(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094816
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G08C 19/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G08C19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211630
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田辺 樹
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA04
2F073AA12
2F073AA21
2F073AB02
2F073AB07
2F073BB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC05
2F073CD11
2F073DD07
2F073DE08
2F073DE16
2F073EE13
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG07
2F073GG09
(57)【要約】
【課題】センサを用いて計測を行う処理回路の消費電力を低減する。
【解決手段】計測装置10は、バルブの弁体の位置を電気信号(センサ出力)に変換し、変換した前記電気信号を出力するセンサ20からの前記電気信号に基づいて弁体の位置の計測を行う処理回路30を備える。処理回路30は、弁体の位置の計測を周期的に行う計測モードと、この計測モードよりも計測頻度が低く、計測モードよりも単位時間当たりの平均消費電力の低い節電モードと、を含む複数の動作モードを有し、節電モード中にセンサ20からの電気信号に基づいて弁体の位置の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出したことを契機として計測モードに移行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の物理量を電気信号に変換し、変換した前記電気信号を出力するセンサからの前記電気信号に基づいて前記物理量の計測を行う処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記物理量の計測を周期的に行う計測モードと、前記計測モードよりも前記物理量の計測頻度が低く、前記計測モードよりも単位時間当たりの平均消費電力の低い節電モードと、を含む複数の動作モードを有し、
前記節電モード中に前記電気信号に基づいて前記物理量の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出したことを契機として前記計測モードに移行する、
計測装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記計測モード時に、周期的に計測した前記物理量に基づいて前記物理量の変化終了の有無を監視し、当該変化終了を検出したことを契機として前記節電モードに移行する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記処理回路は、
前記節電モードにおいて動作し、前記変化開始を検出する検出回路と、
前記計測モードにおいて動作し、前記物理量の計測を行う計測回路と、
前記計測回路の動作を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記節電モードにおいて前記検出回路が前記変化開始を検出したことを契機として前記計測回路による前記物理量の計測頻度を上昇させることで前記動作モードを前記節電モードから前記計測モードに移行させ、
前記節電モードの期間のうちの前記物理量の計測が行われない期間に、前記計測回路を動作させない、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記検出回路は、前記電気信号の変化量を求め、求めた前記変化量が予め定められた閾値に達したときに前記変化開始を検出する、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記処理回路は、任意の値を前記閾値として設定する閾値設定回路をさらに備える、
