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特開2024-94809回転式ポンプゲート及び回転式ポンプゲートの制御方法
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  • 特開-回転式ポンプゲート及び回転式ポンプゲートの制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094809
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】回転式ポンプゲート及び回転式ポンプゲートの制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/42 20060101AFI20240703BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E02B7/42
E02B7/20 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211615
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】繁原 領太
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA41
2D019CA12
(57)【要約】
【課題】排水能力も高く、さらにポンプ本体に異物が詰まり難く、詰まっても除去しやすく、景観調和性も高いポンプゲートを提供すること。
【解決手段】水路Rを横断して配置される断面円弧状の扉体20と、扉体20に貫通して固定され水路Rの一方から他方へ水を排水する排水ポンプ4を有するゲート本体2と、ゲート本体2を回転駆動すると共に任意の回転角度で固定できるようにする回転駆動機構3と、を備え、排水ポンプ4の吸込口が扉体20の断面円弧の端部に設けられている回転式ポンプゲート1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を横断して配置される断面円弧状の扉体と、前記扉体に貫通して固定され前記水路の一方から他方へ水を排水する排水ポンプを有するゲート本体と、
前記ゲート本体を回転駆動すると共に任意の回転角度で固定できるようにする回転駆動機構と、を備え、
前記排水ポンプの吸込口が前記扉体の断面円弧の端部に設けられている回転式ポンプゲート。
【請求項2】
前記回転駆動機構と前記排水ポンプを制御する制御部と、
前記水路の水位を計測する水位計と、を備え、
前記制御部が、前記水位計によって計測された前記水路の水位に基づいて、前記回転駆動機構を制御して前記ゲート本体を回転駆動する請求項1に記載の回転式ポンプゲート。
【請求項3】
前記ゲート本体が、前記水路の水位が所定の水位よりも低い場合の第1回転角度と、前記水路の水位が所定の水位よりも高い場合の第2回転角度との間で前記制御部によって切替可能であって、前記第1回転角度の場合の前記排水ポンプの吸込口の高さが、前記第2回転角度の場合の前記排水ポンプの吸込口の高さよりも低い位置にある請求項2に記載の回転式ポンプゲート。
【請求項4】
前記制御部は、前記回転駆動機構を制御して前記ゲート本体を回転させて前記排水ポンプの吸込口を水路下流側に向けた後に前記排水ポンプの羽根車を逆回転させる異物除去動作をするように構成されている請求項2に記載の回転式ポンプゲート。
【請求項5】
異物が前記排水ポンプに詰まったことを検知する異物検知部を備え、前記異物検知部が前記排水ポンプに異物が詰まったことを検知した場合、前記制御部が前記回転駆動機構を制御して前記異物除去動作をするように構成されている請求項4に記載の回転式ポンプゲート。
【請求項6】
前記ゲート本体の上端側に止水壁を備え、前記扉体に支持円盤が設けられており、前記回転駆動機構が前記支持円盤を介して前記ゲート本体を回転駆動する請求項1に記載の回転式ポンプゲート。
【請求項7】
水路を横断して配置される断面円弧状の扉体と、前記扉体に貫通して固定され前記水路の一方から他方へ水を排水する排水ポンプを有するゲート本体と、
前記ゲート本体を回転駆動すると共に任意の回転角度で固定できるようにする回転駆動機構と、
前記回転駆動機構と前記排水ポンプを制御する制御部と、を備える回転式ポンプゲートの制御方法において、
