(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009481
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20240116BHJP
B41J 2/34 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B41J2/335 101D
B41J2/335 101C
B41J2/335 101J
B41J2/335 101H
B41J2/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111035
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC02
2C065JC06
2C065JC10
2C065JC11
2C065JC14
2C065JD05
2C065JD09
2C065JD11
2C065JD16
2C065JH05
2C065JH10
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑えつつ、印字品質を向上させることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッド1Aは、基板1と、基板1に支持され、主走査方向xに配列された複数の発熱部41を有する抵抗体層4と、基板1に支持され、複数の発熱部41への通電経路を構成する配線層3と、基板1と抵抗体層4との間にある絶縁層19と、を備える。基板1は、絶縁層19が形成された主面と、主面から突出して主走査方向xに延びる凸部13と、凸部13の頂部130を覆うグレーズ層15と、を有する。凸部13は、頂部130と、頂部130に対して副走査方向yに繋がり、主面に対して傾斜した傾斜部131とを有する。グレーズ層15は、主面を平面視した場合に複数の発熱部41と重なる位置に空洞部14を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に支持され、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
前記基板と前記抵抗体層との間にある絶縁層と、を備え、
前記基板は、
前記絶縁層が形成された主面と、前記主面から突出して主走査方向に延びる凸部と、
前記凸部の頂部を覆うグレーズ層と、を有し、
前記凸部は、前記頂部と、前記頂部に対して副走査方向に繋がり、前記主面に対して傾斜した傾斜部とを有し、
前記グレーズ層は、前記主面を平面視した場合に前記複数の発熱部と重なる位置に空洞部を有する、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記基板は、単結晶半導体からなる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記基板は、Siからなる、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記発熱部は、前記頂部と前記傾斜部との境界を跨いで、前記頂部の副走査方向における少なくとも一部と前記傾斜部の副走査方向における少なくとも一部とに形成されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記凸部は、前記頂部を挟んで副走査方向両側に位置する一対の前記傾斜部を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記凸部の前記頂部の副走査方向における大きさよりも小さい、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
単結晶半導体からなる基板材料に、主面から突出して主走査方向に延びる凸部を形成する工程と、
前記凸部の頂部にレジストを主走査方向に塗布する工程と、
前記レジストを塗布した前記凸部の前記頂部を覆うようにグレーズを主走査方向に塗布する工程と、
前記頂部に塗布した前記レジストおよび前記グレーズを焼成し、前記レジストを除去して前記グレーズを焼成したグレーズ層に空洞部を形成する工程と、を含む、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項8】
単結晶半導体からなる基板材料に、主面から突出して主走査方向に延びる凸部を形成する工程と、
前記凸部を覆う酸化膜を形成する工程と、
前記凸部の頂部を覆う前記酸化膜をエッチングして、前記頂部を覆う前記酸化膜に凹部を主走査方向に沿って形成し、および前記凹部の壁部に前記凹部の内部と外部とを連通する溝を少なくとも1つ形成する工程と、
前記凹部を埋める中間部材を塗布する工程と、
前記中間部材を塗布した前記凹部を覆うようにグレーズを主走査方向に塗布する工程と、
前記グレーズを焼成してグレーズ層を形成する工程と、