請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記計測回路による前記物理量の計測周期を、前記計測モードでは第1周期とし、前記節電モードでは前記第1周期よりも長い第2周期とする、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記一部の期間に動作を停止する、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項8】
前記処理回路は、前記センサを駆動する駆動電力を前記センサに供給する電源回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記節電モードの期間のうち、前記検出回路が動作しかつ前記計測回路による前記物理量の計測が行われていない期間中に、前記駆動電力を前記計測モードでの前記駆動電力よりも小さくするように前記電源回路を制御する、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項9】
計測対象の物理量を電気信号に変換し、変換した前記電気信号を出力するセンサからの前記電気信号に基づいて前記物理量の計測を行う処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記物理量の計測を周期的に行う計測モードと、前記センサを駆動する駆動電力を前記計測モードよりも小さくする、前記計測モードよりも単位時間当たりの平均消費電力の低い節電モードと、を含む複数の動作モードを有し、
前記節電モード中に前記電気信号に基づいて前記物理量の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出したことを契機として前記計測モードに移行する、
計測装置。
【請求項10】
前記センサをさらに備え、
前記物理量は、弁体の位置である、
請求項1又は9に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流量計又は温湿度計などの計測装置の通信相手の装置との通信周期を可変として省電力を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、センサを用いて計測を行う処理回路の消費電力について考慮されていない。
【0005】
本発明は、センサを用いて計測を行う処理回路の消費電力を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る計測装置は、計測対象の物理量を電気信号に変換し、変換した前記電気信号を出力するセンサからの前記電気信号に基づいて前記物理量の計測を行う処理回路を備え、前記処理回路は、前記物理量の計測を周期的に行う計測モードと、前記計測モードよりも前記物理量の計測頻度が低く、前記計測モードよりも単位時間当たりの平均消費電力の低い節電モードと、を含む複数の動作モードを有し、前記節電モード中に前記電気信号に基づいて前記物理量の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出したことを契機として前記計測モードに移行する。
【0007】
一例として、前記処理回路は、前記計測モード時に、周期的に計測した前記物理量に基づいて前記物理量の変化終了の有無を監視し、当該変化終了を検出したことを契機として前記節電モードに移行する。
【0008】
一例として、前記処理回路は、前記節電モードにおいて動作し、前記変化開始を検出する検出回路と、前記計測モードにおいて動作し、前記物理量の計測を行う計測回路と、前記計測回路の動作を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記節電モードにおいて前記検出回路が前記変化開始を検出したことを契機として前記計測回路による前記物理量の計測頻度を上昇させることで前記動作モードを前記節電モードから前記計測モードに移行させ、前記節電モードの期間のうちの前記物理量の計測が行われない期間に、前記計測回路を動作させない。
【0009】
一例として、前記検出回路は、前記電気信号を時間微分し、時間微分により得られた微分値が予め定められた閾値に達したときに前記変化開始を検出する。
【0010】
一例として、前記処理回路は、任意の値を前記閾値として設定する閾値設定回路をさらに備える。
【0011】
一例として、前記制御回路は、前記計測回路による前記物理量の計測周期を、前記計測モードでは第1周期とし、前記節電モードでは前記第1周期よりも長い第2周期とする。
【0012】
一例として、前記制御回路は、前記一部の期間に動作を停止する。
【0013】
一例として、前記処理回路は、前記センサを駆動する駆動電力を前記センサに供給する電源回路をさらに備え、前記制御回路は、前記節電モードの期間のうち、前記検出回路が動作しかつ前記計測回路による前記物理量の計測が行われていない期間中に、前記駆動電力を前記計測モードでの前記駆動電力よりも小さくするように前記電源回路を制御する。