前記回転駆動機構により前記ゲート本体を回転させて前記排水ポンプの吸込口を水路下流側に向けた後に前記排水ポンプの羽根車を逆回転させる工程、を包含する回転式ポンプゲートの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川などの水路の途中に設置され、堰作用を担う扉体と、該扉体の上流側から下流側に水を強制排水することが可能な排水ポンプとを備えるポンプゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポンプゲートとしては、例えば、以下の特許文献1及び2に示されるようなものが知られている。特許文献1に示されるポンプゲートは、流水路を開閉し且つ横軸ポンプを有する昇降自在な扉体を備えるものである。また、特許文献2に示されるポンプゲートは、円弧状に湾曲する表面側スキンプレートと平板状の背面側スキンプレートを備えて弓形断面形状としてなる扉体を備え、該背面側スキンプレートに開口した吸入口と該表面側スキンプレートに開口した吐出口とを連通する流路を形成し、該流路内の途中位置に排水ポンプを設けてある回転式のポンプゲートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-55946号公報
【特許文献2】特開2003-155731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるポンプゲートは、ポンプ本体が水平方向に配置されており、排水能力を高めるためにポンプ本体を大型化するとポンプゲートの重心位置が扉体から遠ざかってしまい、昇降動作や止水機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、ポンプ本体を大型化することは容易ではない。また、扉体を引き上げるための構造物が地上に突出してしまうため、設備の規模が大きくなり、都市景観が損なわれ易いという側面もある。
【0005】
一方、特許文献2に示される回転式のポンプゲートの排水ポンプは、ポンプ本体に異物が詰まった場合の対処について触れておらず、ポンプゲートの機能が必ずしも十分と言えるものではない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の昇降式ポンプゲートと比べて排水能力が高く、ポンプ本体に異物が詰まり難く、且つ詰まっても異物除去が容易で、さらに景観調和性も高いポンプゲートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転式ポンプゲートの特徴は、水路を横断して配置される断面円弧状の扉体と、前記扉体に貫通して固定され前記水路の一方から他方へ水を排水する排水ポンプを有するゲート本体と、
前記ゲート本体を回転駆動すると共に任意の回転角度で固定できるようにする回転駆動機構と、を備え、
前記排水ポンプの吸込口が前記扉体の断面円弧の端部に設けられている点にある。
【0008】
本発明に係る回転式ポンプゲートにおいては、前記回転駆動機構と前記排水ポンプを制御する制御部と、
前記水路の水位を計測する水位計と、を備え、
前記制御部が、前記水位計によって計測された前記水路の水位に基づいて、前記回転駆動機構を制御して前記ゲート本体を回転駆動すると好適である。
【0009】
本発明に係る回転式ポンプゲートにおいては、前記ゲート本体が、前記水路の水位が所定の水位よりも低い場合の第1回転角度と、前記水路の水位が所定の水位よりも高い場合の第2回転角度との間で前記制御部によって切替可能であって、前記第1回転角度の場合の前記排水ポンプの吸込口の高さが、前記第2回転角度の場合の前記排水ポンプの吸込口の高さよりも低い位置にあると好適である。
【0010】
本発明に係る回転式ポンプゲートにおいては、前記制御部は、前記回転駆動機構を制御して前記ゲート本体を回転させて前記排水ポンプの吸込口を水路下流側に向けた後に前記排水ポンプの羽根車を逆回転させる異物除去動作をするように構成されていると好適である。
【0011】
本発明に係る回転式ポンプゲートにおいては、異物が前記排水ポンプに詰まったことを検知する異物検知部を備え、前記異物検知部が前記排水ポンプに異物が詰まったことを検知した場合、前記制御部が前記回転駆動機構を制御して前記異物除去動作をするように構成されていると好適である。
【0012】
本発明に係る回転式ポンプゲートにおいては、前記ゲート本体の上端側に止水壁を備え、前記扉体に支持円盤が設けられており、前記回転駆動機構が前記支持円盤を介して前記ゲート本体を回転駆動すると好適である。
【0013】
本発明に係る回転式ポンプゲートの制御方法の特徴は、水路を横断して配置される断面円弧状の扉体と、前記扉体に貫通して固定され前記水路の一方から他方へ水を排水する排水ポンプを有するゲート本体と、
前記ゲート本体を回転駆動すると共に任意の回転角度で固定できるようにする回転駆動機構と、
前記回転駆動機構と前記排水ポンプを制御する制御部と、を備える回転式ポンプゲートの制御方法において、