前記溝を介して前記中間部材をエッチングで除去して、前記グレーズ層に空洞部を形成する工程と、を含む、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成された抵抗体に通電して発熱させることで、感熱記録紙などの印刷媒体に印字することができるサーマルプリントヘッドが提供されている。特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドは、配線層および抵抗体層が形成された第1基板と、ドライバICが搭載された第2基板とを備える。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーマルプリントヘッドで印刷媒体に印字するとき、抵抗体層の発熱部が、通電により発熱する。発熱部の熱が印刷媒体に伝達されることにより印刷媒体が発色し、印刷がなされる。そのため、通電により抵抗体層で生じた熱が発熱部から逃げると、発熱部の熱が十分に印刷媒体に伝達されず、印字品質が低下することになる。逆に、印字品質を低下させないため、発熱部から逃げる熱を考慮して抵抗体層に通電する電力を多くすることも可能であるが、消費電力が多くなる。
【0005】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、消費電力を抑えつつ、印字品質を向上させることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、基板と、基板に支持され、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、基板に支持され、複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、基板と抵抗体層との間にある絶縁層と、を備える。基板は、絶縁層が形成された主面と、主面から突出して主走査方向に延びる凸部と、凸部の頂部を覆うグレーズ層と、を有する。凸部は、頂部と、頂部に対して副走査方向に繋がり、主面に対して傾斜した傾斜部とを有し、グレーズ層は、主面を平面視した場合に複数の発熱部と重なる位置に空洞部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るサーマルプリントヘッドによれば、グレーズ層が、主面を平面視した場合に複数の発熱部と重なる位置に空洞部を有することで発熱部から熱を逃げ難くし、消費電力を抑えつつ、印字品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
【
図3】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図5】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
【
図6】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図7】シミュレーションを行うサーマルプリントヘッドの概略を示す断面図である。
【
図8】空洞部の高さとサーマルプリントヘッドのエネルギー比率との関係を示すグラフである。
【
図9】空洞部の幅とサーマルプリントヘッドのエネルギー比率との関係を示すグラフである。
【
図10】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図11】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図12】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図13】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図14】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部平面図である。
【
図15】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図16】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図17】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図18】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図19】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図20】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部平面図である。
【
図21】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図22】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【
図23】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
(サーマルプリントヘッドの構造)
図1~
図6では、本開示の実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示している。実施の形態1のサーマルプリントヘッドA1は、第1基板1、絶縁層19、保護層2、配線層3、抵抗体層4、第2基板5、ドライバIC7および放熱部材8を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ91との間に挟まれて搬送される印刷媒体(図示略)に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0011】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部断面図である。