【0014】
本発明に係る計測装置は、計測対象の物理量を電気信号に変換し、変換した前記電気信号を出力するセンサからの前記電気信号に基づいて前記物理量の計測を行う処理回路を備え、前記処理回路は、前記物理量の計測を周期的に行う計測モードと、前記センサを駆動する駆動電力を前記計測モードよりも小さくする、前記計測モードよりも単位時間当たりの平均消費電力の低い節電モードと、を含む複数の動作モードを有し、前記節電モード中に前記電気信号に基づいて前記物理量の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出したことを契機として前記計測モードに移行する。
【0015】
一例として、前記計測装置は、前記センサをさらに備え、前記物理量は、弁体の位置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センサを用いて計測を行う処理回路の消費電力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる計測装置が搭載されたバルブのブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる計測装置の詳細ブロック図である。
【
図3】
図3は、センサ出力と検出回路の内部信号との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、センサ出力の波形、検出回路の内部信号の波形、検出回路及び計測回路の動作のタイミングチャート、及び、動作モードの変遷を示す図である。
【
図5】
図5は、駆動電力を説明するためのグラフである。
【
図6】
図6は、変形例にかかる計測装置の詳細ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る計測装置10は、バルブ1に搭載されている。バルブ1は、回転弁であっても、直動弁であってもよい。バルブ1は、駆動装置1A及び弁体1Bを備える。駆動装置1Aは、モータなどを含み、上位装置5からの駆動信号に基づいて弁体1Bを駆動する。計測装置10は、バルブ1の一部として構成されても、バルブ1に外付けされてもよい。
【0020】
計測装置10は、弁体1Bの位置(回転位置又は直線位置)を定期的に計測する。計測装置10は、定期的に計測する弁体1Bの位置を上位装置5に順次送信する。上位装置5は、計測装置10から順次送信される弁体1Bの位置を監視し、バルブ1の異常診断を行う。上位装置5は、各種のコントローラから構成される。上位装置5とバルブ1及び計測装置10との通信は、無線で行われてもよい。また、計測装置10は、電池で駆動してもよい。この実施の形態では、電池寿命が長くなるように計測装置10の消費電力が低減される。
【0021】
計測装置10は、センサ20と、処理回路30と、を備える。
【0022】
センサ20は、バルブ1の弁体1Bの位置を電気信号に変換する。例えば、センサ20は、ロータリエンコーダ又はリニアエンコーダなどから構成され、弁体1Bに接続された弁軸の回転位置又は直線位置を電気信号に変換する。センサ20は、変換した電気信号をセンサ出力として処理回路30に出力する。
【0023】
処理回路30は、マイクロコンピュータなどを含んで構成されている。処理回路30は、センサ20からのセンサ出力に基づいて弁体1Bの位置を導出する。弁体1Bの位置の導出により、当該位置が計測されたことになる。処理回路30は、バルブ1の異常診断のため、計測した弁体1Bの位置を上位装置5に供給する。
【0024】
従来の弁体1Bの位置の計測では、弁体1Bの位置を短周期(例えば、10m秒)で連続的に計測する。消費電力の低減のため、当該位置の計測の周期を長くすることも考えられるが、その場合には、弁体1Bの動作期間が、ある計測タイミングとその次の計測タイミングとの間に入ってしまい、当該位置の取りこぼしが生じることがある。そこで、本実施形態では、弁体1Bの非動作期間での弁体1Bの位置の計測周期を、動作期間での計測周期である第1周期C1(例えば、従来の短周期と同じ10m秒)よりも長い第2周期C2(例えば、1分)とする。これにより、消費電力が低減される。なお、弁体1Bの非動作期間では、弁体1Bの位置が基本的には変化しないので連続的な監視は不要である。非動作期間では、弁体1Bが意図しない位置に位置するバルブ1の緩みなどを長周期で定期的に診断できればよい。従って、上記第2周期C2が採用されても不都合が生じない。第1周期C1で計測を行う動作モードを計測モードという。第2周期C2で計測を行う動作モードを節電モードともいう。つまり、処理回路30は、その動作モードとして、計測モード及び節電モードを有する。以下、処理回路30の詳細を説明する。