前記回転駆動機構により前記ゲート本体を回転させて前記排水ポンプの吸込口を水路下流側に向けた後に前記排水ポンプの羽根車を逆回転させる工程、を包含する点にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、扉体に貫通して排水ポンプを設けることで、ポンプサイズによって重心が崩れることがないためポンプの大型化が容易になる。また、水路に対して排水ポンプを任意の回転角度で駆動することができるため、水位が高い場合は吸込口を高くすることで、水路の底に沈殿する異物を吸い上げ難くし、水位が低い場合は吸込口を低くすることで低水位排水も実施することが可能となる。さらに、ゲート本体の回転角度によっては、排水ポンプを扉体の裏側に隠すこともできるため、回転式ポンプゲートの外観が周囲の景観に与える影響についても小さくすることができる。また、従来のポンプゲートでは、ポンプ本体に枯葉やゴミ等の異物が詰まった場合に人の手による除去作業が必要となっているが、本発明に係る回転式ポンプゲートによれば、ゲート本体を回転させて、排水ポンプの吸込口を河川下流側に向けて排水ポンプの異物除去動作を実施することによって、人の手によらなくとも、排水ポンプに詰まった異物を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】回転式ポンプゲートの外観斜視図である。
図2】晴天時の回転式ポンプゲートを示す説明図である。
図3】先行待機運転時の回転式ポンプゲートを示す説明図である。
図4】雨天時の回転式ポンプゲートを示す説明図である。
図5】異物除去動作時の回転式ポンプゲートを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る回転式ポンプゲートの実施形態について、図面を参照しながら説明をする。尚、図中の白抜きの矢印は水路の一例としての河川Rの流れを示しており、図中の実線の矢印は排水ポンプ4による排水方向を示している。
【0017】
(回転式ポンプゲートの構成)
図1に示すように、本実施形態における回転式ポンプゲート1は、断面円弧状の扉体20を有するゲート本体2と、ゲート本体2を回転駆動すると共に任意の回転角度で固定できるようにする回転駆動機構3と、ゲート本体2の河川上流側から河川下流側に水を強制排水する排水ポンプ4と、ゲート本体2の上端側に設けられる止水壁5と、を備える。
【0018】
扉体20の長手方向の一端に支持円盤22が設けられており、該支持円盤22は、その中心位置に配した回転軸23を介して回転自在に支持されている。
【0019】
本実施形態における回転駆動機構3は、支持円盤22の外周縁部に設けられているラック30と、駆動装置としての油圧モータ31と、該油圧モータ31の出力軸に一体に取付けてラック30に噛合させたピニオン32とを備えてなるラック・アンド・ピニオン機構により構成される。
【0020】
油圧モータ31は、例えば、河川沿いの堤防等の上に構築される操作室6内に設置して良い。尚、この操作室6内には、後述する制御部を備える操作盤60等も設置して良い。
【0021】
回転駆動機構3は、支持円盤22を介してゲート本体2を回転駆動すると共に、任意の回転角度でゲート本体2を固定可能に構成されている。
【0022】
また、図示しないが、本実施形態における回転式ポンプゲート1は、回転駆動機構3と排水ポンプ4の動作を制御する制御部と、河川Rの水位を計測する水位計と、枯葉などの異物が排水ポンプ4に詰まったことを検知する異物検知部と、をさらに備える。
【0023】
制御部は、マイクロコンピュータ、マイクロコンピュータで実行されるプログラム等を記憶したメモリ等の周辺機器、及びその他の機能ブロックなどを備えて構成されている。回転駆動機構3、排水ポンプ4、水位計、および異物検知部は、適切な伝送路を介して制御部に接続されている。
【0024】
本発明に適用可能な水位計としては、接触式の水位計や非接触式の水位計等が挙げられる。接触式の水位計としては、例えば、フロート式、ガイドロープ式、静電容量式、圧力式、電極式の水位計が挙げられ、非接触式の水位計としては、例えば、電波式、超音波式の水位計が挙げられる。尚、水位計については、ゲート本体2の河川上流側と河川下流側のそれぞれに設けることが望ましい。
【0025】
本発明に適用可能な排水ポンプ4としては、例えば公知の横軸水中ポンプが挙げられる。本実施形態では扉体20の長手方向に沿って内側に2機の排水ポンプ4が設けられている。また、排水ポンプ4の吸込口40と吐出口41は扉体20の断面円弧上に設けられており、排水ポンプ4の吐出口41は扉体20に開口した開口部と直結している。尚、排水ポンプ4の設置数についてはこの構成に限定されるものではなく、扉体20の大きさ(水路を横断する方向の長さ)に応じて、例えば、1機の場合や、あるいは3機、4機に増やすなど、適宜設定して良い。
【0026】
尚、図示しないが、排水ポンプ4の吐出口41の側には、水の逆流を防止するための逆流防止弁(例えばフラップ弁等)が設けられている。また逆流防止弁は、ゲート本体2を回転駆動させたときに止水壁5と干渉しない位置に設けられている。
【0027】