図6は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大断面図である。
図1~
図3においては、理解の便宜上、保護層2を省略している。
図1および
図2においては、理解の便宜上、後述の保護樹脂78を省略している。
図2においては、理解の便宜上、後述のワイヤ61を省略している。
図1~
図3においては、副走査方向yの図中下側が上流側であり、図中上側が下流側である。
図4~
図6においては、副走査方向yの図中右側が上流側であり、図中左側が下流側である。
【0012】
第1基板1は、配線層3および抵抗体層4を支持するものであり、本開示の基板に相当する。第1基板1は、主走査方向xを長手方向とし、副走査方向yを幅方向とする細長矩形状である。以降の説明においては、第1基板1の厚さ方向を厚さ方向zとして説明する。第1基板1の大きさは特に限定されないが、一例を挙げると、第1基板1の厚さは、たとえば300μm以上1000μm以下であり、たとえば725μmである。また、第1基板1の主走査方向x寸法は、たとえば25mm以上160mm以下であり、副走査方向y寸法は、たとえば1.0mm以上5.0mm以下である。
【0013】
実施の形態1においては、第1基板1は、単結晶半導体からなり、たとえばSiによって形成されている。
図4および
図5に示すように、第1基板1は、第1主面11および第1裏面12を有する。第1主面11および第1裏面12は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向いている。配線層3および抵抗体層4は、第1主面11の側に設けられる。第1主面11は、本開示の主面に相当する。
【0014】
第1基板1は、凸部13を有する。凸部13は、第1主面11から厚さ方向zに突出しており、主走査方向xに長く延びている。図示された例においては、凸部13は、第1基板1の副走査方向y下流側寄りに形成されている。また、凸部13は、第1基板1の一部であることから、単結晶半導体であるSiからなる。
【0015】
実施の形態1においては、凸部13は、頂部130、一対の傾斜部131を有する。頂部130は、凸部13のうち第1主面11からの距離が最も大きい部分である。実施の形態1においては、頂部130は、第1主面11と平行な平面からなる。頂部130は、厚さ方向z視において主走査方向x方向に長く延びる細長矩形状の面である。
【0016】
一対の傾斜部131は、頂部130の副走査方向y両側に繋がっている。一対の傾斜部131は、各々が第1主面11に対して角度αだけ傾斜している。傾斜部131は、厚さ方向z視において主走査方向x方向に長く延びる細長矩形状の平面である。なお、凸部13は、一対の傾斜部131に繋がり、頂部130の主走査方向x両端に隣接する傾斜部(図示略)を有していてもよい。実施の形態1においては、一対の傾斜部131は、第1主面11に繋がっている。
【0017】
実施の形態1においては、第1主面11が(100)面である。後述の製造方法例によれば、傾斜部131が第1主面11となす角度αは、約54.8度である。凸部13の厚さ方向z寸法は、たとえば、100μm以上300μm以下である。
【0018】
第1基板1は、頂部130にグレーズ層15を有する。グレーズ層15は、頂部130に所定の厚さで形成される非晶質ガラスの層である。グレーズ層15は、主走査方向xに長く延びており、すべての複数の発熱部41とz方向視において重なる。
【0019】
グレーズ層15は、厚さ方向z視(第1主面11を平面視)した場合に複数の発熱部41と重なる位置に空洞部14を有する。実施の形態1においては、空洞部14は、主走査方向xに長く延びている。
【0020】
空洞部14およびグレーズ層15の各部の大きさは何ら限定されない。一例を挙げると、空洞部14の厚さ方向z寸法は、3μm以上10μm以下であり、副走査方向y寸法は、10μm以上30μm以下である。グレーズ層15の副走査方向y寸法は、空洞部14の副走査方向y寸法より大きい寸法で、頂部130の副走査方向y寸法以下である。
【0021】
図5および
図6に示すように、絶縁層19は、第1主面11、凸部13およびグレーズ層15を覆っており、第1基板1の第1主面11側をより確実に絶縁するためのものである。絶縁層19は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO
2やSiNまたはTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)からなり、実施の形態1においては、TEOSが採用されている。絶縁層19の厚さは特に限定されず、その一例を挙げるとたとえば15μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
【0022】