【0025】
図2に示すように、処理回路30は、計測回路31と、第1タイマ回路32と、第2タイマ回路33と、制御回路34と、検出回路35と、電源回路36と、を備える。
【0026】
計測回路31は、センサ20からのセンサ出力に対して所定の処理を行うことで、当該センサ出力に応じた弁体の位置を導出する。この導出により、弁体の位置が計測される。計測された弁体1Bの位置は、計測回路31から制御回路34を介して上位装置5に供給される。計測回路31は、制御回路34による制御に基づいて計測を行い、計測を行っていないときは動作を停止する。
【0027】
第1タイマ回路32は、計測モードで動作し、第1周期C1の時間を計時し、この時間を計時するごとに第1周期信号を制御回路34に出力する。第2タイマ回路33は、節電モードで動作し、第2周期C2の時間を計時し、この時間を計時するごとに第2周期信号を制御回路34に出力する。
【0028】
制御回路34は、第1周期信号又は第2周期信号を受信したことを契機として、計測回路31により弁体1Bの位置を計測する。上述のように、第1周期信号は、計測モードのときに供給され、第2周期信号は、節電モードのときに供給される。従って、制御回路34は、計測モードのときに第1周期C1で周期的に計測を行い、節電モードのときに第2周期C2で周期的に計測を行う(
図3も参照)。
【0029】
制御回路34は、現在の動作モードを内部メモリなどにより保持しておき、計測回路31により計測した弁体1Bの位置を上位装置5に供給するときに。計測時の動作モードの情報も一緒に上位装置5に送信してもよい。これにより、上位装置5は、受信した弁体1Bの位置が計測モードと節電モードとのいずれで計測された位置であるかを認識でき、モードに応じた処理により異常診断を行うことができる。例えば、上位装置5は、計測モードで計測した位置については、当該位置の変化に基づいて異常診断を行う。上位装置5は、節電モードで計測した位置については、当該位置が正常であるか否か(当該位置が、本来の位置であるか否か)の判別などにより異常診断を行う。
【0030】
検出回路35は、センサ20からのセンサ出力に基づいて、弁体1Bの位置の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出するように構成されている。検出回路35は、節電モードにおいて前記変化開始を検出したときに、当該変化開始の検出を示す検出信号を制御回路34に出力する。この検出信号を契機として、動作モードが節電モードから計測モードに移行する。
【0031】
検出回路35は、計測モードと節電モードとのうち節電モードのみで動作する。この実施の形態では、検出回路35は、節電モードの全期間で動作するが、節電モードの期間のうち、計測回路31による計測が行われている期間に動作を停止してもよい。動作の停止は、制御回路34により制御される。
【0032】
検出回路35は、前記変化開始の監視及び検出を、例えば、センサ20からのセンサ出力の一定期間ごとの変化量(特に、直近の一定期間の変化量)を導出及び監視し、当該変化量が予め定められた閾値に達したことを検出することで行う。前記監視のため、検出回路35は、微分回路を含み、当該微分回路により、センサ20からのセンサ出力を、当該センサ出力の波形を時間微分した波形の信号に変換する。変換された前記信号は、検出回路35の内部で使用される。このため、この信号を内部信号ともいう。この内部信号とセンサ出力との関係について
図3を参照して説明する。なお、後述のように、検出回路35は、計測モードにおいて動作停止するが、
図3は、検出回路35が動作停止しないとしたときの内部信号を示す。検出回路35が動作停止するときの内部信号は、
図4に示す。
【0033】
図3の上段の信号波形は、センサ20が出力するセンサ出力の信号波形を示す。縦軸のセンサ出力は、弁体1Bの開度に応じた値を取る。
図3は、バルブ1の弁体1Bが全閉した状態から、全開し、再度全閉した様子を示している。
図3の下段の信号波形は、検出回路35で生成される内部信号の波形である。
図3に示すように、弁体1Bが動作すると、内部信号の値つまりセンサ出力の微分値の絶対値が大きくなる。
【0034】
検出回路35は、内部信号が示す微分値と上限閾値及び下限閾値とを比較し、微分値が上限閾値又は下限閾値を達するか否かを監視する。検出回路35は、微分値が上限閾値又は下限閾値に達した場合(タイミングT1、T2)に、弁体1Bの位置の変化開始を検出したとして、検出信号を制御回路34に出力する。