本実施形態における排水ポンプ4の吸込口40は、扉体20の断面円弧の一端に設けられており、排水ポンプ4の吐出口41は扉体20の断面円弧の中間部分に設けられている。尚、吸込口40を設ける位置についてはこの構成に限定されるものではなく、他にも例えば、扉体20の断面円弧の一端の側、あるいは扉体20の断面円弧の一端と中間部分との間などに設けるようにしても良い。
【0028】
制御部は、水位計によって計測された河川Rの水位に基づいて、回転駆動機構3を制御してゲート本体2を回転駆動するように構成されている。詳細には、ゲート本体2が、河川Rの水位が所定の水位よりも低い場合の第1回転角度(図3参照)と、河川Rの水位が所定の水位よりも高い場合の第2回転角度(図4参照)との間で制御部によって切替可能であって、第1回転角度の場合の排水ポンプ4の吸込口40の高さが、第2回転角度の場合の排水ポンプ4の吸込口40の高さよりも低い位置にあるように(図3及び図4参照)、制御部が回転駆動機構3を介してゲート本体2を回転駆動する。このため排水ポンプ4は、制御部によってゲート本体の任意に固定された回転角度において、排水ポンプ4が駆動することができるように構成されている。
【0029】
なお、河川Rの水位が所定の水位よりも低い場合の第1回転角度は、吸込口40が吐出口41より低い位置になるような傾斜姿勢が好ましく、更に好ましくは、排水ポンプ4を正常に運転可能な回転角度の中において、最も吸込口40が低い位置になる傾斜姿勢が好ましい。また、河川Rの水位が所定の水位よりも高い場合の第2回転角度は水平姿勢であってもよいし、吸込口40が吐出口41より高い位置になるような傾斜姿勢であってもよい。
【0030】
(回転式ポンプゲートの運転方法)
図2に示すように、晴天時において河川Rの水位が低水位に維持されている場合、回転式ポンプゲート1におけるゲート本体2の扉体20は開放状態となっており、河川Rの水はゲート本体2の河川上流側から河川下流側へと自然流下する。
【0031】
このとき、制御部が回転駆動機構3を介してゲート本体2を回転駆動して、排水ポンプ4を上側に配置させる。これにより、排水ポンプ4が扉体20の裏側に隠れる状態となり、少なくともゲート本体2の河川上流側からは排水ポンプ4が見えなくなるため景観が良くなる。
【0032】
雨が降りだして河川Rの水位が上昇し始めると、図3に示すように、制御部が回転駆動機構3を介してゲート本体2を回転駆動して(図3に示される例では、ゲート本体2は紙面上時計回りに回転する)、扉体20によって河川Rを堰き止めて先行待機運転を実施する。
【0033】
制御部は、水位計によって計測された河川Rの水位に基づいて、回転駆動機構3を制御してゲート本体2を回転駆動するように構成されており、まだ水位がそれほど高くはない状態では、排水ポンプ4の吸込口40はできるだけ河底に近い位置に配置される。これにより、排水ポンプ4の吸込口40の高さは吐出口41よりも低い位置となるため、排水ポンプ4内の排水流路が斜めの状態となり、この状態でゲート本体2の河川上流側から河川下流側に水が強制排水される。
【0034】
雨が降り続き、河川Rの水位が高水位に維持されるようになると、図4に示すように、扉体20によって河川Rを堰き止めたまま、制御部が回転駆動機構3を介してゲート本体2をさらに回転駆動して、排水ポンプ4の吸込口40の位置と河底との距離が大きくなるようにする。すなわち、吸込口40の吸込み流路を大きく確保する。
【0035】
これにより、効率的に吸込口40から水を吸い込むことができる。また、河底に沈殿した異物を巻き上げながら吸い込むことによって生じる異物詰まりを防止することができる。なお、図4に示す排水ポンプ4は排水流路が略水平状態であるが、これに限らない。吸込口40の位置が先行待機運転時の吸込口40の位置より高ければ排水流路が傾斜状態であってもよい。
【0036】
雨が降り止んで河川Rの水位が下がり始めると、扉体20によって河川Rを堰き止めたまま、制御部が回転駆動機構3を介してゲート本体2を今度は逆方向に回転駆動して(図4に示される例では、ゲート本体2は紙面上反時計回りに回転する)、図3に示すように、河川Rの水位に合わせて、排水ポンプ4の吸込口40の高さをより低い位置に設定する。
【0037】
再び晴天となり、河川Rの水位が低水位に維持されるようになると、制御部が回転駆動機構3を介してゲート本体2を逆方向にさらに回転駆動して、図2に示すように、ゲート本体2の扉体20を開放状態として、河川Rの水をゲート本体2の河川上流側から河川下流側へ自然流下させる。
【0038】
以上より、制御部は、河川Rの水位の低下に応じて排水ポンプ4の吸込口40を下方へ移動するように回転駆動機構3を介してゲート本体2を回転駆動し、河川Rの水位の上昇に応じて排水ポンプ4の吸込口40が上方へ移動するように回転駆動機構3を介してゲート本体2を回転駆動する。
【0039】