抵抗体層4は、第1基板1に支持されており、実施の形態1においては、絶縁層19を介して第1基板1に支持されている。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有している。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱するものである。複数の発熱部41は、主走査方向xに沿って配置されており、主走査方向xにおいて互いに離間している。発熱部41の形状は特に限定されず、実施の形態1においては、厚さ方向z視において副走査方向yを長手方向とする長矩形状である。抵抗体層4は、たとえばTaNからなる。抵抗体層4の厚さは特に限定されず、たとえば0.02μm以上0.1μm以下であり、好ましくは0.05μm以上0.07μm以下ある。
【0023】
図3および
図6に示すように、実施の形態1においては、発熱部41は、頂部410、一対の傾斜部411を有する。頂部410は、発熱部41のうちグレーズ層15を形成した頂部130の副走査方向yにおける少なくとも一部に形成された部分である。傾斜部411は、発熱部41のうち凸部13の傾斜部131の副走査方向yにおける少なくとも一部に形成された部分である。なお、実施の形態1においては、第1基板1と抵抗体層4との間に絶縁層19が介在しているが、上述したとおり絶縁層19は十分に薄い層である。このため、発熱部41が、厚さ方向z視もしくは頂部130のグレーズ層15および傾斜部131のそれぞれの法線方向視において重なるように形成されている場合、頂部130のグレーズ層15および傾斜部131に形成されていると説明し、以下も同様である。
【0024】
実施の形態1においては、頂部410は、グレーズ層15を形成した頂部130の副走査方向y全長にわたって形成されている。また、発熱部41は、頂部130と一対の傾斜部131との境界を跨いでいる。また、一対の傾斜部411は、一対の傾斜部131の副走査方向yの一部に形成されている。
【0025】
実施の形態1においては、空洞部14の副走査方向y寸法は、発熱部41の副走査方向y寸法よりも小さい。また、空洞部14の副走査方向y寸法は、凸部13の頂部130の副走査方向y寸法よりも小さい。また、空洞部14は、副走査方向y視において凸部13の頂部130と重なる。また、空洞部14は、厚さ方向zにおいてグレーズ層15の表面よりも頂部130側に位置している。
【0026】
配線層3は、複数の発熱部41に通電するための通電経路を構成するためのものである。配線層3は、第1基板1に支持されており、実施の形態1においては、
図5および
図6に示すように、抵抗体層4上に積層されている。配線層3は、抵抗体層4よりも低抵抗な金属材料からなり、たとえばCuからなる。また、配線層3は、Cuからなる層と、当該層と抵抗体層4との間に介在するTiからなる15nm以上100nm以下の厚さの層とを有する構成であってもよい。配線層3の厚さは特に限定されず、たとえば0.3μm以上2.0μm以下である。
【0027】
図1~
図3、
図5および
図6に示すように、実施の形態1においては、配線層3は、複数の個別電極31および共通電極32を有する。
図3および
図6に示すように、抵抗体層4のうち、複数の個別電極31と共通電極32との間において配線層3から露出した部分が、複数の発熱部41となっている。
【0028】
図3および
図6に示すように、複数の個別電極31は、各々が概ね副走査方向y方向に延びる帯状であり、複数の発熱部41に対して副走査方向y上流側に配置されている。実施の形態1においては、個別電極31の副走査方向y下流側端は、凸部13の副走査方向y上流側の傾斜部131に重なる位置に配置されている。
図2および
図5に示すように、個別電極31は、個別パッド311を有する。個別パッド311は、ドライバIC7と導通させるためのワイヤ61が接続される部分である。
【0029】
図2、
図3、
図5および
図6に示すように、共通電極32は、連結部323と複数の帯状部324とを有する。複数の帯状部324は、複数の発熱部41に対して副走査方向y下流側に配置されている。複数の帯状部324の副走査方向y上流側端は、複数の個別電極31の副走査方向y下流側端と、発熱部41を挟んで対向している。帯状部324の副走査方向y上流側端は、凸部13の副走査方向y下流側の傾斜部131に重なる位置に配置されている。連結部323は、複数の帯状部324の副走査方向y下流側に位置し、複数の帯状部324が繋がっている。連結部323は、主走査方向xに延びており、帯状部324の主走査方向x方向寸法よりも副走査方向y寸法が大きい、比較的幅広の部分である。
図1に示すように、連結部323は、複数の発熱部41の副走査方向y下流側から、主走査方向x両側を迂回して、副走査方向y上流側へと延びている。
【0030】
実施の形態1においては、複数の帯状部324の副走査方向y下流側部分と連結部323とが、第1基板1の第1主面11に形成されている。
【0031】
保護層2は、配線層3および抵抗体層4を覆っている。保護層2は、絶縁性の材料からなり、配線層3および抵抗体層4を保護している。保護層2の材質は、たとえばSiO2、SiN、SiC、AlN等であり、これらの単層もしくは複数層によって構成される。保護層2の厚さは特に限定されず、たとえば1.0μm以上10μm以下である。
【0032】