【0035】
検出回路35による上記変化開始の監視及び検出、特に上記微分及び微分値の閾値との比較は、消費電力の低い回路で行うことが可能である。このため、検出回路35の動作時の単位時間当たりの平均消費電力は、計測回路31のそれよりも小さい。例えば、検出回路35は、数マイクロアンペアの電流で動作可能であるのに対し、計測回路31は、数ミリアンペアの電流で動作可能である。
【0036】
電源回路36は、センサ20に供給される駆動電力(特に電流)を調整する。センサ20のセンサ出力は、駆動電力が大きいほど大きくなる。センサ20の種類によっては、駆動電力が大きいほど、センサ出力のS/N比が良くなる。電源回路36が供給される駆動電力は、制御回路34により制御される。この実施の形態では、当該駆動電力を一定とするが、後述の変形例のように、節電モードの、上記計測回路31による計測期間以外の期間の駆動電力を、計測期間の駆動電力よりも低くしてもよい。
【0037】
ここで、処理回路30の動作について説明する。
【0038】
計測装置10の電源がオンされると、処理回路30が起動する。この電源のオンは、バルブ1の非動作時に行われる。処理回路30が起動すると、制御回路34が、検出回路35及び第2タイマ回路33の動作を開始させる。他方、制御回路34は、計測回路31及び第1タイマ回路32の動作を開始させない。これにより、節電モードが開始される。
【0039】
節電モード開始後のあるタイミングからの処理回路30の動作を、
図4を参照して説明する。
【0040】
図4中、上から1段目の信号波形は、センサ20が出力するセンサ出力の信号波形を示し、2段目の信号波形は、検出回路35で生成される内部信号の波形である。
【0041】
図4に示すように、節電モードでは、第2周期C2での計測が計測回路31により行われる。節電モード中、弁体1Bが全開に向けて動作開始し、タイミングT1のように、検出回路35の内部信号が示す微分値が下限閾値を達すると、検出回路35は、弁体1Bの移動開始が検出されたことを示す検出信号を制御回路34に供給する。
【0042】
制御回路34は、検出信号を受信すると、第2タイマ回路33及び検出回路35の動作を停止させ、第1タイマ回路32の動作を開始させる。動作停止は、電力の非供給によって停止すること(つまり、電源オフとなったこと)、スリープ状態となって停止することを含む(動作停止について同じ)。検出回路35の動作停止により、消費電力が低減される。第1タイマ回路32の動作開始などにより、処理回路30の動作モードが、節電モードから計測モードに移行する。
【0043】
計測モードでは、第1周期C1での計測が計測回路31により行われる。これにより、弁体1Bの位置が連続的に計測される。さらに、制御回路34は、周期的に計測した弁体1Bの位置に基づいて当該位置の変化終了の有無を監視する。制御回路34は、計測回路31により計測した弁体1Bの位置が変化しなくなったとき(タイミングT3参照)、例えば、前回計測した位置と今回計測した位置との差が所定範囲内であるとき、弁体1Bの動作が終了したと判別する。この判別により、弁体1Bの位置の変化終了が検出される。制御回路34は、この検出により、第1タイマ回路32の動作を停止させ、第2タイマ回路33及び検出回路35の動作を開始させる。これにより、処理回路30の動作モードが、計測モードから節電モードに移行する。
【0044】
節電モード移行後、タイミングT2のように、検出回路35の内部信号が示す微分値が上限閾値に達すると、検出回路35は、弁体1Bの移動開始が検出されたことを示す検出信号を制御回路34に供給する。
【0045】
制御回路34は、検出信号を受信すると、上記同様の制御を行い、節電モードを計測モードに変化させる。計測モードにおいて、制御回路34は、計測回路31により計測した弁体1Bの位置が変化しなくなったとき(タイミングT4参照)に、弁体1Bの動作が終了したと判別する。制御回路34は、前記判別により、上記同様の制御を行い、計測モードを節電モードに変化させる。
【0046】
この実施の形態では、節電モードにおける処理回路30での単位時間当たりの平均消費電力が、節電モードの無い従来の計測装置での単位時間当たりの平均消費電力、つまり、計測モードにおける処理回路30の単位時間当たりの平均消費電力よりも小さい。これにより、節電モードにおける節電が実現される。本実施形態では、節電モードを設け、処理回路30が、節電モード中にセンサ出力に基づいて弁体1Bの位置の変化開始を検出回路35により検出したことを契機として計測モードに移行するので、弁体1Bの動作中の位置の計測については短い周期での計測を実現しつつ消費電力を低減できる。