従って、本発明によれば、河川Rに対して排水ポンプ4を任意の回転角度で駆動することができるため、河川Rの水位に合わせて排水ポンプ4の吸込口40の位置を変更することができる。これにより、水位が高い場合は吸込口40を高くすることで、河川Rの底に沈殿する異物を吸い上げ難くし、水位が低い場合は吸込口40を低くすることで低水位排水も実施することが可能となる。
【0040】
(排水ポンプにおける異物除去動作)
排水ポンプ4が河川Rに浮遊する枯葉やゴミ等の異物を吸い込み、羽根車42に引っかかって詰まってしまった場合、排水ポンプ4のモータの回転異常が生じる。異物検知部が排水ポンプに異物が詰まったことを検知した場合、制御部が回転駆動機構を制御して、後述の異物除去動作をするように構成しても良い。尚、異物を検知する方法としては、回転異常信号を検知する形態に限られるものではなく、排水ポンプ4の振動や騒音など他の一般的な異常症状を検知する形態であってもよい。
【0041】
異物検知部が排水ポンプ4のモータの回転異常を示す信号を検知した場合、図5に示すように、制御部が回転駆動機構3を制御してゲート本体2を回転させて、ゲート本体2の扉体20を開放状態としつつ排水ポンプ4の吸込口40を河川下流側に向けた後、排水ポンプ4の羽根車42を逆回転させる。これにより、排水ポンプ4に詰まった異物は、排水ポンプ4の吸込口40から吐き出されて河川Rの下流側に流下する。
【0042】
即ち、回転式ポンプゲート1における排水ポンプ4の異物除去方法は、排水ポンプ4のモータの回転異常信号を検知する異常検知工程と、回転異常信号を検知した場合に、回転駆動機構3によりゲート本体2を回転させて排水ポンプ4の吸込口40を河川下流側に向けた後、前記排水ポンプ4の羽根車42を逆回転させる工程と、を包含する。
【0043】
尚、排水ポンプ4の異物除去方法は、ゲート本体2の河川上流側と河川下流側のそれぞれに所定の水位が確保されている場合に、より効率的に実施することができるため、必要に応じて、ゲート本体2の河川上流側と河川下流側のそれぞれの水位を検知する水位検知工程を実施するようにしても良い。また、異物が吸込口に張り付いた程度であって、排水ポンプ4の吸込口40を河川下流側に向けるだけで異物を除去できるような場合は、必ずしも、羽根車42を逆回転させて異物除去処理を実施する必要はない。
【0044】
上述の異物除去動作を、所定時間もしくは所定回数行った後、羽根車42を正回転させて異物検知部が異物を検知しないことを確認する。そして、問題が検知されなければ元の運転に戻り、問題があれば停止して管理者へ通知するように構成する。
【0045】
〔その他の実施形態〕
1.上述の実施形態では、回転式ポンプゲートが、回転駆動機構と排水ポンプを制御する制御部と、河川の水位を計測する水位計とを備える構成が例示されているが、この構成に限定されるものではなく、制御部や水位計を用いることなく、例えば、作業者が目視により河川等の水位を確認しつつ、操作盤を操作してゲート本体を回転駆動させるようにしても良い。
【0046】
2.上述の実施形態では、ゲート本体が、河川の水位が所定の水位よりも低い場合の第1回転角度と、河川の水位が所定の水位よりも高い場合の第2回転角度との間で制御部によって切替可能である構成が例示されているが、この構成に限定されるものではなく、他にも例えば、河川の水位の低下に応じて排水ポンプの吸込口を下方へ移動するように制御部が回転駆動機構を介してゲート本体を回転駆動し、河川の水位の上昇に応じて排水ポンプの吸込口が上方へ移動するように制御部が回転駆動機構を介してゲート本体を回転駆動するように構成しても良い。
【0047】
3.上述の実施形態では、異物検知部が排水ポンプに異物が詰まったことを検知した場合に異物除去動作を実施する構成が例示されているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、作業者が排水ポンプの動作異常に気付いた場合に異物除去動作を実施するようにしても良い。
【0048】
4.上述の実施形態では、回転式ポンプゲートが、止水壁を備える構成が例示されているが、この構成に限定されるものではなく、止水壁は必要に応じて設けるようにして良い。
【0049】
尚、上述のように図面を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は当該図面の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る回転式ポンプゲートは、例えば、中小河川や水路などの内水氾濫を防止する雨水排水設備として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 回転式ポンプゲート
2 ゲート本体
20 扉体
22 支持円盤
23 回転軸
3 回転駆動機構
30 ラック
31 油圧モータ
32 ピニオン
4 排水ポンプ
40 吸込口
41 吐出口
42 羽根車
5 止水壁
6 操作室
60 操作盤
R 河川
C 内水貯留可能量
図1
図2
図3
図4
図5