図5に示すように、実施の形態1においては、保護層2は、パッド用開口21を有する。パッド用開口21は、保護層2を厚さ方向zに貫通している。複数のパッド用開口21は、個別電極31の複数の個別パッド311を露出させている。
【0033】
第2基板5は、
図1および
図4に示すように、第1基板1に対して副走査方向y上流側に配置されている。第2基板5は、たとえばPCB基板であり、ドライバIC7や後述のコネクタ59が搭載される。第2基板5の形状等は特に限定されず、実施の形態1においては、主走査方向xを長手方向とする長矩形状である。第2基板5は、第2主面51および第2裏面52を有する。第2主面51は、第1基板1の第1主面11と同じ側を向く面であり、第2裏面52は、第1基板1の第1裏面12と同じ側を向く面である。実施の形態1においては、第2主面51は、第1主面11よりも厚さ方向z図中下方に位置している。
【0034】
ドライバIC7は、第2基板5の第2主面51に搭載されており、複数の発熱部41に個別に通電させるためのものである。実施の形態1においては、ドライバIC7は、複数のワイヤ61によって複数の個別電極31に接続されている。ドライバIC7の通電制御は、第2基板5を介してサーマルプリントヘッドA1外から入力される指令信号に従う。ドライバIC7は、複数のワイヤ62によって第2基板5の配線層(図示略)に接続されている。実施の形態1においては、複数の発熱部41の個数に応じて、複数のドライバIC7が設けられている。
【0035】
ドライバIC7、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62は、保護樹脂78に覆われている。保護樹脂78は、たとえば絶縁性樹脂からなりたとえば黒色である。保護樹脂78は、第1基板1と第2基板5とに跨るように形成されている。
【0036】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をプリンタ(図示略)に接続するために用いられる。コネクタ59は、第2基板5に取付けられており、第2基板5の配線層(図示略)に接続されている。
【0037】
放熱部材8は、第1基板1および第2基板5を支持しており、複数の発熱部41によって生じた熱の一部を、第1基板1を介して外部へと放熱するためのものである。放熱部材8は、たとえばアルミ等の金属からなるブロック状の部材である。実施の形態1においては、放熱部材8は、第1支持面81および第2支持面82を有する。第1支持面81および第2支持面82は、各々が厚さ方向z上側を向いており、副走査方向yに並んで配置されている。第1支持面81には、第1基板1の第1裏面12が接合されている。第2支持面82には、第2基板5の第2裏面52が接合されている。
【0038】
(空洞部とエネルギー比率との関係)
グレーズ層15は、第1主面11を平面視した場合に複数の発熱部41と重なる位置に空洞部14を有すると説明した。グレーズ層15に空洞部14を設けることで、発熱部41で発熱した熱を逃げ難くすることができ、サーマルプリントヘッドA1は、発熱部41の熱を十分に印刷媒体に伝達でき印字品質が向上する。また、発熱部41の熱を効率よく印字に利用できるため、消費電力を抑えることができる。特に、電池で駆動するサーマルプリントヘッドA1では低消費電力が望まれる。ここで、空洞部14の大きさとエネルギー比率との関係についてシミュレーションを行い説明する。
【0039】
図7は、シミュレーションを行うサーマルプリントヘッドの概略を示す断面図である。Siの第1基板1に非晶質ガラスのグレーズ層15を積層し、さらにTEOSの絶縁層19、Cuの配線層3、SiNの保護層2、SiCの保護層2の順で積層されている。配線層3が設けられている層にTaNの抵抗体層4が設け、配線層3と抵抗体層4との間にTi層4aが設けられている。抵抗体層4が発熱部41を構成し、発熱部41直下に高さH、幅Wの空洞部14を設け、発熱部41の発熱状況をシミュレーションしている。
【0040】
図8は、空洞部14の高さHとサーマルプリントヘッドのエネルギー比率との関係を示すグラフである。
図8では、横軸を空洞部14の高さH、縦軸をエネルギー比率としている。ここで、エネルギー比率とは、空洞部14を設けない場合と同じ発熱量となるように調整したエネルギー量の割合を示している。例えば、エネルギー比率が0.8であれば、空洞部14を設けない場合のサーマルプリントヘッドに必要なエネルギー量に対して、80%のエネルギー量で同じ発熱量が得られることを示している。
図8のグラフでは、空洞部14を設けた場合、空洞部14の高さHが5μm、10μm、15μmと変化させた場合でもエネルギー比率が約0.8とほぼ変化していない。
【0041】
一方、
図9は、空洞部14の幅Wとサーマルプリントヘッドのエネルギー比率との関係を示すグラフである。
図9では、横軸を空洞部14の幅W、縦軸をエネルギー比率としている。
図9のグラフでは、空洞部14の幅Wが100μm、140μm、180μmと長くなるに従い、エネルギー比率が低下していることが分かる。つまり、空洞部14の幅W(副走査方向y)を長くすることで、発熱部41からの熱が第1基板1へ逃げ難くなりエネルギー比率が改善できる。そのため、空洞部14は、幅Wを長くすることが好ましいが、
図6に示すように空洞部14を凸部13の頂部に設けたグレーズ層15に形成するので、幅Wを凸部13の頂部の副走査方向における大きさよりも小さくなる。