【0047】
また、本実施形態では、処理回路30(制御回路34)が、計測モード時に計測回路31により周期的に計測した弁体1Bの位置に基づいて当該位置の変化終了の有無を監視する。そして、制御回路34は、当該変化終了を検出したことを契機として、処理回路30の動作モードを節電モードに移行させる。これにより、計測された位置に基づいて弁体1Bの位置の変化終了が検出されるので、検出回路35を計測モードにて動作させなくても。前記変化終了が検出される。
【0048】
また、制御回路34が、節電モードにおいて検出回路35により弁体1Bの位置の変化開始が検出されたことを契機として計測回路31による弁体1Bの位置の計測頻度を上昇させることで、処理回路30の動作モードを節電モードから計測モードに移行させる。そして、制御回路34は、節電モードの期間のうちの前記位置の計測が行われない期間に、計測回路31を動作させない。このような構成により、消費電力が低減される。
【0049】
また、検出回路35が、センサ出力(電気信号)を時間微分し、時間微分により得られた微分値が予め定められた閾値に達したときに変化開始を検出する。微分値は、センサ出力の変化度を示す値であればよく、その演算方法は任意である。検出回路は、任意の方法で前記変化開始を検出するように構成されればよい。検出回路は、過去のセンサ出力をラッチし、過去のセンサ出力と現在のセンサ出力との差が一定値以上のときに、前記変化開始を検出してもよい。
【0050】
(変形例)
上記実施形態については種々の変形が施されてもよい。以下、変形例を列挙する。
【0051】
(変形例1)
検出回路35は、計測モードを含めて常時動作するように構成されてもよい。この場合、検出回路35は、計測モードにおける検出回路35の全消費電力が、節電モードで削減された全電力よりも下回るように構成されてもよい。常時動作の場合、検出回路35は、内部信号が示す微分値が上限閾値又は下限閾値に達している限り(上回る又は下回る場合を含む)、検出信号を連続的に出力し続けてもよい。制御回路34は、検出信号が供給され続ける期間を、計測モードの期間とし、当該検出信号の供給が途切れたときに計測モードが終了したとして、第1タイマ回路32を停止させ、第2タイマ回路33を動作させてもよい。
【0052】
(変形例2)
制御回路34は、節電モードにおいて動作停止し、第2周期信号が供給されたこと、及び、検出信号が供給されたことを契機として動作開始してもよい。例えば、制御回路34は、節電モード開始時に、第2タイマ回路33及び検出回路35の動作を開始させたあとに自ら動作停止する。制御回路34は、第2周期信号が供給されたときに起動し、計測回路31による計測を行ってから再度動作停止してもよい。制御回路34の動作停止により消費電力が低減される。
【0053】
(変形例3)
節電モードは、計測モードよりも弁体1Bの位置の計測頻度が低ければよい。この一例として、節電モードにおいて、弁体1Bの位置の計測が行われなくてもよい。
【0054】
(変形例4)
制御回路34は、電源回路36を制御して、電源回路36からセンサ20に供給される駆動電力を、計測モードと節電モードとで異ならせてもよい。より具体的に、制御回路34は、節電モードの期間のうち、検出回路35が動作しかつ計測回路31による弁体1Bの計測が行われていない期間の駆動電力を、計測モードでの駆動電力よりも小さくするように電源回路36を制御してもよい。例えば、
図5に示すように、節電モードのうち、計測回路31が計測を行っていない期間の駆動電力を、節電モードの期間のうちの計測回路31が計測を行っている期間及び計測モードの期間の駆動電力よりも小さくする。このようにすることで、より消費電力が低減される。計測モードでは、計測周期が短いので、電力安定化のため、駆動電力を一定とするとよい。なお、他の例として、節電モードの全期間の駆動電力を計測モードでの駆動電力よりも小さくしてもよい。
【0055】
駆動電力が小さくなると、その分、センサ出力の波形のS/N比が悪くなる(ノイズが目立つようになる)。このため、検出回路35で生成される内部信号のS/N比も悪くなる。従って、検出回路35での弁体1Bの位置の変化開始の検出時のノイズによる当該変化開始の誤検出が生じず、かつ、弁体1Bの位置の実際の変化開始から検出回路35での当該変化開始の検出までの応答遅延時間が長くなりすぎないよう、節電モードにおける駆動電力の大きさ、及び、上記上限閾値と下限閾値の絶対値の各大きさが決定されるとよい。
【0056】
