを防ぐことができる。
【0036】
また、熱可塑性樹脂は、ガラス転移点温度が27℃~47℃である。つまり、ガラス転移温度が人間の体温付近の温度の熱可塑性樹脂を使用することで、例えば、釣糸通し具10を手で握ることで、温度を上昇させ軟化状態にすることができる。また、海水や川等の水で濡らすことで、釣糸通し具10を冷やして硬化状態とすることができる。そのため、軟化状態及び硬化状態の切り替えを特別な工具等を使用しなくとも容易に行うことができる。
【0037】
また、熱可塑性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン又はポリ酢酸ビニルで構成されている。そのため、容易に軟化状態及び硬化状態の切り替えをすることができる。また、安価且つ容易に材料を調達することができる。
【0038】
また、釣糸通し具10の幅が1mm以上であると、硬化状態で竿杆2に挿入時に途中で折れ曲がり、挿入し難くなるのを防ぐことができる。また、釣糸通し具10の幅が3mm未満であると、竿杆2内を挿通させやすくなるとともに、軟化状態時に形態を変化させやすくすることができる。そのため、操作性をより高めることができる。
【0039】
<第二実施形態>
次に、
図6に示すように、本発明の第二実施形態に係る釣糸通し具10Aについて説明する。第二実施形態の釣糸通し具10Aは、釣糸通し具(第一実施形態の釣糸通し具10と同じ)の先端部分に、カバー部材20が取り付けられている点で、第一実施形態とは相違する。
【0040】
カバー部材20は、一対のカバー本体21同士を重ね合わせて構成されている。カバー本体21は、内部が中空となっている。カバー本体21は、ABS樹脂、ASA樹脂、PLA樹脂、PP樹脂、PET樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、また、これらの樹脂にカーボンなどの強化繊維を含ませた樹脂等で形成されている。カバー本体21は、例えば、3Dプリンタ等により容易に製造することができる。
【0041】
カバー本体21は、半ドーム状を呈しており、底部21aと、後端部21bと、突出部21cと、先端部21dとを備えている。底部21aは、もう一方のカバー本体21と対向する部位である。後端部21bは、底部21aの後端から、底部21aに対して垂直に立設し、釣糸通し具10Aと接触する部位である。突出部21cは、底部21aから離間する方向に突出する部位である。先端部21dは、底部21aの先端から、底部21aに対して垂直に立設する部位である。カバー本体21は、突出部21cから先端部21dに向かうにつれて縮径するように構成されている。
【0042】
カバー部材20は、さらに磁性体22を備えている。磁性体22は、磁性を帯びることが可能な物質である。磁性体22は例えば、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、ニッケル、フェライト、カドリニウム等で構成されている。本実施形態では、磁性体22は、突出部21cと先端部21dの間の一部に配置しているが、カバー本体21の全体に配置してもよい。また、磁性体22を二つ以上配置してもよい。
【0043】
第二実施形態に係る、釣糸通し具10Aによっても、第一実施形態と略同様の効果を奏することができる。また、先端に設けられ、挿入方向に向けて縮径するカバー部材20を備えているため、竿杆2内により容易に挿通させることができる。また、カバー本体21,21同士で釣糸Tと釣糸通し具10Aの結び目を覆うことができるため、釣糸Tを挿通させる際に結び目が竿杆2の内部で引っ掛かるのを防ぐことができる。
【0044】
また、カバー部材20に磁性体22が取り付けられているため、竿杆2の外部から磁石等で磁性体22を誘導することができるため、竿杆2に釣糸Tを容易に挿通させることができる。
【0045】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では竿元側に釣糸導入部を設け、竿先側に釣糸導出部を設けたが、竿先側から釣糸通し具10及び釣糸Tを導入し、竿元側から導出させてもよい。つまり、竿先側を釣糸導入部とし、竿元側を釣糸導出部としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 中通し釣竿
5 釣糸導入部
6 釣糸導出部
10 釣糸通し具
T 釣糸