【0042】
(サーマルプリントヘッドの製造方法)
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、
図10~
図17を参照しつつ、以下に説明する。
【0043】
まず、
図10に示すように、基板材料1Aを用意する。基板材料1Aは、単結晶半導体からなり、たとえばSiウエハである。基板材料1Aの厚さは特に限定されず、本実施形態においては、たとえば300μm以上1000μm以下であり、たとえば725μmである。基板材料1Aは、互いに反対側を向く主面11Aおよび裏面12Aを有する。主面11Aは、(100)面である。
【0044】
次に、
図11に示すように、凸部形成工程を行う。主面11Aを所定のマスク層で覆った後に、たとえばKOHを用いた異方性エッチングを行う。このマスク層は、発熱部41を形成する位置と重なるように設けられる。これにより、
図11に示すように、基板材料1Aが、第1主面11に凸部13が形成された第1基板1に加工される。凸部13は、第1主面11から突出しており、主走査方向xに長く延びている。凸部13は、頂部130および一対の傾斜部131を有する。頂部130は、第1主面11と平行は面であり、実施の形態1においては、(100)面である。一対の傾斜部131は、頂部130の副走査方向y両側に位置しており、頂部130と第1主面11との間に介在している。傾斜部131は、頂部130および第1主面11に対して傾斜した平面である。実施の形態1においては、傾斜部131と第1主面11とがなす角度は、約54.8度である。
【0045】
次いで、
図12に示すように、凸部13の頂部130にレジスト16を塗布する。レジスト16は、凸部13の頂部130に、主走査方向xに沿って塗布される。レジスト16は、ポジレジスト材料であり、たとえばフェノール系のレジストやノボラック系のレジストである。
【0046】
さらに、
図13に示すように、レジスト16を塗布した凸部13の頂部130を覆うグレーズ層15を形成する。グレーズ層15は、凸部13の頂部130に、主走査方向xに沿って非晶質ガラスの材料をディスペンサーで塗布することで形成される。
図14は、第1基板1に設けた凸部13の平面図である。
図14には、厚さ方向z視において主走査方向x方向に長く延びる細長矩形状の頂部130が図示されており、当該頂部130の一方端から他方端までレジスト16が塗布されている。グレーズ層15は、頂部130の一方端から他方端まで塗布されておらず、頂部130の一方端および他端にはレジスト16がと露出している部分がある。
【0047】
次に、凸部13の頂部130に塗布したグレーズ層15を焼成し硬化させる。グレーズ層15を焼成すると同時にレジスト16も焼成されるので、レジスト16は除去されグレーズ層15に空洞部14が形成される。
【0048】
次いで、
図16に示すように、絶縁層19を形成する。絶縁層19の形成は、たとえばCVDを用いて第1基板1の第1主面11にTEOSを堆積させることによって行う。
【0049】
次いで、抵抗体膜4Aを形成する。抵抗体膜4Aの形成は、たとえば、スパッタリングによって絶縁層19上にTaNの薄膜を形成することによって行う。
【0050】
次いで、抵抗体膜4Aを覆う導電膜3Aを形成する。導電膜3Aの形成は、たとえばめっきやスパッタリング等によってCuからなる層を形成することによって行う。また、Cu層を形成する前に、Ti層を形成してもよい。
【0051】
次いで、
図17に示すように、導電膜3Aの選択的なエッチングと抵抗体膜4Aの選択的なエッチングとを施すことにより、配線層3および抵抗体層4が得られる。配線層3は、上述の複数の個別電極31と共通電極32とを有する。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有する。
【0052】
次いで、
図6に示すように、配線層3および抵抗体層4上に保護層2を形成する。保護層2の形成は、たとえばCVDを用いて絶縁層19、配線層3および抵抗体層4上にSiNおよびSiCを堆積させることにより実行される。また、
図5に示すように、保護層2をエッチング等によって部分的に除去することによりパッド用開口21を形成する。この後は、
図4に示すように、第1支持面81への第1基板1および第2基板5の取付け、ドライバIC7の第2基板5への搭載、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62のボンディング、保護樹脂78の形成等を経ることにより、上述のサーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0053】
実施の形態1によれば、凸部13の頂部130を覆うグレーズ層15に空洞部14が形成されている。空洞部14は、厚さ方向z視において発熱部41と重なる。これにより、抵抗体層4に通電されることにより複数の発熱部41が発熱した際に、第1基板1を介して第1裏面12側に逃げる熱の量を抑制することが可能である。これにより、より多くの熱を印刷用紙に伝えることが可能である。したがって、サーマルプリントヘッドA1によれば、印刷の印字のエネルギー効率と印字品質とを向上させることができる。
【0054】