駆動電力を変化させたとき、検出回路35の内部信号が示す微分値も上下してしまうので、微分値が上限閾値又は下限閾値に達して、検出回路35が検出信号を出力してしまうおそれがある。このため、制御回路34は、駆動電力を変化させた後の一定期間における検出信号を無視するように構成されてもよい。また、制御回路34は、駆動電力を変化させるタイミングを含む一定期間、検出回路35の動作を停止させてもよい。
【0057】
また、節電モードの弁体1Bの計測頻度を計測モードと同じとする代わりに、節電モードの駆動電力を計測モードの駆動電力よりも小さくしてもよい。つまり、処理回路30は、弁体1Bの位置の計測を周期的に行う計測モードと、センサ20を駆動する駆動電力を計測モードよりも小さくする、計測モードよりも単位時間当たりの平均消費電力の低い節電モードと、を含む複数の動作モードを有し、節電モード中にセンサ出力に基づいて弁体1Bの位置の変化開始の有無を監視し、当該変化開始を検出したことを契機として前記計測モードに移行してもよい。処理回路30は、計測回路31が周期的に計測した弁体1Bの位置の変化から、前記変化開始を検出してもよい。この場合、検出回路35は不要である。
【0058】
(変形例5)
計測モードの計測周期である第1周期C1は、可変であってもよい。計測装置10は、例えば、第1タイマ回路32として、互いに異なる複数の周期をそれぞれ計時する複数のタイマ回路を備えてもよい。制御回路34は、計測モードにおいて、計測回路31により計測した位置が所定の閾値を超えたときに、計測周期を短くするように動作させるタイマ回路を切り替えてもよい。弁体1Bは、加速度的に移動速度が増える場合があり、上記構成により、弁体1Bの位置変化をより詳細に計測できる。
【0059】
第1タイマ回路32が、複数の周期を計時可能な1つのタイマ回路、例えば1つのチップから構成され、制御回路34が第1タイマ回路32を制御して、第1タイマ回路32が計時する周期を切り替えてもよい。
【0060】
(変形例6)
第1タイマ回路32及び第2タイマ回路33は、1つの回路、例えば1つのチップにより実現されてもよく、制御回路34が当該回路を制御して、当該回路が計時する周期を切り替えてもよい。
【0061】
(変形例7)
上限閾値及び下限閾値は、その絶対値が同じであっても、異なってもよい。検出回路35は、内部信号が示す微分値が上限閾値に達したか下限閾値に達したかで異なる検出信号を出力してもよい。これにより、制御回路34は、弁体1Bの移動方向を認識できる。また、上限閾値及び又は下限閾値について複数の閾値を用意し、検出回路35は、微分値がどの閾値を超えたかに応じて異なる検出信号を制御回路34に出力してもよい。制御回路34は、検出信号の種類に応じて異なる態様の計測モードで計測回路31による計測を行ってもよい。異なる態様は、計測周期の異なる態様を含む。
【0062】
(変形例8)
上限閾値及び下限閾値は、任意の値に設定されてもよい。例えば、
図6に示すように、計測装置10は、閾値とする値の入力(値の直接入力、及び、予め用意された複数の値のうちのいずれかを選択する入力の両者を含む)を受け付ける操作装置などのインターフェイス40を備える。インターフェイス40は、設定する閾値を出力する装置と通信する通信モジュールからなってもよい。処理回路30は、インターフェイス40が受け付けた入力の値を閾値として検出回路35に設定する閾値設定回路39を備える。センサ出力には、ノイズが重畳するが、当該ノイズの大きさは、計測装置10の設置箇所などに依存する。この変形例によれば、計測装置10の設置箇所に応じた値を閾値として設定できる。
【0063】
(変形例9)
計測装置10のセンサ20は、計測装置10に対して外付けであってもよい。つまり、計測装置10は、センサ20を備えていなくてもよい。センサ20の計測対象は、弁体1Bに限られない。センサ20は、計測対象の物理量であればよい。物理量としては、上記のような位置の他、温度、気圧、及び、流量などが挙げられる。
【0064】
(変形例10)
処理回路30のハードウェア構成は任意である。処理回路30は、ワンチップのマイクロコンピュータなどのプロセッサ、又は、複数のプロセッサの組合せからなってもよい。各回路31~36のうちの少なくとも一部の回路は、各種の論理回路などから構成されてもよい。
【0065】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…バルブ、1A…駆動装置、1B…弁体、5…上位装置、10…計測装置、20…センサ、30…処理回路、31…計測回路、32…第1タイマ回路、33…第2タイマ回路、34…制御回路、35…検出回路、36…電源回路、39…閾値設定回路、40…インターフェイス、C1…第1周期、C2…第2周期。