第1基板1がSiからなる場合、第1基板1の熱伝導率は比較的高い。このため、発熱部41からの熱が第1基板1を伝って第1裏面12へと過度に逃げることを、空洞部14を設けることで回避することが可能である。一方、厚さ方向z視において発熱部41から明らかに退避した領域においては、空洞部14を設けていないので不要な熱を第1裏面12側等へと速やかに伝熱することができる。
【0055】
また、第1基板1の凸部13は、頂部130および傾斜部131を有している。発熱部41は、頂部130に形成された頂部410と傾斜部131に形成された傾斜部411とを有しており、頂部130と傾斜部131との境界を跨いで形成されている。このため、
図4に示すように、サーマルプリントヘッドA1にプラテンローラ91が押し当てられると、プラテンローラ91の弾性変形により、プラテンローラ91が頂部410および傾斜部411のいずれか一方または双方に接する。
図4に示すように、プラテンローラ91の中心910が副走査方向yにおいて凸部13の中心と一致する構成の場合、プラテンローラ91は、頂部410と強い圧力で接する。一方、プラテンローラ91の中心910が凸部13の中心に対して副走査方向yに意図せずずれてしまうと、プラテンローラ91と頂部410との圧力が低下する。しかしながら、実施の形態1においては、発熱部41が傾斜部411を有するため、プラテンローラ91がずれた場合には、プラテンローラ91が傾斜部411に対して接する割合が大きくなり、依然として発熱部41に適切に押し当てられる。したがって、サーマルプリントヘッドA1によれば、プラテンローラ91が意図せずにずれた場合や、あるいはプラテンローラ91の直径が異なる場合等であっても、印字品質の低下を抑制することが可能であり、印字品質を向上させることができる。
【0056】
また、実施の形態1においては、頂部410が頂部130の副走査方向y全長にわたって形成されており、頂部410の副走査方向y両側に一対の傾斜部411が設けられている。このため、プラテンローラ91のずれが、副走査方向yの上流側および下流側のいずれに生じても、印字品質の低下を抑制することができる。また、一対の傾斜部411は、傾斜部131の副走査方向yの一部に形成されている。これは、プラテンローラ91が意図せずずれた場合の印字品質の低下を抑制するのに好ましい。
【0057】
空洞部14が頂部130と厚さ方向z視において重なり、副走査方向y寸法が頂部130よりも小さい構成により、発熱部41のうちプラテンローラ91に強く押し当てられる部位から熱が過度に逃げることを抑制することができる。これは、印字品質の低下を抑制するのに好ましい。また、空洞部14をグレーズ層15に形成することで、空洞部を凸部13の内部に形成する場合に比べて、低コストで製造することができる。
【0058】
[実施の形態2]
実施の形態1では、レジスト16を塗布した凸部13の頂部130を覆うグレーズ層15を形成し、グレーズ層15およびレジスト16を焼成してレジスト16を除去することで、グレーズ層15に空洞部14を形成する製造方法を説明した。しかし、グレーズ層に空洞部を形成する製造方法は、これに限定されず他の製造方法であってもよい。以下に、グレーズ層に空洞部を形成する別の製造方法の一例について、
図18~
図23を参照しつつ説明する。なお、
図18~
図23において、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
図18に示すように、第1主面11の所定の位置に凸部13が形成した後、絶縁層19を形成する。絶縁層19の形成は、たとえばCVDを用いて第1基板1の第1主面11にTEOSを堆積させることによって行う。なお、凸部13の頂部130に形成される絶縁層19を他の部分より厚く形成しておく。
【0060】
次に、
図19に示すように、他の部分より厚く形成した絶縁層19aをエッチングして、凹部19cを形成する。凹部19cは、主走査方向xに沿って、凸部13の頂部130に形成されている。
図20は、凸部13の頂部130の要部平面図である。頂部130に形成された凹部19cには、周囲を囲む壁部19bを有している。壁部19bには、凹部19cの内部と外部とを連通する複数の溝部19dが設けてある。凹部19cの底面と溝部19dの底面とは、同じ高さになっている。
【0061】
次に、
図21に示すように、凹部19cを埋めるようにAgペースト16Aを凸部13の頂部130にスクリーン印刷する。凹部19cを埋める材料は、Agペースト16Aに限られず、エッチングで除去することができる中間部材であれば何れの材料であってもよい。
【0062】
さらに、
図22に示すように、Agペースト16Aを塗布した凸部13の頂部130を覆うグレーズ層15Aを形成する。グレーズ層15Aは、凸部13の頂部130に、主走査方向xに沿って非晶質ガラスの材料をディスペンサーで塗布することで形成される。凸部13の頂部130に塗布したグレーズ層15Aを焼成し硬化させる。なお、グレーズ層15Aを焼成しても、Agペースト16Aは除去されない。
【0063】
そこで、
図23に示すように、Agペースト16Aをエッチングして除去する。凹部19cを囲む4辺の壁部19bすべてに複数の溝部19dが設けられているのは、エッチング液が凹部19cの内側に入りやすくするためである。なお、Agペースト16Aをエッチングして除去することができれば、壁部19bに設ける溝部19dは少なくとも1つであってもよい。
【0064】
Agペースト16Aがエッチングにより除去されるとグレーズ層15Aの下側に空洞部14Aが形成される。空洞部14Aは、絶縁層19とグレーズ層15Aとの間に形成される。空洞部14Aが形成された第1基板1の第1主面11は、さらに抵抗体膜4A、導電膜3A、保護層2が積層され、実施の形態1で説明した製造方法を経ることでサーマルプリントヘッドA1となる。
【0065】
(まとめ)
(1)本開示に係るサーマルプリントヘッドは、基板と、基板に支持され、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、基板に支持され、複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、基板と抵抗体層との間にある絶縁層と、を備える。基板は、絶縁層が形成された主面と、主面から突出して主走査方向に延びる凸部と、凸部の頂部を覆うグレーズ層と、を有する。凸部は、頂部と、頂部に対して副走査方向に繋がり、主面に対して傾斜した傾斜部とを有し、グレーズ層は、主面を平面視した場合に複数の発熱部と重なる位置に空洞部を有する。
【0066】
本開示に係るサーマルプリントヘッドによれば、グレーズ層が、主面を平面視した場合に複数の発熱部と重なる位置に空洞部を有することで発熱部から熱を逃げ難くし、消費電力を抑えつつ、印字品質を向上させることが可能となる。
【0067】
(2)(1)に記載のサーマルプリントヘッドであって、基板は、単結晶半導体からなる。
【0068】
(3)(2)に記載のサーマルプリントヘッドであって、基板は、Siからなる。
【0069】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドであって、発熱部は、頂部と傾斜部との境界を跨いで、頂部の副走査方向における少なくとも一部と傾斜部の副走査方向における少なくとも一部とに形成されている。これにより、頂部に対して印刷媒体がずれても印字が可能となる。
【0070】
(5)(1)~(4)のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドであって、凸部は、頂部を挟んで副走査方向両側に位置する一対の傾斜部を有する。
【0071】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドであって、空洞部の副走査方向における大きさは、凸部の頂部の副走査方向における大きさよりも小さい。これにより、グレーズ層の中に空洞部を形成することができる。
【0072】
(7)本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、単結晶半導体からなる基板材料に、主面から突出して主走査方向に延びる凸部を形成する工程と、凸部の頂部にレジストを主走査方向に塗布する工程と、レジストを塗布した凸部の頂部を覆うようにグレーズを主走査方向に塗布する工程と、頂部に塗布したレジストおよびグレーズを焼成し、レジストを除去してグレーズを焼成したグレーズ層に空洞部を形成する工程と、を含む。
【0073】
本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法によれば、グレーズ層に空洞部を低コストで形成することが可能となる。
【0074】
(8)本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、単結晶半導体からなる基板材料に、主面から突出して主走査方向に延びる凸部を形成する工程と、凸部を覆う酸化膜を形成する工程と、凸部の頂部を覆う酸化膜をエッチングして、頂部を覆う酸化膜に凹部を主走査方向に沿って形成し、および凹部の壁部に凹部の内部と外部とを連通する溝を少なくとも1つ形成する工程と、凹部を埋める中間部材を塗布する工程と、間部材を塗布した凹部を覆うようにグレーズを主走査方向に塗布する工程と、グレーズを焼成してグレーズ層を形成する工程と、溝を介して間部材をエッチングで除去して、グレーズ層に空洞部を形成する工程と、を含む。
【0075】
本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法によれば、グレーズ層に空洞部を低コストで形成することが可能となる。
【0076】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1 第1基板、1A 基板材料、2 保護層、3 配線層、3A 導電膜、4 抵抗体層、4A 抵抗体膜、5 第2基板、8 放熱部材、11 第1主面、12 第1裏面、13,13A 凸部、14,14A 空洞部、15,15A グレーズ層、16 レジスト、16A Agペースト、19,19a 絶縁層、19b 壁部、19c 凹部、19d 溝部、21 パッド用開口、31 個別電極、32 共通電極、41 発熱部、51 第2主面、52 第2裏面、59 コネクタ、61,62 ワイヤ、78 保護樹脂、81 第1支持面、82 第2支持面、91 プラテンローラ、130,130A,410 頂部、131,131A,411 傾斜部、311 個別パッド、323 連結部、324 帯状部、A1 サーマルプリントヘッド。